【実施例】
【0019】
図1に示すように、本発明の安全制御装置100は外部機器4に接続されている。安全制御装置100にはCPU部1、安全制御部2、出力部3が搭載されている。なお、CPU部1を演算部ともいう。
【0020】
また、不図示ではあるがCPU部1は中央演算部(CPU)やプログラムメモリ、そして作業メモリなどが備えられている。CPU部1はプログラムメモリに保持されたプログラムを実行することにより外部機器4を制御するための制御指令を生成し、出力部3に与える。CPU部1によって生成された制御指令を受けた出力部3は、制御指令に基づき外部機器4を制御する。このような仕組みによって、安全制御装置100は外部機器4を制御する(通常の制御)。
【0021】
また、CPU部1は自己が正常に動作していること、すなわち健全性を通知するための信号(トリガA)を出力する第1トリガ出力手段1aを備える。また、CPU部1はトリガAが出力された後、所定の時間以内に再び自己の健全性を通知するための信号(トリガB)を出力する第2トリガ出力手段1bを備えている。そして、CPU部1によって出力されたトリガAおよびトリガBそれぞれの信号は安全制御部2に与えられている。さらにCPU部1はリセットを出力して安全制御部2の機能をオンオフすることができる。
【0022】
続いて、
図2と
図3を参照しながら、CPU部1および安全制御部2、そして出力部3の詳細な動きを説明する。
図2に示す安全制御部2のIC1はモノステーブルマルチバイブレータであり、該IC1に接続されるコンデンサC1と抵抗R1によって出力幅が決定されたウィンドウパルス(第1のウィンドウ信号)を生成する。ここでは、ウィンドウパルス幅をtaとする。この回路を第1ウィンドウ信号生成部ともいう。
【0023】
IC4はIC1と同様モノステーブルマルチバイブレータであり、コンデンサC2と抵抗R2によって出力幅が決定された制御パルス(第2のウィンドウ信号)を生成する。この制御パルス幅をtbとする。
【0024】
IC2はデコーダ(3-to-8 Line Decoder:74VHC138など)であり、CPU部1から出力された3ビットの符号(トリガB)をA〜Cに入力する。このトリガBの符号は0から7までのコード化された数値であるが、本実施例ではトリガBとして”2”のコードが入力されたとき、IC2のデコード作用が有効になるように安全制御部2を構成している。すなわち、IC2は、該IC2のA〜Cに入力されるトリガBに対して、コード”2”を有効としデコードする。例えば、IC2のA〜Cに入力された符号が「0」であったとき、その出力としては*Y0が出力され、IC2のA〜Cに入力された符号が「1」であったとき、その出力としては*Y1が出力されるため、これらの出力は出力先がなく、本実施例においては無効のデコードとして扱われる。
【0025】
なお、デコード回路(IC2)と制御パルスの生成回路(IC4)、そしてIC3を含んだ回路を第2ウィンドウ信号生成部ともいう。
これら回路で構成される安全制御部2は、CPU部1によって出力されたトリガAがIC1に入力され、CPU部1によって出力されたトリガBがIC2の入力A〜Cに入力される。また、IC4の出力、すなわち制御パルスは安全制御部2が出力する安全信号(安全パルス)としてIC7を介して出力され、出力部3に入力されている。
【0026】
IC5、IC6はDフリップフロップである。トリガAが入力されるとIC5はその周辺の回路とによってトリガAを保持(ラッチ)し、トリガBが入力されることでそのラッチを解除する(第1トリガ保持部22)。すなわち、第1トリガ保持部22は第1トリガを受信して保持しこの保持された信号を第2トリガの受信によりリセットする。
【0027】
IC6およびIC7を含む回路は安全信号出力部23である。IC6はIC5によってトリガAがラッチされている間に再びトリガAを入力することで、トリガAが不要に発振したと判断し、”H”を出力する回路である。IC6の出力は一旦”H”が出力されると保持される。そして、IC7はIC6の出力を入力しており、IC7の出力が”H”のときにIC4によって出力される制御パルスを安全パルスとして出力することを阻止する。すなわち、安全信号出力部23は第1トリガ保持部22の出力がリセット状態のとき制御パルスを安全パルスとして出力し、第1トリガ保持部22の出力が第1トリガを保持した状態のときに第1トリガを受信することにより、その後、制御パルスを安全パルスとして出力することを阻止し続ける。
【0028】
続いて、安全制御部2の動きについて
図3を用いて説明する。
CPU部1は、先ず、リセット信号を”L”から”H”にして、IC1およびIC4をリセット状態から解除し、安全制御部2の機能をオンにしている(
図3の区間p0)。
【0029】
続いて、区間p1において、CPU部1はパルス状の信号のトリガAを出力し、安全制御部2に与えている。IC5は該IC5のD端子に接続されたゲート回路を介してトリガAを受信し、その出力を”H”にして保持している。その後、トリガBが受信されIC2の*Y2が出力されることによって、IC5はその出力をクリアしている。一方、IC6はトリガAを受信したタイミングのとき、IC5の出力が”L”である、すなわちIC5がトリガAをラッチしていないので、その出力を”L”としている。
