特許第6032707号(P6032707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032707イソプレノイドの製造方法、イソプレノイド、カルス、カルスの誘導方法、及びカルスの培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032707
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】イソプレノイドの製造方法、イソプレノイド、カルス、カルスの誘導方法、及びカルスの培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/04 20060101AFI20161121BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20161121BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20161121BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C12P7/04
   C12N5/00
   C08L7/00ZBP
   C08L101/16
【請求項の数】55
【全頁数】101
(21)【出願番号】特願2012-553728(P2012-553728)
(86)(22)【出願日】2012年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2012050804
(87)【国際公開番号】WO2012099100
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-8143(P2011-8143)
(32)【優先日】2011年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-200924(P2011-200924)
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239546(P2011-239546)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239547(P2011-239547)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239548(P2011-239548)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239549(P2011-239549)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239550(P2011-239550)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-239551(P2011-239551)
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 明里
(72)【発明者】
【氏名】細川 友宏
(72)【発明者】
【氏名】黒田 智
(72)【発明者】
【氏名】井之上 ゆき乃
(72)【発明者】
【氏名】大谷 典正
【審査官】 長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−278759(JP,A)
【文献】 特開2007−215518(JP,A)
【文献】 特開2010−161989(JP,A)
【文献】 天然有機化合物討論会講演要旨集,2006年,Vol. 48,pp. 577-582
【文献】 園芸学会雑誌,2001年,Vol. 70, No. 2,pp. 229-231
【文献】 植物組織培養,1995年,Vol.12, No.3,p.297-302
【文献】 平成18年度化学系学協会東北大会プログラムおよび講演予稿集,2006年 9月22日,第150頁(3P051)
【文献】 Plant Cell Reports,1988年,Vol. 7, No. 3,p. 197-199
【文献】 日本化学会第87春季年会講演予稿集II,2007年,Vol. 87,pp. 1485 (2PB-167)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/04
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレノイド産生植物のカルスによりイソプレノイドを生合成するイソプレノイドの製造方法であって、
イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物、Sonchus属に属する植物、びTaraxacum属に属する植物からなる群より選択される少なくとも1種の植物であるイソプレノイドの製造方法。
【請求項2】
イソプレノイド産生植物の組織片からカルスを誘導し、カルスによりイソプレノイドを生合成する請求項1記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項3】
イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する請求項2記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項4】
イソプレノイド産生植物の組織片からカルスを誘導した後、カルスを培養することにより、カルスによりイソプレノイドを生合成する請求項1〜3のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項5】
イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、カルスを生育培地中で培養して増殖させる増殖工程と、増殖工程により増殖させたカルスを生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する生産工程とを含む請求項1〜4のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項6】
生産工程が、増殖工程により増殖させたカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積されるようにコントロールする生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する工程である請求項5記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項7】
生産工程が、増殖工程により増殖させたカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積され、蓄積されたイソプレノイドが細胞外に放出されるようにコントロールする生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する工程である請求項5又は6記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項8】
誘導培地中の窒素濃度が0〜100mMである請求項3記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項9】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMである請求項3又は8記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項10】
誘導培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%である請求項3、8又は9のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項11】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMである請求項3又は8〜10のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項12】
植物生長ホルモンがオーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンである請求項3又は8〜11のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項13】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lである請求項12記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項14】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lである請求項12記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項15】
誘導培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項3又は8〜14のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項16】
誘導培地のpHが4.0〜10.0である請求項3又は8〜15のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項17】
培養温度が0〜40℃である請求項3又は8〜16のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項18】
生育培地中の窒素濃度が0〜100mMである請求項5記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項19】
生育培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMである請求項5又は18記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項20】
生育培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%である請求項5、18又は19のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項21】
生育培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMである請求項5又は18〜20のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項22】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lである請求項5又は18〜21のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項23】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lである請求項5又は18〜22のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項24】
生育培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項5又は18〜23のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項25】
生育培地のpHが4.0〜10.0である請求項5又は18〜24のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項26】
培養温度が0〜40℃である請求項5又は18〜25のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項27】
生産培地中の窒素濃度が0〜100mMである請求項5記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項28】
生産培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMである請求項5又は27記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項29】
生産培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%である請求項5、27又は28のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項30】
生産培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMである請求項5又は27〜29のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項31】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lである請求項5又は27〜30のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項32】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lである請求項5又は27〜31のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項33】
生産培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項5又は27〜32のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項34】
生産培地のpHが4.0〜10.0である請求項5又は27〜33のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項35】
培養温度が0〜40℃である請求項5又は27〜34のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項36】
イソプレノイド産生植物のカルスを液体培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する請求項1記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項37】
イソプレノイド産生植物のカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積されるようにコントロールする液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する請求項36記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項38】
イソプレノイド産生植物のカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積され、蓄積されたイソプレノイドが細胞外に放出されるようにコントロールする液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する請求項36又は37に記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項39】
生産培地中の窒素濃度が0〜100mMである請求項37又は38に記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項40】
生産培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMである請求項37〜39のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項41】
生産培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%である請求項37〜40のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項42】
生産培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMである請求項37〜41のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項43】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lである請求項37〜42のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項44】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lである請求項37〜43のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項45】
生産培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項37〜44のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項46】
生産培地のpHが4.0〜10.0である請求項37〜45のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項47】
培養温度が0〜40℃である請求項36〜46のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項48】
培地中のイソプレノイドの濃度が0.001mg/l以上となる請求項36〜47のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項49】
オーキシン系植物ホルモンが、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸、インドール酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、4−フルオロフェノキシ酢酸、2−メトキシ−3,6−ジクロロ安息香酸、2−フェニル酸、ピクロラム、及びピコリン酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項12記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項50】
サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンチニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリポシド、及びジヒドロゼアチンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項12記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項51】
炭素源が、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、エリスリトール、及びマルトースからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項52】
イソプレノイド産生植物が、パラゴムノキ、ノゲシ、ンポポ、及びカンサイタンポポからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜51のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項53】
組織片が、葉、茎、根、芽、花弁、子葉、胚軸、葯、及び種子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2〜35、49〜52のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項54】
前記イソプレノイドに含まれるイソプレンユニット中の1,4−シス構造の含有量が10モル%以上である請求項1〜53のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【請求項55】
カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量が、カルス乾燥質量に対し、0.005質量%以上である請求項1〜54のいずれかに記載のイソプレノイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプレノイドの製造方法、該製造方法により得られるイソプレノイド、新規なカルス、該カルスの誘導方法、及び該カルスの培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムは、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)や桑科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培し、その植物体が有する乳管細胞で天然ゴムを生合成させ、該天然ゴムを植物から手作業により採取することにより得られる。
【0003】
