【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は氷水槽に係り、その特徴は、
水とともに槽内に貯留した氷を、水流入路からの槽内への水流入に伴い、槽内水との混合状態で槽内から氷水給送路へ送出する氷水槽であって、
横向き軸芯周りでの回転により氷集合体の表面部に切れ込ませて氷集合体の表面部から氷片をくり貫く線状具を水平方向に多数並べて細氷化部を構成し、
氷流入路を通じ槽内下部に流入して槽内水中を浮上する氷粒群を前記細氷化部で受けとめて前記細氷化部の下方に堆積させる状態に、前記細氷化部を槽内水の水面下に配置し、 前記細氷化部の下方に堆積した氷集合体の上面部から多数の前記線状具によりくり貫いた分散状態の氷片を、前記水流入路からの水流入に伴い、前記細氷化部の上方において槽内水との混合状態で槽内から前記氷水給送路へ送出する構成にしてある点にある。
【0010】
この構成によれば、氷流入路を通じ槽内下部に流入して槽内水中を浮上する氷粒群を、槽内水の水面下に配置した細氷化部で受けとめて細氷化部の下方に堆積させるから、換言すれば、氷粒群の全体を槽内水の水面下において水中に貯留するから、浮上する氷粒群を上部が水面上に露出する氷山状の自由な浮遊堆積状態で槽内に貯留するのに比べ、氷粒群の氷塊化を効果的に抑止することができる。
【0011】
即ち、氷粒群を氷山状の自由な浮遊堆積状態で貯留した場合、槽内水よりも温度の高い水面上の空気に晒されること、融解水の保有冷熱が融解水とともに氷粒どうしの接触面に供給されること、並びに、水面上露出部分の重量が圧縮力となって氷粒どうしの接触面に作用することなどが結合要因となって氷粒群の氷塊化が促進されるが、氷粒群の全体を水中に貯留した場合、これらの結合要因が満たされないことで氷粒群の氷塊化を効果的に抑止することができる。
【0012】
つまり、上記構成では、氷粒群の堆積により形成される氷集合体が、浮力により、細氷化部の下面部に対して上向き押圧状態で接する状態となることに対し、その状態下において細氷化部における多数の線状具を横向き回転軸芯周りで回転させることにより、それら多数の線状具の夫々を氷集合体の上面部に切れ込ませて氷集合体の上面部から多数の氷片をくり貫く細氷化運転を実施するが、この際、上記の水中貯留により氷粒群の氷塊化が効果的に抑止されていることで、線状具による氷片のくり貫きは容易に行われる。
【0013】
そして、この細氷化運転において多数の線状具の回転により氷集合体の上面部から次々にくり貫かれて槽内水における細氷化部の上方域へ分散状態で浮上する多数の氷片を、水流入路からの水流入に伴い、槽内水との混合状態で槽内から氷水給送路へ送出し、これにより、氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルを防止して槽内氷水を氷水必要部に対し円滑かつ安定的に給送する。
【0014】
ここで、例えば針金を氷に押し当てて氷を切断するとの同様、線状具を氷集合体の表面部に切れ込ませて氷片をくり貫くのに要する動力は小さいことから、また、上記構成では、線状具を氷集合体の表面部に切れ込ませて氷片をくり貫くことに対してのみ回転動力を集中的に無駄なく使用するから、上記した水中貯留による氷塊化の抑止とも相俟って、先述した従来の氷水槽に比べ、氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルを防止するのに要する動力を大巾に削減することができて運転コストを効果的に低減することができ、また、効率的な細氷化(氷片化)により氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルも一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0015】
なお、この構成の実施において、氷とともに貯留及び送出する水には、薬剤を混入した種々の水溶液を用いることもできるが、漏出時における環境保全や安全性を考慮した場合、薬剤混入のない通常水を用いるのが望ましい。
【0016】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
