(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032605
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】排気系部品への遮熱カバー取り付け構造
(51)【国際特許分類】
F01N 13/14 20100101AFI20161121BHJP
F02B 77/11 20060101ALI20161121BHJP
F16F 1/362 20060101ALI20161121BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
F01N13/14
F02B77/11 D
F16F1/362
F16F15/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-18460(P2013-18460)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-148941(P2014-148941A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 学
(72)【発明者】
【氏名】國吉 正雄
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 祐之
【審査官】
永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−25348(JP,A)
【文献】
特開2000−329192(JP,A)
【文献】
特開2004−245076(JP,A)
【文献】
特開平10−54256(JP,A)
【文献】
特開2003−41933(JP,A)
【文献】
特開2010−156372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38,13/00−13/20,
F02B 77/11,
F16F 1/362,15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系部品(C)に設けられるカバー取り付け部(4)と,排気系部品(C)を覆うAl合金製の遮熱カバー(3)に設けられる取り付け孔(7)と,この取り付け孔(7)を貫通する鉄合金製のカラー(11),及びこのカラーの両端に連設されて遮熱カバー(3)の上下表面に対向する上下一対の鍔部(12,13)よりなる支持部材(10)と,この支持部材(10)及び前記遮熱カバー(3)間に介装される鉄合金製のクッションリング(16,17)と,前記カラー(11)を貫通しながら前記支持部材(10)を前記カバー取り付け部(4)に固着する固着部材(19)とよりなる,排気系部品への遮熱カバー取り付け構造において,
前記取り付け孔(7)の内周面を覆う断面半円状の筒状壁(14a)と,この筒状壁(14a)の上下両端に連設されて前記遮熱カバー(3)の上下表面に密着する上下一対の端壁(14b,14b)とよりなる鉄合金製のグロメット(14)が前記遮熱カバー(3)に一体的に固着されて,このグロメット(14)の全表面に,イオン化傾向が鉄合金よりAl合金に近い皮膜(15)が形成されるとともに,前記グロメット(14)と前記鍔部(12,13)との間において上下方向で前記クッションリング(16,17)が密に介装されることを特徴とする,排気系部品への遮熱カバー取り付け構造。
【請求項2】
請求項1記載の排気系部品への遮熱カバー取り付け構造において,
前記グロメット(14)の外径(D1)を,前記クッションリング(16,17)の外径(D2)よりも大きく設定したことを特徴とする,排気系部品への遮熱カバー取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関の高温となる排気系部品の熱害を防ぐべく,その排気系部品に,それを覆う遮熱カバーを取り付ける構造に関し,特に,排気系部品に設けられるカバー取り付け部と,排気系部品を覆うAl合金製の遮熱カバーに設けられる取り付け孔と,この取り付け孔を貫通する鉄合金製のカラー,及びこのカラーの両端に連設されて遮熱カバーの上下表面に対向する上下一対の鍔部よりなる支持部材と,この支持部材及び遮熱カバー間に介装される鉄合金製のクッションリングと,前記カラーを貫通しながら前記支持部材を前記カバー取り付け部に固着する固着部材とよりなる,排気系部品への遮熱カバー取り付け構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる排気系部品への遮熱カバー取り付け構造は,下記特許文献1に開示されているように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−156372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の遮熱カバー取り付け構造では,クッションリングとして,Al合金製の遮熱カバーより高硬度の鉄合金製のメッシュリングが使用される。特許文献1記載のものでは,排気系部品及び遮熱カバーの振動時,遮熱カバー及びクッションリング間の摩擦により,硬度の低い遮熱カバーの表面が摩耗することを防ぐために,遮熱カバーの上下表面に,それより高硬度の保護プレートを重ねている。
【0005】
