(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、被計測部の物理量を遠隔から計測する無線式センサシステムが多く実用化されようとしている。このような無線式センサシステムは、被計測部に装着される共振タグと、該共振タグと無線通信するリーダモジュールとを備える。共振タグには、共振子が少なくとも備えられている。リーダモジュールには、共振子を励振する励振信号を発生し、当該励振信号で共振した共振子の残響信号を受信する送受信部が少なくとも備えられている。
【0007】
共振タグは、被計測部に装着されるため、できる限り少ない構成要件で構成したほうがよい。したがって、特許文献1に記載のような補償回路は、共振タグに備えないほうがよい。
【0008】
また、特許文献1の構成を共振タグに採用する場合、補償回路に電力供給する電源が、共振タグ単独で必要になり、共振タグの小型化を妨げてしまう。
【0009】
本発明の目的は、共振タグを大型化することなく、共振子の
共振周波数の経時変化特性に依存する物理量の計測誤差を抑圧することができる、無線式センサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の無線式センサシステムは、共振タグとリーダモジュールを備える。共振タグは、周囲の物理量に応じて共振周波数が変化する共振子およびRFIDを備える。リーダモジュールは、共振子を励振する励振信号を送信し、該励振信号に基づく残響信号を受信する計測用信号送受信部、該計測用信号送受信部で得た残響信号に基づいて物理量の計測を行う計測部、および、RFIDと通信を行うRFID通信制御部を備える。
【0011】
RFIDは、共振子の特性に依存する物理量の計測誤差に関連する情報である共振タグ情報を記憶する。RFID通信制御部は、共振タグ情報を前記RFIDから取得して計測部に与える。計測部は、共振タグ情報と残響信号に基づいて物理量の計測を行う。
【0012】
この構成では、残響信号が誤差を含んでいても、当該誤差が共振タグ情報によって補正されるので、物理量の計測誤差を抑圧できる。
【0013】
また、この発明の無線式センサシステムでは、次の構成であってもよい。共振タグ情報は、共振タグの製造日である。リーダモジュールは、時刻を計時するリアルタイムクロックを備える。リーダモジュールの計測部は、リアルタイムクロックから出力される時刻と共振タグの製造日と残響信号に基づいて物理量の計測を行う。
【0014】
この構成では、共振子の共振周波数の経時変化を適切に補正することができる。
【0015】
また、この発明の無線式センサシステムでは、次の構成であってもよい。リーダモジュールは、残響信号と異なる方法により物理量を計測する補助計測部を備える。RFID通信制御部は、残響信号による計測値の含む誤差を、補助計測部の計測結果に基づいて予め取得して、RFIDに共振タグ情報として与えておく。RFID通信制御部は、残響信号による計測を再度行う際に、共振タグ情報をRFIDから取得する。
【0016】
この構成では、残響信号による計測誤差の補正情報を、共振タグ情報としてRFIDに記憶しておくことができる。そして、リーダモジュールは、このRFIDに記憶された共振タグ情報(補正情報)を取得して、物理量の計測に利用することで、物理量の計測誤差を抑圧できる。
【0017】
また、この発明の無線式センサシステムでは、補助計測部は腋窩式温度計であり、物理量は温度であってもよい。
【0018】
この構成では、物理量や補助計測部の具体例を示しており、この構成により、被計測部である人の温度すなわち体温を、無線式センサシステムによって、精確に計測することができる。
【0019】
また、この発明の無線式センサシステムでは、物理量が温度である場合に、次の構成であることが好ましい。共振タグは、共振子を複数備える。複数の共振子は、断熱材を介して配置されている。共振タグ情報は、断熱材の熱伝達係数である。
【0020】
この構成では、被計測部の深部温度を、精確に計測することができる。
【0021】
また、この発明の無線式センサシステムでは、次の構成であってもよい。補助計測部は、共振タグが収容可能で、内部空間の温度が調整された恒温槽である。被計測部は、共振タグが装着された誘電体もしくは磁性体である。
【0022】
この構成では、被計測部が誘電体や磁性体である場合の温度計測の具体例を示している。この構成により、共振子の共振周波数に影響を与える材質の温度を、精確に計測することができる。
【0023】
また、この発明の無線式センサシステムでは、次の構成であることが好ましい。RFIDは、リーダモジュールの動作プログラムを記憶する。RFID通信制御部は、動作プログラムを取得して、当該RFID通信制御部、計測用信号送受信部および計測部の動作を設定する。
【0024】
