【実施例1】
【0019】
本発明の実施形態に係るフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」)について説明する。
図1に示すように、FW装置100は、フープ巻き装置30によるフープ巻きと、ヘリカル巻き装置40によるヘリカル巻きとをライナー1に対して交互に繰り返し行うことにより、ライナー1の周囲に樹脂を含浸させた複数本の繊維束Fを巻き付けていく装置である。
図1は、フープ巻き装置30が巻き付け位置にある状態を示している。
【0020】
図1に示す矢印A、Bは、FW装置100の前後方向と、ヘリカル巻きにおけるライナー1の移送方向を示している。ヘリカル巻きではライナー1をFW装置100の前後方向に往復動させるため、ライナー1は矢印Aの方向に移送される場合と、矢印Bの方向に移送される場合とがある。ライナー1が移送される方向を前側、前側の反対側を後側と定義する。FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まるものとする。
【0021】
ライナー1は、例えば高強度アルミニウム材やポリアミド系樹脂等によって形成された略円筒形状の中空容器である。ライナー1は、外周面1Sに複数本の繊維束Fが巻き付けられ、複数の繊維層が形成されることによって耐圧性能の向上が図られる。つまり、ライナー1は、耐圧容器を構成する基材とされる。尚、以下の説明では、ライナー1は、繊維束Fを巻き付ける前の状態と、繊維束Fを巻き付けている途中の状態の両方を意味するものとする。例えば、ライナー1の外周面1Sとは、巻き付けられた繊維束Fの表面であることも意味する。
【0022】
図1、
図2に示すように、FW装置100は、主に主基台10と、ライナー移送装置20と、フープ巻き装置30と、ヘリカル巻き装置40と、クリールスタンド50と、制御部90と、で構成される。
【0023】
主基台10は、FW装置100の基礎を構成する。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11が設けられている。ライナー移送装置用レール11には、ライナー移送装置20が載置されている。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11に対して平行にフープ巻き装置用レール12が設けられている。フープ巻き装置用レール12には、フープ巻き装置30が載置されている。
【0024】
このような構成により、主基台10に対してライナー移送装置20ならびにフープ巻き装置30を移動させることが可能である。ヘリカル巻き装置40は主基台10に固定される。
【0025】
ライナー移送装置20は、ライナー1を回転させながら移送する装置である。ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する。ライナー移送装置20は、主に基台21と、ライナー支持部22とで構成される。ライナー移送装置20の駆動は制御部90により制御される。
【0026】
基台21の上部には、一対のライナー支持部22が設けられている。ライナー支持部22は、ライナー支持フレーム23と回転軸24で構成される。ライナー支持フレーム23は、基台21から上方に向けて延設される。回転軸24は、ライナー支持フレーム23から前後方向に向けて延設される。ライナー1は、回転軸24に取り付けられ、図示しない動力機構によって一方向に回転される。
【0027】
このような構成により、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0028】
フープ巻き装置30は、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fを同時に巻き付けて繊維層を形成する装置である。フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となる、いわゆるフープ巻きを行なう。フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置33と、で構成される。フープ巻き装置30の駆動は制御部90により制御される。
【0029】
基台31には、動力機構32によって回転されるフープ巻き掛け装置33が設けられている。フープ巻き掛け装置33は、繊維束ヘッドとしての巻き掛けテーブル34を有している。
【0030】
巻き掛けテーブル34は、中央にライナー1を挿通する空間が設けられ、その空間の周囲に複数(本実施形態では4本)のボビンBA、BB、BC、及びBDが配置される(
図4参照)。ボビンBA、BB、BC、及びBDからは、それぞれ繊維束Fがライナー1の外周面1Sに供給される。動力機構32はフープ巻き掛け装置33をライナー1の中心軸回りに回転させる。
【0031】
フープ巻きでは、ライナー1の位置は固定し、フープ巻き装置30をライナー1の中心軸方向に沿って往復動させつつ、フープ巻き掛け装置33をライナー1の中心軸回りに回転させる。これによりフープ巻きが行われる。つまり、フープ巻き装置30は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDから供給された複数本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに臨ませる繊維束ヘッドとしての巻き掛けテーブル34を有しており、ライナー1の軸を中心として巻き掛けテーブル34とライナー1とを相対回転させることで、ライナー1上に複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける構成である。
【0032】