しかしながら,特許文献1記載のものでは,保護プレートを,単に,遮熱カバーの上下表面とクッションリングとの間に介装しているので,排気系部品及び遮熱カバーの振動時,保護プレートの比較的鋭利な内周縁がクッションリングを攻撃し,クッションリングの耐久性を損じる虞がある。またAl合金製の遮熱カバーと鉄合金製の保護プレートとが直接接触しているため,両者のイオン化傾向の差により電蝕による錆が発生する不具合もある。
【0006】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,クッションリングの耐久性が高く,しかも各部に電蝕が発生するのを効果的に抑え得るようにした前記排気系部品への遮熱カバー取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために,本発明は,排気系部品に設けられるカバー取り付け部と,排気系部品を覆うAl合金製の遮熱カバーに設けられる取り付け孔と,この取り付け孔を貫通する鉄合金製のカラー,及びこのカラーの両端に連設されて前記遮熱カバーの上下表面に対向する上下一対の鍔部よりなる支持部材と,この支持部材及び前記遮熱カバー間に介装される鉄合金製のクッションリングと,前記カラーを貫通しながら前記支持部材を前記カバー取り付け部に固着する固着部材とよりなる,排気系部品への遮熱カバー取り付け構造において,前記取り付け孔の内周面を覆う断面半円状の筒状壁と,この筒状壁の上下両端に連設されて前記遮熱カバーの上下表面に密着する上下一対の端壁とよりなる鉄合金製のグロメットが前記遮熱カバーに一体的に固着されて,このグロメットの全表面に,イオン化傾向が鉄合金よりAl合金に近い皮膜が形成されるとともに,前記グロメットと前記鍔部との間に
おいて上下方向で前記クッションリングが密に介装されることを第1の特徴とする。尚,前記排気系部品は,後述する本発明の実施形態中の触媒コンバータCに,前記カバー取り付け部はカバーステー4に,前記固着部材はボルト19にそれぞれ対応する。
【0008】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記グロメットの外径を,前記クッションリングの外径よりも大きく設定したことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,Al合金製の遮熱カバーには,その取り付け孔を介してグロメットが固定的に装着され,このグロメットは鉄合金製であって,取り付け孔の内周面を覆う断面半円状の筒状壁と,この筒状壁の上下両端に連設されて遮熱カバーの上下表面に密着する上下一対の端壁とよりなっているので,剛性が高く,遮熱カバーの取り付け孔周りを効果的に補強することができ,これにより遮熱カバーの軽量化と耐久性を確保し得る。
【0010】
またグロメットの筒状壁が断面半円状をなしており,鋭利なエッジを持たないので,振動により特にグロメットとクッションリングとが半径方向に相対移動するときでも,グロメットがクッションリングを攻撃することはなく,クッションリングの耐久性をも確保することができる。
【0011】
さらに鉄合金製のグロメットの全表面には,イオン化傾向が鉄合金よりAl合金に近い皮膜が形成されているから,鉄合金製のグロメットの地肌がAl合金製の遮熱カバーに直接接触することを回避しており,これによりイオン化傾向の差による遮熱カバー及びグロメットの電蝕の発生を効果的に防ぐことができる。
【0012】
さらにまたグロメットは遮熱カバーに固着されるので,振動時,相対移動はない。一方,クッションリング及びグロメット間は相対移動するので,その相対移動により,グロメットの,クッションリングに接する外面の前記皮膜が剥離したとしても,グロメットの遮熱カバーと接する面には,依然,前記皮膜が存在し続け,電蝕防止効果を維持することができる。
【0013】
本発明の第2の特徴によれば,グロメットの外径を,クッションリングの外径よりも大きく設定したことで,鉄合金製のクッションリングの,Al合金製の遮熱カバーとの接触をグロメットにより確実に回避して,クッションリング及び遮熱カバーのイオン化傾向の差による電蝕を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明により遮熱カバーを取り付けた排気浄化用の触媒コンバータの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0016】
先ず,
図1において,符号Cは自動車用内燃機関の排気浄化用の触媒コンバータであり,内燃機関と車体のダッシュボードとの間に長手方向を鉛直方向に向けて配置され,その上方の上流端には,内燃機関の排気マニフォルドの下流端が接合される入口フランジ1が,下方の下流端には,排気管が接続される出口フランジ2がそれぞれ形成される。したがって,この触媒コンバータCは内燃機関の排気系の一構成部品であり,この触媒コンバータCには,入口フランジ1及び出口フランジ2間において,触媒コンバータCの,隣接部材,例えば前記ダッシュボードに対面する側面を覆うAl合金製の遮熱カバー3が次のように取り付けられる。
【0017】
図1及び
図2に示すように,触媒コンバータCの外面の複数箇所にカバーステー4が溶接等により固着され,各カバーステー4は,透孔5と,その下面に配置されるウェルディングナット6とを備えている。カバーステー4の上面には,前記透孔5との対応箇所に支持部材10が配設される。
【0018】
支持部材10は,透孔5と同軸状に配置されるカラー11と,このカラー11の下端に一体に連設される下鍔部12と,カラー11の上端にカシメ結合される上鍔部13とで構成される。下鍔部12と一体のカラー11及び上鍔部13は鉄合金製であり,その表面には,Znメッキや,Zn−Al複合皮膜が形成される。
