特許第6032401号(P6032401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6032401-アイドリングストップ制御システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032401
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】アイドリングストップ制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20161121BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20161121BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20161121BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20161121BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20161121BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F02D29/02 321B
   F02D29/02 321A
   F02D29/02 311A
   F02D29/02 341
   F02D17/00 Q
   B60T8/00 C
   B60T8/175
   B60T8/1755 Z
   B60T8/1761
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-189982(P2012-189982)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47666(P2014-47666A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080056
【弁理士】
【氏名又は名称】西郷 義美
(72)【発明者】
【氏名】新保 正光
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−274274(JP,A)
【文献】 特開2002−213269(JP,A)
【文献】 特開2009−063001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F02D 17/00
F02N 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するための駆動力を発生する内燃機関を車両の減速時を含む所定の停止条件成立時に自動停止させ、この内燃機関を所定の再始動条件成立時に再始動させるアイドリングストップ制御を実行するアイドリングストップ制御手段を備えるアイドリングストップ制御システムであって、車輪のスリップ制御を実行するスリップ制御手段とブレーキアシスト制御を実行するブレーキアシスト制御手段、前記内燃機関の自動停止中に、前記スリップ制御手段によりスリップ制御が実行され又は前記ブレーキアシスト制御手段によりブレーキアシスト制御が実行された時に、前記スリップ制御前記ブレーキアシスト制御とにおいて異なるように予め設定された開始時判定条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を解除するか否かを判定する開始時判定手段とを備え、前記アイドリングストップ制御手段は、前記開始時判定手段により前記内燃機関の自動停止を解除すると判定された場合に、前記内燃機関を再始動させることを特徴とするアイドリングストップ制御システム。
【請求項2】
前記開始時判定手段により前記内燃機関の自動停止を解除しないと判定された場合に、前記スリップ制御手段によりスリップ制御が終了され又は前記ブレーキアシスト制御手段によりブレーキアシスト制御が終了された時に、前記スリップ制御と、前記ブレーキアシスト制御とにおいて異なるように予め設定された終了時判定条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を解除するか否かを判定する終了時判定手段を備え、前記アイドリングストップ制御手段は、前記終了時判定手段により前記内燃機関の自動停止を解除すると判定された場合に、前記内燃機関を再始動させることを特徴とする請求項1に記載のアイドリングストップ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアイドリングストップ制御システムに係り、特に、車両の減速時に内燃機関の自動停止を行う減速時アイドリングストップ制御の実行中に各種ブレーキ制御が実行された場合の、車両挙動の安定や運転者の不安感払拭を図ったアイドリングストップ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、内燃機関の燃料消費量削減やエミッション低減を目的として、運転中の内燃機関を自動停止させ、自動停止中の内燃機関を再始動するアイドリングストップ制御システムを搭載しているものがある。