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴムは、パラゴムノキを唯一の採取源としている。パラゴムノキは東南アジアや南米などの限られた地域でのみ生育可能な植物である。更に、パラゴムノキは、植樹からゴムの採取が可能な成木になるまでに7年程度を要し、また、天然ゴムを採取できる期間は20〜30年である。今後、開発途上国を中心に天然ゴムの需要の増大が見込まれているが、上述の理由によりパラゴムノキによる天然ゴムの大幅な増産は困難である。そのため、天然ゴム資源の枯渇が懸念されており、パラゴムノキの成木以外の安定的な天然ゴム(イソプレノイド)の供給源が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、パラゴムノキの成木に頼らない安定的なイソプレノイドの製造方法、該製造方法により得られるイソプレノイドを提供することを目的とする。また、イソプレノイドを製造可能な新規なカルス、該カルスの誘導方法、該カルスの培養方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来から、完全な植物体でなくとも、カルスなどの未分化細胞を用いて、一部の二次代謝物を生合成できることは知られていた。天然ゴム(イソプレノイド)も二次代謝物ではあるが、天然ゴムは乳管細胞という特殊な細胞により生合成されることが知られており、乳管細胞以外の細胞(例えば、カルス)では、天然ゴムは生合成できないものと考えられていた。本発明者らは、鋭意検討した結果、イソプレノイド産生植物の組織片から誘導したカルスにより、イソプレノイド(天然ゴム)を生合成できることを見出した。この発見は、当業者の常識を覆す驚くべき発見である。
次に、本発明者らは、様々なイソプレノイド産生植物由来のカルスの取得を試みることとした。しかし、イソプレノイド産生植物のカルスやカルスへの誘導条件の詳細は明らかではなかった。一般に、カルスへの誘導条件やカルスの培養条件は、植物種により異なることが知られている。そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、カルスへの誘導条件が明らかでない複数のイソプレノイド産生植物から新規なカルスを取得することに成功した。そして、カルスへの誘導条件やカルスの培養条件の検討を行い、様々な知見を見出し、本発明を完成させた。
また、イソプレノイド産生植物のカルスを液体培地で培養することで、培養液中にイソプレノイドが放出されることも見出した。これは、培養液からイソプレノイドが得られることを意味しており、連続培養の可能性があることを示す画期的な発見である。
【0006】
すなわち、本発明は、イソプレノイド産生植物のカルスによりイソプレノイドを生合成するイソプレノイドの製造方法に関する。
【0007】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物の組織片からカルスを誘導し、カルスによりイソプレノイドを生合成することが好ましい。
【0008】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導することが好ましい。
【0009】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物の組織片からカルスを誘導した後、カルスを培養することにより、カルスによりイソプレノイドを生合成することが好ましい。
【0010】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、カルスを生育培地中で培養して増殖させる増殖工程と、増殖工程により増殖させたカルスを生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する生産工程とを含むことが好ましい。
【0011】
上記生産工程が、増殖工程により増殖させたカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積されるようにコントロールする生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する工程であることが好ましい。
【0012】
上記生産工程が、増殖工程により増殖させたカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積され、蓄積されたイソプレノイドが細胞外に放出されるようにコントロールする生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する工程であることが好ましい。
【0013】
上記誘導培地中の窒素濃度が0〜100mMであることが好ましい。上記誘導培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMであることが好ましい。上記誘導培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%であることが好ましい。上記誘導培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMであることが好ましい。
【0014】
上記植物生長ホルモンがオーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンであることが好ましい。
【0015】
上記誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lであることが好ましい。上記誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0016】
上記誘導培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらは必須成分ではない。
【0017】
誘導培地のpHが4.0〜10.0であることが好ましい。培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0018】
上記生育培地中の窒素濃度が0〜100mMであることが好ましい。上記生育培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMであることが好ましい。上記生育培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%であることが好ましい。上記生育培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMであることが好ましい。
【0019】
上記生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lであることが好ましい。上記生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0020】
上記生育培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらは必須成分ではない。
【0021】
上記生育培地のpHが4.0〜10.0であることが好ましい。培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0022】
上記生産培地中の窒素濃度が0〜100mMであることが好ましい。上記生産培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMであることが好ましい。上記生産培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%であることが好ましい。上記生産培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMであることが好ましい。
【0023】
上記生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lであることが好ましい。上記生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0024】
上記生産培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらは必須成分ではない。
【0025】
上記生産培地のpHが4.0〜10.0であることが好ましい。培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0026】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物のカルスを液体培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成することが好ましい。
【0027】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物のカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積されるようにコントロールする液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成することが好ましい。
【0028】
上記イソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物のカルスを、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積され、蓄積されたイソプレノイドが細胞外に放出されるようにコントロールする液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成することが好ましい。
【0029】
上記生産培地中の窒素濃度が0〜100mMであることが好ましい。上記生産培地中の微量無機塩類の濃度が0〜2mMであることが好ましい。上記生産培地中の炭素源の濃度が0.1〜10質量%であることが好ましい。上記生産培地中のカルシウムイオン濃度が0〜10mMであることが好ましい。
【0030】
上記生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/lであることが好ましい。上記生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0031】
上記生産培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらは必須成分ではない。
【0032】
上記生産培地のpHが4.0〜10.0であることが好ましい。培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0033】
上記イソプレノイドの製造方法は、培地中のイソプレノイドの濃度が0.001mg/l以上となることが好ましい。
【0034】
上記オーキシン系植物ホルモンが、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸、インドール酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、4−フルオロフェノキシ酢酸、2−メトキシ−3,6−ジクロロ安息香酸、2−フェニル酸、ピクロラム、及びピコリン酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
上記サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンチニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリポシド、及びジヒドロゼアチンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
上記炭素源が、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、エリスリトール、及びマルトースからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
上記イソプレノイド産生植物が、Hevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物であることが好ましい。
【0038】
上記イソプレノイド産生植物が、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0039】
上記組織片が、葉、茎、根、芽、花弁、子葉、胚軸、葯、及び種子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
上記イソプレノイドに含まれるイソプレンユニット中の1,4−シス構造の含有量が10モル%以上であることが好ましい。
【0041】
上記イソプレノイドの重量平均分子量が1000以上であることが好ましい。
【0042】
上記イソプレノイドの重量平均分子量が10000以上であることがより好ましい。
【0043】
上記イソプレノイドの重量平均分子量が100000以上であることが更に好ましい。
【0044】
上記イソプレノイドの製造方法は、カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量が、カルス乾燥質量に対し、0.005質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本発明はまた、上記イソプレノイドの製造方法により得られるイソプレノイドに関する。
【0046】
本発明はまた、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することにより誘導されたカルスに関する。
【0047】
上記イソプレノイド産生植物が、Hevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物であることが好ましい。
【0048】
上記イソプレノイド産生植物が、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種の植物であることが好ましい。
【0049】
本発明はまた、上記イソプレノイドを産生するカルス(イソプレノイド産生用カルス)に関する。
【0050】
本発明はまた、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導するカルスの誘導方法に関する。
【0051】
上記誘導培地中の窒素濃度が0〜100mM、微量無機塩類の濃度が0〜2mM、炭素源の濃度が0.1〜10質量%、カルシウムイオン濃度が0〜10mM、オーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/l、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0052】
上記誘導培地が、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0053】
上記誘導培地のpHが4.0〜10.0、培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0054】
上記カルスの誘導方法は、イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合が90質量%以上であることが好ましい。
【0055】
上記イソプレノイド産生植物が、Hevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物であることが好ましい。
【0056】
上記イソプレノイド産生植物が、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種の植物であることが好ましい。
【0057】
本発明はまた、イソプレノイド産生植物のカルスを、植物生長ホルモン及び炭素源を含む生育培地中で培養することによりカルスを生育させるカルスの培養方法に関する。
【0058】
上記生育培地中の窒素濃度が0〜100mM、微量無機塩類の濃度が0〜2mM、炭素源の濃度が0.1〜10質量%、カルシウムイオン濃度が0〜10mM、オーキシン系植物ホルモンの濃度が0〜20mg/l、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0〜15mg/lであることが好ましい。
【0059】
上記生育培地のpHが4.0〜10.0、培養温度が0〜40℃であることが好ましい。
【0060】
上記生育培地が、ジャスモン酸、モノテルペン化合物、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0061】
上記生育培地中のモノテルペン化合物の濃度が、0.01〜1質量%であることが好ましい。上記生育培地中の糖アルコールの濃度が、0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0062】
上記モノテルペン化合物が、D−リモネン又はα−ピネンであり、糖アルコールが、エリスリトールであることが好ましい。
【0063】
上記カルスの培養方法は、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率が1.5倍以上であることが好ましい。
【0064】
上記イソプレノイド産生植物が、Hevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物であることが好ましい。
【0065】
上記イソプレノイド産生植物が、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種の植物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、イソプレノイド産生植物のカルスによりイソプレノイドを生合成するイソプレノイドの製造方法であるので、パラゴムノキの成木に頼らずに、イソプレノイドを供給できる。さらに、カルスの生合成によりイソプレノイドが得られるため、例えば、カルスをタンク内で液体培養することにより、天候や季節等に影響されずに安定的にイソプレノイドを供給できる。また、カルスの液体培養は、カルスを再分化させた組織(例えば、不定根等)の液体培養よりも制御が容易であるため、液体培養のスケールアップも比較的容易である。そのため、安定的にイソプレノイドを量産できる。また、植物体は各部位(葉、根、茎など)により、生成するイソプレノイドの含有量や分子量などが異なることが予想されるが、カルスを均一化し、均一化したカルスによりイソプレノイドを生合成することにより、得られるイソプレノイドの品質を一定に保つことができる。
また、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを効率的、安定的に誘導できる。そして、誘導された新規なカルスは、イソプレノイドの製造に優れている。さらに、イソプレノイド産生植物のカルスを、植物生長ホルモン及び炭素源を含む生育培地中で培養することによりカルスを効率的、安定的に生育できる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明のイソプレノイドの製造方法は、イソプレノイド産生植物のカルスによりイソプレノイドを生合成する製造方法である。
具体的には、イソプレノイド産生植物の組織片から誘導されたカルスを培養することにより、カルスによりイソプレノイドを生合成すればよい。
より具体的には、イソプレノイド産生植物の組織片からカルスを誘導し、該カルスを培養することにより、カルスによりイソプレノイドを生合成すればよい。
【0068】
誘導したカルスをそのまま培養してイソプレノイドを製造することとしてもよいが、より多量のイソプレノイドが得られるという理由から、誘導したカルスをまず増殖させ、増殖させたカルスによりイソプレノイドを製造することが好ましい。
【0069】
具体的には、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、カルスを生育培地中で培養して増殖させる増殖工程と、増殖工程により増殖させたカルスを生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する生産工程とを含む製造方法が好ましい。
【0070】
カルスの培養は、固体培地で行っても液体培地で行ってもよいが、好適にイソプレノイドを製造できるという理由から、液体培地が好ましい。なお、増殖工程及び生産工程において液体培養を行う場合には、カルスの増殖が比較的速いため、増殖工程と生産工程を明確に分けずに、1つの工程でカルスを増殖させつつ、カルスによりイソプレノイドを生合成することとしてもよい。すなわち、液体培養を行う場合には、カルスを液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する生産工程を含む製造方法が好ましく、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する誘導工程と、カルスを液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する生産工程とを含む製造方法がより好ましい。
【0071】
(誘導工程)
誘導工程では、例えば、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することによりカルスを誘導する。
【0072】
