(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向の動摩擦係数をμdmとし、幅方向の動摩擦係数をμdtとしたとき、μdmおよびμdtがいずれも0.60〜1.70の範囲内にあり、かつμdmとμdtの比(μdm/μdt)の値が0.75以上1.15未満であり、マイクロメータ法によるフィルム厚みが、0.5〜3μmの範囲内であるコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。
【0003】
この中でもコンデンサ用途は、その優れた耐電圧特性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。
【0004】
最近では、各種電気設備がインバーター化されつつあり、それに伴いコンデンサの小型化、大容量化の要求が一層強まってきている。そのような市場、特に自動車用途(ハイブリッドカー用途含む)や太陽光発電、風力発電用途の要求を受け、二軸配向ポリプロピレンフィルムの耐電圧性を向上させ、生産性、加工性を維持させつつ、一層のフィルムの薄膜化とあわせてコンデンサのコストダウンが必須な状況となってきている。
【0005】
かかる二軸配向ポリプロピレンフィルムは、耐電圧性、生産性、加工性の観点から表面を適度に粗面化する必要があり、これは特にフィルムの滑り性を付与する意味で非常に重要である。滑り性は、該誘電体フィルム上に金属蒸着膜を形成させ電極とするための蒸着加工工程や蒸着リール作成時のスリット工程、コンデンサ作製時の素子巻工程において、加工性、コンデンサの出来栄え、性能に大きく影響を与える。
【0006】
かかる粗面化、滑り性付与の方法としては、これまでエンボス法やサンドブラスト法などの機械的方法、溶剤によるケミカルエッチング等の化学的方法、ポリエチレン等の異種ポリマーを混合したシートを配向する方法、β晶を生成させたシートを配向する方法(例えば特許文献1、2参照)等が提案されている。
【0007】
しかし、機械的方法および化学的方法では粗さ密度が低く、またβ晶を生成させたシートを配向する方法では粗大突起が生じやすく、特に加工性の面でフィルムの滑り性が必ずしも十分とはいえない場合があった。また、これらの方法で粗面化したフィルムは、コンデンサ作製時にフィルム搬送性が悪く、巻き取り性の悪化、フィルム層間のエアー量の適性化が困難であり、特に油含浸タイプのコンデンサでは、油含浸が不十分となり部分的に未含浸部分を生じやすく、コンデンサ寿命が低下する場合がある。
【0008】
また、いずれの方法による二軸配向ポリプロピレンフィルムも、コンデンサの加工性、生産性の面で厳しいコストダウンが図られた条件下のもとでは、搬送性が十分でなく、巻き取り性の面でも問題を生じることがある。
【0009】
また、粗さ密度や突起の均一性については、高溶融張力ポリプロピレンフィルム(例えば特許文献4参照)や、かかる高溶融張力ポリプロピレンフィルムと通常のポリプロピレンフィルムとを積層した(例えば特許文献3参照)フィルムなどが提案されているが、高溶融張力ポリプロピレン樹脂そのものをコンデンサ用途として使用する場合は樹脂の構造上十分な耐電圧性、耐熱性を得ることができず特に高温での絶縁破壊電圧が著しく低下する問題がある。また、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を積層する技術では、特にフィルム厚みが3μm以下の薄膜フィルムでは均一な積層厚み構成を得ることが非常に困難となり、均一性を損ねて実用上満足のいく誘電体フィルムとはならないのが実状である。また、特許文献4では表面の粗面化度をコントロールした二軸配向ポリプロピレンフィルムとその製造方法について開示されているが、フィルム表面の粗面化度を制御し滑り性を付与する上で不十分でかつ困難である。
【0010】
また、少なくとも片面のフィルム表面における粗さを規定した特許文献5、6については、微細な粗面を形成する方法として、キャスト原反シートのβ晶分率をある範囲内とすることで、滑り性を付与し素子の巻き取り性と耐電圧性とをバランスさせることができるとされている。しかし、その製造方法は、フィルム両面の粗面化度や滑り性を十分コントロールできるものではなく、かつ得られたフィルムの微細な粗面程度では、特に自動車用途に求められる厳しい耐電圧性と耐熱性、加工性を十分満たすものではなかった。
【0011】
また、特許文献7、8では、フィルムの滑り性について規定したものであるが、ポリエステルを用いたコンデンサ用二軸配向ポリエステルフィルムであり、フィルムの絶縁破壊電圧、コンデンサの耐電圧特性といった性能において十分ではなかった。なお、結晶性ポリマーであるポリプロピレンを当発明のポリエステル同様に延伸することは困難であった。また、滑り性を付与するために、表面の粗面化においては外部粒子を添加することで表面形成しており粗大突起、外部粒子の脱落等コンデンサの耐電圧性を著しく低下させる要因となっており、必ずしも十分とはいえなかった。さらなるコストダウン、加工性向上のため、コンデンサ作製においてもプロセス条件が高速化、複雑化するなかでコンデンサとしてのさらなる搬送安定性、巻き取り性が求められてきている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルム、金属積層フィルムおよびフィルムコンデンサについて説明する。
【0020】
本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、長手方向(フィルム製膜時にフィルムが流れる方向)の動摩擦係数をμdmとし、幅方向(長手方向とフィルム平面上で直交する方向)の動摩擦係数をμdtとしたとき、動摩擦係数μdmおよび動摩擦係数μdtがいずれも0.60〜1.70の範囲内にあり、かつ動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの比(μdm/μdt)の値が0.75以上1.15未満である。
【0021】
μdmとμdtは、0.70〜1.50であるとより好ましく、0.75〜1.30であるとさらに好ましく、0.80〜1.10であると特に好ましい。μdm、μdtのいずれかが0.60未満であると、特に蒸着加工時の冷却ドラムへの密着性が低く蒸着時の熱ダメージを受けやすく熱負け欠点が生じやすくなり、蒸着品位を低下させる。また、蒸着リールのスリット工程や素子巻工程では、巻き取り性が低下し、滑り易くフィルム蛇行、巻き取り後のコンデンサ端面ズレ、飛び出しといった品位低下、加工性の低下をもたらし、場合によっては不良品となり生産性が低下する傾向がある。
【0022】
また、μdm、μdtのいずれかが1.70を超える場合は、蒸着工程、スリット工程、素子巻工程において、滑り性が低下し傷がつきやすく、シワが入り易くなり欠点となる傾向がある。また、コンデンサとした場合には層間間隙も狭く、局所的な層間密着が発生し、電界集中によりセルフヒーリング性や耐電圧性が低下し易い。
【0023】
動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの比(μdm/μdt)は、0.80〜1.10であるとより好ましく、0.85〜1.10であるとさらに好ましく、0.90〜1.10であると特に好ましい。動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの比(μdm/μdt)の値が0.75より小さい場合、蒸着加工時の冷却ドラムへの密着度合いに偏りが生じフィルム幅方向の収縮時にシワが発生し易くなり、膜抜け欠点や熱負け欠点が生じやすい。また、動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの比(μdm/μdt)の値が1.15以上である場合、蒸着加工時の冷却ドラムへの密着時にフィルム幅方向へズレやすく、マージン振れなどの欠点となることがある。特に両面蒸着工程では、マージン精度が重要視されており、その場合(μdm/μdt)の値が0.90以上1.10以下であることが特に好ましい。こうすることで、両面蒸着時のマージン振れなどの欠点等が無く蒸着加工性、リール品位が格段に向上し生産性が高まる。
