(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液状試料を収納する容器をセットする容器セット部及び前記ピペットチップをセットするチップセット部を有する円形状の回転ホルダを前記テーブルの上面側に更に備え、
前記容器セット部は、前記回転ホルダの円周方向に沿って複数個設けられ、
前記チップセット部は、前記回転ホルダの円周方向に沿って、前記容器セット部と前記回転ホルダの半径方向の位置が整合して対をなすように、前記容器セット部と同数個設けられ、
前記回転ホルダの回転中心軸は、前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上にあり、前記回転ホルダの容器セット部及びチップセット部の対が、前記回転ホルダの回転により、順次、前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上に位置するようにした請求項3に記載の卓上分注装置。
前記分注位置における前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上に、前記ノズルから取り外されたピペットチップを前記テーブルの下方位置に廃棄するためのチップ廃棄口を有するチップ廃棄部を設けた請求項3又は4に記載の卓上分注装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数枚のマイクロプレートに対して分注操作を連続して行うことができる卓上サイズの卓上分注装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、テーブルの上面側の分注位置でマイクロプレートの所望のウェルに液状試料を分注する卓上分注装置であって、前記テーブルの上面側に配置され、複数枚のマイクロプレートが上下方向に積層されて収納され、底部の切出口からマイクロプレートを1枚ずつ切り出すマイクロプレート供給部と、前記テーブルの上面側に配置され、底部の受入口から分注後のマイクロプレートを1枚ずつ受け入れて分注後のマイクロプレートを上下方向に積層して収納するマイクロプレート収納部と、上下方向に移動可能であると共に、前記マイクロプレート供給部の切出口の直下位置と前記マイクロプレート収納部の受入口の直下位置との間を水平方向に移動可能であり、上下方向に移動可能とするための駆動機構が前記テーブルの下面側に配置されたエレベータと、前記テーブルの上面側に配置され、前記マイクロプレート供給部の切出口の直下位置から前記分注位置まで水平方向に移動可能であると共に、前記分注位置から前記マイクロプレート収納部の受入口の直下位置まで水平方向に移動可能なシフタとを備え、前記エレベータが、前記マイクロプレート供給部の切出口の直下位置において上下方向に移動することにより、前記マイクロプレート供給部の切出口からマイクロプレートを受け取って前記シフタに移載し、前記マイクロプレート収納部の受入口の直下位置において上下方向に移動することにより、前記シフタから分注後のマイクロプレートを受け取って前記マイクロプレート収納部の受入口から前記マイクロプレート収納部に収納させ
、前記エレベータは、水平方向に移動しないときは、前記マイクロプレート供給部の切出口及び前記マイクロプレート収納部の受入口のうち前記分注位置に近い方の直下位置又は当該直下位置より前記分注位置に近い初期位置に付勢手段によって位置決めされており、水平方向に移動するときは、前記シフタと係合し前記シフタの駆動力により移動することを特徴とするものである。
【0008】
このように、マイクロプレートを1枚ずつ切り出すマイクロプレート供給部と、分注後のマイクロプレートを1枚ずつ受け入れて分注後のマイクロプレートを上下方向に積層して収納するマイクロプレート収納部とを備えることで、作業者がマイクロプレートの入れ替えを行うことなく、複数枚のマイクロプレートに対して分注操作を連続して行うことができるようになる。また、エレベータが、マイクロプレート供給部の切出口の直下位置とマイクロプレート収納部の受入口の直下位置との間を水平方向に移動可能であるので、マイクロプレート供給部からのマイクロプレートの切り出し及びマイクロプレート収納部への分注後のマイクロプレートの収納を1台のエレベータで行うことができ、省スペース化が可能となる。
【0010】
