特許第6032852号(P6032852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6032852通信品質として無線リンク確立時間を測定する通信装置、プログラム、方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032852
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】通信品質として無線リンク確立時間を測定する通信装置、プログラム、方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20161121BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20161121BHJP
【FI】
   H04W24/08
   H04W88/02 151
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-184112(P2013-184112)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-53547(P2015-53547A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】泉川 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】金月 昭太
【審査官】 深津 始
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−10727(JP,A)
【文献】 特開2003−8648(JP,A)
【文献】 特開2013−38749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 −H04B 7/26
H04W 4/00 −H04W 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有し、通信品質を測定する通信装置において、
前記無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを前記通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
前記メッセージ送受信手段における前記メッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
前記無線インタフェースの無線リンク状態と、前記往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
前記往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段と
を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記無線リンク確立時間算出手段は、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との比率を、無線リンク確立所要割合として算出し、
通信品質として無線リンク確立時間に対する無線リンク確立所要割合を導出することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記無線リンク確立時間算出手段は、第1の往復通信時間を計測した際の通信量と、第2の往復通信時間を計測した際の通信量と、所定の通信速度情報とに基づいて、前記無線リンク確立時間を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記メッセージ送受信手段は、所定条件の下、前記メッセージを複数回送受信しており、
前記往復通信時間記録手段は、前記無線リンク状態及び前記往復通信時間に、更にメッセージの往復遅延時間の測定時刻を対応付けて記録して、
前記無線リンク確立時間算出手段は、前記測定時刻が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを用いて算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記無線リンク確立時間算出手段は、所定時間範囲で、無線リンク「確立」状態の際の複数の第1の往復通信時間における代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間とを用いて算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記往復通信時間記録手段は、前記無線リンク状態及び前記往復通信時間に、更に無線品質値を対応付けて記録し、
前記無線リンク確立時間算出手段は、前記無線品質値が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを用いて算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記無線品質値は、
RSCP(Received Signal Code Power:希望波受信電力)、
Ec/No(接続局のRSCPと全受信電力の比)、
RSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、
C/I(干渉波比)、
Ec/Io(隣接基地局送信レベル対現行基地局送信レベル)、
RSRP(基準信号受信電力)、
RSRQ(基準信号受信品質)、
SNR(信号対雑音比)
における少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記メッセージ送受信手段は、所定単位時間毎に、前記メッセージを送受信しており、
