特許第6032380号(P6032380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032380モニタリングシステムおよびモニタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6032380
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】モニタリングシステムおよびモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20161121BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20161121BHJP
   G08C 15/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H04Q9/00 311J
   G08C17/00 Z
   G08C15/06 F
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-53530(P2016-53530)
(22)【出願日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年3月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 実
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−338381(JP,A)
【文献】 再公表特許第2004/046704(JP,A1)
【文献】 特開2001−202587(JP,A)
【文献】 特開2008−241394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03J9/00−9/06
G08C13/00−25/04
H04M3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の構造物のそれぞれに対して少なくとも1つずつ設置され、対象となる構造物の物理量を検出する複数のセンサ装置と、
前記複数の構造物のうち少なくとも1つの構造物をそれぞれ含む構造物群毎に対応付けて設けられ、対象となる構造物群に含まれる各構造物に設置された各センサ装置が検出した物理量のデータを無線によりそれぞれ収集する複数の収集装置と、
前記複数の収集装置に接続され、前記複数の収集装置により収集された物理量のデータを前記複数の収集装置から受信するデータ処理装置と、
を備え
前記構造物群同士の間の最小距離は、それぞれの前記構造物群に設置された各センサ装置が物理量のデータを無線送信する最大無線送信距離よりも長い、モニタリングシステム
【請求項2】
前記複数の収集装置のそれぞれは、前記複数の構造物のそれぞれに1対1に対応付けて設けられる請求項1に記載のモニタリングシステム
【請求項3】
前記複数の収集装置のうちの第1収集装置は、前記複数の構造物のうちの、第1構造物及び前記第1構造物に対して向かい側にある第2構造物を含む構造物群に対応して設けられる請求項1に記載のモニタリングシステム
【請求項4】
前記複数の収集装置のうちの第1収集装置は、前記複数の構造物のうち道路の一方向への車線に設けられた第1構造物および反対車線における前記第1構造物に対応する位置に設けられた第2構造物に対応して設けられる請求項1に記載のモニタリングシステム
【請求項5】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、近距離無線通信により前記複数の収集装置のうち対応する収集装置と通信する請求項1から4のいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項6】
前記複数の収集装置のそれぞれは、対応する前記構造物群に含まれる各構造物から100m以内に設置される請求項1から5のいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項7】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、間欠的な各観測期間において前記複数の構造物のうち対象となる構造物で検出される物理量を記録する請求項1からのいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項8】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記観測期間外においても、検出した物理量が突発事象の発生を示すと判断したことに応じて物理量を記録する請求項に記載のモニタリングシステム
【請求項9】
前記複数の収集装置のそれぞれは、GPS電波を受信して時刻を合わせる請求項1〜のいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項10】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、独立に電源を有する請求項1からのいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項11】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、環境エネルギーによって発電をする請求項1に記載のモニタリングシステム
