特許第6032431号(P6032431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6032431-廃棄物ガス化溶融処理装置 図000002
  • 特許6032431-廃棄物ガス化溶融処理装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032431
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20161121BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161121BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20161121BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20161121BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20161121BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20161121BHJP
   F23L 15/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F23G5/44 FZAB
   B09B3/00 302F
   B01D53/26 231
   F23L7/00 B
   C10J3/00 L
   F27D17/00 101A
   F23L15/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73757(P2013-73757)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199146(P2014-199146A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−060830(JP,A)
【文献】 特開2004−116789(JP,A)
【文献】 特開2012−166128(JP,A)
【文献】 特開2000−074332(JP,A)
【文献】 特開昭54−036654(JP,A)
【文献】 特開2008−002753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00 − 7/14
F23L 1/00 − 99/00
F27D 17/00 − 99/00
C10J 3/00 − 3/86
B09B 1/00 − 5/00
B01D 53/26 − 53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉を有する廃棄物ガス化溶融処理装置において、
外気から取り入れた空気を除湿して乾燥空気を調製する除湿装置と、該乾燥空気に酸素を混合した酸素富化空気をコークス床へ供給する酸素富化空気供給機構とを備え、
上記除湿装置は、空気中の水分を吸着して除湿する吸着剤を収容する少なくとも二つの吸着塔と、外気から取り入れた空気を上記吸着塔に送る除湿手段と、水分を吸着した上記吸着剤から水分を脱着して吸着剤の再生を行うために加熱再生用ガスを上記吸着塔に供給する再生手段とを有し、一つの吸着塔で除湿を行うと共に、他の吸着塔で吸着剤の再生を行い、一つの吸着塔と他の吸着塔で除湿と再生を交互に行うように、除湿手段と再生手段とが構成されおり、
上記再生手段は、除湿運転中の吸着塔から抜き出される乾燥空気の一部を加熱し上記加熱再生用ガスを調製する加熱装置を備え
上記加熱装置は、上記乾燥空気の一部を熱媒との熱交換により加熱し上記加熱再生用ガスを調製する第一熱交換器と、廃棄物ガス化溶融炉から排出される排ガスとの熱交換により上記熱媒を加熱する第二熱交換器と、上記第一熱交換器と上記第二熱交換器との間に上記熱媒を循環させる熱媒循環路と、該熱媒循環路の途中に設けられ熱媒を圧送するポンプと、該ポンプを制御する制御装置とを有し、
上記制御装置は、第一熱交換器で計測する加熱再生用ガスの温度に基づいて、ポンプの動作を制御して熱媒の流量を調整し、第一熱交換器で形成される加熱再生用ガスの温度を調整することを特徴とする廃棄物ガス化溶融処理装置。
【請求項2】
