特許第6032721号(P6032721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032721
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド固定化体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161121BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20161121BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20161121BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20161121BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C12N15/00 FZNA
   C12M1/00 A
   C12Q1/68 A
   G01N33/53 M
   G01N37/00 101
【請求項の数】19
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-549889(P2015-549889)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2015057371
(87)【国際公開番号】WO2015137465
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-48352(P2014-48352)
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 孝介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 寿一
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 三雄
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0188005(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0016974(US,A1)
【文献】 特開2001−281246(JP,A)
【文献】 特開2000−232883(JP,A)
【文献】 JMT--06-I08.b1 AtJMT-overexpressing transgenic rice plasmid cDNA library (JMT) Oryza sativa Japonica Group cDNA clone JMT--06-I08, mRNA sequence. [online]. 2003-AUG-18 uploaded. NCBI EST, ACCESSION No.CF336455 (GI:33821286) [Retrieved on 2016-JUN-01]. Retrived from the internet:<URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucest/33821286/?report=genbank>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相担体と、
以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備えるポリヌクレオチドであって、前記ポリピリミジン領域を介して電磁波照射によって前記固相担体に固定化された機能性ポリヌクレオチドと、
前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドを含むマスキング剤と、
を備える、ポリヌクレオチド固定化体。
【請求項2】
前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項3】
前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドの一部である、請求項1に記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項4】
前記ポリピリミジン領域は非天然型のピリミジン塩基を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項5】
前記ポリピリミジン領域は、ピリミジン塩基が10以上20以下連続する塩基配列からなる、請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項6】
前記機能性領域は、配列番号1〜100で表される塩基配列又はその相補配列からなる、請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項7】
前記固相担体は、展開型ハイブリダイゼーション用担体である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項8】
前記固相担体は、浸漬型ハイブリダイゼーション用担体である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
【請求項9】
固相担体に対して電磁波照射により固定化するためのポリヌクレオチドセットであって、
以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と、機能的な塩基配列からなる機能性領域と、を備える機能性ポリヌクレオチドと、
前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドであるマスキング剤と、
を備える、セット。
【請求項10】
固相担体に対して電磁波照射により固定化するためのポリヌクレオチドの使用であって、
前記ポリヌクレオチドは、5以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と、前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するマスキング剤領域と、機能的な塩基配列からなる機能性領域と、を備える、ポリヌクレオチドの使用
【請求項11】
ポリヌクレオチド固定化体の製造方法であって、
以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備える機能性ポリヌクレオチドを、固相担体に対して、前記ポリピリミジン領域を介して電磁波照射により固定化する工程と、
前記固定化工程において、あるいは前記固定化工程の後に、前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドを含むマスキング剤で前記ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制する、製造方法。
【請求項12】
前記固定化工程において、前記ポリピリミジン領域と前記マスキング剤の前記ポリプリン領域とを相互作用させる工程を備える、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記固定化工程後に、前記ポリピリミジン領域と前記マスキング剤の前記ポリプリン領域とを相互作用させる工程を備える、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
ハイブリダイズ産物の生産方法であって、
請求項1〜のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体の前記機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程、
を備える、生産方法。
【請求項15】
ハイブリダイズ産物の検出方法であって、
請求項1〜のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体の前記機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程と、
前記機能性ポリヌクレオチドと前記被験ポリヌクレオチドとのハイブリダイズ産物を検出する工程と、
を備える、検出方法。
【請求項16】
ハイブリダイズ産物の検出方法であって、
固相担体と、5以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備えるポリヌクレオチドであって、前記ポリピリミジン領域を介して電磁波照射によって前記固相担体に固定化された機能性ポリヌクレオチドと、を備えるポリヌクレオチド固定化体の前記機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程と、
