特許第6032471号(P6032471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032471
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20161121BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G03G21/00 370
   B65H5/06 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-180319(P2012-180319)
(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公開番号】特開2014-38201(P2014-38201A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 純也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−064891(JP,A)
【文献】 特開平08−324841(JP,A)
【文献】 特開2011−225353(JP,A)
【文献】 特開2003−206050(JP,A)
【文献】 特開2003−165652(JP,A)
【文献】 特開2007−276229(JP,A)
【文献】 特開2011−197237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナー像を作成する複数の作像ユニットと、回転自在の中間転写体と、前記中間転写体を挟んで前記像担持体に圧接し、前記像担持体上に作成されたトナー像を前記中間転写体上に転写させる回転自在の1次転写手段と、前記中間転写体に圧接し、前記中間転写体上に転写されたトナー画像を被転写部材に2次転写させる回転自在の2次転写手段と、前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部に、被転写部材を所定のタイミングで搬送するレジストローラ対とを有する画像形成装置において、
前記被転写部材の種類を入力する入力手段と、前記レジストローラ対の圧接力を調整する調整手段と、前記レジストローラ対に搬送される被転写部材の先端の通過を検知する検知手段とを備え、
前記検知手段が被転写部材の先端の通過を検知した後、被転写部材の後端が前記レジストローラ対を通過する前に、
前記調整手段は、前記入力手段により入力された前記被転写部材の種類によって、前記レジストローラ対の圧接力を維持または弱くすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
被転写部材の坪量が大きいほど、圧接力の弱め量を大きくする請求項記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検知手段が、前記レジストローラ対のニップ部よりも被転写部材の搬送方向上流側に設けられた請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
被転写部材の搬送方向長さが、前記レジストローラ対のニップ部から前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部までの搬送距離よりも長い場合、
前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部で被転写部材の先端が挟持された後、前記レジストローラ対の圧接力を弱くする請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部よりも被転写部材の搬送方向下流側に、被転写部材上に転写されたトナー像を溶融定着させるための定着ローラ対が設けられ、
被転写部材の搬送方向長さが、前記レジストローラ対のニップ部から前記定着ローラ対のニップ部までの搬送距離よりも長い場合、
前記定着ローラ対のニップ部で被転写部材の先端が挟持された後、前記レジストローラ対の圧接力を弱くする請求項1〜のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリやプリンター、複写機などの電子写真方式を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置では、給紙部から搬送されてきた用紙は、レジストローラ対で用紙の位置決めがなされ斜行が整えられて、所定のタイミングで転写部に送り出される。そして、転写部でトナー画像が用紙に転写された後、続く定着ローラ対で加熱・加圧されてトナー画像は用紙に溶融定着する。
【0003】
