(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記爪部には、前記第1の嵌合部に前記第2の嵌合部を嵌合させる方向において、前記係止片の幅を減少させる傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュールの固定構造。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について以下に詳細に説明する。
半導体制御装置1は、冷却部材であるヒートシンク2を有する。ヒートシンク2の下面には、放熱フィン2Aが多数配列されている。ヒートシンク2の上面は、3つの半導体モジュール5,6,7を載置する載置面2Bになっている。載置面2Bは、平面からなり、半導体モジュールの固定構造のヒートシンク2側の嵌合部となる複数の第1の嵌合部11A,11B,11C,11Dが所定の間隔で突設されている。さらに、3つの半導体モジュール5〜7は、押さえバネ10によってヒートシンク2に押し付けられ、固定されている。
【0015】
半導体モジュール5〜7は、不図示の半導体素子や半導体回路が絶縁樹脂でパッケージされている。各半導体モジュール5〜7には、電流を入出力するための端子5A,6A,7Aが複数設けられている。また、半導体モジュール5〜7に信号を入出力する不図示の端子が設けられている。不図示の端子は、制御基板に電気的に接続される。この実施の形態において、半導体モジュール5〜7は、3相モータのスイッチング素子として使用可能であり、モータの3相のそれぞれに対応して3つ設けられている。なお、半導体モジュール5〜7の形状や数は、
図1に限定されない。
【0016】
図1と、
図2の拡大図、
図3の側面図に示すように、ヒートシンク2の載置面2Bには、4つの第1の嵌合部11A〜11Dが平行に形成されている。各第1の嵌合部11A〜11Dの上部の中央には、押さえバネ10を嵌合させる溝12が1つずつ形成されている
。溝12は、略U字形の底部12Aと、底部12Aから段差を形成しつつ幅を拡張させることによって形成された一対の側壁12Bとを有する。また、溝12の側壁12Bのそれぞれの上端部分には、爪部13が1つずつ設けられている。爪部13は、内側に向かって突出すると共に、上面が先端に向かって下方に傾斜するテーパ面13A(傾斜面)になっている。
【0017】
第1の嵌合部11A〜11Dの配置間隔は、半導体モジュール5〜7のサイズに一致させてあり、隣り合う2つの第1の嵌合部11A〜11Dによって半導体モジュール5〜7が1つずつ位置決めされる。
【0018】
図1から
図4に示すように、押さえバネ10は、細長の基部21を有する。基部21の長さは、ヒートシンク2に形成されている最も離れた2つの第1の嵌合部11A,11Dの間の距離以上である。基部21からは、半導体モジュールの固定構造のバネ部材10側の嵌合部となる4つの第2の嵌合部22A,22B,22C,22Dと、3対のアーム部23,24,25とが交互に延びている。具体的には、基部21の長手方向の一方の端部から順番に、第2の嵌合部22A、アーム部23、第2の嵌合部22B、アーム部24、バネ嵌合部22C、アーム部25、第2の嵌合部22Dが形成されている。基部21を挟んで延びる3対のアーム部23〜25は、基部21の中心線に対して対称に配置されている。なお、押さえバネ10は、弾性変形可能な材料を例えばプレス加工して製造される。
【0019】
各第2の嵌合部22A〜22Dは、基部21の両側から一体に延びる一対の係止片31を有する。
図2及び
図3に示すように、係止片31は、基部21から上側にカーブを描きつつ曲げられることで曲部31Aが形成され、垂直上向きに延びた後、先端部31Bが外側に向けて折り返されており、全体として弾性変形可能に形成されている。基部21及び係止片31の曲部31Aの形状は、第1の嵌合部11A〜11Dの底部12Aの形状に略一致している。また、外力が作用していない状態における係止片31の先端部31Bの外端面間の距離W1は、第1の嵌合部11A〜11Dの一対の側壁12B間の距離に略等しい。さらに、係止片31の外端面間の距離W1は、第1の嵌合部11A〜11Dの爪部13の内端間の距離W2より長い。