前記機能性ポリヌクレオチドと前記被験ポリヌクレオチドとのハイブリダイズ産物を検出する工程と、
を備え、
前記ハイブリダイゼーション工程を、前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドを含むマスキング剤のポリプリン領域と前記ポリピリミジン領域とを相互作用させた状態で実施する、方法。
【請求項17】
前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチド又は前記機能性ポリヌクレオチドの一部である、請求項16に記載の検出方法。
【請求項18】
固相担体と、
5以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備えるポリヌクレオチドであって、前記ポリピリミジン領域を介して電磁波照射によって前記固相担体に固定化された機能性ポリヌクレオチドと、
を備える、ポリヌクレオチド固定化体と、
前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドを含むマスキング剤と、
を備える、キット。
【請求項19】
前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチド又は前記機能性ポリヌクレオチドの一部である、請求項18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年3月12日付けで出願された日本国特許出願2014−048352に対する優先権を主張するものであり、その全内容は、引用により、本明細書に組み込まれるものとする。
本明細書は、ポリヌクレオチド固定化体、その製造方法、その利用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特定の生物を特徴付けるゲノム上の部位や変異部位などを生物試料からPCR反応等によって取得する標的核酸を、特異的にハイブリダイズするプローブを用いて検出して検出する技術、いわゆる、所謂プローブハイブリダイゼーション技術がある。プローブハイブリダイゼーションには、ポリヌクレオチドであるプローブを固相担体に固定化したポリヌクレオチド固定化体が用いられている。かかるポリヌクレオチド固定化体は、ハイブリダイゼーションの形態に応じて種々に選択される。
【0003】
こうしたプローブの固定化方法として、ポリTを用いることが開示されている(特許文献1、2)。この方法は、プローブ末端に付与しておき、固相担体の特定位置に供給してUV照射等することで、固相担体にプローブを固定できるというものである。この固定化方法は、簡易にかつ効率的にポリヌクレオチドを固相担体に固定化できるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−294751号公報
【特許文献2】特開2001−281246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プローブにおけるポリピリミジン領域は、UV照射に対して他の領域よりも高い特異性で反応し、ポリヌクレオチドプローブの固相担体への固定化に寄与していると考えられる。
【0006】
しかしながら、こうした固定化のためのUV照射等の後においても、ポリピリミジン領域が依然として、そのピリミジン塩基の対合によるハイブリダイゼーション能を維持していることを見出した。また、当該ハイブリダイゼーション能により、非特異的なハイブリダイズ産物を形成していることを見出した。
【0007】
本明細書の開示は、かかる従来の課題を解決するため、ポリヌクレオチドの固定化のためのポリピリミジン領域による優れた固定化能を維持しつつ非特異的ハイブリダイゼーションが抑制されたポリヌクレオチド固定化体を提供する。また、本明細書の開示は、こうしたポリヌクレオチド固定化体の利用、ポリヌクレオチド固定化体の製造方法、ポリヌクレオチドプローブ等も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 固相担体と、
2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備えるポリヌクレオチドであって、前記ポリピリミジン領域を介して前記固相担体に固定化された機能性ポリヌクレオチドと、
を備え、
前記ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されている、ポリヌクレオチド固定化体。
(2) 前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドであるマスキング剤を備える、(1)に記載のポリヌクレオチド固定化体。
(3) 前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチドである、(2)に記載のポリヌクレオチド固定化体。
(4) 前記マスキング剤は、前記機能性ポリヌクレオチドの一部である、(2)に記載のポリヌクレオチド固定化体。
(5) 前記ポリピリミジン領域は非天然型のピリミジン塩基を含む、(1)に記載のポリヌクレオチド固定化体。
(6) 前記ポリピリミジン領域は、ピリミジン塩基が10以上20以下連続する塩基配列からなる、(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
(7) 前記機能性領域は、配列番号1〜100で表される塩基配列又はその相補配列からなる、(1)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
(8) 前記固相担体は、展開型ハイブリダイゼーション用担体である、(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
(9) 前記固相担体は、浸漬型ハイブリダイゼーション用担体である、(1)〜(7)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体。
(10) 固相担体へ固定化するためのポリヌクレオチドセットであって、
2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と、機能的な塩基配列からなる機能性領域と、を備える機能性ポリヌクレオチドと、
前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドであるマスキング剤と、
を備える、セット。
(11) 固相担体へ固定化するためのポリヌクレオチドであって、
2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域であって、非天然型のピリミジン塩基を含むポリピリミジン領域と、機能的な塩基配列からなる機能性領域と、を備える機能性ポリヌクレオチド。
(12) 固相担体へ固定化するためのポリヌクレオチドであって、
2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と、前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するマスキング剤領域と、機能的な塩基配列からなる機能性領域と、を備える機能性ポリヌクレオチド。
(13) ポリヌクレオチド固定化体の製造方法であって、
2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備える機能性ポリヌクレオチドを、固相担体に対して、前記ポリピリミジン領域を介して固定化する工程と、
前記固定化工程において、あるいは前記固定化工程の後に、前記ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制する、製造方法。
(14) 前記固定化工程は、前記ポリピリミジン領域と前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドであるマスキング剤の前記ポリプリン領域とを相互作用させる工程である、(13)に記載の製造方法。
(15) 前記固定化工程後に、前記ポリピリミジン領域と前記ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するポリヌクレオチドであるマスキング剤の前記ポリプリン領域とを相互作用させる工程である、(13)に記載の製造方法。
(16) ハイブリダイズ産物の生産方法であって、
