(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、映像データ、写真データ等の高品位化、および多くの紙媒体の電子化などによりデジタルデータの量は急激に増大している。特にクラウドコンピューティングと呼ばれる、ネットワーク上のサーバ、ストレージ等を使って各種アプリケーションを使用したり各種サービスを利用したりするモデルでは、多くの利用者が様々なデータをネットワーク上のストレージに保存するため、そのデータ蓄積量は今後さらに膨大なものとなる。
【0003】
その一方で、データの保存義務についての法制化が進んでおり、これらの膨大なデータを保存する際の確実性、信頼性も要求される。こうした大容量データを、光を用いて記録媒体に記録する装置において、記録の信頼性を高めるために、記録マーク(信号マーク)が光記録媒体に正しく形成されたかどうかを検証する動作(以降、これを「ベリファイ」とよぶ)は必要不可欠である。
【0004】
従来、記録媒体として光ディスクを用いる追記型や書き換え型の記録再生装置では、記録媒体に欠陥などがあって記録できなかった場合などを想定し、書き込み後にデータの読み出しを行い、記録データとの比較によりエラー検出を行っている。
【0005】
なお、このベリファイは、全ての記録が終わった後に行うのではなく、一定の記録転送速度を保持しうる単位で行うことが多い。すなわちディスクが一定量の回転をするごとに記録動作を中断し、トラックジャンプして元の位置に戻り記録した箇所の再生を行ってエラーチェックし、その後またトラックジャンプして別の領域へ移動し次のデータの記録を行うといった動作を繰り返し行っている。このためデータの信頼性は確保できるが記録時間が長くなる。
【0006】
なお、記録後の読み出しでエラーが検出された場合、記録した箇所を避けて別の領域に再記録を行う。光ディスクにおいてはセクタと呼ばれる領域単位毎にひとかたまりのデータとそのID情報が記録されており、エラーが検出されたデータを含むセクタ単位のデータは別のセクタ(交代セクタとよぶ)に記録し直される。
【0007】
従来の記録のデータ訂正を行う記録再生装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【0008】
近年、データの大容量化と高信頼性化への要求に対し長期アーカイバル保存に適した記録再生装置として、光媒体をテープ状にした光テープといった装置や複数の光ディスクドライブを組み合わせて同時にハンドリングするような装置が提案されている。このような大容量の記録再生装置においては記録転送速度も十分大きくしながら、一方で記録データの信頼性を維持することが要求される。
【0009】
ただ、テープ状メディア等のようにランダムアクセス性が低いものの場合、上述したような従来の光ディスク装置のように時系列で記録と再生チェックの動作を繰り返す方式では記録速度を上げることは困難である。
【0010】
こうした要求に対し、記録動作とベリファイのための再生動作を同時に行うDRAW(Direct Read after Write)とよばれる技術が提案されている。
【0011】
DRAW技術を用いた従来の記録再生装置については、例えば特許文献2に記載されている。
図21A〜Cは特許文献2に開示された光ピックアップの構成および動作を説明するための図である。
【0012】
図21Aに示される光ピックアップの光学系は、光源410、回折素子411、偏光ビームスプリッタ403、波長板404、コリメートレンズ405、ミラー406、対物レンズ407、検出レンズ402、および検出器401を有している。光源410を出射した光は回折格子411で主に0次光ビームと±1次光ビームに回折され、対物レンズ407により集光されて光記録媒体408の同一トラック上に3つの集光スポット(メインスポットおよび2つのサブスポット)を形成する。
【0013】
図21Bは光記録媒体408の面上に形成された光スポットの配置を表す。
【0014】
図21Bに示される0次光によるメインスポット500は、記録媒体に信号を記録するための「記録用スポット」である。一方、±1次光による2つのサブスポット510、520は、記録された信号の再生を行うための再生用スポットである。回折格子の効率比に起因して、±1次光の強度は、0次光の強度よりも十分に低い。そのため、2つのサブスポット510、520によって信号が消去されたり、書き換えられたりすることはない。
【0015】
メインスポット500とサブスポット510、520は同一トラック上に配置されており、記録媒体上を矢印aの方向にスポットが移動する。本明細書では、記録媒体のトラック上をメインスポットが移動することを、「記録媒体を記録用ビームで走査する」と称する。同様に、記録媒体のトラック上をサブスポットが移動することを、「記録媒体を再生用ビームで走査する」と称する。DRAWを行う場合は、光記録媒体の同一箇所を再生用ビームより先行して記録用ビームで走査する。2つのサブスポットの内、サブスポット510は記録スポットの後を移動し記録されたマークを読み取る。一方、サブスポット520は記録スポットの前を移動しており、その反射光は記録マークの情報は含まない。これらの光ビームは光記録媒体408で反射され光学系を経て検出器401により各々光量検出される。
【0016】
図21Cは検出器401の受光素子の配置を示す図である。
【0017】
図において4分割されたメイン受光素子121は0次光、すなわちメインスポットの反射光を受け、
図21Aの検出レンズ402で与えられる非点収差量がデフォーカスにより変化することでフォーカス信号の検出を行う。また、メイン受光素子121は、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号の検出を行う。一方、サブ受光素子122、123はそれぞれサブスポット510、サブスポット520による反射光を受ける。
【0018】
ここで光源410は光記録媒体408への記録マーク形成のため変調信号で駆動された光を出射する。
【0019】
同じ光源410から出ている再生用ビームも当然この光変調を受けているため±1次光の2つの再生スポットのうち記録スポットの後を走査する側のサブスポット510による反射光は記録マークによる反射率変化と光変調による光量変化が加算された信号成分を有する。もう一方のサブスポット520はメインスポット500の前の未記録部を走査するため記録マークによる反射率変化を含まず光源の光変調による光量変化のみを含む信号となる。このためこれら2つのサブビームの信号を差動することで再生信号(すなわちベリファイのためのモニター信号)を得ることが出来る。