従来、この種のアイドリングストップ制御システムとしては、車両が停車状態であることやシフトレバーが非走行ポジションにあること、ブレーキブースト負圧が所定負圧値以上であることなどの所定の停止条件が成立した時に内燃機関を自動停止し、パーキングブレーキが解除されたことやシフトレバーが走行ポジションヘ操作されたこと、ブレーキブースト負圧が所定負圧値未満に弱化したこと、車両が走行を開始したことなどの所定の再始動条件が成立した時に内燃機関を再始動するものが種々提案されている。
また、車両には、安定走行のために、路面に対する車輪のスリップを抑制するスリップ制御(例えば、内燃機関から出力が駆動輪へ作用する際に生じ得る車輪のスリップを抑制するトラクション制御、車両挙動を安定させるようにブレーキを操作するスタビリティ制御、急ブレーキの際の車輪のスリップを防止するアンチロックブレーキ制御など)や非力な運転者によるブレーキ操作力をアシストするブレーキアシスト制御などの、ブレーキ関係の各種ブレーキ制御を行うシステムも多く提案されている。
前述の内燃機関の自動停止と再始動とを行うアイドリングストップ制御システムを搭載した車両においても、このようなブレーキ関係の各制御を行うシステムを搭載するものも多い。こうした各種ブレーキ制御は、運転者が予期しない車両の挙動に対して行われるものであるから、運転者は不安感を持つ場合が多い。したがって、各種ブレーキ制御が実行されているときや各種ブレーキ制御が終了された直後に内燃機関を自動停止すると、運転者が感じる不安感を増加させてしまう場合が多い。
【0003】
そこで、特開2002−213269号公報のような、スリップ制御および/またはブレーキアシスト制御が実行されたときには、所定の停止条件の成立にかかわらず、所定の解除条件が成立するまでアイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止を禁止する自動停止制御禁止手段を備えることによる、運転者の不安感増加抑止を図った技術が提案されている。
また、近年では、特開2009−63001号公報などのような、さらなる燃費向上を図るべく、低速走行中にブレーキペダルが判定値以上踏み込まれた場合に、車速がゼロになって停車する前に内燃機関を自動停止させ、その後、停車する前に走行の必要が生じた時には内燃機関を自動的に再始動させることができる制御(減速時アイドリングストップ制御、停車前アイドリングストップ制御等ともいう)が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213269号公報
【特許文献2】特開2009−63001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される従来技術は、近年実用化されている、特許文献2等のような、低速走行中にブレーキペダルが判定値以上踏み込まれた場合に、車速がゼロになって停車する前に内燃機関を自動停止させ、その後、停車する前に走行の必要が生じた時には内燃機関を自動的に再始動させることができる制御には、対応していない。
つまり、走行中に内燃機関を自動停止させる減速時アイドリングストップ制御の実行中(走行中かつ内燃機関の自動停止中)に各種ブレーキ制御が実行された場合における、アイドリングストップ制御(内燃機関の自動停止)の禁止や解除について対応していない。このため、減速時アイドリングストップ制御の実行中に各種ブレーキ制御が実行された場合、車両挙動が不安定となり、運転者に不安感を与えることになる。
【0006】
そこで、この発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両挙動の安定や運転者の不安感払拭であって、減速時アイドリングストップ制御による内燃機の自動停止中に各種ブレーキ制御が実行された場合、各種ブレーキ制御の実行を条件として減速時アイドリングストップ制御を解除(内燃機関の自動再始動)するか継続するかの判定を可能とし、減速時アイドリングストップ制御を継続すると判定した場合に、各種ブレーキ制御の終了を条件として減速時アイドリングストップ制御を解除するか継続するかの判定を可能とするもである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両が走行するための駆動力を発生する内燃機関を車両の減速時を含む所定の停止条件成立時に自動停止させ、この内燃機関を所定の再始動条件成立時に再始動させるアイドリングストップ制御を実行するアイドリングストップ制御手段を備えるアイドリングストップ制御システムであって、車輪のスリップ制御を実行するスリップ制御手段とブレーキアシスト制御を実行するブレーキアシスト制御手段、前記内燃機関の自動停止中に、前記スリップ制御手段によりスリップ制御が実行され又は前記ブレーキアシスト制御手段によりブレーキアシスト制御が実行された時に、前記スリップ制御前記ブレーキアシスト制御とにおいて異なるように予め設定された開始時判定条件に基づいて、前記内燃機関の自動停止を解除するか否かを判定する開始時判定手段とを備え、前記アイドリングストップ制御手段は、前記開始時判定手段により前記内燃機関の自動停止を解除すると判定された場合に、前記内燃機関を再始動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止中にスリップ制御やブレーキアシスト制御の各種ブレーキ制御が実行された場合に、所定の開始時判定条件に基づいて内燃機関の自動停止を解除するか継続するかを判定するため、車両挙動を安定させ、運転者に不安感を与えないようにすることができる。
この発明は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関の自動停止を継続すると判定した場合に、不要な内燃機関の自動停止解除を抑制して、燃料消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1はアイドリングストップ制御システムのシステムブロック図である。(実施例)
図2図2はアイドリングストップ制御システムによる減速時アイドリングストップ制御及び停車時アイドリングストップ制御のフローチャートである。(実施例)
図3図3はアイドリングストップ制御システムによる減速時アイドリングストップ制御の解除・継続のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1図3は、この発明の実施例を示すものである。図1において、車両1の駆動源である内燃機関2は、トランスミッション3を連結され、スタータ4によりクランキングされて始動される。内燃機関2の発生した駆動力は、トランスミッション3を介して右ドライブシャフト5および左ドライブシャフト6に伝達され、右車輪7および左車輪8を駆動する。右車輪7および左車輪8には、それぞれ右ブレーキ9および左ブレーキ10を備えている。
前記内燃機関2は、内燃機関制御装置11によりアクセルペダル12の踏み込み量に応じて駆動状態を制御される。前記トランスミッション3は、トランスミッション制御装置13により変速状態を制御される。前記右ブレーキ9および左ブレーキ10は、ブレーキ制御装置14によりブレーキペダル15の踏み込み量、右車輪速センサ16および左車輪速センサ17の検出値に応じて制動状態を制御される。ブレーキ制御装置14は、スリップ制御手段18と、ブレーキアシスト制御手段19とを備えている。スリップ制御手段18は、トラクション制御、スタビリティ制御、アンチロックブレーキ制御などを実行し、路面に対する車輪のスリップを抑制する。ブレーキアシスト制御手段19は、運転者によるブレーキ操作力をアシストする
【0012】
前記車両1は、アイドリングストップ制御システム20を備えている。アイドリングストップ制御システム20は、内燃機関制御装置11により内燃機関2の自動停止および自動停止から内燃機関2を再始動させるアイドリングストップ制御を実行するアイドリングストップ制御手段21を備えている。
前記内燃機関制御装置11と、トランスミッション制御装置13と、ブレーキ制御装置14と、アイドリングストップ制御システム20とは、車内LAN(CAN)22により接続され、相互に情報を交換する。
内燃機関制御装置11は、常時、アクセルペダル12の踏み込み量と、ブレーキペダル15に設けたブレーキランプスイッチ23の状態とをモニタし、車内LAN22上に送信する。ブレーキ制御装置14は、常時、ブレーキペダル15の踏み込み量と、右車輪速センサ16および左車輪速センサ17の検出値をモニタし、車内LAN22上に送信する。
前記ブレーキ制御装置14は、スリップ制御手段18のスリップ制御実行、ブレーキアシスト制御手段19のブレーキアシスト制御実行によるブレーキ制御の介入時に、ブレーキ制御介入有信号を車内LAN22上に送信する。また、ブレーキ制御装置14は、スリップ制御手段18のスリップ制御終了、ブレーキアシスト制御手段19のブレーキアシスト制御終了によるブレーキ制御の非介入時に、ブレーキ制御介入無信号を車内LAN22上に送信する。
前記アイドリングストップ制御手段21は、内燃機関制御装置11と、トランスミッション制御装置13と、ブレーキ制御装置14とが送信した信号を受信し、所定の停止条件が成立する場合に、トランスミッション制御装置13およびブレーキ制御装置14がアイドリングストップ制御を実行可能な状態かを確認したうえで、エンジン制御装置11により内燃機関2を自動停止させる。