イソプレノイド産生植物としては、イソプレノイドを産生可能な植物であれば特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;ノゲシ(Sonchus oleraceus)、オニノゲシ(Sonchus asper)、ハチジョウナ(Sonchus brachyotus)等のSonchus属;セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)、アキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. asiatica)、ミヤマアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa)、キリガミネアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. leipcarpa f. paludosa)、オオアキノキリンソウ(Solidago virgaurea subsp. gigantea)、オオアワダチソウ(Solidago gigantea Ait. var. leiophylla Fernald)等のSolidago属;ヒマワリ(Helianthus annuus)、シロタエヒマワリ(Helianthus argophyllus)、ヘリアンサス・アトロルベンス(Helianthus atrorubens)、ヒメヒマワリ(Helianthus debilis)、コヒマワリ(Helianthus decapetalus)、ジャイアントサンフラワー(Helianthus giganteus)等のHelianthus属;タンポポ(Taraxacum)、エゾタンポポ(Taraxacum venustum H.Koidz)、シナノタンポポ(Taraxacum hondoense Nakai)、カントウタンポポ(Taraxacum platycarpum Dahlst)、カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)等のTaraxacum属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parhenium argentatum)、レタス(Lactuca serriola)、ベンガルボダイジュ等が挙げられる。なかでも、Hevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物であることが好ましく、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0073】
なお、天然ゴムの唯一の採取源であるパラゴムノキの成木は、その生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、植物細胞であるカルスの培養により、ゴムを生産することにより、生産地域を限定することなく、広範囲での天然ゴムの採取が可能でとなる。さらに、パラゴムノキの成木は植樹からゴムの採取まで約7年を要するが、細胞培養は、数ヶ月の培養でゴム生産が可能であり、生育もより早い。
【0074】
また、草本類の中では、比較的高分子量のイソプレノイドが生合成されている可能性があるため、ノゲシはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。また、パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、ノゲシはヨーロッパ諸国や日本など、世界各地で自生しており、広範囲での栽培、採取が可能である。さらに、パラゴムノキは植樹からゴムの採取まで約7年を要するが、ノゲシは一年草であることから、生育もより早い。
【0075】
また、草本類の中では、比較的高分子量のイソプレノイドが生合成されている可能性があるため、ヒマワリはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。また、パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、ヒマワリはヨーロッパ諸国や日本など、世界各地で自生しており、広範囲での栽培、採取が可能である。さらに、パラゴムノキは植樹からゴムの採取まで約7年を要するが、ヒマワリは一年草であることから、生育もより早い。
【0076】
また、草本類の中では、比較的高分子量のイソプレノイドが生合成されている可能性があるため、セイタカアワダチソウはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。また、パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、セイタカアワダチソウは北アメリカや日本で自生しており、広範囲での栽培、採取が可能である。
【0077】
また、草本類の中では、比較的高分子量のイソプレノイドが生合成されている可能性があるため、カンサイタンポポはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。また、パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、カンサイタンポポは、日本の近畿地方以西の地域で多く自生しており、広範囲での栽培、採取が可能である。
【0078】
また、木本類の中では、比較的高分子量のイソプレノイドが生合成されている可能性があるため、イチジクはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。また、パラゴムノキはその生育可能な地域が東南アジアや南米に限定されるが、イチジクは暖帯から温帯の世界各地で自生しており、日本、アジア地域、地中海沿岸地域、アメリカと広範囲での栽培、採取が可能であり、イチジクはパラゴムノキに代わる天然ゴム源として期待できる。
【0079】
組織片としては、特に限定されないが、葉、茎、根、芽、花弁、子葉、胚軸、葯、及び種子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、葉、茎がより好ましい。
【0080】
誘導工程では、まず、イソプレノイド産生植物の組織片の表面を洗浄する。組織片として植物の内部にある組織を利用する場合は、例えば、磨き粉で洗浄しても良いが、界面活性剤を約0.1%含む水で洗浄してもよい。葉などを利用する場合は、軟らかいスポンジで表面を洗浄することが好ましい。
【0081】
次に、組織片を殺菌又は滅菌する。殺菌又は滅菌は、周知の殺菌剤、滅菌剤を用いて行うことができるが、エタノール、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましい。
【0082】
次に、殺菌又は滅菌した組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地中で培養することにより、カルスの誘導を行う。なお、誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、カルス化しやすいため、固体培養が好ましい。また、誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
【0083】
植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。
【0084】
オーキシン系植物ホルモンとしては、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸、インドール酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、4−フルオロフェノキシ酢酸、2−メトキシ−3,6−ジクロロ安息香酸、2−フェニル酸、ピクロラム、ピコリン酸等が挙げられる。なかでも、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酪酸が好ましい。
【0085】
イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸がより好ましく、ナフタレン酢酸が更に好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、ナフタレン酢酸がより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合、ナフタレン酢酸がより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合、ナフタレン酢酸がより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸がより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、ナフタレン酢酸がより好ましい。
【0086】
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンチニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリポシド、ジヒドロゼアチン等が挙げられる。なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましい。
【0087】
イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、ベンジルアデニンがより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合、ベンジルアデニンがより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、カイネチンがより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、ベンジルアデニンがより好ましい。
【0088】
炭素源としては、特に限定されず、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース等の糖類が挙げられる。また、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール等の糖アルコールであってもよい。なかでもスクロースが好ましい。
【0089】
特に、イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合、スクロース、グルコースが好ましく、スクロースがより好ましい。
【0090】
誘導培地としては、Whiteの培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Hellerの培地(Heller R, Bot.Biol.Veg.Paris 14 1−223(1953))、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Gamborg培地、B5培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましい。また、カルスの維持および細胞分裂の促進に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
【0091】
誘導培地は、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
モノテルペン化合物としては、D−リモネン、α−ピネン、β−ピネン、l−メントール、ゲラニオール、カラン、ピナン、ミルセン、オシメン、コスメン等が挙げられる。なかでも、D−リモネン、α−ピネンが好ましい。
【0092】
誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、ゼラチン、シリカゲル等が挙げられる。
【0093】
好適な誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は以下の組成である。
【0094】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0095】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
なお、本明細書において、微量無機塩類とは、ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、塩素、コバルト、チタン、バナジウム、アルミニウム、ケイ素等の培地に少量含有させる無機塩類を意味する。すなわち、微量無機塩類には、カルシウム、マグネシウム、カリウム等の主要無機塩類(培地に多量に含めなければ培養が成立しない無機塩類)は含まれない。上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0096】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0097】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは3mM以下である。
【0098】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下である。
【0099】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下である。
【0100】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0101】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0102】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。また、本明細書において、暗所とは、照度が0〜0.1lxであることを意味し、明所とは、照度が0.1lxを超えていることを意味する。
【0103】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0104】
(Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0105】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0106】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0107】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0108】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.1mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは3mM以下である。
【0109】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.2mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下である。
【0110】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.2mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下である。
【0111】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0112】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0113】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
【0114】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0115】
上述の条件のなかでも、照度が0〜0.1lx(暗所)で、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸又は2,4−ジクロロフェノキシ酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニン又はカイネチンで、炭素源がスクロース又はグルコースであることが特に好ましい。
【0116】
(Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0117】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0118】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0119】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0120】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは3mM以下である。
【0121】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは5mg/l以下である。
【0122】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
【0123】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0124】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0125】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
【0126】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0127】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンで、炭素源がスクロースであることが特に好ましい。
【0128】
(Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0129】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0130】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0131】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0132】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下である。
【0133】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下である。
【0134】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下である。
【0135】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0136】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0137】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
【0138】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0139】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンで、炭素源がスクロースであることが特に好ましい。
【0140】
(Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0141】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0142】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0143】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0144】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは3mM以下である。
【0145】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
【0146】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
【0147】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0148】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0149】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
【0150】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0151】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンであり、炭素源がスクロースで、その濃度(スクロース濃度)が3質量%以下であることが特に好ましい。
【0152】
(Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0153】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは20mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下である。
【0154】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
なお、本明細書において、微量無機塩類とは、ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、塩素、コバルト、チタン、バナジウム、アルミニウム、ケイ素等の培地に少量含有させる無機塩類を意味する。すなわち、微量無機塩類には、カルシウム、マグネシウム、カリウム等の主要無機塩類(培地に多量に含めなければ培養が成立しない無機塩類)は含まれない。上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0155】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0156】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.1mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下である。
