(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の積層体、超音波送受波器および超音波流量計の概要は以下の通りである。
[項目1]
圧電体と、
前記圧電体と、直接または他の層を介して、接して配置されている第1音響整合層であって、
10kg/m
3以上100kg/m
3以下の密度を有する第1音響整合層と
を備える、積層体。
[項目2]
前記第1音響整合層は、ポリメタクリルイミド発泡体を含む、項目1に記載の積層体。
[項目3]
前記第1音響整合層の音速が500m/s以上である、項目1または2に記載の積層体。
[項目4]
前記ポリメタクリルイミド発泡体は、複数のクローズドポアを含む、項目1から3のいずれかに記載の積層体。
[項目5]
前記クローズドポアの平均ポア径が、1μm以上100μm以下である、項目4に記載の積層体。
[項目6]
前記クローズドポアの隣接間距離が50nm以上1μm以下の範囲内で均一に分布する項目4または5に記載の積層体。
[項目7]
前記第1音響整合層の音響インピーダンスが5×10
3kg/s・m
2以上350×10
3kg/s・m
2の範囲内にある、項目1から6のいずれかに記載の積層体。
[項目8]
前記第1音響整合層の厚さが前記第1音響整合層中を伝播する音波の波長λの略1/4ある、項目1から7のいずれかに記載の積層体。
[項目9]
前記圧電体と前記第1音響整合層との間に位置する第2音響整合層を更に備え、
前記第2音響整合層は、50kg/m
3以上1500kg/m
3以下であり、かつ、前記第1音響整合層よりも大きい密度を有する、項目1から8のいずれかに記載の積層体。
[項目10]
前記第1音響整合層の音響インピーダンスZaと、前記第2音響整合層の音響インピーダンスZbとの関係が、Za<Zbである、項目9に記載の積層体。
[項目11]
前記第2音響整合層の厚さが、前記第1音響整合層中を伝播する音波の波長λの略1/4である項目9または10に記載の積層体。
[項目12]
前記第1音響整合層は、前記圧電体と直接接合されている、項目1から8のいずれかに記載の積層体。
[項目13]
前記第2音響整合層は、前記第1音響整合層、および、前記圧電体と直接接して配置されている、項目9に記載の積層体。
[項目14]
前記第1音響整合層と前記第2音響整合層との間に、1000kg/m
3以上の密度を有する構造支持層をさらに備える、項目9に記載の積層体。
[項目15]
前記構造支持層の厚さが、前記構造支持層中を伝播する音波の波長λの1/8未満である、項目14に記載の積層体。
[項目16]
項目1から15のいずれかに記載の積層体を備えた超音波送受波器。
[項目17]
項目1から8のいずれかに記載の積層体と、
天板を有する凸形状を備えた本体、および、前記凸形状の開口を覆う蓋板を有するケースをさらに備え、
前記圧電体は、前記凸形状内に位置し、前記天板の内面に張り付けられ、
前記第1音響整合層は前記天板の外面に張り付けられている、超音波送受波器。
[項目18]
項目9から11のいずれかに記載の積層体と、
天板を有する凸形状を備えた本体、および、前記凸形状の開口を覆う蓋板を有するケースをさらに備え、
前記圧電体は、前記凸形状内に位置し、前記天板の内面に張り付けられ、
前記第2音響整合層は前記、天板の外面に張り付けられ、
前記第1音響整合層は前記第2音響整合層に接している、超音波送受波器。
[項目19]
前記ケースは金属材料によって構成されている項目17または18に記載の超音波送受波器。
[項目20]
被測定流体が流れる流路と、
前記流路に配置された、超音波信号を送受信する一対の超音波送受波器であって、項目16から18のいずれか1項に記載の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波伝搬時間を計測する時間計測部と、
前記計測回路からの信号に基づいて前記流路の流量を算出する演算部と、
を備えた超音波流量計。
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の積層体、超音波送受波器および超音波流量計の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態の超音波送受波器および超音波流量計の一例を詳細に説明する。
【0012】
[超音波流量計の構成]
図1は本開示の超音波流量計の概略的な構成を示す。
図1に示すように、管壁13によって規定される流量計測部には流体が流速Vにて図に示す方向に流れている。管壁13には、一対の超音波送受波器(第1および第2の超音波送受波器)11、12が相対して設置されている。超音波送受波器11、12は、電気エネルギー/機械エネルギー変換素子として、圧電セラミック等の圧電振動子を用いて構成されており、圧電ブザー、圧電発振子と同様に共振特性を示す。まず、超音波送受波器11を超音波送波器として用い、超音波送受波器12を超音波受波器として用いる。超音波送受波器11の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を圧電振動子に印加すると、超音波送受波器11は管内の流体中に同図中のL1で示す伝搬経路に沿って超音波を放射する。超音波送受波器12は流体中を伝搬してきた超音波を受けて電圧に変換する。続いて、反対に超音波送受波器12を超音波送波器として用い、超音波送受波器11を超音波受波器として用いる。超音波送受波器12の共振周波数近傍の周波数の交流電圧を圧電振動子に印加することにより、超音波送受波器12は管内の流体中に同図中のL2で示す伝搬経路に沿って超音波を放射し、超音波送受波器11は伝搬してきた超音波を受けて電圧に変換する。このように、超音波送受波器11、12は、受波器としての役目と送波器としての役目を果たすので、一般に超音波送受波器と呼ばれる。
【0013】