【0020】
すなわち記録用スポット(メインスポット500)と再生用スポット(サブスポット510、520)を同時に形成し、記録しながら記録後の信号を再生するDRAWの技術を用いることで記録信頼性を確保しながら従来以上に記録転送速度の高いシステムが実現可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記したようなDRAWの技術に関し、以下のことを考慮する必要がある。
【0023】
まず、従来例に示したように、複数の光ピックアップが搭載される光テープなどの記録再生装置に搭載する簡素で低コストの光ピックアップユニット(OPU)を実現するためには、構成上一つの光源からの光を分岐して記録ビームと再生ビームとを形成することが望ましい。この場合再生ビームで作られる信号に記録変調信号が重畳してしまうため従来例のように再生信号から記録変調信号成分をキャンセルする手段が必要である。
【0024】
一方、アーカイバル用途の記録再生装置であっても記録の書き換えを行うことが想定され、この場合既に記録されている部分に上書き(オーバーライト)するといった動作中にも正しい再生信号を得られる工夫が必要である。
【0025】
また、光テープのようなシステムにおいては光ピックアップからみたトラックの進行方向は一方向ではなく双方向に進むことが想定される。そのような場合でも同様に安定して動作させる必要がある。
【0026】
従来例で示した光記録再生装置では、再生信号から変調記録成分をキャンセルできるのは2つのサブビームの内、一方が未記録領域を走査していることが必要である。
【0027】
本発明の実施形態は、既に記録されている領域でオーバーライトする場合であってもベリファイのための信号再生が安定にできる光ピックアップおよび光記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の光ピックアップは、光源と、前記光源の光から複数の光ビームを形成し、前記複数の光ビームに含まれる記録用ビームおよび再生用ビームを集束して、それぞれメインスポットおよびサブスポットを光記録媒体上に形成する光学系であって、前記光記録媒体の同一箇所を前記サブスポットより先行して前記メインスポットが移動するように前記記録用ビームおよび再生用ビームを前記光記録媒体上に集束する光学系と、前記記録用および再生用ビームの前記光記録媒体による反射光を検知して電気信号を生成する検出器とを備え、前記検出器は、前記光記録媒体から反射された前記メインスポットの光を受ける第1の受光素子と、前記光記録媒体から反射された前記サブスポットの光の一部を受ける第2の受光素子とを有している。
【0029】
ある実施形態において、前記第2の受光素子は前記サブスポットの光の略中央部分を受けるように配置されている。
【0030】
ある実施形態において、前記光学系は、前記再生用ビームが前記光記録媒体上においてデフォーカスするように前記再生用ビームを集束する。
【0031】
本発明の他の光ピックアップは、光源と、前記光源の光から複数の光ビームを形成し、前記複数の光ビームに含まれる記録用ビームおよび再生用ビームを集束して、それぞれメインスポットおよびサブスポットを光記録媒体上に形成する光学系であって、前記光記録媒体の同一箇所を前記サブスポットより先行して前記メインスポットが移動するように前記記録用ビームおよび再生用ビームを前記光記録媒体上に集束する光学系と、前記記録用および再生用ビームの前記光記録媒体による反射光を検知して電気信号を生成する検出器とを備え、前記検出器は、前記光記録媒体から反射された前記メインスポットの光を受ける第1の受光素子と、前記光記録媒体から反射された前記サブスポットの光を受ける第2の受光素子とを有しており、前記第2の受光素子は、第1光電変換素子と第2光電変換素子とを有している。
【0032】
ある実施形態において、前記第1光電変換素子には、前記サブスポットの光のうち、前記記録媒体に形成された記録マークから得られる信号が相対的に少ない部分が入射し、前記第2光電変換素子には、前記サブスポットの光のうち、前記記録マークから得られる信号が相対的に多い部分が入射するように、前記第1光電変換素子および前記第2光電変換素子が配置されている。
【0033】
ある実施形態において、前記第1光電変換素子は、前記サブスポットの光のうちの中心部を受けるように配置され、前記第2光電変換素子は、前記サブスポットの光のうち周辺部を受けるように、前記第1光電変換素子および前記第2光電変換素子が配置されている。
【0034】
ある実施形態において、前記検出器は、第1光電変換素子の出力および第2光電変換素子の出力の差動演算によって再生信号を生成する。
【0035】
ある実施形態において、前記光学系は回折素子を含み、前記回折素子は前記再生用ビームとして±1次光を形成し、前記第2の受光素子は前記±1次光の一方を受けるように配置されている。
【0036】
ある実施形態において、前記検出器は、前記±1次光の他方を受けるように配置されている第3の受光素子を備え、かつ、前記第1の受光素子の出力および前記第2の受光素子の出力の差動演算によって得られる信号と、前記第1の受光素子の出力および前記第3の受光素子の出力の差動演算によって得られる信号とを切り替えて出力することができるように構成されている。
【0037】
本発明の更に他の光ピックアップは、光源と、前記光源の光から複数の光ビームを形成し、前記複数の光ビームに含まれる記録用ビームおよび再生用ビームを集束して、それぞれメインスポットおよびサブスポットを光記録媒体上に形成する光学系であって、前記光記録媒体の同一箇所を前記サブスポットより先行して前記メインスポットが移動するように前記記録用ビームおよび再生用ビームを前記光記録媒体上に集束する光学系と、前記光記録媒体で反射した前記サブスポットの光の一部を抽出する光抽出素子と、前記記録用および再生用ビームの前記光記録媒体による反射光を検知して電気信号を生成する検出器とを備え、前記検出器は、前記光記録媒体から反射された前記メインスポットの光を受ける第1の受光素子と、前記光記録媒体から反射された前記サブスポットの光の一部を受ける第2の受光素子と、前記光抽出素子によって抽出された前記サブスポットの光の他の一部を受ける第3の受光素子とを有している。
【0038】
ある実施形態において、前記検出器は、第2の受光素子の出力および第3の受光素子の出力の差動演算によって再生信号を生成する。