このような構成の画像形成装置において、定着ローラ対のローラが加熱によって膨張し、定着ローラ対の用紙搬送速度が設定よりも速くなることがある。定着ローラ対の用紙搬送速度が、レジストローラ対の用紙搬送速度よりも速くなると、用紙の後端がレジストローラ対を抜けた瞬間に、用紙が定着ローラ対によって引っ張られて用紙の搬送速度が速くなり、転写部において画像に乱れが生じる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、用紙の後端がレジストローラ対のニップ部を抜ける前に、レジストローラ対のニップ力を低下させて、レジストローラ対と定着ローラ対との用紙搬送速度差による画像の乱れを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-324841号公報
【特許文献2】特開2003-206050号公報
【特許文献3】特開2003-165652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、フルカラー画像形成装置が広く使用されつつある。図6に、従来のフルカラー画像形成装置の部分概説図を示す。複数の作像ユニットにおいて、所定の周速度で回転駆動される感光体20の外周面が帯電装置21によって帯電される。次に、画像情報に応じた光が露光装置22から、帯電された感光体20の表面に投射されて静電潜像が書き込まれる。続いて、この静電潜像は、現像装置23から供給される帯電したトナーにより顕在化される。そして、感光体20の表面に形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ24によって感光体20から中間転写ベルト33上に1次転写される。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー像が、感光体20から中間転写ベルト33上へ1次転写されて重ねられカラートナー像となる。そして、2次転写ローラ34によって、レジストローラ対52から所定タイミングで搬送された用紙Pにカラートナー像が2次転写される。その後、用紙Pは定着ローラ対1に搬送され、ここで加熱・加圧されて、カラートナー像は用紙Pに溶融定着する。
【0007】
このような構成のフルカラー画像形成装置では、通常、撓み量センサーS2によって用紙Pの撓み量が検知され、2次転写部と定着ローラ対1との間で用紙Pが撓みを形成するように定着ローラ対1の回転が制御される。このため、2次転写部と定着ローラ対1とが用紙Pを引き合うことはなく、特許文献1で課題とされた、レジストローラ対52と定着ローラ対1との間の用紙搬送速度差による画像の乱れは生じない。
【0008】
ところが、近年、画像形成装置に用いられる用紙の種類が最近増加してきており、これら多種多様の用紙に対応できるようにすることが画像形成装置に要求されている。例えば、レジストローラ対52によって用紙Pの位置決めを行うためには、レジストローラ対52のニップ部において用紙Pの先端が突き当たった状態で用紙Pを停止させる必要がある。このためには、パンフレット等に使用される坪量の大きい厚紙に画像形成する場合に備えて、レジストローラ対52の圧接力を高くしておかなければならない。
【0009】
しかし、図7に示すよう、レジストローラ対52の圧接力Fを高くすると、坪量の大きい厚紙の後端がレジストローラ対52のニップ部を抜けた瞬間に、圧接力Fが用紙後端に対して斜め方向に働き、用紙Pの搬送方向に加速する力Ffが生じる。そして、この加速力Ffによって、中間転写ベルト33と2次転写ローラ34の回転速度が一時的に速くなり、これに起因して中間転写ベルト33と接触している感光体20の回転速度も一時的に速くなる。この結果、例えば、露光装置22による感光体20への静電潜像の書き込みズレが生じる。
【0010】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の作像ユニットを備えた電子写真方式の画像形成装置において、レジストローラ対のニップ部を用紙後端が抜ける際に生じる加速力Ffを抑制し、中間転写体や像担持体の回転速度変動を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、像担持体上にトナー像を作成する複数の作像ユニットと、回転自在の中間転写体と、前記中間転写体を挟んで前記像担持体に圧接し、前記像担持体上に作成されたトナー像を前記中間転写体上に転写させる回転自在の1次転写手段と、前記中間転写体に圧接し、前記中間転写体上に転写されたトナー画像を被転写部材に2次転写させる回転自在の2次転写手段と、前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部に、被転写部材を所定のタイミングで搬送するレジストローラ対とを有する画像形成装置であって、前記被転写部材の種類を入力する入力手段と、前記レジストローラ対の圧接力を調整する調整手段と、前記レジストローラ対に搬送される被転写部材の先端の通過を検知する検知手段とを備え、前記検知手段が被転写部材の先端の通過を検知した後、被転写部材の後端が前記レジストローラ対を通過する前に、前記調整手段は、前記入力手段により入力された前記被転写部材の種類によって、前記レジストローラ対の圧接力を維持または弱くすることを特徴とする。