【0157】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは1mg/l以上、特に好ましくは1.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは2.5mg/l以下である。
【0158】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは0.8mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下、最も好ましくは1.2mg/l以下である。
【0159】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0160】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0161】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜30℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
【0162】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0163】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンが2,4−ジクロロフェノキシ酢酸で、その濃度が1.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがカイネチンで、その濃度が0.8〜1.2mg/lであることが特に好ましい。
【0164】
(Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合の好適な誘導培地の組成を示す。
【0165】
誘導培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは20mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下である。
【0166】
誘導培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
上記微量無機塩類のなかでも、ホウ素、マンガン、亜鉛が好ましく、ホウ素、マンガン、亜鉛の合計濃度が上記微量無機塩類の好ましい濃度範囲内であることがより好ましい。
【0167】
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
【0168】
誘導培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.1mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下である。
【0169】
誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.05mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。
【0170】
誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは0.8mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下である。
【0171】
誘導培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0172】
誘導培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1×10−6質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下である。
【0173】
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜26℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。また、本明細書において、暗所とは、照度が0〜0.1lxであることを意味し、明所とは、照度が0.1lxを超えていることを意味する。
【0174】
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0175】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、その濃度が0.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンで、培養温度が20〜26℃であることが特に好ましい。
【0176】
以上のように、殺菌又は滅菌した組織片を上記誘導培地中で培養することにより、カルスの誘導を行うことが可能である。なお、イソプレノイド産生植物の組織片を上記誘導培地中で培養し、上記誘導培地で継代培養を繰り返すことにより、イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合を20質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に誘導できる。この誘導工程により誘導されたカルスは、次の増殖工程に使用される。また、特に液体培養の場合、この誘導工程により誘導されたカルスを次の増殖工程に使用せずに直接生産工程に使用してもよい。なお、イソプレノイド産生植物(好ましくはHevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)、Taraxacum属に属する植物(特に、タンポポ、カンサイタンポポ)、Ficus属に属する植物(特に、イチジク))の組織片から誘導されたカルスは、イソプレノイドの製造に優れている。
【0177】
本発明では、誘導されたカルスの遺伝子を組み替えてもよい。組み換え遺伝子の導入方法は一般的に用いられているものを、通常知られた条件で使用すればよく、例えば、プロトプラスト法、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法(以上「生物化学実験法41植物細胞工学入門」1998年9月1日、学会出版センター、第255頁〜326頁,「植物バイオテクノロジー」2009年5月25日、幸書房、第130頁〜136頁)などがあるが、これらに限らない。
【0178】
(増殖工程)
増殖工程では、例えば、誘導工程により誘導されたカルス(上述の方法等により遺伝子が組み替えられていてもよい)を生育培地中で培養して増殖させる。なお、生育培地は、液体であっても固体であってもよい。また、生育培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
【0179】
生育培地としては、Whiteの培地、Hellerの培地、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)、Gamborg培地、B5培地、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に必要に応じて植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。なお、生育培地と誘導培地の組成が同一であってもよい。また、カルスの維持および細胞分裂の促進に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
【0180】
なお、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、植物生長ホルモンとしては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できるが、サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニンがより好ましい。同様に、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、炭素源としては、スクロース、マルトース、グルコース、フルクトースが好ましく、マルトース、スクロースがより好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できるが、サイトカイニン系植物ホルモンとしては、カイネチンがより好ましく、炭素源としては、スクロース、グルコース、トレハロースが好ましく、スクロースがより好ましい。
【0181】
生育培地は、ジャスモン酸、モノテルペン化合物、及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。なかでも、糖アルコールが好ましいが必須成分ではない。
【0182】
モノテルペン化合物としては、D−リモネン、α−ピネンが好ましく、D−リモネンがより好ましい。
【0183】
糖アルコールとしては、上述のエリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール等が挙げられるが、なかでも、エリスリトールが好ましい。
【0184】
生育培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
【0185】
好適な生育培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は以下の組成である。
【0186】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0187】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0188】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0189】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0190】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0191】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0192】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0193】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0194】
生育培地中の糖アルコールの濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上、最も好ましくは0.40質量%以上である。該糖アルコールの濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下である。
【0195】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0196】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0197】
(Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0198】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0199】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下、更に好ましくは0.50質量%以下、特に好ましくは0.30質量%以下である。
【0200】
生育培地中の糖アルコールの濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上、最も好ましくは0.40質量%以上である。該糖アルコールの濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下、更に好ましくは0.60質量%以下である。
【0201】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは55mM以下である。
【0202】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0203】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0204】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下、更に好ましくは0.5mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0205】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは2mg/l以下、特に好ましくは1.2mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが更に好ましい。
【0206】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは1.5mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0207】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0208】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0209】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンの濃度が0.5〜1.2mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1.5〜2.5mg/lで、窒素濃度が55mM以下で、カルシウムイオン濃度が0.5mM以下であることが特に好ましい。
【0210】
(Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0211】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下、更に好ましくは50mM以下である。
【0212】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0213】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0214】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下、更に好ましくは0.5mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0215】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0216】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0217】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0218】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0219】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0220】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0221】
上述の条件のなかでも、カルシウムイオン濃度が0〜0.5mMであることが特に好ましい。
【0222】
(Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0223】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは10mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは80mM以下である。
【0224】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0225】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0226】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0227】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0228】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0229】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0230】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0231】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、1000〜100000lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0232】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0233】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンで、炭素源がスクロースで、カルシウムイオン濃度が1×10−5mM以上、窒素濃度が10mM以上であることが特に好ましい。
【0234】
(Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0235】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは5mM以上、特に好ましくは20mM以上、最も好ましくは40mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは80mM以下、更に好ましくは60mM以下である。
【0236】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0237】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0238】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0239】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0240】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0241】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0242】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0243】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0244】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0245】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンであり、炭素源がスクロースで、その濃度(スクロース濃度)が3質量%以下で、窒素濃度が60mM以下であることが特に好ましい。
【0246】
(Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0247】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは5mM以上、特に好ましくは30mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下である。
【0248】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0249】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0250】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下、更に好ましくは3mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0251】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上、特に好ましくは1.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは2.5mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0252】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは0.8mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは1.2mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0253】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0254】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0255】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましく、24〜36℃が更に好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0256】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0257】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンが2,4−ジクロロフェノキシ酢酸で、その濃度が1.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがカイネチンで、その濃度が0.8〜1.2mg/lで、カルシウムイオン濃度が3mM以下で、窒素濃度が30mM以上であることが特に好ましい。