【0039】
ある実施形態において、前記第2の受光素子および第3の受光素子の一方が、前記サブスポットの光の中心部分を受けるように前記第2の受光素子および第3の受光素子が配置されている。
【0040】
ある実施形態において、前記抽出素子は、前記サブスポットの光の複数の領域を抽出し、前記第3の受光素子は、複数の光電変換素子を有している。
【0041】
ある実施形態において、前記第1の受光素子は複数の領域に分割されており、前記第1の受光素子の複数の領域から得られる信号からプッシュプルによるメイントラッキングエラー信号を生成し、前記第2の受光素子の複数の領域から得られる信号からプッシュプルによるサブトラッキングエラー信号を生成し、前記メイントラッキングエラー信号およびサブトラッキングエラー信号からトラッキングエラー信号を生成する。
【0042】
本発明の光記録再生装置は、上記の少なくとも1つの光ピックアップを備え、光記録媒体に対してデータの記録再生を行う。
【発明の効果】
【0043】
本発明の実施形態によれば、第1の受光素子から得られる信号には記録マーク成分と光源の光変調による光量変化の成分が含まれ、第2の受光素子から得られる信号は光源の光変調による光量変化の成分が主であるため、これらを差動演算することにより記録マーク成分、すなわちDRAW信号を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施形態における光記録再生装置を説明する。本実施形態における光記録再生装置は、光記録媒体として光テープを用いる光データストリーマ装置である。光データストリーマ装置は、大量のデータのバックアップに使用され得る。光データストリーマ装置は、転送レートを上げ、短時間でバックアップを行うため、複数の光ピックアップを具備している。なお、本発明の光記録再生装置は、光データストリーマ装置に限定されず、光ディスク装置または他の装置であってもよい。光ディスク装置の場合、光記録媒体は、光テープではなく、光ディスクである。
【0046】
図1Aは、光テープ105の一部を模式的に拡大して示す斜視図である。光テープ105は、例えばベースフィルム204a、ベースフィルム204aの裏面に張り付けられたバックコート層204b、およびベースフィルム204aに支持されたインプリント層204cを含む。インプリント層204cの上面には、ランド204dおよびグルーブ204eが形成されている。図面には記載されていないが、インプリント層204cの上面を覆うように反射膜および記録材料膜が積層されている。光テープ105は、長尺方向Lに沿って延びており、例えば数百mの長さを有している。幅Wは、例えば数mmから数cmの範囲内に設定され得る。厚さは、数μmから数十μm程度であり得る。
【0047】
図1Aのスケールは、現実の光テープ105のサイズを忠実に反映してない。実際の光テープ105には、数百本またはそれ以上の本数のランド204dおよびグルーブ204eが形成され得る。ある実施形態では、データがランド204dおよびグルーブ204eの一方に記録される。データが記録されるランド204dまたはグルーブ204eを「トラック」と称する。トラックのピッチは、例えば0.2〜0.4μmの範囲に設定され得る。
【0048】
図1Bは、光テープ105の一部を模式的に示す平面図である。長尺方向Lに沿ってN(Nは典型的には100以上の整数)本のトラック0〜トラックNが形成されている。
図1Bに示されるトラックの幾つかには矢印が記載されている。この矢印は、データの記録方向を模式的に示している。1つの光テープ105には、異なる方向にデータが記録され得る。
【0049】
光テープ105には、光ビームの照射によって光学的にマークが形成され得る。より具体的に言えば、このようなマークは記録材料膜に形成される。光ビームの照射は、光源と、この光源から出射された光ビームを光テープ105にフォーカスさせる対物レンズとを含む「光ピックアップ」によって行われる。光ピックアップが光テープ105に光ビームを照射すると、光テープ105上の照射領域と他の領域(非照射領域)との間で、屈折率などの光学特性が変化する。このようにして光学特性が変化した領域を「記録マーク」と称する。
【0050】
光テープ105に記録されているデータは、比較的弱い一定強度の光ビームを光記録媒体に照射し、光テープ105によって変調された反射光を検出することによって再生される。光テープ105にデータを記録する場合、記録すべきデータに応じて光パワーを変調したパルス状の光ビームを光テープ105に照射し、それによって記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
【0051】
記録材料膜にデータを記録するとき、上述のように光パワーを変調した光ビームを記録材料膜に照射することより、結晶質の記録材料膜に非晶質の記録マークを形成する。この非晶質の記録マークは、記録用光ビームの照射を受けた記録材料膜の一部が融点以上の温度に上昇した後、急速に冷却されることによって形成される。光ビームを記録マークに照射するときの光パワーを低めに設定すると、光ビームが照射された記録マークの温度は融点を超えず、急冷後に結晶質に戻る(記録マークの消去)。こうして、記録マークの書き換えを何度も行うことが可能になる。データを記録するときの光ビームの光パワーの大きさが不適切であると、記録マークの形状が歪み、データを再生することが難しくなることがある。
【0052】
光テープ105に対してデータの記録または再生を行うとき、光ビームが目標トラック上で常に所定の集束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」は、光ビームの焦点(集束点)の位置が常に目標トラック上に位置するように対物レンズの位置を光テープ105の表面(情報記録層)に垂直な方向に制御することである。一方、トラッキング制御とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置を光テープ105の情報記録層に平行であってトラックに垂直な方向に制御することである。
【0053】
上述したフォーカス制御およびトラッキング制御を行うためには、光テープ105から反射される光に基づいて、フォーカスずれやトラックずれを検知し、そのずれを縮小するように光ビームスポットの位置を調整することが必要である。フォーカスずれおよびトラックずれの大きさは、それぞれ、光テープ105からの反射光に基づいて生成される「フォーカス誤差(FE)信号」および「トラッキング誤差(TE)信号」によって示される。