【0024】
ここで、本発明の技術的背景について説明する。ポリプロピレンフィルムの耐電圧性、信頼性、コンデンサの加工性(蒸着、スリット、素子巻)を良好とするには、ポリプロピレンフィルムの滑り性を面内等方性に着眼し制御することが非常に重要である。特に、コンデンサの加工性を良好とするには、フィルム表面を適度に粗面化し、適正な滑り性を付与し、フィルム搬送安定性、つまりフィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さを適正化することが重要であるが、面内において、滑り性に異方性があり、特に長手方向と幅方向で大きく滑り性が異なっていた。このことにより、素子とした場合のフィルム同士の局所的層間密着や残留ストレスの発現に偏りがあり素子の耐電圧性の観点からも十分ではなかった。
【0025】
このため、本発明においては、まず従来の表面粗さでは表現できない面内方向における滑り性を、等方性を評価する因子として採用した。すなわち、フィルムと搬送ロールやフィルム同士の滑り性を面内において等方的になるよう制御することにより、好適な素子の出来映え、加工性、耐電圧性を得ることが可能となった。なお、後述するように冷却ドラム温度や引取り速度や延伸温度を適正に調整することで、動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの値の大小を制御し、延伸・熱処理条件を適正に調整することで、μdm/μdtを制御できる。
【0026】
次に、本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みについて説明する。本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ素子サイズ、製膜安定性、加工性の点から、マイクロメータ法によるフィルム厚みが0.5〜3μmであることが好ましく、より好ましくは1〜2.5μmであり、特に好ましくは1.2〜1.8μmである。フィルムの厚みが薄すぎると、機械的強度や絶縁破壊強度、加工性に劣る場合がある。また、フィルムの厚みが厚すぎると小型なコンデンサを作製することが困難になり、コンデンサ用の誘電体として用いた場合、体積当たりの容量が小さくなったり、フィルム表面が粗面化し易く、コンデンサとしての信頼性や高温耐電圧特性が劣る場合がある。
【0027】
また、本発明のフィルムは、長手方向のヤング率をY
MDとし、幅方向のヤング率をY
TDとし、長手方向と幅方向を二等分する45°の方向のヤング率をY
45°としたとき、Y
MD/Y
TD、Y
TD/Y
45°、Y
45°/Y
MDがいずれも0.8〜1.25の範囲内にあることが好ましい。Y
MD/Y
TD、Y
TD/Y
45°、Y
45°/Y
MDの値はいずれも0.85〜1.20であるとより好ましく、0.9〜1.15であるとさらに好ましく、0.95〜1.10であると特に好ましい。従来のヤング率では表現できない面内方向でのヤング率を等方的に制御する対象として捉えることにより、好適な素子の耐電圧性を得ることが可能となった。また、長手方向のヤング率Y
MDが2.5GPa以上5GPa以下であることが好ましい。5GPaを超えると、0.5〜3μmといった薄いフィルムにおいて搬送工程でのロール間周速差、つまりドローにおいて伸びづらくシワ発生の起因となる場合がある。2.5GPa未満であると、耐電圧性や耐熱性、特に高温でのコンデンサの信頼性が低下する場合がある。そのため2.5GPa以上5GPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは、3GPa以上4.5GPa以下であり、特に好ましくは3.5GPa以上4GPa以下である。さらに、長手方向と幅方向を二等分する45°の方向のヤング率をY
45°としたとき、Y
45°が2.5GPa以上5.0GPa以下であることが好ましい。Y
45°が5.0GPaを超えると、0.5〜3μmといった薄いフィルムにおいて搬送工程でのロール間周速差、つまりドローにおいて伸びづらくシワ発生の起因となる場合がある。2.5GPa未満であると、耐電圧性や耐熱性、特に高温でのコンデンサの信頼性が低下する場合がある。そのため2.5GPa以上5.0GPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは3GPa以上4.5GPa以下であり、特に好ましくは3.5GPa以上4GPa以下である。
【0028】
なお、延伸・熱処理条件を適正に調整することで、Y
MD/Y
TD、Y
TD/Y
45°、Y
45°/Y
MDの値を制御できる。具体的には、縦延伸倍率を上げる、および/または縦延伸温度を下げることでY
MDを上げることができ、横延伸倍率を上げる、および/または横延伸温度を下げることでY
TDを上げることができる。また、縦延伸倍率と横延伸倍率の比を1に近づけるなどすることで、Y
45°を上げることができる。これらの組み合わせで、Y
MD/Y
TD、Y
TD/Y
45°、Y
45°/Y
MDの値を目的とする範囲に制御することが可能となる。さらに、縦延伸倍率を上げることでそれぞれのヤング率の関係を上記の範囲内とするためには、後述するとおり特定の延伸条件下で長手方向に多段延伸することが好ましい。
【0029】
また、本発明のフィルムはメソペンタッド分率が95%以上99%以下であるポリプロピレンを含んでいることが好ましい。99%を超えると、0.5〜3μmといった薄いフィルムにおいては生産性が低下する場合がある。また、フィルムの結晶性が高くなりやすく非晶部の面配向が低下し、室温での耐電圧性が低下する場合がある。95%未満であると、耐電圧性や耐熱性、特に高温でのコンデンサの信頼性が低下する場合がある。そのためポリプロピレンのメソペンタッド分率は95%以上99%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、97.5%以上98.5%以下であり、特に好ましくは98.0%以上98.5%以下である。これにより、コンデンサとしての耐電圧性、耐熱性、信頼性に優れたフィルムを得ることが可能となる。このように立体規則性の高い樹脂を得るには、n−ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、高温での絶縁破壊電圧が高くなるので好ましい。なお、上記のメソペンタッド分率を有するポリプロピレンのフィルム中の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0030】
