【文献】
Ilana Harman-Boehm et al.,Noninvasive Glucose Monitoring: A Novel Approach,Journal of Diabetes Science and Technology,2009年 3月,Volume 3, Issue 2,Pages 253-260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
糖尿病およびその合併症は、個人、家族、保険制度および企業に相当の経済的な影響を課している。米国単独における2007年の糖尿病に関する年間歳出は、1700億ドルを超えると概算されており、これは直接的な費用と間接的な費用の両方に依るものである(American Diabetes Association. Economic costs of diabetes in the U.S. in 2007. Diabetes Care. 2008 March, 31(3):1−20)。2010年には、糖尿病に対する医療歳出は、全世界の医療歳出全体の11.6%を占めることが予測されている。地球全体のおよそ2億8500万人の人が、2010年には糖尿病にかかると推定されており、これは世界の成人人口の6.6%を表しており、2030年までには4億3800万人になると予測されている(International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, Fourth edition. International Diabetes Federation, 2009)。
【0003】
近年では、調査によって、グルコース管理を改善することが糖尿病の長期の合併症を抑えることが最終的に分かってきた(DCCT Research Group.The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long−term complications in insulin−dependent diabetes mellitus. North England Journal of Medicine .1993 Sep30; 329(14): 977−986; UKPDS Group: Intensive blood−glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in subjects with type 2 diabetes(UKPDS33).The Lancet. 1998 Sep12; 352(9131): 837−853)。糖尿病協会(ADA)によると、血糖を自分でモニターすることは(SMBG)、インシュリン、経口剤および医療的な栄養摂取による治療結果に対してプラスの効果があるとされている(American Diabetes Association. Clinical Practice Recommendations, Standards of medical care in diabetes. Diabetes Care. 2006 Jan 29: S4−S42)。ミュンヘンにある糖尿病調査学会は、その刊行物「Consensus Statment: A EUropean Perspective」の中で、全ての型の糖尿病治療の手法に対してSMBGを推奨しており、これにより低血糖症のリスクを増大させずに、適切なグルコースの管理と、通常の状態に近い血糖値が達成される(Schnell O et al, Diabetes, Stoffwechsel und Herz, 2009; 4:285−289)。さらに国際糖尿病連盟(IDF)によって正式に推奨される特定のガイドラインが近年発行されており、インシュリンで治療されていないT2DM患者に対するSMBGをサポートしている(Recommendations based on a workshop of the International Diabetes Federation Clinical Guidelines Taskforce in collaboration with the SMBG International Working group. Guidelines on Self−Monitoring of Blood Glucose in Non−Insulin Treated Type 2 Diabetics. International Diabetes Federation, 2009)。
【0004】
SMBGは、糖尿病の教育と治療の両方において複数の利点を呈する。これは、個人の糖尿病管理を促進する助けをしており、毎日の生活様式の影響、個人のグルコースのグラフ、このグラフに対する運動および食物摂取の影響に対する客観的なフィードバックを行う特定の機器を準備することによって、個人が必要な変更を行なうことができるようにする。さらにSMBGは、医療チームが生活様式の要素、および血糖(BG)を下げる薬剤に関して個人に合わせたアドバイスを与えるのをサポートすることができ、これにより個別の血糖目的を達成するのを助ける。
【0005】
しかしながら従来の(侵襲の)SMBGは不便であり、費用がかさみ、痛みや複雑の問題が関係しするため、主に2型糖尿病の患者の間で十分に活用しきれていない(Mollema ED, Snoek FJ, Heine RJ, Van der Ploeg HM. Phobia of self−injecting and self−testing in insulin treated diabetes patients: Opportunities for screening. Diabet Med. 2001 ; 18:671−674; Davidson MB, Castellanos M, Kain D, Duran P. The effect of self monitoring of blood glucose concentrations on glycated hemoglobin levels in diabetic patients not taking insulin: a blinded, randomized trial. Am J Med. 2005;1 18(4):422−425; Hall RF, Joseph DH, Schwartz−Barcott D: Overcoming obstacles to behavior change in diabetes self−management. Diabetes Educ. 2003; 29:303−311)。正確で痛みがなく費用が安く、かつ操作し易いデバイスが利用できることで、さらに検査の頻度が高くなり(Wagner J, Malchoff C, Abbott G. Invasiveness as a Barrier to Self−Monitoring of Blood Glucose in Diabetes. Diabetes Technology & Therapeutics. 2005 August; 7(4): 612−619; Soumerai SB, Mah C, Zhan F, Adams A, Baron M, Fajtova V, Ross−Degnan D. Effects of health maintenance organization coverage of self−monitoring devices on diabetes self−care and glycemic control. Arch Intern Med.2004; 164:645−652)、結果としてより厳密にグルコースが管理され、長期の合併症を遅らせる/少なくさせ、それに関連する健康管理費用が抑える。
a:非侵襲的(NI)グルコースモニタ作業により、SMBGの費用を抑え、検査の頻度を有意に増やすことができる。NI法における主な注目すべき点は、直接的な血液または間質液の測定が行なわれないにも関わらず、高い精度結果を達成することである。
【0006】
したがって医療分野でよく知られるように、特に糖尿病患者の場合、診断目的で測定するための重要な血液成分の1つはグルコースである。血糖濃度を測定するためのよく知られた典型的な技法は、血液サンプルを獲得し、この血液を酵素処理した染色帯または電気化学プローブに適用することである。一般にこの血液サンプルは、指先から採取される。1日に数回血糖を測定しなければならないこともある糖尿病患者の場合、このような処置により多大な不快感が生じ、皮膚にもかなりの刺激を感じ、特に指が刺されるため、当然感染の問題も生じることが直ぐに理解できる。