また、エレベータの初期位置を付勢手段で規定したうえで、シフタの駆動力によりエレベータを水平方向に移動させるようにすることで、エレベータを水平方向に移動させるための駆動機構(モータ)を設ける必要がないので、装置構成を簡単にできると共により一層の省スペース化が可能となる。
【0011】
前記付勢手段としては、コイルばねを好適に使用できる。
【0012】
本発明においては、前記シフタの水平方向の移動がX方向であり、分注用のピペットチップを装着するノズルを有する分注ヘッドが、前記X方向と直交するY方向に移動可能であり、前記分注ヘッドのノズルは、上下方向に移動可能であり、前記シフタのX方向の移動と前記分注ヘッドのY方向の移動の組合せにより、前記ピペットチップを前記マイクロプレートの所望のウェル上に位置決めするようにすることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることで、分注ヘッドの水平方向の移動をY方向のみとすることができるので、分注ヘッドの水平移動機構を簡単にでき、また1軸方向のみの移動であるので水平移動の動作の高速化が可能で確実性も向上する。
【0014】
本発明においては、前記液状試料を収納する容器をセットする容器セット部及び前記ピペットチップをセットするチップセット部を有する円形状の回転ホルダを前記テーブルの上面側に更に備え、前記容器セット部は、前記回転ホルダの円周方向に沿って複数個設けられ、前記チップセット部は、前記回転ホルダの円周方向に沿って、前記容器セット部と前記回転ホルダの半径方向の位置が整合して対をなすように、前記容器セット部と同数個設けられ、前記回転ホルダの回転中心軸は、前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上にあり、前記回転ホルダの容器セット部及びチップセット部の対が、前記回転ホルダの回転により、順次、前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上に位置するようにすることが好ましい。
【0015】
このような構成とすることで、分注ヘッドのノズルにピペットチップを装着し、そのピペットチップ内に容器内から液状試料を吸引する動作において、分注ヘッドの水平方向の移動はY方向(回転ホルダの半径方向)の一直線方向のみとすることができる。したがって、それぞれの容器セット部及びチップセット部の対において前記動作に要する時間が実質的に同じとなり、その後の分注操作も含めて、タクト(作業時間)のバラツキを抑えることができる。更に、前記動作において分注ヘッドのノズルは、一つの容器セット部及びチップセット部の対の上のみを通過し、他の容器セット部及びチップセット部の対の上は通過しないので、一つの容器内からピペットチップに吸引された液状試料が、他の容器内に混入してコンタミが生じることを防止できる。
【0016】
本発明においては、前記分注位置における前記分注ヘッドのノズルのY方向の移動経路上に、前記ノズルから取り外されたピペットチップを前記テーブルの下方位置に廃棄するためのチップ廃棄口を有するチップ廃棄部を設けることができる。
【0017】
本発明において、上下方向に移動可能とする駆動機構をテーブルの下面側に有するエレベータは分注位置までは移動せず、マイクロプレートはテーブルの上面側に配置されたシフタによって分注位置まで移動するので、分注位置におけるテーブルの下方位置は空きスペースとすることができる。そこで、分注ヘッドのノズルから取り外されたピペットチップをテーブルの下方位置に廃棄するためのチップ廃棄口を有するチップ廃棄部を分注位置に設けることで、テーブルの下方位置の空きスペースをピペットチップの廃棄スペースとすることができる。すなわち、ピペットチップの廃棄スペースをテーブルの上面側に設ける必要がないので、より一層の省スペース化が可能となる。
【0018】
本発明において、前記チップ廃棄部は、前記ノズルの上下方向の移動により当該ノズルからピペットチップを取り外すチップ取外部を有することが好ましい。これにより、ノズルからピペットチップを容易に取り外すことができ、取り外されたピペットチップは、そのままチップ廃棄口からテーブルの下方位置に廃棄することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作業者がマイクロプレートの入れ替えを行うことなく、複数枚のマイクロプレートに対して分注操作を連続して行うことができる。したがって、作業者の負担を軽減できると共に、作業者は分注装置で複数枚のマイクロプレートに対して分注操作を行っている間、他の作業を行うことができるので作業効率が向上し、また作業者の多能工化を図ることもできる。