また、本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサの加工性を更に良好とするため、フィルム表面を適度に粗面化しフィルム層間間隙の均一性、フィルム同士あるいは搬送ロールとのすべり易さを適正化することが好ましい。そのため、いずれの表面の中心線平均粗さ(SRa、JIS B−0601:1982に準ずる)も10nm以上40nm以下であることが好ましい。いずれかの表面の中心線平均粗さ(SRa)が40nmを超えると、フィルムを積層した場合に層間に空気が入り易くコンデンサ素子の劣化につながることがある。またフィルムに金属層を形成したとき金属層に穴アキ等が発生し、高温時の絶縁破壊電圧やコンデンサ寿命、信頼性が低下したり電圧印加時に電荷が集中し、絶縁欠陥の原因となり易い。一方、いずれかの表面のSRaが10nm未満であると、フィルムの滑り性が低下し、ハンドリング性に劣ったり、シワが発生しやすくなりコンデンサとして連続使用時にシワ等の影響で容量変化が大きくなることがある。そのためフィルムの両面の中心線平均表面粗さ(SRa)は、10nm以上40nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは15〜35nmであり、特に好ましくは20〜30nmである。これによりコンデンサ素子工程における巻き取り性、コンデンサとした際の容量変化がより改善され、加工性、コンデンサ特性に優れたフィルムを得ることが可能となる。なお、冷却ドラム温度や引取り速度や延伸条件を適正に調整することで、フィルムの両面の中心線平均表面粗さ(SRa)を制御できる。具体的には、冷却ドラム温度や引取り速度、縦延伸温度を上げることで、フィルムの両面の中心線平均表面粗さ(SRa)を大きくすることが可能となる。
【0031】
上記のように、本発明のフィルムは、耐電圧性、加工性に優れ、しかも長手方向、幅方向の滑り性、長手方向、幅方向のバランスが制御された特徴的な滑り挙動を有するものである。また、このように二軸配向ポリプロピレンフィルムに適正な滑り性を付与すれば、蒸着加工時の欠点も少なく、素子加工時もシワ無く、フィルム層間の適度なクリアランスを保持し、良好なセルフヒーリング性を発現する。これにより、ショート破壊することなくコンデンサ寿命を更に維持でき、保安性を安定的に発揮できるという優れた機能が付与される。
【0032】
本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレンとしては、冷キシレン可溶部(以下CXS)が4質量%以下であるポリプロピレンであることが好ましい。CXSが4質量%を超えた場合、製膜安定性に劣る場合があったり、二軸配向したフィルムを製造する際にフィルム中にボイドが形成される場合があり、寸法安定性および耐電圧性の低下が大きくなる場合がある。
【0033】
ここで冷キシレン可溶部(CXS)とはフィルムを135℃のキシレンで完全溶解せしめた後、20℃で析出させたときに、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性の低い、分子量が低い等の理由で結晶化し難い成分に該当しているものと考えられる。このような成分が多く樹脂中に含まれているとフィルムの熱寸法安定性に劣ったり、高温での絶縁破壊電圧が低下する等の問題を生じることがある。従って、CXSは4質量%以下であることが好ましいが、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。このようなCXSを有するポリプロピレンとするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法等が使用できる。
【0034】
かかるポリプロピレンとしては、より好ましくは溶融流動指数(MFR)が1〜10g/10分(230℃、21.18N荷重)、特に好ましくは2〜5g/10分(230℃、21.18N荷重)の範囲のものが、製膜性、耐電圧性の点から好ましい。溶融流動指数(MFR)を上記の値とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが用いられる。
【0035】
かかるポリプロピレンとしては、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素による共重合成分などを含有してもよいし、プロピレンが単独ではない重合体がブレンドされていてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として例えばエチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。共重合量またはブレンド量は、耐絶縁破壊特性、寸法安定性の点から、共重合量では1mol%未満とし、ブレンド量では20質量%未満とするのが好ましい。
【0036】
また、かかるポリプロピレンには、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることもできる。
【0037】
これらの中で、酸化防止剤の種類および添加量の選定は長期耐電圧性の観点から重要である。すなわち、かかる酸化防止剤としては立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。その具体例としては種々のものが挙げられるが、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)とともに1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えばBASFジャパン社製Irganox(登録商標)1330:分子量775.2)またはテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えばBASFジャパン社製Irganox1010:分子量1177.7)等を併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン全量に対して0.03〜1.0質量%の範囲が好ましい。酸化防止剤が少なすぎると長期耐電圧性に劣る場合がある。酸化防止剤が多すぎるとこれら酸化防止剤のブリードアウトによる高温下でのブロッキングにより、コンデンサ素子に悪影響を及ぼす場合がある。より好ましい含有量は0.1〜0.9質量%であり、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0038】
また本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、高電圧性の観点から分岐鎖状ポリプロピレン(H)を含有させてもよく、含有せしめる場合その含有量は0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%であることが好ましい。上記分岐鎖状ポリプロピレン(H)を含有させることで溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成する球晶サイズを容易に小さく制御でき、延伸工程で生成する絶縁欠陥の生成を小さく抑え、耐電圧性、滑り性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【0039】
本発明のフィルムは、上記分岐鎖状ポリプロピレン(H)と、それ以外のポリプロピレンとの混合物により構成されていてもよく、分岐鎖状ポリプロピレン(H)以外のポリプロピレンとしては、直鎖状ポリプロピレンであることが好ましい。
【0040】
また、分岐鎖状ポリプロピレン(H)は、230℃で測定したときの溶融張力(MS)と溶融流動指数(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)であることが特に好ましい。
【0041】
230℃で測定したときの溶融張力(MS)と溶融流動指数(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)を得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法(特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法)、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法等が好ましく用いられる。
【0042】
