(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)少なくとも一方に電極を備える一対の基板であって、第1の基板と第2の基板からなり、少なくとも該第1の基板側から表示を観察する一対の基板を作製する工程と、
(b)前記第1の基板上、または上方に光散乱層を形成する工程と、
(c)前記一対の基板間にエレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液層を形成する工程と
を有し、
前記工程(c)において、前記電解液層の電解液を前記光散乱層に浸透させる表示素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1A〜
図1Cは、第1の実施例による表示素子の製造方法を示す概略図である。第1の実施例は、バルク型の表示素子である。
【0019】
図1Aを参照する。一対のITO膜付ガラス基板(透明基板)11、21を準備し、それぞれの基板のITO膜(透明導電膜)をフォトリソ工程にてパターニングし、ガラス基板11、21上にITO電極(透明電極)12、22を形成する。
【0020】
パターニングに際しては、抵抗の面から、引き回し線をなるべく太くとることが望ましい。エッチングは、王水系混酸の水溶液を用いたウェットエッチにて実施した。エッチャントとして、たとえば第二酸化鉄を用いることもできる。レーザを使用し、ITO膜をアブレーションして除去することで、パターニングを行ってもよい。パターニングにおいては、ITO電極12、22の各々におけるITO間の距離を、おおむね数十μmから数百μmとする。実施例においては、最も狭い部分のITO間距離を100μmとした。
【0021】
こうしてガラス基板11上にITO電極(表示用電極)12を備える上側基板(表示用基板)10、及び、ガラス基板21上にITO電極22を備える下側基板20が作製される。
【0022】
なお実施例においては、2枚の透明基板の各々上に透明電極を形成するが、基板の一方は不透明基板でもよく、その上に形成される電極も不透明電極とすることができる。
【0023】
抵抗値の面からは、電極は低抵抗の金属膜で形成することが望ましい。また、後述の電解液に腐食されない性質を有する金属膜で形成することが望ましい。
【0024】
図1Bを参照する。上側基板10上に光散乱層13を形成する。光散乱層13は、光散乱性、及び、電解液を浸透させる性質もしくは導電性を有する。実施例においては、光散乱層13として、白色を示すチタニア層(TiO
x膜)を印刷法にて形成した。ディスペンサで膜形成を行ったが、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコート、フレキソ印刷、バーコート印刷などを用いることができる。
【0025】
TiO
x膜は、厚さ3000Å〜4000Åに形成した。膜厚はこれに制限されない。TiO
x膜(チタニア粒子による光散乱層13)は光散乱性を備え、後述の電解液が浸透可能な膜である。光散乱層13は、TiO
xに限らず、ZnOやジルコニアなどの金属酸化物、有機系の粒子等を用いて形成することができる。
【0026】
なお、光散乱層13のバインダ(接着層)として、たとえばエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミドなどの各種樹脂を使用することができる。
【0027】
図1Cを参照する。たとえば20μm〜数百μm径、一例として50μm径のギャップコントロール剤を、上側基板10、下側基板20の一方側に、一例として1個〜4個/mm
2となるように散布する。ギャップコントロール剤の径に応じ、表示に影響を与えにくい散布量とすることが望ましい。なお、発光・消光表示(エレクトロケミカル表示)を行う表示素子、発色・消色表示(エレクトロクロミック表示)を行う表示素子、及び、それらの表示をデュアルモードで行う表示素子の場合、多少ギャップムラがあっても表示への影響は少ないため、ギャップコントロール剤の散布量の重要性は高くない。また実施例においては、ギャップコントロール剤を用いたギャップコントロールを行ったが、リブなどを用いてギャップコントロールを行うことも可能である。
【0028】
上側基板10、下側基板20の他方側に、メインシールパターンを形成した。実施例では、紫外線+熱硬化タイプのシール材40を用いた。シール材として、光硬化タイプ、または熱硬化タイプを使用してもよい。発光・消光表示と発色・消色表示をデュアルモードで行う表示素子に用いる電解液に耐えるシール材料(耐腐食性を備えるシール材料)が好ましい。なお、ギャップコントロール剤の散布とメインシールパターンの形成は同一基板側に行ってもよい。
【0029】