【0054】
図2Aは、本実施形態による光データストリーマ装置の構成例を示す図である。
図2Bは
図2AのB−B線断面図である。本実施形態では、
図2Aの上側が鉛直上方であり、下側が鉛直下方に対応している。このため、
図2Bは、この光データストリーマ装置を鉛直上方から見た内部構成の配置例を示している。
【0055】
図2Aおよび
図2Bは、光テープ105を収容するテープカートリッジ101が装填された状態を示している。テープカートリッジ101は着脱可能であり、図示される光データストリーマ装置には、同じ形状を有する複数のテープカートリッジ101から選択された1つが装填され得る。
【0056】
本実施形態の光データストリーマ装置は、筐体111と、筐体111の内部に設けられたシャーシ110と、光テープ105にデータを書き込むことができるように配置された複数のピックアップ部品60と、放熱板109とを備えている。複数のピックアップ部品60は光ピックアップアセンブリ600が備える位置決め機構によって位置決めされている。
【0057】
より詳細には、この光データストリーマ装置は、光テープ105を走行させるためのモータ106、107、ガイドポスト103、および巻取リール102を備えている。モータ107は、巻取リール102と機械的に結合しており、巻取リール102を回転させる。モータ106は、装填されたテープカートリッジ101の回転軸と機械的に結合し、テープカートリッジ101の外部に引き出されたテープ105をテープカートリッジ101内に巻き戻すように動作する。モータ106、107により、テープ105は、矢印で示す2つの方向のいずれにも走行することができる。
【0058】
光ピックアップアセンブリ600は、光テープ105の走行方向に沿って配列された複数のピックアップ部品60を有している。本実施形態における光ピックアップアセンブリ600は、上段および下段の各々に複数のピックアップ部品60を有している。筐体111内には、送風ファン108が設けられており、送風ファン108はモータ107に機械的に結合している。モータ107の回転に応じて送風ファン108も回転する。
【0059】
各ピックアップ部品60は、1個または複数の光ピックアップを内蔵する。個々の光ピックアップの構成については、後に詳しく説明する。ピックアップ部品60は、光ピックアップ用フレキシブル回路基板(FPC)112に接続されている。この光データストリーマ装置は、このフレキシブル回路基板112に接続された不図示の回路基板を備えており、この回路基板には、ピックアップ部品60やモータ106、107を制御するための回路要素が設けられている。なお、フレキシブル回路基板112には、通常であればピックアップ部品60および他の回路基板上に搭載されるような回路の一部が実装されていてもよい。
【0060】
次に
図3を参照して、本実施形態における光データストリーマ装置の回路構成例を説明する。
【0061】
図示されている光データストリーマ装置は、光ピックアップアセンブリ600およびモータ106、107と電気的に接続された回路ブロックを備えている。
【0062】
図3に示す構成例では、光ピックアップアセンブリ600の出力がフロントエンド信号処理部1306を介してエンコーダ/デコーダ1308に送られる。エンコーダ/デコーダ1308は、データ読み出し時、光ピックアップアセンブリ600によって得られる信号に基づいて光テープ105に記録されているデータを復号する。データ書き込み時、エンコーダ/デコーダ1308はデータを符号化し、光テープ105に書き込むべき信号を生成し、光ピックアップアセンブリ600に送出する。
【0063】
フロントエンド信号処理部1306は、光ピックアップアセンブリ600の出力に基づいて再生信号を生成する一方、フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEを生成する。フォーカス誤差信号FEやトラッキング誤差信号TEは、サーボ制御部1310に送出される。サーボ制御部1310は、ドライバアンプ1304を介してモータ106、107を制御する一方、光ピックアップアセンブリ600内の各レンズアクチュエータを介して対物レンズの位置を制御する。エンコーダ/デコーダ1308およびサーボ制御部1310などの構成要素は、CPU1309によって制御される。
図3に示されるブロックは、例えば集積回路素子およびメモリなどの電子部品を回路基板上に搭載して実現することができる。
【0064】
本実施形態で使用され得る光テープ105の情報記録層の幅は、例えば約10mmである。この場合、例えば24個の光ピックアップによって、走行中の光テープ105の情報記録層の全幅に渡って、データの記録および再生が行われ得る。
【0065】
テープカートリッジ101が光データストリーマ装置に装填される前、光テープ105はテープカートリッジ101に、図示しないリールに巻かれた状態で収納されている。テープカートリッジ101が光データストリーマ装置に装填されると、光テープ105は複数のテープガイドポスト103に案内されて引き出され、巻取リール102に巻き取られる。各ピックアップ部品60は光テープ105に対し所定の位置に固定され、光テープ105に対して情報の記録再生を行う。本実施形態における光ピックアップの個数は24個である。このため、最大24個の光ピックアップによって同時にデータの記録再生を行うことが可能である。なお、1つの光データストリーマ装置が備える光ピックアップの個数は、24個に限定されず、この数よりも少なくても多くてもよい。
【0066】
送りモータ107は巻取リール102を回転駆動し、光テープ105を順方向に走行させるとともに、送風ファン108を駆動する。逆送りモータ106はテープカートリッジ101内の図示しないリールを回転駆動し、光テープ105を逆方向に駆動する。この際にも、光テープ105により巻取リール102も駆動されるため送風ファン108も駆動される。ピックアップ部品60は放熱板109と熱的に結合され、その発生する熱は放熱板109に伝達される。
【0067】
記録時または再生時、光テープ105は順送りモータ107、または逆送りモータ106により、順方向または逆方向に走行し、この間、各光ピックアップは光テープ105に対し同時に記録または再生を行うことができる。
【0068】
以下、本実施形態における光学系の構成を説明する。
【0069】
図4は本実施形態における光ピックアップの光学系構成を示す図である。
【0070】