第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は前記無線リンク確立時間が長くなるほど、前記所定単位時間を長くするように設定を制御する送信時間間隔制御手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、第1の往復通信時間の代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)、第2の往復通信時間の代表値、又は、前記無線リンク確立時間の代表値を記憶した測定代表値記憶手段を更に有し、
前記送信時間間隔制御手段は、前記測定代表値記憶手段を用いて、基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、これら代表値と、現時点における往復通信時間又は無線リンク確立時間とを比較して、前記メッセージ送受信手段の所定単位時間を制御する
ことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有し、通信品質を測定する通信装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
前記無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを前記通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
前記メッセージ送受信手段における前記メッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
前記無線インタフェースの無線リンク状態と、前記往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
前記往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段と
してコンピュータを機能させ、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有する通信装置を用いて、通信品質を測定する方法において、
前記無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する第1のステップと、
要求メッセージを前記通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信する第2のステップと、
前記メッセージ送受信手段における前記メッセージの往復通信時間を測定する第3のステップと、
前記無線インタフェースの無線リンク状態と、前記往復通信時間とを対応付けて記録する第4のステップと、
前記往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する第5のステップと
を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする方法。
【請求項12】
通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有する通信装置と、通信品質を測定する管理サーバとを有するシステムにおいて、
前記通信装置は、
前記無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを前記通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
前記メッセージ送受信手段における前記メッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
前記無線インタフェースの無線リンク状態と、前記往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
前記往復通信時間記録手段に記録された前記無線リンク状態及び前記往復通信時間を、所定単位時間毎に、前記管理サーバへ送信するログ送信手段と
を有し、
前記管理サーバは、
無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出する
ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記通信装置の前記ログ送信手段は、第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は前記無線リンク確立時間が長くなるほど、前記所定単位時間を長くするように設定を制御することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質を測定可能な通信装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムによれば、無線端末の「無線品質」は、基地局との間の遮蔽物のような周辺通信環境に大きく影響を受ける。例えば携帯電話網の無線通信システムには、簡便的且つ汎用的に無線品質を収集する技術が適用されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
従来、無線品質を収集するための無線端末を、サービスエリア内の必要箇所に設置する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、無線端末は、その無線品質を、定期的又は随時に、ネットワークを介してパーソナルコンピュータへ送信する。パーソナルコンピュータは、無線端末の位置情報に応じた無線品質を、エリア状態表示装置へ送信する。これにより、エリア状態表示装置は、エリアに応じた無線品質状態を表示することができる。
【0004】
また、無線端末が、異なる複数の無線通信システムの電波エリア状態情報を、位置情報と共に、ネットワークを介してサーバへ送信する技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、無線端末は、GPS(Global Positioning System)機能を搭載しており、自らの位置情報を測定する。これにより、サーバを運用する通信事業者は、無線端末の位置に応じて、最適な無線通信システムを知ることができる。
【0005】