次に、エレクトロケミカルルミネセンス材料(発光材料)及びエレクトロクロミック材料(発色材料)を含む電解液を、両基板10、20間に封入した。
【0030】
実施例ではODF工程を用いた。エレクトロケミカルルミネセンス材料及びエレクトロクロミック材料を含む電解液を、上側基板10、下側基板20の片側基板側に適量滴下する。滴下方法として、ディスペンサやインクジェットを含む各種印刷方式が適用できる。ここではディスペンサを用いて、電解液を適量滴下した。
【0031】
真空中で両基板10、20の重ね合わせを行った。大気中、もしくは窒素雰囲気中で行ってもよい。
【0032】
紫外線を、たとえば21J/cm
2のエネルギ密度でシール材40に照射し、シール材40を硬化した。なお、シール材40のみに紫外線が照射される(表示部分に紫外線が照射されない)ようにSUSマスクを使用した。
【0033】
電解液を上側及び下側基板10、20間に封入する工程において、電解液は光散乱層13に浸透する。
【0034】
エレクトロケミカルルミネセンス材料及びエレクトロクロミック材料を含む電解液は、エレクトロケミカルルミネセンス化合物材料、エレクトロクロミック化合物材料、支持電解質、溶媒などにより構成される。
【0035】
エレクトロケミカルルミネセンス材料は、電圧の印加により、電極近傍で酸化されてカチオンラジカル(酸化種)、還元されてアニオンラジカル(還元種)となる。この両者が会合するとエレクトロケミカルルミネセンス材料の励起状態が生成し、その失活過程において発光が起きる。この現象を利用して発光表示を行う。
【0036】
エレクトロクロミック材料は、電圧が印加されると電気化学的な酸化または還元反応を起こし、それにより発色または消色等の変色を生じる材料である。この現象を利用して反射表示を行う。
【0037】
エレクトロケミカルルミネセンス化合物材料は、電気化学的な酸化還元反応によって発光する材料であれば、特段の制限はない。たとえば「ビピリジン誘導体やフェナントロリン誘導体等の配位子を有するルテニウム錯体及び希土類錯体(対イオンとしてヘキサフルオロリン酸、ハロゲン等を有する)」やPVB(ポリビニルブチラール)、DPA(9,10−ジフェニルアントラセン)、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムのようなものを含むTBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)等を好適に用いることができる。
【0038】
エレクトロクロミック化合物材料は、電気化学的な酸化還元反応によって可逆的な色変化を示す化合物であれば、特に制限されない。たとえば、ジメチルテレフタレート、4,4’−ビフェニルヂカルボン酸ヂエチルエステル、ジアセチルベンゼン(1,4−ジアセチルベンゼン等)、ビオロゲン(N,N’−ジメチルビオロゲン、1,4−ジヘプチルビオロゲン等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン等)、金属錯体(フェナントロリン錯体、ビピリジン錯体等)、トリフェニルアミン誘導体等、電気化学活性有機化合物の少なくとも一つを含むものを好適に用いることができる。また、無機系のエレクトロクロミック材料としては、たとえば水酸化イリジウム酸化チタン等の遷移金属酸化物、水酸化イリジウム等の金属水酸化物、プルシアンブルー等の混合原子価化合物を使用することができる。
【0039】
支持電解質は、発色材料の酸化還元反応等を促進するものであれば限定されず、たとえばリチウム塩(LiCl、LiBr、LiI、LiBF
4、LiClO
4等)、カリウム塩(KCl、KBr、KI等)、ナトリウム塩(NaCl、NaBr、NaI等)を好適に用いることができる。支持電解質の濃度は、たとえば10mM以上1M以下であることが好ましいが、これも特に限定されるものではない。
【0040】
溶媒は、発光材料、発色材料等を安定的に保持することができるものであれば限定されない。水や炭酸プロピレン等の極性溶媒、極性のない有機溶媒、更には、イオン性液体、イオン導電性高分子、高分子電解質等を使用することが可能である。具体的には、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸等を用いることができる。
【0041】
図1Cは、第1の実施例による表示素子の概略的な断面図である。第1の実施例による表示素子は、平行に離間して対向配置された上側基板(表示用基板)10、下側基板20、一対の基板10、20間に配置された発光・発色層30、及び、発光・発色層30内の、上側基板10側に形成された光散乱層13を含む。
【0042】
上側基板10は、ガラス基板11、及びガラス基板11上に形成されたITO電極12を含む。
【0043】
下側基板20は、ガラス基板21、及びガラス基板21上に形成されたITO電極22を含む。