【0258】
(Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合の好適な生育培地の組成を示す。
【0259】
生育培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは5mM以上、特に好ましくは20mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは80mM以下である。
【0260】
生育培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0261】
生育培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生育培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0262】
生育培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは0.8mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下、更に好ましくは2mM以下である。生育培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0263】
生育培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上、特に好ましくは1mg/l以上、最も好ましくは2.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは3.5mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0264】
生育培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.05mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは2mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下である。生育培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0265】
オーキシン系植物ホルモンとサイトカイニン系植物ホルモンの濃度比(オーキシン系植物ホルモンの濃度/サイトカイニン系植物ホルモンの濃度)(好ましくはナフタレン酢酸とカイネチンの濃度比(ナフタレン酢酸の濃度/カイネチンの濃度))は、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上である。また、該比は、好ましくは5.5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0266】
生育培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0267】
生育培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0268】
生育培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には、5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が特に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましく、20〜32℃が更に好ましい。なお、生育培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、1000〜100000lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0269】
固体培地の場合、生育培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0270】
上述の条件のなかでも、明所で培養を行い、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、その濃度が2.5〜3.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがカイネチンで、その濃度が0.5〜1.5mg/lであることが特に好ましい。
【0271】
以上のように、増殖工程では、カルスを上記生育培地中で培養することにより、カルスを増殖させることが可能である。この増殖工程により増殖させたカルスは、次の生産工程に使用される。なお、増殖工程では、カルスの増殖と共にイソプレノイドの生合成を行ってもよいし、イソプレノイドの生合成は行わずに、カルスの増殖のみを行ってもよい。これは、生育培地の組成や増殖工程の培養条件を適宜変更することにより制御可能である。
【0272】
なお、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。
また、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。
また、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。
また、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。
また、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。
本明細書において、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率は、実施例に記載の方法により算出できる。
このように、イソプレノイド産生植物の組織片から誘導されたカルスを上記生育培地中で培養することにより、4週間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上)とすることが可能となる。
また、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)のカルスを上記生育培地中で培養することにより、30日間当たりの質量基準のカルスの生長率を1.5倍以上(好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上)とすることが可能となり、カルスを効率的、安定的に生育できる。30日間当たりの質量基準のカルスの生長率は、実施例に記載の方法により算出できる。
【0273】
(生産工程)
生産工程では、例えば、増殖工程により増殖させたカルスを生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成する。なお、生産培地は、液体であっても固体であってもよい。また、生産培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。なお、上述のように、生産工程において液体培養を行う場合には、カルスの増殖が比較的速いため、増殖工程と生産工程を明確に分けずに、1つの工程でカルスを増殖させつつ、カルスによりイソプレノイドを生合成することとしてもよい。具体的には、例えば、誘導工程により誘導されたカルス(上述の方法等により遺伝子が組み替えられていてもよい)を液体の生産培地で培養し、カルスによりイソプレノイドを生合成すればよい。
【0274】
生産培地としては、Whiteの培地、Hellerの培地、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)、Gamborg培地、B5培地、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に必要に応じて植物生長ホルモンを加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に植物生長ホルモンを加えたものが好ましい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。なお、生産培地と、誘導培地及び/又は生育培地の組成が同一であってもよい。また、カルスの維持及び細胞分裂の促進に適しているという理由から、オーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを含むことが好ましい。
【0275】
なお、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合、植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できるが、サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できるが、サイトカイニン系植物ホルモンとしては、より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点ではカイネチンがより好ましく、イソプレノイドの生産量を増大できるという点ではゼアチンがより好ましく、炭素源としては、スクロース、グルコースが好ましい。
【0276】
また、液体培養を行う場合には、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、オーキシン系植物ホルモンとしては、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸がより好ましく、サイトカイニン系植物ホルモンとしては、カイネチンがより好ましい。また、液体培養を行う場合には、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、オーキシン系植物ホルモンとしては、ナフタレン酢酸がより好ましく、サイトカイニン系植物ホルモンとしてはベンジルアデニンがより好ましい。また、液体培養を行う場合には、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、オーキシン系植物ホルモンとしては、ナフタレン酢酸がより好ましく、サイトカイニン系植物ホルモンとしてはベンジルアデニンがより好ましい。
【0277】
生産培地は、イソプレノイドの生産を促すという理由から、ジャスモン酸、及びモノテルペン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらは必須成分ではない。モノテルペン化合物を含む場合、D−リモネン、α−ピネンが好ましく、D−リモネンがより好ましい。
【0278】
生産培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
【0279】
好適な生産培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は以下の組成である。
【0280】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0281】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0282】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0283】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0284】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0285】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0286】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0287】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0288】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、1000〜100000lxが好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0289】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0290】
(Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Helianthus属に属する植物(特に、ヒマワリ)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0291】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0292】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0293】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0294】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0295】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0296】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0297】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0298】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0299】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0300】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0301】
上述の条件のなかでも、炭素源がスクロースで、その濃度が3質量%以下で、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニンであることが特に好ましい。
【0302】
(Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0303】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下、更に好ましくは50mM以下である。
【0304】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0305】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0306】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.1mM以上、特に好ましくは0.2mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下、更に好ましくは2.0mM以下、特に好ましくは1.2mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0307】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは15mg/l以下、更に好ましくは6mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0308】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.25mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは7mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは1.5mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0309】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0310】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0311】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0312】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0313】
上述の条件のなかでも、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が0.5〜1.5mg/lであり、更に、(1)カルシウムイオン濃度が1.0mM以上、又は(2)カルシウムイオン濃度が0.5mM以下で、更に、オーキシン系植物ホルモンの濃度が10mg/l以上若しくはオーキシン系植物ホルモンの濃度が1mg/l以下であることが特に好ましい。
【0314】
(Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Taraxacum属に属する植物(特に、カンサイタンポポ)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0315】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下、更に好ましくは50mM以下である。
【0316】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0317】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0318】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0319】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0320】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0321】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0322】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0323】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。
【0324】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0325】
上述の条件のなかでも、炭素源がスクロースで、その濃度が3質量%以下で、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニンであることが特に好ましい。
【0326】
(Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Ficus属に属する植物(特に、イチジク)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0327】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは50mM以下である。
【0328】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0329】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0330】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0331】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは2mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0332】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは2mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0333】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0334】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0335】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、固体培地の場合には5.6〜5.8が更に好ましく、液体培地の場合にも5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましく、26〜36℃が更に好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜30℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0336】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0337】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、サイトカイニン系植物ホルモンがベンジルアデニンであり、炭素源がスクロースで、その濃度(スクロース濃度)が3質量%以下で、培養温度が26℃以上であることが特に好ましい。
