特許第6032458号(P6032458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6032458固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032458
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20161121BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20161121BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   C01G53/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-22002(P2012-22002)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-161622(P2013-161622A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年12月24日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発/要素技術開発/高容量電池の研究開発委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−028999(JP,A)
【文献】 特開2009−259505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/505
H01M 4/525
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(1)
(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
で表される化合物を含む固溶体リチウム含有遷移金属酸化物であって、
上記化合物を正極活物質として適用したリチウムイオン二次電池のヒステリシス量が0.1〜0.25である
とを特徴とする固溶体リチウム含有遷移金属酸化物
【請求項2】
請求項1に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
化学式(1)で表される化合物を含み、上限電位が対極に対して4.3V以上4.8V未満となるように充放電し、この充放電を複数回繰り返すに際して、上限電位を段階的に高めることにより得られることを特徴とする固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(1)
(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【請求項4】
上記化合物を正極活物質として適用したリチウムイオン二次電池のヒステリシス量が0.1〜0.25であることを特徴とする請求項3に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池に関する。更に詳細には、本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド電気自動車等の車両のモータ等の駆動用電源や補助電源に用いられる。また、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、通常、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)等の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵となるモータ駆動用二次電池などの開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極用スラリーを集電体の表面に塗布して形成した正極と、負極活物質を含む負極用スラリーを負極集電体の表面に塗布して形成した負極と、これらの間に位置する電解質とが、電池ケースに収納された構成を有する。
【0004】
リチウムイオン二次電池の容量特性、出力特性などの向上のためには、各活物質の選定が極めて重要である。
【0005】
従来、化学式:Li1+a[MnCoNi(1−b−c)(1−a)(2−d)(式中、a、b、cおよびdはそれぞれ0<a<0.25、0.5≦b<0.7、0≦c<(1−b)、−0.1≦d≦0.2の範囲内である。)で表されるリチウム複合酸化物を含有する正極活物質を用いた電池が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−220630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討においては、上記特許文献1に記載された正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池にあっては、充電時の開回路電圧(OCV)曲線と放電時の開回路電圧曲線が大きく異なるヒステリシス現象が発生してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的とするところは、低いヒステリシス量及び高い放電容量を有する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。その結果、特定の化学式で表される化合物を含み、所定の充放電をすることにより得られる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物とすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式(1):Li1.5[NiCoMn[Li]]O(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)で表される化合物を含む固溶体リチウム含有遷移金属酸化物であって、該化合物を正極活物質として適用したリチウムイオン二次電池のヒステリシス量が0.1〜0.25であるものである
【0011】
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、上記本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を用いたものである。
さらに、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法は、化学式(1)で表される化合物を含み、上限電位が対極に対して4.3V以上4.8V未満となるように充放電し、この充放電を複数回繰り返すに際して、上限電位を段階的に高めることにより得られる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法である。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(1)
(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
さらにまた、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、上記本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法である。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化学式(1):Li1.5[NiCoMn[Li]]O(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)で表される化合物を含む固溶体リチウム含有遷移金属酸化物であって、該化合物を正極活物質として適用したリチウムイオン二次電池のヒステリシス量が0.1〜0.25であるものとした