この光ピックアップは、レーザ光源1と、レーザ光源1の光から複数の光ビームを形成し、複数の光ビームに含まれる記録用ビームおよび再生用ビームを集束して、それぞれメインスポット50およびサブスポット51、52を光記録媒体(光テープ105)上に形成する光学系を備える。この光学系は、光テープ105の同一箇所をサブスポット51より先行してメインスポット50が移動するように記録用ビームおよび再生用ビームを光記録媒体上に集束する。ただし、複数のサブスポットが形成される場合でも、再生に用いられるサブスポット(すなわち再生用ビームが形成するサブスポット51)よりも、記録用ビームが形成するメインスポット50が先行して移動する。なお、複数のサブスポットのうちのいずれを再生用のサブスポットとして用いるかは、光記録媒体の走行方向によって変更可能である。光テープ105の走行方向が反転した場合、サブスポット52を形成する光ビームが再生用ビームとなる。このような光学系のより具体的な構成例については、後述する。
【0071】
この光ピックアップは、更に、記録用および再生用ビームの光テープ105による反射光を検知して電気信号を生成する光検出器8と、レーザ光源1に接続され、記録モードにおいては記録用ビームで光テープ105に記録マークを形成するようにレーザ光源1の光出力を変調する光変調器(光源駆動回路)30とを備える。光検出器8は、光テープ105から反射されたメインスポット50の光(記録用ビームの反射光)を受ける第1の受光素子と、光テープ105から反射されたサブスポットの光(再生用ビームの反射光)の一部を受ける第2の受光素子とを有している。光検出器8の構成も、後に詳しく説明する。
【0072】
なお、光源駆動回路として機能する光変調器30は、光ピックアップ内に含まれている必要はなく、光変調器30の全部または一部が、光ピックアップの外部に設けられていてもよい。言い換えると、光ピックアップを備える光記録再生装置が光源駆動部を含んでいればよい。
【0073】
図4に示されるように、レーザ光源1が出射した光は回折素子2によって0次光、+1次光、−1次光に回折分岐される。分岐した光は偏光ビームスプリッタ3、波長板4を経て円偏光となり対物レンズ5により集光されて光テープ105の情報記録層上にそれぞれ集光スポットを形成する。以降、0次光をメインビーム、0次光による集光スポットをメインスポット50、±1次光をサブビーム、±1次光による集光スポットをサブスポット50、51と呼ぶ。
【0074】
光テープ105で反射された光は、対物レンズ5、波長板4を経て往路と直交する直線偏光に変換される。その後、波長板4を出た直線偏光は、偏光ビームスプリッタ3で反射されて検出レンズ7にて非点収差を与えられ光検出器8の受光素子に入射する。また
図4における光変調器30は、光テープ105に記録マークを形成するために用いられる。
【0075】
以降、特に断りのない限り、図中の表記のように、対物レンズ5の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、光テープ105の幅方向をX方向とし、光テープ105の走行方向(タンジェンシャル方向)をY方向と称する。なお、光ピックアップの光学系において、ミラーやプリズムなどで光軸を折り曲げた場合も、光軸および光ディスクの写像を基準に方向を定義する。
【0076】
図5は光テープ105の情報記録層上に集光されたメインスポット50とサブスポット51、52の配置を示す図である。光テープ105には凹凸が形成されている。メインスポット50およびサブスポット51、52は、記録マーク70が形成される記録トラック(ランド部204d、凹凸の凸部)に沿って矢印aの方向に移動する(実際にはスポットは固定されていて光テープ105が矢印aの反対方向に進む)。なお、図で記録トラック上にはこれから記録する箇所にも記録マーク70が形成されており、データがオーバーライトされつつある状態を表す。本実施形態では、光テープ105のグルーブ204eには記録マーク70が形成されない。
【0077】
図6は、
図4における光検出器8の受光素子の構成と、光検出器8から演算回路9における信号処理を実行する回路のブロック図である。
【0078】
光検出器8の受光面には、メインスポット50の反射光のスポット(50R)と、サブスポット51の反射光のスポット(51R)が形成される。以下、簡単のため、メインスポット50の反射光が光検出器8の受光面に形成するスポットを「メインスポット50R」と称し、サブスポット51およびサブスポット52の反射光が光検出器8の受光面に形成するスポットを、それぞれ、「サブスポット51R」、「サブスポット52R」と称する場合がある。
【0079】
メイン受光素子10はメインスポット50の反射光を受けるように配置され、プッシュプル法によるメインのトラッキングエラー信号の検出を行う。具体的には、
図6に示されるように、メイン受光素子10はメインスポット50Rを完全に含む領域に存在している。
図4の検出レンズ7で与えられる非点収差量がデフォーカスにより変化することでフォーカス信号の検出を行う。メイン受光素子10の出力はフオーカス・トラッキング信号生成部130に入力される。トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号の生成は公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0080】
一方、サブ受光素子11はサブスポット51の反射光の一部を受けるように配置されている。すなわち、サブ受光素子11はサブスポット51Rの全体ではなく、一部を受けるように配置されている。サブスポット51はメインスポット50に比べて光学系の軸上を通らないため軸外収差の影響を受ける。そのため、サブスポット51はメインスポット50に比べて集光状態が劣る。
【0081】
図5に示す例では、再生に用いられるサブスポット51はメインスポット50が通過した領域をメインスポット50に遅れて通過する。このため、サブスポット51の反射光の強度は記録マーク70の影響を受けて変動する。しかし、上述したように、サブスポット51の集光状態が相対的に悪いため、サブスポット51の反射光に含まれる記録マーク70の信号成分は、メインスポット50に含まれる信号成分よりも小さい。また、記録マーク70による信号成分はサブスポット51Rの前後領域に比較的多く含まれる。以下、
図7A、7B、7C、7Dを参照して、この点を説明する。
【0082】