(1)〜(9)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体の前記機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程、
を備える、生産方法。
(17) ハイブリダイズ産物の検出方法であって、
(1)〜(9)のいずれかに記載のポリヌクレオチド固定化体の前記機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程と、
前記機能性ポリヌクレオチドと前記被験ポリヌクレオチドとのハイブリダイズ産物を検出する工程と、
を備える、検出方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の固定化担体を例示する図である。
図2A】本開示の固定化担体の製造工程の一例を示す図である。
図2B】本開示の固定化担体の製造工程の一例を示す図である。
図2C】本開示の固定化担体の製造工程の一例を示す図である。
図3】本開示の固定化担体の製造工程の他の一例を示す図である。
図4】比較例1のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図5】比較例2のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図6】比較例3のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図7】比較例4のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図8】比較例5のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図9】実施例1のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図10】実施例2のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図11】実施例3のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
図12】実施例4のハイブリダイゼーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書の開示は、固相担体と、2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備えるポリヌクレオチドであって、前記ポリピリミジン領域を介して前記固相担体に固定化された機能性ポリヌクレオチドと、を備え、前記ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されている、ポリヌクレオチド固定化体等に関する。
【0011】
本開示の固定化体によれば、ポリTなどのポリピリミジン領域を用いたポリヌクレオチドの固相担体の固定化に関し、こうしたポリピリミジン領域の良好な固定化能を維持しつつ、ポリピリミジン領域が有するハイブリダイゼーション能を抑制して、ポリヌクレオチド固有の特異的ハイブリダイゼーション能を発揮させることができる。
【0012】
本開示の固定化体の一例を図1に示す。図1に示すように、ポリピリミジン領域を介してポリヌクレオチドプローブが固相担体に固定化されている。本開示によれば、このポリピリミジン領域が発揮する可能性のあるハイブリダイゼーション能を、図1に示すような各種方法で抑制することができる。
【0013】
例えば、図1(a)に示すように、ハイブリダイゼーション工程に先立って、あるいはハイブリダイゼーション工程において、機能性ポリヌクレオチドとは別個のマスキング剤のポリプリン(A,G)領域をポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズさせることができる。また、図1(b)に示すように、機能性ポリヌクレオチドの一部としてポリプリン領域を有するマスキング剤を用いることで、ハイブリダイゼーション工程において、当該ポリプリン領域を第1のポリピリミジンポリプリン領域をハイブリダイズさせるようにする。
【0014】
また、図1(c)に示すように、ポリピリミジン領域を非天然型、すなわち、L体のピリミジンを含むようにすることが挙げられる。また、図1(b),(c)に示すように、ハイブリダイゼーション系において、ポリピリミジン領域にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するマスキング剤を同時に存在させるようにすることが挙げられる。これにより、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されることになる。
【0015】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたポリヌクレオチド固定化体を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0016】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本明細書の開示を実施する際に必須のものではなく、特に本明細書の開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本明細書の開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0017】
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0018】
以下、本開示について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(ポリヌクレオチド固定化体)
本開示のポリヌクレオチド固定化担体は、固相担体と、2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域と機能的な塩基配列からなる機能性領域とを備える機能性ポリヌクレオチドとを備えている。
【0020】
(固相担体)
固相担体は、ポリヌクレオチドを固定化でき、液体存在下でのハイブリダイゼーションにおいて固相を維持できるものであれば特に限定されない。固相担体の材料は特に限定されないが、各種プラスチックなどの高分子材料、ガラスを含むセラミックス、金属等が挙げられる。また、固相担体は緻密質であってもよいが、多孔質であってもよい。特に、多孔質の固相担体は、ポリヌクレオチド間のアフィニティーに基づくクロマトグラフィー用(展開型ハイブリダイゼーション用)の担体として好適である。多孔質担体は、キャピラリー現象により液体を移動させることが可能な従来公知のものを採用できる。例えば、ポリエーテルスルホン、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリマーを主体とした材料が挙げられる。また、セルロースアセテート、ろ紙などのセルロース系材料も好ましく用いることができる。また、固相担体は、単一の固相材料で構成されている必要は必ずしもない。全体としてキャピラリー現象によりハイブリダイゼーション媒体が移動可能であれば、複数の固相担体で連結されていてもよい。
【0021】
固相担体の形状は、特に限定されないで、各種形態を採ることができる。例えば、球状、不定形状などの粒子状、棒状体のほか、シート状、フィルム状等の平板状である。棒状ないし平板状であると、機能性ポリヌクレオチドを特定位置ないし配列で固定化することにより、当該固定化位置の位置情報を、標的核酸などの検出など機能性ポリヌクレオチドの機能発現の確認に利用できる。また、固相担体の形状は、ハイブリダイゼーションの形態に応じて適宜設定できる。すなわち、固相担体は、後述する浸漬型のハイブリダイゼーション用担体であってもよいし、展開型ハイブリダイゼーション用担体であってもよい。
【0022】
また、固相担体は、機能性ポリヌクレオチドの固定化能や、機能性ポリヌクレオチドによって捕捉しようとするターゲットの固相担体へ非特異的吸着を抑制できるように種々の表面処理や薄膜が付与されていてもよい。
【0023】
また、固相担体は、後述するマスキング剤が予めその少なくとも一部に保持された形態であってもよい。こうすることで、被験ポリヌクレオチドと接触させるハイブリダイゼーション工程において、ハイブリダイゼーション媒体にマスキング剤を存在させることができる。マスキング剤を固相担体に保持させる形態は特に限定されない。固相担体が緻密質の場合には、その表面の一部又は全体に付着させてもよい。また、固相担体が多孔質の場合には、含浸保持させてもよい。
【0024】
(機能性ポリヌクレオチド)