この構成では、共振タグのRFIDに記憶された動作プログラムによって、リーダモジュールが動作する。したがって、各種の共振タグに対して汎用なリーダモジュールを実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、小型の共振タグを用いながら、共振子の
共振周波数の経時変化特性に依存する物理量の計測誤差を抑圧することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る無線式センサシステムについて、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線式センサシステムの構成図である。
【0028】
無線式センサシステム10は、共振タグ20とリーダモジュール30を備える。共振タグ20は、被計測部に装着されている。リーダモジュール30は、例えば、計測者が持ち運び可能な形状からなる。
【0029】
共振タグ20は、
図1に示すように、RFID21、RFID通信用アンテナ22、共振子23、および、共振子用アンテナ24を備える。リーダモジュール30は、RFID通信制御部31、RFID通信用アンテナ32、計測用信号送受信部33、計測信号用アンテナ34、計測部35、RTC(リアルタイムクロック)36、および表示部37を備える。
【0030】
(共振タグ20の構成)
RFID21は、記憶部(メモリ)を備え、共振タグ情報を記憶している。共振タグ情報は、共振タグ20が製造された年月日、すなわち製造日を含む情報であり、RFID21の識別IDを有していてもよい。なお、共振タグ情報に含まれる製造日は、共振子23の製造日であってもよい。
【0031】
RFID21は、RFID通信用アンテナ22を用いた外部との無線通信を制御する。RFID21は、RFID通信用アンテナ22、リーダモジュール31のRFID通信用アンテナ32を介して、リーダモジュール31のRFID通信制御部31と通信を行う。具体的には、RFID21は、RFID通信制御部31から読出コマンドScを受信すると、共振タグ情報Sinfを記憶部から読み出し、RFID通信制御部31に送信する。
【0032】
共振子23は、感知温度に応じて共振周波数が変化する素子である。例えば、共振子23は水晶振動子からなる。共振子23は、共振子用アンテナ24を介して励振信号SpLを受けると、感知温度に応じた共振周波数で共振し、残響信号Sfpを発生する。共振タグ20は被計測部に装着されているので、共振子23は、被計測部の温度に応じた共振周波数で共振し、残響信号Sfpを発生する。すなわち、残響信号Sfpの周波数は、被測定部の温度に依存する。なお、共振子23は、感知温度ではなく、磁気や歪み等といった周囲の物理量に応じて共振周波数が変化する素子であってもよい。
【0033】
このように、共振タグ20は、読み出しコマンドScによって共振タグ情報Sinfを送信し、被計測部の温度に応じた共振周波数の残響信号Sfpを送信する。
【0034】
(リーダモジュール30の構成)
RFID通信制御部31は、RFID通信用アンテナ32、共振タグ20のRFID通信用アンテナ22を介して、共振タグ20のRFID21と通信を行う。具体的には、RFID通信制御部31は、RFID21に読み出しコマンドScを送信し、RFID21からの共振タグ情報Sinfを受信して、復調する。この処理により、RFID通信制御部31は、共振タグ20の製造日を含む共振タグ情報を取得することができる。RFID通信制御部31は、共振タグ情報を計測部35に出力する。
【0035】
計測用信号送受信部33は、励振信号SpLを、予め設定した時間間隔で生成して、計測用アンテナ34から送信する。
【0036】
計測用信号送受信部33は、計測用アンテナ34を介して残響信号Sfpを受信すると、残響信号Sfpの周波数解析を実行し、残響信号Sfpの周波数fpを取得する。計測用信号送受信部33は、残響信号Sfpの周波数fpを計測部35に出力する。
【0037】
計測部35は、周波数fpと温度Tとの関係テーブルを予め記憶している。この関係テーブルは、共振子23の共振周波数が経年変化していない状態、すなわち共振子23が製造された時の共振周波数に基づいて決定されている。
【0038】
また、計測部35は、共振子23の共振周波数の経時変化特性を記憶している。
図2は、共振子の共振周波数の経時変化特性を示すグラフである。
図2に示すように、共振子は、時間の経過とともに、共振周波数が変化する。例えば、
図2に示す特性例であれば、時間の経過とともに共振周波数は低下していく。そして、経時していない状態からの周波数の変化率は、経時時間が長いほど大きくなる。
【0039】
