特許第6032905号(P6032905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6032905-冷凍設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032905
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】冷凍設備
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/06 20060101AFI20161121BHJP
   H01L 39/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F25B9/06 Z
   H01L39/04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-51290(P2012-51290)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-189314(P2012-189314A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】10 2011 013 345.3
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ デッカー
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0184722(US,A1)
【文献】 特開平04−020754(JP,A)
【文献】 特開平03−247965(JP,A)
【文献】 特開平04−359760(JP,A)
【文献】 特開平03−079960(JP,A)
【文献】 特開平06−101919(JP,A)
【文献】 特開2010−036056(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/066044(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/06
H01L 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象を冷却するための冷凍設備であって、
寒冷循環路が設けられており、
寒冷循環路内を循環する寒剤を圧縮するために働く少なくとも1つの圧縮機が設けられており、
第1〜第6の熱交換器(HX1,HX2,HX3,HX4,HX5,HX6)が設けられており、該熱交換器内で寒剤が、該寒剤自体に対して冷却されるようになっており、
互いに異なる温度レベルで作動する第1及び第2の膨張装置(TU1,TU2)が設けられており、該膨張装置内で少なくとも一時的に寒剤の少なくとも一部分流が膨張されて寒冷を発生させるようになっている、
形式の冷凍設備において、
第3の膨張装置(TU3)が設けられており、該第3の膨張装置(TU3)は、寒冷循環路内を循環する寒剤が冷却対象の冷却後に少なくとも一時的に少なくとも部分的に前記第3の膨張装置(TU3)内で膨張されて寒冷を発生させるように寒冷循環路内に組み込まれており、
前記第1〜第3の膨脹装置(TUI,TU2,TU3)において膨脹され寒冷を発生させられた寒剤が、冷却対象から引き出された寒剤流に混加されるように、前記第1〜第3の膨脹装置が寒冷循環路内に組み込まれていることを特徴とする、冷却対象を冷却するための冷凍設備。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍設備を運転するための方法において、
冷却過程の開始時に、冷却対象により加熱された寒剤を、第2の熱交換器(HX2)における冷却後に前記第3の膨張装置(TU3)に供給し、該第3の膨張装置(TU3)において膨張させ寒冷を発生させ、膨張された寒剤部分流を、第4の熱交換器(HX4)と第3の熱交換器(HX3)と第2の熱交換器(HX2)と第1の熱交換器(HX1)とを通過させた後に前記圧縮機の上流側に案内し、
冷却対象に供給する寒剤の部分流を、前記第2の膨張装置(TU2)に供給し、該第2の膨張装置(TU2)において膨張させ寒冷を発生させ、冷却対象から引き出された寒剤流に混加させ、
圧縮された寒剤流の一部を前記第1の膨張装置(TU1)に供給し、膨張が行われた後に、前記第3の膨張装置(TU3)に供給された寒剤流に混加させ、
冷却過程の次の段階では、冷却対象に供給される寒剤を2つの部分流に分割し、第1の寒剤部分流は、前記第1の膨張装置(TU1)を介して冷却対象に供給し、第2の寒剤部分流は、前記第2の膨張装置(TU2)を介して冷却対象に供給し、この冷却過程の間、前記第3の膨張装置(TU3)に供給する寒剤流を徐々に減じ、
冷却過程の最後の段階では、前記第3の膨張装置(TU3)を停止し、圧縮された寒剤流を、並列に、ただし互いに異なる温度レベルで作業する前記第1及び第2の膨張装置(TU1,TU2)を介してのみ、冷却対象へ流す