更に、通信システムの種類に応じて、取得すべき無線品質の範囲を変更することによって、携帯電話機における情報送信数又は送信量を減らし、ネットワークの負荷を軽減する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、取得した無線品質の範囲が所定範囲内であった場合にのみ、GPS機能で測位し、その位置情報及び無線品質を所定のサーバへアップロードする。
【0006】
前述した特許文献1及び3に記載された技術によれば、「無線品質」とは、RSCP(Received Signal Code Power;希望波受信電力)やEc/No(接続局のRSCPと全受信電力の比)、再送回数、データ誤り率、RSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、C/I(干渉波比)、Ec/Io(隣接基地局送信レベル対現行基地局送信レベル)等である。
【0007】
また、無線通信システムにおける無線端末の「通信品質」は、上述した周辺の無線環境だけでなく、基地局に接続しているユーザ数にも大きく影響を受ける。特に、データ通信サービスについては、単位時間当たりの要求データ量にも問題となる。
【0008】
そのために、無線端末が、パケット転送スループット及びパケット転送遅延時間を収集し、その情報を、ネットワーク内の通信品質監視装置へ送信する技術がある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、無線端末は、更に当該無線端末の移動速度情報も合わせて、通信品質監視装置へ送信する。これによって、通信品質監視装置は、移動速度区分ごとに通信品質を分析することができる。
【0009】
更に、無線区間の通信品質を測定するため、携帯電話機とサーバとの間に確立されたTCP(Transmission Control Protocol)コネクションにおける通信トラヒックを、ネットワーク上で受動的に監視する技術がある(例えば特許文献5参照)。この技術によれば、トラヒックをキャプチャして分析することによって、無線区間のパケット転送スループットを推定することができる。
【0010】
また、Trace routeコマンドのように、ネットワーク内の通信経路上の各ルータに、ICMP(Internet Control Message Protocol)メッセージを送信し、経路の通信品質を推定する技術がある(例えば特許文献6参照)。この技術によれば、送信元ホストが、宛先ホストまでの経路上のルータにICMPメッセージを送信し、その遅延時間の値から、当該経路のQoSレベルを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−032174号公報
【特許文献2】特開2006−060295号公報
【特許文献3】特開2008−306240号公報
【特許文献4】再表2010−055721号公報
【特許文献5】特開2013−078011号公報
【特許文献6】特開2004−312725号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Google社のデベロッパサイト、[online]、[平成25年8月26日検索]、インターネット<URL:http://developer.android.com/reference/android/telephony/TelephonyManager.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した従来技術によれば、管理サーバは、無線端末における位置や時間帯に応じた「無線品質」及び/又は「通信品質」を収集する。
「無線品質」:例えば、RSCP、Ec/No、再送回数、データ誤り率、RSS、
C/I、Ec/Io
「通信品質」:例えば、パケット転送スループット、パケット転送遅延時間
【0014】
しかしながら、無線通信システムの中でも、セルラ通信システムは、無線LANと異なって、無線リンク又は無線ベアラは、通信の発生に伴って確立され、通信の終了後に解放(切断)される。例えば、以下のようなステップで、シーケンスが実行される。
(1)通信の発生によって、無線端末は、無線通信システム内の通信設備装置(基地局又はサービングゲートウェイ)との間で無線リンクを確立する。
(2)無線端末は、無線リンク及びインターネットを介して所定サーバとの間で、コネクションを確立する。
(3)無線端末は、所定サーバと通信する。
(4)所定時間、データが通信されない場合、無線リンクを解放する。
(5)通信すべきデータが発生した場合、無線リンクを再度確立する。
(6)無線端末は、所定サーバと通信する。
【0015】
即ち、無線端末は、無通信状態時、物理的な無線リンクは切断しているものの、論理的な通信コネクションの確立は維持されている。そのために、無線端末は、実際に通信する場合、物理的な無線リンクを確立し直す必要がある。このような無線リンクの一時的な解放は、無線リソースの有効利用を目的としている。そのために、比較的短い無通信時間で、実行される。つまり、無線端末は、連続したデータパケットの送受信の通信以外では、通信の発生の度毎に、無線リンクの確立シーケンスを実行する必要がある。
【0016】
そのために、「無線リンク確立時間」は、「無線品質」や「通信品質」と並んで重要な品質要素であるにも拘わらず、前述した特許文献1〜6に記載の技術によれば測定することができなかった。
【0017】
「無線リンク確立時間」は、無線端末と基地局との間の電波環境や、無線通信システムにおける、基地局を含む無線アクセスネットワークやコアネットワークの輻輳状況等によって変動する。電波環境が良好であるにも拘わらず、無線リンク確立時間が大きくなる理由としては、無線チャネル割り当てに必要となるリソース不足が考えられる。この場合、リソース追加等のリソース不足を解消する制御を実行することができる。
【0018】
そこで、本発明によれば、物理レイヤを変更することなく、アプリケーションレイヤから無線リンク確立時間を簡易に測定することができる通信装置、プログラム、方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有し、通信品質を測定する通信装置において、