吸着塔に収納される吸着剤は、吸着塔内に装入及び取り外し可能なカートリッジとして形成され、該カートリッジは、上記吸着剤により形成された平板状の充填層が、複数平行となるように配置されていると共に、各充填層の一方の側面側に供給された空気又は加熱再生用ガスが、上記充填層を通過して他方の側面側に抜けるようなガス流を形成するように構成されていることとする請求項1に記載の廃棄物ガス化溶融処理装置。
【請求項3】
コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉を有する廃棄物ガス化溶融処理装置において、
外気から取り入れた空気を除湿して乾燥空気を調製する除湿装置と、該乾燥空気に酸素を混合した酸素富化空気をコークス床へ供給する酸素富化空気供給機構とを備え、
上記除湿装置は、空気中の水分を吸着して除湿する吸着剤を収容する吸着塔と、外気から取り入れた空気を上記吸着塔に送る除湿手段と、水分を吸着した上記吸着剤から水分を脱着して吸着剤の再生を行うために加熱再生用ガスを上記吸着塔に供給する再生手段とを有し、
吸着塔に収納される吸着剤は、吸着塔内に装入及び取り外し可能なカートリッジとして形成され、該カートリッジは、上記吸着剤により形成された平板状の充填層が、複数平行となるように配置されていると共に、各充填層の一方の側面側に供給された空気又は加熱再生用ガスが、上記充填層を通過して他方の側面側に抜けるようなガス流を形成するように構成されており、
吸着塔は少なくとも二つのカートリッジを備え、一つのカートリッジ除湿を行うとに、他のカートリッジ吸着剤の再生を行い、一つのカートリッジと他のカートリッジで除湿と再生を交互に行うように、除湿手段と再生手段とが構成されており、
上記再生手段は、除湿運転中のカートリッジから抜き出される乾燥空気の一部を加熱し上記加熱再生用ガスを調製する加熱装置を備え、
上記加熱装置は、上記乾燥空気の一部を熱媒との熱交換により加熱し上記加熱再生用ガスを調製する第一熱交換器と、廃棄物ガス化溶融炉から排出される排ガスとの熱交換により上記熱媒を加熱する第二熱交換器と、上記第一熱交換器と上記第二熱交換器との間に上記熱媒を循環させる熱媒循環路と、該熱媒循環路の途中に設けられ熱媒を圧送するポンプと、該ポンプを制御する制御装置とを有し、
上記制御装置は、第一熱交換器で計測する加熱再生用ガスの温度に基づいて、ポンプの動作を制御して熱媒の流量を調整し、第一熱交換器で形成される加熱再生用ガスの温度を調整することを特徴とする廃棄物ガス化溶融処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉を有する廃棄物ガス化溶融処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、ガス化して可燃性ガスを発生させ、熱分解残渣を溶融しスラグにして排出するガス化溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、残渣を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような処理を行なう溶融炉には幾つかの方式があるが、その一つとして、コークス床を有するシャフト式廃棄物ガス化溶融炉がある。
【0004】
このシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉底部に堆積させた燃料としてのコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに残渣を溶融してスラグにする処理を行う方式の炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉底部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれで酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、投入されて堆積されたコークス床のコークスを燃焼させて、廃棄物の熱分解残渣を溶融する溶融熱源を得るために酸素富化空気が吹き込まれる。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させるとともに、廃棄物を熱分解及び部分酸化させるために空気が吹き込まれる。また、フリーボード部には三段目羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するために空気が吹き込まれる。