ことを特徴とする、冷凍設備を運転するための方法。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍設備の使用において、当該冷凍設備が、極低温冷却対象の冷却のために働くことを特徴とする、冷凍設備の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却対象を冷却するための冷凍設備であって、
− 寒冷循環路が設けられており、
− 寒冷循環路内を循環する寒剤を圧縮するために働く少なくとも1つの圧縮機が設けられており、
− 複数の熱交換器が設けられており、該熱交換器内で寒剤が、該寒剤自体に対して冷却されるようになっており、
− 互いに異なる温度レベルで作動する少なくとも2つの膨張装置が設けられており、該膨張装置内で少なくとも一時的に寒剤の少なくとも一部分流が膨張されて寒冷を発生させるようになっている、
形式の冷凍設備に関する。
【0002】
さらに本発明は、冷凍設備を運転するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた形式の冷凍設備ならびに冒頭で述べた、冷凍設備を運転するための方法は、たとえば未公開のドイツ連邦共和国特許出願第102011009965号明細書に基づき公知である。
【0004】
このような形式の冷凍設備は通常、冷却対象である極低温負荷(kryogen. Last)、たとえば超伝導電磁石の冷却もしくは加熱のために使用される。このためには、クロードプロセス(Claude-Prozess)が使用される。冷却はたいていの場合、周辺温度から5Kの温度にまで行われる。クロードプロセスは規定された冷却温度に合わせて設計されている。たとえば超伝導電磁石のコントロールされた冷却または加熱の際のように、別の温度レベルにおける冷却が必要とされる場合、特に寒冷を発生させる膨張段の内部には流れ横断面が十分に与えられている。このことは、存在する圧縮機質量流がこれらの膨張段において部分的にしか利用され得なくなるという結果を招く。すなわち、設備駆動出力はこのような時間の間、制限された規模でしか寒冷発生のために提供されていない。
【0005】
この問題を回避するために、既に実現されている解決手段では、利用不可能な圧縮機質量流が冷却対象の冷却を補助する前に、この圧縮機質量流が補助寒剤(通常は液体窒素)によって付加的な熱交換器を介して冷却され、かつ混合区間にわたり温度調節される。しかしこの場合に不都合となるのは、全圧縮機質量流の利用が、付加的な補助寒剤消費によってしか可能とならないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願第102011009965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の冷凍設備を改良して、補助寒剤が使用されなければならない必要なしに、ほぼあらゆる温度レベルにおいても全圧縮機質量流の利用が可能となるような冷凍設備を提供することである。
【0008】
さらに本発明の課題は、このような冷凍設備を運転するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明の冷凍設備の構成では、少なくとも1つの別の膨張装置(第3の膨張装置)が設けられており、該別の膨張装置は、寒冷循環路内を循環する寒剤が冷却対象の冷却後に少なくとも一時的に少なくとも部分的に前記別の膨張装置内で膨張されて寒冷を発生させるように寒冷循環路内に組み込まれているようにした。
【0010】
さらに上記課題を解決するために本発明の冷凍設備を運転するための方法では、圧縮機質量流を冷却過程および/または加熱過程の間、実質的にいかなる時点でも全圧縮機質量流が、冷却したい冷却対象の冷却のために働くように前記3つの膨張装置に分配するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明による冷凍設備では、補助寒剤が使用されなければならない必要なしに、ほぼあらゆる温度レベルにおいても全圧縮機質量流の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による冷凍設備の1実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0014】
図1に示した冷凍設備は、複数の熱交換、つまり第1〜第6の熱交換器HX1,HX2,HX3,HX4,HX5,HX6と、分離器Dと、複数の制御弁、つまり第1〜第9の制御弁V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8,V9と、3つの膨張装置、つまり3つの膨張装置TU1,TU2,TU3とを有している。以下に、本発明による冷凍設備によって冷却したい極低温の冷却対象の冷却過程ならびに加熱過程について詳しく説明する。
【0015】
冷却過程の開始時に、冷却したい極低温冷却対象の温度は約300Kである。管路1を介して、図示されていない圧縮機によって所望の循環圧にまで圧縮された寒剤が第1の熱交換器HX1に供給される。第7の制御弁V7が開放された状態で、寒剤の部分流が管路区分1,2,3を介して、冷却したい冷却対象(負荷)に供給される。加熱された寒剤は、第9の制御弁V9が開放された状態において、冷却対象から管路4を介して引き出されて、第2の熱交換器HX2における冷却後に管路区分4´,20,21を介して第3の膨張装置TU3に供給され、この第3の膨張装置TU3において膨張されて寒冷を発生させる。