無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
メッセージ送受信手段におけるメッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
無線インタフェースの無線リンク状態と、往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段と
を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする。
【0020】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
無線リンク確立時間算出手段は、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との比率を、無線リンク確立所要割合として算出し、
通信品質として無線リンク確立時間に対する無線リンク確立所要割合を導出することも好ましい。
【0021】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
無線リンク確立時間算出手段は、第1の往復通信時間を計測した際の通信量と、第2の往復通信時間を計測した際の通信量と、所定の通信速度情報とに基づいて、無線リンク確立時間を補正することも好ましい。
【0022】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
メッセージ送受信手段は、所定条件の下、メッセージを複数回送受信しており、
往復通信時間記録手段は、無線リンク状態及び往復通信時間に、更にメッセージの往復通信時間の測定時刻を対応付けて記録して、
無線リンク確立時間算出手段は、測定時刻が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを用いて算出することも好ましい。
【0023】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
無線リンク確立時間算出手段は、所定時間範囲で、無線リンク「確立」状態の際の複数の第1の往復通信時間における代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間とを用いて算出することも好ましい。
【0024】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
往復通信時間記録手段は、無線リンク状態及び往復通信時間に、更に無線品質値を対応付けて記録し、
無線リンク確立時間算出手段は、無線品質値が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを用いて算出することも好ましい。
【0025】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
無線品質値は、
RSCP(Received Signal Code Power:希望波受信電力)、
Ec/No(接続局のRSCPと全受信電力の比)、
RSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、
C/I(干渉波比)、
Ec/Io(隣接基地局送信レベル対現行基地局送信レベル)、
RSRP(基準信号受信電力)、
RSRQ(基準信号受信品質)、
SNR(信号対雑音比)
における少なくとも1つを含むことも好ましい。
【0026】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
メッセージ送受信手段は、所定単位時間毎に、メッセージを送受信しており、
第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は無線リンク確立時間が長くなるほど、所定単位時間を長くするように設定を制御する送信時間間隔制御手段を更に有する
ことも好ましい。
【0027】
本発明の通信装置における他の実施形態によれば、
基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、第1の往復通信時間の代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)、第2の往復通信時間の代表値、又は、無線リンク確立時間の代表値を記憶した測定代表値記憶手段を更に有し、
送信時間間隔制御手段は、測定代表値記憶手段を用いて、基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、これら代表値と、現時点における往復通信時間又は無線リンク確立時間とを比較して、メッセージ送受信手段の所定単位時間を制御することも好ましい。
【0028】
本発明によれば、通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有し、通信品質を測定する通信装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
メッセージ送受信手段におけるメッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
無線インタフェースの無線リンク状態と、往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段と
してコンピュータを機能させ、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有する通信装置を用いて、通信品質を測定する方法において、
無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する第1のステップと、
要求メッセージを通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信する第2のステップと、
メッセージ送受信手段におけるメッセージの往復通信時間を測定する第3のステップと、
無線インタフェースの無線リンク状態と、往復通信時間とを対応付けて記録する第4のステップと、
往復通信時間記録手段を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する第5のステップと
を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、通信事業者網の通信設備装置との間で無線リンクを確立する無線インタフェースを有する通信装置と、通信品質を測定する管理サーバとを有するシステムにおいて、
通信装置は、
無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する無線インタフェース監視手段と、
要求メッセージを通信設備装置を介して所定サーバへ送信すると共に、当該サーバから応答メッセージを受信するメッセージ送受信手段と、
メッセージ送受信手段におけるメッセージの往復通信時間を測定する往復通信時間測定手段と、
無線インタフェースの無線リンク状態と、往復通信時間とを対応付けて記録する往復通信時間記録手段と、
往復通信時間記録手段に記録された無線リンク状態及び往復通信時間を、所定単位時間毎に、管理サーバへ送信するログ送信手段と
を有し、
管理サーバは、
無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する無線リンク確立時間算出手段を有し、通信品質として無線リンク確立時間を導出することを特徴とする。
【0031】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、通信装置のログ送信手段は、第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は無線リンク確立時間が長くなるほど、所定単位時間を長くするように設定を制御することも好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の通信装置、プログラム、方法及びシステムによれば、物理レイヤを変更することなく、アプリケーションレイヤから無線リンク確立時間を簡易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明における第1のシーケンス図である。
図2】本発明における第2のシーケンス図である。
図3】本発明における第3のシーケンス図である。
図4】本発明における無線端末の機能構成図である。
図5】往復通信時間記録部に記憶されたデータを表す説明図である。
図6】本発明における無線端末及び管理サーバの機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明における第1のシーケンス図である。
【0036】
図1によれば、無線端末(通信装置)1は、通信事業者網の通信設備装置(基地局又はサービングゲートウェイであって、以下では単に「基地局」と称す)2との間で、無線リンク又は無線ベアラ(以下では単に「無線リンク」と称す)を確立する無線インタフェースを有し、通信品質を測定することができる。無線端末は、例えば携帯電話機やスマートフォンであって、通信事業者網は、例えば携帯電話網であって、インターネットに相互接続されている。無線端末1は、携帯電話網及びインターネットを介して、所定サーバ3へアクセスすることができる。
【0037】
最初に、無線端末1は、基地局2に対する無線リンク状態が「未確立」であるとする。
(S111)無線端末1のアプリケーションは、例えばICMP ECHOを送信する。ICMP(Internet Control Message Protocol)は、インターネット・プロトコルのデータグラム処理における情報通知に用いられる。ICMP ECHOは、ネットワーク診断コマンドpingによって送信される。
【0038】
(S112)このとき、無線端末1の無線インタフェースは、基地局2との間で無線リンクを確立するシーケンスを実行する。その後、無線端末1と基地局2との間で無線リンクが確立されるまでの時間を、「無線リンク確立時間」とする。この無線リンク確立時間は、アプリケーションからは見えていない。
【0039】
(S113)無線端末1の無線インターフェースは、無線リンクの確立まで保留していたICMP ECHOを、無線リンクを介して送信する。そのICMP ECHOは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S114)これに対し、所定サーバ3は、ICMP ECHO REPLYを返信する。そのICMP ECHO REPLYは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、ICMP ECHO REPLYをアプリケーションへ通知する。これによって、アプリケーションは、ICMP ECHOの送信から、ICMP ECHO REPLYの受信までの時間を、「第1の往復通信時間」として保持する。
【0040】
次に、無線端末1は、基地局2に対する無線リンク状態が「確立」であるとする。
(S121)無線端末1のアプリケーションは、例えばICMP ECHOを送信する。
(S122)このとき、無線端末1の無線インタフェースは、基地局2との間で既に確立されている無線リンクを介してICMP ECHOを送信する。そのICMP ECHOは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S123)これに対し、所定サーバ3は、ICMP ECHO REPLYを返信する。そのICMP ECHO REPLYは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、ICMP ECHO REPLYをアプリケーションへ通知する。これによって、アプリケーションは、ICMP ECHOの送信から、ICMP ECHO REPLYの受信までの時間を、「第2の往復通信時間」として保持する。
【0041】
(S13)そして、無線端末1は、以下のように「無線リンク確立時間」を算出する。
第1の往復通信時間(無線リンク未確立状態)
−第2の往復通信時間(無線リンク確立状態)=「無線リンク確立時間」
【0042】