内燃機関2の停止後、アイドリングストップ制御手段21は、内燃機関制御装置11と、トランスミッション制御装置13と、ブレーキ制御装置14とが送信した信号を受信し、所定の再始動条件が成立する場合に、トランスミッション制御装置13およびブレーキ制御装置14がアイドリングストップ制御を実行可能な状態かを確認したうえで、エンジン制御装置11により内燃機関2を再始動させる。
このように、アイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御手段21によって、車両1が走行するための駆動力を発生する内燃機関2を車両1の減速時を含む所定の停止条件成立時に自動停止させ、この内燃機関2を所定の再始動条件成立時に再始動させるアイドリングストップ制御を実行する。
【0013】
このアイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御手段21に加えて、開始時判定手段24と、終了時判定手段25とを備えている。
前記開始時判定手段24は、内燃機関2の自動停止中に、スリップ制御手段18によりスリップ制御が実行された時に、又はブレーキアシスト制御手段19によりブレーキアシスト制御が実行された時に、スリップ制御及びブレーキアシスト制御毎に異なるように予め設定された開始時判定条件に基づいて、内燃機関2の自動停止を解除するか否かを判定する。アイドリングストップ制御手段21は、開始時判定手段24により内燃機関2の自動停止を解除すると判定された場合に、内燃機関2を再始動させる。
前記終了時判定手段25は、開始時判定手段24により内燃機関2の自動停止を解除しないと判定された場合に、スリップ制御手段18によりスリップ制御が終了された時に、又はブレーキアシスト制御手段19によりブレーキアシスト制御が終了された時に、スリップ制御及びブレーキアシスト制御毎に異なるように予め設定された終了時判定条件に基づいて、内燃機関2の自動停止を解除するか否かを判定する。アイドリングストップ制御手段21は、終了時判定手段25により内燃機関2の自動停止を解除すると判定された場合に、内燃機関2を再始動させる。
【0014】
次に作用を説明する。
アイドリングストップ制御システム20は、図2に示すように、アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止、および自動停止からの再始動を実行する。
図2において、アイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御手段21によりアイドリングストップ制御のプログラムを開始すると(A01)、車両1が停車中であるかを判断する(A02)。
この判断(A02)がNOの場合は、減速時アイドリングストップ制御を実行中であるかを判断する(A03)。この判断(A03)がNOの場合は、減速時アイドリングストップ制御の実行条件が成立するかを判断する(A04)。
この判断(A04)がYESの場合は、減速時アイドリングストップ制御の実行を指示し(A05)、判断(A02)にリターンする(A06)。この判断(A04)がNOの場合は、判断(A02)にリターンする(A06)。
前記(A03)がYESの場合は、減速時アイドリングストップ制御の解除条件が成立するかを判断する(A07)。この判断(A07)がYESの場合は、内燃機関制御装置11へ内燃機関2の再始動を指示し(A08)、判断(A02)にリターンする(A06)。この判断(A07)がNOの場合は、判断(A02)にリターンする(A06)。
【0015】
一方、前記(A02)がYESの場合は、減速時アイドリングストップ制御を実行中であるかを判断する(A09)。
この判断(A09)がYESの場合は、停車時アイドリングストップ制御に移行し(A10)、判断(A02)にリターンする(A06)。この判断(A09)がNOの場合は、停車時アイドリングストップ制御を実行中であるかを判断する(A11)。
この判断(A11)がYESの場合は、停車時アイドリングストップ制御の解除条件が成立するかを判断する(A12)。この判断(A12)がYESの場合は、内燃機関制御装置11へ内燃機関2の再始動を指示し(A08)、判断(A02)にリターンする(A06)。この判断(A12)がNOの場合は、判断(A02)にリターンする(A06)。
前記判断(A11)がNOの場合は、停車時アイドリングストップ制御の実行条件が成立するかを判断する(A13)。この判断(A13)がYESの場合は、停車時アイドリングストップ制御の実行を指示し(A14)、判断(A02)にリターンする(A06)。この判断(A13)がNOの場合は、判断(A02)にリターンする(A06)。
【0016】
