【実施例1】
【0024】
図1〜3に示す加圧工具
100は、ケーブル端などに圧着端子を圧着するために用いる圧着工具である。この圧着工具(加圧工具)
100は、グリップ可能な棒状の本体部12と、その先端に固定された取付部14と、この取付部14に装着された交換工具16とを有する。
【0025】
取付部14は、本体部12の先端方向に平行かつ間隙を空けて延びる前後一対の足部18(18a、18b)を備える(
図4(A))。これらの足部18の間に加圧用の交換工具16を後記するロッキングボルト20により着脱可能としたものである。すなわちロッキングボルト20は、足部18a、18bと交換工具16とを貫通して交換工具16を固定するロック位置(
図4)と、一方(背面側)の足部18bと交換工具16から脱出して他方(正面側)の足部18aに保持されたリリース位置(
図5)との間で移動可能である。
【0026】
工具本体部12には、充電可能な電池と、電動モータと、この電動モータにより駆動される油圧ポンプと、制御回路(いずれも図示せず)と、この油圧ポンプの油圧により突出方向に駆動される
加圧部材22(
図2、3)とが組み込まれている。ここに本体部12の上端にはシリンダケース24が固定され、ここに収納されたシリンダ26が前記足部18a、18bの間から上方へシリンダロッドを突出させる。このシリンダロッドが前記
加圧部材22となっている。
【0027】
この実施例の交換工具16は圧着端子の加圧工具であり、ロッキングボルト20を中心にして鋏状に揺動可能な一対の顎部材28、28と備える。各顎部材28にはロッキングボルト20の貫通孔30が形成され、両顎部材28がこの貫通孔30を中心にして回動するように保持されている。すなわち両顎部材28は、下方が互いに近接するようにコイルバネ(図示せず)により付勢されて組み立てられている。
【0028】
これら顎部材28の下部には
図2に示す解放時(非加圧時)に、外側に下降する下斜面32と、この下斜面32の内側に連続して上方に延びる上斜面34が形成されている。前記加圧部材22の上端にはこれら下斜面32と上斜面34に転接する一対のローラ36、36が取り付けられている。このため加圧部材22が上昇すると、ローラ36、36は
図2に示すように下斜面32、32を外側に押し広げ、さらに上昇すると上斜面34をさらに押し広げる。
【0029】
顎部材28、28の上部対向面には、圧着端子を挟む凹部38がそれぞれ形成されている。前記のように顎部材28、28の下部が加圧部材(ピストンロッド)22によって外側に押し開かれることによって、それぞれの凹部38が接近しこの間に挟まれた圧着端子(図示せず)を加圧し、圧着する。
【0030】
次にロッキングボルト20を説明する。ロッキングボルト20は、ロッド状のシャンク40と、この一端に取り付けられたボルト頭42とを有する。シャンク40は
図6、7に示すように、そのボルト頭42が取り付けられる端部外周が切削され、この切削部44には
図4、5に示すようにボルト頭42が嵌合され、さらにボルト頭42と切削部44を貫通する小孔46にピン48が圧入されて固定されている。
【0031】
シャンク40の外周には、ボルト頭42側(切削部44側)にロッキング用の環状溝50が一対対称に形成されている。これらの環状溝50は
図7(B)に示すように、シャンク40の中心軸回りに対称位置に形成された不連続部52、52を挟んで対称に形成されている。シャンク40の中心軸回りの対称位置であって各環状溝50の周方向の角には、シャンク40の他端(ボルト先端)側に向かって延びるリリース溝54、54が連続して形成されている。
【0032】
ロッキング用環状溝50とリリース溝54とが交わる折曲部の内角側、すなわち環状溝50のボルト先端側の側壁からリリース溝54につながる角部には、環状溝50のボルト先端側の側壁からボルト頭42側に凸となる凸部56が形成されている(
図7)。この凸部56は本発明の抵抗付与部となる。
【0033】
これらリリース溝54、54の底はボルト先端側に向かって次第に浅くなる斜面となっている。このリリース溝54よりもシャンク40のボルト先端側には、抜け止め用環状溝58が形成されている。この環状溝58は、そのボルト頭42側の内壁がテーパ状の斜面60となっている。
【0034】
このロッキングボルト20は、その先端側からリリース用のコイルバネ62装着して、正面側の足部18aの貫通孔30に正面側から挿入される。この時に貫通孔30の内面に突出するロッキングピン64が環状溝50、56、リリース溝54のいずれかに係入する。このロッキングピン64は、
図4(A)、
図5(A)、(C)に示すように、足部18aの先端から貫通孔30を横断して穿削した小孔66に、ピン付勢用のコイルバネ68と共に装填され、貫通孔30内に突出するように付勢されている。ここにロッキングピン64の先端付近は、環状溝50、56、リリース溝54に係入可能となるようにその径が設定されている。
【0035】
ロッキングボルト20を装着すると、リリース用のコイルバネ62は、一端がシャンク40とボルト頭42との間の間隙に保持され、他端が足部18a側の外面に保持され、ロッキングボルト20に正面方向への復帰習性が付与される。この時足部18aの小孔
70に先端から細いロッド(図示せず)を挿入し、シャンク40の抜け止め用環状溝58に開口する小孔
70を通してロッキングピン64を押し込みつつシャンク40を挿入する。この結果ロッキングピン64は抜け止め用環状溝58に係入する。この状態は
図5(C)に示すリリース時の状態である。なおこの小孔
70はロッキングピン64よりも小径で、このピン64が小孔
70内に進入することはない。
【0036】
この状態から取付部14の足部18a、18bの間に交換工具16をセットして、交換工具16の貫通孔30を足部18の貫通孔30に位置合わせし、ロッキングボルト20をリリース用のコイルバネ62を圧縮しつつさらに押し込むと、ロッキングピン64は環状溝58のテーパー状斜面60によって環状溝58から押し出される。このためロッキングピン64はシャンク40の外周面に乗り上げる。この状態ではロッキングボルト20は回動自在である。
【0037】
ロッキングボルト20をさらに押し込み、
図4(B)に示すように反時計方向に回せば、ロッキングピン64がロッキング用環状溝50に係入する。この時、ロッキングボルトの角度位置がロッキングピン64がすでに環状溝50に係入する角度にある時は、ロッキングボルト20は回動することは必要ないことになる。
【0038】
この状態でロッキングボルト20は、ロッキング用環状溝50がロッキングピン64に係合して、リリース方向への移動が規制される。すなわち
図4に示すロック位置となる。この状態ではロッキングボルト20は、環状溝50の凸部56にロッキングピン64が当接するまでの範囲内で回動可能である。すなわちロッキングボルト20はロック状態でもこの範囲内で回動可能である。
【0039】
交換工具16を交換する際には、ロッキングボルト20を押し込んでロッキングピン64と凸部56の干渉を防ぎつつ
図5(B)で時計方向(RELEASE方向)に回動すれば、ロッキングピン64は凸部56を乗り越えてリリース溝54に入る。この位置でロッキングボルト20から指を離しフリーにすれば、ロッキングボルト20はリリース用コイルバネ62によって正面方向に押し戻される。
【0040】
このためリリース溝54に係合したロッキングピン64は、リリース溝54の底面の斜面によって押し上げられ、ロッキングピン64はこのリリース溝54から脱出してシャンク40の外周面に接触する。そしてロッキングピン64は抜け止め用環状溝58に係合して、
図5(C)に示すリリース位置に戻る。この状態ではロッキングボルト20は交換工具16から脱出するから、交換工具16の交換が可能である。