ここで、「無線リンク確立時間」を、第1の往復通信時間を計測した際の通信量と、第2の往復通信時間を計測した際の通信量と、所定の通信速度情報とに基づいて、補正することも好ましい。例えば、以下のように補正する。
Sz111[bit]:S111のICMP ECHOのパケットサイズ
Sz121[bit]:S121のICMP ECHOのパケットサイズ
R1: 下り方向(基地局から端末への方向)の所定通信速度
R2: 上り方向(端末から基地局への方向)の所定通信速度
補正後の無線リンク確立時間
=無線リンク確立時間−{(Sz111−Sz121)/R1+(Sz111−Sz121)/R2}
具体的には、以下のように算出することができる。
算出した無線リンク確立時間=50ms
Sz111=100[bit]
Sz121=1000[bit]
R1=5,000,000[bps]
R2=1,000,000[bps]
補正後の無線リンク確立時間
=50ms−{(100-1000)/5,000,000+(100-1000)/1,000,000}
=50ms−{−1.08ms}=51.08ms
【0043】
図2は、本発明における第2のシーケンス図である。
【0044】
最初に、無線端末1は、基地局2に対する無線リンク状態は「未確立」であるとする。
(S211)無線端末1のアプリケーションは、例えばHTTP GETメッセージを送信する。
(S212)このとき、無線端末1の無線インタフェースは、基地局2との間で無線リンクを確立するシーケンスを実行する。無線端末1と基地局2との間で無線リンクが確立されるまでの「無線リンク確立時間」は、アプリケーションから見えていない。
【0045】
(S213)無線リンクの確立後、無線端末1のTCPレイヤは、無線リンクを介してTCP SYNを送信する。そのTCP SYNは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S214)これに対し、所定サーバ3は、TCP SYN+ACKを返信する。そのTCP SYN+ACKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、TCP SYN+ACKをTCPレイヤへ通知する。
(S215)これに対し、無線端末1のTCPレイヤは、無線リンクを介してTCP ACKを送信する。そのTCP ACKは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
【0046】
(S216)次に、無線端末1のTCPレイヤは、無線リンクの確立まで保留していたHTTP GETを、無線リンクを介して送信する。そのHTTP GETは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S217)これに対し、所定サーバ3は、TCP ACKを返信する。そのTCP ACKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、TCP ACKをTCPレイヤへ通知する。
【0047】
(S218)また、所定サーバ3は、HTTP 200OKを返信する。そのHTTP 200OKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、HTTP 200OKをTCPレイヤを介してアプリケーションへ通知する。これによって、アプリケーションは、HTTP GETの送信から、HTTP 200OKの受信までの時間を、「第1の往復通信時間」として保持する。
【0048】
次に、無線端末1は、基地局2に対する無線リンク状態は「確立」であるとする。
(S221)無線端末1のアプリケーションは、例えばHTTP GETを送信する。
(S222)このとき、無線端末1のTCPレイヤは、基地局2との間で既に確立されている無線リンクを介して、TCP SYNを送信する。そのTCP SYNは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S223)これに対し、所定サーバ3は、TCP SYN+ACKを返信する。そのTCP SYN+ACKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、TCP SYN+ACKをTCPレイヤへ通知する。
(S224)これに対し、無線端末1のTCPレイヤは、無線リンクを介してTCP ACKを送信する。そのTCP ACKは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
【0049】
(S225)次に、無線端末1のTCPレイヤは、無線リンクを介してHTTP GETを送信する。そのHTTP GETは、携帯電話網及びインターネットを介して所定サーバ3へ送信される。
(S226)これに対し、所定サーバ3は、TCP ACKを返信する。そのTCP ACKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、TCP ACKをTCPレイヤへ通知する。
(S227)また、所定サーバ3は、HTTP 200OKを返信する。そのHTTP 200OKは、基地局2から無線リンクを介して、無線端末1へ送信される。無線端末1の無線インタフェースは、HTTP 200OKをTCPレイヤを介してアプリケーションへ通知する。これによって、アプリケーションは、HTTP GETの送信から、HTTP 200OKの受信までの時間を、「第2の往復通信時間」として保持する。
【0050】
(S23)そして、無線端末1は、以下のように「無線リンク確立時間」を算出する。
第1の往復通信時間(無線リンク未確立状態)
−第2の往復通信時間(無線リンク確立状態)=「無線リンク確立時間」
【0051】
図3は、本発明における第3のシーケンス図である。
【0052】
図3によれば、現実に実施されるシーケンスであって、図2のシーケンスに基づくものである。図3によれば、図2のシーケンスについて、無線リンク未確立状態のシーケンス(S211〜S218)と、無線リンク確立状態のシーケンス(S221〜S227)とを連続して実行したものである。アプリケーションから見ると、以下のように処理することができる。