このように、内燃機関2を減速時あるいは停車時に自動停止させ、停止した内燃機関2を再始動させるアイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御の実行中に各種ブレーキ制御が実行された場合に、図3に示すように、内燃機関2の自動停止を解除するか継続するかを判定する。
図3において、アイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御手段21により減速時アイドリングストップ制御の解除・継続のプログラムを開始すると(B01)、ブレーキ制御装置14によるブレーキ制御が実行されたかを判断する(B02)。この判断(B02)は、ブレーキ制御装置14の出力するブレーキ制御介入無信号(ブレーキ制御介入なし)が、ブレーキ制御介入有信号(ブレーキ制御介入あり)に変化したかによって判断する。
この判断(B02)がYESの場合は、減速時アイドリングストップ制御を解除するかを判断する(B03)。この判断(B03)においては、スリップ制御及びブレーキアシスト制御毎に異なるように予め設定された開始時判定条件に基づいて、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を解除するか否かを判定する。
この判断(B03)がYESの場合は、内燃機関制御装置11へ内燃機関2の再始動を指示し(B04)、判断(B02)にリターンする(B05)。この判断(B03)がNOの場合は、ブレーキ制御装置14によるブレーキ制御が終了されたかを判断する(B06)。また、前記判断(B02)がYESの場合も、ブレーキ制御装置14によるブレーキ制御が終了されたかを判断する(B06)。
この判断(B06)は、ブレーキ制御装置14の出力するブレーキ制御介入有信号(ブレーキ制御介入あり)が、ブレーキ制御介入無信号(ブレーキ制御介入なし)に変化したかによって判断する。
判断(B06)がNOの場合、判断(B02)にリターンする(B05)。判断(B06)がYESの場合は、減速時アイドリングストップ制御を解除するかを判断する(B07)。
この判断(B07)がYESの場合は、内燃機関制御装置11へ内燃機関2の再始動を指示し(B08)、判断(B02)にリターンする(B05)。この判断(B07)がNOの場合は、判断(B02)にリターンする(B05)。
【0017】
前記図2図3によるアイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止および自動停止からの自動再始動は、具体的に以下のように実施される。
内燃機関2の自動停止において、アイドリングストップ制御システム20は、内燃機関制御装置11が常時モニタしているアクセルペダル12の踏み込み量とブレーキペダル15に設けたブレーキランプスイッチ23の状態とを入力し、ブレーキ制御装置14が常時モニタするブレーキペダル15の踏み込み量と右車輪速センサ16および左車輪速センサ17の検出値とブレーキ制御介入有信号あるいはブレーキ制御介入無信号とを入力する。
アイドリングストップ制御システム20は、内燃機関制御装置11とブレーキ制御装置14とから入力した各種信号に基づいて、内燃機関制御装置11がアイドリングストップ禁止状態でなく、車両1の車速、アクセルペダル12の操作状態、ブレーキペダル15の操作状態、および電池(不図示)の状態から所定の停止条件が成立するかを判定し、自動停止が可能な状態にあると判断(自動停止条件成立)した場合、トランスミッション制御装置13およびブレーキ制御装置14へ、それら制御装置13、14がアイドリングストップ制御を実行可能な状態にあるかどうかの確認を要求する信号を出力する。
ブレーキ制御装置11およびトランスミッション制御装置13は、前記確認要求信号の入力後に、各々が制御する各被制御部品の状態を確認し、アイドリングストップ制御を実行可能な状態にあれば、許可信号をアイドリングストップ制御システム20へ出力する。
【0018】
アイドリングストップ制御システム20は、前記各制御装置11、13から各許可信号を受信し、かつ、内燃機関制御装置11がアイドリングストップ禁止状態でないことを確認した後、アイドリングストップ制御を実行する信号を、内燃機関制御装置11、トランスミッション制御装置13、ブレーキ制御装置14へ出力する。
内燃機関制御装置11、トランスミッション制御装置13、ブレーキ制御装置14、アイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御を開始する。エンジン制御装置11については、内燃機関2を自動停止させる。
内燃機関2の停止後、アイドリングストップ制御システム20は、ブレーキ制御装置14からブレーキ制御介入中信号(ブレーキ制御介入あり)が入力した場合、直ちにアイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を解除(内燃機関2を再始動)するか自動停止を継続するかを判定する。アイドリングストップ制御装置20は、解除すると判定した場合、解除条件に応じて内燃機関制御装置11により内燃機関2を再始動させる。