【0016】
引き続き、膨張された寒剤部分流は管路区分22,23,6を介して第4の熱交換器HX4と第3の熱交換器HX3と第2の熱交換器HX2と第1の熱交換器HX1とを通過した後に再び本発明による冷凍設備の圧縮機もしくは圧縮ユニットの手前(上流側)に案内される。
【0017】
冷却対象に供給された寒剤の部分流は、第2の制御弁V2が開放されている状態で管路13を介して第2の膨張装置TU2に供給され、この第2の膨張装置TU2において膨張されて寒冷を発生させ、そして引き続き管路区分14,15を介して、管路区分4´内の、冷却対象から引き出された寒剤流に混加される。第3の熱交換器HX3はバイパス管路12を有しており、このバイパス管路12には第4の制御弁V4が配置されている。第2第4の両制御弁V2,V4によって、第2の膨張装置TU2の入口温度を閉ループ式に制御することができる。
【0018】
第3の膨張装置TU3に供給されなかった寒剤流は、第5の制御弁V5が配置されている管路5を介して低圧へ膨張されるか、もしくは管路6内の寒剤流に混加される。戻し温度が低下するにつれて、第5の制御弁V5を経由する通流量は徐々に減少し、最終的には完全に減少する。
【0019】
それと同時に、第1の膨張装置TU1が接続され、この第1の膨張装置TU1は、戻し温度が低下するにつれて増幅されて出力負荷される。このためには、第1の制御弁V1が配置されている管路10を介して、圧縮された寒剤流の一部が第1の膨張装置TU1に供給され、膨張が行われた後に、管路11を介して、第3の膨張装置TU3に供給された寒剤流に混加される。
【0020】
この冷却段階の間、永続的に小量の寒剤部分流が、僅かに開放された第6の制御弁V6と第8の制御弁V8とを介して、第6の熱交換器HX6と第5のHX5とに供給され、これにより第6の熱交換器HX6と第5の熱交換器HX5とが同時に一緒に冷却される。
【0021】
前で説明したプロセスもしくは過程によって、冷却対象を約100Kの温度に冷却することができる。引き続き約30Kの温度への冷却を達成するためには、第7の制御弁V7と第9の制御弁V9とが閉鎖され、第6の制御弁V6と第8の制御弁V8とがさらに開放される。
【0022】
次いで、冷却対象に供給される寒剤は、2つの部分流に分割される。第1の寒剤部分流は第1の膨張装置TU1を介して案内され、ひいては管路区分10,11,20,15,40を介して、冷却対象に供給され、それに対して第2の寒剤部分流は、第2の膨張装置TU2を介して、ひいては管路区分2,13,14,40を介して、冷却対象に供給される。冷却過程の間、第3の膨張装置TU3に供給される質量流は徐々に減じられ、最終的に第3の膨張装置TU3には、この第3の膨張装置TU3の上流側に接続された第1の膨張装置TU1からのみ質量流が供給される。
【0023】
冷却過程の最後の段階(この場合には約5Kの温度への冷却対象の冷却が行われる)を実現するために、第3の膨張装置TU3は戻し温度が低下するにつれてますます強く絞られてゆき、最後には停止させられる。圧縮機質量流は、この場合に並列に、ただし互いに異なる温度レベルで作業する第1第2の両膨張装置TU1,TU2を介してのみ、冷却対象へ流れる。冷却対象から戻る寒剤流は、第8の制御弁V8を介して相分離器D内へ放出される。この温度で生じるジュール・トムソン効果(Joule-Thomson-Effekt)により、この寒剤流はもう一度冷却され、かつ部分的に液化する。液化された寒剤は管路区分32を介して第6の熱交換器HX6を通って案内され、向流の形で蒸発され、相分離器Dからの蒸気成分は管路区分31を介して直接に第5の熱交換器HX5に案内される。
【0024】
加熱過程の間は、前で説明した方法シーケンスが逆の順序で実施される。
【0025】
前で説明した方法実施から判るように、全圧縮機質量流は冷却過程および加熱過程のいずれの段階においても完全に冷却のために提供されている。
【0026】
たとえば冒頭で挙げたドイツ連邦共和国特許出願第102011009965号明細書に記載されているような冷凍設備に比べて、本発明による冷凍設備は、所属の弁を含めて少なくとも3つの付加的なプロセス管路を有している。これにより、残った圧縮機質量流の分配が可能となる。この分配は、いかなる時点でも全圧縮機質量流を極低温冷却対象の冷却のために利用することを可能にする。
【0027】
本発明による冷凍設備を用いると、もしくは本発明による冷凍設備により実現可能となる方法を用いると、全圧縮機質量流を寒冷発生のために利用することができる。これによって、本発明による冷凍設備は運転時に、つまり極低温冷却対象の冷却過程ならびに加熱過程の間、最大効率を達成する。これにより、これまで必要とされていた付加的な補助寒剤の使用を不要にすることができる。
【符号の説明】
【0028】
HX1,HX2,HX3,HX4,HX5,HX6 熱交換器
D 分離器
V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8,V9 制御弁
TU1,TU2,TU3 膨張装置
図1