本開示におけるポリヌクレオチドは、ヌクレオチドとしてデオキシリボヌクレオチドやリボヌクレオチドなどのヌクレオチドあるいはその均等物の重合体を意味する。ポリヌクレオチドは、一般に、リボースないしデオキシリボースがリン酸エステル結合で連結されたバックボーンを有している。均等物としては、N−(2−アミノエチル)グリシンがアミド結合で結合したバックボーンを有し、DNA等が保持しうる塩基を保持可能なPNAであってもよいし、アルキレンをリン酸エステル結合で結合したバックボーンを備えて同様に塩基を保持可能な人工核酸であってもよい。
【0025】
機能性ポリヌクレオチドにおけるバックボーンは、典型的には、デオキシリボースのリン酸エステル骨格を主体としている。
【0026】
また、機能性ポリヌクレオチドが保持しうる塩基も、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、ウラシルなどの天然塩基の他に、必要に応じて適宜修飾がなされた人工塩基を保持することができる。当業者は、こうした人工塩基は、蛍光性、安定性、塩基対合性等に関し、機能が改変されたものを公知の各種の修飾塩基から適宜選択することができる。
【0027】
機能性ポリヌクレオチドは、特にその重合数を限定するものではないが、数個〜300個程度とすることができる。典型的には、10個程度〜200個以下程度である。
【0028】
(機能性領域)
ポリヌクレオチドは、機能的な塩基配列からなる機能性領域を備えることができる。機能性領域は、塩基の対合による所望のハイブリダイゼーションを生じさせる機能的な塩基配列であればよい。したがって、機能的な塩基配列は特に限定しないで、天然由来の塩基配列であってもよいし、人工的な塩基配列であってもよい。天然由来の塩基配列としては、特定の遺伝子に関連したDNAやRNAとハイブリダイズ可能な塩基配列が挙げられる。また、人工的な塩基配列としては、人工的に決定されたハイブリダイゼーションに適したプローブ配列等が挙げられる。人工配列としては、たとえば、特異的なハイブリダイゼーションが可能なプローブ配列(配列番号1から100)が挙げられる。機能性領域は、典型的には、試料等から抽出されたあるいはPCRにより増幅されたDNAや、DNAタグ鎖を備える物質等をハイブリダイゼーションにより捕捉可能に構成されている。
【0029】
概して、機能性領域は、D体のリボースないしデオキシリボースを主鎖の骨格に有している。リボースあるいはデオキシリボースを主鎖骨格に有しない場合、例えばPNA等の場合にも、このようなD体糖鎖の主鎖と同様のハイブリダイゼーション能を発揮できるような主鎖構造が備えられる。
【0030】
(ポリピリミジン領域)
機能性ポリヌクレオチドは、2以上のピリミジン塩基が連続する塩基配列からなるポリピリミジン領域を備えることができる。2以上のピリミジン塩基が連続することで紫外線などの電磁波照射により、固相担体への結合能が発揮される。こうした結合能の発揮は、理論的には必ずしも明らかではないが、ピリミジン二量体の形成に関連していることが考えられる。ピリミジン塩基としては、チミンのほか、シトシン、ウラシル、5−メチルシトシンが挙げられる。好ましくはチミンである。
【0031】
ポリピリミジン領域は、2以上のピリミジン塩基が連続していればよく、連続するピリミジン塩基は、同一であっても異種であってもよい。固定化能やコスト等を考慮すると2以上の同一のピリミジン塩基が連続することが好ましく、同一ピリミジン塩基が2以上連続する領域を有していれば、さらに、別個に他の種類であってかつ互いに同一のピリミジン塩基の連続領域を有していてもよい。
【0032】
ポリピリミジン領域は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上連続するピリミジン塩基を備えていることが好ましい。ピリミジン塩基の連続数は、固定化能に大きく寄与しているからである。上限は、特に限定しないが、30個以下であることが好ましく、より好ましくは20個以下である。
【0033】
機能性ポリヌクレオチドは、2以上のポリピリミジン領域を備えていてもよい。2以上のポリピリミジン領域が、それぞれ異なるピリミジン塩基からなる場合、これらの領域は連続していてもよいし、1以上の他のヌクレオチド等が介在されていてもよい。2以上のポリピリミジン領域は、1以上の他のヌクレオチド等が介在されて、それぞれ同一のピリミジン塩基から構成されていてもよい。
【0034】
ポリピリミジン領域は、機能性領域と同様に、概して、D体構造の主鎖骨格を備えることができる。なお、後述するように、L体を含めることで、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制することができる。
【0035】
機能性ポリヌクレオチドは、固相担体に固定化されている。機能性ポリヌクレオチドは、適宜パターン化された形態で、固相担体の固定化される。ポリヌクレオチドの固定化は、後段で詳述するが、固相担体上に供給したポリヌクレオチドに対して電磁波照射することによって固定化されている。こうした固定化は、ポリピリミジン領域に対する電磁波照射によって形成した二量体と固相担体表面との相互作用によるものと考えられている。したがって、ポリヌクレオチドは、ポリピリミジン領域を介して固相担体に固定化されているといえる。
【0036】
なお、固相担体に対するポリヌクレオチドの固定化のパターンは特に限定されないで各種形態を採ることができる。固相担体の形態によっても異なるが、平板状の固相担体に固定化する場合には、アレイ状、ストライプ状等、ポリヌクレオチドが固定化された位置の位置情報を取得に適したパターンで固定化されていることが好ましい。
【0037】
(ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の抑制)
本開示のポリヌクレオチド固定化体では、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されている。ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の抑制態様として、例えば、以下の各種態様が挙げられる
【0038】
(第1の態様:機能性ポリヌクレオチドとポリプリン領域を有するマスキング剤との組合せ)
ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制するには、マスキング剤を用いることができる。マスキング剤は、ポリピリミジン領域に対してそのポリプリン領域をハイブリダイズさせることができるものである限り、既に記載した機能性ポリヌクレオチドが採りうる各種形態の重合体構造等適宜採りうることができる。
【0039】
マスキング剤は、ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を備えることができる。ポリプリン領域は、ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズすることで、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制することができる。
【0040】
ポリプリン領域は、ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能に構成されている。例えば、ポリピリミジン領域がチミン塩基を2以上連続する場合には、ポリプリン領域は、アデニンを1以上連続してポリピリミジン領域に対してハイブリダイズ可能に構成されていることが好ましい。ポリプリン領域は、ポリピリミジン領域の少なくとも一部とハイブリダイズ可能であればよいが、好ましくはポリピリミジン領域の50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、一層好ましくは90%以上、最も好ましくは100%に対してハイブリダイズする塩基数で構成されている。
【0041】
ポリプリン領域は、ポリピリミジン領域に対してより高い特異性でハイブリダイズ可能であることが好ましく、より好ましくはポリピリミジン領域に対して完全に相補的である。
【0042】
機能性ポリヌクレオチドがポリピリミジン領域を複数個備える場合には、マスキング剤は、これらのうち1又は2以上のポリピリミジン領域に対するポリプリンプリン領域を備えることができる。また、複数個のポリピリミジン領域に対して1又は2以上のマスキング剤を用いることができる。
【0043】