計時部35は、残響信号Sfpを受信し周波数fpを取得した時点で、RTC36から時刻(日時)を読み出す。計測部35は、RTC36から読み出した時刻(日時)と、共振タグ情報の製造日とから、共振タグ20の製造日からの経過時間を算出する。計測部35は、経過時間と、共振子23の共振周波数の経時変化特性と、残響信号Sfpの周波数fpから、共振子23が製造された時に換算した周波数を算出する。そして、計測部23は、この換算された周波数と、周波数fpと温度Tとの関係テーブルとを用いて、温度Tを算出する。
【0040】
表示部37は、計測部35で算出された温度Tを取得して表示する。この際、表示部37は、RFID識別情報Sinfを温度Tと一緒に表示してもよい。なお、表示部37は、必要に応じて省略することもできる。この場合、温度TやRFID識別情報Sinfを外部出力する出力端子を備えればよい。
【0041】
このような構成からなる無線式センサシステム10は、次に示すフローによって、被計測部の温度Tを計測する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る無線式センサシステムの処理フローを示すフローチャートである。
【0042】
共振タグ20を被計測部に装着しておく。この状態では、励振信号SpLが与えられていないので、共振子23は共振しておらず、残響信号Sfpは発生していない。
【0043】
リーダモジュール30を起動する(S201)。リーダモジュール30を共振タグ20に近接させた状態で、読出コマンドScを送信する(S202)。この際のリーダモジュール30と共振タグ20との通信は、例えば、所謂、近距離非接触通信で行われる。
【0044】
共振タグ20は、読出コマンドScを受信すると(S101)、製造日を含む共振タグ情報Sinfを送信する(S102)。
【0045】
リーダモジュール30は、共振タグ情報Sinfを受信し(S203)、共振タグ20の製造日を取得する(S204)。
【0046】
リーダモジュール30は、励振信号SpLを生成して送信する(S205)。
【0047】
共振タグ20が励振信号SpLを受信すると(S103)、共振子23は、共振して残響信号Sfpを発生する(S104)。
【0048】
リーダモジュール30は、残響信号Sfpを受信する(S206)。リーダモジュール30は、残響信号Sfpの周波数fpを取得すると、上述の共振子の共振周波数の経時変化特性に基づいて補正する。リーダモジュール30は、該補正結果に基づいて温度Tを計測する(S207)。
【0049】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることで、被計測部の温度を精確に計測することができる。この際、従来技術に示したような補償回路を共振タグに設けなくてもよいので、共振タグを小型化することができる。
【0050】
本実施形態では、共振タグ20を小型化できるため、無線式センサシステム10を以下のように用いることができる。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る無線式センサシステムを用いて人の体温を測定する場合を示す図である。
【0051】
図4に示すように、RFID通信用アンテナ22、及び共振用アンテナ24は、可撓性を有する薄型のフレキシブル基板(例えば紙及びPET等)上にコイル電極が形成されることにより、それぞれ実現されている。当該フレキシブル基板の長尺部26の端部には共振子23が配置されている。
【0052】
人の体温を測定するときには、まず、共振タグ20の共振子23を、被検温体である人900の腋の下、すなわち腋窩901に装着する。次に、長尺部26を人900の上腕900Aに巻き付けて共振タグ20を上腕900Aに固定する。これにより、無線式センサシステム10は、人900の深部体温を測定する。
【0053】
長尺部26を上腕900Aに巻き付ける際、RFID通信用アンテナ22、及び共振用アンテナ24を実現するコイル電極を形成した面が外側(上腕900Aに対しての外側)になるように巻き付け方向を調整する。これにより、リーダモジュール30と共振タグ20との間で、RFID通信、並びに、励振信号SpL及び残響信号Sfpの送受信が可能となる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係る無線式センサシステムについて、図を参照して説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る無線式センサシステムの構成図である。
【0055】
本実施形態に係る無線式センサシステム10Aは、共振タグ20AのRFID21Aと、リーダモジュール30Aの構成が、第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と異なり、他の構成は第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と同じである。したがって、異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0056】