【請求項12】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、光を受けて発電する請求項1に記載のモニタリングシステム
【請求項13】
前記複数の構造物のそれぞれは、建物または道路付帯構造物である請求項1から1のいずれか一項に記載のモニタリングシステム
【請求項14】
複数の構造物のそれぞれに対して少なくとも1つずつセンサ装置を設置するとともに、前記複数の構造物のうち少なくとも1つの構造物をそれぞれ含む構造物群毎に対応付けて複数の収集装置を設置する段階と、
置された複数のセンサ装置により、対象となる構造物の物理量をそれぞれ検出する段階と、
前記数の収集装置により、対象となる構造物群に含まれる各構造物に設置された各センサ装置が検出した物理量のデータを無線でそれぞれ収集する段階と、
前記複数の収集装置に接続されたデータ処理装置により、前記複数の収集装置により収集された物理量のデータを前記複数の収集装置から受信する段階と、
を備え
前記設置する段階では、それぞれの前記構造物群に設置された各センサ装置が物理量のデータを無線送信する最大無線送信距離よりも、前記構造物群同士の間の最小距離が長くなるように、前記複数の収集装置を前記構造物群に対応付けて設置する、モニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタリングシステムおよびニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造ヘルスモニタリングシステムは、建物などの構造物の振動を監視して構造物の損傷、経年劣化等の構造性能を診断する。構造ヘルスモニタリングシステムは、例えば、構造物の振動を検出する加速度センサ等を含むセンサ装置、センサ装置による計測データを解析する計算機を含んで構築される(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このような構造ヘルスモニタリングシステムでは、各センサ装置が計測データを有線又は無線で送信することで、計算機、または中継装置が複数のセンサ装置による計測データを収集している。
[特許文献1]特開2015−111091号公報
[特許文献2]特開2014−174715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造ヘルスモニタリングシステムでは、対象とする構造物の配置によっては、多数のセンサ装置から1つの計算機または中継装置へと計測データを無線送信する場合に、センサ装置の通信距離が長くなる結果、通信時の消費電力が著しく増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、複数の構造物のそれぞれに対して少なくとも1つずつ設置され、対象となる構造物の物理量を検出する複数のセンサ装置と、複数の構造物のうち少なくとも1つの構造物をそれぞれ含む構造物群毎に対応付けて設けられ、対象となる構造物群に含まれる各構造物に設置された各センサ装置が検出した物理量のデータを無線によりそれぞれ収集する複数の収集装置と、複数の収集装置に接続され、複数の収集装置により収集された物理量のデータを複数の収集装置から受信するデータ処理装置と、を備える構造ヘルスモニタリングシステム、収集装置および構造ヘルスモニタリング方法を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る構造ヘルスモニタリングシステムを示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る構造ヘルスモニタリングシステムの動作を示すフローチャートである。
図3】本実施形態に係る構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す概念図である。
図4】変形例(1)における構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す概念図である。
図5】変形例(2)における構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
[構造ヘルスモニタリングシステムの概要]
図1は、本実施形態に係る構造ヘルスモニタリングシステム1を示すブロック図である。構造ヘルスモニタリングシステム1は、複数の構造物101の構造性能を診断するものであり、複数のセンサ装置2と、複数の収集装置3と、データ処理装置4と、診断サーバ5と、雨量計6と、風向風速計7と、温度計8とを備える。なお、雨量計6、風向風速計7、温度計8は、センサ装置2と一体型としてもよい。
【0010】
ここで、複数の構造物101は、本実施の形態においては、一例として建物である。建物とは、それぞれ建物、すなわち、居住、オフィス、店舗、工場、倉庫などの目的で利用される、土地に定着した建造物であって、屋根および周壁を有するものである。この構造物101は、例えば、道路102(図3参照)に面して設けられている。
【0011】