マスキング剤は、機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチドとすることができる。固相担体に固定化される機能性ヌクレオチドとは別個のポリヌクレオチドとすることで、機能性ポリヌクレオチドの合成手順を簡素化できる。例えば、ポリピリミジン領域がポリTの場合には、マスキング剤は、ポリプリン領域としてポリAを備えることができる。機能性ポリヌクレオチドが、2以上のポリピリミジン領域を備えるとき、マスキング用ヌクレオチドは、これら2以上のポリピリミジン領域にハイブリダイズする2以上のポリプリン領域を備えていてもよい。この場合、2つのポリプリン領域間には、適当なリンカーを備えていてもよいし、ポリピリミジン領域間に介在される塩基に対合可能な塩基を備えていてもよい。
また、2以上のポリピリミジン領域に対して、2以上のマスキング剤を備えていてもよい。2以上のマスキング剤としては、各ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズするポリプリン領域をそれぞれ備える2つのマスキング剤を備えていてもよい。なお、2以上のポリピリミジン領域に対して、1種類のポリプリン領域がハイブリダイズ可能である場合がある。この場合には、共通のポリプリン領域を備える1つのマスキング剤を用いることができる。
【0044】
マスキング剤を機能性ポリヌクレオチドとは独立したポリヌクレオチドとするとき、機能性ヌクレオチドに対してマスキング剤を供給するタイミングは、ハイブリダイゼーション工程において、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できるのであれば特に限定されない。したがって、機能性ヌクレオチドの固相担体への固定化時、固定化後であってハイブリダイゼーション前、ハイブリダイゼーション時のいずれであってもよい。機能性ポリヌクレオチドへのマスキング剤の供給については後段で詳述する。
【0045】
(第2の態様:ポリヌクレオチドの一部にポリプリン領域を有するマスキング剤を有する機能性ポリヌクレオチド)
また、マスキング剤は、機能性ポリヌクレオチドの一部に備えることもできる。すなわち、ポリプリン領域を、予め、機能性ポリヌクレオチドの一部とすることができる。こうすることで、確実にポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できるとともに、機能性オリゴヌクレオチドに対してマスキング剤を供給する操作が省略できる。
【0046】
マスキング剤を機能性ポリヌクレオチドの一部とするとき、ポリプリン領域は、ポリピリミジン領域に対してポリプリン領域が単鎖のポリヌクレオチド内においてハイブリダイズできるように備えられる。典型的には、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とは、単鎖である機能性ポリヌクレオチドの5’末端側又は3’末端側において、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とが対合して少なくとも部分的にステムを形成するように備えられる。
【0047】
例えば、機能性ポリヌクレオチド鎖の5’末端又は3’末端にポリピリミジン領域を備えるとともに、ポリプリン領域を、前記ポリピリミジン領域のさらに5’末端側又は3’末端側(すなわち、より末端側)に備えるようにすることができる。また、例えば、機能性ポリヌクレオチド鎖の5’末端又は3’末端にポリピリミジン領域を備えるとともに、それよりも中央より、すなわち、それぞれ3’末端側又は5’末端側にポリプリン領域を備えるようにすることができる。
【0048】
ポリピリミジン領域とポリプリン領域とは、適当なヌクレオチドあるいはその類似体であってもよいリンカーを介して備えられていてもよいし、直接連結されていてもよい。
【0049】
また、機能性ポリヌクレオチドが2以上のポリピリミジン領域を備えるときには、ポリプリン領域もこれらのうち少なくとも1つ、好ましくは全てのポリピリミジン領域にハイブリダイズするポリプリン領域を備えるようにする。
【0050】
(第3の態様:ポリピリミジン領域あるいはその近傍に非天然型ヌクレオチドを備える機能性ポリヌクレオチド)
ポリピリミジン領域あるいはその近傍へ非天然型のヌクレオチド等を備えさせることで、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できる。機能性領域は、概してD体で構成されていることにより、特定機能、特に、天然由来のDNA等とのハイブリダイゼーション能を発揮する。したがって、ポリピリミジン領域が、D体によるハイブリダイゼーション能を阻害しないようにそれ自体のハイブリダイゼーション能を抑制するには、ポリピリミジン領域あるいはその近傍にL体を導入することが好ましい。
【0051】
ポリピリミジン領域におけるL体は、L体のリボースないしデオキシリボースのリン酸エステルを主鎖骨格としピリミジン塩基を保持するL体ヌクレオチドとすることができる。また、既に説明したように、ヌクレオチドのL体糖鎖と同様の特性を発揮するL体構造を主鎖骨格としてピリミジン塩基を保持していてもよい。以下、L体ヌクレオチド及び同様の特性を発揮するL体構造体をL体様構造体という。ポリピリミジン領域におけるL体様構造体は、単独であってもよいが、固定化能を考慮すると、L体のピリミジン塩基が2以上連続することが好ましい。より好ましくは連続する2以上ピリミジン塩基がL体であることが好ましい。
【0052】
また、ポリピリミジン領域の近傍又は隣接してL体様構造体を備えるようにしてもよい。L体様構造体は、隣接する第1のポリピリミジン塩基とは異なるピリミジン塩基を備える場合のほか、プリン塩基、人工塩基などを備えることができる。また、塩基を備えていなくてもよい。こうしたL体様構造体をポリピリミジン領域の近傍等に備えることで、D体からなるポリピリミジン領域におけるハイブリダイゼーション能を抑制できる。
【0053】
複数のポリピリミジン領域を備える場合、これらポリピリミジン領域の間にL体様構造体を介在させてもよい。
【0054】
以上説明した、本開示のポリヌクレオチド固定化体によれば、ポリピリミジン領域によって機能性ポリヌクレオチドが固相担体に固定されているとともに、そのポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されているために、このハイブリダイゼーション能に基づく非特異的なハイブリダイゼーションを抑制して、機能性ポリヌクレオチドの機能性領域に基づくハイブリダイゼーションを優れた精度及び感度で実施できる。
【0055】
マスキング剤を機能性ポリヌクレオチドと別個のポリヌクレオチド等とすることで、機能性オリゴヌクレオチドの合成コストを低下させることができる。また、マスキング剤を機能性ポリヌクレオチドの一部とすることで、確実にポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制でき、また、機能性ポリヌクレオチドに対してマスキング剤を供給する操作も省略できる。
【0056】
なお、本開示の固定化体に関し、機能性ポリヌクレオチドにおけるポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の複数の抑制態様をそれぞれ説明したが、固定化体は、これらの態様のうちの1つのみを備える固定化体を製造するものであってもよいし、組合せ可能な2以上抑制態様を同時に備えていてもよい。
【0057】
(ポリヌクレオチド固定化体の製造方法)
本開示によれば、本開示のポリヌクレオチド固定化体の製造に適した製造方法も提供される。本製造方法は、機能性ポリヌクレオチドを、固相担体に対して、ポリピリミジン領域を介して固定化する工程と、を備えている。さらに、本製造医方法は、固定化工程において、あるいは固定化工程の後に、前記ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制することができる。
【0058】
本製造方法によれば、機能性ポリヌクレオチドを簡易にかつ強固に固相担体に固定化できるとともに、機能性ポリヌクレオチドは高い精度及び感度でターゲットを捕捉できるポリヌクレオチド固定化体を得ることができる。固定化体は、ハイブリダイゼーション工程においてポリピリミジン領域によるハイブリダイゼーション能が抑制されていれば足りる。したがって、ハイブリダイゼーション工程に先立って各種態様でそのハイブリダイゼーション能が抑制される。
【0059】
本製造方法における固定化工程は、機能性ポリヌクレオチドのポリピリミジン領域を利用する。固定化工程では、機能性ポリヌクレオチドを概して溶液の状態で固相担体に対して供給する。固相担体上の機能性ポリヌクレオチドを含む液滴を、必要に応じて乾燥し、その後、電磁波を照射することで機能性ポリヌクレオチドを固相担体に固定する。電磁波の照射条件は、特に限定しないが、波長が220nm〜380nmの紫外線であることが好ましく、照射量は10〜5000mJ/cm2が好ましく、100〜2000mJ/cm2がさらに好ましい。