【0007】
長年の間、ヒトや動物においてグルコースレベルをモニターし、測定することを目的としたいくつもの方法が存在した。しかしながらこういった方法には一般に侵襲技法が含まれるため、ある程度のリスクが伴う、あるいは少なくとも若干の不快感が患者に生じることになる。最近では、一部の非侵襲的処置も開発されているが、このような処置はまだ血糖の最適な測定を常に実現できる訳ではない。目下のところ、実際に立証された解決策はない。
【0008】
最も非侵襲なモニター技法は、入射照射を利用することに注目しており、これは組織を貫通して血液を調べることができる。現在知られている 非侵襲的にグルコースを測定する手法は主に光学技術に基づくものである。電気による測定は成功率が低いため余り一般的ではないが、所与の周波数範囲、典型的には1−50MHzの範囲での水溶液の誘電特性に注目したものである。ある形態または別の形態において、このような方法は、グルコース自体のあるいは水に対する副次的効果のいずれかの誘電周波数応答に対するグルコースの影響、または他の分析後の濃度をモニターすることを試みている。
【0009】
音響によるモニター作業の利用が調査されてきたが、過去の研究は最初は器官同士の音波の違いに向けられていた。このような研究は、音波の変化を、慢性的または持続する病状と相関させようとしてきた。これに加えて、撮像、治療および診断目的で、器官の音による吸収特性および散乱特性の利用に関係する医療および科学文献は大量にある。
【0010】
従来技術の技法では、1つのパラメータのみが測定される。したがって誤りが生じる可能性が大きくなる。
【0011】
Freger(米国特許第6,954,662号)は、血液を通過する音の速さ、血液の導電率および血液の熱容量を測定するための非侵襲的技法および方法(但しデバイスではない)を開示している。したがってこの3回それぞれに対するグルコースレベルが計算され、最終的なグルコース値は、この3つの計算されたグルコース値の重み付き平均によって決まる。
【0012】
Fregerは、測定は、血液を通過する音の速さ、血液の導電率および血液の熱容量を利用することを述べているが、任意のデバイスがいかにしてこのような測定を成し遂げるように構築され得るかについての開示はない。よって本明細書に開示され主張される発明はFregerの発明を改良したものであり、このような測定を行なうことが可能な特有のデバイスを明記している。
【0013】
したがって、1つの一体式のデバイスにおいて多様なパラメータをモニターすることによって、グルコースレベルを測定するより正確な非侵襲的デバイスに対する要望がある。よって本発明の目的は、被験者のグルコースレベルを非侵襲的に測定するためのデバイスを提供することである。このような目的は、特許請求の範囲および以下の記載の特徴によって、具体的には以下の本発明の好ましい態様によって達成され、これらの態様は、好ましい付加的なおよび/または代替の実施形態に関連するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,954,662号
【特許文献2】米国特許第5,119,819号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】American Diabetes Association. Economic costs of diabetes in the U.S. in 2007. Diabetes Care. 2008 March, 31(3):1−20
【非特許文献2】International Diabetes Federation. Diabetes Atlas, Fourth edition. InternationalDiabetes Federation, 2009
【非特許文献3】DCCT Research Group. The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long−term complications in insulin−dependent diabetes mellitus. North England Journal of Medicine .1993 Sep30; 329(14): 977−986;
【非特許文献4】UKPDS Group: Intensive blood−glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in subjects with type 2 diabetes (UKPDS33). The Lancet. 1998 Sep12
【非特許文献5】American Diabetes Association. Clinical Practice Recommendations, Standards of medical care in diabetes. Diabetes Care. 2006 Jan 29: S4−S42
【非特許文献6】Schnell O et al, Diabetes, Stoffwechsel und Herz, 2009; 4:285−289
【非特許文献7】Recommendations based on a workshop of the International Diabetes Federation Clinical Guidelines Taskforce in collaboration with the SMBG International Working group. Guidelines on Self−Monitoring of Blood Glucose in Non−Insulin Treated Type 2 Diabetics. International Diabetes Federation, 2009
【非特許文献8】Mollema ED, Snoek FJ, Heine RJ, Van der Ploeg HM. Phobia of self−injecting and self−testing in insulin treated diabetes patients: Opportunities for screening. Diabet Med. 2001 ;18:671−674;
【非特許文献9】Davidson MB, Castellanos M, Kain D, Duran P. The effect of self monitoring of blood glucose concentrations on glycated hemoglobin levels in diabetic patients not taking insulin: a blinded, randomized trial. Am J Med. 2005;1 18(4):422−425
【非特許文献10】Hall RF, Joseph DH, Schwartz−Barcott D: Overcoming obstacles to behavior change in diabetes self−management. Diabetes Educ. 2003; 29:303−311
【非特許文献11】Wagner J, Malchoff C, Abbott G. Invasiveness as a Barrier to Self−Monitoring of Blood Glucose in Diabetes. Diabetes Technology & Therapeutics. 2005 August;7(4): 612−619
【非特許文献12】Soumerai SB, Mah C, Zhan F, Adams A, Baron M, Fajtova V, Ross−Degnan D. Effects of health maintenance organization coverage of self−monitoring devices on diabetes self−care and glycemic control. Arch Intern Med.2004; 164:645−652)