【0012】
ここで、圧接力の弱め量は、被転写部材の坪量が大きいほど大きくするのが好ましい。
【0013】
前記検知手段が、前記レジストローラ対のニップ部よりも被転写部材の搬送方向上流側に設けてもよい。
【0014】
また、被転写部材の搬送方向長さが、前記レジストローラ対のニップ部から前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部までの搬送距離よりも長い場合には、前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部で被転写部材の先端が挟持された後、前記レジストローラ対の圧接力を弱くしてもよい。
【0015】
あるいは、前記中間転写体と前記2次転写手段とのニップ部よりも被転写部材の搬送方向下流側に、被転写部材上に転写されたトナー像を溶融定着させるための定着ローラ対が設けられ、被転写部材の搬送方向長さが、前記レジストローラ対のニップ部から前記定着ローラ対のニップ部までの搬送距離よりも長い場合には、前記定着ローラ対のニップ部で被転写部材の先端が挟持された後、前記レジストローラ対の圧接力を弱くしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像形成装置では、前記検知手段が被転写部材の先端の通過を検知した後、被転写部材の後端がレジストローラ対を通過する前に、前記調整手段が、前記入力手段により入力された前記被転写部材の種類によって、レジストローラ対の圧接力を維持または弱くするので、レジストローラ対のニップ部を用紙後端が抜ける際に生じる加速力Ffが抑えられ、中間転写体や像担持体の回転速度変動が抑制される。これにより、感光体などの像担持体への静電潜像の書き込みズレが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概説図である。
図2】用紙の坪量と感光体の書き込みズレ量との関係を示す図である。
図3】用紙の坪量に対する、書き込みズレの生じないレジストローラ対の圧接力の領域を示す図である。
図4】レジストローラ対の圧接力の調整する機構例を示す図である。
図5】レジストローラ対の圧接力の調整制御例を示すフローチャートである。
図6】従来のフルカラー画像形成装置の部分概説図である。
図7】レジストローラ対のニップ部を用紙後端が抜ける際に生じる加速力Ffの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像形成装置について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0019】
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概説図を示す。図1の画像形成装置は所謂タンデム方式のカラープリンターDである。もちろん、プリンターのほか、さらにスキャナを有する複写機、ファクシミリ又はそれらの機能を複合的に備えた複合機等にも本発明を適用することができる。また、画像形成方式としてはタンデム方式に限定されるものではなく、他の方式、例えば、回転軸の周囲に4つの現像装置を配置し、これらを順次静電潜像担持体に対向させてフルカラー画像を作成する所謂4サイクル方式であっても構わない。
【0020】
カラープリンターDは、導電性を有する無端状の中間転写ベルト(中間転写体)33を有する。中間転写ベルト33は、図の左右両側にそれぞれ配置された一対のローラ31,32に掛架されている。ローラ32は不図示のモータに連結されており、モータの駆動によってローラ32は反時計回りに回転し、これによって中間転写ベルト33とこれに接するローラ31は従動回転する。ローラ32に支持されているベルト部分の外側には、2次転写ローラ(2次転写手段)34が不図示の付勢手段によって圧接している。2次転写ローラ34には電圧印加装置35が接続されている。この2次転写ローラ34と中間転写ベルト33とのニップ部(2次転写領域)において中間転写ベルト33上に形成されたトナー像が、搬送されてきた用紙(被転写部材)Pに転写される。また、ローラ31に支持されているベルト部分の外側には、用紙Pに転写することなく中間転写ベルト33上に残留した残トナーを除去するクリーニングブレード9が圧接されている。