【0060】
その他、機能性ポリヌクレオチドの固相担体への供給方法等は、当業者において周知である。したがって、当業者であれば公知のDNAアレイやDNAビーズの製造方法に従い、機能性ポリヌクレオチドを固相担体に固定化した固定化体を製造することができる。
【0061】
固定化工程において、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制するには、固定化工程において、機能性ポリヌクレオチドとマスキング剤とを相互作用させるようにする。例えば、以下の実施態様による固定化工程が挙げられる。図2A〜2Cには、固定化工程における第1のポリピリミジンのハイブリダイゼーション能の抑制を例示する。
【0062】
図2Aに示すように、機能性ポリヌクレオチドを、当該ポリヌクレオチドとは別個のマスキング剤を併存させた状態で、固相担体に固定化することで、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できる。具体的には、例えば、機能性ポリヌクレオチドとマスキング剤との混合溶液を、固相担体に対して供給し、固定化(電磁波照射等)することが挙げられる。マスキング剤は、混合溶液中においてあるいは固相担体上において、ポリプリン領域とポリピリミジン領域とが相互作用した結果、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制される。
【0063】
なお、機能性ポリヌクレオチドとマスキング剤とは必ずしも同時に固相担体上に供給されなくもよい。機能性ポリヌクレオチドを固相担体上の供給後あるいは供給前に、マスキング剤を機能性ポリヌクレオチドの供給部位(あるいは供給予定部位)に供給してもよい。これらの態様によれば、固相担体上において、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とが相互作用することができる。
【0064】
さらに、図2Bに示すように、一部にマスキング剤を備える機能性ポリヌクレオチドを固定化に用いることが挙げられる。マスキング剤は、機能性ポリヌクレオチドの溶液中においてあるいは固相担体上において、ポリプリン領域とポリピリミジン領域が相互作用した結果、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制される。
【0065】
図2Cに示すように、ポリプリン領域又はその近傍にL体様構造体を備える機能性ポリヌクレオチドを用いることが挙げられる。当該機能性ポリヌクレオチドでは、L体様構造体の存在によって本来的にポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制されているため、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション工程におけるハイブリダイゼーション能の発揮は抑制される。
【0066】
また、例えば、以下の実施態様による固定化工程後において、機能性ポリヌクレオチドとマスキング剤とを相互作用させるようにしてもよい。すなわち、固定化工程後の後処理工程を備えていてもよい。図3には、かかる後処理工程を例示する。
【0067】
図3に示すように、機能性ポリヌクレオチドを固相担体に固定化する工程後に、機能性ポリヌクレオチドが固定化された固相担体とマスキング剤とをハイブリダイゼーションする工程を後処理工程として実施できる。こうすることで、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とを相互作用させることができ、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できる。
【0068】
こうした後処理工程は、マスキング剤を含むハイブリダイゼーション媒体を用いて固相担体上の機能性ポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションを実施する。
【0069】
後処理工程としてのハイブリダイゼーション工程は、固相担体をハイブリダイゼーション媒体に浸漬して行う浸漬型のハイブリダイゼーション工程であってもよいし、固相担体の一部にハイブリダイゼーション媒体(クロマトグラフィー媒体でもある)を供給して毛細管現象により固相担体を移動させるクロマトグラフィー型(展開型)のハイブリダイゼーション工程であってもよい。本来的に実施するターゲットとのハイブリダイゼーション工程と同一形態で実施することが好ましい。
【0070】
後処理工程は、常法に従い実施できる。すなわち、汎用されるハイブリダイゼーション媒体を用い、同様に汎用される温度条件、時間で実施される。典型的には、浸漬型ハイブリダイゼーションの場合には、20℃〜60℃のある特定の設定された温度で1時間〜2時間程度の反応時間とすることができ、展開型ハイブリダイゼーションの場合には、20℃〜40℃の間の環境温度で数分〜30分程度の反応時間とすることができる。
【0071】
後処理工程後は、浸漬型ハイブリダイゼーションの場合には、過剰なマスキング剤を洗浄により除去することが好ましい。展開型ハイブリダイゼーションの場合には、必要に応じて洗浄してもよい。
【0072】
なお、後処理工程は、必ずしも浸漬型ハイブリダイゼーションや展開型ハイブリダイゼーションの態様でなくてもよく、固定化後に、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とが相互作用できるものであればよい。したがって、固相担体上の機能性ポリヌクレオチドの固定化部位に対してマスキング剤溶液を供給してすることによっても、可能である。
【0073】
以上説明したように、本製造方法によれば、機能性ポリヌクレオチドがポリピリミジン領域を備えることで、機能性ポリヌクレオチドを簡易にかつ強固に固相担体に固定化できる。さらに、本製造方法によれば、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能もまた簡易に抑制できて、結果として、優れた確度及び感度でターゲットを捕捉できるポリヌクレオチドの固定化体を製造できる。
【0074】
なお、本製造方法においては、機能性ポリヌクレオチドにおけるポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の複数の抑制態様や方法をそれぞれ説明したが、これらの態様のうちの1つのみを備える固定化体を製造するものであってもよいし、組合せ可能な2以上抑制態様を同時に備える固定化体を製造するものであってもよい。例えば、固定化体は、機能性ポリヌクレオチドと別体のマスキング剤と機能性ポリヌクレオチドの一部に備えられるマスキング剤とを併用する態様を備えていてもよい。また、本製造方法は、複数の抑制方法を実施するものであってもよい。例えば、機能性ポリヌクレオチドの固定化工程においてマスキング剤を用いるとともに、固定化工程後にもマスキング剤で後処理工程を実施することができる。
【0075】
(ハイブリダイズ産物の生産方法等1)
本開示のハイブリダイズ産物の生産方法は、本開示のポリヌクレオチド固定化体の機能性領域とハイブリダイズ可能な被験ポリヌクレオチドとを接触させるハイブリダイゼーション工程、を備えることができる。本生産方法によれば、被験ポリヌクレオチドと機能性ポリヌクレオチドの機能性領域とのハイブリダイゼーションを、ポリピリミジン領域によるハイブリダイゼーション能により阻害されることなく、高い確度かつ被験ポリヌクレオチドが低濃度であっても、被験ポリヌクレオチドと機能性ポリヌクレオチドとのハイブリダイズ産物を生成させることができる。
【0076】
被験ポリヌクレオチドとしては、特に限定しないで各種態様ものが使用される被験ポリヌクレオチドとしては、機能性領域とハイブリダイズ可能な領域を持っていればよく、DNA1本鎖若しくは二本鎖のほか、RNA一本鎖若しくは二本鎖、さらには、DNA/RNAハイブリッド、DNA/RNAキメラ、部分二本鎖DNA等が挙げられる。また、ハイブリダイズ領域をDNAタグ等として有する抗体などのタンパク質等も挙げられる。
【0077】
こうした被験ポリヌクレオチドは、天然のあるいは人工的に合成されたものであってもよい。被験ポリヌクレオチドは、生体試料等からPCRによる増幅反応によって取得されるものであってもよい。
【0078】