ここで、230℃で測定したときの溶融張力とは、JIS−K7210(1999)に示される溶融流動指数(MFR)測定に準じて測定されるものである。具体的には、東洋精機株式会社製メルトテンションテスターを用いて、ポリプロピレンを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出してストランドとし、このストランドを6.4m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力(単位cN)とする。また、230℃で測定したときの溶融流動指数(MFR)とは、JIS−K7210(1999)に準じて荷重21.18Nで測定されたもの(単位g/10分)である。
【0043】
上記の分岐鎖状ポリプロピレン(H)としては、上式を満たすことが好ましいが、特に限定されるものではなく、製膜性の観点から溶融流動指数(MFR)は1〜20g/10分の範囲にあるものが好ましく、1〜10g/10分の範囲にあるものがより好ましい。また溶融張力については、1〜30cNの範囲にあるものが好ましく、2〜20cNの範囲にあるものがより好ましい。また、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレン(H)とは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンである。この内部3置換オレフィンの存在は
1H−NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。
【0044】
本発明においては、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤を添加することができる。既述の通り、分岐鎖状ポリプロピレン(H)は既にそれ自身でα晶またはβ晶の結晶核剤効果を有するものであるが、別種のα晶核剤(ジベンジリデンソルビトール類、安息香酸ナトリウム等)、β晶核剤(1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウム、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド等のアミド系化合物、キナナクリドン系化合物等)等が例示される。但し、上記別種の核剤の過剰な添加は延伸性の低下やボイド形成等による耐電圧性の低下を引き起こす場合があるため、含有量は通常0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0045】
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、コンデンサ用誘電体フィルムとして好ましく用いられるものであるが、コンデンサのタイプに限定されるものではない。具体的には電極構成の観点では箔巻きコンデンサ、金属蒸着膜コンデンサのいずれであってもよいし、絶縁油を含浸させた油浸タイプのコンデンサや絶縁油を全く使用しない乾式コンデンサにも好ましく用いられる。また、形状の観点では、巻回式であっても積層式であっても構わない。しかしながら本発明のフィルムの特性から特に金属蒸着膜コンデンサとして好ましく使用される。
【0046】
なお、ポリプロピレンフィルムは通常、表面エネルギーが低く、金属蒸着を安定的に施すことが困難であるために、金属付着力を良好とする目的で、事前に表面処理を行うことが好ましい。表面処理とは具体的にコロナ放電処理、プラズマ処理、グロー処理、火炎処理等が例示される。通常ポリプロピレンフィルムの表面濡れ張力は30mN/m程度であるが、これらの表面処理によって、濡れ張力を37〜50mN/m、好ましくは39〜48mN/m程度とすることが、金属膜との接着性に優れ、保安性も良好となるので好ましい。
【0047】
本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述した特性を与えうる原料を用い、表面粗さを調整するとともに、延伸・熱処理条件を適正に調整し、二軸延伸されることによって得られる。冷却ドラム温度や引取り速度や延伸温度を適正に調整することで、動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの値の大小を制御し、延伸・熱処理条件を適正に調整することで、μdm/μdtを制御できる。具体的には、冷却ドラム温度、引取り速度、縦延伸温度をそれぞれについて適宜上げることが、動摩擦係数μdmと動摩擦係数μdtの値を小さくするのに好ましい。縦延伸倍率を上げる、横延伸倍率を下げることで、μdm/μdtの値を大きくすることが可能となる。
【0048】
二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法、ステンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、延伸性、強度、滑り性等のフィルム物性の等方性を制御する点においてステンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0049】
次に本発明のコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0050】
まず、ポリプロピレンを溶融押出し、濾過フィルターを通した後、235〜255℃の温度でスリット状口金から押出し、冷却ドラム上で固化させ未配向シートを得る。ここで、本発明のフィルムを得るため、β晶を適正に生成せしめる目的で、冷却ドラムの温度制御を適切に行うことが好ましい。β晶を効率的に生成せしめるためには、β晶の生成効率が最大となる樹脂温度に所定時間維持することが好ましく、該温度は通常115〜135℃である。また保持時間としては1秒以上保持することが好ましい。これらの条件を実現するためには樹脂温度や押出量、引き取り速度等に応じて適宜プロセスを決定することができるが、生産性の観点からは、冷却ドラムの径が保持時間に大きく影響するために、該ドラムの直径は少なくとも1m以上であることが好ましい。更に、選定すべき冷却ドラム温度としては上述のように他の要素が影響するためにある程度の任意性を含むものの、80〜120℃であることが好ましく、更に好ましくは80〜110℃、特に好ましくは85〜100℃の範囲である。冷却ドラム温度が高すぎるとフィルムの結晶化が進行しすぎ、後の工程での延伸が困難になったり、フィルム内にボイドができ耐絶縁破壊特性が低下する場合がある。冷却ドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表裏の熱収縮特性や表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。
【0051】
エアーナイフのエアー温度は、35〜120℃であることが好ましく、更に好ましくは40〜110℃、特に好ましくは45〜100℃の範囲である。エアーナイフのエアー温度が高すぎるとフィルムの結晶化が進行しすぎ、後の工程での延伸が困難になったり、フィルム内にボイドができ耐絶縁破壊特性が低下する場合がある。また、エアーナイフのエアー温度が低すぎると結晶生成が不十分となり目的とする熱収縮応力や表面の粗化度、滑り性を得ることが困難となる場合がある。
【0052】
また、エアーナイフの吹き出しエアー速度は、130〜150m/sが好ましく、幅方向均一性を向上させるためにエアーナイフの内部構造が2重管構造となっていることが好ましい。エアー速度が、130m/s未満の場合は十分な冷却ドラムとの密着性が付与できず製膜性が低下し、150m/sを超える場合には、均一な冷却ドラムへの密着ができず製膜性、品質ムラ、厚みムラ等の弊害が生じやすい。また、フィルムの振動を生じさせないために製膜下流側にエアーが流れるようにエアーナイフの位置を調整することが好ましい。