のため、低いヒステリシス量及び高い放電容量を有する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】リチウム量とヒステリシス量及びリチウム量と放電容量との関係を示すグラフ(A)及び(B)である。
図2】コバルト量とヒステリシス量及びコバルト量と放電容量との関係を示すグラフ(A)及び(B)である。
図3】ニッケル量とヒステリシス量及びニッケル量と放電容量との関係を示すグラフ(A)及び(B)である。
図4】本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物及びリチウムイオン二次電池について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物について詳細に説明する。
本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、化学式(1)で表される化合物を含み、上限電位が対極に対して4.3V以上4.8V未満となるように充放電し、この充放電を複数回繰り返すに際して、上限電位を段階的に高めることにより得られるものである。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(1)
式中、a、b、c及びdは、0.39≦a<0.75、0≦b≦0.18、0<c<1.00、0.05≦d≦0.25、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【0016】
このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、ヒステリシス量を低減しつつ、高い放電容量を有するため、リチウムイオン二次電池に好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、家庭用や携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
【0017】
ここで、本発明において「高い放電容量」とは、例えば、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物をリチウムイオン二次電池用正極活物質として用いた作用極とリチウム金属やリチウム合金、グラファイトなどの負極活物質を含む対極とを用いて構成したリチウムイオン二次電池を0.1Cレートにて電池の最高電圧が4.5Vとなるまで定電流充電を行い、次いで、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートにて定電流放電を行ったときの初期放電容量が200mAh/g以上であることをいう。
【0018】
また、本発明において「低いヒステリシス量」とは、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物をリチウムイオン二次電池用正極活物質として用いた作用極とリチウム金属やリチウム合金、グラファイトなどの負極活物質を含む対極とを用いて構成したリチウムイオン二次電池を0.1Cレートにて電池の最高電圧が4.5Vとなるまで定電流充電を行い、次いで、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートにて定電流放電を行ったときの100mAh/g充電された状態における充電時及び放電時の電圧の差分が0.25V以下であることをいう
【0019】
化学式(1)において、a、b、c及びdが0.39≦a<0.75、0≦b≦0.18、0<c<1.00、0.05≦d≦0.25、a+b+c+d=1.5の関係を満足しない場合は、低いヒステリシス量及び高い放電容量を有する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物とならない。例えば、化学式(1)において、aが0.39未満の場合は、ヒステリシス量が0.25Vより高くなる。また、aが0.75以上の場合は、固溶体の構造が安定化しない。また、化学式(1)において、bが0.18超の場合は、ヒステリシス量が0.25Vより高くなる。更に、化学式(1)において、cが0や1.0以上の場合は、固溶体の構造が安定化しない。更にまた、化学式1において、dが0.25超の場合は、ヒステリシス量が0.25Vより高くなる。また、dが0.05未満の場合は、放電容量が200mAh/gより低くなる。
【0020】
aが0.42以上であることが、ヒステリシス量を0.2V以下とする観点から好ましく、aが0.48以上0.53以下であることがヒステリシス量を0.15V以下とする観点から好ましい。また、bが0.11以下であることが、ヒステリシス量を0.2V以下とする観点から好ましく、bが0.02以上0.07以下であることがヒステリシス量を0.15以下とする観点から好ましい。更に、dが0.23以下であることが、ヒステリシス量を0.2V以下とする観点から好ましく、dが0.05以上であることが、放電容量を220mA/g以上とする観点から好ましい。なお、このときも、a+b+c+d=1.5の関係を満足することは必要である。また、図1(A)及び(B)に、d(リチウム量)とヒステリシス量及びd(リチウム量)と放電容量との関係を示し、図2(A)及び(B)に、b(コバルト量)とヒステリシス量及びb(コバルト量)と放電容量との関係を示し、図3(A)及び(B)にa(ニッケル量)とヒステリシス量及びa(ニッケル量)と放電容量との関係を示す。
【0021】
また、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の好適な例としては、化学式(2)で表されるものである。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(2)
(式中、a、b、c及びdは、0.42≦a<0.75、0≦b≦0.18、0<c<1.00、0.05≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【0022】
更に、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物のより好適な例としては、化学式(3)で表されるものである。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(3)
(式中、a、b、c及びdは、0.42≦a<0.75、0≦b≦0.11、0<c<1.00、0.05≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【0023】
また、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の更に好適な例としては、化学式(4)で表されるものである。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(4)
(式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0≦b≦0.11、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【0024】
更に、本実施形態の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の特に好適な例としては、化学式(5)で表されるものである。
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(5)