図7Aは、光検出器8の受光面上に形成されるサブスポット51Rの強度分布を模式的に示す図である。光テープ105のトラック上に形成された記録マーク70の列は、サブビームに対して回折格子と同様に作用する。したがって、サブビームには干渉が生じ、光記録媒体で反射したサブビームの断面内には記録マーク70の列に起因する強度分布が発生する。その結果、サブスポットの反射光は、その断面内において、記録マーク70によって強度が相対的に大きく変調する部分と、記録マーク70によって強度がほとんど変調しない部分とを含むことになる。
【0083】
記録マーク70によって強度が相対的に大きく変調する部分は、Y方向におけるスポットの両端近傍に位置している。サブスポットが長さの短い記録マーク70の上を通過するとき、格子ピッチの短い回折素子にサブビームが入射したときと同様の干渉が生じる。一方、サブスポットが長さの長い記録マーク70の上を通過するときは、格子ピッチの長い回折素子にサブビームが入射したときと同様の干渉が生じる。
【0084】
これらの特徴を踏まえて受光素子11はサブスポット51R中の記録マーク70による信号成分が比較的少ない領域に配置される。例えば、
図6および
図7Bに示すように、サブスポット51Rの中心部付近の領域に、サブスポット51Rよりも小さな受光素子11を配置することにより、記録マーク70による信号成分が比較的少ない信号を検出することができる。
【0085】
図7C、7Dは、受光素子11の他の構成および配置の例を示す図である。これらの例における受光素子11は、Y方向のサイズがサブスポット51Rの直径よりも小さい形状を有し、サブスポット51Rの中心を含むように配置されている。Y方向に垂直なX方向の受光素子11におけるサイズは、
図7Cに示されるように、サブスポット51Rの直径よりも大きくてもよい。また、受光素子11は、
図7Dに示されるように、長方形以外の形状を有していてもよい。
【0086】
記録モードにおいて、光源1は、光テープ105への記録マーク形成のため光変調された光を出射する。したがって光源1から出射された光を回折素子2で分岐して形成したメインビームおよびサブビームは、光テープ105に入射するとき、同じように変調されている。メインビームが光テープ105によって反射されるとき、メインビーム、それ自身が形成しつつある記録マーク70による変調を受ける。その結果、メインビームの反射光には、記録のための光変調成分に加えて、記録中の記録マーク70の信号成分も含まれる。
図8にこれらが足し合わさったメインビーム信号Smの模擬波形を示す。ここでは単純化のため、単一周波数の信号を記録している波形を示している。一方、サブビームが光テープ105によって反射されるときも、メインビームが形成した記録マーク70による変調を受ける。しかし、サブビームの反射光に含まれる、記録マーク70の変調成分は相対的に小さい。
【0087】
メイン受光素子10の全チャネルの出力は加算アンプ12にて加算され、加算アンプ12はメインビーム信号Smを出力する。メインビーム信号Smには、記録変調成分と記録マーク信号成分の両方が混合されている。メインビーム信号Smは、通常の再生回路132に入力される。サブビームも同様に記録変調成分と記録マーク信号成分の両方が混合された信号(サブビーム信号Ss)を形成することになる。しかし、サブ受光素子11は記録マーク70による信号成分が少ない領域の光を受けるため、サブビーム信号Ssにおける記録変調成分はメインビーム信号Smにおける記録変調成分と同等の波形を有するようにゲイン調整したとしても、サブビーム信号Ssにおける記録マーク信号成分はより小さくなる。
【0088】
サブビーム信号Ssの記録変調成分がメインビーム信号Smの記録変調成分と同等になるようにVVアンプ13のゲインを調整した後に、メインビーム信号Smとサブビーム信号Ssを差動アンプ14で差動演算を行う。これによって記録マーク信号が抽出される。光源1の出力変動の影響が残っているため、メインビーム信号Smもしくはサブビーム信号Ssを用いたオートゲインコントロール(AGC)処理をAGC回路15で行うことで元の記録マーク信号相当の波形(DRAW信号)を得ることができる。
【0089】
図5ではメインスポット50とサブスポット51が同一トラック上に並んでいる例を示したが、本構成ではサブビーム信号Ssは記録マーク70の影響を受けにくいため、サブスポット51はメインスポット50と同一トラック上に配置されていなくても構わない。そのため、回折素子2の位置決めを簡素に済ますことができる。
【0090】
ある実施形態において、
図9に示すように±1次両方のサブビームを受光できるようにもう一つのサブ受光素子11’を追加してもよい。サブ受光素子11’は、サブ受光素子11と同様の形状およびサイズを有している。このサブ受光素子11’はサブスポット52Rの全体ではなく、一部を受けるように配置されている。この例でも、サブスポット52Rの中心部付近の領域に、サブスポット52Rよりも小さな受光素子11’を配置することにより、記録マーク70による信号成分が比較的少ないビームを得ることができる。
【0091】
光源1の光強度分布や光学系の配置誤差などの影響により±1次のサブスポット品質には差が生じる場合がある。このため、それぞれの受光素子11、11’から得られるサブビーム信号Ssを比較して、より良好なDRAW信号が得られる方を選択する構成とすれば、更にDRAW動作の信頼性を高めることができる。
【0092】
尚、
図9ではサブ受光素子11、11’の出力のIVアンプ入力の箇所に切り替えスイッチ16を配置したが、サブ受光素子11、11’のそれぞれにIVアンプを設け、VVアンプ13の手前にスイッチ16を配置してもよい。あるいは、サブ受光素子11、11’のそれぞれにIVアンプ、VVアンプを設け、差動アンプ14の入力にスイッチ16を配置してもよい。このような構成にすることで光テープ105に対する光スポットの走査方向が反対になった場合に、サブビームの切り替えを行うことができる。±1次のサブスポットは記録中のメインスポットに対して記録前もしくは記録後のいずれかの領域に配置されるため、走査方向によって良好なDRAW動作が得られるサブスポットを選択すればよい。
【0093】
あるいは、
図10に示すようにサブ受光素子11、11’からの信号を加算し、VVアンプで振幅を調整した信号をメインビーム信号Smと差動演算する構成としてもよい。
【0094】