【0053】
次に、この未配向フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。未延伸フィルムを120〜145℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを130℃〜148℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通して、延伸を行うことが好ましく、さらに、延伸部においてラジエーションヒーターで1〜15kWの出力にて、フィルム全面あるいは一部分に熱量を与え補うことで生産性が良好となる。延伸倍率は、特に限定されず、用いられるポリマーの特性によって適宜選択される。好ましい延伸倍率はフィルム長手方向とフィルム幅方向にそれぞれ5〜11倍であり、より好ましくは6〜9倍が適当である。また、二軸延伸後、フィルム長手方向またはフィルム幅方向、あるいはフィルム長手方向とフィルム幅方向に再延伸してもよい。特に動摩擦係数を本発明の上述の範囲内にするには、フィルム長手方向の総延伸倍率がフィルム幅方向の総延伸倍率の好ましくは0.7〜1.0倍、より好ましくは0.8〜1.0倍にし、さらには再延伸をフィルム長手方向またはフィルム幅方向、あるいはフィルム長手方向とフィルム幅方向にそれぞれ1.03〜1.50倍に再度延伸することが好ましい。特に、逐次二軸延伸にて長手方向の総延伸倍率を幅方向の総延伸倍率の0.7〜1.0倍で延伸することが肝要であり、これにより動摩擦係数を本発明の上述の範囲内とすることが可能となる。この場合、長手方向の延伸方法は、とくに限定されないが、段階的に延伸する多段延伸による方法が生産性、加工性、品質面から好ましい。多段延伸とは、一挙に延伸するものではなく段階を経て2段階以上に渡って延伸する方法(延伸区間が2つ以上ある工程)であり、1度目の延伸の後に2度目以降の延伸を行うことで長手方向の総延伸倍率を目的とする倍率に容易に上げることが可能となり、総延伸倍率が、6〜11倍といった高倍率の延伸が安定して可能となる。このように多段延伸による縦延伸工程を実施することで縦一軸延伸後のフィルムの長手方向への配向が高まり、その後の横延伸工程を経ても長手方向の配向は維持されたままとなるため、μdm/μdtを本発明の好ましい範囲に制御しやすくなる。なお、長手方向の多段延伸を実施する方法としては、1度目の延伸直後に2度目の延伸を行なうことが好ましく、一度幅方向に延伸した後に長手方向の2度目の延伸を実施しようとしても延伸が困難な場合がある。延伸倍率は、1度目の延伸倍率が4.0〜6.5倍であると2度目以降の延伸において安定し、さらに生産性が良好となる。その後、引き続き該延伸フィルムをテンターに導いて、130〜160℃の温度で幅方向に5〜11倍に延伸する。
【0054】
なお、再縦延伸する場合は、130℃〜160℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通して、延伸速度を100%/分〜1,500,000%/分で延伸することが好ましく、より好ましくは200%/分〜150,000%/分であると更によい。
【0055】
なお、再横延伸する場合は、130℃〜160℃の温度で、延伸速度を50%/分〜15,000%/分で延伸することが好ましく、より好ましくは100%/分〜7,500%/分であると更によい。
【0056】
上記の通り延伸を行なった結果のトータルの延伸倍率(所謂面積倍率)は、安定製膜性とコンデンサ特性の両立の観点で40〜100倍であることが好ましく、40〜90倍であるとより好ましく、45〜80倍であるとさらに好ましく、45〜75倍であると特に好ましい。面積倍率が100倍を超えると、延伸工程においてフィルム破断が生じることがある。一方、40倍未満であると、コンデンサ特性に劣ることがある。
【0057】
さらに、本発明においては、二軸延伸後のフィルムを熱処理することが好ましい。熱処理温度は、耐電圧向上の点で、フィルム温度130℃〜160℃の範囲で2〜10秒間行うことが好ましい。さらに好ましくは、2〜4秒間行うことで耐電圧が向上する。熱処理に引き続き、弛緩処理を1〜20%の範囲で行うことが好ましく、さらに好ましくは3〜15%の範囲で行うことでフィルムの熱収縮挙動を制御し耐電圧性、加工性が良好となる。熱処理して得られたポリプロピレンフィルムを冷却工程にて冷却温度50℃〜150℃の範囲で1〜5秒間冷却を行うことで耐電圧が向上する。さらには、一旦室温程度まで冷却した後、さらに40〜70℃の範囲の温度で、5秒から1週間程度エージングすることも好ましい方法である。エージングを行なうことにより、耐電圧性をさらに良好とすることができる。ポリプロピレンフィルム表面に金属膜を設ける場合は、エージングは、金属膜を設けた後に行なってもよい。
【0058】
フィルムを巻き取る前に蒸着を施す面に蒸着金属の接着性を良くするために、空気中、窒素中、炭酸ガス中あるいはこれらの混合気体中でコロナ放電処理を行いフィルムを得ることが好ましい。
【0059】
本発明において、上記したコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルム表面に金属膜を設けて金属積層フィルムとする方法は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に、アルミニウムを蒸着してフィルムコンデンサの内部電極となるアルミニウム蒸着膜等の金属膜を設ける方法が好ましく用いられる。このとき、アルミニウムと同時あるいは逐次に、例えば、ニッケル、銅、金、銀、クロムおよび亜鉛などの他の金属成分を蒸着することもできる。また、蒸着膜上にオイルなどで保護層を設けることもできる。
【0060】
金属膜の厚さは、フィルムコンデンサの電気特性とセルフヒール性の点から20〜100nmの範囲であることが好ましい。また、同様の理由により、金属膜の表面電気抵抗値は1〜20Ω/□の範囲であることが好ましい。表面電気抵抗値は、使用する金属種と膜厚で制御可能である。なお、表面電気抵抗値の測定法は後述する。
【0061】
本発明では、必要により、金属膜を形成後、金属積層フィルムを特定の温度でエージング処理を行なったり、熱処理を行なったりすることができる。また、絶縁もしくは他の目的で、金属積層フィルムの少なくとも片面に、ポリフェニレンオキサイドなどのコーティングを施すこともできる。
【0062】
このようにして得られた金属積層フィルムは、種々の方法で積層もしくは巻回してフィルムコンデンサを得ることができる。巻回型フィルムコンデンサの好ましい製造方法を例示すると、次のとおりである。
【0063】
ポリプロピレンフィルムの片面にアルミニウムを真空蒸着する。その際、フィルム長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着する。次に、表面の各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、表面が一方にマージンを有した、テープ状の巻き取りリールを作成する。左もしくは右にマージンを有するテープ状の巻き取りリールを左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部よりはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、巻回体を得る。この巻回体から芯材を抜いてプレスし、両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサを得ることができる。フィルムコンデンサの用途は、鉄道車両用、一般家電用(テレビや冷蔵庫など)、自動車用(ハイブリットカー、電気自動車等含む)および風力発電、太陽光発電用等、多岐に亘っており、本発明のフィルムコンデンサもこれら用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