被験ポリヌクレオチドは、ハイブリダイズ産物を検出可能に標識物質又は標識物質を結合可能な物質を備えていてもよい。標識物質は、特に限定しないが、典型的には、蛍光、放射能、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、燐光、化学発光、着色などを利用した標識物質が挙げられる。標識物質は、目視(肉眼で)で検出可能な発光又は発色を提示する発光物質又は発色物質であることが好ましい。この種の標識物質としては、典型的には、各種染料、各種顔料、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム化合物、オレフィン、エノールエーテル、エナミン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、ルシゲニン、ルシフェリン及びエクリオンを包含する化学発光物質が挙げられる。また、こうした標識物質でラベルされているラテックス粒子などの粒子も挙げられる。さらに、金コロイド若しくはゾル又は銀コロイド若しくはゾルを包含するコロイド若しくはゾル等が挙げられる。さらにまた、金属粒子、無機粒子等が挙げられる。
【0079】
標識物質結合物質は、例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、低分子化合物−タンパク質相互作用等を利用できる。例えば、抗原抗体反応における抗体や、アビジン(ストレプトアビジン)−ビオチンシステムにおけるビオチン、抗ジゴキシゲニン(DIG)−ジゴキシゲニン(DIG)システムにおけるジゴキシゲニン、又は抗FITC−FITCシステムにおけるFITC等に代表されるハプテン類などが挙げられる。この場合、最終的に検出のために用いられる標識物質は、標識物質結合物質と相互作用する他方の分子又は物質(例えば、抗原、すなわち、ストレプトアビジン、抗FITCなど)を、標識物質結合物質との結合のための部位として備えるように修飾される。
【0080】
ハイブリダイゼーション工程は、既に説明したように、浸漬型ハイブリダイゼーションであってもよいし、展開型ハイブリダイゼーションであってもよい。これらのハイブリダイゼーション条件はそれぞれ当業者において周知であり、当業者であれば必要に応じて公知技術を参照して実施することができる。
【0081】
本ハイブリダイズ産物の生産方法における、ハイブリダイゼーション工程後に、ハイブリダイズ産物の検出工程を備えることができる。これによりハイブリダイズ産物を検出することができる。検出工程は、ハイブリダイズ産物が保持する標識物質に基づいてハイブリダイズ産物を検出する工程である。ハイブリダイズ産物の有無あるいは捕捉量に依存する標識物質の有無あるいはその量に基づくシグナルは、標識物質の種類等に応じた検出方法で検出することができる。こうしたシグナルに基づき、被験ポリヌクレオチドの存在やその量等を評価することができる。
【0082】
(ハイブリダイズ産物の生産方法等2)
本開示によれば、また、別態様のハイブリダイズ産物の生産方法及び検出方法が提供される。すなわち、機能性ポリヌクレオチドを固定化した固定化担体であって、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が未だ抑制されていない状態の固定化担体を用いた生産方法等も提供される。
【0083】
本生産方法等では、既に説明したいずれの態様のポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の抑制状態を備えていない機能性ポリヌクレオチドを固相担体に固定化した固定化体を用いる。すなわち、本生産方法等では、L体様構造体もマスキング剤もその一部に有していない機能性ポリヌクレオチドを固定化した固定化体に対して、ハイブリダイゼーション工程に先立ってあるいはハイブリダイゼーション工程において、ポリピリミジン領域とポリプリンとを相互作用させるようにする。
【0084】
ハイブリダイゼーション工程に先立って、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とを相互作用させるには、ハイブリダイゼーション工程前に前処理工程として、固相担体上の機能性ポリヌクレオチドとマスキング剤とを接触させる工程を実施する。当該工程により、両者は相互作用し、その結果、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制される。この前処理工程は、既述のポリヌクレオチド固定化体の製造方法における後処理工程と同様にして実施することができる。
【0085】
また、ハイブリダイゼーション工程において、ポリピリミジン領域とポリプリン領域とを相互作用させるには、ハイブリダイゼーション媒体において被験ポリヌクレオチドとともにマスキング剤を存在させるようにすればよい。こうすることで、まさにハイブリダイゼーション工程においてポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を抑制できる。
【0086】
例えば、ハイブリダイゼーション媒体にマスキング剤を含めておくことができる。また、マスキング剤を予め保持させた固相担体を用いてもよい。こうすることで、ハイブリダイゼーション工程においてハイブリダイゼーション媒体内にマスキング剤が移動することで、ハイブリダイゼーション媒体にマスキング剤が存在することになる。特に、展開型ハイブリダイゼーションの場合には、固相担体が多孔質体であるために保持させやすい。例えば、展開型ハイブリダイゼーションにおいては、ポリヌクレオチド固定化体の一部(例えば、ハイブリダイゼーション媒体と接触する部位やハイブリダイゼーション媒体が展開に伴い通過する部位であって機能性ポリヌクレオチドの固定化部位よりも手前の部位にマスキング剤を吸着保持させておくようにしてもよい。
【0087】
この態様の前処理工程やハイブリダイゼーション工程を備えることでも、高い確度と検出能でハイブリダイズ産物を生産し検出できる。
【0088】
さらに、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能が抑制された固定化体を用いてハイブリダイゼーション工程を実施する場合においても、こうした前処理工程及び/又はハイブリダイゼーション工程を適用できる。すなわち、こうした工程を実施することで、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能の抑制状態が経時的に低下し、ハイブリダイゼーション能の少なくとも一部が復活した場合であっても、かかるハイブリダイゼーション能の影響を抑制して良好なハイブリダイゼーション工程を実施することができる。
【0089】
(ポリヌクレオチド又はそのセット)
本開示によれば、ポリヌクレオチド(プローブ)やそのセットが提供される。これらのポリヌクレオチドやそのセットは、いずれも機能性領域との相互作用で被験ポリヌクレオチドを捕捉するプローブとして有用である。
【0090】
本開示のセットは、固相担体に固定化するためのポリヌクレオチドのセットである。このセットは、本開示の機能性ポリヌクレオチドと、マスキング剤とを備えている。このセットによれば、確度及び検出感度が良好なハイブリダイゼーションを実現できる。
【0091】
本開示のポリヌクレオチドは、固相担体へ固定化するためのポリヌクレオチドである。このポリヌクレオチドは、本開示の機能性ポリヌクレオチドであってポリピリミジン領域又はその近傍にL体様構造体を備えるポリヌクレオチドである。
【0092】
また、本開示のポリヌクレオチドは、本開示の機能性ポリヌクレオチドであって、ポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なポリプリン領域を有するマスキング剤をその一部に備えている。
【0093】
(固定化体を含むキット)
本開示によれば、機能性ポリヌクレオチドが固相担体に固定化された固定化体とマスキング剤とのキットも提供される。このキットは、機能性領域との相互作用で被験ポリヌクレオチドを捕捉するプローブとして有用である。このキットにおいて、機能性ポリヌクレオチドは、第1及び第2の態様の機能性ポリヌクレオチドであることが好ましい。特に、第1の態様の機能性ポリヌクレオチドであることが好ましい。このキットは、機能性ポリヌクレオチドのポリピリミジン領域の少なくとも一部にハイブリダイズ可能なマスキング剤を備えることができる。こうしたマスキング剤を備えることで、ハイブリダイゼーション工程に先立って又はハイブリダイゼーション工程において、ポリピリミジン領域のハイブリダイゼーション能を確実に抑制できる。
【0094】
マスキング剤は、独立した試薬としてキットに含まれていてもよいが、固定化担体の固相担体に保持されて、ハイブリダイゼーション工程において固相担体から解放されるようになっていてもよい。
【実施例】
【0095】
以下、本開示を具現化した実施例について説明するが、以下の実施例は本開示を限定するものではない。