【非特許文献13】Zhao Z. Pulsed Photoacoustic Techniques and Glucose Determination in Human Blood and Tissue. Acta Univ. Oul C 169.Oulu, Finland,2002
【非特許文献14】Toubal M, Asmani M, Radziszewski E, NongaiUard B. Acoustic measurement of compressibility and thermal expansion coefficient of erythrocytes. Phys Med Biol. 1999;44:1277−1287
【非特許文献15】Muramatsu Y, Tagawa A, asai T. Thermal Conductivity of Several Liquid Foods. Food Sci. Technol. Res.2005;l l(3):288−294
【非特許文献16】illier TA, Abbot RD, Barret EJ. Hyponatremia: evaluating a correction factor for hyperglycemia. Am J Med.1999 Apr; 106(4):399−403
【非特許文献17】Moran SM, RL Jamison. The variable hyponatremic response to hyperglycemia. West J Med. 1985 Jan;142(l):49−53
【非特許文献18】Wissler EH. Pennes’ 1948 paper revisited. JAppl Physiol. 1998 Jul; 85(1):35−41
【非特許文献19】Zhao Z. Pulsed Photoacoustic Techniques and Glucose Determination in Human Blood and Tissue. Acta Univ. Oul C 169. Oulu,Finland,2002
【非特許文献20】Toubal M, Asmani M, Radziszewski E, Nongaillard B. Acoustic measurement of compressibility and thermal expansion coefficient of erythrocytes. Phys Med Biol. 1999; 44: 1277−1287
【非特許文献21】Zips A, Faust U. Determination of biomass by ultrasonic measurements. Appl Environ Microbiol. 1989 July; 55(7):1801−1807
【非特許文献22】Sarvazyan A, Tatarinov A, Sarvazyan N. Ultrasonic assessment of tissue hydration status. Ultrasonics. 2005; 43:661−671
【非特許文献23】Genet S, Costalat R, Burger J. The Influence of plasma membrane electrostatic properties on the stability of cell ionic composition. Biophys J. 2001 Nov; 81(5):2442−2457
【非特許文献24】Hayashi Y, Livshits L, Caduff A, Feldman Y. Dielectric spectroscopy study of specific glucose influence on human erythrocyte membranes. J Phys D: Appl Phys. 2003; 36:369−374
【非特許文献25】Gudivaka R, Schoeller D, Kushner RF. Effect of skin temperature on multi−frequency bioelectrical impedance analysis. Appl Physiol. 1996 Aug; 81(2):838−845
【非特許文献26】Khalil OS. Non−invasive glucose measurement technologies: An Update from 1999 to the Dawn of the New Millennium. Diabetes Technol Ther. 2004 Oct; 6(5):660−697
【非特許文献27】Smith JL. The Pursuit of Noninvasive Glucose: ”Hunting the Deceitful Turkey”. 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の上記のおよび他の目的は、3つの異なるプロトコルによって身体のグルコースレベルを 非侵襲的に測定することができる特定のデバイス、好ましくは一体式のデバイスによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
具体的には、本発明によるデバイスは好ましくは、ハードウェアとソフトウェアアプリケーションを内蔵するメインユニットと、患者に取り付けるための外付けデバイス(好ましくはイヤークリップ)を含んでいる。外付けユニットは、第1および第2の部分を備え、これらの部分は互いに対して接続されており、第1および第2の部分は、被験者の特定の部分の両側に配置され、被験者のこの部分に該外付けユニットが取り付けられる。例えば外付けユニットが患者の耳たぶに取り付けられる場合、この2つの対向する側は、耳たぶの2つの両側に配置される。
【0018】
一体式の外付けユニットに、以下の3つの要素のうちの少なくとも1つを組み込むことが好ましく、これらの要素は、3つの別々のそれぞれ異なる非侵襲的なグルコースの測定を行なう。これに加えて、少なくとも2つまたは3つの要素を設けることで、2つまたは3つの別々のそれぞれ異なる非侵襲的なグルコースの測定をそれぞれ行なうことがさらに好ましい。本発明の好ましい一実施形態によると、3つの別々のそれぞれ異なる非侵襲的なグルコースの測定を行なう少なくとも3つの異なる要素が、1つの一体式の外付けデバイス内に、例えば1つの筐体の中に設けられる。
【0019】
また各々の測定チャネルが新しいものであり、それ自体独自に今までにないものであることを評価し、理解すべきである。故に各々の測定チャネルをそれ自体切り離して(またはさらに他の測定チャネルと共に)使用することができる。3つの測定チャネルを1つの一体式のデバイスの中で組み合わせることによって、3つの別々の独自の測定チャネルによる測定が行なわれ、これにより最終的な測定値を最適なものにする。
【0020】
超音波を利用する非侵襲的測定の場合、好ましくは送信機(例えば超音波送信機)と受信機(例えば超音波受信機)が、外付けユニットの両側に設置される。外付けユニットが患者に適合される際、患者の体の一部(例えば耳たぶ)が、この送信機と受信機の間に置かれる。結果として生じた信号が患者の中を通過した後、これを受信すると、受信機がこの信号をメインユニットに送信することで適切なアルゴリズムによって処理する。いくつかの実施形態では、膜を使用して、送信機と受信機を覆って保護する場合もある。
【0021】
電磁測定を行なうために、外付けユニット内にコンデンサが規定される。蓄電板が、外付けデバイスの両側に位置づけされ、体の一部(例えば耳たぶ)が、外付けユニットが誘電体として機能する部品の間に配置される。一部のケースでは、送信機と受信機を遮蔽するまたは覆うのに使用される膜が、蓄電板として機能することもある。
【0022】
3番目の技術は、熱技術に基づいてグルコースレベルを測定する。この目的のために、好ましくはヒータとセンサが外付けデバイスに設けられる。ヒータとセンサ(熱センサ)は、外付けデバイスの対向する側に設けるのが好ましい。しかしながら別の好ましい実施形態によると、ヒータとセンサを2つの対向する側の同じ側に設置する、例えば外付けユニットの片側の先端にヒータとセンサの位置を特定するのが好ましい。
【0023】
本発明の目的は、例えば以下の本発明の態様によって解決する。
【0024】