横向き姿勢の回転軸に、その軸芯に対して直交する姿勢の複数の腕部を、前記回転軸の軸芯方向に分散させて並設するとともに、
前記線状具としてのくり貫き用線材を、前記回転軸と平行な姿勢に配置した状態で複数の前記腕部を介して前記回転軸に取り付け、
このくり貫き用線材を取り付けた前記回転軸を互いに平行な姿勢の並列配置で水平方向に並べて配置することで、前記細氷化部を構成してある点にある。
【0017】
この構成では、横向き姿勢の回転軸と平行なくり貫き用線材を回転軸の回転により回転軸周りで回転させて氷集合体の上面部に切れ込ませることで、回転軸とくり貫き用線材と隣り合う腕部とにより形成される開口をくり貫き用開口として、くり貫き過程の氷片をそのくり貫き用開口に通過させる形態で、氷集合体の上面部から氷片をくり貫く。
【0018】
そして、この構成によれば、例えばワイヤーなどのくり貫き用線材を腕部どうしにわたらせて取り付けた回転軸を複数並べて配置するだけの簡単な構造であるから、装置コストを安価にすることができ、また、簡単な構造ながらもそれら複数の回転軸の回転により氷集合体から多数の氷片を連続的に能率よく生成することができる。
【0019】
また、回転軸とくり貫き用線材との間の間隔寸法や隣り合う腕部どうしの間隔寸法を変更することで(換言すれば、上記くり貫き用開口の開口面積を変更することで)、生成する氷片の大きさを氷水給送路の口径などの装置条件に応じて容易に変更することができ、この点で汎用性にも優れたものにすることができる。
【0020】
しかも、細氷化運転を停止した状態で氷流入路から流入する氷粒群を槽内に蓄積するときには、水平方向に並べた複数の回転軸の夫々を腕部が水平姿勢となる状態で回転停止させておくことで、複数の回転軸と、それら複数の回転軸の夫々が備える複数の腕部と、複数の回転軸の夫々が備えるくり貫き用線材とにより、細氷化部を水平姿勢で槽内水中に広がる網状のものにすることができる。
【0021】
そして、このように細氷化部を網状にすることで、上昇する氷粒群を受け止めて細氷化部の下方に堆積させることを一層確実にすることができ、これにより、細氷化部に受け止められずに細氷化部の上方まで浮上した一部の氷粒群が氷塊化することで生じる氷水搬送トラブルも防止して、氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルを一層効果的かつ確実に防止することができる。
【0022】
なお、この構成の実施においては、くり貫き用線材を取り付ける線材配置部を回転軸の回転方向における位相をズラせた状態で共通の回転軸に複数装備し、これにより、氷片の生成効率を一層高めるようにしてもよい。
【0023】
また、その場合、隣り合う線材配置部における腕部の並置数及び並置間隔を異ならせて、腕部の並置数が少なくて腕部の並置間隔が大きい線材配置部で氷集合体の上面部から前処理的に荒く氷片をくり貫いた後、その荒い氷片を腕部の並置数が大きくて腕部の並置間隔が小さい線材配置部によるくり貫きで細分化するようにし、これにより、回転軸の回転に要する動力の軽減を図りながら、所要の大きさの氷片をくり貫き生成するようにしてもよい。
【0024】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
複数の前記腕部を介して前記くり貫き用線材を前記回転軸に取り付けた線材配置部を、前記回転軸の回転方向における位相をズラせた状態で共通の前記回転軸に複数装備し、
前記回転軸の回転方向において隣り合う前記線材配置部は、前記腕部の長さが互いに異なるものにしてある点にある。
【0025】
この構成によれば、互いの腕部の長さが等しい複数の線材配置部を、回転軸の回転方向における位相をズラせた状態で共通の回転軸に装備するのに比べ、回転軸の回転に要する動力(特に必要トルク)を小さくしながら、氷片の生成効率を高めることができる。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、第2又は第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記くり貫き用線材を、前記回転軸の回転半径方向において複数段に並べた状態で共通の前記腕部を介して共通の前記回転軸に取り付けてある点にある。