【0020】
また、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、各アーム部23〜25は、基部21の両側を滑らかなカーブを形成しつつ上方に曲げることによって曲部26,27,28を形成し、垂直上向きに延びた後、外側、かつ基部21と略平行に折り返されている。さらに、アーム部23の両端部は、下側に折り返されており、これによって半導体モジュール5,6,7に面接触する押圧部23A,24A,25Aが形成されている。ここで、各アーム部23〜25の形状は等しく、基部21の長手方向に平行な方向からみたときの各曲部26〜28の形状は、第2の嵌合部22A〜22Dの曲部31Aの形状と同一になっている。
【0021】
次に、半導体制御装置1の製造工程の一部を構成する半導体モジュール5〜7をヒートシンク2に対して固定する工程について説明する。
まず、ヒートシンク2に3つの半導体モジュール5〜7を固定するときは、最初にヒートシンク2の載置面2Bの所定位置に半導体モジュール5〜7を1つずつ配置する。各半導体モジュール5〜7は、隣り合う2つの第1の嵌合部11A〜11Dの間に1つずつ配置される。続いて、
図2に示すように、上方から押さえバネ10を半導体モジュール5〜7の上に重ねてから、押さえバネ10を矢印AR1に示す下方向に押し込んで、ヒートシンク2に設けられた第1の嵌合部11A〜11Dと、押さえバネ10に設けられた第2の嵌合部22A〜22Dとを嵌合させる。
【0022】
具体的には、第1の嵌合部11A〜11Dに第2の嵌合部22A〜22Dを押し込んで
両者を嵌合させる。ここで、第2の嵌合部22A〜22Dの係止片31の外端面間の距離W1は、第1の嵌合部11A〜11Dの爪部13の先端間の距離W2より長い。しかしながら、爪部13の上面には、テーパ面13Aが係止片31を内側にガイドするように傾斜しているので、押さえバネ10を矢印AR1に示す嵌合方向に押し込むと、係止片31がテーパ面13Aにガイドされながら、一対の先端部31Bの外端面間の距離を減少させるように弾性変形する。係止片31の先端部31Bの外端面間の距離が爪部13の先端間の距離W2よりも近くなると、係止片31が爪部13を越えて下方に移動する。これによって、押さえバネ10の基部21が溝12の底部12Aに向かって移動する。
【0023】
これに伴い、係止片31は、爪部13の間を通り抜けて、爪部13の下方に移動する。その結果、爪部13によって係止片31に与えられていた外力がなくなるので、係止片31が弾性力によって元の形状に戻る。その結果、嵌合部11A〜11D,22A〜22Dの嵌合を解消させる方向にバネ部材10を移動させるようとすると、第2の嵌合部22A〜22Dの係止片31Aの先端部31Bの上面が溝12の爪部13の下面に密着して係止される。従って、バネ部材10がヒートシンク2から簡単に外れることはない。また、一対の係止片31のそれぞれの先端部31Bの外端面間の距離W1は、溝12の一対の側壁12B間の距離に略等しいので、係止片31の先端部31Bがそれぞれ対向する側壁12に当接する。これによって、押さえバネ10の上下方向の移動と、左右方向の移動が規制される。
【0024】
さらに、第1の嵌合部11A〜11Dの高さは、押さえバネ10を組み付けたときのアーム部23〜25の高さより高い。このために、押さえバネ10の基部21の長手方向の移動は、第1の嵌合部11A〜11Dによって規制される。これらのことから、押さえバネ10が全体として、位置決めしてヒートシンク2に固定される。
【0025】
第1の嵌合部11A〜11Dに第2の嵌合部22A〜22Dを嵌合させたときの押さえバネ10の基部21の高さは、半導体モジュール5〜7の高さに略等しくなる。このために、半導体モジュール5〜7は、押さえバネ10の基部21によってヒートシンク2に押さえ付けられる。嵌合部11A〜11D,22A〜22Dは、各半導体モジュール5〜7を挟むように複数配置されているので、基部21は撓むことなく、各半導体モジュール5〜7をヒートシンク2に押さえ付ける。
【0026】