このような構成により、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となるフープ巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。尚、フープ巻き装置30の移動速度や巻き掛けテーブル34の回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能である。
【0033】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fを同時に巻き付けて繊維層を形成する装置である。ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値(例えば、0〜60度)となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42とで構成される。ヘリカル巻き装置40の駆動は制御部90により制御される。
【0034】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42は、第1ヘリカルヘッド43と、第2ヘリカルヘッド44を備えている。第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44には、クリールスタンド50に支持される複数(本実施形態では180本)のボビンB1、B2・・・B180から複数本の繊維束Fが供給され、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fが導かれる。第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44には、それぞれ複数(本実施形態では各々90本)のノズル(図示せず)がライナー1の外周面1Sに向けて放射状に設けられている。複数のノズルによって、ライナー1の外周面1Sに複数本の繊維束Fが導かれ、ライナー1が回転しながら通過することでヘリカル巻きが行なわれる。ヘリカル巻きでは、ヘリカル巻き装置40は固定されており、ライナー移送装置20によりライナー1が回転しながら回転軸方向に移送される。これにより、ヘリカル巻きが行われる。つまり、ヘリカル巻き装置40は、複数のボビンB1、B2・・・B180から供給された複数本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに臨ませる繊維束ヘッドとしての第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44を有しており、ライナー1の軸を中心として第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44とライナー1とを相対回転させることで、ライナー1上に複数本の繊維束Fを同時に巻き付ける構成である。
【0035】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となるヘリカル巻きをライナー1の外周面1Sに対して行なう。尚、ライナー1の移送速度や回転速度を調節することによって、繊維束Fの巻き付け態様を自在に変更可能である。
【0036】
図2に示すように、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40の第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44に設けられる複数(本実施形態では各々90本)のノズルに対して複数本(本実施形態では180本)の繊維束Fを供給する。クリールスタンド50は、主にラック51と、ボビンホルダ軸52と、ガイド53と、で構成される。
【0037】
ラック51には、複数のボビンホルダ軸52が互いに平行に取り付けられている。ボビンホルダ軸52にはそれぞれボビンB1、B2・・・B180が回転自在に支持される。ボビンB1、B2・・・B180は、繊維束Fが引き出されることによって回転し、繊維束Fを解舒する。各ボビンB1、B2・・・B180からライナー1に向かう繊維束Fの経路上には、繊維束Fを案内するガイド53が複数設けられている。各ボビンB1、B2・・・B180から解舒された複数本の繊維束Fは、複数のガイド53を介して対応するヘリカル巻き装置40の各ノズルに供給される。
【0038】
このような構成により、クリールスタンド50は、ヘリカル巻き装置40を構成する複数のノズルに対して複数本の繊維束Fを供給することを可能としている。尚、本実施形態のFW装置100は、
図2に示すクリールスタンド50と同様のクリールスタンド50を複数備えており、各クリールスタンド50からヘリカル巻き装置40に向けて複数本の繊維束Fを供給するように構成されている。
【0039】
次に、本実施形態の特徴部分である、張力検知部110、切断部120、及び把持部130について説明する。本実施形態では、フープ巻き装置30に対して設けられる張力検知部110、切断部120、及び把持部130について説明する。
【0040】
図3に示すように、張力検知部110、切断部120、及び把持部130は、巻き掛けテーブル34上において、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDからライナー1に至る繊維束Fの経路上に配置されている。また、巻き掛けテーブル34上には、張力調整部150が設けられている。
【0041】
張力調整部150は、複数のボビンBA、BB、BC、及びBDから解舒された複数本の繊維束Fに対して一台設けられている。張力調整部150は、複数本の繊維束Fの張力を一括して調整する。張力調整部150は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90により駆動が制御される。
【0042】