第1の態様によると、被験者におけるグルコースレベルを 非侵襲的に測定するための一体式のデバイスは、このデバイスの対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の特定の部分を取り囲む超音波ピエゾ素子と、該デバイスの対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の特定の部分を取り囲む蓄電板であり、自動発振手段が接続された蓄電板と、デバイスを装着することができる被験者の体のこの部分に近接して並置されるように位置が特定されるヒータおよびセンサを備える。
【0025】
好ましい一実施形態では、デバイスはさらに、被験者の体に取り付けるための外付け手段(例えばイヤークリップ)を備えており、超音波ピエゾ素子と、蓄電板と、ヒータおよびセンサが、この外付け手段の中に収容されている。
【0026】
好ましくは、測定を制御しグルコースレベルを計算するメインユニットと、このメインユニットと外付けユニットを直流電流によりあるいは無線により電気的に接続する手段も設けられる。
【0027】
好ましくは膜が超音波ピエゾ素子を覆っている。
【0028】
超音波ピエゾ素子は好ましくは、送受波器と受信機を含むことができる。
【0029】
好ましくは蓄電板は、膜を備える。このような一実施形態では、膜は、超音波ピエゾ素子も同様に覆うことができる。
【0030】
好ましい一実施形態は、該外付け手段の対向する部分の距離を測定するための手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、このような手段は、磁石とセンサを含む場合がある。
【0031】
また好ましくは、該外付け手段の対向する部分の距離を設定する調節ねじが設けられる場合もある。
【0032】
いくつかの実施形態では、周辺温度センサが含まれる場合もある。
【0033】
他の態様によると、個々の測定チャネルは別々に利用することができる。
【0034】
本発明の第2の態様によると、被験者のグルコースレベルを 非侵襲的に測定するためのデバイスは、筐体と、筐体の対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の一部を取り囲む蓄電板を備え、該蓄電板に自動発振手段が接続されている。
【0035】
好ましい一実施形態において、デバイスはまた、組織インピーダンス信号に基づいてグルコースレベルを計算する処理手段と、処理手段に組織インピーダンス信号を伝えるための手段を含む。
【0036】
この実施形態は、膜から成る蓄電板を含むことができる。
【0037】
この実施形態の代替の見解によると、筐体の対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の一部を取り囲む超音波ピエゾ素子が設けられる場合もある。それは、膜から成る蓄電板を含むことができ、この膜は、超音波ピエゾ素子を覆うことができる。
【0038】
この実施形態の異なる代替の見解は、筐体の対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の一部を取り囲む超音波ピエゾ素子と、送信波と受信波の位相のずれを検出する手段と、この位相のずれに基づいてグルコースレベルを計算し、検出手段と連通している処理手段を含むことができる。
【0039】
この実施形態の第3の代替の見解によると、該デバイスを装着することができる被験者の体の一部に近接して並置されるようにデバイス上に位置が特定されるヒータとセンサが設けられる場合もある。それは、熱伝達特性をグルコースレベルを計算する処理手段に伝達する手段を含むことができる。
【0040】
本発明の第3の態様によると、グルコースレベルを 非侵襲的に測定するために被験者体の一部に取り付けられるデバイスは、デバイスの対向する部分に位置が特定され、デバイスを装着することができる被験者の体の一部を取り囲む超音波ピエゾ素子と、送信波と受信波の位相のずれを検出するための手段を備える。
【0041】
好ましくは該位相のずれに基づいてグルコースレベルを計算し、この検出手段と連通している処理手段を含むことができる。
【0042】
この実施形態の代替の見解によると、該デバイスを装着することができる被験者の体の一部に近接して並置されるようにデバイス上に位置が特定されるヒータとセンサを設けることもできる。それは、熱伝達特性をグルコースレベルを計算する処理手段に伝えるための手段を含むことができる。
【0043】
本発明の第4の態様によると、グルコースレベルを 非侵襲的に測定するために被験者の体の一部に取り付けられるデバイスは、デバイスを装着することができる被験者の体の一部に近接して並置されるようにデバイス上に位置が特定されるヒータおよびセンサと、熱伝達特性をグルコースレベルを計算する処理手段に伝えるための手段を備える。
【0044】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載を図面および特許請求の範囲と併せて読むことによって明確になるであろう。
【0045】
本発明とみなされる主題は、特に明細書の結びの部分において指摘され明白に主張されている。しかしながら本発明は、その目的、特徴および利点と共に、構成と操作方法の両方に関して、本発明の一例の実施形態を図示する添付の図面と併せて以下の詳細な記載を読んだときに最適に理解することができ、この図面は、本発明の例示の実施形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の詳細な記載において、多くの固有の詳細は、本発明を完全に理解することを目的として記載されている。しかしながら当業者は、このような固有の詳細なしでも本発明が実施され得ることを理解するであろう。他の例において、よく知られた方法、手順および構成要素は、本発明を不明瞭なものにしないために詳細に記載されていない。
【0048】
本システムの好ましい実施形態およびその利点は、図面および添付の記載を参照することによって最適に理解されるが、この場合、同じ数字は、それぞれ異なる図面の部品と同様のもの、およびそれに対応するものを指している。好ましい実施形態の参照は、例示しかつ理解することを目的としており、限定として捉えるべきではない。
【0049】
本明細書の記載は、ヒトの患者に関するものであるが、本明細書のデバイスを使用することで、動物を含めたいかなる被験者のグルコースも測定することができることを理解することができる。
【0050】
具体的には、デバイスは、ソフトウェアアプリケーションを内蔵するメインユニット10と、患者に取り付けるための外付けユニット12を含んでいる。典型的には外付けユニットは、患者の(あるいは被験者または動物の)耳たぶに配置されるため、外付けユニットは典型的にはイヤークリップとして構成される。
【0051】
好ましくはケーブル14を使用して、メインユニット10と外付けユニット12間の作動接続部を形成する。無線(例えばブルートゥース)技術が使用される場合もあり、ケーブルを避けることもできることを理解することができる。
【0052】
外付けユニット12を、例えばつま先、指、親指とその次の指(人差し指)の間のみずかきなどの被験者の体の任意の他の好適な場所に配置することもできることを理解されたい。一般に取り付ける場所は、耳たぶと同様の皮膚と組織の特徴を持つ体の一部にするべきである。外付けユニットが、耳たぶ以外の特定の地点において体に配置される際、皮膚と組織の特徴は体全体にわたって均一ではないため、アルゴリズムが幾分調整される場合がある。
【0053】
図1を参照すると、複数のグルコース値を測定した後で、最終的なグルコースの読取り値を取得する一体式の非侵襲デバイスが示されている。非侵襲的グルコース測定の精度を上げるために、本発明によるデバイスは好ましくは、1種類の非侵襲法だけではなく、より多くの方法を組み合わせたものを利用しており、好ましくは超音波、電磁および熱による3つの非侵襲法を利用している。このような方法は、グルコースの変動に応答する組織の生理的な反応を考慮したものであり、結果として、例えば電気や音響インピーダンスなどの物理的な特性、ならびに細胞、間質および血漿区分の熱伝達(HT)特性が変化することになるが、これは、双方の区分のイオン濃度、密度、圧縮率および水和作用の変化に起因するものである。
【0054】
図1を参照すると、この非侵襲的グルコースモニタ装置はメインユニット(MU)10を備えており、このメインユニットは、それぞれ異なる複数のセンサチャネル、好ましくは3つの異なるセンサチャネル(好ましくは技術に準拠したもの)を駆動させるものであり、これらのチャネルは、個人用イヤークリップ(PEC)12として構成される外付けユニット上に位置している(