【0044】
発光・発色層30は、エレクトロケミカルルミネセンス材料及びエレクトロクロミック材料を含む電解液で構成され、上側基板10、下側基板20間の、シール材40に囲まれた領域内に画定される。
【0045】
光散乱層13は、光を散乱させる性質を有する。第1の実施例においては、発光・発色層30から上側基板10側に進行する光を散乱させるとともに、上側基板10から発光・発色層30側に進行する光を散乱させる。
【0046】
なお、
図1Cにおいては、発光・発色層30と光散乱層13の形成領域が相互に排斥しあう関係にあるように示しているが、発光・発色層30を構成する電解液は、光散乱層13に浸透しているため、光散乱層13の形成領域は、発光・発色層30の配置領域でもある。
【0047】
第1の実施例による表示素子は、発光・消光表示、及び、発色・消色表示が可能なデュアルモードの表示素子であり、表示は上側基板10側から観察される。
【0048】
両基板10、20間(ITO電極12、22間)に交流電圧を印加したとき、発光・発色層30において発光が生じる。この場合、発光は電極12、22近傍で生じ、電極12近傍で生じた発光が観察者に視認される。両基板10、20間への直流電圧の印加により、発光・発色層30は、上側基板10(ITO電極12)側で発色する。
【0049】
第1の実施例による表示素子は、発光・発色層30の上側基板10側に光散乱層13を備える。光散乱層13は、たとえば酸化金属粒子(実施例においてはチタニア)で構成された白色層である。光散乱層13により、発光・発色層30から上側基板10側に進行する光が散乱され、バルクの電解液は直接的には観察されない。こうして光散乱層13は、たとえば発光・発色層30に含まれるルテニウム錯体の黄色を遮蔽し、目立ちにくくする。このため初期状態において白色の表示を得ることができる。反射表示時でも白色表示が可能である。反射表示初期状態における白色度が増す結果、高い発消色コントラストを得ることができる。発光表示においても、非発光時の白色率が向上する。このように、第1の実施例による表示素子によれば、高品位の表示を実現することができる。
【0050】
図2及び
図3は、第1の実施例による表示素子の表示部分の外観写真である。
図2は、上側及び下側基板10、20間(ITO電極12、22間)に交流電圧を印加して発光表示を行ったときの外観を示し、
図3は、両基板10、20間に直流電圧を印加して発色表示を行ったときの外観を示す。
【0051】
上側基板10の界面付近(ITO電極12と光散乱層13の間付近)で発光及び発色が生じていた。また、発光表示の場合も発色表示の場合も、ともに明るい表示が得られている。なお、
図3に示す写真のカラー画像においては、マゼンタの発色が得られており、光散乱層13の効果が認められる。
【0052】
本願発明者らは、光散乱層13を備えない点で第1の実施例と異なる、比較例による表示素子を作製し、両者の比較を行った。比較例の作製条件は、光散乱層13を形成しない点を除けば、第1の実施例の作製条件と同一である。その結果、第1の実施例による表示素子は、比較例による表示素子よりも高輝度で発光が行われることがわかった。
【0053】
図4は、第1の実施例による表示素子において、光散乱層13が形成された部分と、形成されていない部分につき、発光輝度の比較を行った結果を示す写真である。写真の上側は、光散乱層13が形成された部分、下側は、光散乱層13が形成されていない部分を示す。光散乱層13が形成された部分の輝度が明らかに高い。原因は不明だが、光散乱層13の存在により、発光輝度が増加することがわかる。
【0054】
本願発明者らは、発色・消色表示(反射表示)についても、第1の実施例による表示素子の表示は、比較例による表示素子の表示より明るいことを確かめた。また、第1の実施例による表示素子において、光散乱層13が形成された部分は、形成されていない部分より、明るい発色・消色表示が行われることも確認した。明るい反射表示が実現されるのは、光散乱層13が上側基板10(観察者側)から表示素子に入射する光を散乱するためである。
【0055】
第1の実施例による表示素子は、発光輝度が高く、明るい発光・消光表示を行うことができる。また、明るい発色・消色表示を行うことも可能である。この点でも、第1の実施例による表示素子は、高品位の表示を実現することができる。発光・消光表示においても、発色・消色表示においても、表示が高輝度で行われることから、低電圧駆動が可能となる。このため第1の実施例による表示素子は、長寿命を実現可能な表示素子である。
【0056】
図5A〜
図5Cは、第2の実施例による表示素子の製造方法を示す概略図である。第1の実施例は、バルク型の表示素子であったが、第2の実施例は界面型の表示素子である。
【0057】