複数のセンサ装置2は、複数の構造物101のそれぞれに対して少なくとも1つずつ、好ましくは複数設置され、対象となる構造物101の物理量、例えば、構造物が地震などで振動するときの加速度および構造物の傾き等を検出する。複数のセンサ装置2が1つの構造物101に対して設置される場合には、これらのセンサ装置2は、例えば低層階(例えば1階)、及び高層階(例えば最上階)に設けられ、好ましくは、さらに1以上の中層階、ならびに/または、地盤および地下などにも設けられる。
【0012】
各センサ装置2は、例えば、クロック部20、メモリ23、センサ部24、データ処理部25および通信部26を有しており、好ましくは、さらに独立の電源200を有している。
【0013】
クロック部20は、時計機能を持った回路であり、内部に時刻データを保持すると共に、クロック信号を装置内の各部、例えばセンサ部24、データ処理部25、通信部26等に出力する。各センサ装置2のクロック部20は、それぞれの時刻データが同期した状態となるよう維持される。
【0014】
メモリ23は、センサ装置2の各種機能を実現するためのプログラムおよびデータを記憶する。例えば、メモリ23は、センサ部24により検出された物理量データを記憶する。
【0015】
センサ部24は、対象となる構造物101についての上述の物理量を検出する。例えば、センサ部24は、構造物が地震などで振動するときの加速度を検出する加速度センサである。一例として、このセンサは、一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化されたMEMSデバイスであってよく、更に言えば、静電容量型のセンサであってもよい。以上のセンサ部24は、検出した物理量データをデータ処理部25に供給する。
【0016】
データ処理部25は、一例としてマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを有し、種々のデータ処理を行う。例えば、データ処理部25は、センサ部24から受信した物理量データをメモリ23に記憶させる。また、データ処理部25は、物理量データをメモリ23から読み出し、収集装置3に送信すべく通信部26に供給する。
【0017】
通信部26は、複数の収集装置3のうち対応する一の収集装置3と無線通信する。例えば、通信部26は、メモリ23内の物理量データをデータ処理部25から受け取って、収集装置3に送信する。
【0018】
以上の通信部26は、任意の通信規格による無線通信によって収集装置3と通信してよく、好ましくは近距離無線通信によって通信する。近距離無線通信としては、2.5GHz帯を使用するBluetooth(登録商標)のクラス1(通信距離約100m)、クラス2(通信距離約10m)またはクラス3(通信距離約1m)、2.5GHz帯または5GHz帯を使用するWi−fi(通信距離数十〜数百m)、赤外波長帯を使用する赤外線通信(通信距離約1m未満)、または、27MHz帯、150MHz帯、400MHz帯、900MHz帯、920MHz帯、950MHz帯または50GHz帯を使用する簡易無線通信などを用いることができる。本実施の形態においては、通信部26は、920MHz帯の簡易無線通信により収集装置3と通信する。
【0019】
電源200は、環境エネルギーによって発電し、電力を蓄積すると共にセンサ装置2の各部に供給する。環境エネルギーとしては、例えば光、風力、および/または、構造物の常時振動などを用いることができる。例えば、電源200は、太陽光などの自然光および/または照明装置による照明光などの光を受けて発電するソーラーパネル201を有する。このソーラーパネル201は、センサ装置2の筐体に対して一体的に設けられてもよいし、別体的に設けられてもよい。
【0020】
複数の収集装置3は、少なくとも1つの構造物101を含む構造物群1000に対応付けてそれぞれ設けられている。例えば、複数の収集装置3は、1つのみの構造物101を含む構造物群1000に対応付けてそれぞれ設けられている、つまり、複数の構造物101のそれぞれに1対1に対応付けて設けられている。但し、複数の収集装置3は、道路102を挟んだ2つの構造物101を含む構造物群1000に対応付けてそれぞれ設けられてもよい。
【0021】
複数の収集装置3のそれぞれは、対応する構造物群1000に含まれる各構造物101から100m以内、好ましくは50m以内に設置されてよい。なお、通常の場合、構造物群1000同士の間の最小距離は、それぞれの構造物群1000に設置された各センサ装置2と、当該構造物群1000に対応する収集装置3との距離のうちの最大の距離よりも長い。つまり、構造物群1000同士の間の最小距離は、それぞれの構造物群1000に設置された各センサ装置2が物理量のデータを無線送信する最大無線送信距離よりも長くなっている。これにより一の構造物群1000に設置されたセンサ装置2からの無線送信と、他の構造物群1000に設置されたセンサ装置2からの無線送信との輻輳を回避すること可能となる。
【0022】
各収集装置3は、対象となる構造物群1000に含まれる各構造物101に設置された各センサ装置2から無線送信される物理量データを無線によりそれぞれ収集するようになっており、クロック部30、時刻受信部31は、無線通信部32、メモリ33、制御部35およびデータ送信部36を有している。
【0023】
クロック部30は、時計機能を持った回路であり、内部に時刻データを保持すると共に、クロック信号を装置内の各部、例えば制御部35に出力する。なお、クロック部30内の時刻データは、後述のように制御部35によって外部の基準時刻に対して同期される。