【0007】
このようにシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の熱分解残渣が溶融されスラグとメタルとして排出される。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出煙道より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、酸性ガス中和剤との反応により酸性ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して熱分解残渣の溶融熱源となっているが、近年、化石燃料に由来するコークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減するとともに、廃棄物溶融炉の運転費を低減することが要望されている。
【0009】
しかし、特許文献1のシャフト式廃棄物ガス化溶融炉では、主羽口から炉内のコークス床に吹き込まれる酸素富化空気は、通常、外気から取り込んだ空気に酸素を混合することにより調製される。上記空気には水分が含まれているため、水分を含む酸素富化空気をコークス床へ吹き込むとコークスと水分との反応が生じ、コークスはその反応にも消費されるので、ガス化溶融炉へ供給するコークス量は、燃料として用いる分と上述の反応分とが必要となっており、コークス使用量が嵩んでいる。
【0010】
空気中に含まれる水分とコークスとの反応を低減させることに関して、特許文献2では、コークスを燃料として用いるキューポラ等の燃焼炉へ供給される空気を、二段に設けられた除湿装置によって予め除湿することが開示されている。この特許文献2では、一段目の除湿装置は、冷凍機で冷却された冷媒との熱交換により空気を冷却して除湿する冷凍除湿機として構成されており、二段目の除湿装置は、吸着剤が充填され該吸着剤で空気中の水分を吸着して除湿する乾式除湿ロータとして構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2004−116789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献2では、一段目の除湿装置として冷凍除湿機を用いているので、冷媒を冷却するための冷凍機等、上記冷凍除湿機以外の設備をも設ける必要があり、その分、設備費用が嵩む。
【0013】
そこで、本発明は、コークスを燃料とする廃棄物ガス化溶融炉でのコークスの使用量を低減するために酸素富化空気を除湿して炉内へ供給する廃棄物ガス化溶融処理装置を安価に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る廃棄物ガス化溶融処理装置は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉を有する。
【0015】
かかる廃棄物ガス化溶融処理装置において、本発明では、外気から取り入れた空気を除湿して乾燥空気を調製する除湿装置と、該乾燥空気に酸素を混合した酸素富化空気をコークス床へ供給する酸素富化空気供給機構とを備え、上記除湿装置は、空気中の水分を吸着して除湿する吸着剤を収容する吸着塔と、外気から取り入れた空気を上記吸着塔に送る除湿手段と、水分を吸着した上記吸着剤から水分を脱着して吸着剤の再生を行うために加熱再生用ガスを上記吸着塔に供給する再生手段とを有しており、該再生手段は、除湿運転中の吸着塔から抜き出される乾燥空気の一部を熱媒との熱交換により加熱し上記加熱再生用ガスを調製する第一熱交換器と、廃棄物ガス化溶融炉から排出される排ガスとの熱交換により上記熱媒を加熱する第二熱交換器と、上記第一熱交換器と上記第二熱交換器との間に上記熱媒を循環させる熱媒循環路とを有していることを特徴としている。
【0016】
本発明では、酸素富化空気は、吸着塔の吸着剤により除湿された乾燥空気に酸素を混合されて炉内のコークス床へ供給されるので、コークスと水分との反応は生じず、この反応によってコークスが消費されることがなく、コークスの使用量を低減できる。
【0017】
