(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032572
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20161121BHJP
【FI】
H01L31/04 570
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-522336(P2014-522336)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2012066771
(87)【国際公開番号】WO2014002268
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大裕
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/099179(WO,A1)
【文献】
特開2007−200970(JP,A)
【文献】
特開2006−270043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池間を接続する接続部材と、
を備え、
前記太陽電池の受光面に接続部材を接着する接着層の面積は、前記太陽電池の裏面に接続部材を接着する接着層の面積よりも大きく、
前記太陽電池の受光面に設けられた集電極の設置面積は、前記太陽電池の裏面に設けられた集電極の設置面積より小さい、太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記接着層は、前記接続部材の長手方向に沿って前記太陽電池の中央部側より端部側において幅が狭い部分を有する、太陽電池モジュール。
【請求項3】
太陽電池の受光面に接着層を介して接続部材を接着する第1の工程と、
前記太陽電池の受光面に接続部材を接着する接着層の面積が前記太陽電池の裏面に接続部材を接着する接着層の面積よりも大きくなるように、前記太陽電池の裏面に接着層を介して接続部材を接着する第2の工程と、
を備える、前記太陽電池の受光面に設けられた集電極の設置面積が前記太陽電池の裏面に設けられた集電極の設置面積より小さい、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1の工程又は前記第2の工程において、接着層の幅が前記接続部材の長手方向に沿って前記太陽電池の中央部側より端部側において狭くなるように接続部材を接着する、太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1の工程において塗布される接着層の量は、前記第2の工程において塗布される接着層の量より多い、太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュール100は、
図10に示すように、複数の太陽電池セル10に設けられた集電極12を互いに接続部材14で接続した構成を有する。接続部材14は、導電性粒子を分散させた導電性接着フィルムによって集電極12と導通するように接着される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−108985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、接続部材14の圧着時には200℃程度の加熱処理を伴うので、圧着後に太陽電池セル10が冷えると接続部材14の熱収縮に伴う収縮力が太陽電池セル10の受光面及び裏面に加わることになる。
【0005】
一方、太陽電池セル10の裏面側は光の入射を考慮する必要がないため、受光面側に比べて集電極12の設置面積が大きく設けられることが多く、接続部材14と集電極12との接着面積は受光面側に比べて裏面側が大きくなる。また、太陽電池セル10の受光面及び裏面に掛かる収縮力は、接続部材14と集電極12との接着力、すなわち接着面積に依存する。そうすると、受光面側と裏面側において接続部材14と集電極12との接着剤量を同量とすると、接着面積が大きい裏面側において太陽電池セル10に掛かる収縮力が強くなり、
図11に示すように、太陽電池セル10に反りや割れが発生するおそれがある。
【0006】
さらに、太陽電池セル10の受光面及び裏面に設けられた集電極12の設置面積の違い自体からも太陽電池セル10に反りや割れが発生するおそれがある。すなわち、受光面と裏面とにおいて集電極12の設置面積が大きい側により強い収縮力が働き、太陽電池セル10に反りや割れが生ずる可能性がある。今後、太陽電池セル10の薄型化が進むにつれて、この影響はより大きくなると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、複数の太陽電池と、複数の太陽電池間を接続する接続部材と、を備え、太陽電池の受光面に接続部材を接着する接着層の面積は、太陽電池の裏面に接続部材を接着する接着層の面積よりも大きい、太陽電池モジュールである。
【0008】
本発明の別の態様は、太陽電池の受光面に接着層を介して接続部材を接着する第1の工程と、太陽電池の受光面に接続部材を接着する接着層の面積が太陽電池の裏面に接続部材を接着する接着層の面積よりも大きくなるように、太陽電池の裏面に接着層を介して接続部材を接着する第2の工程と、を備える、太陽電池モジュールの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの反りや割れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの受光面を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの裏面を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールを示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における受光面の接着層を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における裏面の接着層を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの作用を説明する図である。
