特許第6032499号(P6032499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032499
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】密閉型ヘッドフォン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   H04R1/10 102
   H04R1/10 103
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-549110(P2013-549110)
(86)(22)【出願日】2012年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2012007862
(87)【国際公開番号】WO2013088689
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-275414(P2011-275414)
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 祐史
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−147383(JP,U)
【文献】 特開2007−158484(JP,A)
【文献】 特開2005−303556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットをそれぞれ内蔵した左耳用および右耳用ハウジングと、
前記左耳用および右耳用ハウジングにそれぞれ取り付けられ、聴取者の耳の周囲を覆うように構成された環状の緩衝部材である、イヤパッドとを備え、
前記イヤパッドは、
耳の上方を覆うための上部と、前記上部の下に位置する下部とを有し、
前記上部と前記下部とは硬度が異なっており、かつ、前記上部は、前記下部よりも硬度が低い
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【請求項2】
請求項1において、
前記イヤパッドは、前記上部が聴取者のメガネのツルの位置に当たるように、構成されている
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記イヤパッドは、緩衝用素材がシートに包まれた構成であり、
前記緩衝用素材として、前記上部には、相対的に軟質な第1素材が用いられ、前記下部には、相対的に硬質な第2素材が用いられ、
前記上部において、前記第1素材と前記シートとは、接着固定されていない
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【請求項4】
請求項3において、
前記上部と前記下部との境界部分において、前記第1素材と前記第2素材とは、接着されている、または、一体に形成されている
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項において、
前記左耳用および右耳用ハウジングをそれぞれ支持する左アームおよび右アームと、
前記左アームと前記右アームとを連結するように構成されたヘッドバンドとを備え、
前記左アームおよび右アームはそれぞれ、前記左耳用または右耳用ハウジングを、聴取者の耳側方において前後方向の軸周りに回動可能なように、支持しており、
前記イヤパッドの前記上部と前記下部との境界部分は、前記軸の位置よりも上側に位置している
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【請求項6】
請求項5において、
前記ヘッドバンドの、聴取者の頭側に設けられ、前記左アームと前記右アームとに接続された収縮自在なヘッドパッドゴムを備えている
ことを特徴とする密閉型ヘッドフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオ信号を再生するヘッドフォンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、メガネやイヤリングを装着している聴取者向けのヘッドフォンを開示する。このヘッドフォンは、スピーカユニットを内蔵した左右のハウジングに取り付けられたパッドに、装着時にメガネのツルが当たる位置に切欠部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−101483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、メガネをかけた聴取者であっても、快適に装着可能であり、かつ、耳周囲の密閉性を維持できるヘッドフォンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における密閉型ヘッドフォンは、スピーカユニットをそれぞれ内蔵した左耳用および右耳用ハウジングと、前記左耳用および右耳用ハウジングにそれぞれ取り付けられ、聴取者の耳の周囲を覆うように構成された環状の緩衝部材であるイヤパッドとを備え、前記イヤパッドは、耳の上方を覆うための上部と、前記上部の下に位置する下部とを有し、前記上部と前記下部とは硬度が異なっており、かつ、前記上部は、前記下部よりも硬度が低い。
【発明の効果】
【0006】
本開示におけるヘッドフォンは、メガネをかけた聴取者であっても、快適に装着可能であり、かつ、耳周囲の密閉性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る密閉型ヘッドフォンの正面図
図2】実施の形態に係る密閉型ヘッドフォンの平面図
図3】実施の形態に係る密閉型ヘッドフォンの右側面図