また、サブ受光素子11、11’を複数の領域に分割し、サブスポットがトラックを横断する際のプッシュプル信号を受光する構成として、メイン受光素子10から得られるメインスポットのプッシュプル信号と差動演算することによりディファレンシャルプッシュプル(DPP)信号を生成し、対物レンズ5がトラックに追従する際にレンズシフトを生じたときにもオフセットの少ないトラッキングエラー信号が得られる構成とすることもできる。
【0095】
回折素子2の格子ベクトルの方位に
図11に示すような分布を与えて、回折光に収差を与えてもよい。この場合、回折された±1次光は格子ベクトルの分布に応じて球面収差や非点収差などの収差を持つため、メインスポット50が光記録媒体(本実施形態では、光テープ105)上に集光しているとき、サブスポット51は光テープ105の手前あるいは奥が最小スポット位置になる。このため光テープ105では少し広がった集光スポットとなる。よって、メインスポット50による記録中において、サブビーム51の反射光が光検出器8に形成するサブスポット51Rは、
図12に示すようにメインビーム50Rよりも広がる。サブ受光素子11はこの広がったサブスポット51Rにおける記録マーク成分の少ない領域の光を受けるサイズや形状を有する。光テープ105上のサブスポットの集光度合いを弱めることにより、記録マーク成分がサブビームの反射光に及ぼす影響を低減することができる。
【0096】
サブビームを生成するための光分岐素子として回折素子を用いた構成例について説明してきた。回折素子の代わりにテーパ状のミラーやプリズムを用いてもよい。この場合は、表面反射光もしくは透過光をメインビームとして使用し、テーパ角度のついた内面で反射した光をサブビームとして使用することが可能である。
【0097】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における光ピックアップについて説明する。
【0098】
本実施形態の基本構成は、
図4に示される基本構成と同じである。このため、適宜、
図4も参照する。
【0099】
図13Aは本実施の形態の光検出器8の受光素子の構成と、光検出器8から演算回路9における信号処理のブロック図である。
図13Bは、サブ受光素子11の拡大図である。サブ受光素子11は
図5に記した±1次の2つのサブスポット51、52のうち、紙面上側のサブスポット51からの反射光を受ける。つまり、サブ受光素子11で受光するサブビームはメインスポット50で記録した直後の記録マーク70上のサブスポット51光である。この構成ではサブスポット51はメインスポット50と同一トラック上に並ぶように配置することが望ましいが、これから記録するトラックではなく、メインスポット50によって直前に記録された後のトラック上(
図5の左側の領域)であっても原理的には構わない。
【0100】
サブ受光素子11は、
図13Bに示すように、複数の領域18、19、20に分割されている。第1の領域18は、サブビーム中の記録マーク信号成分が少ない部分が入射する位置、例えば、サブ受光素子11の中央部に、配置されている。ここでは、第1の領域18から得られる信号をサブビーム信号SsBと呼ぶ。第2の領域19および第3の領域20は、第1の領域18の外側に配置され、第2の領域19および第3の領域20にはサブビームの中央部以外の部分が入射する。第2の領域19と第3の領域20との間に設けられた隙間を通って、第1の領域18はIVアンプに電気的に接続されている。また、第2の領域19と第3の領域20との間の複数の隙間のうち、配線が通らない部分は第2の領域19と第3の領域20とが連結していてもよい。この場合、
図13Cに示すように、サブ受光素子11は、2つの領域18、18’とに分かれる。更に、裏面照射型の光検出器8を用いれば、配線を光入射面とは異なる面に形成することができる。その場合は、第2の領域19と第3の領域20とを分離する必要はないので、
図13Dに示すように、サブ受光素子11は、内側の領域18と、外側の領域18’とに分かれ得る。各領域18、19、20、18’の形状は、図示される例に限定されず、曲線で囲まれた形状を有していてもよい。また、サブ受光素子11を構成する領域の個数は3個以下に限定されず、4個以上であってもよい。
【0101】
記録マーク信号成分を含んだ信号はサブビームの全光量を加算した信号を使用する。ここではこの加算信号をサブビーム信号SsAと呼ぶ。
図13Aの例では第1の領域18,第2の領域19、第3の領域20からの3つの信号を加算したものがサブビーム信号SsAとなる。サブビーム信号SsAとサブビーム信号SsBとを差動アンプ14で差動演算し、AGC処理することによりDRAW信号が得られる。本構成における各ポイントの信号模式図を
図14に示す。
【0102】
この構成は、DRAW信号を、サブスポット51Rを検出する受光素子11のみから生成する。このため、記録中のメインスポット50Rを検出する受光素子10を用いて記録マーク信号成分を抽出する手法に対し、記録マーク生成過程の不完全な記録マーク信号ではなく、完全に記録マーク生成が完了した後の記録マーク信号を用いてDRAW信号を生成できるというメリットがある。加えて、一つのサブビームからDRAW信号を生成するため、メインビーム信号Smやもう一方の回折光によるサブビーム信号を用いる手法に比べ、光学的、電気的な特性差が極めて少ない。そして、記録中の光変調成分やオーバーライトしていくときの古いマークから受ける反射率変動の影響もサブビーム信号SsAとサブビーム信号SsBには同じように含まれているため、本構成のサブビーム信号SsAとサブビーム信号SsBとを差動演算したDRAW信号は、メインスポットが記録した直後の記録マーク信号の安定な抽出が可能となる。
【0103】
また、第2の領域19や第3の領域20から得られるプッシュプル信号と、メイン受光素子10から得られるメインスポットのプッシュプル信号とを差動演算することによりディファレンシャルプッシュプル(DPP)信号を生成し、対物レンズ5がトラックに追従する際にレンズシフトを生じたときにもオフセットの少ないトラッキングエラー信号が得られる構成とすることもできる。
【0104】
また、
図15に示すようにもう一方のサブビームを受光する受光素子やアンプ、スイッチを追加し、記録媒体に対する光スポットの走査方向が反対になった場合にもDRAW信号を生成できるようにサブビームを切り替えられる構成としてもよい。
【0105】
また、本実施形態では、サブビームを生成するための光分岐素子として回折素子を用いた構成例について説明したが、一つのサブビームを用いた構成については、回折素子の代わりにテーパ状のミラーやプリズムを用いてもよい。この場合は、表面反射光もしくは透過光をメインビームとして使用し、テーパ角度のついた内面で反射した光をサブビームとして使用することで構成が可能である。