アイドリングストップ制御システム20は、アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を継続すると判断した場合、アイドリングストップ制御を継続する。アイドリングストップ制御システム20は、ブレーキ制御装置14から入力するブレーキ制御介入中信号(ブレーキ制御介入あり)がブレーキ制御介入無信号(ブレーキ制御介入なし)へ変化した場合、直ちにアイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を解除するか継続するかを判定する。アイドリングストップ制御装置20は、解除すると判定した場合、解除条件に応じて内燃機関制御装置11により内燃機関2を再始動させる。
【0019】
内燃機関2の再始動において、アイドリングストップ制御システム20は、内燃機関制御装置11が常時モニタするアクセルペダル12の踏み込み量を入力し、ブレーキ制御装置14が常時モニタするブレーキペダル15の踏み込み量と右車輪速センサ16及び左車輪速センサ17の検出値とブレーキ制御介入有信号あるいはブレーキ制御介入無信号とを入力する。
アイドリングストップ制御システム20は、入力した各種信号により、
・内燃機関制御装置11が再始動禁止状態でなく、車両1の車速、アクセルペダル12の操作状態、ブレーキペダル15の操作状態、および電池(不図示)の状態が、内燃機関2を再始動させる状態にあると判断(再始動条件成立)した場合、
・内燃機関制御装置11が再始動禁止状態でなく、ブレーキ制御介入有信号が入力し、アイドリングストップ制御を解除(内燃機関2の再始動)すると判断(再始動条件成立)した場合、
・ブレーキ制御介入有信号が入力し、アイドリングストップ制御を継続すると判断(再始動条件不成立)した後、ブレーキ制御介入有信号からブレーキ制御介入無信号へ変化し、アイドリングストップ制御を解除(内燃機関2の再始動)すると判断(再始動条件成立)した場合、
内燃機関制御装置11、トランスミッション制御装置13、ブレーキ制御装置14へ、内燃機関2の再始動を開始する信号を出力する。また、アイドリングストップ制御システム20は、このとき、スタータ4を作動させる。
内燃機関制御装置11、トランスミッション制御装置13、ブレーキ制御装置14は、前記開始信号が入力した後、各々が制御する各被制御部品を内燃機関2の再始動状態に制御する。内燃機関制御装置11については、スタータ4の作動後、内燃機関2を始動させる。
【0020】
このアイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御の実行中にスリップ制御および/またはブレーキアシスト制御が実行された時に、ブレーキ制御の実行をトリガとしてアイドリングストップ制御を解除するか継続するかを開始時判定手段24で判定する。開始時判定手段24は、実行されたスリップ制御またはブレーキアシスト制御の種類毎に、実行時間、実行開始時のブレーキペダル15の踏み込み状態(ブレーキマスタシリンダ圧)、実行開始時の車速のうちの、少なくとも1つを開始時判定条件とする。
例えば、本来、アクセルペダル12の踏み込みによる車輪のスリップで実行されるトラクション制御が、減速時アイドリングストップ制御の実行中にごく短時間実行された場合、それは路面上の段差(道路工事でアスファルトが剥がされた境目など)を車輪が降りたり登ったりして実行された場合がほとんどである。この場合、開始時判定手段24は、実行継続時間が所定時間内であれば、アイドリングストップ制御を継続する(解除しない)と判定することができる。
また、ブレーキペダル15を強く踏み込んでいない(ブレーキマスタシリンダ圧が大きくない)にもかかわらず、アンチロック制御が実行された場合、非常に滑りやすい路面上に停車していると考えられる。この場合、開始時判定手段24は、すぐ発進可能なように、アイドリングストップ制御を解除すると判定することができる。
さらに、スタビリティ制御が実行された場合、実行時の車速によってはアイドリングストップ制御の解除(内燃機関2の再始動)によるドライブシャフトのトルク変動が実行中のスタビリティ制御に悪影響を及ぼすことも考えられる。このため、開始時判定手段24は、アイドリングストップ制御を継続する(解除しない)と判定することができる。
さらにまた、ブレーキアシスト制御が実行された場合、実行時の車速によってはアイドリングストップ制御の解除(内燃機関2の再始動)によるクリープ力発生が悪影響を及ぼすことも考えられる。このため、開始時判定手段24は、アイドリングストップ制御を継続する(解除しない)と判定することができる。
【0021】