【0021】
ローラ31とローラ32とに掛架された中間転写ベルト33の下側には、中間転写ベルト33の回転方向上流側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2K(以下、「作像ユニット2」と総称することがある)が、装置本体に対して着脱自在に配置されている。これらの作像ユニット2では、各色の現像剤をそれぞれ用いて対応する色のトナー像が作成される。
【0022】
作像ユニット2は、静電潜像担持体として回転自在の円筒状の感光体(像担持体)20を有する。そして、感光体20の周囲には、その回転方向(時計回り方向)に沿って順に、感光体帯電装置21、現像装置23、1次転写ローラ(1次転写手段)24、および感光体クリーニング装置6が配置されている。感光体クリーニング装置6はクリーニングブレードを備え、その一端側を感光体20の外周面に当接させて、感光体20の表面に残留するトナーを除去・回収している。1次転写ローラ24は中間転写ベルト33を挟んで感光体20に圧接し、ニップ部(1次転写領域)を形成している。また、作像ユニット2の下方には露光装置22が配置されている。
【0023】
この図に示す実施形態では、1次転写手段および2次転写手段としてローラ方式のものを用いているが、転写手段の種類は特に限定されるものでなく、ベルト方式のものを用いてももちろん構わない。
【0024】
中間転写ベルト33の上方には、各色の現像装置23に補給するトナーを収容したホッパー4Y,4M,4C,4K(以下、「ホッパー4」と総称することがある)がそれぞれ配置されている。また、露光装置22の下部には、給紙装置として給紙カセット50が着脱可能に配置されている。給紙カセット50内に積載収容された用紙Pは、給紙カセット50の近傍に配置された給紙ローラ51の回転によって最上紙から順に1枚ずつ搬送路に送り出される。給紙カセット50から送り出された用紙Pは、レジストローラ対52に搬送され、ここで所定のタイミングで2次転写領域に送り出される。また、用紙検知センサーS1によって、用紙Pの先端の通過が検知され、後述するレジストローラ対の圧接力の調整や、2次転写部への用紙搬送タイミング等のタイマー開始基準とされる。用紙検知センサーS1によって用紙Pの後端を検知してタイマー開始基準としてももちろん構わない。
【0025】
カラープリンターDは、1色のトナー(例えばブラック)を用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードと、4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードとに切り替え可能となっている。
【0026】
カラーモードにおける画像形成動作例について簡単に説明すると、まず、各作像ユニット2において、所定の周速度で回転駆動される感光体20の外周面が、感光体帯電装置21により帯電される。次に、帯電された感光体20の表面に、画像情報に応じた光が露光装置22から投射されて静電潜像が形成される。続いて、この静電潜像は、現像装置23から供給される帯電したトナーにより顕在化される。そして、感光体20の表面に形成された各色のトナー像が、感光体20の回転によって1次転写領域に達すると、1次転写ローラ24にトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加され、トナー像は、感光体20から中間転写ベルト33上に1次転写される。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体20から中間転写ベルト33上へトナー像が1次転写されて重ねられカラートナー像となる。
【0027】
一方、中間転写ベルト33に転写されることなく感光体20上に残った残留トナーは、感光体クリーニング装置6で掻き取られ、感光体20の外周面から除去される。
【0028】
重ね合わされた4色のトナー像は、中間転写ベルト33によって2次転写領域に搬送される。一方、そのタイミングに合わせて、レジストローラ対52から2次転写領域に用紙Pが搬送される。そして、2次転写ローラ34に電圧印加装置35から、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加され、4色のトナー像が、2次転写領域において中間転写ベルト33から用紙Pに転写(2次転写)される。4色のトナー像が転写された用紙Pは、定着装置1へ搬送される。定着装置1において用紙Pは、定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部を通過する。この間に用紙Pは加熱・加圧され、用紙P上のトナー像は用紙Pに溶融定着する。トナー像が定着した用紙Pは排出ローラ対53によって排紙トレイ54に排出される。なお、露光装置22の制御を含む画像形成動作の制御および転写動作の制御は、制御装置(制御手段)10によって行われる。