式中、a、b、c及びdは、0.48≦a<0.75、0.02≦b≦0.07、0<c<1.00、0.10≦d≦0.23、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)
【0025】
このような固溶体リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、より低いヒステリシス量やより高い放電容量を有するものとなるため、リチウムイオン二次電池により好適に用いられる。その結果、車両の駆動電源用や補助電源用のリチウムイオン二次電池としてより好適に利用できる。このほかにも、家庭用や携帯機器用のリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法について若干の例を挙げて詳細に説明する。
まず、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体の製造方法の一例としては、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合して混合物を得、次いで、得られた混合物を不活性ガス雰囲気下、800℃以上1000℃以下で6時間以上24時間以下焼成する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体の製法方法を挙げることができる。
【0027】
また、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体の製造方法の他の一例としては、硫酸塩や硝酸塩などのリチウム化合物、ニッケル化合物、コバルト化合物及びマンガン化合物を含む原料を混合して混合物を得、次いで、得られた混合物を800℃以上1000℃以下で6時間以上24時間以下焼成して焼成物を得、しかる後、得られた焼成物を不活性ガス雰囲気下、600℃以上800℃以下で熱処理する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体の製法方法を挙げることができる。
【0028】
そして、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法の一例としては、化学式(1)
Li1.5[NiCoMn[Li]]O…(1)
式中、a、b、c及びdは、0.39≦a<0.75、0≦b≦0.18、0<c≦1.00、0.05≦d≦0.25、a+b+c+d=1.5の関係を満足する。)で表される固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体を用いて作用極を得、次いで、得られた作用極を用いて所定の電位範囲での充電又は充放電を行う固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の製造方法を挙げることができる。
【0029】
ここで、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体のより具体的な製造方法の一例について説明する。まず、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体の製造方法は、例えば、従来のリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられる固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の作製方法を適宜利用することができる。すなわち、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンの2mol/Lの水溶液を調製する。次いで、これらを所定量秤量して、混合溶液を調製する。更に、マグネティックスターラーで混合溶液を攪拌しながら、混合溶液にアンモニア水をpH7になるまで滴下する。更に、2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を滴下して、ニッケル−コバルト−マンガンの複合炭酸塩を沈殿させる。更に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、所定の温度、時間(例えば、120℃にて5時間)で乾燥する。更に、得られた乾燥物を所定の温度、時間(例えば、500℃にて5時間)で仮焼成する。これに所定のモル比で水酸化リチウムを加え、自動乳鉢で所定時間(例えば、30分間)混合する。更に、所定の温度、時間(例えば、900℃にて12時間)で本焼成する。しかる後、所定の雰囲気、温度、時間(例えば、窒素雰囲気下、600℃にて12時間)で熱処理することにより、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体を得ることができる。また、本焼成及びそれに続く熱処理に代えて、所定の雰囲気、温度、時間(例えば、窒素雰囲気下、900℃にて12時間)で焼成することにより、同様の固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体を得ることもできる。なお、このような組成を有する固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体は、素材メーカーから入手することも可能である。
【0030】
次に、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物のより具体的な製造方法の一例について説明する。まず、上述のようにして得られた固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体を用いて作用極を得、次いで、得られた作用極を用いて、所定の電位範囲における最高電位が、リチウム金属やリチウム合金、グラファイトなどの負極活物質を用いた対極に対して4.3V以上4.8V未満である充電又は充放電を行うことにより、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物を得ることができる。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の一例の概略を示す断面図である。なお、このようなリチウムイオン二次電池は、ラミネート型リチウムイオン二次電池と呼ばれる。
【0033】
図4に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、正極リード21及び負極リード22が取り付けられた電池素子10がラミネートフィルムで形成された外装体30の内部に封入された構成を有している。そして、本実施形態においては、正極リード21及び負極リード22が、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。なお、図示しないが、正極リード及び負極リードが、外装体の内部から外部に向かって、同一方向に導出されていてもよい。また、このような正極リード及び負極リードは、例えば超音波溶接や抵抗溶接などにより後述する正極集電体及び負極集電体に取り付けることができる。
【0034】
正極リード21及び負極リード22は、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成されている。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用のリードとして用いられている従来公知の材料を用いることができる。
【0035】
なお、正極リード及び負極リードは、同一材質のものを用いてもよく、異なる材質のものを用いてもよい。また、本実施形態のように、別途準備したリードを後述する正極集電体及び負極集電体に接続してもよいし、後述する各正極集電体及び各負極集電体をそれぞれ延長することによってリードを形成してもよい。図示しないが、外装体から取り出された部分の正極リード及び負極リードは、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0036】