また、アイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御の実行中のブレーキ制御の実行開始で前記開始時判定手段24によりアイドリングストップ制御を継続すると判断した場合の、ブレーキ制御の終了をトリガとしてアイドリングストップ制御を解除するか継続するかを終了時判定手段25で判定する。終了時判定手段25は、実行されたスリップ制御またはブレーキアシスト制御の種類毎に、実行時間、実行開始から終了までのブレーキペダル15の踏み込み状態(ブレーキマスタシリンダ圧の値と変化状態)、実行開始から終了までの車速(値と変化状態)のうちの、少なくとも1つを終了時判定条件とする。
例えば、ブレーキペダル15が強踏み込み(ブレーキマスタシリンダ圧が大きい)でアンチロック制御が実行開始され、実行開始時に前記開始時判定手段24によりアイドリングストップ制御の継続と判定された場合、アンチロック制御が短時間で終了し、終了時には車速が大きく低下していて停車寸前であるなら、アンチロック制御の実行によって車輪のロック状態は回避完了したと考えられる。これより、終了時判定手段25は、アイドリングストップ制御を継続すると判定することができる。
また、本来、アクセルペダル12の踏み込みによる車輪のスリップで実行される場合がほとんどであるトラクション制御が実行開始され、実行開始時に前記開始時判定手段24によりアイドリングストップ制御を継続と判定された場合、終了時判定手段25は、実行開始から終了までのブレーキペダル15の踏み込み状態(ブレーキマスタシリンダ圧の値と変化状態)に変化なければ、終了時にアイドリングストップ制御を継続すると判断することもできる。
さらに、スタビリティ制御が実行開始され、実行開始時に前記開始時判定手段24によりアイドリングストップ制御を継続と判定された場合、終了時判定手段25は、実行終了時の車速によっては駆動力を回復させた方が車両1が安定するような状況では、終了時にアイドリングストップ制御を解除すると判断することができる。
さらにまた、ブレーキアシスト制御が実行開始され、実行開始時に前記開始時判定手段24によりアイドリングストップ制御を継続と判定された場合、終了時判定手段25は、実行終了時のブレーキペダル15の踏み込み状態が十分な制動力を確保しており、所定の車速以上であるような状況では、すぐ発進可能なように、アイドリングストップ制御を解除すると判定することができる。
【0022】
このように、アイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止中にスリップ制御やブレーキアシスト制御の各種ブレーキ制御が実行された場合に、所定の開始時判定条件に基づいて内燃機関2の自動停止を解除するか継続するかを判定するため、車両2の挙動を安定させ、運転者に不安感を与えないようにすることができる。
また、このアイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を継続すると判定した場合に、不要な内燃機関2の自動停止解除を抑制して、燃料消費を抑えることができる。
さらに、このアイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止中にスリップ制御やブレーキアシスト制御などの各種ブレーキ制御が実行されて、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を継続した場合に、各種ブレーキ制御の終了時に所定の終了時判定条件に基づいて減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を解除するか継続するかを判定するため、車両挙動を安定させ、運転者に不安感を与えないようにすることができる。
さらにまた、このアイドリングストップ制御システム20は、減速時アイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止を継続すると判定した場合には、不要なアイドリングストップ制御による内燃機関2の自動停止解除を抑制して、燃料消費を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、車両挙動を安定させ、運転者に不安感を与えないようにし、不要な内燃機関の自動停止解除を抑制して、燃料消費を抑えることができるものであり、四輪車以外で二輪車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
2 内燃機関
3 トランスミッション
4 スタータ
7 右車輪
8 左車輪
11 内燃機関制御装置
13 トランスミッション制御装置
14 ブレーキ制御装置
18 スリップ制御手段
19 ブレーキアシスト制御手段
20 アイドリングストップ制御システム
21 アイドリングストップ制御手段
22 車内LAN(CAN)
23 ブレーキランプスイッチ
24 開始時判定手段
25 終了時判定手段
図1
図2
図3