図5Aを参照する。一対のITO膜付ガラス基板11、21を準備し、それぞれの基板のITO膜をフォトリソ工程にてパターニングし、ガラス基板11、21上にITO電極12、22を形成する。こうしてガラス基板11、21上にITO電極12、22を備える上側及び下側基板10、20が作製される。
【0058】
図5Bを参照する。上側基板10のITO電極12上にエレクトロクロミック材料を含む発色層14を形成する。
【0059】
第2の実施例においては、発色層14として、電解重合により三酸化タングステン(WO
3)膜を形成した。酸化モリブデン膜、酸化タングステン−モリブデン複合膜、酸化バナジウム膜、酸化イリジウム膜、二酸化マンガン膜、酸化ニッケル膜等とすることも可能である。ビオロゲン系、スチリル系化合物等の有機系材料を用いて膜を形成することもできる。消色(透明)−発色(着色)状態を切り替え可能なエレクトロクロミック材料膜であればよい。膜形成は真空蒸着法、スパッタ法(RFマグネトロンスパッタ法)、メッキ法、LB法、各種印刷法(スクリーン印刷、スピンコート、ダイコート等)により行ってもよい。
【0060】
なお緻密な膜構造より、アモルファスで、内部に多くの隙間をもつ構造が望ましい。積極的に隙間を設けるため、微小な径の粒子を分散させてもよい。第2の実施例においては、WO
3膜の成膜後、350℃で30分の熱処理を行った。
【0061】
発色層14上を含む上側基板10上に、光散乱層13を形成する。第1の実施例と同様に、光散乱層13としてTiO
x膜を、印刷法にて厚さ3000Å〜4000Åに形成した。
【0062】
図5Cを参照する。たとえば50μm径のギャップコントロール剤を、上側基板10、下側基板20の一方側に、一例として1個〜4個/mm
2となるように散布する。また他方側に、紫外線+熱硬化タイプのシール材40を用いて、メインシールパターンを形成する。
【0063】
次に、エレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液を、両基板10、20間に封入する。
【0064】
たとえばODF工程を用いる。エレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液を、上側基板10、下側基板20の片側基板側に、ディスペンサを用いて適量滴下する。
【0065】
真空中、大気中、もしくは窒素雰囲気中で、両基板10、20の重ね合わせを行い、紫外線を、たとえば21J/cm
2のエネルギ密度でシール材40に照射し、シール材40を硬化する。
【0066】
電解液を上側及び下側基板10、20間に封入する工程において、電解液は光散乱層13に浸透する。
【0067】
エレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液は、エレクトロケミカルルミネセンス化合物材料、支持電解質、溶媒などにより構成される。
【0068】
エレクトロケミカルルミネセンス化合物材料は、電気化学的な酸化還元反応によって発光する材料であれば、特段の制限はない。たとえば「ビピリジン誘導体やフェナントロリン誘導体等の配位子を有するルテニウム錯体及び希土類錯体(対イオンとしてヘキサフルオロリン酸、ハロゲン等を有する)」やPVB(ポリビニルブチラール)、DPA(9,10−ジフェニルアントラセン)、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムのようなものを含むTBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)等を好適に用いることができる。
【0069】
溶媒は、発光材料を含ませることができるものであればよい。たとえばNMP溶液等を好適に使用することができる。発光材料の濃度は、特に制限されないが、5M以下であることが望ましく、1mM〜1Mであることがより望ましく、10mM〜100mMであることが一層望ましい。
【0070】
支持電解質は、溶媒中でイオンを効率的に生成できるものであれば限定されない。たとえば、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウムのようなものを含む過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラ−n−アルキルアンモニウム、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヨウ化テトラ−n−アルキルアンモニウム、ハロゲン化テトラ−n−アルキルアンモニウム、及び、陽イオンがアルカリ金属イオン、アルキルアンモニウムイオンで、陰イオンがトリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンからなる塩を用いることができる。