張力検知部110は、張力調整部150に対して繊維束Fの走行方向の下流側に設けられている。張力検知部110は、複数本の繊維束Fに対して個別に配置されている。張力検知部110は、張力調整部150とライナー1との間で複数本の繊維束Fの張力を個別に検知する。張力検知部110は、各繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。
【0043】
切断部120及び把持部130は、本実施例では張力調整部150及び張力検知部110に対して繊維束Fの走行方向の下流側に設けられている。切断部120は、張力検知部110とライナー1との間で複数本の繊維束Fを個別に切断する。
図5に示すように、切断部120は、刃部121及び台座部122を有する。台座部122は、刃部121の刃先を受け止める部材である。本実施例では、台座部122としてアンビルを用いている。刃部121と台座部122は、繊維束Fの経路を挟むように配置される。刃部121は、駆動部123に取り付けられている。刃部121は駆動部123により台座部122に対して接離する方向に作動する。駆動部123として例えばソレノイドを用いることができる。
図5Bに示すように、繊維束Fを挟んだ状態で刃部121を台座部122に当接させることで繊維束Fを切断する。
【0044】
制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、切断部120の駆動を制御する。具体的には、制御部90は、張力検知部110から検知信号に基づいて繊維束Fの張力が正常であるか過大であるかを判定する。この判定は、正常な繊維束Fの張力に対応する予め設定された設定値と、張力検知部110からの検知信号とを比較することで行う。制御部90は、繊維束Fの張力が過大であると判定した場合、切断部120の駆動部123を駆動させ、刃部121及び台座部122で張力が過大となった繊維束Fを切断する。
【0045】
把持部130は、切断部120で切断された繊維束Fのうち、ボビンBA、BB、BC、及びBD側に連なる繊維束Fの糸端F1を把持する。把持部130は、切断部120に対して繊維束Fの走行方向の上流側に配置される。本実施例では、把持部130は、張力検知部110と切断部120の間に設けられている(
図3参照)。
図5に示すように、把持部130は、第1把持部材131及び第2把持部材132を有する。第1把持部材131及び第2把持部材132は、繊維束Fを把持する部材である。第1把持部材131及び第2把持部材132は、繊維束Fの経路を挟むように配置される。第1把持部材131は、駆動部133に取り付けられている。第1把持部材131は駆動部133により第2把持部材132に対して接離する方向に作動する。駆動部133として例えばソレノイドを用いることができる。
図5Bに示すように、繊維束Fを挟んだ状態で第1把持部材131を第2把持部材132に当接させることで繊維束Fを把持する。
【0046】
制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、把持部130の駆動を制御する。具体的には、制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、切断部120が繊維束Fを切断した後に、把持部130の駆動部133を駆動させ、第1把持部材131及び第2把持部材132でボビンBA、BB、BC、及びBD側に連なる繊維束Fの糸端F1を保持する。
【0047】
ここで、フープ巻き装置30の巻き掛けテーブル34の具体的な構成について説明する。
図4に示すように、フープ巻き装置30の巻き掛けテーブル34には、ボビンBA、BB、BC、及びBDに対応して、ボビン支持部50が4箇所に配置されている。各ボビン支持部50の近傍には、フレーム80A、・・・80Dが設けられている。ボビンBA、BB、BC、及びBDに対応して設けられているボビン支持部50、フレーム80A、・・・80Dは、略同様の構成である。
【0048】
巻き掛けテーブル34は動力機構32により、
図4において矢印R方向に回転する。動力機構32は、制御部90に接続されており、制御部90からの信号に基づいて、回転及び停止が制御される。繊維供給ガイド75からライナー1へ導かれる繊維束Fは、矢印R方向に回転されながら、ライナー1の外周面1Sに巻き付けられる。繊維束Fは巻き掛けテーブル34の回転によって矢印FA方向に供給される。
【0049】
ボビン支持部50は、巻き掛けテーブル34に対して回転自在に支持されており、制動部としてのヒステリシスブレーキ(図示せず)に連結されている。ヒステリシスブレーキは、各ボビン支持部50に支持されるボビンBA、BB、BC、及びBDの回転を制動するものである。ボビンBA、BB、BC、及びBDが各ボビン支持部50に支持された状態で繊維束Fが引かれることにより、ボビンBA、BB、BC、及びBDが回転し、繊維束Fが引き出される。
【0050】
フレーム80A、・・・80Dは、それぞれガイドローラ71(71A、71B、71C)、・・・74(74A、74B、74C)を支持している。ボビン支持部50に支持されたボビンBA、BB、BC、及びBDからの4本の繊維束Fは、ガイドローラ71(71B、71C)・・・74(74A、74B、74C)に案内されながら、ガイドローラ74Cでまとめられ、ガイドローラ71Aを経由して繊維供給ガイド75に案内される。繊維供給ガイド75は、まとめられた4本の繊維束Fをライナー1の外周面1Sに供給する。
【0051】
張力検知部110、切断部120、把持部130、及び張力調整部150は、ガイドローラ71Aから繊維供給ガイド75に至る繊維束Fの経路の途中に設けられている。
【0052】
次に、繊維束Fの張力が過大である場合の張力検知部110、切断部120、及び把持部130の動作について説明する。
【0053】