【0024】
時刻受信部31は、外部機器から時刻データを受信して制御部35に供給する。一例として、時刻受信部31は、GPS(Global Positioning System)からGPS電波を受信することで、この電波に含まれる時刻データを受信してよい。
【0025】
無線通信部32は、複数のセンサ装置2の通信部26と無線通信する。例えば、無線通信部32は、複数のセンサ装置2から物理量データを収集して制御部35に供給する。
【0026】
メモリ33は、収集装置3の各種機能を実現するためのプログラムおよびデータを記憶する。例えば、メモリ33は、複数のセンサ装置2から収集した物理量データを記憶する。
【0027】
制御部35は、一例としてマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを有し、各部の制御を行う。例えば、制御部35は、クロック部30を外部の基準時刻に対して同期させる。一例として、制御部35は、時刻受信部31にGPS電波を受信させ、この電波に含まれる時刻データを時刻受信部31から受信してクロック部30に供給することで、この時刻データにクロック部30内の時刻データを合わせる。
【0028】
また、制御部35は、無線通信部32が受信した物理量データを、送信元のセンサ装置2を識別するための識別子に対応付けてメモリ33に記憶させる。そして、制御部35は、物理量データをメモリ33から読み出して識別子と共にデータ送信部36に供給する。
【0029】
データ送信部36は、制御部35から供給される物理量データを、収集装置3に接続されたデータ処理装置4へと有線または無線により送信する。
【0030】
データ処理装置4は、複数の収集装置3に接続されている。このデータ処理装置4は、複数の収集装置3により収集された物理量のデータを、複数の収集装置3から受信して、構造物101の物理量データに対する種々の処理を行う。例えば、データ処理装置4は、受信した物理量データを構造物101ごと、かつ、センサ装置2ごとに振り分けて診断サーバ5に提供する。
【0031】
診断サーバ5は、データ処理装置4からの物理量データを構造物101ごとに解析することで、構造物101の構造性能を診断する。例えば、診断サーバ5は、センサ装置2で検出された加速度データを定期的に解析して構造物101の共振周波数を算出し、その経年変化より構造物の構造性能を診断してもよい。また、診断サーバ5は、加速度データを解析して複数のセンサ装置2のそれぞれが設けられた階層の変位を算出し、その経年変化より構造物の構造性能を診断してもよい。より具体的には、診断サーバ5は、最大加速度、最大層間変形角(地震時での構造物の水平変位を階高で割った値の最大値。例えば加速度検出値の2回積分値)、固有振動数、および、モード(固有振動数で振動する時の振幅形状)等についての算出結果および/またはその変化から構造性能(剛性の低下)を診断するとよい。また、診断サーバ5は、診断結果を表示して保守業者にメンテナンスを促してもよいし、構造物101の利用者に危険を報知してもよい。なお、この診断サーバ5は、データ処理装置4と一体化されてもよい。
【0032】
なお、データ処理装置4および診断サーバ5は、データ解析結果を履歴として管理してよいし、センサ部24の設定およびその履歴も管理してよい。更に、データ処理装置4および診断サーバ5は、これらのデータと共に、雨量計6、風向風速計7および温度計8の測定データも保持してよい。
【0033】
ここで、雨量計6は、構造物群1000が含まれる地域の降水量を計測するものである。また、風向風速計7は、構造物群1000が含まれる地域の風向きおよび風速を計測するものである。また、温度計8は、構造物群1000が含まれる地域の気温を計測するものである。これらの雨量計6、風向風速計7および温度計8は、計測を常時行ってもよいし、センサ装置2による後述の間欠的な観測期間に同期して行ってもよい。また、雨量計6、風向風速計7および温度計8は、測定データと、測定時の時刻データとを対応付けて診断サーバ5に送信してよい。
【0034】
[構造ヘルスモニタリングシステムの動作]
続いて、構造ヘルスモニタリングシステム1の動作について説明する。図2は、構造ヘルスモニタリングシステム1の動作を示すフローチャートである。
【0035】
まず、センサ装置2は、クロック部20を参照し、間欠的な観測期間が開始するか否かを判定する(S100)。例えば、間欠的な観測期間とは、1時間ごとに3分などであってよい。一例として、センサ装置2は、クロック部20で示される時刻が正時、つまり毎時の0分0秒である場合に観測期間が開始すると判定する。
【0036】
S100で観測期間が開始すると判定した場合(S100;Yes)には、センサ部24は、観測期間が継続している間、構造物101の物理量の検出を継続して行う(S102)。また、センサ部24は、検出した物理量をデータ処理部25に供給する。なお、センサ部24は、アナログの物理量データに対する変調、復調およびゼロ点調整などを行ってから、物理量データをデータ処理部25に供給してよい。このように間欠的な観測期間に物理量の検出を行うことにより、電源200の消費電力が低減される。
【0037】