このような超音波流量計では、連続的に交流電圧を印加すると超音波送受波器から連続的に超音波が放射されて伝搬時間を測定することが困難になるので、通常はパルス信号を搬送波とするバースト電圧信号を駆動電圧として用いる。駆動用のバースト電圧信号を超音波送受波器11に印加して超音波送受波器11から超音波バースト信号を放射すると、この超音波バースト信号は距離がLの伝搬経路L1を伝搬してt時間後に超音波送受波器12に到達する。超音波送受波器12では、伝達して来た超音波バースト信号のみを高いS/N比で電気バースト信号に変換することができる。この電気バースト信号を電気的に増幅して、再び超音波送受波器11に印加して超音波バースト信号を放射する。この装置をシング・アラウンド装置と呼び、超音波パルスが超音波送受波器11から放射され伝搬路を伝搬して超音波送受波器12に到達するのに要する時間をシング・アラウンド周期といい、その逆数をシング・アラウンド周波数という。
図1において、管の中を流れる流体の流速をV、流体中の超音波の速度をC、流体の流れる方向と超音波パルスの伝搬方向の角度をθとする。超音波送受波器11を送波器、超音波送受波器12を受波器として用いたときに、超音波送受波器11から出た超音波パルスが超音波送受波器12に到達する超音波伝搬時間であるシング・アラウンド周期をt1、シング・アラウンド周波数f1とすれば、次式(1)が成立する。
f1=1/t1=(C+Vcosθ)/L・・・(1)
【0014】
逆に、超音波送受波器12を送波器として、超音波送受波器11を受波器として用いたときの超音波伝搬時間であるシング・アラウンド周期をt2、シング・アラウンド周波数f2とすれば、次式(2)の関係が成立する。
f2=1/t2=(C−Vcosθ)/L・・・(2)
【0015】
したがって、両シング・アラウンド周波数の周波数差Δfは、次式(3)となり、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができる。
Δf=f1−f2=2Vcosθ/L・・・(3)
【0016】
すなわち、超音波の伝搬経路の距離Lと周波数差Δfから流体の流速Vを求めることができ、その流速Vから流量を調べることができる。
【0017】
超音波流量計は、時間計測部31および演算部32を備える。時間計測部31は、超音波送受波器11、12を駆動するバースト電圧信号を生成する駆動回路および超音波送受波器11、12で変換された電気バースト信号を電気的に増幅する受信回路を含み、上述した手順によって、超音波伝搬時間であるシング・アラウンド周期t1、t2を求める。演算部32は、求めたシング・アラウンド周期t1、t2と式(3)の関係から、流体の流速および流量を算出する。時間計測部31および演算部32は、例えば、マイコンおよびメモリに記憶され、上述した演算を行う手順を規定したプログラムによって構成される。時間計測部31および演算部32の一部は、電子回路等によって構成されていてもよい。
【0018】
[超音波送受波器]
図2は、本開示の超音波流量計に用いる超音波送受波器11の一例を示す断面図である。超音波送受波器12も超音波送受波器11と同じ構造を備えている。超音波送受波器11は、積層体28とケース29とを備える。
【0019】
積層体28は、圧電体21と第1音響整合層26とを備える。第1音響整合層26は直接、または、他の層を介して圧電体21と接している。圧電体21は、圧電セラミックスまたは
単結晶によって構成され、厚さ方向に分極されている。また、圧電体21は厚さ方向の上下面に電極を有しており、電極に電圧を印加することによって、超音波振動を発生する。
【0020】
ケース29は、天板22uを有する凸形状を備えた本体22と、蓋板23とを含む。本体22および蓋板23とは導電材料、例えば外部の流体に対して信頼性が確保できる金属等の材料で形成されている。圧電体21は、本体22の凸形状内に位置し、天板22uの内面22aに貼り付けられている。本体22の凸形状の底に位置する開口は、蓋板23で覆われ、本体22の内空間が封止されている。このため、ケース29は気体遮蔽性を有し、種々の流体に超音波送受波器11が曝されても、内部の圧電体21が劣化することがなく、高い信頼性を備える。蓋板23には駆動端子24a、24bが取り付けられている。2つの駆動端子24a、24bのうち、一方の駆動端子24aは蓋板23および本体22を介して圧電体21の上面電極に電気的に接続されている。他方の駆動端子24bは、絶縁材25で蓋板23と電気的に絶縁されているとともに、本体22内で圧電体21の下面電極に電気的に接続されている。
【0021】
第1音響整合層26は、流体に超音波を送波、または流体を伝搬してきた超音波を受波するためのもので、駆動交流電圧により励振される圧電体21の機械的振動が外部の媒体に対して超音波として効率よく出ていき、到達した超音波が効率よく電圧に変換される役目を有する。第1音響整合層26は本体22の天板22uの外面22bに貼り付けられている。
【0022】
圧電体21および流体の音響インピーダンスをZ1、Z2とし、第1音響整合層26に求められる理想的な音響インピーダンスをZ3とすると、Z3=√(Z1・Z2)で求められる。圧電体21の音響インピーダンスは約30×10
6kg/m
2・s程度であり、水素の音響インピーダンスは110kg/m
2・s程度である。上述した数値をこの式に代入すると、Z3=57×10
3(kg/m
2・s)と求められる。また、音響インピーダンスは次式(4)で定義される。
音響インピーダンス=(密度)×(音速)・・・(4)
【0023】
本実施形態において、第1音響整合層26は、10kg/m
3以上100kg/m
3以下の密度を有する。また、第1音響整合層26を伝搬する音速は、500m/s以上であり、望ましくは、500m/s以上3500m/s以下である。この範囲の密度および音速を適切に選択することにより、第1音響整合層26の音響インピーダンスは5×10
3kg/s・m
2以上350×10