【0027】
この構成によれば、回転軸と一段目のくり貫き用線材と隣り合う腕部により形成される開口を一段目のくり貫き用開口にするとともに、一段目のくり貫き用線材と二段目のくり貫き用線材と隣り合う腕部により形成される開口を二段目のくり貫き用開口にするといった形態で、くり貫き用線材の段数分だけくり貫き用開口の数を倍増した状態で、各段のくり貫き用線材を氷集合体の上面部に対して同時にくり貫き作用させることができる。
【0028】
したがって、同時にくり貫き生成する氷片の数をくり貫き用線材の段数分だけ倍増することができて、多数の氷片を一層能率よく生成することができる。
【0029】
また、この構成によれば、上昇する氷粒群を網状の細氷化部により受け止めて細氷化部の下方に堆積させる機能も一層高めることができる。
【0030】
なお、くり貫き用線材を取り付ける線材配置部を回転軸の回転方向における位相をズラせた状態で共通の回転軸に複数装備する場合、隣り合う線材配置部におけるくり貫き用線材の並設段数を互いに異ならせて、くり貫き用線材の並設段数が小さい線材配置部が介在するようにし、これにより、氷片の生成能率を高めることと、回転軸の回転に要する動力を小さくすることとの両立を図るようにしてもよい。
【0031】
本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記氷水給送路へ送出した氷水を前記氷水給送路を通じて冷熱消費部に熱媒として供給するとともに、この氷水供給に伴い前記冷熱消費部から融解水とともに送出される使用済熱媒としての昇温水を前記水流入路を通じて槽内に戻す構成にし、
この水流入路を通じて戻る昇温水の一部又は全部を、前記細氷化部の上方において前記氷水給送路の入口部とは反対側の箇所から前記氷水給送路の入口部へ向けて槽内に流出させる送出案内用の還水部を設けてある点にある。
【0032】
この構成によれば、上記の送出案内用の還水部から槽内に流出させる昇温水により、細氷化部の上方において氷水給送路の入口部に向かう槽内流を形成することができる。
【0033】
したがって、細氷化部で生成されて槽内水における細氷化部の上方域へ分散状態で浮上する多数の氷片を、この槽内流により氷水給送路の入口部に誘導することができ、これにより、槽内水との混合状態での多数の氷片の氷水給送路への送出を一層円滑にすることができて、氷水給送路を通じた氷水搬送を一層円滑かつ安定的なものにすることができる。
【0034】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記氷水給送路へ送出した氷水を前記氷水給送路を通じて冷熱消費部に熱媒として供給するとともに、この氷水供給に伴い前記冷熱消費部から融解水とともに送出される使用済熱媒としての昇温水を前記水流入路を通じて槽内に戻す構成にし、
この水流入路を通じて戻る昇温水の一部又は全部を、前記細氷化部の下方において槽内に流出させる融解促進用の還水部を設けてある点にある。
【0035】
この構成によれば、上記の融解促進用の還水部から細氷化部の下方において槽内に戻す昇温水により、細氷化部の受け止め作用で細氷化部の下方に堆積した氷集合体の氷塊化を抑止することができ、これにより、前記した水中貯留による氷塊化の抑止とも相俟って、細氷化部でのくり貫きによる氷片生成を一層容易にすることができる。
【0036】
また、氷集合体の上面部のうち細氷化部による氷片のくり貫きでくり貫き残った氷部分(特に、前述第2特徴構成では、回転軸の軸芯方向において両端部の腕部の外側に位置する氷部分)が固くなって、その氷部分と回転軸など他物との緩衝で浮力による氷集合体の細氷化部に対する下からの押し上げが不良になることも、昇温水による氷集合体の融解促進により防止することもできる。
【0037】
したがって、氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルを防止するのに要する動力を一層効果的に削減することができ、また、氷塊停滞に原因する氷水搬送トラブルの防止もさらに効果的かつ確実に達成することができる。