【0096】
以下の実験においては、同一の機能性領域に加えて各種形態のポリピリミジン領域等を備えるオリゴヌクレオチド(DNA)を合成し、プローブとして使用して展開型クロマトグラフィーによりハイブリダイゼーションを実施した。
【0097】
(比較例1)
本比較例では、機能性領域とpolyT(20個の連続したチミジンデオキシリボヌクレオチドからなる(以下、polyT(20)と標記する)とを備えるオリゴヌクレオチド(DNA)をプローブとして固相担体に固定化して得られた固定化体を用いた。
【0098】
(1)展開型クロマトグラフィーの作製
メルクミリポア製Hi-Flow Plus メンブレンシート(60mm x 600mm)に表1に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプローブとするプローブ溶液を、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニット(インクジェット法)を用いた日本ガイシ株式会社GENESHOT(登録商標)スポッターを用いて、スポットした。本比較例以下の比較例及び実施例を含む全ての実験例においてフローコントロールとして5’-TTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-biotin-3’を使用した。
【0099】
【表1】
【0100】
スポットの後の処置としてSpectroline社のUV照射装置(XL−1500UV Crosslinker)を用いて、280nmの成分を含む波長にて300mJ/cm2程度の紫外線光の照射を行って固定化を実施した。
【0101】
(2)サンプルの反応
サンプルには(株)日本遺伝子研究所にて合成されたオリゴDNAを使用した。
【0102】
【表2】
【0103】
サンプルを用いての展開型クロマトグラフィーへの反応及びその検出手順は以下の通りとした。
サンプル組成
展開液* 20.0 μl
ラテックス液* 2.0 μl
サンプル(10nM) 4.2 μl
TE buffer 15.8 μl
Subtotal 42.0 μl
【0104】
なお、使用したラテックス保存液には青色系の着色剤を含有するポリスチレン系のラテックスビーズにアビジン(ストレプトアビジン)を被覆させたものを任意の濃度となるようにクロマト展開液で調製を行って使用した。また、クロマト展開液には、Phosphate buffered salineを使用した。
【0105】
(ハイブリダイズおよび発色反応)
上記調製サンプル各42μlを0.2mlチューブに加えて、展開型クロマトグラフィーを差込んで反応を開始した。サンプル液は約20分間ですべて吸い上がり反応は完了した。反応終了後、展開型ハイブリダイゼーション用担体であるクロマトグラフィーを風乾させた後、目視による反応箇所の確認及び画像を撮影した。
【0106】
(検出判定)
各サンプルの反応および乾燥後の発色の有無を目視で確認した。結果を図4に示す。図4に示すように、サンプルAを反応させた場合、Position1への反応に加え、Position2のキャプチャープローブへの非特異的に反応する結果を確認した。サンプルCを反応させた場合はPosition1および2に対し反応する結果を確認した。これは、キャプチャープローブのpolyT配列部分に対しサンプル中のポリAがハイブリダイズしている可能性があることを示す結果であると考えられた。
【0107】
(比較例2)
以下に示すオリゴヌクレオチドを用いる以外は、比較例1と同様に操作した。結果を図5に示す。図5に示すように、比較例1と同様に、サンプルA中のポリAがキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズしている可能性があることを示す結果であると考えられた。
【0108】
【表3】
【0109】
(比較例3)
以下に示すオリゴヌクレオチドを用いる以外は、比較例1と同様に操作した。結果を図6に示す。図6に示すように、比較例1と同様に、サンプルA中のポリAがキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズしている可能性があることを示す結果であると考えられた。
【0110】
【表4】
【0111】
(比較例4)
以下に示すオリゴヌクレオチドを用いる以外は、比較例1と同様に操作した。結果を図7に示す。図7に示すように、いずれにおいても発色を確認できなかった。これはプローブが固相担体に十分に固定されなかった結果であると考えられた。
【0112】
【表5】
【0113】
(比較例5)
以下に示すオリゴヌクレオチドを用いる以外は、比較例1と同様に操作した。なお、Probe9および10配列中のXにはSpecerC3(GrenResearch社アミダイト試薬)を使用した。結果を図8に示す。図8に示すように、比較例1と同様に、サンプルA中のポリAがキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズしている可能性があることを示す結果であると考えられた。
【0114】
【表6】
【0115】
(実施例1)
以下に示すオリゴヌクレオチドをプローブとして用いる以外は、比較例1と同様に操作した。なお、Probe11および12配列中の下線を引いた配列にはL体のアミダイトを用いて合成した。結果を図9に示す。
【0116】
【表7】
【0117】
図9に示すように、サンプルAまたはBそれぞれを反応させた場合、それぞれ狙いとするラインのみ発色を確認できた。一方で、サンプルCを反応させた場合には、いずれのラインにおいても発色は確認できず、各サンプル配列がキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズする可能性が排除されている結果を本改良により示されたと考えられた。
【0118】
(実施例2)
ハイブリダイゼーション工程に先立って、以下に示す前処理工程を行い前処理後のクロマトグラフィーにつきハイブリダイゼーション工程を行った以外は、比較例1と同様に操作した。前処理工程は、ハイブリダイゼーション媒体20μlにポリA(20)(10μM)4μl及びTEbuffer16μlを加えた前処理試薬40μlを0.2mlにチューブに加えてクロマトグラフィーを差し込んで展開を開始し、20分後で展開を終了させ、風乾した。結果を図10に示す。
【0119】
図10に示すように、サンプルAまたはBそれぞれを反応させた場合、それぞれ狙いとするラインのみ発色を確認できた。一方で、サンプルCを反応させた場合には、いずれのラインにおいても発色は確認できず、polyTとpolyAとが相互作用してハイブリダイゼーションすることにより、各サンプル配列がキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズする可能性が排除されている結果を本改良により示されたと考えられた。
【0120】
(実施例3)
オリゴヌクレオチド溶液に、予めpolyA(20)配列のDNAプローブ溶液を10等量混合して用いる以外は、比較例1と同様に操作した。結果を図11に示す。
【0121】
図11に示すように、サンプルAまたはBそれぞれを反応させた場合、それぞれ狙いとするラインのみ発色を確認できた。一方で、サンプルCを反応させた場合には、いずれのラインにおいても発色は確認できなかった。このことは、実施例2と同様に、polyTとpolyAとが相互作用してハイブリダイゼーションすることにより、各サンプル配列がキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズする可能性が排除されている結果を本改良により示されたと考えられた。
【0122】
(実施例4)
以下に示すオリゴヌクレオチドをプローブとして用いる以外は、比較例1と同様に操作した。結果を図12に示す。
【0123】
【表8】
【0124】
図12に示すように、サンプルAまたはBそれぞれを反応させた場合、それぞれ狙いとするラインのみ発色を確認できた。一方で、サンプルCを反応させた場合には、いずれのラインにおいても発色は確認できなかった。このことは、実施例2、3と同様に、polyTとpolyAとが相互作用してハイブリダイゼーションすることにより、各サンプル配列がキャプチャープローブのpolyT配列部分に対しハイブリダイズする可能性が排除されている結果を本改良により示されたと考えられた。
【配列表フリーテキスト】
【0125】
配列番号1〜102、106〜117:プローブ
配列番号103〜105:合成オリゴヌクレオチド
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]