3kg/s・m
2の範囲内の値を取ることができる。
【0024】
このような物性を備える第1音響整合層26に適した材料としては、例えば、硬質微孔体が挙げられる。より具体的には、第1音響整合層26は、硬質プラスチック独立気泡(クローズドセル)発泡体、例えば、ポリメタクリルイミド発泡体を含む。ポリメタクリルイミド発泡体は、例えば、商標名ROHACELL(R)で、Roehm Gmbh & Co KGから販売されており、日本国内では、ダイセル・エボニック株式会社から購入することができる。ROHACELLの密度は、10kg/m
3以上100kg/m
3以下の範囲内であるとカタログに公表されている。
【0025】
ポリメタクリルイミド発泡体におけるクローズドポアの平均ポア径は1μm以上100μm以下であることが望ましい。また、クローズドポアの隣接間距離は50nm以上1μm以下の範囲内で均一に分布していることが望ましい。計算によるシミュレーションおよび以下で説明する実験結果によれば、クローズドポアの平均ポア径およびクローズドポアの隣接間距離は音響伝搬特性に影響する。良好な音響伝搬特性を実現するためにこれらの値は上述した範囲にあることが望ましい。クローズドポアの隣接間距離は、独立気泡の隔壁の平均厚さに相当する。
【0026】
また、ポリメタクリルイミド発泡体は、剛直で強固な分子構造を備えるため、他の硬質発泡体に比べ、機械的強度および加工性に優れる。
【0027】
第1音響整合層26は、第1音響整合層26中を伝搬する音波の波長λの略1/4の厚さを有していることが望ましい。これにより、第1音響整合層26の2つの主面間で反射し圧電体21へ入射する音波は位相が1/2ずれることによって弱められる。よって、不要な反射によって遅れて圧電体21へ入射する音波の強度を小さくし、反射波の影響を抑制することができる。
【0028】
本実施形態では、ケース29の天板22uは、積層体28を支持する構造支持層として機能する。構造支持層、つまり、天板22uは、1000kg/m
3以上の密度を有することが望ましい。また、天板22uの厚さは、天板22uを伝搬する音波の波長λの1/8以下の厚さを有している。この条件を天板22uが満たすことによって、天板22uにおける音波の反射等が抑制される。
【0029】
本実施形態の超音波送受波器は、例えば以下の手順により、製造することができる。まず、
図3(a)に示すように、ケース29、圧電体21及び第1音響整合層26を用意する。第1音響整合層26は、予め、所望の厚さを有するように、加工されている。ケース29の本体22における天板22uの内面22aに接着剤などで圧電体21を張り付ける。また、天板11uの外面22bに第1音響整合層26を張り付ける。その後、
図3(b)に示すように、圧電体21と駆動端子24b等との接続を行う。最後に、本体22の開口を、接着剤などを用いて蓋板23で閉じることによって、超音波送受波器が完成する。
【0030】
本実施形態の積層体によれば、第1音響整合層26が10kg/m
3以上100kg/m
3以下の密度を有することにより、超音波を放射する圧電体と気体との間における音響インピーダンス差による超音波の反射を抑制し、超音波を圧電体に効率よく入射させることができる。したがって、高感度な超音波送受波器および超音波流量計が実現し得る。特に、第1音響整合層26が独立気泡を有する構造体によって構成され、クローズドポアの平均ポア径が1μm以上100μm以下であり、クローズドポアの隣接間距離が50nm以上1μm以下の範囲内であることにより、優れた音響特性を実現し得る。よって、更に高感度な超音波送受波器および超音波流量計が実現し得る。また、第1音響整合層26の独立気泡を有する構造体はポリメタクリルイミド発泡体を含む。ポリメタクリルイミド発泡体は低密度でありながら高弾性であるという特徴を備えるため、製造過程における衝撃に対して耐性を有しており、機械的強度および加工性に優れる。したがって、積層体および超音波送受波器を高い歩留まりで製造することが可能である。したがって、音響整合層の取り扱いが比較的容易であることにより、生産性に優れまた、特性のばらつきが小さく、音波を流体から効率よく圧電体に入射させることが可能な積層体を得ることができる。またこのような積層体を用いることにより、高感度で流体を検出することが可能な超音波送受波器および超音波流量計が実現し得る。
【0031】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態の超音波流量計に用いられる超音波送受波器の構造を模式的に示している。
図4に示す超音波送受波器は、圧電体21、第1音響整合層26および第2音響整合層27を含む積層体28’を備えている点で第1の実施形態と異なる。
【0032】
第2音響整合層27は圧電体21と第1音響整合層26との間に位置している。本実施形態では、第2音響整合層27は天板22uの外面22bに張り付けられており、第1音響整合層26は第2音響整合層27に接している。第2音響整合層27は、50kg/m
3以上1500kg/m
3以下の密度を有する。また、第2音響整合層27の密度は、第1音響整合層の密度よりも大きい。第1音響整合層26の音響インピーダンスをZaとし、第2音響整合層27の音響インピーダンスをZbとすると、Za<Zbの関係を満たしている。Zbは圧電体21の音響インピーダンスよりも小さい。積層体28’が、このような音響特性を有する第2音響整合層27をさらに含むことにより、第1音響整合層26に入射した音波を、より効率よく圧電体21に入射させることが可能となる。
【0033】
第2音響整合層27はクローズドポアを有する材料である。例えば、第2音響整合層27は、ポリメタクリルイミドなどの発泡樹脂または複合材料によって構成されている。複合材料は、例えば、ガラスバルーン(中空の微小なガラス球)またはプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料であってよい。また、これらの発泡樹脂および複合材料は、その表面がガスバリア膜で覆われた構造を有していても良い。第2音響整合層27の厚さも第1の実施形態と同様の理由により、第