また、図示しないが、電池外部に電流を取り出す目的で、集電板を用いてもよい。集電板は集電体やリードに電気的に接続され、電池の外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出される。集電板を構成する材料は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料を用いることができる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、これらの合金、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料が好ましく、軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム(Al)、銅(Cu)などがより好ましい。なお、正極集電板と負極集電板とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0037】
外装体30は、例えば、小型化、軽量化の観点から、フィルム状の外装材で形成されたものであることが好ましいが、これに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の外装体に用いられている従来公知のものを用いることができる。すなわち、金属缶ケースを適用することもできる。
【0038】
なお、高出力化や冷却性能に優れ、電気自動車、ハイブリッド電気自動車の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、例えば、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを挙げることができる。より具体的には、熱圧着層としてのポリプロピレン、金属層としてのアルミニウム、外部保護層としてのナイロンをこの順に積層して成る3層構造のラミネートフィルムの外装材で形成された外装体を好適に用いることができる。
【0039】
なお、外装体は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造、例えば金属材料を有さないラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルム又は金属フィルムなどにより構成してもよい。
【0040】
ここで、外装体の一般的な構成は、外部保護層/金属層/熱圧着層の積層構造で表すことができる(但し、外部保護層及び熱圧着層は複数層で構成されることがある。)。なお、金属層としては、耐透湿性のバリア膜として機能すれば十分であり、アルミニウム箔のみならず、ステンレス箔、ニッケル箔、メッキを施した鉄箔などを使用することができるが、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることができる。
【0041】
外装体として、使用可能な構成を(外部保護層/金属層/熱圧着層)の形式で列挙すると、ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/ナイロン/無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/ナイロン/ポリエチレン、ナイロン/ポリエチレン/アルミニウム/直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレンテレフタレート/低密度ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレート/ナイロン/アルミニウム/低密度ポリエチレン/無延伸ポリプロピレンなどがある。
【0042】
図4に示すように、電池素子10は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極活物質層11Bが形成された正極11と、電解質層13と、負極集電体12Aの両方の主面上に負極活物質層12Bが形成された負極12とを複数積層した構成を有している。このとき、一の正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極活物質層11Bと該一の正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極活物質層12Bとが電解質層13を介して向き合う。このようにして、正極、電解質層、負極の順に複数積層されている。
【0043】
これにより、隣接する正極活物質層11B、電解質層13及び負極活物質層12Bは、1つの単電池層14を構成する。従って、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、単電池層14が複数積層されることにより、電気的に並列接続された構成を有するものとなる。なお、正極及び負極は、各集電体の一方の主面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。本実施形態においては、例えば、電池素子10の最外層に位置する負極集電体12aには、片面のみに、負極活物質層12Bが形成されている。
【0044】
また、単電池層の外周には、隣接する正極集電体や負極集電体の間を絶縁するための絶縁層(図示せず)が設けられていてもよい。このような絶縁層は、電解質層などに含まれる電解質を保持し、単電池層の外周に、電解質の液漏れを防止する材料により形成されることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリスチレン(PS)などの汎用プラスチックや熱可塑オレフィンゴムなどを使用することができる。また、シリコーンゴムを使用することもできる。
【0045】
正極集電体11A及び負極集電体12Aは、導電性材料から構成される。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定することができる。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。集電体の形状についても特に制限されない。図4に示す電池素子10では、集電箔のほか、網目形状(エキスパンドグリッド等)等を用いることができる。
なお、負極活物質の一例である薄膜合金をスパッタ法等により負極集電体12A上に直接形成する場合には、集電箔を用いるのが望ましい。
【0046】
集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂を採用することができる。
具体的には、金属としては、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)、銅(Cu)などが挙げられる。これらのほか、ニッケル(Ni)とアルミニウム(Al)とのクラッド材、銅(Cu)とアルミニウム(Al)とのクラッド材、又はこれらの金属を組み合わせためっき材などを用いることが好ましい。また、金属表面にアルミニウム(Al)が被覆された箔であってもよい。中でも、電子伝導性や電池作動電位等の観点からは、アルミニウム(Al)、ステンレス鋼(SUS)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)が好ましい。
【0047】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾールなどが挙げられる。このような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化又は集電体の軽量化の点において有利である。