【0020】
また、本発明では、マイクロプレート供給部からのマイクロプレートの切り出し及びマイクロプレート収納部への分注後のマイクロプレートの収納を1台のエレベータで行うことができるので、省スペース化が可能で、卓上サイズの分注装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に示す実施例に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施例による卓上分注装置の全体構成を示す正面図、
図2は
図1のA−A矢視図、
図3は
図1のB−B矢視図である。本実施例の卓上分注装置は、液状試料として、尿・便を培地に塗布し培養後に発生したコロニーから釣菌した微生物を専用液に混釈した液をマイクロプレートに分注するものである。ただし、本発明の卓上分注装置は別の液状試料を分注することもでき、液状試料は前記の微生物混尺液に限定されるものではない。
【0024】
本実施例の卓上分注装置は、そのサイズが横(X方向の寸法):680mm×縦(Y方向の寸法):600mm×高さ(Z方向の寸法):800mmであり、一般的な作業台のサイズ横:900mm×縦:600mmに収まる卓上サイズである。
【0025】
本実施例の卓上分注装置は、装置のベースとなるテーブル10の上面側に、マイクロプレート供給部20、マイクロプレート収納部30、シフタ40、分注ヘッド50、及び回転ホルダ60を備え、テーブル10の下面側にエレベータ70を備える。なお、
図1において、分注ヘッド50はその一部のみを示し、回転ホルダ60は省略している。
【0026】
以下、各部の構成を説明する。
図4は、マイクロプレート供給部20の底部の構成を示す。マイクロプレート供給部20は、複数枚(実施例では最大20枚)のマイクロプレート1が上下方向に積層されて収納され、底部の切出口21からマイクロプレートが1枚ずつ切り出される。
【0027】
マイクロプレート1は、
図5(a)及び(b)に示すように、その上面に、格子状に設けられた複数個(実施例では96個)のウェル1aを有する。マイクロプレート1は底面にフランジ1bを有し、このフランジ1bは、
図5(c)に示すように、片側でΔdだけ突出している。本実施例で使用するマイクロプレート1は市販のもので、そのサイズは、横:105mm×縦:136mm×高さ:14.8mmで、前記Δdは1.92mmである。
【0028】
図4に戻って、マイクロプレート供給部20は、その底部の切出口21からマイクロプレートを1枚ずつ切り出すために、切出口21の位置に開閉可能なゲート部22を有する。ゲート部22を開閉する機構は周知であり、例えば、DCソレノイド、引っ張りばね及びリンク機構を組み合わせることで、ゲート部22を開閉することができる。
【0029】
図4はゲート部22が閉じた初期状態を示し、このときゲート部22はマイクロプレート1のフランジ1bの突出部分(
図5(c)のΔd部分)にのみ係合し、マイクロプレート1の積層体を下方から支持している。この状態から、ゲート部22を開閉することにより、マイクロプレート供給部20の底部の切出口21からマイクロプレート1を1枚ずつ切り出すが、その手順は後述する。
【0030】
図6は、マイクロプレート収納部30の底部の構成を示す。マイクロプレート収納部30は底部の受入口31から分注後のマイクロプレート1を1枚ずつ受け入れて分注後のマイクロプレート1を上下方向に積層し、本実施例では最大で20枚収納する。マイクロプレート収納部30の受入口31の両端には、支持爪32が設けられている。支持爪32は、定常状態である水平姿勢(
図6の状態)から下方には回転不能で上方にのみ回転可能となるように設けられている。したがって、
図6の定常状態では支持爪32が分注後のマイクロプレート1の積層体を下方から支持する。一方、受入口31から分注後のマイクロプレート1を受け入れるときは、後述するエレベータが受入口31の直下位置において分注後のマイクロプレート1を上昇させる。そうすると、分注後のマイクロプレート1が支持爪32に突き当たり、支持爪32が上方に逃げるように回転し、分注後のマイクロプレートが受入口31を通過する。分注後のマイクロプレートが受入口31を通過したら、支持爪32は自重により
図6の定常状態に戻り、分注後のマイクロプレート1の積層体を下方から支持する。