【0065】
(1)長手方向の動摩擦係数(μdm)、幅方向の動摩擦係数(μdt)
荷重時の接触面積および測定方向以外は、JIS-K7125(1999)に準拠して測定するものとする。詳細は下記の通りである。
【0066】
1枚のフィルムを以下の方法で滑らせる際に観測される摩擦力からすべり係数を求める。
【0067】
<サンプル調製>
長手方向の動摩擦係数(μdm)では、サンプルを測定方向(長手方向):200mm、測定方向と直角の方向:80mmのサイズに切り出し、幅方向の動摩擦係数(μdt)では、サンプルを測定方向(幅方向):200mm、測定方向と直角の方向:80mmのサイズに切り出し、フィルムサンプルを23℃、相対湿度65%の雰囲気で24時間以上調湿する。
【0068】
<摩擦力の測定>
次いで該サンプル2枚を重ね(一方の面と他方の面とを接触させ重ねる)、更に、荷重(質量200g、底面積50mm×50mmの正方形)を乗せた上で、一方のフィルムを短冊の測定方向に引き取る(引き取り速度:100mm/分)際の摩擦力を測定する。摩擦力はフィルムが滑り始める臨界点で観測される静摩擦力と、引き取り中に観測される動摩擦力に区分され、それぞれ摩擦力R(g)をチャートより読みとり、すべり係数=R(g)/200(g)とする。本測定を3回繰り返し、その平均値を求める。
【0069】
(2)フィルム厚み(μm)
JIS C−2330(2001)の7.4.1.1に従い、マイクロメータ法厚みを測定した。
【0070】
(3)長手方向のヤング率(Y
MD)、幅方向のヤング率(Y
TD)、長手方向と幅方向の中間の角度である斜め方向のヤング率(Y
45°)
ヤング率は、株式会社オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTA−100)を用いて、23℃、65%RHにて測定した。サンプルを測定方向(長手方向または幅方向):25cm、測定方向と直角の方向:1cmのサイズに切り出し、原長100mm、引張り速度300mm/分で伸張して、ヤング率は、JIS−Z1702(1994)に規定された方法に従い測定した。
【0071】
(4)メソペンタッド分率(mmmm)
試料を溶媒に溶解し、
13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
【0072】
A.測定条件
装置:Bruker社製、DRX−500
測定核:
13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行った。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、更に付属ソフトの自動フィッテイングを行い、ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計をメソペンタッド分率(mmmm)とした。
尚、測定は5回行い、その平均値をメソペンタッド分率とした。
【0073】
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm 。
【0074】
(5)内部3置換オレフィン個数
試料を溶媒に溶解し、
1H−NMRを用いて、以下の条件にて内部3置換オレフィンの個数を求めた。
【0075】
A.測定条件
装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置
測定核:
1H核(共鳴周波数:500MHz)
測定濃度:2wt%
溶媒:重オルトジクロロベンゼン
測定温度:120℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:7秒
換算回数:512回
測定モード:non decoupling
B.解析条件
オルトジクロロベンゼンの化学シフト7.10ppmを基準とし、5.0〜5.2ppm領域のシグナルを内部3置換オレフィンのプロトンと帰属し、0.5〜2.0ppmのブロードなシグナルとの積分比から内部3置換オレフィンのプロトン比を求めた。
【0076】
(6)中心線表面粗さ(SRa)
JIS B−0601(1982)により、株式会社小坂研究所製「非接触三次元微細形状測定器(ET−30HK)」及び「三次元粗さ分析装置(MODEL SPA−11)」を用いて測定した。フィルム測定には専用のサンプルホルダーを使用した。サンプルホルダーは中心に円形の穴が空いた脱着可能な2枚の金属板であり、その間にサンプルを挟んでサンプルホルダーの四方までフィルムを張って装着することでフィルムを固定し、中央円形部のフィルム粗さを長手方向に10回繰り返し、その平均値として中心線平均粗さ(SRa)を求めた。
【0077】
A.測定条件
測定面処理:測定面にアルミニウムを真空蒸着し、非接触法とした。
【0078】
測定方向:フィルムの幅方向
幅方向送り速度:0.1mm/秒
測定範囲(幅方向×長さ方向):1.0mm×0.249mm
高さ方向寸法の基準面:LOWER(下側)
幅方向サンプリング間隔:2μm
長さ方向サンプリング間隔:10μm
長さ方向サンプリング本数:25本
カットオフ:0.25mm
幅方向拡大倍率:200倍
長さ方向拡大倍率:20,000倍
うねり、粗さカット:なし
(7)溶融流動指数(MFR)
JIS−K7210(1999)に準じて、測定温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
【0079】
(8)溶融張力(MS)
JIS−K7210(1999)に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。東洋精機株式会社製メルトテンションテスターを用いて、ポリプロピレンを230℃に加熱し、溶融ポリプロピレンを押出速度15mm/分で吐出しストランドとし、このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力とした。
【0080】
(9)冷キシレン可溶部(CXS)
ポリプロピレンフィルム試料0.5gを135℃のキシレン100mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶化させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量する(X(g))。試料0.5gの精量値(X0(g))を用いて以下の式で求めた。
【0081】
CXS(質量%)=(X/X0)×100
(10)金属膜の電気抵抗
金属積層フィルムを長手方向に10mm、幅方向に全幅(50mm)の長方形にカットして試料とし、4端子法により、幅方向30mm間の金属膜の抵抗を測定し、得られた測定値に測定幅(10mm)を乗じて電極間距離(30mm)を除して、10mm×10mm当たりの電気抵抗値を算出した(単位:Ω/□)。
【0082】
(11)フィルム絶縁破壊電圧(V/μm)
JIS C2330(2001)7.4.11.2 B法(平板電極法)に準じて、平均値を求め、測定したサンプルのマイクロメータ法フィルム厚み(μm)(上述)で除し、V/μmで表記した。
【0083】
(12)コンデンサ製造の際の素子加工性(素子巻収率)
後述する各実施例および比較例で得られたポリプロピレンフィルムの片面に、株式会社ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が8Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状に蒸着した(蒸着部の幅39.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)。