【0019】
一方,遮熱カバー3には,カラー11より大径で上,下鍔部13,12より小径の取り付け孔7が設けられており,この取り付け孔7を介して遮熱カバー3にグロメット14が固定的に装着される。このグロメット14は,取り付け孔7の内周面を覆う断面半円状の筒状壁14aと,この筒状壁14aの上下両端に連設されて遮熱カバー3の上下表面に密着する上下一対の端壁14b,14bとよりなっている。このグロメット14は鉄合金製であり,その全表面には,イオン化傾向が鉄合金よりAl合金に近い皮膜15,例えば溶融Alメッキが形成される。
【0020】
このグロメット14は,前記カラー11を囲繞するようにして上,下鍔部13,12間に配置されるもので,グロメット14と下鍔部12との間に
おいて下部クッションリング16が,またグロメット14と上鍔部13との間に
おいて上部クッションリング17が
、上下方向でそれぞれ密に介装され,これらクッションリング16,17の一方又は両方には,カラー11の外周面とグロメット14の内周面との間に介在する筒状クッション部18が形成される。これらクッションリング16,17は鉄合金製,例えばステンレス製のメッシュで構成されている。
【0021】
以上において,グロメット14の外径D1は,上,下部クッションリング16,17の外径D2よりも大きく設定される。
【0022】
次に,この実施形態の作用について説明する。
【0023】
内燃機関の排気系の触媒コンバータCは,内燃機関の運転中,排ガスを浄化し,その浄化反応熱により高温となるが,この触媒コンバータCの側面を遮熱カバー3が覆っているので,遮熱カバー3は,触媒コンバータCの輻射熱を遮り,触媒コンバータCに隣接する各種機器への熱害を防ぐことができる。
【0024】
また,遮熱カバー3は,その取り付け孔7を非接触の状態で貫通して触媒コンバータCのカバーステー4にボルト19で締結される支持部材10と,上下一対のクッションリング16,17とを介して支持されるので,触媒コンバータCから遮熱カバー3への熱伝導は,一対のクッションリング16,17により遮断されることになり,その熱伝導による遮熱カバー3の過熱を防ぐことができ,また内燃機関の振動に伴なう触媒コンバータC及び遮熱カバー3の振動は,クッションリング16,17の弾性により吸収されることになり,遮熱カバー3の振動騒音の発生を防ぐことができる。
【0025】
またAl合金製の遮熱カバー3には,その取り付け孔7を介してグロメット14が固定的に装着され,このグロメット14は鉄合金製であって,取り付け孔7の内周面を覆う断面半円状の筒状壁14aと,この筒状壁14aの上下両端に連設されて遮熱カバー3の上下表面に密着する上下一対の端壁14b,14bとよりなっているので,剛性が高く,遮熱カバー3の取り付け孔7周りを効果的に補強することができ,これにより遮熱カバー3の軽量化と耐久性を確保することができる。
【0026】
さらにグロメット14の筒状壁14aが断面半円状をなしており,鋭利なエッジを持たないから,振動により,グロメット14と上,下部クッションリング16,17とが半径方向に相対移動するときでも,グロメット14が上,下部クッションリング16,17を攻撃することはなく,上,下部クッションリング16,17の耐久性をも確保することができる。
【0027】
さらにまた鉄合金製のグロメット14の全表面には,イオン化傾向が鉄合金よりAl合金に近い皮膜15,例えば溶融Alメッキが形成されているから,鉄合金製のグロメット14の地肌がAl合金製の遮熱カバー3に直接接触することを回避しており,これによりイオン化傾向の差による遮熱カバー3及びグロメット14の電蝕の発生を効果的に防ぐことができる。
【0028】
またグロメット14は遮熱カバー3に固着されるので,振動時,グロメット14及び遮熱カバー3に相対移動はない。一方,上,下部クッションリング16,17及びグロメット14間は相対移動するので,その相対移動により,グロメット14の,上,下部クッションリング16,17に接する外面の皮膜15が剥離したとしても,グロメット14の遮熱カバー3と接する面には,依然,皮膜15が存在し,前記電蝕防止効果を維持することができる。
【0029】
またグロメット14の外径D1は,上,下部クッションリング16,17の外径D2よりも大きく設定されるので,鉄合金製の上,下部クッションリング16,17がAl合金製の遮熱カバー3に接触することを,グロメット14により確実に回避して,クッションリング16,17及び遮熱カバー3のイオン化傾向の差による電蝕を未然に防ぐことができる。
【0030】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,排気マニフォルドや排気管に遮熱カバーを取り付ける際にも本発明を適用することができる。また排気系部品を覆う遮熱カバーの位置は,排気系部品の種類や配置,隣接部材の配置に応じて自由に選定することができる。
【符号の説明】
【0031】
C・・・・・・排気系部品(触媒コンバータ)
D1・・・・・グロメットの外径
D2・・・・・クッションリングの外径
3・・・・・・遮熱カバー
7・・・・・・取り付け孔
10・・・・・支持部材
11・・・・・カラー
12・・・・・下鍔部
13・・・・・上鍔部
14・・・・・グロメット
14a・・・・筒状壁
14b・・・・端壁
15・・・・・皮膜
16,17・・クッションリング
19・・・・・固着部材(締結ボルト)