2音響整合層26を伝搬する音波の1/4の厚さを有していることが望ましい。
【0034】
本実施形態では、第1音響整合層26と第2音響整合層27とは互いに直接接している。第2音響整合層27は、ケース29の天板22uの外面22bと接している。ケース29の天板22uは、積層体28’を支持する構造支持層として機能する。構造支持層、つまり、天板22uは、1000kg/m
3以上の密度を有することが望ましい。また、天板22uの厚さは、天板22uを伝搬する音波の波長λの1/8以下の厚さを有している。この条件を天板22uが満たすことによって、天板22uにおける音波の反射等が抑制される。
【0035】
本実施形態の積層体によれば、積層体28’が第2音響整合層27を含むため、流体中を伝搬する音波をより高効率で圧電体へ入射させることができる。したがって、第1の実施形態で説明した特徴に加え、より高感度で流体を検出することが可能な超音波送受波器および超音波流量計が実現し得る。
【0036】
(実施例)
以下、第1および第2の実施形態の超音波送受波器および超音波流量計を作製し、特性を調べた結果を説明する。
【0037】
1. 試料の作製
[参考例(A)]
(a)第2音響整合層(シリカ多孔体)の製造
数十μm径の球状アクリル樹脂と1μm以下の直径の焼結シリカ粉末を混合した後に加圧成型を行った。この成型体を乾燥した後に、900℃で焼成してシリカ多孔体を形成した。その後、シリカ多孔体の厚さが超音波発振波長の1/4となるように調製し、第2音響整合層を得た。第2音響整合層中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は1500m/sであった。密度は570kg/m
3であり、厚さは750μmであった。
【0038】
(b)第2音響整合層と第1音響整合層の積層
テトラメトキシシランとエタノールとアンモニア水溶液(0.1規定)とをモル比で1対3対4になるように調製したゲル原料液を、予めプラズマクリーニングによって水酸基が表面に露出するように洗浄した第2音響整合層上に、90μmの厚さで塗布した。その後、塗布したゲル原料液を固化させ、シリカ湿潤ゲル層を得た。このシリカ湿潤ゲル層を形成した第2音響整合層をトリメチルエトキシシランの5重量%ヘキサン溶液中で疎水化処理を行った後に、二酸化炭素による超臨界乾燥(12MPa、50℃)を行って、シリカ乾燥ゲルと第2音響整合層が積層した音響整合層を得た。第2音響整合層上の水酸基とテトラメトキシシランのアルコキシ基が反応して化学結合を形成しているため、密着性の良い第1音響整合層が得られた。第1音響整合層中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は180m/sであり、密度は200kg/m
3であった。
【0039】
(c)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0040】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0041】
[実施例(B)]
(a)第1音響整合層の加工
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC31HP:密度30kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ60μm、平均壁厚さ80nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の速度は1200m/sであった。第1音響整合層26の厚さは600μmに調製した。
【0042】
(b)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第1音響整合層26で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0043】
(c)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0044】
[実施例(C)]
(a)第1音響整合層の加工
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC51RIMA:密度50kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ40μm、平均壁厚さ200nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の速度は2000m/sであった。第1音響整合層26の厚さは1000μmに調製した。
【0045】
(b)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第1音響整合層26で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0046】
(c)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0047】
[実施例(D)]
(a)第1音響整合層の加工
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71RIMA:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ25μm、平均壁厚さ400nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の速度は3000m/sであった。第1音響整合層26の厚さは1500μmに調製した。