【0029】
図2に、このような構成のカラープリンターDにおいて、レジストローラ対52の圧接力を所定値としたときの、用紙Pの坪量と、感光体20への静電潜像の書き込みズレ量との関係を示す。図2は、縦軸を書き込みズレ量とし、横軸を用紙Pの坪量として両者の関係を示したものであって、用紙Pの坪量が大きくなるにしたがって、書き込みズレ量は大きくなっている。許容される書き込みズレ量が図の破線以下であるとすると、坪量の大きい用紙B及び用紙Cでは書き込みズレ量が許容範囲を超え実使用上問題が生じる。
【0030】
図3に、縦軸をレジストローラ対52の圧接力とし、横軸を用紙Pの坪量として、用紙Pの坪量に対する、レジストローラ対52の圧接力の、書き込みズレの生じない領域を示す。図3から理解されるように、用紙Pの坪量が大きくなるにしたがって、書き込みズレの生じないレジストローラ対52の圧接力の上限値は低くなる。例えば、レジストローラ対52の圧接力を、坪量の大きい用紙Cの位置決めをするのに最低限必要な圧接力Fcにすると、坪量の小さい用紙Aでは書き込みズレは生じないが、坪量の大きい用紙B及び用紙Cでは書き込みズレが生じる。そこで、用紙B及び用紙Cを使用した場合に、書き込みズレが生じないようにするには、レジストローラ対52の圧接力をFcからΔF1及びΔF2以上弱めればよい。しかし、例えばレジストローラ対52の圧接力を(Fc−ΔF2)とすると、用紙Cを使用した場合の書き込みズレは防止できるが、レジストローラ対52の圧接力不足で、搬送されてきた用紙Cがレジストローラ対52のニップ部を突き抜け、レジストローラ対52で用紙Cの位置決めができないおそれが生じる。
【0031】
そこで、本発明では、レジストローラ対52の圧接力を、給紙部から搬送されてきた用紙Pの位置決めを行うときには、位置決め可能な所定圧力とする一方、レジストローラ対52から用紙Pを送り出し、用紙Pの後端がレジストローラ対52のニップ部を通過する前に、レジストローラ対52の圧接力を低くする。これによって、レジストローラ対52のニップ部を用紙Pの後端が通過する際の加速力が抑えられて、中間転写ベルト33や感光体20の回転速度変動が抑制され、感光体20への静電潜像の書き込みズレが生じないようになる。
【0032】
レジストローラ対52の圧接力を弱くするタイミングとしては、用紙Pの先端がレジストローラ対52のニップ部に突き当たった後、用紙Pの後端がレジストローラ対52のニップ部を通過する前であれば特に限定はない。例えば、中間転写ベルト33と2次転写ローラ34とのニップ部で用紙Pの先端が挟持された後であってもよい。あるいは、用紙Pの搬送方向長さが、レジストローラ対52のニップ部から定着ローラ対1のニップ部までの用紙搬送距離よりも長い場合には、定着ローラ対1のニップ部で用紙Pの先端が挟持された後に、レジストローラ対52の圧接力を弱くしてもよい。これにより、定着ローラ対1のニップ部及び中間転写ベルト22と2次転写ローラ34とのニップ部で用紙Pが挟持されることになり、より安定して用紙搬送が行われるようになる。なお、弱くした圧接力は、次の用紙Pの先端がレジストローラ対52のニップに挟持される前に元に戻すようにする。例えば、用紙検知センサーS1で次の用紙Pの先端を検知した時に元に戻せばよい。
【0033】
レジストローラ対52の圧接力は、使用可能な用紙のうち位置決めするのに圧接力が最も必要な用紙を基準として定めるのが好ましい。例えば、図3では、坪量の最も大きい用紙Cを基準として、レジストローラ対52の圧接力はFcと定める。
【0034】
レジストローラ対52の圧接力の弱め量は、1つだけ設定する場合には、圧接力が最も必要な用紙を基準とし、位置決め時の圧接力と書き込みズレの生じない圧接力との差とすればよい。例えば、図3では、坪量の最も大きい用紙Cを基準として、レジストローラ対52の圧接力の弱め量はΔF2とする。
【0035】
また、レジストローラ対52の圧接力の弱め量は、用紙Pの種類によって変えてもよい。例えば、図3に示すように、用紙Pの坪量が大きくなるほどレジストローラ対52の圧接力の弱め量を大きくするようにしてもよい。これにより、必要以上に圧接力を低下させることがなくなり、レジストローラ対52による用紙Pの確実な送り出しが可能となる。例えば、用紙Pの位置決め時のレジストローラ対52の圧接力をFcとした場合、用紙の後端がレジストローラ対52のニップ部を通過する際のレジストローラ対52の圧接力は、用紙Aを使用するときは位置決め時と同じ圧接力Fcとし、用紙Bを使用するときはFcよりもΔF1低くし、用紙Cを使用するときはFcよりもΔF2低くする。