また、本発明では、廃棄物ガス化溶融炉から排出される排ガスから第二熱交換器によって回収した熱を、第一熱交換器で再生用ガスを加熱するための熱源として利用するので、再生用ガスの加熱のためのエネルギー源を別途用意する必要がなくなり、省エネルギー化を図ることができる。また、本発明において、「排ガスとの熱交換」とは、排ガスと熱媒との直接的な熱交換に限られず、間接的な熱交換をも含むものとする。「間接的な熱交換」とは、例えば、排ガスの熱をボイラで回収して蒸気を発生させて、その蒸気と熱媒とを熱交換することにより実現される。
【0018】
本発明において、吸着塔は少なくとも二つ設けられていて、一つの吸着塔において除湿を行うとともに、他の吸着塔において吸着剤の再生を行うように、除湿手段と再生手段とが構成されているようにすることができる。こうすることで、一方の吸着塔と他方の吸着塔で、除湿と再生を交互に行うことができ、その結果、除湿と再生を中断させることなく連続して実行できる。
【0019】
本発明において、吸着塔に収納される吸着剤は、吸着塔内に装入及び取り外し可能なカートリッジとして形成され、該カートリッジは、上記吸着剤により形成された平板状の充填層が、複数平行となるように配置されていると共に、各充填層の一方の側面側に供給された空気又は加熱再生用ガスが、上記充填層を通過して他方の側面側に抜けるようなガス流を形成するように構成されているようにすることができる。こうすることで、各充填層における単位体積当たりの吸着剤比表面積が高くなり、除湿効率を向上させることができるので、従来のように冷凍除湿機ひいては冷凍機等を設ける必要がなくなり、設備費用を低減できる。
【0020】
本発明において、吸着塔は少なくとも二つのカートリッジを備え、一つのカートリッジにおいて除湿を行うとともに、他のカートリッジにおいて吸着剤の再生を行うように、除湿手段と再生手段とが構成されているようにすることができる。こうすることで、吸着塔が一つでも、二つのカートリッジの運転の切り換えにより、吸着塔全体としては、除湿と再生を中断なく連続して実行できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以上のように、酸素富化空気中の水分とコークスとの反応が生じないので、コークスの使用量を低減できる。また、廃棄物ガス化溶融炉から排出される排ガスから回収した熱を、再生用ガスを加熱するための熱源と利用するので、再生用ガスの加熱のためのエネルギー源を別途用意する必要がなくなり、省エネルギー化を図ることができる。さらに、既述の構成のカートリッジによって高い除湿効率で空気の除湿が行われるので、従来のように冷凍除湿機ひいては冷凍機等を設ける必要がなくなり、設備費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る廃棄物ガス化溶融処理装置を示す概略構成図である。
図2】本発明に係るカートリッジの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
本発明に係る廃棄物ガス化溶融処理装置を示す概略構成図である。図1に示されるように、本実施形態の廃棄物ガス化溶融処理装置は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉10(以下、「ガス化溶融炉10」という)と、外気から取り入れた空気を除湿して乾燥空気を調製する除湿装置20と、乾燥空気に酸素を混合した酸素富化空気をコークス床へ供給する酸素富化空気供給機構30とを備えている。
【0025】
ガス化溶融炉10は、既述した従来の廃棄物ガス化溶融炉と同様の構成であるので、ここでは説明を省略する。また、酸素富化空気供給機構30は、炉内のコークス床へ酸素富化空気を吹き込むための主羽口(図示せず)に接続された送気管として形成されている。該送気管には、該送気管内に酸素を送入するための分枝口が形成されており、該送気管内を流れる乾燥空気に上記分枝口から酸素が送入されて該乾燥空気に混合することにより酸素富化空気が形成される。そして、該酸素富化空気が上記主羽口から上記コークス床へ吹き込まれるようになっている。
【0026】