【0048】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。このような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性又は耐溶媒性を有する。
【0049】
上記の導電性高分子材料又は非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーを添加することができる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性又はリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属、導電性カーボンなどが挙げられる。
金属としては、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、白金(Pt)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)及びカリウム(K)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属若しくはこれらの金属を含む合金又は金属酸化物を含むものを好適例として挙げることができる。また、導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン及びフラーレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを好適例として挙げることができる。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の集電体として用いられている従来公知の材料を用いることができる。
【0050】
正極活物質層11Bは、正極活物質として、上述した本発明の実施形態に係る固溶体リチウム含有遷移金属酸化物の少なくとも1種を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電助剤を含んでいてもよい。
【0051】
結着剤(バインダー)としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の材料が挙げられる。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダーは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり正極(及び負極)活物質層に使用が可能である。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の結着剤として従来用いられている公知の材料を用いることができる。これらの結着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
正極活物質層に含まれるバインダー量は、正極活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは正極活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0053】
導電助剤とは、正極活物質層の導電性を向上させるために配合されるものである。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料を挙げることができる。正極活物質層が導電助剤を含むと、正極活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与し得る。
しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の導電助剤として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの導電助剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
また、上記導電助剤と結着剤の機能を併せ持つ導電性結着剤をこれら導電助剤と結着剤に代えて用いてもよいし、又はこれら導電助剤と結着剤の一方若しくは双方と併用してもよい。導電性結着剤としては、例えば、既に市販のTAB−2(宝泉株式会社製)を用いることができる。
【0055】
負極活物質層12Bは、負極活物質として、リチウム、リチウム合金、又はリチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電助剤を含んでいてもよい。なお、結着剤や導電助剤は上記説明したものを用いることができる。
【0056】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料;ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、水素(H)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ガリウム(Ga)、タリウム(Tl)、炭素(C)、窒素(N)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、塩素(Cl)等のリチウムと合金化する元素の単体、及びこれらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiOなど)及び炭化物(炭化ケイ素(SiC)など)等;リチウム金属等の金属材料;リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物を挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、リチウムイオン二次電池用の負極活物質として用いられている従来公知の材料を用いることができる。これらの負極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、各活物質層(集電体片面の活物質層)の厚さについても特に限定されるものではなく、電池についての従来公知の知見を適宜参照することができる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、通常1〜500μm程度、好ましくは2〜100μmである。
更に、活物質それぞれ固有の効果を発現する上で、最適な粒径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径同士を混合して用いればよく、全ての活物質の粒径を均一化させる必要はない。
例えば、正極活物質として粒子形態の酸化物を用いる場合、酸化物の平均粒子径は、既存の正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径と同程度であればよく、特に制限されない。高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmの範囲であればよい。なお、本明細中において、「粒子径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて観察される活物質粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。他の構成成分の粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
ただし、このような範囲に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現できるものであれば、この範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。
【0058】