図4】実施の形態に係る密閉型ヘッドフォンのイヤパッドの断面図
図5】実施の形態に係る密閉型ヘッドフォンを聴取者が装着した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0009】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
(実施の形態1)
[1−1.構成]
図1図3は実施形態に係る密閉型ヘッドフォンの構成を示す図であり、図1は正面図、図2は平面図、図3は右側面図である。図1図3において、111aは左耳用イヤパッド、111bは左耳用ハウジング、112aは右耳用イヤパッド、112bは右耳用ハウジングである。左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bにはそれぞれスピーカユニットが内蔵されており、その前面すなわち聴取者の耳に対向する面には、音響エネルギーを放射するための孔部(図示せず)が設けられている。そして、その孔部を囲むように、左耳用イヤパッド111aと右耳用イヤパッド112aが、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bにそれぞれ取り付けられている。左耳用イヤパッド111aおよび右耳用イヤパッド112aは、聴取者の耳全体を覆うように構成された環状の緩衝部材である。
【0011】
また、113はヘッドバンド、114aはヘッドパッド、114bはヘッドパッドゴム、115は左アーム、116は右アームである。左アーム115および右アーム116は、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bをそれぞれ支持しており、ヘッドバンド113が左アーム115および右アーム116を連結している。左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bは、ヘッドバンド113と左アーム115および右アーム116とによって、スピーカユニットの孔部が対向するよう、内向きに支持されている。また、左アーム115および右アーム116はそれぞれ、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bを、聴取者の耳側方においてその前後方向の軸周りに回動可能なように、支持している。この構成により、聴取者がこのヘッドフォンを装着したとき、左イヤパッド111aが聴取者の左耳に密着して当接するとともに、右イヤパッド112aが聴取者の右耳に密着して当接する。
【0012】
ヘッドバンド113の内側すなわち聴取者の頭の側には、聴取者の頭部に載置するヘッドパッド114aと、このヘッドパッド114aの中空部に挿入された、収縮自在なヘッドパッドゴム114bとが設けられている。ヘッドパッドゴム114bは、左耳用ハウジング111bを支持する左アーム115と、右耳用ハウジング112bを支持する右アーム116とに接続されている。この構成により、聴取者がこのヘッドフォンを装着したとき、聴取者の頭部の大きさに合わせてヘッドパッドゴム114aの長さが可変して、左ハウジング111bと右ハウジング112bが聴取者の耳の位置に配置される。
【0013】
また、このヘッドフォンへの音声信号は、例えば無線により送信され、図示していない電気回路によって受信・増幅されて、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bに内蔵されたスピーカユニットで再生される。あるいは、コードを介してヘッドフォンに入力され、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bに内蔵されたスピーカユニットで再生される
【0014】
図4はイヤパッドの構造を示す図であり、図1の右イヤパッド112aの線A−Aにおける断面図である。なお、左イヤパッド111aも同様の構成である。図4に示すように、イヤパッドは、緩衝用素材601,602がシート603に包まれた構成であり、聴取者の耳の周囲を十分に余裕隙間をもって包み込む内径をもって、環状に構成されている。緩衝用素材601,602は例えば、ポリウレタン樹脂や合成ゴム等の素材を発泡させて柔らかくしたものである。シート603は例えば、柔軟で遮音性のある合成皮革、塩化ビニール、布などからなる。
【0015】
そして、耳の上方を覆う上部P1には、発泡率が高く軟らかい軟質スポンジ601が用いられ、上部P1の下に位置する下部P2には、発泡率が低く硬い硬質スポンジ602が用いられている。すなわち、このイヤパッドは、聴取者がメガネをかけた状態で本実施形態のヘッドフォンを装着したとき、軟質スポンジ601が入っている上部P1がメガネのツルの位置に当たるように、構成されている。なお、軟質スポンジ601とシート603とは、接着固定されていない。また、上部P1と下部P2との境界部分において、軟質スポンジ601と硬質スポンジ602とは、接着固定されている、または、一体に形成されている。
【0016】
[1−2.作用]
以上のように構成されたヘッドフォンについて、その作用を説明する。
【0017】
図5はメガネをかけた聴取者が本実施形態に係るヘッドフォンを装着した状態を示す図である。メガネ402をかけた聴取者401は、両手で左耳用ハウジング111bと右耳用ハウジング112bを持って、ヘッドバンド113を広げて頭部にヘッドパッド114aを当てて、左耳用イヤパッド111aが左耳たぶ周囲を包み込むように、右耳用イヤパッド112aが右耳たぶ周囲を包み込むように、ヘッドフォンを装着する。このとき、収縮自在なヘッドパッドゴム114bは聴取者401の頭部と耳との位置関係に合わせて長さが可変するので、左耳用イヤパッド111aと右耳用イヤパッド112aとが耳たぶ周囲を包み込む位置からずれることはない。