【
図7】表面に凹凸が設けられた接合部材を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態における接着層を示す平面図である。
【
図9】本発明の実施の形態における太陽電池モジュールの作用を説明する図である。
【
図10】従来の太陽電池モジュールを示す平面図である。
【
図11】従来の太陽電池モジュールに発生する反りを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態における太陽電池モジュール200は、
図1及び
図2の平面図並びに
図3の断面図に示すように、太陽電池セル202、接続部材204及び接着層206を含んで構成される。
図1は、太陽電池モジュール200を受光面からみた平面図であり、
図2は、太陽電池モジュール200を裏面側からみた平面図である。
図3は、
図1のラインA−Aに沿った断面図である。
【0012】
なお、「受光面」とは、太陽電池セル202の主面の一つであり、外部からの光が主に入射する面を意味する。例えば、太陽電池セル202に入射する光のうち50%〜100%が受光面側から入射する。「裏面」とは、太陽電池セル202の主面の一つであり、受光面と反対側の面を意味する。
【0013】
太陽電池セル202は、太陽光等の光を受光することでキャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換部20aと、光電変換部20aの受光面上に設けられた第1電極20bと、光電変換部20aの裏面上に設けられた第2電極20cとを備える。第1電極20b及び第2電極20cは、
図1及び
図2に示すように、接続部材204の延設方向と交差するように櫛状に設けられたフィンガー及びそれを接続するバスバーを備える集電極である。フィンガーは、光電変換部20aから電力を集電する細線状の電極である。バスバーは、複数のフィンガーを接続する電極であり、接続部材204に被われるように所定の間隔をあけて互いに平行に配置される。フィンガー及びバスバーは、例えば、バインダー樹脂中に銀(Ag)等の導電性フィラーが分散した導電性ペーストを透明導電層上に所望のパターンでスクリーン印刷して形成される。太陽電池セル202では、光電変換部20aで生成されたキャリアが第1電極20b及び第2電極20cにより収集される。
【0014】
太陽電池セル202では、裏面は受光面に比べて光の入射が少ないので、受光面の第1電極20bに比べて裏面の第2電極20cの面積が大きく設けられる。例えば、第1電極20bでは第2電極20cに比べてフィンガーの本数が多く設けられる。また、太陽電池セル202の裏面側からの光の入射がない場合、光電変換部20aの裏面の略全面上に銀(Ag)薄膜等の金属膜を形成して第2電極20cとしてもよい。
【0015】
光電変換部20aは、例えば、結晶系シリコン、ガリウム砒素(GaAs)又はインジウム燐(InP)等の半導体材料からなる基板を有する。光電変換部20aの構造は、特に限定されないが、本実施形態では、n型単結晶シリコン基板と非晶質シリコンのヘテロ接合を有する構造であるとして説明する。光電変換部20aは、例えば、n型単結晶シリコン基板の受光面上に、i型非晶質シリコン層、ボロン(B)等がドープされたp型非晶質シリコン層、酸化インジウム等の透光性導電酸化物からなる透明導電層の順番で積層されている。また、基板の裏面上に、i型非晶質シリコン層、リン(P)等がドープされたn型非晶質シリコン層、透明導電層の順番で積層されている。
【0016】
太陽電池モジュール200において隣り合う太陽電池セル202間は接続部材204によって接続される。接続部材204としては、例えば、銅等の金属箔を用いることができる。接続部材204は、太陽電池セル202の第1電極20bと、隣り合う太陽電池セル202の第2電極20cとを接続する。接続部材204は、例えば、一方の太陽電池セル202の第1電極20bのバスバー及びフィンガーと他方の太陽電池セル202の第2電極20cのバスバー及びフィンガーとに接着層206により接着される。
【0017】
接着層206は、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着性の熱硬化性樹脂材料に導電性粒子を分散させた導電性接着フィルムや導電性接着ペーストとすることができる。導電性接着フィルムは、太陽電池セル202の面内方向に導電性が高く、膜厚方向に導電性が低い異方導電性接着剤としてもよい。また、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着性の熱硬化型樹脂材料に導電性粒子を含まない非導電性接着ペーストを用いてもよい。
【0018】
接続部材204は、太陽電池セル202の厚さ分だけ段差が設けられた屈曲部を有する。屈曲部は、隣り合う太陽電池セル202が同一平面内に配置されるように第1電極20bと第2電極20cとを接続するために太陽電池セル202の厚さ分だけ構造的な逃げが形成されるように設けられる。
【0019】