【0038】
本発明の第7特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記氷水給送路へ送出した氷水を前記氷水給送路を通じて冷熱消費部に熱媒として供給するとともに、この氷水供給に伴い前記冷熱消費部から融解水とともに送出される使用済熱媒としての昇温水を前記水流入路を通じて槽内に戻す構成にし、
この水流入路を通じて戻る昇温水を前記細氷化部の上方において前記氷水給送路の入口部とは反対側の箇所から前記氷水給送路の入口部へ向けて槽内に流出させる送出案内用の還水部を設けるとともに、
前記水流入路を通じて戻る昇温水を前記細氷化部の下方において槽内に流出させる融解促進用の還水部を設け、
前記水流入路を通じて戻る昇温水を分流して前記送出案内用の還水部と前記融解促進用の還水部との両方から槽内に流出させる構成にしてある点にある。
【0039】
この構成によれば、前記した第5特徴構成による作用効果と前記した第6特徴構成による作用効果の両方を得ることができる。
【0040】
なお、この構成を実施するにあたっては、送出案内用の還水部から流出させる昇温水と、融解促進用の還水部から流出させる昇温水との流量比(即ち、水流入路を通じて戻る昇温水の分流比)を状況に応じて調整することができるようにしてもよい。
【0041】
本発明の第8特徴構成は、第5又は第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記送出案内用の還水部は、前記水流入路を通じて戻る昇温水を受け入れる流出用樋状部と、この流出用樋状部に受け入れた昇温水を前記細氷化部の上方において前記流出用樋状部の側壁上部から槽内に流出させるスリット状の流出口部との夫々を、槽横幅方向の全幅わたらせる状態に設けて構成してある点にある。
【0042】
この構成によれば、送出案内用の還水部からの昇温水の流出により細氷化部の上方において形成する氷水給送路の入口部に向かう槽内流を、槽横幅方向において可及的に幅広で均一な流れにすることができ、これにより、細氷化部で生成されて槽内水おける細氷化部の上方域へ分散状態で浮上する多数の氷片を一層円滑かつ均一に氷水給送路の入口部に誘導することができる。
【0043】
本発明の第9特徴構成は、第5、第7、第8特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記氷水給送路の入口部は、前記氷水給送路に連通する流入用樋状部と、前記細氷化部の上方において槽内氷水を前記流入用樋状部の側壁上部から前記流入用樋状部に流入させるスリット状の流入口部との夫々を、槽横幅方向の全幅わたらせる状態に設けて構成してある点にある。
【0044】
この構成によれば、細氷化部で生成されて槽内水における細氷化部の上方域へ分散状態で浮上する多数の氷片を、槽横幅方向において可及的に幅広で均一な状態で槽内水とともに氷水給送路の入口部へ送出することができ、これにより、槽内水との混合状態での多数の氷片の氷水給送路への送出を一層円滑にすることができる。
【0045】
本発明の第10特徴構成は、第6又は第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記融解促進用の還水部は、前記水流入路を通じて戻る昇温水を前記細氷化部の下方において槽内に噴出する多数の噴出口を水平方向に分散させた状態で槽内に配置して構成してある点にある。
【0046】
この構成によれば、細氷化部の下方で水平方向に分散配置した多数の噴出口からの昇温水の噴出により、細氷化部の下方に堆積した氷集合体の氷塊化を氷集合体の全体について水平方向で均一に抑止することができ、これにより、細氷化部での氷片くり貫き生成の容易化を一層確実にすることができる。
【0047】
特に、これら噴出口が細氷化部の下方への氷粒群の堆積において堆積氷粒群からなる氷集合体の内部に埋没するようにすれば、これら噴出口からの昇温水噴出による氷集合体の氷塊化抑止を一層効果的なものにすることができる。