【0031】
図1に戻って、エレベータ70は、昇降駆動源(上下方向に移動可能とするための駆動機構)である電動シリンダ71によって上下方向に移動可能で、マイクロプレートを下方から支持可能なプレート支持部72を有する。また、エレベータ70は、レール73に沿って水平方向(X方向)に移動可能に設けられており、前述したマイクロプレート供給部20の切出口21の直下位置とマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置との間を移動可能である。
【0032】
エレベータ70は、水平方向(X方向)に移動するための独自の駆動源は備えておらず、水平方向に移動しないときは、その初期位置として、マイクロプレート供給部20の切出口21及びマイクロプレート収納部30の受入口31のうち分注位置(
図1においてシフタ40がある位置)に近いマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置に付勢手段であるコイルばね74によって位置決めされている。具体的には、コイルばね74の一端が装置本体に固定され、コイルばね74の他端がエレベータ70に固定されており、コイルばね74の自然長の位置が初期位置となる。
【0033】
エレベータ70は、前述のとおり水平方向(X方向)に移動するための独自の駆動源は備えていないので、水平方向(X方向)、具体的にはマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置(初期位置)からマイクロプレート供給部30の切出口31の直下位置に移動するときは、後述するシフタ40と係合しシフタ40の駆動力により、コイルばね74の付勢力に抗して移動する。
【0034】
図7は、エレベータ70が水平方向に移動するときのシフタ40との係合状態を示す。シフタ40の詳細は後述するが、シフタ40はその下面に係合凸部41を有し、エレベータ70は係合凸部41に係合可能な係合突起75を有する。したがって、シフタ40が
図7の左側にある分注位置から右側に向けて移動してくると、シフタ40の係合凸部41にエレベータ70の係合突起75が係合し、エレベータ70はシフタ40に押されながら移動する。シフタ40が
図7において左側に移動するときは、シフタ40の係合凸部41とエレベータ70の係合突起75との係合は実質的に解除され、エレベータ70はコイルばね74の復元力により、初期位置に戻る。
【0035】
なお、本発明において付勢手段は、コイルばねに限定されない。例えば、エレベータの水平方向の移動をガイドするレールに傾斜を設け、その傾斜によりエレベータが初期位置に付勢されて位置決めされるようにしてもよい。ただし、各装置構成の単純化、確実性等の点から、付勢手段としてはコイルばねが適している。
【0036】
また、本実施例では、エレベータ70の初期位置をマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置としたが、その直下位置よりも分注位置に近い位置を初期位置としてもよい。この場合も、エレベータ70は、シフタ40と係合することで、その初期位置からマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置又はマイクロプレート供給部20の切出口21の直下位置まで水平方向に移動できる。また、本実施例では、マイクロプレート収納部30を分注位置の近くに配置したが、マイクロプレート供給部20を分注位置の近くに配置することもでき、この場合、エレベータ70の初期位置は、マイクロプレート供給部20の切出口21の直下位置又は当該直下位置より分注位置に近い位置とする。
【0037】
ちなみに、本発明は、エレベータ70を水平方向(X方向)に移動させるための独自の駆動源を設けることは排除しないが、省スペース化の点からは、本実施例のようにシフタ40の駆動力でエレベータ70を水平方向(X方向)に移動させるようにすることが好ましい。
【0038】
次にシフタ40の構成を説明する。
図1及び
図2に示すように、シフタ40は平面視でコ字状の形状を有し、その上面にマイクロプレートを取り囲むようにして保持し位置決めするための保持ピン42が合計で8本立ち上げられて設けられている。シフタ40の基端側はレール43に沿って移動可能に取り付けられると共に、タイミングベルト44に固定されている。タイミングベルト44はシフタ駆動用モータ45の駆動軸に連結されており、シフタ駆動用モータ45の駆動により、X方向にエンドレスで移動する。これにより、シフタ40がレール43にガイドされながらX方向に移動する。その移動範囲は、