【0036】
図4に、レジストローラ対52の圧接力を調整する調整手段の構成例を示す。レジストローラ対52は、軸521a及び軸521bを中心として回転自在に設けられたローラ52aとローラ52bとが圧接されてなる。軸521bには、ローラ52bをローラ52aの方向に常に付勢する圧縮コイルバネ74の一方端が当接している。圧縮コイルバネ74の他方端は受け板73を介してカム71に当接している。カム71は、軸72を中心に回転可能であって、回転軸72から外周までの距離が角度によって異なっている。図4(a)は、カム71の回転軸72から受け板73までの距離が最も長く、圧縮コイルバネ74による付勢力が最も強い場合であって、この状態のとき、レジストローラ対52の圧接力は最も強い。この状態からカム71が180度回転し、図4(b)に示す、カム71の回転軸72から受け板73までの距離が最も短い状態になると、圧縮コイルバネ74による付勢力は最も弱くなって、レジストローラ対52の圧接力も最も弱くなる。このように、カム71の回転角度によってレジストローラ対52の圧接力は任意に調整できる。
【0037】
なお、レジストローラ対52の圧接力を調整する調整手段はこれに限定されるものではなく、例えばソレノイドを用いて圧接力を調整する構成などであっても構わない。
【0038】
図5に、以上説明した、レジストローラ対52の圧接力調整制御のフローチャートを示す。まず、入力パネルから、使用する用紙Pの種類が入力されたかどうか判断される(ステップS101)。なお、ここでは用紙A、用紙B、用紙Cの3種類のいずれかの用紙が使用されるものとする。また、用紙の種類は、利用者による入力パネルからの入力によらず、給紙カセットに収納されれている用紙の種類をセンサーによって検知するようにしてももちろん構わない。次いで、画像形成が開始されたかどうかが判断される(ステップS102)。画像形成が開始されると、用紙検知センサーS1で用紙の先端が検知されたかどうかが判断される(ステップS103)。用紙検知センサーS1で用紙Pの先端が検知されると、タイマーが開始される(ステップS104)。このタイマーは、用紙Pの先端が用紙検知センサーS1を通過してから用紙Pの後端がレジストローラ対52のニップ部を通過するまでの時間より短い範囲で設定されている。すなわち、用紙後端がレジストローラ対52のニップ部を通過する前に時間経過するように設定されている。
【0039】
そして、タイマーの時間が経過すると(ステップS105)、レジストローラ対52の圧接力が用紙Pの種類によって調整される。すなわち、図3に示すように、用紙Pの種類が用紙Aの場合は、レジストローラ対52の圧接力は弱めなくても書き込みズレは生じないので、レジストローラ対52の圧接力は当初のまま維持される(ステップS106,S108)。一方、用紙の種類が用紙Bの場合は、レジストローラ対52の圧接力はΔF1だけ弱くされ(ステップS109,S110)、用紙の種類が用紙Cの場合は、レジストローラ対52の圧接力はΔF2だけ弱くされる(ステップS111)。このように、レジストローラ対52の圧接力を弱めることにより、用紙Pの搬送速度変化が抑えられ、感光体20への書き込みズレ等が抑制される。その後、次に搬送されてくる用紙Pの先端が用紙検知センサーS1で検知されると(ステップS112)、レジストローラ対52の圧接力は元に戻される(ステップS113)。これにより、レジストローラ対52によって、搬送されてきた用紙の位置決めが確実に行われるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の画像形成装置では、用紙検知センサーS1が用紙Pの先端の通過を検知した後、用紙Pの後端がレジストローラ対52を通過する前に、前記調整手段が、入力パネルにより入力された用紙Pの種類によって、レジストローラ対52の圧接力を維持または弱くするので、レジストローラ対52のニップ部を用紙後端が抜ける際に生じる加速力が抑えられ、中間転写ベルト33や感光体20の回転速度変動が抑制される。これにより、感光体20などの像担持体への静電潜像の書き込みズレが抑えられ有用である。
【符号の説明】
【0041】
D カラープリンター(画像形成装置)
2 作像ユニット
S1 用紙検知センサー(検知手段)
24 1次転写ローラ
20 感光体(像担持体)
33 中間転写ベルト(中間転写体)
34 2次転写ローラ
52 レジストローラ対
図1
図2
図3
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図5
図6
図7