【0030】
また、IC1はトリガAを受信することによりta時間”L”を出力し、ta時間経過後”H”を出力している。CPU部1は、トリガAを出力した後のta時間の間、すなわちIC1が”L”を出力している間に、符号化されたトリガB(コード”2”)を出力している。トリガB(コード”2”)はIC2によってデコードされ、IC2の出力*Y2が”L”に出力されている。IC3はIC1の*Q出力とIC2の*Y2出力とのANDをとって”H”のパルスを出力している。このパルスを受けたIC4は、この時点を起点に”H”を出力し、tb時間”H”を出力し続けるように作動している。IC4の出力はIC7を介して安全パルスとして”H”出力されており、前述のようにIC6の出力が出力されてない、すなわちIC6が”L”を出力していることを条件に出力される。
【0031】
安全制御部2から出力された安全パルス”H”を受けた出力部3は、CPU部1から与えられた制御指令に基づき通常の制御を実行する通常モードとして動作している(不図示)。
【0032】
続いて、区間p2,p3において、CPU部1の動きは区間p1と同様である。また安全制御部2の動きも区間p2と同様であり、IC3がパルス状の出力を出力している。このパルスを受けてIC4はリトリガされ、このリトリガ時点を起点にtb時間の”H”を出力するように作動している。よって、出力部3は通常モードを維持している。
【0033】
続いて、区間p4において、CPU部1はトリガAを出力した後、ta時間を超過して、すなわちIC1が”L”を出力している間に間に合わず、トリガB(コード”2”)を出力している。このときトリガB(コード”2”)はIC2によってデコードされ、IC2の出力*Y2が”L”に出力されている。IC3はIC1の*Q出力とIC2の*Y2出力とのANDをとるため、その出力は出力されず”L”のままである。IC4は、IC3からのパルス状の信号を受けないためリトリガされない。リトリガされないIC4は、区間p3でのリトリガ時点を起点に、tb時間”H”を出力した後”L”を出力している。従って、安全パルスも同様”L”になる。
【0034】
このように、IC3の出力がパルス状に出力されないと、IC4の機能がリトリガを含め作動されず、IC4の出力は”L”になり、安全パルスも”L”になる。不図示ではあるが、安全パルス”L”を受信した出力部3は、CPU部1から制御指令が与えられても、その制御を実行せず、その出力を安全側に出力している(安全モード)。
【0035】
すなわち、安全制御部2はトリガA(第1トリガ)の入力によって生成されるta時間のウィンドウ時間中に、トリガB(第2トリガ)が入力されることで出力部3の制御出力が有効となるように作用する。一方、安全制御部2は生成したウィンドウ時間中(ta時間)にトリガB(第2トリガ)が入力されないと出力部3の制御出力が安全側になるように作用する。
【0036】
続いて、区間p5を説明する。CPU部1はトリガAを出力した後にトリガBを出力せず、トリガAを繰り返し出力している。このような事象は突発的な不具合によりCPU部1がプログラムを正常に実行できない場合などに起こる。通常であれば、IC5はトリガAをラッチした後にトリガBを受信することでトリガAのラッチを解除するが、この例の場合には、トリガBを受信せずトリガAを再び受信している。こうなると、IC6は、IC5によるトリガAのラッチが保持されたままトリガAを受信することになるため、該受信によってその出力を”H”にしている。IC6の出力が一旦”H”になると、IC6のD端子に接続されたORゲートを介してそのD端子に”H”がフィードバックされるので、IC6は”H”を出力し続ける。この後、CPU部1からトリガB(コード”2”)が出力されてIC3がパルス状の信号をIC4に与えている。この結果、IC4が”H”を出力しているが、IC6の”H”出力によってIC7による安全パルスの出力条件が成立せず、安全パルスの出力がマスクされている。
【0037】
このように、IC6の出力が”H”になると、IC7による安全パルスの出力条件が成立せず、安全パルスは強制的に”L”になる。すなわちIC6の出力が”H”になると、IC7を介して安全パルスとして出力されるIC4の出力(制御パルス)の出力が阻止(マスク)し続けされ、安全パルスは強制的に”L”になる。
【0038】
続いて、
図2を参照しながらCPU部1の詳細な動きを説明する。CPU部1は、第1トリガ出力手段1aおよび第2トリガ出力手段1bが組み込まれたプログラム11を実行して、外部機器4を制御するための制御指令を生成し出力部3に転送する。この転送された制御指令に基づき出力部3は外部機器4を制御する。
【0039】