図1)。スポット測定を行なうために、PEC12は、測定する間(およそ1分間)ユーザの耳たぶに外からクリップ留めされ、その後取り外される。ケーブル14(または任意のよく知られた無線(例えばブルートゥース)技術)が、デバイスのこれらの2つの構成要素を接続する。
【0055】
本発明の独自の態様は、(1つの)外付けユニット12が、2つ以上の測定チャネル/プロトコルを収容していることである。より好ましくは、外付けユニットが全ての要素を収容することで、複数の別個のそれぞれ異なる非侵襲的グルコース測定を行なう。好ましくは外付けユニットが複数の要素を収容することで、3つの別個のそれぞれ異なる技術によって3つの別個のそれぞれ異なる非侵襲グルコース測定が行なわれる。この1つの外付けデバイスにより、たった1つのデバイスを被験者の体に装着するだけでよいという利点が得られ、これは医師および/または患者にとって好都合である。好ましい実施形態では、外付けユニットは、イヤークリップ12として構成される。
【0056】
また各々の測定チャネルが、新しいものであり、それ自体独自に今までにないものであることを評価し、理解すべきである。故に各々の測定チャネルをそれ自体切り離して(またはさらに他の測定チャネルと共に)使用することができる。3つの測定チャネルを1つの一体式のデバイスの中で組み合わせることによって、3つの別々の独自の測定チャネルによる測定が行なわれ、これにより最終的な読取り値を最適なものにする。
【0057】
血糖が変動することで、組織の熱容量(Zhao Z. Pulsed Photoacoustic Techniques and Glucose Determination in Human Blood and Tissue. Acta Univ. Oul C 169.Oulu, Finland,2002)、密度(Toubal M, Asmani M, Radziszewski E, NongaiUard B. Acoustic measurement of compressibility and thermal expansion coefficient of erythrocytes. Phys Med Biol. 1999; 44: 1277−1287)および熱伝導性(Muramatsu Y, Tagawa A, asai T. Thermal Conductivity of Several Liquid Foods. Food Sci. Technol. Res.2005; l l(3):288−294)の変化を通じて熱伝達(HT)特性に影響を与えるが、これは水/電解質の移動に起因するものである(Hillier TA, Abbot RD, Barret EJ. Hyponatremia: evaluating a correction factor for hyperglycemia. Am J Med.1999 Apr; 106(4):399−403; Moran SM, RL Jamison. The variable hyponatremic response to hyperglycemia. West J Med. 1985 Jan; 142(l):49−53)。よって多層のセンサと組織の機械的構造に生じる熱伝達作用の変化は、グルコース濃度が変化したことの直接的な結果である(Wissler EH. Pennes’ 1948 paper revisited. JAppl Physiol. 1998 Jul; 85(1):35−41)。グルコース濃度が高ければ高いほど、熱容量と熱伝導性が低くなり、これにより加熱作用に応答して外側の組織層により大きな温度上昇が生じることになる。本発明によるセンサ(例えばサーミスタ)は、表皮層に設置され/取り付けられるのが好ましいため、加熱する際、測定される温度変化の速度と大きさは、内部組織におけるものより大きくなる。
【0058】
本発明による熱による方法は、組織に対して特定のエネルギー量を加える。好ましくは温度変化の速度および/または大きさは共に、組織に既知のエネルギー量を加えることによって生じるものであり、これらは組織の熱容量、密度および熱伝導性の関数である。よって本発明によるデバイスは、組織を所定の時間加熱した後に生じるHT特性の変化を測定することによって、好ましくは間接的にグルコースレベルが評価されるような手段を提供している。
【0059】
図3は、本発明の好ましい一実施形態による、センサと組織の構造体を示している。底部プレートがヒータ18として機能しており、熱伝導体20が含まれている(
図17を参照)。熱センサ22が、伝導体20の間の中央に配置される。
図2に示されるように、熱センサは、イヤークリップ(PEC)12の先端24に配置される。
【0060】
次に
図12と
図13を参照すると、熱モジュール、これは好ましくはサーミスタ22、ヒータ18および伝導体20を備えており、イヤークリップ12の片側(例えばイヤークリップの第1の部分)の端部から延びる耳26に配置される。対向する面28(すなわちイヤークリップの第2の部分)は好ましくは、サーミスタ要素がない状態である。換言するとヒータ18と熱センサ22は、イヤークリップの同じ側に配置されることが好ましい。具体的にはヒータ18と熱センサ22は、外付けユニット12が耳たぶに装着される際、耳たぶに対して同じ側に配置されることが好ましい。
【0061】
図14A、14Bおよび14Cに描かれるように、ヒータ18は好ましくは1枚のプレートまたはブロックとして形成され、好ましくは抵抗器によって構成される。2枚のプレート20が、このプレートの頂部に固定されることで、熱エネルギーを伝達し、伝導体20として機能する。これは、接着、グルー剤による接着または接合あるいは任意の他の好適な手段によって行なうことができる。伝導体20はアルミニウムであることが好ましいが、任意の熱伝導材料を使用することもできる。このプレートの底部に、好ましくははんだ付けパッド30が設けられ、このパッドを利用して、ヒータ18を集積回路基板42(
図13を参照)に接続することができる。好ましくは筐体が全てのセンサ(例えばサーミスタ)のモジュル式構成要素を収容する。4ボルトのシステムに理想的なのは、抵抗器(例えばヒータプレート)が、23から43オームの抵抗器を有することであり、33オームの抵抗器が好ましい。この抵抗器は、およそ15℃から45℃の範囲、好ましくは摂氏42から45℃の範囲で熱を生成する。任意の他の加熱センサを使用することもできる。
【0062】
ヒータが、耳の中に熱エネルギーを送り込む。ヒータは、この加熱作用を標準的な周辺温度である15から35℃で開始する。通常耳たぶの表面は、これより少し温かく28から32℃である。ヒータの電力は、好ましくは最大0.5ワットであり、好ましくは最小で0.1ワットを供給する。しかしながら他の好ましい実施形態によると、より小さな熱エネルギーを有するヒータが使用される場合もあり、このようなヒータは、好ましくはより長い時間にわたって加熱する。またより大きな熱エネルギーを有するヒータが使用される場合もあり、このようなヒータは、好ましくはより短い時間にわたって加熱する。
【0063】
理解され得るように、サーミスタモジュールは、イヤークリップの先端に適合するように十分小さくなければならない。好ましくはヒータ18を構成している抵抗器プレートは、約5ミリメートルの長さ、0.6ミリメートルの厚さで2.4ミリメートルの幅である。伝導体20は好ましくは、1.5ミリメートルの長さ、0.7ミリメートルの厚さで2.4ミリメートルの幅である。センサ22に関して、それは好ましくは1.30ミリメートルの長さ、0.8ミリメートルの厚さで2.0ミリメートルの幅である。これらは、市場で入手可能な標準的な部品であるため、この標準的に入手可能なセンサは、抵抗器プレートや伝導体ほど幅が広くなく、伝導体をわずかに超えて延びている。全体の寸法のわずかな差は重要ではない。
【0064】
熱チャネルに関して、可能性のある実施形態がいくつかある。1つの好ましい実施形態が、