除湿装置20は、外気から取り入れた空気中の水分の吸着除湿を行い、水分を吸着した吸着剤の再生を行う装置である。該除湿装置20は、空気中の水分を吸着させるための吸着剤を収納する同一構成の二つの吸着塔A,Bと、空気中の水分を吸着させ除湿を行うためにこの吸着塔A,Bに空気を送る除湿手段40と、水分を吸着した吸着剤から水分を脱着して吸着剤の再生を行うために吸着塔A,Bに加熱再生用ガス(以下、「加熱ガス」という)を供給する再生手段50とを有する。本実施形態では、吸着剤を充填した平板状の充填層を平行に複数配置して構成されたカートリッジが、吸着塔A,B内に装着及び取り外しが可能、つまり着脱可能に収納されている。このカートリッジについては、後に詳述する。また、本実施形態では、除湿に用いる吸着剤として、一般的な除湿剤であるシリカゲルやゼオライト等が使用される。
【0027】
本実施形態では、上記除湿手段40と再生手段50は、一方が吸着塔Aに接続されているときは他方が吸着塔Bに接続され、そして、その逆の接続も交互になされるように、接続切り換え可能となっている。図1は、除湿手段40が吸着塔Aに、そして再生手段50が吸着塔Bに接続されている状態を示している。
【0028】
上記除湿手段40は、図1の状態において、外気から空気を吸着塔A内に導入するための導入配管41と、この導入配管41の途中に設けられ、空気を吸着塔A内に所定の圧力で導入するためのファン42とにより構成されている。上記空気は、上記ファン42により所定の圧力に加圧されて、吸着塔Aへ供給される。吸着塔A内に供給された空気は、収納される吸着剤の間を通過する際に、その中に含有される水分が吸着剤に吸着され、除湿された乾燥ガスとして吸着塔Aから抜き出される。該乾燥ガスは、酸素富化空気供給機構30で酸素が混合されて酸素富化空気となり、ガス化溶融炉10の主羽口からコークス床へ吹き込まれる。このように、本実施形態では、上記酸素富化空気は吸着剤により除湿された乾燥空気に酸素が混合され調製されてから炉内のコークス床へ供給されるので、コークスと水分との反応は生じず、この反応によってコークスが消費されることがなく、コークスの使用量を低減できる。また、吸着塔Aからの上記乾燥ガスの一部は、吸着塔Bの吸着剤の再生を行うための再生用ガスとして抜き出される。
【0029】
一方、上記再生手段50は、図1の状態において、吸着剤に吸着された水分を脱着するために該吸着剤を加熱する加熱ガスを吸着塔Bに供給する導入配管51と、吸着塔Aから抜き出された乾燥空気の一部である再生用ガスを加熱して上記加熱ガスを調製するための加熱装置60と、吸着塔Bから含水ガスを排出する排出配管52と、該排出配管52の途中に設けられ上記吸着塔Bからの上記含水ガスを誘引するファン53と、ガス化溶融炉10からの排ガスを大気中へ排出するための排出配管54とを有している。
【0030】
加熱装置60は、上記導入配管51の途中に設けられた第一熱交換器61と、上記排出配管54の途中に設けられた第二熱交換器62と、第一熱交換器61および第二熱交換器62に接続され両者間に熱媒を循環させる熱媒循環路63と、該熱媒循環路63の途中に設けられ熱媒を圧送するポンプ64と、該ポンプ64を制御する制御装置65とを有している。第一熱交換器61は、吸着塔Aから抜き出された再生用ガスを上記熱媒との熱交換により加熱して加熱ガスを調製する。第二熱交換器62は、ガス化溶融炉10から排出された高温の排ガスとの熱交換により熱媒循環路63内を流れる熱媒を加熱する。該第二熱交換器62で加熱された熱媒は、ポンプ64によって第一熱交換器61へ向けて圧送され、該第一熱交換器61にて導入配管51内を流れる再生用ガスとの熱交換により該再生用ガスを加熱して加熱ガスとする。制御装置65は、第一熱交換器61で計測された加熱ガスの温度に基づいて、ポンプ64の動作を制御して熱媒の流量を調する。該熱媒の流量が調整されることにより、第一熱交換器61で形成される加熱ガスの温度を調整することができる。
【0031】
このように、本実施形態では、ガス化溶融炉10から排出される排ガスから第二熱交換器62によって回収した熱を、第一熱交換器61で再生用ガスを加熱するための熱源として利用するので、再生用ガスの加熱のためのエネルギー源を別途用意する必要がなくなり、省エネルギー化を図ることができる。また、本実施形態では、第二熱交換器62にて排ガスと熱媒とを直接的に熱交換することとしたが、熱交換の形態はこれに限られず、間接的に熱交換することも可能である。例えば、排ガスの熱をボイラで回収して蒸気を発生させて、その蒸気と熱媒とを熱交換することとしてもよい。
【0032】