【0071】
図5Cは、第2の実施例による表示素子の概略的な断面図である。第2の実施例による表示素子は、平行に離間して対向配置された上側基板(表示用基板)10、下側基板20、上側基板10上に形成された発色層14、一対の基板10、20間に配置された発光層31、及び、発光層31内の上側基板10側に形成された光散乱層13を含む。
【0072】
上側基板10は、ガラス基板11、及びガラス基板11上に形成されたITO電極12を含む。
【0073】
下側基板20は、ガラス基板21、及びガラス基板21上に形成されたITO電極22を含む。
【0074】
発色層14は、エレクトロクロミック材料を含んで構成され、上側基板10のITO電極12上に形成される。
【0075】
発光層31は、エレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液で構成される。発色層14及び発光層31は、上側基板10、下側基板20間の、シール材40に囲まれた領域内に形成される。
【0076】
光散乱層13は、光を散乱する性質を有し、発光層31から上側基板10側に進行する光を散乱させるとともに、上側基板10から発光層31側に進行する光を散乱させる。
【0077】
なお、
図5Cにおいては、発光層31と光散乱層13の形成領域が相互に排斥しあう関係にあるように示しているが、発光層31を構成する電解液は、光散乱層13に浸透しているため、光散乱層13の形成領域は、発光層31の配置領域でもある。
【0078】
第2の実施例による表示素子も、第1の実施例と同様、発光・消光表示、及び、発色・消色表示が可能なデュアルモードの表示素子であり、表示は上側基板10側から観察される。
【0079】
両基板10、20間(ITO電極12、22間)に交流電圧を印加したとき、発光層31において発光が生じる。発光は基板10、20側で生じ、基板10側で生じた発光が観察者に視認される。発色層14は、両基板10、20間への直流電圧の印加により発色する。
【0080】
第2の実施例による表示素子も第1の実施例と同様の効果を奏することができる。
【0081】
図6A〜
図6Dに、変形例による表示素子の概略的な断面図を示す。
【0082】
図6Aに示す変形例は、たとえば下側基板20が、相互に電気的に独立なITO電極22a、22bを含む点で、
図1Cに示す第1の実施例と異なる。
図6Aに示す例においては、ITO電極22a、22b間に電圧、たとえば交流電圧を印加することで発光表示が行われ、ITO電極12とITO電極22a、22bとの間に直流電圧を印加することで発色表示が行われる。発色は上側基板10側で生じる。表示は上側基板10側から観察される。
【0083】
図6Bに示す変形例は、バルク型ではなく界面型の表示素子である点で
図6Aの変形例と相違する。観察側である上側基板10のITO電極12上にエレクトロクロミック材料を含んで構成される発色層14が形成される。発光層31はエレクトロケミカルルミネセンス材料を含む電解液層である。
【0084】
たとえばITO電極22a、22b間に交流電圧を印加することで発光表示が行われ、ITO電極12とITO電極22a、22bとの間に直流電圧を印加することで発色表示が行われる。
【0085】
図6C及び
図6Dに示すのは、発光表示を行い発色表示を行わない表示素子であり、上側基板10、下側基板20の一方のみに電極を備える変形例である。たとえば
図6Cに示す例においては、下側基板20のITO電極22a、22b間に交流電圧を印加して発光表示を行い、
図6Dに示す例においては、上側基板10のITO電極12a、12b間に交流電圧を印加して発光表示を行う。ともに表示は上側基板10側から観察される。
【0086】
以上、実施例及び変形例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
たとえば、実施例及び変形例においては、発光を行う層の、表示が観察される一方基板側に光散乱層を形成したが、上側及び下側基板の双方側から表示が観察される表示素子とし、光散乱層を上側及び下側基板の一方または双方に形成することもできる。少なくとも一方基板側から表示が観察され、発光層の、少なくとも当該一方基板側に、光散乱層が形成されていればよい。
【0088】
また、たとえば
図1Cに示すバルク型の表示素子においては、電解液層が発光材料と発色材料を含む構成としたが、発光材料のみを含む電解液層とすることもできる。
【0089】
更に、たとえば
図5Cに示す界面型の表示素子においては、発色層上を含む上側基板上に、光散乱層を形成したが、発色層を全面に形成し、発色層上(上側基板上方)に光散乱層を形成してもよい。
【0090】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。