図14Aに示されている。この実施形態は、温度センサ(サーミスタ)22と、ヒータ18と、温度伝導体20で構成されている。熱モジュールの表面は耳たぶに接触するため、温度伝導性の生体適合性コーティング64が塗布されている。ヒータ18のスイッチが入れられると、熱流束が温度伝導体20とサーミスタ22を通過し、コーティングを通り抜けて耳たぶへと流れる(あるいは体の他の部分)。耳たぶの熱吸収性は、グルコースレベルに依存する。サーミスタ22が、耳たぶの温度変化を測定するが、この温度変化は、加熱強度と耳たぶの吸収性によって影響される。この温度を使用して、データ処理によって分析しグルコースレベルを判定する。
【0065】
図14Bは、熱チャネルの別の好ましい実施形態を表している。これは、温度センサ(サーミスタ)22と、ヒータ18と金属膜58で構成されており、この膜は高い温度伝導性を有する。このような構成要素、すなわち膜58と、サーミスタ22と、ヒータ18は、温度伝導性の接着材54によってグルー剤で接着される。好ましくは膜58は、接着材56によってPEC12にくっつけられる。膜58の外側の面は、耳たぶと良好に熱接触する。ヒータ18のスイッチが入れられると、熱流束がサーミスタ22と膜58を通過して耳たぶへと流れる(あるいは体の他の部分)。耳たぶの温度変化は、グルコースレベルに依存しており、サーミスタ22が耳たぶの温度変化を測定し、これを使用してデータ処理しグルコースレベルを判定する。
【0066】
熱チャネルの第3の好ましい実施形態が、
図14Cに示される。これは温度センサ(サーミスタ)22と、2つのヒータ18と、プリント回路基板(PCB)60と、金属膜58で構成されており、この膜は高い温度伝導性を有する。このような構成要素、すなわち膜58と、サーミスタ22と、ヒータ18は、温度伝導性の接着材54によって接着される。好ましくは膜58は、接着材56によってPEC12にグルー剤で接着される。ヒータ18とサーミスタ22は、PCB60に対してはんだ付けされる。膜58の外側の面は、耳たぶと良好に熱接触する。ヒータ18のスイッチが入れられると、熱流束が膜58を通過して耳たぶへと流れる(あるいは体の他の部分)。耳たぶの温度変化は、グルコースレベルに依存しており、サーミスタ22が耳たぶの温度変化を測定し、これを使用してデータ処理しグルコースレベルを判定する。
【0067】
図4は、被験者におけるセンサと組織の構造体を加熱するロープロセスを記載している。異なる曲線形の加熱工程は、異なるグルコース濃度を表している。温度は、
図4では摂氏で表されている。
【0068】
周辺温度が、表面の皮膚温度とセンサの最初の温度の境界条件を規定しており、これらの工程に対しても同様に影響を及ぼしている。したがって熱工程は一元化され規格化されることで、最初の皮膚の表面温度を考慮してから周辺温度と皮膚温度の差を補償する(式1)。一元化され補正され補償された信号(熱信号)が、グルコース濃度の関数として
図5に示されている。
【0069】
【数1】
(式1)
この場合t
0およびt
fは、加熱工程の開始時間と終了時間であり、T
earおよびT
ambは、組織温度と周辺温度であり、これによりkは、温度補正率である。
【0070】
図5は、被験者における一元化され温度が補正された熱信号対グルコースレベルを示している。
【0071】
グルコース濃度の変化は、組織を通る音速を測定することによって間接的に評価することができる。グルコース濃度が上昇すると、伝搬速度も同様に上昇する(Zhao Z. Pulsed Photoacoustic Techniques and Glucose Determination in Human Blood and Tissue. Acta Univ. Oul C 169. Oulu,Finland,2002; Toubal M, Asmani M, Radziszewski E, Nongaillard B. Acoustic measurement of compressibility and thermal expansion coefficient of erythrocytes. Phys Med Biol. 1999; 44: 1277−1287; 米国特許第5,119,819号)。伝搬速度は、グルコース濃度に線形依存しているため、組織内のグルコース含有量が高くなるほど、そこを通過して伝搬する超音波の速度が速くなるため、伝搬時間が短くなる。
【0072】
超音波測定チャネルは、好ましい実施形態において、ピエゾ素子で構成されており、具体的には被験者の耳たぶ16付近に装着された(あるいは装着可能な)超音波送信機34と超音波受信機36で構成されている。好ましくは超音波測定チャネルに、電子回路も設けられる。送信機34(超音波ピエゾ素子)が外付けデバイスの中に配置されることで、(外付けデバイスが耳たぶに装着される際)送信機によって生成された連続する超音波が、特有の速度で耳たぶを通り抜けて伝わるため、送信波と受信波の位相のずれ(Δφ)が生じる(
図6B)。
【0073】
ピエゾ素子、すなわち送信機34と受信機36(任意選択で増幅器が続く)は、被験者の耳たぶの各側の片側にそれぞれ配置される(
図6Aを参照)。メインユニット(MU)10が、信号を伝送するように送信機34に信号を送信する。耳たぶ16を通って伝搬した後、受信機36がこの受信信号を強化し、この信号をMU10に戻るように送信し、特定のアルゴリズムによって処理することで対応するグルコース値が得られる。
【0074】
イヤークリップ12の両側に、ピエゾ素子、すなわち送信機36と受信機34が配置される。一般にこのような超音波素子は、機械的な圧力に敏感である。この素子を保護し、素子の効果を維持するために、膜38および40が、超音波素子を覆うように配置されるのが好ましい(
図15および
図16を参照)。好ましくは超音波伝導性接着剤またはグルー剤、例えばエポキシ樹脂などを膜と超音波要素の間に配置することで、膜を超音波素子に対してしっかりと保持する。一般に接着剤またはグルー剤またはエポキシ樹脂は、超音波を伝導するのに適したものであるべきで、これにより信号ロスが最小限になる。0.05mmの層が一般に接着材料に適している。
【0075】
超音波ピエゾ素子もまたイヤークリップ内に配置されるため、この場合再びそれらを小さく作成する必要がある。それらは任意の好適なサイズであってよいが、好ましくは超音波素子は円形であり、本明細書に示される好ましい実施形態では、直径が約9.0ミリメートルで厚さが3.0ミリメートル未満である。膜38、40は好ましくは円形に作成され、約9.5ミリメートルの直径を有する。それがイヤークリップ内に嵌合する限り、いかなるサイズも許容可能であることを理解することができる。
【0076】
導電性で生体適合性のコーティングが、好ましくは膜38、40の外側の表面に配置されることで、信号の伝搬を強化する。典型的には0.01mmのコーティングが適切である。
【0077】
膜は好ましくはニッケルで作製することができ、これは一般に生物学的に安定しており、信号を良好に伝える。任意の他の好適な材料、例えば金やチタンを使用することもできる。
【0078】
好ましくは膜39、40は、ニッケルコーティングを有する銅で作製される。代替の一実施形態では、膜がステンレス鋼で作製され、コーティングが全く必要なくなる場合もある。
【0079】
好ましい実施形態では、一方の膜40が平らで、他方の膜38が凸面である場合に有利であることが分かっている。この「ハイブリッド」の組み合わせにより、適合の観点から最適な解決策が得られ、被験者の耳たぶにデバイスをしっかりと保持できる。
【0080】
周波数は、180キロヘルツ(180KHZ)から1メガヘルツ(1MHz)であってよく、信号振幅は、0.5ボルトから3ボルトまで変動する可能性がある。受信信号振幅は、5mVから50mVまで変動する可能性がある。好ましくは受信機は、およそ20倍まで信号を増幅する。
【0081】
図15および
図16に示されるように、超音波ピエゾ素子は好ましくは、その間に接着(またはエポキシ樹脂)層を有するように各々の膜に嵌め込まれる。
【0082】
その速度は、位相に関連する(式2)
V=(fxd)2π/Δφ (式2)
この場合fは、周波数(Hz)で、Δφは、位相のずれ(ラジアン)であり、dは、センサのピエゾ素子間の距離(m)である。
【0083】
較正する際、2つの最適な周波数が選ばれるが、1つは低周波数範囲から、1つは高周波数範囲から選ばれ、この場合周波数範囲は重ならない。較正後、2つの選択された周波数において測定が行なわれる。
【0084】
図7は、特定の引数として励起周波数を有する特定の関数族としての測定された位相のずれの値と、この関数族のパラメータとしてのグルコース値のグラフを提示している。組織の厚みによって、測定された位相のずれのサイクルの一部(上昇または下降)が決まる。