本実施形態では、図1に示すように、一方の吸着塔Aで空気中の水分の吸着、除湿を行っている間に、他方の吸着塔Bにおいて、吸着剤に吸着させた水分の脱着、再生を行う。逆に、吸着塔Bで空気中の水分の吸着、除湿を行っている間は、吸着塔Aにおいて、吸着剤に吸着させた水分の脱着、再生を行う。このように、吸着除湿と脱着再生をそれぞれの吸着塔A,Bで交互に行うことで、空気の吸着除湿処理を連続して行うことができる。
【0033】
図1の例では、上述したように、二つの吸着塔A,Bに対して、除湿手段40そして再生手段50を交互に切り換え可能に接続されているが、吸着塔A,Bのそれぞれに対して、除湿手段40と再生手段50の両方を専用に備えるようにして、それぞれの吸着塔A,Bにおいて、専用の除湿手段40と再生手段50とを切り換えて使用するようにしてもよい。
【0034】
このようにして、吸着塔A,Bと、除湿手段40そして再生手段50とにより、空気の吸着除湿と吸着剤の脱着再生は、連続的になされる。その際、空気の吸着除湿を行っている吸着塔Aと、吸着剤の脱着再生を行っている吸着塔Bの作動について、以下、さらに詳述する。
【0035】
<吸着塔A>
除湿処理前に水分を含んでいる空気をフィルタ(図示せず)により除塵し、ファン42により吸着塔Aに供給する。水分は吸着剤に吸着され空気が除湿されて乾燥ガスとなる。この乾燥ガスは、既述したように、酸素富化空気供給機構30で酸素が混合されて酸素富化空気となり、ガス化溶融炉10の主羽口からコークス床へ吹き込まれる。また、吸着塔Aからの上記乾燥ガスの一部は、吸着塔Bの吸着剤の再生を行うための再生用ガスとして抜き出される。
【0036】
<吸着塔B>
水分を吸着した吸着剤に、導入配管51を経て加熱ガスを供給し、吸着剤を加熱して水分を脱着し、吸着剤を再生する。本実施形態では、図1に見られるように、吸着塔Aからの乾燥空気を再生用ガスとして抜き出し、該再生用ガスを第一熱交換器61で熱媒との熱交換により、吸着剤の水分脱着に適した温度に加熱して加熱ガスとする。吸着塔Bから排出配管52を経て抜き出された含水ガス(排ガス)は、ファン53により誘引されて大気へ放出される。
【0037】
吸着塔B内で脱着再生された吸着剤は、加熱されたままで、また冷却されていない状態であるので、吸着除湿に適した温度にまで冷却される。この冷却は、自然放冷でも乾燥ガスとの接触による冷却でも、あるいは吸着剤充填層内に設けた冷却管や水冷ジャケットによる冷却でもよい。脱着再生された吸着剤は、適温にまで温度が低下した後、吸着除湿運転に供される。
【0038】
次に、本実施形態で採用されるカートリッジ式吸着剤充填層構造について説明する。
【0039】
<カートリッジ式吸着剤充填層構造>
本発明のカートリッジ式吸着剤充填層構造を側流式複層構造ということもある。
【0040】
図2に、本実施形態のカートリッジ70の構成の一例を示す。図2に示すように、該カートリッジ70は、例えば、空気に対して耐腐食性を有する剛体で構成される筐体71の内部に、既述の吸着剤により形成された平板状の充填層72を、それぞれが平行となるように、さらには、好ましくはそれぞれが面対称となるように複数配置することにより構成される。そして、この筐体71を吸着塔A,B内部に、装入及び取り外し可能、つまり着脱可能に構成することで、カートリッジとしての吸着剤が構成できる。ここでは、吸着剤をカートリッジ構造として、吸着塔内に着脱可能とすることで、吸着剤の交換や装置内の点検等のメンテナンスを容易に行なうことが可能となる。
【0041】
ここで、上記充填層72の構成の一例について説明する。ここで、空気の除湿時にて空気を充填層72に供給する場合について説明するが、吸着剤の再生時にて加熱ガスを充填層72に供給する場合も同様である。充填層72は、その外枠となる収納ケースに、吸着剤を充填することで構成できる。なお、該収納ケースには、その中に充填される吸着剤の交換を容易とするための開閉可能な蓋部が設けられており、吸着剤は、収納ケース内において、該蓋部との隙間がなく圧密充填される。収納ケース内に吸着剤を圧密充填する方法としては、例えば、バイブレータで振動を与えながら充填する、充填時に棒などで上から押さえつけるなどの方法が挙げられる。また、吸着剤と蓋部との間にも隙間が生じない様に、グラスウールなどの緩衝材を用いて圧着させてもよい。これにより、この充填層72を通過する空気のショートパス(吸着剤を透過しない吹き抜け)を防止でき、吸着剤と空気との接触効率を高くすることが可能となる。さらに、空気の充填層72を通過する流速を速くした場合においても、吸着剤の流動を防止できる。