【0053】
最初に、無線インタフェースの無線リンク状態が、「確立」か「未確立」を確認する。無線リンク「確立」状態である場合、無線リンク「未確立」状態となるまで、無線リンク状態の確認を繰り返す。そして、無線リンク「未確立」状態となった際、HTTP GET(要求メッセージ)を所定サーバ3へ送信し、HTTP 200OK(応答メッセージ)を受信することによって、第1の往復通信時間を測定する。
ここで再度、無線リンク状態を確認する。そして、無線リンク「確立」状態であれば、再度、HTTP GETを所定サーバ3へ送信し、HTTP 200OKを受信することによって、第2の往復遅延時間を測定する。
このように、メッセージ交換を2回続けるだけで、無線リンク確立時間を簡易に測定することができる。
【0054】
図4は、本発明における無線端末の機能構成図である。
【0055】
図4によれば、無線端末(通信装置)1は、無線インタフェース部101と、TCPレイヤ部102と、無線インタフェース監視部11と、メッセージ送受信部12と、往復通信時間測定部13と、往復通信時間記録部14と、無線リンク確立時間算出部15と、測定代表値記憶部16と、送信時間間隔制御部17と、ログ送信部19とを有する。これら機能構成部は、通信装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、方法としても理解できる。
【0056】
[無線インタフェース監視部11]
無線インタフェース監視部11は、無線インタフェースにおける無線リンク状態(確立/未確立)を監視する。例えばGoogle社によって開発されたプラットフォームであるAndroid(登録商標)によれば、無線インタフェースについて以下の5つの無線リンク状態を提供するAPI(Application Programming Interface)が用意されている(非特許文献1参照)。
"DATA_ACTIVITY_DORMANT":無線リンク不確立状態
"DATA_ACTIVITY_NONE" :無線リンク確立状態
"DATA_ACTIVITY_IN" :無線リンク確立状態
"DATA_ACTIVITY_OUT" :無線リンク確立状態
"DATA_ACTIVITY_INOUT" :無線リンク確立状態
無線インタフェース監視部11は、無線リンク状態を、往復通信時間測定部13から出力された往復通信時間と共に、往復遅延時間記録部14へ記録する。
【0057】
また、無線インタフェース監視部11は、無線インタフェース部101の無線リンクの無線品質値も測定することも好ましい。無線品質値は、例えば以下のようなものがある。
RSCP(Received Signal Code Power:希望波受信電力)、
Ec/No(接続局のRSCPと全受信電力の比)、
RSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、
C/I(干渉波比)、
Ec/Io(隣接基地局送信レベル対現行基地局送信レベル)、
RSRP(基準信号受信電力)、
RSRQ(基準信号受信品質)、
SNR(信号対雑音比)
測定された無線品質値も、無線リンク状態と共に、往復通信時間記録部14に記録される。
【0058】
[メッセージ送受信部12]
メッセージ送受信部12は、要求メッセージを基地局2を介して所定サーバ3へ送信すると共に、当該サーバ3から応答メッセージを受信する。要求メッセージとは、例えばICMP ECHOやHTTP GETであり、応答メッセージとは、それに対するICMP ECHO REPLYやHTTP 200OKである(図1図3参照)。勿論、他のメッセージであってもよいが、要求メッセージに対する応答メッセージが即時に返信されることを要する。
【0059】
メッセージ送受信部12は、所定条件の下、メッセージを複数回送受信している。この所定条件としては、例えば所定単位時間毎であってもよい。所定単位時間は、例えば送信時間間隔制御部17からの指示によって変更可能となる。
【0060】
[往復通信時間測定部13]
往復通信時間測定部13は、メッセージ送受信部12におけるメッセージの往復通信時間を測定する。往復通信時間と測定時刻とは、無線インタフェース監視部11からの無線リンク状態と共に、往復通信時間記録部14へ記録される。
【0061】
[往復通信時間記録部14]
往復通信時間記録部14は、無線インタフェースの無線リンク状態と、往復通信時間とを対応付けて記録する。また、往復通信時間記録部14は、無線リンク状態及び往復通信時間に対応付けて、測定時刻及び無線品質値も記録する。
【0062】
図5は、往復通信時間記録部に記憶されたデータを表す説明図である。
【0063】
図5の往復通信時間記録部14によれば、測定時刻と、無線リンク状態と、往復通信時間と、無線品質値とが対応付けて記録されている。
【0064】
[無線リンク確立時間算出部15]
無線リンク確立時間算出部15は、往復通信時間記録部14を用いて、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との差分を、無線リンク確立時間として算出する(図1のS13、図2のS23、図3のS33参照)。
【0065】
ここで、無線リンク確立時間算出部15は、以下のいずれかの方法で、第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを選択することが好ましい。
(選択方法1)測定時刻が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを選択する。図5によれば、無線リンク「未確立」状態の往復通信時間280msと、無線リンク「確立」状態の往復通信時間120msとの差分から、無線リンク確立時間160msと算出される。
【0066】
(選択方法2)無線品質値が最も近い同士となる第1の往復通信時間と第2の往復通信時間とを選択する。図5によれば、時刻[11:22:34.6]に測定された無線品質値SNR[10.1dB]に最も近いレコードとして、時刻[11:25:36.6]に測定された無線品質値SNR[10.2dB]が選択される。そして、時刻[11:22:34.6]の第1の往復通信時間280msと、時刻[11:25:36.6]の第2の往復通信時間110msとの差分から、無線リンク確立時間170msと算出される。