太陽電池モジュール200は、太陽電池セル202の受光面及び裏面を保護するために保護部材(図示しない)で封止されてもよい。保護部材は、例えば、ガラス板、樹脂板、樹脂フィルム等の透光性を有する部材を用いることができる。なお、太陽電池セル202の受光面側に設けられる保護部材は、太陽電池セル202において光電変換に利用される波長帯域の光を透過する透明な部材とすることが好ましい。太陽電池セル202の裏面側からの光の入射がない場合、裏面側に設けられる保護部材は、不透明な板体やフィルムとしてもよい。この場合、保護部材としては、例えば、アルミ箔等を内部に有する樹脂フィルム等の積層フィルムを用いてもよい。保護部材は、充填材を用いて太陽電池セル202の受光面及び裏面にそれぞれ接着される。
【0020】
本実施の形態における太陽電池モジュール200では、接続部材204を接着するための接着層206の面積を受光面と裏面とで異ならせる。すなわち、受光面の第1電極20bと裏面の第2電極20cとの設置面積が小さい面の接着層206の面積をより大きくする。すなわち、受光面における第1電極20bの設置面積を裏面における第2電極20cの設置面積より小さくした場合、受光面の接続部材204の接着に用いられる接着層206の面積を裏面の接続部材204の接着に用いられる接着層206の面積より大きくする。
【0021】
例えば、接続部材204を受光面側に接着する際には、
図4にハッチングで示すように、接続部材204の全面に亘るように接着層206を塗布する。一方、接続部材204を裏面側に接着する際には、
図5にハッチングで示すように、接着層206の塗布幅を狭くし、接続部材204の一部のみに接着層206を設けるとよい。
【0022】
ここで、接着層206によって接着される接続部材204による受光面と裏面との収縮力がほぼ等しくなるように接着層206の面積を設定する。例えば、受光面における接続部材204と第1電極20bとの接着面積と裏面における接続部材204と第2電極20cとの接着面積とがほぼ等しくなるように接着層206の面積を設定することが好ましい。もちろん、接続部材204が太陽電池セル202から剥がれない程度の接着層206の面積にすることが好適である。
【0023】
ここで、接着層の面積及び電極の設置面積とは、
図1、
図2、
図4及び
図5の平面図のように、太陽電池セル202を受光面又は裏面側から平面状にみたときの接着層及び電極が占有する面積をいう。
【0024】
太陽電池セル202の受光面及び裏面に掛かる収縮力は、接続部材204と第1電極20b及び第2電極20cとの接着力、すなわち接続部材204と第1電極20b及び第2電極20cとの接着面積並びにその接着層の面積に依存する。本実施の形態では、接続部材204と第1電極20bとの接着面積が第2電極20cとの接着面積より小さく、一方で接続部材204と第1電極20bとの接着層の面積が第2電極20cとの接着層の面積より大きくされている。したがって、
図6の太陽電池セル202の側面図に示すように、太陽電池セル202の受光面と裏面とに掛かる収縮力がより均等化され、太陽電池セル202の反りや割れを抑制することができる。
【0025】
また、
図7に示すように、接続部材204の一面に凹凸204aを設けてもよい。このように接続部材204の一面に凹凸204aを設けることにより、凹凸204aに入射した光を乱反射させ、接続部材204の表面を覆うガラス部材等によりさらに反射させて、太陽電池セル202へ導入することができる。したがって、太陽電池モジュール200における光の利用効率を高めることができる。なお、凹凸204aは、受光面に向くように設けることがより好ましい。
【0026】
このとき、接続部材204の一面に凹凸204aを設けた場合であっても、接着層206によって接着される接続部材204による受光面と裏面との収縮力がほぼ等しくなるように接着層206の面積を設定するとよい。これによって、受光面と裏面とにおける接着による収縮力がバランスし、太陽電池セル202の反りや割れを抑制することができる。
【0027】
また、太陽電池セル202の中央部と端部付近とでは収縮力が異なるので、接着層206の長手方向に沿って太陽電池セル202の単位面積当たりの接着層206の面積を異ならせてもよい。例えば、接続部材204の長手方向に沿っての接着層206の幅を異ならせる。
図8の接続部材204の平面図に示すように、太陽電池セル202の中央部付近での接着層206の幅W1より狭い幅W2を有する領域を端部付近に設ければよい。このように接着層206の面積を調整することによって、太陽電池セル202に掛かる収縮力を細かく調整することができ、太陽電池セル202の受光面と裏面とに掛かる収縮力をより均等化することができる。したがって、太陽電池セル202の反りや割れを抑制する効果をより顕著とすることができる。
【0028】
さらに、太陽電池セル202の受光面及び裏面に設けられた第1電極20b及び第2電極20cの設置面積の違いから生ずる太陽電池セル202の反りや割れを緩和することもできる。例えば、受光面の第1電極20bより裏面の第2電極20cの設置面積が大きい場合、
図9(a)に示すように、太陽電池セル202が受光面側に凸に反るおそれがある。しかしながら、接続部材204を接着する接着層206の面積を調整することによって、
図9(b)に示すように、積極的に太陽電池セル202の反りを解消させることができる。特に、太陽電池セル10の薄型化が進むにつれて反りを解消できることによる効果は顕著となると考えられる。
【0029】
以上のように、本実施の形態の太陽電池モジュール200によれば、太陽電池セル202の反りや割れ等の発生を抑制し、太陽電池モジュール200の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 太陽電池セル、12 集電極、14 接続部材、14a 凹凸、20a 光電変換部、20b 第1電極、20c 第2電極、22a 屈曲部、100,200 太陽電池モジュール、202 太陽電池セル、204 接続部材、206 接着層。