【0048】
(b)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第1音響整合層26で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0049】
(c)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0050】
[実施例(E)]
(a)第1音響整合層の加工
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71SL:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ200μm、平均壁厚さ2000nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の速度は400m/sであった。第1音響整合層26の厚さは200μmに調製した。
【0051】
(b)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第1音響整合層26で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0052】
(c)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0053】
[実施例(F)]
(a)第1音響整合層の加工
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71RIST:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ300μm、平均壁厚さ3250nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の速度は460m/sであった。第1音響整合層26の厚さは230μmに調製した。
【0054】
(b)音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第1音響整合層26で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0055】
(c)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0056】
[実施例(G)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0057】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0058】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC31HP:密度30kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ60μm、平均壁厚み80nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は1200m/s、であり、厚さは600μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ50μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0059】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0060】
[実施例(H)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0061】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0062】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC31HP:密度30kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ60μm、平均壁厚み80nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は1200m/s、であり、厚さは600μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ150μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0063】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0064】
[実施例(I)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0065】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0066】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC51RIMA:密度50kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ40μm、平均壁厚み200nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2000m/sであり、厚さは100μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ50μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0067】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0068】
[実施例(J)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0069】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0070】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71RIMA:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ25μm、平均壁厚み400nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は3000m/sであり、厚さは1500μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ50μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0071】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0072】
[実施例(K)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0073】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0074】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71SL:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ200μm、平均壁厚み2000nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は400m/sであり、厚さは200μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ50μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0075】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0076】
[実施例(L)]
(a)第2音響整合層(ガラスエポキシ)27の製造
有機高分子、無機材料の繊維体、フォーム体、焼結多孔体、ガラスバルーンやプラスチックバルーンを樹脂材料で固めた材料、ガラスバルーンを熱圧縮した材料などを用いることができる。ここでは、冶具にガラスバルーンを充填した後にエポキシ溶液を含浸させて、120℃で熱硬化させた。この硬化した成型体の厚さを超音波発振波長の1/4になるように切削し、第2音響整合層27を得た。第2音響整合層27中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は2500m/sであった。密度は、520kg/m
3であり、厚さは1250μmであった。
【0077】
(b)第2音響整合層とケース、圧電体層との接合
ケース29の本体22の天板22uの両側にエポキシ系接着シートを仮結着したのちに、圧電体21および第2音響整合層27で天板22uを挟み加圧しながら加熱して硬化接合した。
【0078】
(c)第2音響整合層27と第1音響整合層26の積層
第1音響整合層26として、ポリメタクリルイミド硬質プラスチック発泡体 ROHACELL(R)(型番RC71RIST:密度70kg/m
3)を使用した。この材料は、平均ポアサイズ300μm、平均壁厚み3250nmであり、直径10.8mmの円柱形状に加工した。第1音響整合層26中を伝搬する約500kHzの超音波の音速は460m/sであり、厚さは230μmであった。第2音響整合層27の表面におよそ50μmの厚さでエポキシ樹脂を塗布し、その上に前記第1音響整合層26を、配置し、熱加圧することにより接合した。
【0079】
(d)超音波送受波器の形成
本体22に蓋板23、駆動端子24a、24b等を組み付けて超音波送受波器を得た。
【0080】
2.特性の評価
作製した超音波送受波器の感度を測定した。作製した1対の超音波送受波器を対向させ、一方を送信器とし、他方を受信器として、超音波の送受信を行った。参考例(A)による測定結果を基準として規格化した値を求めた。また、第1音響整合層の脆さ・加工性を体積弾性率によって評価した。具体的には、第1音響整合層に用いた材料のカタログに示された体積弾性率を、参考例(A)の材料の体積弾性率で規格化した値を求めた。表1にこれらの値、および、第1音響整合層26および第2音響整合層27の特性をまとめて示す。
【0081】
表1における性能評価の欄における、×、△、〇、◎の記号は以下の範囲に従って分類した。
【0082】
(感度)
×:1未満
△:1以上1.5未満
○:1.5以上2未満
◎:2以上
(脆性・加工性)
×:1以下
△:2以上5未満
○:5以上30未満
◎:30以上
【0084】
3.結果の考察
表1に示すように、ポリメタクリルイミド発泡体は、シリカ多孔体に比べて、脆さ・加工性に優れていることが分かる。また、実施例BからFの平均気泡径と感度との関係から、平均気泡径が100μm以下であり、隔壁の平均厚さが1μm以下である方が、感度がよいことが分かる。本願発明者の詳細な実験の結果によれば、平均気泡径が1μm以上100μm以下であり、隔壁の平均厚さが50nm以上1μm以下であることによって、超音波送受波器の感度は向上する。また、第1音響整合層の音速は、500m/sよりも大きい方が高い感度が得られることが分かる。
【0085】
実施例G〜Lと実施例B〜Fとの比較から、積層体が第2音響整合層27をさらに備えることによって、第1音響整合層26のみを備える場合に比べて感度がより向上することが分かる。
【解決手段】積層体28は、圧電体21と、前記圧電体と、直接または他の層を介して、接して配置されている第1音響整合層26とを備え、第1音響整合層の密度は10kg/m