【0084】
次に各蒸着部の中央と各マージン部の中央に刃を入れてスリットし、左もしくは右に0.5mmのマージンを有する全幅20mmのテープ状に巻き取りリールにした。得られたリールの左マージンおよび右マージンのもの各1本ずつを、幅方向に蒸着部分がマージン部より0.5mmはみ出すように2枚重ね合わせて巻回し、静電容量約10μFの丸型素子を得た。素子巻回には株式会社皆藤製作所製KAW−4NHBを用いた。上記コンデンサ製造の際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、シワやずれが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数を製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした(以下素子巻収率と称する)。素子巻収率は高いほど好ましい。95%以上を良好「A」、95%未満80%以上を「B」、80%未満を不良「C」とした。「A」または「B」が実用可能なレベルである。製造数は、50個の素子で評価実施した。
【0085】
(13)高温ライフ評価(コンデンサ信頼性評価)
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、株式会社ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が8Ω/□で長手方向に垂直な方向にマージン部を設けた所謂T型マージンパターンを有する蒸着パターンを施し、幅50mmの蒸着リールを得た。
【0086】
次いで、このリールを用いて株式会社皆藤製作所製素子巻機(KAW−4NHB)にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、減圧下、140℃の温度で10時間の熱処理を施し、リード線を取り付けてコンデンサ素子を仕上げた。このときのコンデンサ素子の静電容量は10μFであった。
【0087】
こうして得られたコンデンサ素子作成直後の静電容量(C0)を測定し、次いで125℃のオーブン中で250VDC/μmを印加し、200時間経過後の静電容量(C1)を測定して、次式で容量変化率(ΔC/C)を求めた。容量変化率は±5%以内であることが好ましい。製造数は、10個の素子で評価実施したものであり、平均値で表記した。
【0088】
ΔC/C(%)=((C1−C0)/C0)×100
(14)高温耐電圧特性
JIS C2330(2001)に準じて、125℃に温調した熱風オーブン中に電極を設置し、二軸配向ポリプロピレンフィルムの絶縁破壊電圧を測定した。なお、本測定を5回行い、その平均値を求め、上記で求めたフィルム厚みで除して1μm当たりの高温絶縁破壊電圧(V/μm)を求めた。高温耐電圧特性は、上記高温絶縁破壊電圧を下記の基準により評価した。
【0089】
A:450V/μm以上
B:400V/μm以上、450V/μm未満
C:400V/μm未満
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
【0090】
(実施例1)
直鎖状ポリプロピレンとしてメソペンタッド分率が97.9%で、溶融流動指数(MFR)が2.6g/10分であるプライムポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂を温度250℃の押出機に供給し、樹脂温度250℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持された直径1mの冷却ドラム上で、エアーナイフ温度90℃、エアー速度140m/sで冷却固化した。次いで、該シートを、145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に1度目に5.0倍、2度目に1.3倍の計6.5倍に多段延伸した。その際、1段目の配向部でラジエーションヒーター出力4.0kWを用い熱量を補い延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、延伸温度160℃で幅方向に6.5倍延伸し、次いで、熱固定温度150℃、冷却温度140℃で熱処理を行ない、その後室温で5秒間急冷してフィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに冷却ドラム接触側の表面に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「A」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0091】
(実施例2)
直鎖状ポリプロピレンとしてメソペンタッド分率が97.9%で、MFRが2.6g/10分であるプライムポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂を温度250℃の押出機に供給し、樹脂温度250℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持された直径1mの冷却ドラム上で、エアーナイフ温度90℃、エアー速度140m/sで冷却固化した。次いで、該シートを、148℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に1度目に5.0倍、2度目に1.4倍の計7.0倍に多段延伸した。その際、1段目の配向部でラジエーションヒーター出力7.0kWを用い熱量を補い延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、延伸温度160℃で幅方向に8.0倍延伸し、次いで、熱固定温度150℃、冷却温度140℃で熱処理を行ない、その後室温で5秒間急冷してフィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに冷却ドラム接触側の表面に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「A」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−3%であった。
【0092】
(実施例3)
直鎖状ポリプロピレンとしてメソペンタッド分率が97.9%で、MFRが2.6g/10分であるプライムポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂を温度250℃の押出機に供給し、樹脂温度250℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持された直径1mの冷却ドラム上で、エアーナイフ温度90℃、エアー速度140m/sで冷却固化した。次いで、該シートを、148℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に1度目に5.0倍、2度目に1.25倍の計6.25倍に多段延伸した。その際、1段目の配向部でラジエーションヒーター出力5.0kWを用い熱量を補い延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、延伸温度160℃で幅方向に10.0倍延伸し、次いで、熱固定温度150℃、冷却温度140℃で熱処理を行ない、その後室温で5秒間急冷した。その後、150℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、延伸速度1,600%/分で再度1.2倍を長手方向に延伸し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに冷却ドラム接触側の表面に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−2%であった。