【0338】
(Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0339】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは6mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下である。
【0340】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0341】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0342】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下、更に好ましくは3mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0343】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは1.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは15mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下、特に好ましくは2.5mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0344】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上、特に好ましくは0.5mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは1mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0345】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0346】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0347】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、23〜36℃がより好ましく、30〜36℃が更に好ましく、32〜36℃が特に好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜34℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0348】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0349】
上述の条件のなかでも、オーキシン系植物ホルモンが2,4−ジクロロフェノキシ酢酸で、その濃度が1.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがカイネチンで、その濃度が0.5〜1mg/lで、カルシウムイオン濃度が3mM以下、培養温度が30℃以上であることが特に好ましい。
【0350】
(Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合)
次に、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合の好適な生産培地の組成を示す。
【0351】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは7.5mM以上、特に好ましくは40mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下である。
【0352】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは0.23mM以下である。
【0353】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。生産培地が液体培地の場合には、炭素源の濃度が2〜6質量%であることが更に好ましい。
【0354】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上、更に好ましくは0.5mM以上、特に好ましくは0.8mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは4mM以下である。生産培地が液体培地の場合には、カルシウムイオン濃度が1×10−5〜3mMであることが更に好ましい。
【0355】
より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上、特に好ましくは0.8mg/l以上、最も好ましくは2.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは4mg/l以下、特に好ましくは3.5mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0356】
イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.5mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは6mg/l以下、更に好ましくは4mg/l以下、特に好ましくは2.5mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、オーキシン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜15mg/lであることが好ましい。
【0357】
より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上、特に好ましくは0.3mg/l以上、最も好ましくは0.5mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは1.5mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0358】
イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは3mg/l以下、更に好ましくは1.0mg/l以下である。生産培地が液体培地の場合には、サイトカイニン系植物ホルモンの濃度が1×10−3〜10mg/lであることが好ましい。
【0359】
より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、オーキシン系植物ホルモンとサイトカイニン系植物ホルモンの濃度比(オーキシン系植物ホルモンの濃度/サイトカイニン系植物ホルモンの濃度)(好ましくはナフタレン酢酸とカイネチンの濃度比(ナフタレン酢酸の濃度/カイネチンの濃度))は、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上である。また、該比は、好ましくは5.5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0360】
イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、オーキシン系植物ホルモンとサイトカイニン系植物ホルモンの濃度比(オーキシン系植物ホルモンの濃度/サイトカイニン系植物ホルモンの濃度)(好ましくはナフタレン酢酸とゼアチンの濃度比(ナフタレン酢酸の濃度/ゼアチンの濃度))は、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。また、該比は、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下である。
【0361】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0362】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0363】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましい。なお、生産培地が液体培地の場合には、培養温度が23〜34℃であることが更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、1000〜100000lxがより好ましい。なお、液体培養の場合には、暗所で培養を行うことが好ましい。
【0364】
固体培地の場合、生産培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下である。
【0365】
より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、上述の条件のなかでも、明所で培養を行い、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、その濃度が2.5〜3.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがカイネチンで、その濃度が0.5〜1.5mg/lであることが特に好ましい。
【0366】
イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、上述の条件のなかでも、明所で培養を行い、オーキシン系植物ホルモンがナフタレン酢酸で、その濃度が0.5〜2.5mg/lで、サイトカイニン系植物ホルモンがゼアチンで、その濃度が0.1〜1.0mg/lであることが特に好ましい。
【0367】
(液体培養の場合)
次に、液体培養を行う場合の好適な液体の生産培地の組成及び培養条件を以下に示す。通常は(特に、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合)以下の組成及び培養条件である。
【0368】
生産培地中の窒素濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上、更に好ましくは10mM以上である。該窒素濃度は、好ましくは100mM以下、より好ましくは70mM以下、更に好ましくは50mM以下である。
【0369】
生産培地中の微量無機塩類の濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−3mM以上である。該微量無機塩類の濃度は、好ましくは2mM以下、より好ましくは1mM以下、更に好ましくは0.23mM以下である。
【0370】
生産培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0371】
生産培地中のカルシウムイオン濃度は、好ましくは0mM以上、より好ましくは1×10−5mM以上である。該カルシウムイオン濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下、更に好ましくは3mM以下である。Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、特に好ましくは1mM以下である。
【0372】
生産培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、更に好ましくは0.3mg/l以上である。Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、更に好ましくは1mg/l以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは20mg/l以下、より好ましくは15mg/l以下、更に好ましくは6mg/l以下である。Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、特に好ましくは0.5mg/l以下である。
【0373】
生産培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは0mg/l以上、より好ましくは1×10−3mg/l以上である。Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、更に好ましくは0.1mg/l以上である。Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、更に好ましくは0.3mg/l以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは15mg/l以下、より好ましくは10mg/l以下、更に好ましくは3mg/l以下である。Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、特に好ましくは0.5mg/l以下である。
【0374】
生産培地中のジャスモン酸の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。該ジャスモン酸の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0375】
生産培地中のモノテルペン化合物の濃度は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。該モノテルペン化合物の濃度は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0376】
生産培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.6〜5.8が更に好ましい。培養温度は、0〜40℃が好ましく、22〜36℃がより好ましく、22〜32℃であることが更に好ましく、22〜30℃であることが特に好ましい。Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、28〜32℃であることが特に好ましい。一方で、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、22〜26℃であることが特に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、照度は、0〜100000lxが好ましく、0〜0.1lxがより好ましい。培養中の振とう速度は、0〜300rpmが好ましく、40〜250rpmがより好ましい。Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという点では、100rpm以上が更に好ましい。一方で、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、イソプレノイドの生産量を増大できるという点では、100rpm以下が更に好ましい。
【0377】
上述の条件のなかでも、特に、イソプレノイド産生植物が、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、オーキシン系植物ホルモンが2,4−ジクロロフェノキシ酢酸で、その濃度が0.3〜6mg/lであることが特に好ましい。同様に、Hevea属に属する植物(特に、パラゴムノキ)の場合、サイトカイニン系植物ホルモンが、カイネチンで、その濃度が0.1〜3mg/lであることが特に好ましい。
また、イソプレノイド産生植物が、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、オーキシン系植物ホルモンが、ナフタレン酢酸であることが特に好ましく、サイトカイニン系植物ホルモンが、ベンジルアデニンであることが特に好ましい。同様に、Sonchus属に属する植物(特に、ノゲシ)の場合、微量無機塩類の濃度が2mM以下であることが特に好ましい。
また、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、より分子量の大きなイソプレノイドが得られるという理由から、生産培地中のカルシウムイオン濃度が1×10−5〜1mM、培養温度が28〜32℃、振とう速度が100rpm以上であることが特に好ましい。また、イソプレノイド産生植物が、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、イソプレノイドの生産量を増大できるという理由から、生産培地中のカルシウムイオン濃度が1mM以下、培養温度が22〜26℃、振とう速度が100rpm以下であることが特に好ましい。なお、Solidago属に属する植物(特に、セイタカアワダチソウ)の場合、生産培地中のカルシウムイオン濃度を3mM以下(好ましくは1mM以下)、培養中の振とう速度を60〜100rpmとすることにより、得られるイソプレノイドの量を増大できる。
【0378】
以上のように、イソプレノイド産生植物のカルス(例えば、増殖工程により増殖させたカルス)を生産培地で培養することにより、カルスによりイソプレノイドを生合成できる。カルスにより生合成されたイソプレノイドは、細胞内に蓄積又は細胞外に放出(分泌)される。特に、生産培地(特に液体培地)の培地組成が上記好適な範囲内の場合には、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積され、更に蓄積されたイソプレノイドが好適に細胞外に放出され、より好適にイソプレノイドを製造することができる。これにより、イソプレノイドの抽出が容易となるだけでなく、連続培養の可能性が広がる。
【0379】
細胞内にイソプレノイドが蓄積している場合には、例えば、公知の方法により細胞を破砕し、破砕物からイソプレノイドを公知の方法により抽出することによりイソプレノイドが得られる。また、イソプレノイドが細胞外に放出されている場合は、例えば、培養液から細胞(カルス)を分離した後に、細胞分離後の培養液からイソプレノイドをトルエン・ヘキサン混合溶媒により抽出することによりイソプレノイドが得られる。
【0380】
イソプレノイド産生植物の組織片から誘導されたカルス(好ましくは増殖工程により増殖させたカルス)を上記生産培地中で培養することにより、カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量)を、カルス乾燥質量に対し、0.005質量%以上(好ましくは0.01質量%以上)とすることが可能となり、イソプレノイドを好適に製造できる。ここで、イソプレノイド細胞内蓄積量は、カルスを凍結乾燥させ、該カルスから精製回収したイソプレノイドのカルス乾燥質量に対する割合(質量%)を意味し、実施例に記載の方法により算出できる。
【0381】
イソプレノイド産生植物の組織片から誘導されたカルスを上記液体の生産培地中で培養することにより、培地中のイソプレノイドの濃度が、好ましくは0.001mg/l以上、より好ましくは0.01mg/l以上、更に好ましくは0.1mg/l以上とすることが可能となり、イソプレノイドを好適に製造できる。なお、培地中のイソプレノイドの濃度は、実施例に記載の方法により算出できる。
【0382】
本発明の製造方法により得られるイソプレノイドは、イソプレン単位(C)が直鎖状に(共)重合した構造を有するゴム(天然ゴム)である。
【0383】
イソプレノイドの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上、更に好ましくは100000以上、特に好ましくは200000以上、最も好ましくは1000000以上である。1000未満では、ゴムとして利用しにくい傾向がある。また、上記重量平均分子量の上限は、特に限定されない。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー社製GPC−8000シリーズ等、検出器:示差屈折計、UV)による測定値をもとに標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン換算により求めることができる。具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0384】
イソプレノイドの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000以上、より好ましくは10000以上、更に好ましくは100000以上、特に好ましくは400000以上である。1000未満では、ゴムとして利用しにくい傾向がある。また、上記数平均分子量の上限は、特に限定されない。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0385】
植物体をカルス化し、カルスを培養することにより、植物(例えば、パラゴムノキの成木)から抽出したイソプレノイドと同等の重量平均分子量のイソプレノイドが生産されたことから、重量平均分子量の大きなイソプレノイドがカルスにより得られる可能性があることを示唆しており、パラゴムノキの成木によらない天然ゴム生産系として画期的な発見である。
【0386】
セイタカアワダチソウにおいて、植物体(土に植えた植物)から抽出したイソプレノイドに比べて、カルスにより生合成したイソプレノイドの方が、重量平均分子量が最大で約3倍、数平均分子量が最大で約10倍大きい傾向が見られた。これは、植物体が製造するイソプレノイドの重量平均分子量が低い場合であっても、該植物体をカルス化することにより、重量平均分子量の大きなイソプレノイドが得られる可能性があることを示唆しており、画期的な発見である。
【0387】
また、ヒマワリにおいて、植物体(土に植えた植物)から抽出したイソプレノイドに比べて、カルスにより生合成したイソプレノイドの方が、重量平均分子量が最大で約3倍大きい傾向が見られた。これは、植物体が製造するイソプレノイドの重量平均分子量が低い場合であっても、該植物体をカルス化することにより、重量平均分子量の大きなイソプレノイドが得られる可能性があることを示唆しており、画期的な発見である。