【0018】
この状態において、聴取者401がかけているメガネ402のツルは、左耳用イヤパッド111aおよび右耳用イヤパッド112aの上部P1(図5でハッチを付している)、すなわち軟質スポンジ601が緩衝用素材として用いられた部分に当接している。軟質スポンジ601は軽い力で沈み込むため、上部P1では、メガネ402のツルが当接する部分が、ツルに押されて沈みこむ。一方、硬質スポンジ602が緩衝用素材として用いられた下部P2は、十分に硬いためほとんど沈み込むことはなく、これにより、聴取者401の耳と左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bとの間にはそれぞれ一定の距離が保たれる。このため、軟質スポンジ601が用いられた上部P1は、全体としてその一定の距離以上に沈み込むことはなく、したがって、メガネ402のツルが当接する部分のみが、ツルを包み込むように、沈み込んだ状態となる。
【0019】
これにより、メガネ402をかけた聴取者401は、左耳用イヤパッド111aと右耳用イヤパッド112aによってメガネ402のツルが強く押圧されることがなく、快適にヘッドフォンを使用することができる。加えて、左耳用イヤパッド111aおよび右耳用イヤパッド112aとメガネ402のツルとの間に隙間が生じないので、密閉性が保たれ、音漏れにより遮音性能や低音再生性能が劣化することがない。
【0020】
また、聴取者401がメガネをかけていない場合は、上部P1が沈み込むことはなく、密閉性が保たれる。すなわち、本実施形態のヘッドフォンは、メガネの装着の有無に関係なく装着可能で、かつ耳周囲の密閉性を維持することができる。
【0021】
[1−3.効果等]
従来の構成では、イヤパッドにおいてメガネのツルを避けるように切欠部を設けていたので、切欠部から音漏れが発生したり、あるいは、切欠部の位置が固定されているため、メガネのツルの幅によってはパッドの装着位置がうまく調節できず、聴取者に不快感を与えてしまう、というような問題があった。
【0022】
これに対して本実施形態によると、密閉型ヘッドフォンについて、環状に構成されたイヤパッドを、上部P1に軟質スポンジ601を用い、下部P2に硬質スポンジ602を用いて構成した。これにより、メガネをかけている聴取者も快適に使用できるとともに、音漏れによる遮音性能や低音再生性能の劣化を防止することができる。
【0023】
さらに、近年、3D画像の視聴を楽しむためのAVシステムが普及しつつあり、3D画像用のメガネを着用したユーザがヘッドフォンを装着する場合が増えている。3D画像用メガネのツルは、通常のメガネよりもサイズが大きく、例えば幅が15mm、厚さが8mm程度のものがある。本実施形態の密閉型ヘッドフォンでは、3D画像用メガネと併せて装着する場合であっても、ツルが耳に押しつけられることによる不快感・疲労感がなく、また音漏れもないため、非常に有用である。また、メガネのツルの幅や厚さに関係なく、上のような効果が得られる。
【0024】
なお、部材の材料名等は一例であり、これに限定されるものではない。
【0025】
なお、上部P1において、軟質スポンジ601とその外側を包むシート603とは接着固定されていないので、軟質スポンジ601とシート603との接触部にはすべりがあり、軟質スポンジ601はより沈み込みやすくなっている。このため、メガネ402のツルが当接する部分がより軽い力で沈みこむので、装着時の快適性が向上する。
【0026】
また、上部P1と下部P2との境界部分は、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bが回動する軸よりも上側に位置していることが好ましい。これにより、回動軸が、硬度が相対的に高い下部P2に位置するため、左耳用ハウジング111bおよび右耳用ハウジング112bの装着位置がより安定する。
【0027】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0028】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0029】
上述の実施形態では、イヤパッドの構造を、上部と下部との2つに分けたものとしたが、これに限られるものではない。例えば、ツルが当たる部分のみを軟質スポンジとし、その上部と下部とを硬質スポンジとした3部構造としてもかまわない。ただし、構造が複雑になるとその分、製造コストが高くなる。
【0030】
また、上述の実施形態では、イヤパッドの緩衝用素材を発泡スポンジとしたが、イヤパッドの内部構造は、これに限られるものではない。例えば、U字形状のゴムをリング状に形成したものをイヤパッドとし、ゴムの肉厚を変えることによって、硬度の差を作るようにしてもかまわない。
【0031】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0032】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0033】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示は、メガネをかけた聴取者であっても、快適に装着可能であり、かつ、耳周囲の密閉性を維持できるヘッドフォンに適用可能である。具体的には例えば、3D映像システム等に本開示は有用である。
【符号の説明】
【0035】
111a 左耳用イヤパッド
111b 左耳用ハウジング
112a 右耳用イヤパッド
112b 右耳用ハウジング
113 ヘッドバンド
114a ヘッドパッド
114b ヘッドパッドゴム
115 左アーム
116 右アーム
401 聴取者
402 メガネ
601 軟質スポンジ
602 硬質スポンジ
603 シート
図1
図2
図3
図4
図5