図7に示される構成では、サイクルの下降する部分が確認され、グルコースレベルの増大に伴ってG
1xΔφが増大する。
【0085】
この
図7のグラフは、低周波数領域における位相のずれ対入力送受波器の周波数を示している。選択された周波数における増幅された位相のずれの値が確認されるが、この周波数は、被験者に合わせて較正する際の最適な周波数であることが分かった。グラフ上の異なる曲線は、それぞれ異なるグルコースレベルに適合する。
【0086】
超音波の速度は、伝搬媒体の温度に依存することはよく知られている(米国特許第5,119,819号; Zips A, Faust U. Determination of biomass by ultrasonic measurements. Appl Environ Microbiol. 1989 July; 55(7):1801−1807; Sarvazyan A, Tatarinov A, Sarvazyan N. Ultrasonic assessment of tissue hydration status. Ultrasonics. 2005; 43:661−671)。周辺温度がセンサのパラメータに対して悪影響を及ぼすのに対して、組織温度は、組織それ自体における波の伝搬に強く影響する。したがって周辺温度と組織温度の両方を使用する温度補正が必要である。温度補正は、以下の公式(式3)を使用して
【0087】
【数2】
(式3)
測定された増幅後の位相のずれに対して行なわれ(
図8)、この場合phase_shift_corは、温度が補正された増幅後の位相のずれであり、G
2は補正率であり、T
ambは周辺温度で、T
earは、耳たぶの表面温度である。補正の符号は、周波数による位相のずれの変化の方向に左右される。
【0088】
図8は、被験者に合わせて温度が補正された、位相のずれ(選択された周波数で測定された)対グルコースを示すグラフである。
【0089】
グルコース誘発の水と細胞膜全体にわたるイオン移動によって細胞の電気特性の変化が起こり、結果として細胞外の区分も変化することになる(Genet S, Costalat R, Burger J. The Influence of plasma membrane electrostatic properties on the stability of cell ionic composition. Biophys J. 2001 Nov; 81(5):2442−2457; Hayashi Y, Livshits L, Caduff A, Feldman Y. Dielectric spectroscopy study of specific glucose influence on human erythrocyte membranes. J Phys D: Appl Phys. 2003; 36:369−374)。最初は誘電特性の変化が観察され(Gudivaka R, Schoeller D, Kushner RF. Effect of skin temperature on multi−frequency bioelectrical impedance analysis. Appl Physiol. 1996 Aug; 81(2):838−845)、これは結果として全体の組織インピーダンスの変化に反映される。グルコースの変動によって生じる組織の電気インピーダンスの変化を反映するために、電磁チャネル(EMC)は、固有の自動発振回路と耳たぶを含んでおり、これが誘電材として機能し、回路に接続された2つの電極の間に位置が特定される(
図9)。
【0090】
図9は、電磁測定チャネル(EMC)を示しており、この場合R
inは、入力抵抗であり、Z(D、ε)は、検出要素の転送オペレータ、すなわちフィードバックに耳たぶ組織を含むEMC積分回路であり、転送オペレータの時定数は、ε;D=d/dt;C
pで表される組織の誘電率に依存しており、C
pは、寄生静電容量であり、f−meterは、自動発振周波数(f)測定回路であり、Tは、自動発振回路内で正のフィードバックを形成するヒステリシスを有するリレー要素であり、E
sは、皮膚表面の電位である。
【0091】
超音波チャネルに使用される同一の膜38と40は好ましくは、蓄電板としても機能することができ、耳たぶ16は誘電体として機能する。発振器を使用して信号を生成し、これらの信号は、耳たぶのパラメータに依存している。周波数は、5キロヘルツ(5KHz)から100キロヘルツ(100KHz)の範囲であってよく、振幅は、およそ0.1ボルトから1.5ボルトの間を変動する。
【0092】
組織インピーダンスが温度依存であるため、耳たぶの温度も同様に測定において考慮される(Gudivaka R, Schoeller D, Kushner RF. Effect of skin temperature on multi−frequency bioelectrical impedance analysis. Appl Physiol. 1996 Aug; 81(2):838−845)。EMチャネルの外乱を表す変数の中でも、周辺温度は2つの役割を果たしており、a)組織パラメータに影響し、b)電極の寄生静電容量などセンサの電磁パラメータに悪影響を与える。したがって電磁信号は、
図10に示されるように、式4を使用して周辺温度と耳の温度の両方に対して補正される。
(式4)
この場合、Electromagnetic_signal_corは、温度が補正された電磁信号(自己発振周波数)であり、Dは補正率であり、T
ambは周辺温度であり、T
earは耳たぶの表面温度である。
【0093】
好ましい一実施形態では、イヤークリップ(PEC)12に対する距離センサも設けられており、すなわちイヤークリップの片側に磁石44があり、もう片側にはセンサ46がある。センサ46は好ましくは、磁場測定センサであり、磁場の強度を測定することで、膜同士の距離が較正段階と同じであることを保証する。
【0094】
図11は、イヤークリップ12の好ましい実施形態を示している。好ましくはこれは、ABSプラスチックで作製されるが、任意の他の材料も有効である。そのサイズは、被験者の耳たぶのサイズに左右される。好ましい一実施形態において、それは好ましくは約25ミリメートルの長さと幅である。それは先細にされる場合もある。好ましくは異なるサイズのクリップがあることにより、異なるサイズの耳たぶの被験者に適合することができる。
【0095】
クリップに関してよく知られるように、好ましくは一方の側が、他方の側の周りを枢動する。一方の側は枢動ピンを有しており、このピンは、イヤークリップの他方の部分にある適切な座面に嵌合する。ばねを使用して付勢する。
【0096】
好ましくは周辺温度センサ52も設けられ、このセンサは、外付けユニット12、メインユニット10に位置を特定することができ、および/またはケーブル14に配置することもできる(
図1を参照)。
【0097】
好ましくは当世の電子デバイスに一般的であるように、集積回路基板42がイヤークリップ12に搭載される(
図13を参照)。3つのチャネル、すなわち超音波、電磁および熱チャネルの上記の構成要素が、その上に設置される。その後ケーブルを介して、あるいは無線技術(ブルートゥース)によってメインユニットとの通信が確立する。必要に応じてメインユニットが信号を発することで、各々の測定チャネルを作動させ、その後データを収集した後、グルコース値を計算する。
【0098】
好ましくはグルコースの測定の前に較正が行なわれることで、個々の不安定状態の要因の影響、例えば組織構造などの影響を最小限にすることができる。センサは、較正に先立ち、ユーザの耳たぶの厚みに応じて個別に調節することで最適に適合される。好ましくは調節ねじ50(
図2、14および16)を使用してセンサ間の距離を調節し、その結果耳たぶに対する圧力を調節して最適に適合させる。このような動作は、メインユニット10によって誘導することができる。最適な距離センサ44、46は好ましくは、このような事前に設定された距離が維持されることを保証する。
【0099】
イヤークリップ(PEC)12を調節した後、較正工程が始まる。較正するのに1つの好ましい方法を本明細書に記載する。
【0100】
較正方法は、指先の毛細血管から採取した侵襲性の基本的な食前の血糖データを、このデバイスと、参考に使用される非侵襲デバイスの両方による6つの一連の測定値と相関させ、各々の個人に専用の較正曲線を生成することで成り立っている。