次に、データ処理部25が物理量データをメモリ23に記録する(S104)。例えば、データ処理部25は、センサ部24から受信したアナログの物理量データをAD変換してメモリ23に記憶させてよい。また、データ処理部25は、センサ部24から受信した物理量データをクロック部20から受信した時刻データと対応付けてメモリ23に記憶させてよい。以上のS102、S104の処理により、間欠的な各観測期間において検出される物理量がメモリ23に記録される。
【0038】
次に、センサ装置2および収集装置3は、互いの間で通信を確立する(S106、S120)。例えば、センサ装置2は、クロック部20を参照し、当該センサ装置2に対して収集装置3から予め割り当てられたタイミングで収集装置3と通信を確立してよい。
【0039】
次に、センサ装置2が、検出した物理量データを収集装置3に送信する(S108)。例えば、データ処理部25が、物理量データおよび時刻データの組み合わせをメモリ23から読み出し、当該センサ装置2の識別子とともに通信部26に供給する。そして、通信部26が、供給された物理量データなどを収集装置3に送信する。収集装置3による物理量データの受信以降の処理については、説明を後述する。
【0040】
以上のS106〜S108の処理により、複数のセンサ装置2のそれぞれは、測定した物理量のデータを、当該センサ装置2に割り当てられた識別情報に応じたタイミングで、収集装置3に送信する。そして、S108の処理が終了したら、センサ装置2は、上述のS100に処理を移行する。
【0041】
一方、上述のS100において観測期間が開始しないと判定した場合(S100;No)には、突発事象(例えば、地震や台風などの災害、および交通事故等)の発生の有無を監視すべくセンサ部24が物理量の検出を行う(S110)。例えば、センサ部24は、一の継続時間(例えば10ms)内に継続して物理量を検出してもよいし、瞬間的に物理量を1回検出してもよい。
【0042】
次に、センサ部24は、突発事象が発生したか否かを判定する(S112)。例えば、センサ部24は、S110で検出した物理量が基準閾値よりも大きい場合に突発事象の発生を示すと判断してよい。また、センサ部24は、検出した物理量が直前の物理量に対して基準割合よりも大きく変化している場合に、突発事象の発生を示すと判断してもよい。
【0043】
このS112において突発事象が発生しないと判定された場合(S112;No)には、センサ装置2は上述のS100に処理を戻す。これにより、観測期間が開始しない限り(S100;No)、S110の処理が繰り返し行われることになる。この場合には、S110の処理は基準間隔ごと(例えば5秒ごと)に行われてよい。
【0044】
また、S112において突発事象が発生したと判定された場合(S112;Yes)には、センサ装置2は上述のS104に処理を移行する。これにより、間欠的な観測期間外においてもS110で物理量の検出が行われ、検出した物理量が突発事象の発生を示すとS112で判断されることに応じて物理量がメモリ23に記録される。
【0045】
なお、センサ装置2は、上述のS100の処理で観測期間が開始していないと判定された場合(S100;No)にS110,S112の処理を行わずにS100の処理を繰り返してもよい。また、センサ装置2は、上述のS100、S112の処理を行わずにS102(またはS110)〜S108を常時行ってもよい。
【0046】
ここで、上述のS108の処理により各センサ装置2から物理量データが送信されると、収集装置3はこれらの物理量データをそれぞれ受信して収集する(S122)。例えば、収集装置3の制御部35は、無線通信部32が受信した物理量データをメモリ33に記憶させてよい。また、センサ装置2から物理量データ、時刻データおよびセンサ装置2の識別子が対応付けて送信される場合には、制御部35は、これらの組み合わせをメモリ33に記憶させて良い。
【0047】
次に、収集装置3は、複数のセンサ装置2から収集された物理量データをデータ処理装置4に送信する(S124)。例えば、収集装置3の制御部35は、メモリ33から物理量、時刻データおよびセンサ装置2の識別子の組み合わせをメモリ33から読みだして、データ送信部36に供給する。そして、データ送信部36は、供給された物理量データなどをデータ処理装置4に送信する。
【0048】
次に、データ処理装置4は、複数の収集装置3からの物理量データを受信する(S130)。例えば、データ処理装置4は、収集装置3から受信した物理量データを内部の記憶装置に記憶させてよい。また、収集装置3から物理量データ、時刻データおよびセンサ装置2の識別子が対応付けて送信される場合には、データ処理装置4は、これらの組み合わせを記憶させて良い。
【0049】
そして、データ処理装置4は、受信した物理量データに対するデータ処理を行う(S132)。例えば、データ処理装置4は、受信した物理量データを構造物101ごと、かつ、センサ装置2ごとに振り分けて診断サーバ5に提供する。但し、データ処理装置4は、物理量データをセンサ装置2ごとに解析することで、構造物101の構造性能を診断してもよい。
【0050】
以上の構造ヘルスモニタリングシステム1によれば、少なくとも1つの構造物101をそれぞれ含む構造物群1000毎に対応付けて設けられた収集装置3が、対象となる構造物群1000に含まれる各構造物101に設置された各センサ装置2が検出した物理量のデータを無線によりそれぞれ収集するので、センサ装置2の通信距離が長くなって通信時の消費電力が著しく増加してしまうのを防止することができる。