【0067】
他の実施形態として、無線リンク確立時間算出部15は、無線リンク「未確立」状態の際の第1の往復通信時間と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間との比率を、「無線リンク確立所要割合」として算出するものであってもよい。
無線リンク確立所要割合=
無線リンク確立状態の第2の往復通信時間/
無線リンク未確立状態の第1の往復通信時間
無線リンク確立所要割合が大きい -> バックホール側の往復遅延時間が長い
無線リンク確立所要割合が小さい -> 無線リンク確立時間が長い
【0068】
[測定代表値記憶部16]
測定代表値記憶部16は、基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、第1の往復通信時間の代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)、第2の往復通信時間の代表値、又は、無線リンク確立時間の代表値を記憶したものである。測定代表値記憶部16は、送信時間間隔制御部17によって参照される。
【0069】
図5によれば、時刻[11:22:34.6]に無線リンク「未確立」状態を確認し、往復通信時間280msを測定したする。その後、所定時間範囲を5分間とすると、5回の無線リンク「確立」状態を確認し、その往復通信時間を測定したとする。このとき、これら5回の往復通信時間値の代表値(例えば、最小値、中央値、平均値、最大値、所定パーセント値)を、無線リンク「確立」状態の往復通信時間とする。代表値を平均値とすると、図5によれば、無線リンク「確立」状態の5回の往復通信時間の代表値は、128msとなる。この場合、無線リンク確立時間は、以下のように算出される。
280ms−128ms=152ms(無線リンク確立時間)
【0070】
[送信時間間隔制御部17]
送信時間間隔制御部17は、第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は無線リンク確立時間が長くなるほど、所定単位時間を長くするように設定を制御する。具体的には、送信時間間隔制御部17は、測定代表値記憶部16を用いて、基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、これら代表値と、現時点における往復通信時間又は無線リンク確立時間とを比較する。そして、送信時間間隔制御部17は、メッセージ送受信部12に対して要求メッセージの送信タイミングを変更する。具体的には、以下のように制御する。
代表値が大きい -> メッセージの送信時間間隔を長くする(送信頻度を減らす)
代表値が小さい -> メッセージの送信時間間隔を短くする(送信頻度を増やす)
これは、基地局識別子及び/又は所定時間区分毎に、当該代表値が大きいということは、ネットワークリソースが混雑していることを意味する。そのような混在時に、無線リンク確立時間の測定のためのメッセージの交換によって、更にネットワークリソースを使用することを防止する。
【0071】
尚、前述した無線リンク確立時間算出部15も、所定時間範囲で、無線リンク「確立」状態の際の複数の第1の往復通信時間における代表値(平均値、最小値、中央値又は最大値)と、無線リンク「確立」状態の際の第2の往復通信時間とを用いて算出することも好ましい。
【0072】
[通信品質収集部18]
通信品質収集部18は、通信品質として、「無線リンク確立時間」及び/又は「無線リンク確立所要割合」を収集する。
【0073】
図6は、本発明における無線端末及び管理サーバの機能構成図である。
【0074】
図6によれば、図4と比較して、管理サーバ4がインターネットに接続されている。図4では、無線端末1が通信品質を収集ものであるのに対し、図6では、管理サーバ4が通信品質を収集するものである。図6によれば、無線端末1は、往復通信時間記録部14のログを管理サーバ4へ送信するログ送信部19を更に有する。また、無線端末1は、無線リンク確立時間算出部15及び通信品質収集部18を備えていない。一方で、管理サーバ4は、往復通信時間記録部14と、無線リンク確立時間算出部15と、通信品質収集部18とを有する。
【0075】
無線端末1のログ送信部19は、往復通信時間記録部14に記録された往復通信時間を、所定単位時間毎に、管理サーバ4へ送信する。また、ログ送信部19は、送信時間間隔制御部17からの指示に応じて、第1の往復通信時間、第2の往復通信時間又は無線リンク確立時間が長くなるほど、所定単位時間を長くするように設定を制御する。これによって、ネットワークリソースが混雑している場合、ログの送信頻度を減らすことによって、できる限り、ネットワークリソースを使用することを防止する。
【0076】
以上、詳細に説明したように、本発明の通信装置、プログラム、方法及びシステムによれば、物理レイヤを変更することなく、アプリケーションレイヤから無線リンク確立時間を簡易に測定することができる。これによって、電波環境が良好であるにも拘わらず、無線リンク確立時間が大きくなる場合、無線チャネル割り当てに必要となるリソースを追加し、リソース不足を解消する制御を実行することができる。
【0077】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例において、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0078】
1 無線端末、通信装置
10 無線インタフェース部
11 無線インタフェース監視部
12 メッセージ送受信部
13 往復通信時間測定部
14 往復通信時間記録部
15 無線リンク確立時間算出部
16 測定代表値記憶部
17 送信時間間隔制御部
18 通信品質収集部
19 ログ送信部
2 基地局
3 所定サーバ
4 管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6