リーダモジュール30Aは、RFID通信制御部31、RFID通信用アンテナ32、計測用信号送受信部33、計測信号用アンテナ34、計測部35A、表示部37、および接触式検温部38を備える。すなわち、リーダモジュール30Aは、リーダモジュール30に対してRTC36を省略し、接触式検温部38を追加したものであり、この構成の変化に応じて、RFID通信制御部31A、計測部35Aの処理が異なるものである。この接触式検温部38が本発明の補助計測部に相当する。
【0057】
接触式検温部38は、例えば、腋窩式温度計である。接触式検温部38は、RFID通信制御部31Aおよび表示部37に接続されている。接触式検温部38は、検温結果である温度TcをRFID通信制御部31Aおよび表示部37に出力する。
【0058】
表示部37は、接触式検温部38から温度Tcが入力されれば、当該温度Tcを表示する。
【0059】
RFID通信制御部31Aは、接触式検温部38からの温度Tcを取得すると、同じタイミングで残響信号Sfpの周波数fpから計測した温度Tとを取得する。RFID通信制御部31Aは、接触式検温部38からの温度Tcと残響信号Sfpによる温度Tとの温度差Δtを算出する。RFID通信制御部31Aは、温度差Δtを書込情報Swとして、RFID21Aに送信する。
【0060】
RFID21Aに記憶される共振タグ情報には、上述の書込情報Swで得られた温度差Δtを含む。すなわち、RFID21Aは、共振タグ情報として、接触式検温部38からの温度Tcと残響信号Sfpによる温度Tとの温度差Δtを含む。
【0061】
このような構成からなる無線式センサシステム10は、次に示すフローによって、被計測部の温度Tを計測する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る無線式センサシステムの事前処理フローを示すフローチャートである。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る無線式センサシステムの処理フローを示すフローチャートである。
【0062】
(事前処理(
図6参照))
リーダモジュール30Aを起動する(S201)。リーダモジュール30Aは、励振信号SpLを生成して送信する(S205)。共振タグ20Aが励振信号SpLを受信すると(S103)、共振子23は、共振して残響信号Sfpを発生する(S104)。リーダモジュール30Aは、残響信号Sfpを受信する(S206)。
【0063】
リーダモジュール30Aは、残響信号Sfpの周波数fpを取得すると、周波数fpと温度Tとの関係テーブルから温度Tを計測する(S211)。
【0064】
リーダモジュール30Aは、接触式検温部38にて温度Tcを計測する(S212)。リーダモジュール30Aは、接触式検温部38からの温度Tcと残響信号Sfpによる温度Tとの温度差Δtを算出する(S213)。リーダモジュール30Aは、温度差Δtを書込情報Swとして、共振タグ20Aに送信する(S214)。
【0065】
共振タグ20Aは、書込情報Swを受信して、温度差Δtを取得する(S111)。共振タグ20AのRFID21Aは、温度差Δtを共振タグ情報として記憶する(S112)。
【0066】
(計測処理(
図7参照))
リーダモジュール30Aを起動する(S201)。リーダモジュール30Aを共振タグ20Aに近接させた状態で、読出コマンドScを送信する(S202)。
【0067】
共振タグ20Aは、読出コマンドScを受信すると(S101)、温度差Δtを含む共振タグ情報SinfAを送信する(S121)。
【0068】
リーダモジュール30Aは、共振タグ情報SinfAを受信し(S203)、共振タグ20Aの温度差Δtを取得する(S221)。
【0069】
リーダモジュール30Aは、励振信号SpLを生成して送信する(S205)。
【0070】
共振タグ20Aが励振信号SpLを受信すると(S103)、共振子23は、共振して残響信号Sfpを発生する(S104)。
【0071】
リーダモジュール30Aは、残響信号Sfpを受信する(S206)。リーダモジュール30Aは、残響信号Sfpの周波数fpを取得すると、上述の関係テーブルを用いて温度Tを計測し、当該温度Tを温度差Δtで補正する(S222)。
【0072】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることで、接触式検温部の検温結果に応じて、被計測部の温度を精確に計測することができる。この際、従来技術に示したような補償回路を共振タグに設けなくてもよいので、共振タグを小型化することができる。
【0073】