電解質層13としては、例えば、後述するセパレータに保持させた電解液や高分子ゲル電解質、固体高分子電解質を用いて層構造を形成したもの、更には、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質を用いて積層構造を形成したものなどを挙げることができる。
電解液としては、例えば、通常リチウムイオン二次電池で用いられるものであることが好ましく、具体的には、有機溶媒に支持塩(リチウム塩)が溶解した形態を有する。リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li10Cl10)等の無機酸陰イオン塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(CSON)等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩等を挙げることができる。また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類又は2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒を用いたものなどが使用できる。なお、セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンからなる微多孔膜や多孔質の平板、更には不織布を挙げることができる。
高分子ゲル電解質としては、高分子ゲル電解質を構成するポリマーと電解液を従来公知の比率で含有したものを挙げることができる。例えば、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。
高分子ゲル電解質は、イオン導伝性を有する固体高分子電解質に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる上記電解液を含有させたものである。しかしながら、これに限定されるものではなく、リチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできるが、ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
固体高分子電解質は、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)などに上記リチウム塩が溶解して成る構成を有し、有機溶媒を含まないものを挙げることができる。したがって、電解質層が固体高分子電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上させることができる。
電解質層の厚みは、内部抵抗を低減させるという観点からは薄い方が好ましい。電解質層の厚みは、通常1〜100μmであり、好ましくは5〜50μmである。
なお、高分子ゲル電解質や固体高分子電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現させることができる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)やポリプロピレンオキシド(PPO))に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0059】
次に、上述した本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法について若干の例を挙げて説明する。
リチウムイオン二次電池の製造方法の一例を説明する。まず、正極を作製する。例えば粒状の正極活物質を用いる場合には、上述した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、正極用スラリーを作製する。
次いで、この正極用スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層を形成する。
【0060】
また、負極を作製する。例えば粒状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、負極用スラリーを作製する。この後、この負極用スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成する。
【0061】
次いで、正極に正極リードを取り付けるとともに、負極に負極リードを取り付けた後、正極、セパレータ及び負極を積層する。更に、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。
【0062】
しかる後、六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩と、炭酸エチレンなどの有機溶媒を含む非水電解質を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。これにより、ラミネート型のリチウムイオン二次電池が完成する。
【0063】
リチウムイオン二次電池の製造方法の他の一例を説明する。まず、正極を作製する。例えば粒状の正極活物質を用いる場合には、上述した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、正極用スラリーを作製する。
次いで、この正極用スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層を形成する。
【0064】
また、負極を作製する。例えば粒状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー及び粘度調整溶剤とを混合し、負極用スラリーを作製する。この後、この負極用スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層を形成する。
【0065】
次いで、正極に正極リードを取り付けるとともに、負極に負極リードを取り付けた後、正極、セパレータ及び負極を積層する。更に、積層したものを高分子−金属複合ラミネートシートで挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状の外装体とする。
【0066】
しかる後、六フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩と、炭酸エチレンなどの有機溶媒を含む非水電解質を準備し、外装体の開口部から内部に注入して、外装体の開口部を熱融着し封入する。更に上述した所定の充電又は充放電を行う、これにより、ラミネート型のリチウムイオン二次電池が完成する。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
<正極活物質1の組成及び物性>
化学式:Li1.5[Ni0.5075Co0.035Mn0.8075[Li]0.15]O
(a+b+c+d=1.5、d=0.15)
【0069】
硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンの2mol/Lの水溶液を調製する。次いで、これらを所定量秤量して、混合溶液を調製する。更に、マグネティックスターラーで混合溶液を攪拌しながら、混合溶液にアンモニア水をpH7になるまで滴下する。更に、2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、ニッケル−コバルト−マンガンの複合炭酸塩を沈殿させる。更に、得られた沈殿物を吸引ろ過した後、水洗して、所定の温度、時間(例えば、120℃にて5時間)で乾燥する。更に、得られた乾燥物を所定の温度、時間(例えば、500℃にて5時間)で仮焼成する。これに所定のモル比で水酸化リチウムを加え、自動乳鉢で所定時間(例えば、30分間)混合する。更に、所定の温度、時間(例えば、900℃にて12時間)で本焼成する。しかる後、所定の雰囲気、温度、時間(例えば、窒素雰囲気下、600℃にて12時間)で熱処理することにより、固溶体リチウム含有遷移金属酸化物前駆体を得た。