【0388】
イソプレノイドに含まれるイソプレンユニット中の1,4−シス構造の含有量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。1,4−シス構造の含有量の上限は特に限定されない。
1,4−シス構造の含有量は、NMRにより測定できる。
【0389】
本発明のイソプレノイドの製造方法によれば、パラゴムノキの成木に頼らずに、安定的にイソプレノイドを供給できる。
【0390】
また、イソプレノイド産生植物(好ましくはHevea属、Sonchus属、Solidago属、Helianthus属、Taraxacum属、及びFicus属からなる群より選択される少なくとも1種の属に属する植物、より好ましくはパラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、カンサイタンポポ、及びイチジクからなる群より選択される少なくとも1種の植物)の組織片から誘導された新規なカルスは、イソプレノイドの製造に優れている。これらのカルスは、本発明のイソプレノイドの製造方法に好適に使用できる。
【0391】
また、イソプレノイド産生植物の組織片を植物生長ホルモン及び炭素源を含む上記誘導培地中で培養することによりカルスを効率的、安定的に誘導できる。さらに、イソプレノイド産生植物のカルスを、植物生長ホルモン及び炭素源を含む上記生育培地中で培養することによりカルスを効率的、安定的に生育できる。
【実施例】
【0392】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0393】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NAA:ナフタレン酢酸
2,4−D:2,4−ジクロロフェノキシ酢酸
IBA:インドール酪酸
BA:ベンジルアデニン
KI:カイネチン
リモネン:D−リモネン
ピネン:α−ピネン
固形化剤:寒天、アガロース、ゼラチン
パラゴムノキ:東京大学大学院農学生命科学研究科附属 科学の森教育研究センター 樹芸研究所より入手
ノゲシ:神戸市灘区に自生しているノゲシを採取して使用した、又は、神戸市灘区で自生しているノゲシの種子から、無菌的に発芽させた植物体を使用した
セイタカアワダチソウ:兵庫県淡路市、山形県山形市に自生しているセイタカアワダチソウを採取して使用した
ヒマワリ:(株)サカタのタネ製のHelianthus annuus(原産地:北アメリカ)の種子を無菌播種して使用した
タンポポ:神戸市灘区に自生しているタンポポを採取して使用した
カンサイタンポポ:神戸市灘区に自生しているカンサイタンポポを採取して使用した
イチジク:山形県山形市で自生しているイチジクを採取して使用した
【0394】
実施例1〜31及び比較例1〜7
各植物体から葉及び/又は茎を採取した。次に、採取した葉及び/又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0395】
次に、滅菌した葉及び/又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。各植物のカルス化に用いた誘導培地の組成を表1〜6に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を0.2〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜2質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0396】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、各植物の組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0397】
次に、誘導されたカルスを約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地は、本実験では誘導培地と同じ組成の培地を使用した。生長したカルスは数分割して、それぞれを植え継ぐことでより増殖させることが可能である。
【0398】
この増殖工程において、カルス生長率を算出した。カルス生長率は、培養初期のカルス仕込み量(重量)と継代時に測定したカルス重量の差から生長率を算出した。そして、算出したカルス生長率を標準MS培地で培養したときの生長率を標準として、以下の基準で評価した。なお、比較例1〜7はカルス生長できなかった。
◎:標準より優れる
○:標準と同等
△:生長するものの標準より劣る
×:生長せず
【0399】
次に、増殖させたカルスを生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地は、本実験では誘導培地と同じ組成の培地を使用した。次に、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0400】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
◎:0.01質量%以上
○:0.01質量%未満
△:検出は可能であるが、定量は不可
×:検出できず
【0401】
実施例32〜43
セイタカアワダチソウを使用した実施例32〜39では、実施例1と同様の条件でカルスの誘導を行った。また、ノゲシを使用した実施例40〜43では、実施例19と同様の条件でカルスの誘導を行った。
【0402】
次に、誘導されたカルスを表7,8に示す液体培地で培養することにより、カルスの増殖(増殖工程)及びイソプレノイドの生産(生産工程)を行った。1〜60日間培養を行った後、培養液をろ過することにより、培養ろ液を得た。次に、培養ろ液に、トルエン・ヘキサン混合溶媒を加えて混合溶液とし、振とうした。そして、振とうした後、混合溶液を遠心分離し、2相に分離した混合溶液から有機相を回収した。次に、回収した有機相からエバポレータにより溶媒を揮発することにより、培地中からイソプレノイドを精製回収した。
【0403】
実施例1〜31では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。また、実施例32〜43では、培地中にイソプレノイドが放出されていることが確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されると共に、その一部が細胞外に放出されていることが分かった。
【0404】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表1〜8に示す。
【0405】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー社製GPC−8000シリーズ等、検出器:示差屈折計、UV)による測定値をもとに標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン換算により求めた。
◎:100000以上
○:10000以上100000未満
△:10000未満
×:検出できず
【0406】
【表1】
【0407】
【表2】
【0408】
【表3】
【0409】
【表4】
【0410】
【表5】
【0411】
【表6】
【0412】
【表7】
【0413】
【表8】
【0414】
表1〜8の結果より、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、ヒマワリ、タンポポ、イチジクの葉及び/又は茎から誘導したカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、増殖工程のカルス生長率も非常に優れていた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0415】
次に、ヒマワリ、セイタカアワダチソウ、カンサイタンポポ、イチジク、パラゴムノキ、ノゲシについて、更に詳細に試験を行った。
【0416】
(ヒマワリ)
実施例44〜51
ヒマワリから葉又は茎を採取した。次に、採取した葉又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0417】
次に、滅菌した葉又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。ヒマワリのカルス化に用いた誘導培地の組成を表9に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0418】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、ヒマワリの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0419】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:60日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表9に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0420】
【表9】
【0421】
表9の結果より、誘導培地においてヒマワリの葉や茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0422】
次に、誘導されたカルス(表9に示す実施例44の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表10に示す。
【0423】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養28日間(4週間)終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表10に示す。
【0424】
【表10】
【0425】
表10の結果より、カルスを生育培地で培養することにより、カルスを生育できることが確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0426】
次に、増殖させたカルス(表10に示す実施例52の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表11に示す。
【0427】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0428】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0429】
生産培地で30日間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0430】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0431】
実施例64〜68では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0432】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表11に示す。
【0433】
(重量平均分子量)
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表11に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV(215nm)
(7)分子量標準:標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン
【0434】
【表11】
【0435】
表11の結果より、ヒマワリのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0436】
ヒマワリの葉及び茎から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量を測定したところ、50,000〜100,000(標準ポリイソプレン換算)であった。ヒマワリの植物体から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量と、表11に記載のカルスから得られたイソプレノイドの重量平均分子量とを比較すると、植物体から抽出したイソプレノイドに比べて、カルスにより生合成したイソプレノイドの方が、重量平均分子量が最大で約3倍大きかった。
【0437】
(セイタカアワダチソウ)
実施例69〜76
セイタカアワダチソウから葉又は茎を採取した。次に、採取した葉又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0438】
次に、滅菌した葉又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。セイタカアワダチソウのカルス化に用いた誘導培地の組成を表12に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0439】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、セイタカアワダチソウの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0440】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:60日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表12に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0441】
【表12】
【0442】
表12の結果より、誘導培地においてセイタカアワダチソウの葉や茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0443】
次に、誘導されたカルス(表12に示す実施例69の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表13に示す。
【0444】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養4週間終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表13に示す。
【0445】
【表13】
【0446】
表13の結果より、カルスを生育培地で培養することにより、カルスを生育できることが確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0447】
次に、増殖させたカルス(表13に示す実施例77の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表14に示す。
【0448】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0449】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0450】
生産培地で30時間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0451】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0452】
実施例81〜90では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0453】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表14に示す。
【0454】
(重量平均分子量(Mw))
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表14に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV
(7)分子量標準:標準ポリスチレン
【0455】
(数平均分子量(Mn))
下記の条件(8)〜(14)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)を測定した。結果を表14に示す。
(8)装置:Agilent Technologies社製Agilent 1120 Compact LC
(9)分離カラム:東ソー社製TOSHO TSKgel MultiporeHX L−M
(10)測定温度:30℃
(11)キャリア:テトラヒドロフラン
(12)流量:1.0mL/分
(13)検出器:UV
(14)分子量標準:標準ポリスチレン
【0456】
【表14】
【0457】
表14の結果より、セイタカアワダチソウのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0458】
セイタカアワダチソウの葉及び茎から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量を測定したところ、100,000〜300,000(標準ポリスチレン換算)であった。セイタカアワダチソウの植物体から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量と、表14に記載のカルスから得られたイソプレノイドの重量平均分子量とを比較すると、植物体から抽出したイソプレノイドに比べて、カルスにより生合成したイソプレノイドの方が、重量平均分子量が最大で約3倍、数平均分子量が最大で約10倍大きかった。
【0459】
(カンサイタンポポ)
実施例91〜98
カンサイタンポポから葉又は茎を採取した。次に、採取した葉又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0460】
次に、滅菌した葉又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。カンサイタンポポのカルス化に用いた誘導培地の組成を表15に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0461】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、カンサイタンポポの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0462】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:60日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表15に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0463】
【表15】
【0464】
表15の結果より、誘導培地においてカンサイタンポポの葉や茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0465】
次に、誘導されたカルス(表15に示す実施例91の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表16に示す。
【0466】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養28日間(4週間)終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表16に示す。
【0467】
【表16】
【0468】
表16の結果より、生育培地においてカンサイタンポポのカルスを増殖できることを確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0469】
次に、増殖させたカルス(表16に示す実施例99の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表17に示す。
【0470】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0471】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0472】
生産培地で30日間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0473】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0474】
実施例108〜113では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0475】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表17に示す。
【0476】
(重量平均分子量)
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表17に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV(215nm)
(7)分子量標準:標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン
【0477】
【表17】
【0478】
表17の結果より、カンサイタンポポのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0479】
カンサイタンポポの葉及び茎から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量を測定したところ、800,000程度(標準ポリイソプレン換算)であった。
【0480】
(イチジク)
実施例114〜121