【0042】
上記収納ケースの形状は、充填層72内を空気が均一に通過できること、さらに、ケースの製作が比較的容易であることなどを考慮すると、平板状が一般的であるが、この収納ケースが、実質的に平行な表裏1組の面を、一方をガス流入側面、他方をガス流出側面として有していれば平板状に限られるものではない。
【0043】
また、上記収納ケースの材質は耐久性、耐熱性の観点から鋼鉄製、ステンレス製などの金属製とすることが好ましく、また、ガス流入側面及びガス流出側面は、これらの金属からなる金網、パンチングメタル(打抜金網)などの通気性を有する素材から形成することが好ましい。上記ガス流入側面及びガス流出側面は通常は平面であり、また、互いに実質的に平行であることが好ましい。なお、これらガス流入側面及びガス流出側面は通常は共に四角形で、かつ、面対称とすることが好ましい。
【0044】
また、吸着剤としては、既述したように、シリカゲルやゼオライト等の無機吸着剤を用いることができ、吸着、脱着性能に優れた吸着剤が好ましい。使用する吸着剤の粒径は、小さいほど吸着/脱着速度が上がり有利である。しかし、粒径が小さすぎる場合は、充填層72での圧力損失が大きくなってしまう。また、上記収納ケースにおけるガス流入側面及びガス流出側面として必要な強度を確保しながら、より粒径の小さい吸着剤の保持が可能な、充分に小さい孔を有するガス透過面の作製が困難ないし実用的でなくなる。そのため、吸着剤の粒径は0.5〜2.4mm程度のものが好ましい。
【0045】
次に、図2により、カートリッジ70内でのガス流れの挙動を説明する。空気は、図2に示すように、上記カートリッジ70のガス流入側に設けられた流入口73から、上記カートリッジ70の内部に配置された充填層72の一方の側面側であるガス流入側面側にのみ供給される。そして、上記充填層72のガス流入側面側に供給された空気は、充填層72を通過して他方の側面側であるガス流出側面側に抜けて、上記カートリッジ70のガス流出側に設けられた流出口74から排出される。このように、カートリッジ70内に供給された空気は、いわゆる側流式のガス流れを形成するように、吸着剤の充填された充填層72を通過するように構成される。
【0046】
上記カートリッジ70の内部には、複数の充填層72が平行となるように、好ましくはそれぞれが面対称となるように配置されているが、充填層72を挟んで一方の側面がガス流入側面、他方の側面がガス流出側面となるように配置される。ここで、充填層72のガス流出側面側のガス流入側(図では上方)には、空気が直接供給されないように、ガスの進入を遮断するための遮断板75が設けられている。また、充填層72のガス流入側面側のガス流出側(図では下方)には、充填層72を通過しないガスがそのままカートリッジ70の外に排出されないように遮断板が設けられている。これにより、充填層72のガス流入側面側に供給された空気は、必ず充填層72を通過して、ガス流出側面側から排出されるという側流式のガス流れが形成される。
【0047】
カートリッジ70内において、充填層72を、複数が平行となるように、好ましくはそれぞれが面対称となるように配置し、さらに、空気の流れを側流式のガス流れとすることで、カートリッジ70内における空気の流れが均一化され、空気が接触する充填層72の有効面積を大きくとることが可能となる。これにより、吸着剤と空気との接触効率が高まり、高い吸着性能が発揮され、同じ吸着性能の装置であれば吸着塔A,Bの設置面積を小さくすることが可能となり、設備費及びランニングコストを低減でき経済的である。さらに、空気が接触する充填層72の有効面積を大きくとることができるため、充填層72を通過する空気の流速が遅くなり、充填層72での圧力損失が小さく、ファン又はブロワーが小型化でき経済的である。
【0048】
カートリッジ70内に供給された空気は、充填層72を通過する際に、その中に含有される水分が吸着剤に吸着される。これにより、充填層72を通過し、水分が吸着剤に吸着され除湿された乾燥ガスがカートリッジ70から排出される。
【0049】
ここで、上記充填層72の層厚は、10mm以上、100mm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは30mm以上、50mm以下である。