【0051】
[構造ヘルスモニタリングシステムの設置例]
図3は、本実施形態に係る構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す図である。この図に示すように、本実施形態における構造ヘルスモニタリングシステム1のセンサ装置2は、高層ビルの建物である構造物101の低層階、中層階および高層階にそれぞれ設置されている(地下に設置される場合もある)。また、これらのセンサ装置2と通信可能な状態で、1つの収集装置3が設置されている。なお、図3では、1つの構造物101を含む構造物群1000に1つの収集装置3が対応付けられているが、複数の構造物101を含む構造物群1000に1つの収集装置3が対応付けられてもよい。
【0052】
[構造ヘルスモニタリングシステムの設置例の変形例(1)]
図4は、変形例(1)における構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す図である。
【0053】
この図に示すように、本変形例(1)における構造ヘルスモニタリングシステム1のセンサ装置2は、複数の構造物101のうちの第1構造物105と、第1構造物105に対して道路102の向かい側にある第2構造物106とにそれぞれ設置されている。
【0054】
ここで、第1構造物105および第2構造物106は、道路付帯構造物である。道路付帯構造物とは、道路102の表面、上部、側部に設けられる構造物であり、例えば信号、案内表示板、照明設備、ガードレールなどである。本変形例(1)において、第1構造物105および第2構造物106は、道路102の照明設備となっている。
【0055】
センサ装置2は、第1構造物105および第2構造物106の土台部分と、支柱上部と、照明部の近傍とに設置されている。なお、支柱上部および照明部近傍に設置されたセンサ装置2のソーラーパネル201は、一日当たりの受光量が最も多くなるよう、太陽光の他、照明部からの照明光を受光可能な向きに向けられている。
【0056】
また、複数の収集装置3のうちの一の収集装置3は、これらの第1構造物105および第2構造物106を含む構造物群1000に対応して設けられ、第1構造物105および第2構造物106のセンサ装置2と通信可能となっている。
【0057】
[構造ヘルスモニタリングシステムの設置例の変形例(2)]
図5は、変形例(2)における構造ヘルスモニタリングシステム1の設置例を示す図である。
【0058】
この図に示すように、本変形例(2)における構造ヘルスモニタリングシステム1のセンサ装置2は、道路102の一方向への車線に設けられた第1構造物107と、反対車線における第1構造物107の対応位置に設けられた第2構造物108とにそれぞれ設置されている。例えば、本変形例において第1構造物107および第2構造物108は、道路付帯構造物であり、一例として、道路の案内表示板である。
【0059】
また、複数の収集装置3のうちの一の収集装置3は、これらの第1構造物107および第2構造物108に対応して設けられ、第1構造物107および第2構造物108のセンサ装置2と通信可能となっている。
【0060】
なお、上記の実施形態および変形例(1)、(2)では、構造物101、105〜108を建物または道路付帯構造物として説明したが、他の構造物であってもよい。ここで、他の構造物は、例えば複数の材料や部材などから構成され、基礎などにより重量を支えられた構造で造作されたものであってよい。一例として、構造物は、空港の管制塔、飛行場灯台、高速道路、駅、鉄道のレール、鉄道信号、港湾のクレーン、プラント(石油化学、製鉄)、鋼橋、ダム、堤防、盛土、法面、土手などであってよい。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 構造ヘルスモニタリングシステム、2 センサ装置、3 収集装置、4 データ処理装置、5 診断サーバ、6 雨量計、7 風向風速計、8 温度計、20 クロック部、23 メモリ、24 センサ部、25 データ処理部、26 通信部、30 クロック部、31 時刻受信部、32 無線通信部、33 メモリ、35 制御部、36 データ送信部、101 構造物、102 道路、105 構造物、106 構造物、107 構造物、108 構造物、200 電源、201 ソーラーパネル、1000 構造物群
【要約】
【課題】従来の構造ヘルスモニタリングシステムでは、多数のセンサ装置からの計測データが1つの計算機または中継装置に収集される場合に、センサ装置の通信距離が長くなる結果、通信時の消費電力が著しく増加してしまう。
【解決手段】複数の構造物のそれぞれに対して少なくとも1つずつ設置され、対象となる構造物の物理量を検出する複数のセンサ装置と、複数の構造物のうち少なくとも1つの構造物をそれぞれ含む構造物群毎に対応付けて設けられ、対象となる構造物群に含まれる各構造物に設置された各センサ装置が検出した物理量のデータを無線によりそれぞれ収集する複数の収集装置と、複数の収集装置に接続され、複数の収集装置により収集された物理量のデータを複数の収集装置から受信するデータ処理装置と、を備える構造ヘルスモニタリングシステム、および構造ヘルスモニタリング方法を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5