イチジクから葉又は茎を採取した。次に、採取した葉又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0481】
次に、滅菌した葉又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。イチジクのカルス化に用いた誘導培地の組成を表18に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0482】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、イチジクの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0483】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:60日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表18に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0484】
【表18】
【0485】
表18の結果より、誘導培地においてイチジクの葉や茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0486】
次に、誘導されたカルス(表18に示す実施例115の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表19に示す。
【0487】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養28日間(4週間)終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表19に示す。
【0488】
【表19】
【0489】
表19の結果より、カルスを生育培地で培養することにより、カルスを生育できることが確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0490】
次に、増殖させたカルス(表19に示す実施例122の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表20に示す。
【0491】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0492】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0493】
生産培地で30日間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0494】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0495】
実施例128〜134では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0496】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表20に示す。
【0497】
(重量平均分子量(Mw))
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表20に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV
(7)分子量標準:標準ポリスチレン
【0498】
(数平均分子量(Mn))
下記の条件(8)〜(14)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)を測定した。結果を表20に示す。
(8)装置:Agilent Technologies社製Agilent 1120 Compact LC
(9)分離カラム:東ソー社製TOSHO TSKgel MultiporeHX L−M
(10)測定温度:30℃
(11)キャリア:テトラヒドロフラン
(12)流量:1.0mL/分
(13)検出器:UV
(14)分子量標準:標準ポリスチレン
【0499】
【表20】
【0500】
表20の結果より、イチジクのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0501】
イチジクの葉及び茎から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量を測定したところ、500,000程度(標準ポリスチレン換算)であった。
【0502】
(パラゴムノキ)
実施例135〜146
パラゴムノキから茎を採取した。次に、採取した茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0503】
次に、滅菌した茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。パラゴムノキのカルス化に用いた誘導培地の組成を表21に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0504】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−Dと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)で約1ヶ月培養し、パラゴムノキの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0505】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:90日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表21に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0506】
【表21】
【0507】
表21の結果より、誘導培地においてパラゴムノキの茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0508】
次に、誘導されたカルス(表21に示す実施例141の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表22に示す。
【0509】
生育培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を2〜6質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0510】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、カルスの生育を促した。
【0511】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養28日間(4週間)終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表22に示す。
【0512】
【表22】
【0513】
表22の結果より、カルスを生育培地で培養することにより、カルスを生育できることが確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0514】
次に、増殖させたカルス(実施例160〜165については、表22に示す実施例147の条件により増殖させたカルス、実施例166〜171については、表22に示す実施例149の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表23に示す。
【0515】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を2〜6質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2〜1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0516】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0517】
生産培地で30日間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0518】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0519】
実施例160〜171では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0520】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表23に示す。
【0521】
実施例160〜171では、下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV
(7)分子量標準:標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン
【0522】
実施例160〜165では、下記の条件(8)〜(14)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)を測定した。
(8)装置:Agilent Technologies社製Agilent 1120 Compact LC
(9)分離カラム:東ソー社製TOSHO TSKgel MultiporeHX L−M
(10)測定温度:30℃
(11)キャリア:テトラヒドロフラン
(12)流量:1.0mL/分
(13)検出器:UV
(14)分子量標準:標準ポリスチレン
【0523】
【表23】
【0524】
表23の結果より、パラゴムノキのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0525】
パラゴムノキのラテックスから抽出したイソプレノイドの重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ、1,000,000程度であった。従って、表23の結果より、カルスにおいても、パラゴムノキの成木と同等の重量平均分子量のイソプレノイドを生産できることが分かった。
【0526】
(ノゲシ)
実施例172〜183
ノゲシから葉又は茎を採取した。次に、採取した葉又は茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0527】
次に、滅菌した葉又は茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。ノゲシのカルス化に用いた誘導培地の組成を表24に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を3質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を1.1質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0528】
オーキシン系植物ホルモンとして、ナフタレン酢酸と、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、ノゲシの組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0529】
上記誘導培地で継代培養を繰り返した後(合計培養日数:60日)、目視によりカルスの誘導を確認し、誘導されたカルスの直径が3mm以上のものをカルスの誘導有りと判断して、以下の基準で評価した。なお、各例についてそれぞれ試験を18回実施して各々の試験結果の評価を行い、その平均をその例での評価結果とした。結果を表24に示す。
◎:ほぼカルスのみが誘導される(イソプレノイド産生植物の組織片から誘導された細胞100質量%中のカルスの割合(誘導効率):90質量%以上)
○:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:60質量%以上90質量%未満)
△:カルスと共に根または芽も誘導される(誘導効率:20質量%以上60質量%未満)
×:カルスがほとんど誘導されず(誘導効率:20質量%未満)
【0530】
【表24】
【0531】
表24の結果より、誘導培地においてノゲシの葉又は茎から、カルスを新規誘導できることが確認できた。また、誘導効率が非常に優れた条件も確認できた。
【0532】
次に、誘導されたカルス(表24に示す実施例172の条件により誘導されたカルス)を約1ヶ月ごとに生育培地(固体培地)で継代培養してカルスを増殖させた(増殖工程)。生育培地の組成を表25〜31に示す。
【0533】
生育培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜5質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0534】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、カルスの生育を促した。
【0535】
この増殖工程において、カルスの生長率を算出した。カルスの生長率は、培養初期のカルス仕込み量(質量)と継代時(本例では、培養30日間終了時)に測定したカルス質量の比率(継代時に測定したカルス質量/培養初期のカルス仕込み量)から算出した。結果を表25〜31に示す。
【0536】
【表25】
【0537】
【表26】
【0538】
【表27】
【0539】
【表28】
【0540】
【表29】
【0541】
【表30】
【0542】
【表31】
【0543】
表25〜31の結果より、カルスを生育培地で培養することにより、カルスを生育できることが確認できた。また、カルスの生長率が非常に優れた条件も確認できた。
【0544】
次に、増殖させたカルス(表29に示す実施例223の条件により増殖させたカルス)を生産培地(固体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表32〜34に示す。
【0545】
生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を1〜5質量%含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加し、固形化剤の濃度を0.2質量%とした。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.7〜5.8に調整した。
【0546】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0547】
生産培地で30日間培養を行った後、カルス約70gを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、イソプレノイドを精製回収した。
【0548】
生産工程により製造されたイソプレノイドの量(カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量))を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。
【0549】
実施例237〜262では、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されることが分かった。
【0550】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表32〜34に示す。
【0551】
(重量平均分子量)
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表32〜34に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV(215nm)
(7)分子量標準:標準ポリイソプレン
【0552】
【表32】
【0553】
【表33】
【0554】
【表34】
【0555】
表32〜34の結果より、ノゲシのカルスを培養することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量も高かった。
【0556】
ノゲシの葉及び茎から抽出したイソプレノイドの重量平均分子量(分子量標準:標準ポリイソプレン)を測定したところ、300,000〜1,000,000程度であった。従って、表32〜34の結果より、カルスにおいても、植物から抽出したイソプレノイドと同等の重量平均分子量のイソプレノイドを生産できることが分かった。
【0557】
(液体培養)
各植物体(パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウ)から葉及び茎を採取した。次に、採取した葉及び茎の表面を流水で洗浄し、さらに70%エタノールで洗浄した後、約5〜10%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液で滅菌し、再度流水で洗浄した。
【0558】
次に、滅菌した葉及び茎の組織を誘導培地(固体培地)に差込み、培養を行った(誘導工程)。各植物のカルス化に用いた誘導培地の組成を表35に示す。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加した。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.6〜5.8に調整した。
各植物の組織片を表35に示す誘導培地(固体培地)で、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で約1ヶ月培養し、各植物の組織片からカルス(未分化細胞)を誘導した。
【0559】
【表35】
【0560】
次に、誘導されたカルスを生産培地(液体培地)で培養して、イソプレノイドの生産を行った(生産工程)。生産培地の組成を表36〜38に示す。生産培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)を基に、炭素源として糖類を含み、更にオーキシン系植物ホルモン及びサイトカイニン系植物ホルモンを添加した。また、オートクレーブ(121℃、20分)前に、培地のpHを5.6〜5.8に調整した。
【0561】
オーキシン系植物ホルモンとして、2,4−D、NAA、IBAのいずれかと、サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンのいずれかを組み合わせて、暗所(0〜0.1lx)又は明所(10000lx)で培養し、イソプレノイドの生産を促した。
【0562】
誘導されたカルスを表36〜38に示す生産培地(液体培地)で培養を行った後、培養液をろ過することにより、培養ろ液を得た。次に、培養ろ液に、トルエン・ヘキサン混合溶媒を加えて混合溶液とし、振とうした。そして、振とうした後、混合溶液を遠心分離し、2相に分離した混合溶液から有機相を回収した。次に、回収した有機相からエバポレータにより溶媒を揮発することにより、培地中からイソプレノイドを精製回収した。精製回収したイソプレノイドの量から、培地中のイソプレノイドの濃度(mg/l)を算出した。結果を表36〜38に示す。
【0563】
また、一方、上述のように培養液をろ過することにより、カルスを生産培地より回収し、液体窒素で凍結させた後、凍結乾燥させて、カルス中の水分を除去した。次いで、水分を除去したカルスを乳鉢で粉砕した後、ソックスレー抽出装置を用いて有機溶媒によりイソプレノイドの抽出を行った。まず、99%メタノールで抽出を行い、不要な代謝物を除去した。その後99%トルエンでさらに抽出することで、カルスからイソプレノイドを精製回収した。
【0564】
カルスの細胞内に蓄積されているイソプレノイドの量(イソプレノイド細胞内蓄積量)を算出した。イソプレノイド細胞内蓄積量は、凍結乾燥させたのちのカルス乾燥質量に対し、該カルスから精製回収したイソプレノイドの割合(質量%)により算出した。結果を表36〜38に示す。
【0565】
実施例263〜294により、カルスの細胞内にイソプレノイドが蓄積していること、培地中にイソプレノイドが放出されていることを確認できた。以上の結果により、生合成されたイソプレノイドは、カルスの細胞内に蓄積されると共に、その一部が細胞外に放出されていることが分かった。
【0566】
得られたイソプレノイドについて下記の評価を行った。結果を表36〜38に示す。
【0567】
(重量平均分子量(Mw))
下記の条件(1)〜(7)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。結果を表36、37に示す。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)検出器:示差屈折、UV
(7)分子量標準:標準ポリイソプレン又は標準ポリスチレン
【0568】
(数平均分子量(Mn))
下記の条件(8)〜(14)でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)を測定した。結果を表36、38に示す。
(8)装置:Agilent Technologies社製Agilent 1120 Compact LC
(9)分離カラム:東ソー社製TOSHO TSKgel MultiporeHX L−M
(10)測定温度:30℃
(11)キャリア:テトラヒドロフラン
(12)流量:1.0mL/分
(13)検出器:UV
(14)分子量標準:標準ポリスチレン
【0569】
【表36】
【0570】
【表37】
【0571】
【表38】
【0572】
表36〜38の結果より、パラゴムノキ、ノゲシ、セイタカアワダチソウのカルスを培養(液体培養)することにより、イソプレノイドを製造できることが確認できた。また、得られたイソプレノイドの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)も高かった。