スタート後、CPU部1は第1トリガ出力手段1aを実行し、所定のプログラムステップを実行した後に第2トリガ出力手段1bを実行する。この後、CPU部1はプログラム11の残りのプログラムステップを実行して再び第1トリガ出力手段1aを実行するようにプログラム11を順次実行している。プログラム11は例えば10ms周期でサイクリックに実行されており、第1トリガ出力手段1aおよび第2トリガ出力手段1bはプログラム11の実行に際しそれぞれ1回実行される。なお、第2トリガ出力手段1bは複数回実行されても良い。
【0040】
CPU部1はプログラム11を順次実行する際、第1トリガ出力手段1aによってパルス状の信号のトリガAを出力し、第2トリガ出力手段1bによってコード化されたトリガBを出力する。すなわち、トリガBはトリガAが出力された後、プログラム11の所定のステップ数の実行時間を経て出力される。なお、トリガAはCPU部1に搭載のマイクロプロセッサ(CPU)のI/Oポートをオンしオフすることで出力され、トリガBは安全制御部2をデータ出力先としてCPU部1に搭載されたCPUがデータを書き込む形態で出力される。
【0041】
すなわち、第1トリガ出力手段1aと第2トリガ出力手段1bは、CPU部1がプログラム11を実行する際に、第1トリガ出力手段1aがトリガAを出力してから前述ta時間以内に第2トリガ出力手段1bがトリガBを出力するように配置されている。例えば、ta時間を1msとした場合、第1トリガ出力手段1aと第2トリガ出力手段1bは、CPU部1が正常にプログラムを実行するにおいてトリガAとトリガBの出力間隔時間が1msを超えないように配置されれば良い。
【0042】
このように構成することにより、本発明は所定部位のプログラムの実行速度が、ユーザの要求スピードに応えるべく実行されているか否かをチェックすることができる。
また、本発明は、CPU部1から出力されるトリガAをラッチし、このラッチが保持されている間に再びトリガAが出力されることによって、トリガAの不要な発振を検出している。すなわち、本発明はCPU部1のプログラムの実行が正常な手順で行われているかをトリガAの出力をチェックすることで監視しており、トリガAの発振を検知したときには早急に安全パルスの出力をマスクすることで出力部3に安全制御を実行させている。
【0043】
このようにする理由は、トリガAはCPU部1のプログラムの実行が正常に行われているかを検出するための要(かなめ)信号であるので、この信号が発振するような事象が起こったときにはプログラムが正常に実行されてない証である。このためCPU部1は通常の制御を実行することが不可能と考えられ、早急に安全制御を実行し危険を回避する必要があるためである。
【0044】
以上のように構成することにより、例えばプログラムの実行速度が、要求性能に達していないなどの性能に関わる品質の低下を検知することができる。また、プログラムの実行が正常に行われているかを検出するための要(かなめ)信号である第1トリガの発振(プログラムの暴走によって第1トリガが発振する)をも検出できる。
【0045】
従って、本発明によって、故障に加えて性能の低下(クロック周波数の低下によるプログラム実行速度の低下やユーザが要求するプログラム実行速度に対する実機速度の妥当性)をも検出し、かつプログラムの実行が正常に行われているかを検出するための要(かなめ)信号の発振が起こったとしても、被制御機器を安全側に制御する安全制御を実行することが可能な高信頼な安全制御装置を提供することができる。
【0046】
なお、上記説明では第1トリガ出力手段1aと第2トリガ出力手段1bが、プログラム11の所定ステップを挟んで配置されるよう説明したが、連続して配置しても良い。
また、CPU部1が実行する一連の処理(プログラム11)は外部機器4を制御するアプリケーションプログラムで構成することができる。このアプリケーションプログラムによって演算された指令が制御指令として出力部3に与えられる。すなわち、トリガBの出力処理は、上記アプリケーションプログラムの途中に配置される。このようにすることにより、アプリケーションプログラムの一連の制御処理の中で、所定部分の処理をターゲットに、その実行速度を監視することができる。
【0047】
また、別の構成としてプログラム11は、トリガAを出力してからトリガBを出力するまでの処理を上記アプリケーションプログラムで構成し、トリガBを出力した以降の処理を上記アプリケーションプログラムではなく、各種プログラムの管理(タスクスケジュールの管理など)や安全制御装置100全体の情報(RAS情報の収集やモード設定など)などを管理する管理処理(管理プログラム)で構成することができる。この場合も上記同様アプリケーションプログラムによって演算された指令が制御指令として出力部3に与えられる。
【0048】
また、プログラム実行周期をp時間とすると、安全パルス幅tbはp時間よりも長く構成され、ウィンドウパルス幅taはp時間よりも短く構成される。すなわち、ta時間<p時間<tb時間という関係にて、本発明は構成される。
【0049】
また、CPU部1が故障してトリガAが出力されなくなった場合には、前述ウィンドウパルスが生成されず安全パルスは出力されない。このため、本発明はCPU部1の故障に対しても安全制御が実行されるということは勿論である。