図1においてシフタ40がある分注位置からマイクロプレート供給部20の切出口21の直下位置までの範囲である。
【0039】
次に分注ヘッド50の構成を説明する。
図8は、分注ヘッド50の構成を示す正面図である。分注ヘッド50は、分注用のピペットチップを装着するノズル51を有する。ノズル51は分注ヘッド50の本体に対して上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。具体的には、ノズル51はタイミングベルト52に固定されており、タイミングベルト52はノズル駆動用モータ53の駆動軸に連結されている。タイミングベルト52は、ノズル駆動用モータ53の駆動により、Z方向にエンドレスで移動する。これにより、ノズル51がZ方向に移動する。
【0040】
ノズル51には、それに装着されたピペットチップに液状試料を吸引・吐出するためのディスペンサ機構54が接続されている。ディスペンサ機構54は、ボールねじとモータを使用した自動注射機構により構成できる。
【0041】
また、分注ヘッド50は、その本体側にノズル51の先端にピペットチップが正常に装着されているか否かを検知するためのセンサ55が設けられている。センサ55としては、汎用の光学式反射センサを使用できる。
【0042】
分注ヘッド50は、
図1及び
図3に示すレール56に沿って水平方向(Y方向)に移動可能に設けられている。具体的には、分注ヘッド50はレール56に沿って移動可能に取り付けられると共に、タイミングベルト57に固定されている。タイミングベルト57は分注ヘッド駆動用モータ58の駆動軸に連結されており、分注ヘッド駆動用モータ58の駆動により、Y方向にエンドレスで移動する。これにより、分注ヘッド50がレール56にガイドされながらY方向に移動する。
【0043】
次に回転ホルダ60の構成を説明する。
図9は回転ホルダ60の構成を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【0044】
回転ホルダ60は平面視で円形をなし、液状試料を収納する容器61をセットする容器セット部62及び分注用のピペットチップ63をセットするチップセット部64を有する。この回転ホルダ60(容器セット部62及びチップセット部64)は、テーブル10(
図1等参照)の上面側に配置される。
【0045】
容器セット部62は、回転ホルダ60の円周方向に沿って複数個(実施例では20個)設けられ、チップセット部64は、回転ホルダ60の円周方向に沿って、容器セット部62と回転ホルダ60の半径方向の位置が整合して対をなすように、容器セット部62と同数個設けられている。
【0046】
回転ホルダ60は、回転中心軸65周りに回転可能である。回転ホルダ60を回転させるための回転駆動機構は、
図1及び
図2に示されている。なお、
図1において回転ホルダは省略している。
【0047】
回転ホルダ60の回転中心軸65に円盤66が固定され、円盤66と回転ホルダ駆動用モータ67の駆動軸との間にタイミングベルト68が架け渡されている。したがって、回転ホルダ駆動用モータ67を駆動させることにより、回転ホルダ60は回転中心軸65周りに回転する。
【0048】
この回転ホルダ60の回転中心軸65は、
図3に示すように、前述した分注ヘッド50のノズル51のY方向の移動経路上にある。そして、回転ホルダ60の容器セット部62及びチップセット部64の対が、回転ホルダ60の回転により、順次、分注ヘッド50のノズル51のY方向の移動経路上に位置するようにしている。
【0049】
本実施例の卓上分注装置は、
図2及び
図3に示すように、分注操作後に分注ヘッド50のノズル51から取り外されたピペットチップをテーブル10の下方位置に廃棄するためのチップ廃棄口81を有するチップ廃棄部80を備える。チップ廃棄口81はテーブル10を切り欠いて設けられ、分注位置における分注ヘッド50のノズル51のY方向の移動経路上に位置する。
【0050】