【0070】
<正極用スラリーの組成>
正極活物質1:Li1.5[Ni0.5075Co0.035Mn0.8075[Li]0.15]O(85重量部)
導電助剤 :アセチレンブラック(10重量部)
バインダー :ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(5重量部)
溶剤 :N−メチルピロリドン(NMP)
【0071】
<正極用スラリーの製造・塗布・乾燥>
正極活物質85重量部と、アセチレンブラック10重量部と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン5重量部とを混練し、これにN−メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合して、正極用スラリーとした。
次に、集電体としてのアルミニウム箔上に、得られた正極用スラリーを単位面積100mm当たりの活物質量が10mgとなるように塗布し、120℃の乾燥機にて4時間乾燥して、正極を得た。なお、正極は直径15mmとした。
【0072】
<負極用スラリーの組成>
負極活物質 :グラファイト(85重量部)
導電性結着剤:TAB−2(アセチレンブラック:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)=1:1(重量比)(15重量部)
溶剤 :N−メチルピロリドン(NMP)
【0073】
<負極用スラリーの製造・塗布・乾燥>
負極活物質85重量部と、導電性結着剤15重量部とを混練し、これにN−メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合して、負極用スラリーとした。
次に、集電体としてのステンレスメッシュ上に、得られた負極用スラリーを単位面積100mm当たりの活物質量が10mgとなるように塗布し、120℃の乾燥機にて4時間乾燥して、負極を得た。なお、負極は直径16mmとした。
【0074】
<リチウムイオン二次電池の作製>
正極と、負極とを対向させ、この間に、セパレータ(材質:ポリプロピレン、厚み:20μm)を2枚配置した。
次いで、この負極、セパレータ、正極の積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。
更に、正極と負極の間の絶縁性を保つためのガスケットを装着し、下記電解液をシリンジを用いて注入し、スプリング及びスペーサーを積層し、コインセルの上部側を重ね合わせ、かしめることにより密閉して、リチウムイオン二次電池を作製した。
なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DEC=1:2(体積比)の割合で混合した有機溶媒に、支持塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度が1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
【0075】
<電気化学前処理>
1サイクル目は、0.1Cレートにて最高電圧が4.45Vとなるまで定電流充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。次に、2サイクル目は、0.1Cレートにて最高電圧が4.55Vとなるまで定電流充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。更に、3サイクル目は、0.1Cレートにて最高電圧が4.65Vとなるまで定電流充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。しかる後、4サイクル目は、0.1Cレートにて最高電圧が4.75Vとなるまで定電流定電圧充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。このようにして、本例のリチウムイオン二次電池を得た。正極活物質1の仕様の一部を表1に示す。なお、本例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物については、X線回折分析(XRD)より組成を確認した。
【0076】
【表1】
【0077】
(実施例2、参考例3〜参考例9、比較例1〜比較例6)
表1に示す正極活物質2〜16を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、各例のリチウムイオン二次電池を得た。なお、各例のリチウムイオン二次電池を分解して取り出した固溶体リチウム含有遷移金属酸化物については、X線回折分析(XRD)より組成を確認した。
【0078】
[電池の性能評価]
(電池の容量)
上記各例のリチウムイオン二次電池に対して、0.1Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで定電流充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。1サイクル目(電気化学前処理を含めると5サイクル目である。)の放電容量を各例の放電容量とした。得られた結果を表1に併記する。
【0079】
(ヒステリシス量)
二次電池に対して、0.1Cレートにて最高電圧が4.5Vとなるまで定電流充電し、電池の最低電圧が2.0Vとなるまで0.1Cレートで定電流放電した。得られた開回路電圧曲線の1サイクル目(電気化学前処理を含めると5サイクル目である。)の100mAh/g充電された状態における、充電時及び放電時の電圧の差分を各例のヒステリシス量とした。得られた結果を表1に併記する。
【0080】
表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例2は、本発明外の比較例1〜比較例6と比較して、低いヒステリシス量及び高い放電容量を有することが分かる。現時点においては、実施例1又は2が特に優れていると考えられる。
【0081】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0082】
すなわち、上記実施形態及び実施例においては、リチウムイオン二次電池として、ラミネート型電池やコイン型電池を例示したが、これに限定されるものではなく、ボタン型電池、角形や円筒形などの缶型電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。
【0083】
また、例えば、本発明は、上述した積層型(扁平型)電池だけでなく、巻回型(円筒型) 電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。
【0084】
更に、例えば、本発明は、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、上述した通常型(内部並列接続タイプ)電池だけでなく、双極型(内部直列接続タイプ)電池など従来公知の形態・構造についても適用することができる。なお、双極型電池における電池素子は、一般的に、集電体の一方の表面に負極活物質層が形成され、他方の表面に正極活物質層が形成された双極型電極と、電解質層とを複数積層した構成を有している。
【符号の説明】
【0085】
1 リチウムイオン二次電池
10 電池素子
11 正極
11A 正極集電体
11B 正極活物質層
12 負極
12A 負極集電体
12B 負極活物質層
13 電解質層
14 単電池層
21 正極リード
22 負極リード
30 外装体
図1
図2
図3
図4