【0101】
最初の3つの較正点は、同一の(絶食の)グルコースレベルで行なわれ、較正で使用されるモデルに関してかなり正確な最初の較正点を確立するのを助ける。これらは絶食状態で行なわれ、1回の侵襲測定と、3回の連続する非侵襲測定で構成され、その後で食べ物や飲み物を摂取することで絶食時の値から血糖が少なくとも30%まで上昇するが、これは30mg/dlほどもある。一部のケースでは、これは非絶食状態で行なわれる場合もある。食事後20分後、1セットの5つの測定の組が、その間約10分の時間間隔で行なわれる。較正工程は全体で約1.5から2時間かかる。
【0102】
最初の較正点において、その距離は自動的に測定され(イヤークリップ12に設けられた光学式の距離センサ44、46を利用して、あるいは代替の方法を利用して)、センサの基準距離として(元の場所または事前設定された基準点)設定されるが、この基準距離は、以下に続く較正点ならびに測定点において測定を開始する前にチェックされる。耳たぶは、均質な表面を有する概ね平行な組織である。したがって任意の較正点または正式な測定点におけるその距離が、事前設定された基準点と異なる場合(特定の公差の範囲内で)、ユーザは、デバイスに誘導されて必要に応じてPEC12を移動させることで基準の距離に達するようにする。較正が完了すると、個々の線形モデルのパラメータのベクトルが、各々の技術の出力に合うように設定される。
【0103】
熱技術の場合、最初の測定点において加熱強度がチェックされ、結果として生じる測定で使用するのに最適な加熱強度にするための補正率が計算される。この補正率が、各々のユーザに対して個々に計算されることで、組織の表面温度が上昇して最小限の増分閾値を超えることを保証する。
【0104】
電磁技術の場合、3つの閉路においてそれぞれ異なる周波数範囲で発振が行なわれる。最適な周波数範囲は、較正中のグルコースの変化に対する個々の感度に応じて選択される。さらに作動周波数範囲と次の閉路の周波数範囲の最大および最小の偏差が、電磁信号の有効性フィルタのための閾値として設定され(式5)、
(式5)
この場合EM
minおよびEM
maxは、それに応じた最小および最大の電磁信号閾値であり、EM
iは、作動周波数範囲にある電磁信号であり、EM
jは、隣の周波数範囲にある電磁信号である。
【0105】
音響による測定方法に最適な作動周波数を選択するために、較正中に低周波数範囲と高周波数範囲において2つの周波数範囲の広範な捜索が行なわれる。各々の範囲において、信号の振幅(伝搬した信号の強度)と、この特定の周波数におけるグルコースの変化に対する位相のずれの感度に従って最適な周波数が選択される。較正後、このような2つの選択された(1つは低周波数範囲からで、1つは高周波数範囲から)周波数において測定が行なわれる。
【0106】
各々の較正点において、周辺温度と組織温度が共に採用されるのが好ましい。較正の工程の終わりに、この2つの温度の相関関係が見つかる。このような相関関係を後に使用して、各々の測定に関して測定される耳と周辺温度のずれを見つける。
【0107】
較正後、測定する間(約1分間)、耳たぶをイヤークリップ12で挟むことによってグルコースのスポット測定が行なわれ、その後それを取り外す。
【0108】
センサの位置決定の確認(デバイスによって)に続いて、調整中に確立された距離基準を使用して測定が開始される。各々の測定チャネルが複数の出力を生成し、この出力に対して3段階の信号処理、すなわち信号確認および異常値の認識、ならびに温度補償および温度補正が適用される。
【0109】
超音波チャネルの場合の第1段階において、各々選ばれた周波数の信号増幅がチェックされることで、組織を通り抜ける適切な波の伝搬が保証される。
【0110】
電磁センサと超音波センサは組織の同一領域に物理的に設置されるため、測定される低い振幅は、接触性が低いことを示している。この場合、測定は無視され、ユーザに失敗であることの通知が与えられる。熱技術において、センサは、電磁および超音波センサとは異なる組織領域に設置される。よって2つの後者の技術の接触が良好であったとしても、熱チャネルに関しても同様であるとは保証されない。よって加熱工程もまた、有効性フィルタを介して最小および最大温度閾値の上昇があるかどうかチェックされる。範囲外の上昇は、接触性が低いものとみなされ、ユーザに対する失敗の通知が生成される。電磁チャネルの出力もまた、較正のセクションで考察したように作動周波数と隣接する周波数の最大および最小偏差についてチェックされる。
【0111】
周辺温度と組織温度の両方を使用して、全ての測定チャネルにおいて補償を行なうため、この2つの温度は、まず有効性についてチェックすべきである。したがって第2段階では、温度は、較正に比例する相関性についてテストされる。したがって各々の測定に関して、相関性が低いことは、測定した温度の1つに障害があることを示している。この妨害された温度は、まず他の温度に従って補償され、その後2つの温度を使用して、全ての3つの技術にわたって統合された信号温度補正を行なう。
【0112】
この第3段階には、先に考察したように全ての技術の出力に関する温度補正が含まれる。さらに各々の測定チャネルに関して、較正工程において確立したモデル係数を使用してグルコースレベルが計算される。
【0113】
各々の測定チャネルから受信したグルコース値が相関性をチェックされる。その後、相関性の度合いによってこの3つの値のそれぞれに対して重みが割り当てられる。最後に重み付け後の3つの技術の出力の組み合わせが、より正確なグルコース読取り値を形成する。
【0114】
グルコースおよび他の血液溶質は、例えば様々な組織区分(例えば間質、血液、細胞)における伝導性、誘電率、熱容量、密度および圧縮率などの様々な組織特性に影響を与える。よってこのような特性を測定することで、ヒトの体におけるBGレベルの評価につなげることができる。
【0115】
一般に傾向分析または連続するグルコース値のいずれかを生成する非侵襲デバイス(開発段階における)は、グルコースと相関する、組織パラメータの変化によって反映される生理現象を測定する(Khalil OS. Non−invasive glucose measurement technologies: An Update from 1999 to the Dawn of the New Millennium. Diabetes Technol Ther. 2004 Oct; 6(5):660−697; Smith JL. The Pursuit of Noninvasive Glucose: ”Hunting the Deceitful Turkey”. 2006)。しかしながらこのような相関性から得られる実際のグルコース値は、グルコース以外の要因も同様に組織パラメータに影響するため、本来のグルコース値とは異なる。このような妨害する要因によって信号対ノイズ比が低下し、読取り値が不正確になってしまう。
【0116】
このような障害の影響を最小限にするために、多様な技術と多様なセンサを組み合わせた方法体系が提案される。各々の技術が、同一のグルコース濃度の変化によって影響を受ける異なる組織パラメータを測定する。よって方法それ自体がグルコースの指標であるが、特殊性に欠けるため、妨害する要因の強い影響によって制限される。したがって、言及した方法体系的な変化を、グルコース濃度の変化によって誘発される異なる組の組織の外乱を測定することによって同時に評価することは、最終結果の有効性を高めることが予測される。
【0117】
提示された方法体系は、このように統合することで信号対ノイズ比を上げるのに貢献するため、多様な技術と多様なセンサの手法を支持することで期待の持てる結果を示している。このような多様なセンサによって、測定したパラメータならびに障害(例えば温度)に対する補償や補正の有効性を考慮することでセンサの接触の特性を決定することが可能になる。
【0118】
本発明の特定の特徴を本明細書に例示して記載してきたが、当業者は多くの修正形態、代替形態、変更形態および均等物を思い付くであろう。本発明を特定の実施形態を参照して詳細に記載してきたが、多様な他の修正形態を生み出すことも可能であり、さらにこのような修正形態も本発明の精神および範囲内にある。したがって全てのこのような修正形態や変更形態が本発明の本来の精神の範囲内にあるとき、添付の特許請求の範囲はそれらを全て網羅することが意図されることを理解されたい。