チップ廃棄部80は、チップ廃棄口81に加えチップ取外部82を有する。チップ取外部82は、チップ廃棄口81に連続して2箇所に設けられ、分注位置における分注ヘッド50のノズル51のY方向の移動経路上に位置する。チップ取外部82は、分注ヘッド50のノズル51の上下方向の移動により当該ノズルからピペットチップを取り外す。すなわち、チップ取外部82の開口の大きさはノズル51の外形より大きく、ノズル51に装着されるピペットチップの基端部の外形より小さく形成されている。また、チップ廃棄口81の開口の大きさは前記ピペットチップの基端部の外形より大きい。したがって、ピペットチップを装着したノズル51をチップ廃棄口81から下方に挿入し、その後、Y方向に移動させてノズル51をチップ取外部82内に位置させ、その位置でノズル51を上方に移動させることにより、ノズル51からピペットチップから外れる。外れたピペットチップは、そのまま下方に落下し、廃棄される。すなわち、本実施例の場合、チップ取外部82はチップ廃棄口81の一部である。
【0051】
以上の構成を有する本実施例の卓上分注装置の動作を以下に説明する。
図10は、その動作の流れを示すフロー図である。
図10及び
図1〜9を参照しつつ、その動作を説明する。
【0052】
動作開始の指令があると、分注ヘッド50がY方向に移動し、分注ヘッド50のノズル51を回転ホルダ60のチップセット部64の直上に移動させる。その位置でノズル51を下方に移動させ、ノズル51の先端に、チップセット部64にセットされているピペットチップ63を装着する。次いで、分注ヘッド50を上方に移動させ、ピペットチップ63をチップセット部64から完全に取り出す。この状態で、ノズル51にピペットチップ63が正常に装着されているか否かをセンサ55で検知し確認する。
【0053】
ノズル51にピペットチップ63が正常に装着されていることが確認されたら、分注ヘッド50がY方向に移動し、ノズル51に装着されたピペットチップ63を回転ホルダ60の容器セット部62の直上に移動させる。その位置でノズル51を下方に移動させ、ピペットチップ63の先端を、容器セット部62にセットされている容器61内の液状試料(検体)に浸漬する。そして、ディスペンサ機構54により、ピペットチップ63内に所定量の検体を吸引する。
【0054】
それと同時に、マイクロプレート供給部20の底部の切出口21から1枚のマイクロプレートを切り出す動作を開始する。
図11は、マイクロプレートを切り出す動作の流れを示す概念図である。
図11において各部の構成は簡略化して示している。
【0055】
まず、
図11(a)に示すように、マイクロプレート供給部20の切出口21の直下位置にエレベータ70を移動させる。先に
図7で説明したように、エレベータ70の水平方向(X方向)の移動は、エレベータ70をシフタ40と係合させシフタ40の駆動力により行う。
【0056】
次いで、
図11(b)に示すように、エレベータ70のプレート支持部72を上方に移動させ、プレート支持部72によってマイクロプレート供給部20内の最下段のマイクロプレート1を下方から支持する。この状態で、
図11(c)に示すように、ゲート部22を開き、マイクロプレート1の積層体をプレート支持部72のみで支持する。
【0057】
次いで、
図11(d)に示すように、プレート支持部72を下方に移動させ、ゲート部22を閉じる。このときのプレート支持部72の下方への移動量は、ケート部22が、最下段のマイクロプレート1のフランジ1b(
図5参照)とその一段上のマイクロプレート1のフランジ1bとの間に位置するように設定する。
【0058】
先に
図4で説明したように、ゲート部22は、閉じた状態では、マイクロプレート1のフランジ1bの突出部分にのみ係合するように設計されている。したがって、
図11(d)の状態から、プレート支持部72を下方に移動させると、
図11(e)に示すように、マイクロプレート供給部20内に収納されていた最下段のマイクロプレートがプレート支持部72に支持された状態で切り出され、残りのマイクロプレート1はゲート部22によって支持される。
【0059】
次いで、
図11(f)に示すように、プレート支持部72を更に下方に移動させ、マイクロプレート1をプレート支持部72からシフタ40に移載する。ここで、シフタ40は
図2に示したように平面視でコ字状の形状を有し、プレート支持部72は、シフタ40のコ字内の空間を上下方向に移動可能な形状を有する。したがって、プレート支持部72は、シフタ40を通過して上下方向に移動できる。
【0060】
図10のフローに戻って、マイクロプレート1を受け取ったシフタ40は、分注位置(