【0050】
本発明においては、上述の構成とすることで、カートリッジ70内における空気の流れが均一化され、空気が接触する充填層72の有効面積を大きくとることが可能となる。そのため、充填層72の層厚を、好ましくは10mm以上、100mm以下、さらに好ましくは30mm以上、50mm以下と薄くした場合においても、空気中から水分を除湿するために必要な吸着剤との最低限の接触時間を確保できる。また、充填層72の層厚を薄くできるため、充填層72を通過する際の圧力損失を低く抑えることが可能となる。これにより、低圧損と吸着及び脱着性能を共に両立でき、非常に効率的である。
【0051】
また、充填層72は、層厚が100mm以下と薄いため、空気中の水分が吸着剤に吸着する時に発生する吸着熱の放熱が容易であり、吸着剤の温度上昇による吸着性能の低下が防止できる。さらに、加熱ガスを供給し吸着剤を加熱して脱着再生を行う場合は、吸着剤における熱の出入りを早くでき、温度変化が迅速に行われるため、効率的に再生運転することができる。
【0052】
ここで、上記充填層72の設置数は、空気の流量や水分の含有率等により適宜設定し得るものである。
【0053】
また、本発明においては、吸着塔内において、上記カートリッジ70を2基以上分割して吸着塔内に並列または直列に設置してもよい。この場合、それぞれのカートリッジ70を、独立に吸着塔A,B内に装入及び取り外し可能、つまり着脱可能に構成することが好ましい。
【0054】
吸着塔内にカートリッジを並列に設置する場合は、吸着塔の圧力損失を低く維持することが可能となる。また、カートリッジを直列に設置する場合には、その分圧力損失は上昇するものの、本発明においては、上述のカートリッジ構造とすることで、そもそもカートリッジ一基あたりの圧力損失が低いため、問題にならない程度に維持できる。
【0055】
さらに、吸着剤の性能が劣化した場合や、フィルタ等の除塵設備の不具合等により空気中に含まれるダストが増加し、それが吸着剤に堆積した場合等においても、上流側のカートリッジから交換することで、全ての吸着剤を交換する必要が無くなり、非常に効率的である。また、カートリッジ構造とすることで交換も容易である。なお、カートリッジの配置を並列、直列いずれに配置するか、あるいはどのようにこれらを組み合わせて配置するかは、装置の使用条件等に応じて適宜設定し得るものである。
【0056】
このように、吸着剤充填層を側流式複層構造とすることにより、吸着剤充填層の体積当たりの吸着剤比表面積を大きくすることができ、吸着除湿効率、脱着再生効率を高くすることができる。したがって、従来のように冷凍除湿機ひいては冷凍機等を設ける必要がなくなり、設備費用を低減できる。
【0057】
また、吸着剤層を薄く、多層にしているので、吸着除湿時に発生する吸着熱を効果的に放熱でき、吸着除湿性能の低下を抑制できる。
【0058】
さらに、吸着除湿時に吸着塔の抜熱を行うことを省略または小さくすることができるので、装置をコンパクトにできる。
【0059】
さらに、脱着再生時に吸着剤に供給する加熱ガス量を従来技術に比べて低減できるので装置をコンパクトにでき、加熱装置60の運転費を低減できる。
【0060】
本実施形態では、吸着塔を吸着塔として二基設置する場合を示していたが、これに代えて、吸着塔を三基以上設置してもかまわない。この場合、それぞれの吸着塔を、吸着除湿、脱着再生、冷却の各工程に振り分けて運転することができる。
【0061】
また、本実施形態では、二基の吸着塔のうち、一方の吸着塔に設けられたカートリッジで除湿を行い、他方の吸着塔に設けられたカートリッジで再生を行うこととしたが、これに代えて、一基の吸着塔で除湿および再生が同時に行われることとしてもよい。例えば、吸着塔に少なくとも二つのカートリッジを設けて、一つのカートリッジにおいて除湿を行うとともに、他のカートリッジにおいて吸着剤の再生を行うように、除湿手段と再生手段とが構成されていてもよい。こうすることで、吸着塔が一つでも、二つのカートリッジの運転の切り換えにより、吸着塔全体としては、除湿と再生を中断なく連続して実行できる。
【符号の説明】
【0062】
10 (廃棄物)ガス化溶融炉
20 除湿装置
30 酸素富化空気供給機構
40 除湿手段
50 再生手段
60 加熱装置
70 カートリッジ
72 充填層
61 第一熱交換器
62 第二熱交換器
63 熱媒循環路
図1
図2