なお、接触式検温部38は、リーダモジュール30Aに一体化されていなくてもよい。この場合、例えば、接触式検温部38とリーダモジュール30Aを有線もしく無線で接続し、接触式検温部38が計測した温度を、リーダモジュール30Aに与えればよい。また、接触式検温部38の計測温度をユーザが、リーダモジュール30Aに入力してもよい。
【0074】
次に、本発明の第3の実施形態に係る無線式センサシステムについて、図を参照して説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る無線式センサシステムの構成図である。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る共振タグの外観斜視図である。
【0075】
本実施形態に係る無線式センサシステム10Bは、複数の共振子231,232を備える共振タグ20Bと、リーダモジュール30Bの計測用信号送受信部33B、計測部35Bの処理が、第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と異なる。また、リーダモジュール30Bは、RTC36が省略されている。他の構成は第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と同じである。したがって、異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0076】
共振タグ20Bは、共振子231,232、共振子用アンテナ241,242、RFID21Bを備える。共振子231は共振子用アンテナ241に接続されており、共振子232は共振子用アンテナ242に接続されている。共振子231は、励振信号SpLを受けて残響信号Sfp1を発生する。共振子232は、励振信号SpLを受けて残響信号Sfp2を発生する。同じ温度に対する残響信号Sfp1の周波数fp1と残響信号Sfp2の周波数fp2は異なるように設定されている。
【0077】
共振タグ20Bは、
図9に示すように、平膜状の断熱材25を備える。共振子231は、断熱材25の第1平膜面251の略中央に配置されている。共振子用アンテナ241は、第1平膜面251において、共振子231を囲むように、外周に沿ってループ状に形成されている。
【0078】
共振子232は、断熱材25の第2平膜面252の略中央に配置されている。共振子用アンテナ242は、第2平膜面252において、共振子232を囲むように、外周に沿ってループ状に形成されている。この第2平膜面252が被計測部に対する接触面である。
【0079】
RFID21Bは、断熱材25の第1平膜面251上に配置されており、共振子用アンテナ241に接続されている。共振子用アンテナ241は、RFID通信用アンテナ22を兼用している。
【0080】
RFID21Bは、断熱材25の熱伝達係数を含む共振タグ情報が記憶されている。
【0081】
リーダモジュール30BのRFID通信制御部31は、断熱材25の熱伝達係数を含む共振タグ情報を取得すると、計測部35Bに与える。
【0082】
計測用信号送受信部33Bは、残響信号Sfp1の周波数fp1を取得して、計測部35Bに出力する。計測用信号送受信部33Bは、残響信号Sfp2の周波数fp2を取得して、計測部35Bに出力する。
【0083】
計測部35Bは、周波数fp1と関係テーブルから外部側温度T1を算出する。計測部35Bは、周波数fp2と関係テーブルから被計測部側温度T2を算出する。計測部35Bは、外部側温度T1と、被計測部側温度T2と、共振タグ情報から得られる熱伝達係数とを用いて、既知の方法から、深部温度Tdを算出する。
【0084】
このような構成からなる無線式センサシステム10Bは、次に示すフローによって、被計測部の深部温度Tdを計測する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る無線式センサシステムの処理フローを示すフローチャートである。
【0085】
リーダモジュール30Bを起動する(S201)。リーダモジュール30Bを共振タグ20Bに近接させた状態で、読出コマンドScを送信する(S202)。
【0086】
共振タグ20Bは、読出コマンドScを受信すると(S101)、熱伝達係数を含む共振タグ情報SinfBを送信する(S131)。
【0087】
リーダモジュール30Bは、共振タグ情報SinfBを受信し(S203)、断熱材25の熱伝達係数を取得する(S231)。
【0088】
リーダモジュール30Bは、励振信号SpLを生成して送信する(S205)。
【0089】
共振タグ20Bが励振信号SpLを受信すると(S103)、共振子231,232は、共振して残響信号Sfp1,Sfp2をそれぞれ発生する(S132)。
【0090】