【0093】
(実施例4)
冷却ドラム温度を80℃としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−4%であった。
【0094】
(実施例5)
冷却ドラム温度を110℃としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0095】
(実施例6)
冷却ドラム温度を120℃としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0096】
(実施例7)
長手方向の1度目の延伸倍率を6.0倍、2度目の延伸倍率を1.5倍、幅方向の延伸倍率を9.0倍としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「A」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−2%であった。
【0097】
(実施例8)
長手方向の1度目の延伸倍率を6.5倍、2度目の延伸倍率を1.54倍、幅方向の延伸倍率を10.0倍としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−1%であった。
【0098】
(実施例9)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが1.2μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「A」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0099】
(実施例10)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが1.0μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−4%であった。
【0100】
(実施例11)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが0.5μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−4%であった。
【0101】
(実施例12)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが2.5μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0102】
(実施例13)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが3.0μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−5%であった。
【0103】
(比較例1)
ポリプロピレンとしてメソペンタッド分率が97.9%で、MFRが2.6g/10分であるプライムポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂を温度250℃の押出機に供給し、樹脂温度250℃でT型スリットダイよりシート状に溶融押出し、該溶融シートを90℃に保持された直径1mの冷却ドラム上で、エアーナイフ温度90℃、エアー速度140m/sで冷却固化した。次いで、該シートを、145℃の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に1度目に5.0倍に一段延伸した。引き続き該フィルムをテンターに導き、延伸温度160℃で幅方向に10.0倍延伸し、次いで、熱固定温度150℃、冷却温度140℃で熱処理を行ない、その後室温で5秒間急冷してフィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。さらに冷却ドラム接触側の表面に25W・min/m
2の処理強度で大気中でコロナ放電処理を行った。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「C」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−6%であった。
【0104】
(比較例2)
冷却ドラム温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「C」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−4%であった。
【0105】
(比較例3)
長手方向の延伸温度を128℃としたこと以外は実施例1と同様に作製した。結果、フィルム破断が多発し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。
【0106】
(比較例4)
長手方向の延伸の際にラジエーションヒーター出力を0kWとした以外は実施例1と同様に作製した。結果、フィルム破断が多発し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。
【0107】
(比較例5)
長手方向の延伸の際に多段延伸を実施せず、一挙に6.5倍で延伸したこと以外は実施例1と同様に作製した。結果、フィルム破断が多発し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。
【0108】
(比較例6)
長手方向の延伸の際に多段延伸を実施せず、一挙に5.5倍で延伸し、幅方向の延伸倍率を7.5倍としたこと以外は実施例1と同様に作製し、フィルム厚みが1.8μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「C」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−3%であった。
【0109】
(比較例7)
長手方向の1度目の延伸倍率を3.5倍、2度目の延伸倍率を1.86倍としたこと以外は実施例1と同様に作製した。結果、フィルム破断が多発し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得ることができなかった。
【0110】
(比較例8)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが0.4μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「C」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−8%であった。
【0111】
(比較例9)
二軸配向ポリプロピレンフィルムのフィルム厚みが3.1μmとなるように溶融押出量を変更したこと以外は実施例1と同様に作製し、二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。こうして得られた二軸配向ポリプロピレンフィルムを用いたコンデンサ製造の際の素子加工性は「B」であり、コンデンサ信頼性評価における容量変化率は−6%であった。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
長手方向の動摩擦係数をμdmとし、幅方向の動摩擦係数をμdtとしたとき、μdmおよびμdtがいずれも0.60〜1.70の範囲内にあり、かつμdmとμdtの比(μdm/μdt)の値が0.75以上1.15未満であり、マイクロメータ法によるフィルム厚みが、0.5〜3μmの範囲内であるコンデンサ用二軸配向ポリプロピレンフィルム。