【0106】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における光ピックアップについて説明する。
【0107】
図16は本実施形態の光ピックアップの光学系構成を示す図である。
【0108】
本実施形態では、光抽出素子21が偏光ビームスプリッタ3と光検出器8との間に配置されている。ここでは、光抽出素子21として、
図17に示すようなビームの一部の領域に作用する回折素子を使用する例を説明する。この例では、光抽出素子21はビーム有効径の中心部分が斜め45度方位の格子ベクトルの回折格子22で構成されている。
【0109】
光テープ105で反射し、光抽出素子21に入射した光は、この回折格子22によって回折され、検出レンズ7を経て光検出器へ入射する。
【0110】
図18は本実施の形態の光検出器の受光素子の構成と、光検出器8から演算回路9における信号処理のブロック図である。回折格子22で回折されなかったサブビーム光はサブ受光素子11で受光する。そして、メイン受光素子10で受光したメインビーム光とともにトラッキングやフォーカス制御用の信号生成に利用する。また、記録マーク信号成分を含んだサブビーム信号SsAとしても使用する。
【0111】
一方、回折格子22で回折された回折光23は受光素子24へ入射するが、この領域の光は記録マーク信号成分が少ない領域に設定されており、サブビーム信号SsBとして使用する。そして、サブビーム信号SsAとサブビーム信号SsBとを差動アンプ14で差動演算し、AGC処理することによりDRAW信号が得られる。この構成例もDRAW信号をサブスポットのみによる信号から生成するため、記録中のメインスポットによる信号から記録マーク信号成分を抽出する手法に対し、記録マーク生成過程の不完全な記録マーク信号ではなく、完全に記録マーク生成が完了した後の記録マーク信号を用いてDRAW信号を生成できるというメリットがある。加えて、一つのサブビームからDRAW信号を生成するため、メインビーム信号Smやもう一方の回折光によるサブビーム信号との光学的、電気的な特性差が極めて少ない。そして、記録中の光変調成分やオーバーライトしていくときの古いマークから受ける反射率変動の影響もサブビーム信号SsAとBには同じように含まれているため、本構成のサブビーム信号SsAとBとを差動演算したDRAW信号は、メインスポットが記録した直後の記録マーク信号の安定な抽出が可能となる。
【0112】
さらに、DRAW信号生成のためのサブビームの領域分割を、受光素子上ではなく、ビームが集光する前のビーム径が比較的大きい状態の光路中で行うため、領域分割の位置決め、この場合、光抽出素子21や光検出器の位置決めを容易に行うことができるというメリットも得られる。
【0113】
光抽出素子21として、
図19に示すような複数の領域に異なる格子ベクトルを配した回折素子を使用してもよい。この例では、光抽出素子21は中心部分が斜め45度方位の格子ベクトルの回折格子22で構成され、中心以外の領域は中心部分と直交する方位の格子ベクトルの回折格子25で構成されている。
【0114】
図20は、本実施形態で使用され得る光検出器8の受光素子の構成と、光検出器8から演算回路9における信号処理のブロック図である。回折格子25で回折された光は受光素子27へ入射するが、この領域の光には記録マーク信号成分が含まれているため、この受光素子27の出力をサブビーム信号SsAとして使用し、サブビーム信号SsBとの差動演算、AGC処理によりDRAW信号が得られる。
【0115】
本実施の形態では、サブ受光素子11は
図5に記した±1次の2つのサブスポットのうち、紙面上側のサブスポット51からの反射光を受ける。つまり、サブ受光素子11で受光するサブビームはメインスポット50で記録した直後の記録マーク70上のサブスポット光である。この構成ではサブスポット51はメインスポット50と同一トラック上に並ぶように配置することが望ましいが、これから記録するトラックではなく、メインスポット50によって直前に記録された後のトラック上(
図5の左側の領域)であっても原理的には構わない。
【0116】
また、サブ受光素子11から得られるプッシュプル信号と、メイン受光素子10から得られるメインスポットのプッシュプル信号と差動演算することによりディファレンシャルプッシュプル(DPP)信号を生成してもよい。その場合、対物レンズ5がトラックに追従する際にレンズシフトを生じたときにもオフセットの少ないトラッキングエラー信号が得られる。
【0117】
また、もう一方のサブビームを受光する受光素子やアンプ、スイッチを追加し、記録媒体に対する光スポットの走査方向が反対になった場合にもDRAW信号を生成できるようにサブビームを切り替えられる構成としてもよい。
【0118】
図16の例では、光抽出素子21は偏光ビームスプリッタ3と検出レンズ7の間に配置されているが、別の場所、例えば、検出レンズ7と光検出器8との間や対物レンズ5と偏光ビームススプリッタ3の間などに配置されてもよい。
【0119】
本実施形態では、サブビームを生成するための光分岐素子として回折素子2を用いている。一つのサブビームを形成するため、回折素子2の代わりにテーパ状のミラーやプリズムを用いてもよい。この場合は、表面反射光もしくは透過光をメインビームとして使用し、テーパ角度のついた内面で反射した光をサブビームとして使用する。
【0120】
上記の実施形態によれば、記録用スポット位置に対するサブスポット位置のアライメント精度が緩和され、光ピックアップ構成の簡素化や平易な組立が可能になる。
【0121】
本発明の実施形態によれば、既に記録された光記録媒体にオーバーライトする場合であっても光源の光変調成分を含まない良好な再生信号によりDRAW動作が機能する光ピックアップが簡素な構成で実現できる。
【0122】
また、本発明の実施形態によれば、光記録媒体の進行方向が変わっても光検出器を切り替えることで対応できる。
【0123】
また本発明の実施形態によれば、記録のメインスポットと再生用のサブスポットを用いてDCオフセットのない安定なトラッキング信号を得ることができるため光媒体への記録品質も確保できる。
【0124】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲でこれらの実施の形態に各種変形を施して得られる形態や、各実施の形態における構成要素を任意に組み合わせることで実現される形態も、本発明に含まれる。