なお、バネ部材10をヒートシンク2に固定した状態では、バネ部材10の基部21は、第1の嵌合部11A〜11Dの溝12からわずかに浮いている。溝12は、バネ部材10の押し込み過ぎを防止するためのリミッターとして機能している。従って、溝12にバネ部材10の底部21を密着させても良いし、
図1及び
図3に示すように隙間41を形成しても良い。
【0027】
さらに、押さえバネ10の基部21からは複数のアーム部23〜25が延びており、これらアーム部23〜25によっても各半導体モジュール5〜7がヒートシンク2に押さえ付けられる。例えば、一対のアーム部23は、基部21を介して2組の嵌合部11A,22A,11B,22Bによって支持され、それぞれの押圧部23Aによって半導体モジュール5をヒートシンク2に押さえ付ける。同様に、一対のアーム部24のそれぞれの押圧部24Aは、基部21を介して2組の嵌合部11B,22B,11C,22Cによって支持され、半導体モジュール6をヒートシンク2に押さえ付ける。さらに、一対のアーム部25のそれぞれの押圧部25Aは、基部21を介して2組の嵌合部11C,22C,11D,22Dによって支持され、半導体モジュール7をヒートシンク2に押さえ付ける。
【0028】
この実施の形態では、基部21を挟む一対のアーム部23〜25によって、1つの半導体モジュール5〜7をヒートシンク2に押し付けるので、押さえバネ10の押さ付け力を
各半導体モジュール5〜7に均等に作用させ易い。なお、アーム部23〜25の数や配置は、
図1に限定されない
【0029】
また、一対のアーム部23〜25は、1つの半導体モジュール5〜7のみに当接している。このために、各半導体モジュール5〜7は、押さえバネ10によって、他の半導体モジュール5〜7の影響を受けずにヒートシンク2に押さえ付けられる。また、一対のアーム部23〜25で半導体モジュール5〜7を1つずつ押圧するので、半導体モジュール5〜7の製品ごとのばらつきを吸収できる。
【0030】
さらに、アーム部23〜25は、半導体モジュール5〜7の両端部の近傍に一箇所ずつ当接する。従って、1つの半導体モジュール5〜7に対して押さえバネ10からの押し付け力が均等に作用する。このために、半導体モジュール5〜7で発生した熱をヒートシンク2に確実に伝達できる。従って、半導体モジュール4を効率良く冷却できる。
さらに、各アーム部23〜25の押圧部23A〜25Aは、半導体モジュール5〜7に面接触するので、半導体モジュール5〜7の表面を傷付けることはない。
【0031】
以上、説明したように、この実施の形態ではヒートシンク2に第1の嵌合部11A〜11Dを複数設け、押さえバネ10に第2の嵌合部22A〜22Dを複数設け、これら嵌合部11A〜11D,22A〜22Dを用いて複数個所で押さえバネ10をヒートシンク2に固定するようにしたので、ねじを用いることなく、半導体モジュール5〜7をヒートシンク2に押さえ付けられる。嵌合部11A〜11D,22A〜22Dは、半導体モジュール5〜7を挟むように配置したので、半導体モジュール5〜7の移動を規制できる。これに伴って、基部21の浮き上がりや捩れを防止できるので、補強梁が不要になると共に、一対のアーム部23〜25ごとの押圧力を均一にできる。
【0032】
また、第1の嵌合部11A〜11Dに溝12と爪部13を設け、第2の嵌合部22A〜22Dに弾性変形可能な係止片31を設けたスナップフィット構造としたので、押さえバネ10を押し込むだけで、押さえバネ10で半導体モジュール5〜7をヒートシンク2に押し付けながら固定できる。爪部13にテーパ面13Aを形成することによって、押さえバネ10を押し付けるときに係止片31を変形させ易くなるので、組み付け作業が容易になる。
【0033】
第2の嵌合部22A〜22Dの係止片31の曲部31Aの形状と、アーム部23〜25の曲部26〜28の形状を同形状にしたので、一回の成型工程で曲部31A,26〜28を同時に形成することができ、作業効率が向上する。
【0034】
なお、本発明は、実施の形態に限定されずに広く応用できる。
例えば、実施形態における上下方向を反対にしても良い。半導体制御装置1は、ヒートシンク2に押さえバネ10で固定した半導体モジュール5〜7を上下に対向して配置しても良い。