例えば、フープ巻き装置30でフープ巻きを行っている最中に、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力が過大になったとする。張力検知部110は、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力を検知し、制御部90に検知信号を送信する。
【0054】
制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力が過大であると判定する。制御部90は、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力が過大であると判定すると、切断部120の駆動部123を駆動させ、刃部121及び台座部122で張力が過大となったボビンBAから解舒される繊維束Fを切断する(
図5B参照)。
【0055】
制御部90は、また、張力検知部110からの検知信号に基づいて、把持部130の駆動を制御する。具体的には、制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、切断部120がボビンBAから解舒される繊維束Fを切断した後に、把持部130の駆動部133を駆動させ、第1把持部材131及び第2把持部材132でボビンBA側に連なる繊維束Fの糸端F1を保持する(
図5B参照)。ライナー1側の繊維束Fの糸端F2はフリーとなり、ライナー1に巻き付けられる。
【0056】
本実施例では、制御部90は、張力検知部110からの検知信号に基づいて、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力が過大であると判定した場合、ボビンBB、BC、及びBDから解舒される繊維束Fの張力が正常であっても、FW装置100の運転を停止させてフープ巻きを停止する。
【0057】
以上説明した本実施例に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0058】
FW装置100によれば、張力検知部110で検知した繊維束Fの張力が過大である場合に、切断部120が繊維束Fを切断するとともに、把持部130がボビンBA、BB、BC、及びBD側に連なる繊維束Fの糸端F1を把持する。繊維束Fの張力が過大である場合に、直ちに切断部120が繊維束Fを切断することで、繊維束Fの巻き付けが完全に停止するまでの時間を待たずに、繊維束Fのライナー1側の糸端F2をフリーにすることができる。このため、繊維束Fの張力が異常に高くなることによるFW装置100自体の破損を防止することができる。また、把持部130がボビンBA、BB、BC、及びBD側の糸端F1を把持するため、切断したボビンBA、BB、BC、及びBD側の繊維束Fが不用意にFW装置100に巻き付くなどの二次的な異常の発生を防止することができる。
【0059】
FW装置100によれば、張力検知部110で検知した繊維束Fの張力が過大である場合に、切断部120が繊維束Fを切断した後に、把持部130がボビンBA、BB、BC、及びBDに連なる繊維束Fの糸端F1を保持する。繊維束Fを切断する前に把持部130が繊維束Fを把持すると、繊維束Fがライナー1側に走行できなくなり、繊維束Fの張力が却って増大する場合がある。切断部120が繊維束Fを切断した後に、把持部130がボビンBA、BB、BC、及びBDに連なる繊維束Fの糸端F1を保持することで、繊維束Fの張力が増大することを抑えることができる。
【0060】
FW装置100によれば、切断部120は、刃部121と、刃部121の刃先を受け止める台座部122と、を有する。繊維束Fの経路は、刃部121と台座部122との間に配置される。このため、繊維束Fを刃部121と台座部122とで押さえながら確実に切断することができる。
【0061】
FW装置100によれば、張力検知部110で検知した繊維束Fの張力が過大である場合に、FW装置100の運転を停止して繊維束Fの巻き付けを停止する。このため、繊維束Fの張力が過大になったことによって生じる製造中の製品への影響を最小限にすることができる。
【実施例3】
【0068】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例では、張力検知部310に高価な張力センサを用いずに位置センサ357を用いている点が実施例1、2と異なっている。
【0069】
図7及び
図8に示すように、張力検知部310、及び切断部320は、把持部330に対して繊維束Fの走行方向の下流側に設けられている。
【0070】
張力検知部310は、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312、固定ローラ313及び固定ローラ314、アーム315、支持部316、及び位置センサ317を備える。第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312は、繊維束Fの経路を規制するとともに、繊維束Fの張力に応じて移動するローラである。第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312は、繊維束Fの走行方向に間隔を開けてアーム315に取り付けられる。固定ローラ313は、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312に対して繊維束Fの走行方向の上流側に配置され、固定ローラ314は、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312に対して繊維束Fの走行方向の下流側に配置される。繊維束Fは、固定ローラ313、第1移動ローラ311、第2移動ローラ312、固定ローラ314の順に掛け回される。
【0071】