リーダモジュール30Bは、残響信号Sfp1,Sfp2を受信する(S232)。リーダモジュール30Bは、残響信号Sfp1の周波数fp1と残響信号Sfp2の周波数fp2を取得すると、周波数fp1,fp2と熱伝達係数とを用いて、深部温度Tdを計測する(S233)。
【0091】
このように、本実施形態の構成および処理を用いることで、断熱材の熱伝達係数等から決定される共振タグの特性に影響されることなく、被計測部の深部温度を精確に計測することができる。この際、従来技術に示したような補償回路を共振タグに設けなくてもよいので、共振タグを小型化することができる。
【0092】
次に、本発明の第4の実施形態に係る無線式センサシステムについて、図を参照して説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る無線式センサシステムの構成図である。
【0093】
本実施形態に係る無線式センサシステム10Cは、第2の実施形態に係る無線式センサシステム10Aに対して、接触式検温部38が省略され、代えて、恒温槽40が、共振タグ20Cおよびリーダモジュール30Cとは別に備えられたものである。また、共振タグ20Cの共振タグ情報が異なる。この恒温槽40が本発明の補助計測部に相当する。
【0094】
RFID通信制御部31Cは、恒温槽40の温度センサ41から得られる温度Taと、残響信号Sfpから計測される温度Tとの温度差Δtaを予め取得している。
【0095】
具体的には、共振タグ20Cを被計測部に装着した状態で恒温槽40内に配置する。この共振タグ20Cに対して、リーダモジュール30Cから励振信号SpLを与える。リーダモジュール30Cは、共振タグ20Cからの残響信号Sfpを受信して、計測部35Cで温度Tを計測する。ここで、被計測部が、共振子23の共振周波数や共振子用アンテナ24の特性に影響を与えない材質であれば、温度センサ41の計測する温度Taと、残響信号Sfpによる温度Tは一致する。しかしながら、被計測部が、誘電体や磁性体のように、共振子23の共振周波数や共振子用アンテナ24の特性に影響を与える材質であると、温度センサ41の計測する温度Taと残響信号Sfpによる温度Tは異なり、温度差Δtaは0でない値となる。この処理は、恒温槽40の温度を変化させながら、複数の温度で行われる。RFID通信制御部31Cは、各温度に対する温度差Δtaを、書込情報Swとして、RFID21Cに送信する。
【0096】
RFID21Cは、書込情報Swを復調して、各温度に対する温度差Δtaを取得し、共振タグ情報として記憶しておく。
【0097】
次に、実際に被計測部の温度を計測する場合、RFID通信制御部31Cは、RFID21Cから、各温度に対する温度差Δtaを含む共振タグ情報を取得し、計測部35Cに与える。
【0098】
計測部35Cは、残響信号Sfpによる温度Tを算出すると、当該温度Tを、各温度に対する温度差Δtaで補正して、被計測部の温度として出力する。
【0099】
このような構成および処理とすることで、被計測部が共振子23の共振周波数や共振子用アンテナ24の特性に影響を与える材質であっても、被計測部の温度を精確に計測することができる。この際、従来技術に示したような補償回路を共振タグに設けなくてもよいので、共振タグを小型化することができる。
【0100】
次に、本発明の第5の実施形態に係る無線式センサシステムについて、図を参照して説明する。
図12は、本発明の第5の実施形態に係る無線式センサシステムの処理フローを示すフローチャートである。
【0101】
本実施形態の無線式センサシステムでは、実際の計測処理は、第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と同じであり、実際の計測を開始するまでの処理が第1の実施形態に係る無線式センサシステム10と異なる。
【0102】
リーダモジュールを起動する(S201)。リーダモジュールを共振タグに近接させた状態で、読み出しコマンドScrを、共振タグに送信する(S241)。
【0103】
共振タグ20は、読み出しコマンドScrを受信すると(S141)、動作プログラムSproをリーダモジュールに送信する(S142)。リーダモジュールは、動作プログラムSproを受信すると(S242)、動作プログラムSproを復調して展開する(S243)。以下は、第1の実施形態と同様に、計測処理を行う。
【0104】
このような構成および処理を用いることで、共振タグ毎に通信仕様等が異なっていても、リーダモジュールは、共振タグ毎に確実に通信を行うことができる。すなわち、リーダモジュールを汎用化することができる。また、動作プログラムSpro内に関係テーブルを含んでおくことで、いずれの共振タグを用いても、物理量を正確に計測することができる。
【0105】
なお、上述の各実施形態は、それぞれ単独でも作用効果を奏するが、これらの各実施形態の構成および処理を組み合わせてもよい。