図1においてシフタ40がある位置)までX方向に移動する。そして、その分注位置においてシフタ40のX方向の移動と分注ヘッド50のY方向の移動の組合せ及びディスペンサ機構54の自動注射機構により、分注ヘッド50のノズル51に装着されたピペットチップをマイクロプレート1の所望のウェル上に位置決めし、順次、分注を行う。
【0061】
分注が完了したら、分注後のマイクロプレートを支持しているシフタ40をマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置までX方向に移動させる。このマイクロプレート収納部30の受入口31の直下位置は、前述のとおりエレベータ70の初期位置であるので、エレベータ70もこの位置にある。この状態で、エレベータ70のプレート支持部72を上方に移動させると、シフタ40に支持されていた分注後のマイクロプレート1はプレート支持部72によって受け取られ、プレート支持部72と共に上方に移動する。そして、分注後のマイクロプレート1はプレート支持部72によって支持された状態で、
図6に示す支持爪32に突き当たり、支持爪32が上方に逃げるように回転し、分注後のマイクロプレートが受入口31を通過する。分注後のマイクロプレートが受入口31を通過したら、支持爪32は自重により
図6の定常状態に戻り、分注後のマイクロプレート1の積層体を下方から支持する。これによって分注後のマイクロプレート1がプレート収納部30に収納される。
【0062】
この分注後のマイクロプレート1をプレート収納部30に収納する動作と並行して、分注位置からシフタ40が退避したら、先に説明した要領で、ノズル51の上下方向の移動により、チップ取外部82でピペットチップをノズル51から取り外し、廃棄する。チップ取外部82は、
図2に示したように2箇所にあるので、一連の分注作業においては、2箇所のチップ取外部82を交互に使用するなどして、チップ取外部82を均等に使用することが好ましい。これにより、廃棄スペースの省スペース化が可能となり、装置全体の省スペース化に繋がる。
【0063】
以上の動作を20検体の分注が完了するまで継続し、20枚のマイクロプレート1への分注操作を行う。このとき、回転ホルダ60は1検体の分注が完了するたびに回転し、次の容器セット部62及びチップセット部64の対が、分注ヘッド50のノズル51のY方向の移動経路上に位置するようにする。
【0064】
このように、本実施例の卓上分注装置では、20枚のマイクロプレートへの分注作業を、人手を介さずに連続して実施することができる。したがって、作業者はその間、装置から離れて別の作業を行うことができる。具体的には、1枚のマイクロプレートへの分注操作に要する時間は通常1〜2分程度であるため、トータルで20〜40分間、作業者は装置から離れることができる。一方、前記特許文献1の分注装置では、テーブル上のマイクロプレートへの分注操作が終了するたびに、作業者がマイクロプレートの入れ替えを行わなければならないため、装置から離れるほどの時間はとれない。
【0065】
また、特に医療分野で使用する分注装置では、2以上の検体(液状試料)がコンタミすることは厳禁である。前記特許文献1の分注装置では、液状試料を入れた試験管を格子状に配置し、分注ヘッドとテーブルを相対的に直交する3軸方向に動作させて分注操作を行っていた。このような構成であると、コンタミを起こさないために、分注ヘッドは他の液状試料(試験管)の上空外を通過させなければいけない。それゆえに、分注位置まで必ずしも最短距離を通過することができないのでタクトにバラツキが発生していた。また分注ヘッドは直角移動を行うため、分注位置までの途中経路で必ず停止をしなければならない。更にその都度で加減速を行うため、ピペットチップ内の液状試料が加減速によりピペットチップ外に飛出すおそれがあり、分注ヘッドの高速移動が困難であった。
【0066】
本発明の卓上分注装置では、分注ヘッドは一直線方向(Y方向)にしか移動しない。したがって、分注ヘッドの高速移動が可能となる。そして円形の回転ホルダを使用することで、その円形ホルダにおけるそれぞれの容器セット部及びチップセット部の対において分注ヘッドの移動時間が実質的に同じとなり、その後の分注操作も含めて、タクトのバラツキを抑えることができる。また、分注ヘッドの分注位置までの移動を直線の最短経路で行うことができるので、タクトの短縮も実現できる。更に、分注ヘッドのノズルは、一つの容器セット部及びチップセット部の対の上のみを通過し、他の容器セット部及びチップセット部の対の上は通過しないので、コンタミが生じることも防止できる。