アーム315は支持部316に固定されている。支持部316はバネ318で付勢されており、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312によって繊維束Fの経路を凸状に突出させている。バネ318のバネ係数は、凸状の突出量が繊維束Fの張力の変化によって増減し、アーム315の位置が変化するように設定されている。アーム315の近傍には、アーム315の位置を検知する位置センサ317が配置されている。位置センサ317は、繊維束Fの張力が過大になった状態でのアーム315の位置、すなわち第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312の位置を検知し、制御部90に検知信号を送信する。
【0072】
切断部320は、刃部321を備えている。刃部321は、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312が所定の位置に移動することで繊維束Fの経路と交差し、繊維束Fを切断する。刃部321は、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312の間に配置されている。繊維束Fの張力の変化によりアーム315の位置が変化することで、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312に掛け回された繊維束Fは、刃部321に対して接近したり離れたりする。刃部321の位置は、繊維束Fの張力が過大になった状態で、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312に掛け回された繊維束Fに当接して繊維束Fを切断する位置に設定される。
【0073】
把持部330は、張力検知部310及び切断部320に対して繊維束Fの走行方向の上流側に配置される。把持部330の構成は、実施例1の把持部130と同様である。把持部330は、第1把持部材331、第2把持部材332及び駆動部333を備える。制御部90は、張力検知部310からの検知信号に基づいて、把持部330の駆動を制御する。具体的には、制御部90は、張力検知部310からの検知信号に基づいて、把持部330の駆動部333を駆動させ、第1把持部材331及び第2把持部材332でボビンBA、BB、BC、及びBD側に連なる繊維束Fの糸端F1を保持する。
【0074】
次に、繊維束Fの張力が過大である場合の張力検知部310、切断部320、及び把持部330の動作について説明する。
【0075】
例えば、フープ巻き装置30でフープ巻きを行っている最中に、ボビンBAから解舒される繊維束Fの張力が過大になったとする。
図8Bに示すように、アーム315の位置は繊維束Fの張力により変化している。位置センサ317は、繊維束Fの張力が過大になった状態でのアーム315の位置を検知し、制御部90に検知信号を送信する。
【0076】
このとき、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312に掛け回された繊維束Fは、刃部321に当接するため、繊維束Fは切断される。
【0077】
制御部90は、張力検知部310からの検知信号に基づいて、把持部330の駆動を制御する。具体的には、制御部90は、張力検知部310からの検知信号に基づいて、把持部330の駆動部333を駆動させ、第1把持部材331及び第2把持部材332でボビンBA側に連なる繊維束Fの糸端F1を保持する。ライナー1側の繊維束Fの糸端F2はフリーとなり、ライナー1に巻き付けられる。
【0078】
以上説明した本実施例に係るFW装置100によれば、次のような効果を有する。
【0079】
FW装置100によれば、繊維束Fの張力が過大となることにより、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312が移動して繊維束Fの張力が過大であることを検知するため、高価な張力センサが不要である。また、張力が過大となることにより、第1移動ローラ311及び第2移動ローラ312が移動して刃部321が繊維束Fの経路と交差し、繊維束Fを切断する。このため、繊維束Fの張力が過大となった場合、速やかにFW装置100の破損を防止することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0081】
例えば、上記実施例では、本発明をフープ巻き装置30に適用したが、ヘリカル巻き装置40に適用してもよい。
図9に示すように、張力検知部410、切断部420、把持部430、及び張力調整部450は、複数のボビンB1、B2・・・から第1ヘリカルヘッド43、及び第2ヘリカルヘッド44に至る糸道上に配置されている。この例では、180本のボビンB1、B2・・・B180を15のボビン群G1、G2・・・G15に分け、各ボビン群G1、G2・・・G15の12本毎のボビンB1、B2・・・に対して張力検知部410、切断部420、把持部430、及び張力調整部450を設けている。張力検知部410、切断部420、把持部430、及び張力調整部450を配置する位置は、例えば、
図9に示すようにクリールスタンド50上としてもよいが、これに限定されない。
【0082】
また、例えば実施例1において、切断部120、把持部130は、張力調整部150に対して繊維束Fの走行方向の下流側に配置したが、配置する位置は限定されず、例えば張力調整部150に対して繊維束Fの走行方向の上流側に配置してもよい。
【0083】
また、例えば実施例1において、把持部130は、切断部120が繊維束Fを切断した後に繊維束Fを保持するようにしたが、これに限定されない。例えば、把持部130は、切断部120が繊維束Fを切断するのと同時に繊維束Fを保持するようにしてもよい。