(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測位値変換手段は、前記列車位置の座標から最近の線路ブロック上の最近点を算出し、前記基準位置あるいは基準時刻からその線路ブロックの端点までの走行距離に、その端点から前記最近点までの線路ブロックに沿った長さを加算または減算して前記列車位置の座標を前記基準位置あるいは基準時刻から前記列車位置までの走行距離に変換する、請求項1記載の列車位置算出装置。
前記走行距離付与手段は、前記基準位置あるいは基準時刻から前記線路ブロックの始端点までの走行距離に前記線路ブロックの始端点から終端点までの長さを加算することで、前記基準位置あるいは基準時刻から前記線路ブロックの終端点までの走行距離を算出し、
前記測位値変換手段は、前記基準位置あるいは基準時刻から前記最近の線路ブロックの始端点までの走行距離に、その始端点から前記最近点までの前記線路ブロックに沿った長さを加算することで、前記列車位置の座標を前記基準位置あるいは基準時刻から前記列車位置までの走行距離に変換する、請求項2に記載の列車位置算出装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る列車位置算出装置のブロック図である。列車位置算出装置は、列車10(
図2参照)に装備され、GPS受信機1(測位手段)と、GPS測位値変換装置2(測位値変換手段)と、速度発電機3と、速度計測装置4と、列車位置決定装置5(列車位置決定手段)と、記憶装置7と、走行距離付与装置8(走行距離付与手段)と、キロ程変換装置9(キロ程変換手段)とを備えている。
【0017】
列車10が走行する線路13(
図2参照)は、これを区分する各線路ブロックごとに、線種情報と、始端点および終端点のキロ程と、緯度経度高さなどが予め記憶された線路データベース6として記憶装置7に格納されている。走行距離付与装置8は、列車10が在線する線路ブロックを特定し、基準位置からその線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離をそれぞれ算出し、線路データベース6に記憶させることで走行距離を付与する。
【0018】
GPS受信機1は、列車10の走行位置である列車位置の座標を測位する。GPS測位値変換装置2は、GPS受信機1で受信された測位値を、列車10の走行距離に変換する。速度発電機3は、列車10の単位時間あたりの車軸回転数を計測する。速度計測装置4は、速度発電機3で計測された単位時間あたりの車軸回転数に車輪径を乗じて列車10の速度を計測する。
【0019】
列車位置決定装置5は、GPS測位値変換装置2と速度計測装置4から得られる値の双方あるいは一方の値を用いて、列車10における正しいと推定される走行距離を決定する。キロ程変換装置9は、列車位置決定装置5で決定された走行距離を列車位置のキロ程に変換して出力する。なお、速度発電機3と速度計測装置4が速度測定手段に相当する。
【0020】
次に、列車位置算出装置の動作について説明する。
図2は、列車位置算出装置の動作を示す説明図であり、
図3は、線路データベース6に記憶されるデータ14の構成例を示す図であり、
図4〜
図6は、列車位置算出装置の動作を示す説明図であり、
図7は、線路データベース6に記憶されるデータ14,33の他の構成例を示す図であり、
図8は、記憶装置7に記憶されるデータ34の構成例を示す図である。
【0021】
GPS受信機1は、列車10の上部に設置されたアンテナでGPS衛星からの電波を受信することによって、その位置の座標を測位する。一般的な受信機ではアンテナの位置の緯度経度高さを、例えばNMEA−0183形式にて出力する。GPS受信機1によって測位された座標値で表される点をGPS測位点とする。GPS受信機1による測位の誤差やノイズにより、GPS測位点は必ずしも線路上には乗らない。
【0022】
図2に示すように、線路ブロックTは、所定キロ程の地点または分岐点にて線路13を区分したものになる。列車10は、線路ブロックT上の位置Cにあるものとする。
図3は、この場合のデータ14の一例を示す図であり、平面線形、上下勾配とも直線の線路ブロックの例である。線路ブロックTのデータ14は、識別番号Nと始端点15と終端点16の緯度B、経度L、高さHとキロ程K、そして、線路ブロックTの平面的な線形と上下勾配の形状を示すデータとを有する。
【0023】
さらに、データ14には、列車10が、基準位置Aから線路ブロックTの端点(始端点15および終端点16)に至るまでの走行距離Dの領域が確保されている。データ14において始端点を1、終端点を2の添え字で示す。平面線形は、直線、円曲線、緩和曲線で区分される。円曲線の場合は、さらに曲率半径を示す変数が加わる。緩和曲線はクロソイドまたは3次曲線で、クロソイドの場合は始端点15と終端点16の曲率半径、3次曲線の場合は各項の係数を有する。曲率半径は符号をつけて中心が終端点16に向けて左右どちらにあるかを区別する。上下勾配は、例えば、直線、2次曲線で区分される。
【0024】
なお、始端点15は列車10の進行方向手前、終端点16は進行方向奥として説明する。また、分岐等によりキロ程の不連続がある場合は、その不連続点で線路ブロックTを分割し、単一の線路ブロックT内ではキロ程の不連続はないものとする。また、両端点15,16におけるキロ程の差であるキロ程長と、線路ブロックTの座標値と形状から算出される線路ブロックTの長さである線路ブロック長とは、本線に並行する線や線路の移設などにより、必ずしも一致しない。
【0025】
図4に示すように、例えば走行開始時の列車位置を基準位置Aとし、基準位置Aでは走行距離Dを0に設定する。また、基準位置Aを含む初期線路ブロックT
iは特定されているとする。例えば、基準位置Aのキロ程が得られているならば、そのキロ程を含む線路ブロックT
iを始端点19と終端点20のキロ程から検索できる。また、基準位置Aの緯度経度が明らかな場合には、その位置に最も近い線路ブロックを始端点19と終端点20の緯度経度から検索できる。
【0026】
基準位置Aのキロ程Kaが得られている場合、初期の線路ブロックT
iの始端点19と終端点20のキロ程K
i1,K
i2と線路ブロック長d
iを用いて基準位置Aから終端点20までの長さD
i2を、
D
i2=d
i×(K
i2−K
a)/(K
i2−K
i1)
として求める。これを基準位置Aから終端点20までの走行距離とする。
【0027】
また、基準位置Aから始端点19までの長さを求め、この符号を負にして始端点19の走行距離D
i1とする。即ち、
D
i1=−d
i×(K
a−K
i1)/(K
i2−K
i1)
により算出される。始端点19の走行距離は負にして、キロ程の幅と走行距離の幅が上記の差異分は除いて一致するようにする。
【0028】
キロ程K
aが得られていない場合は、以下で説明するように、基準位置Aにて静止しているときにGPS測位を行い、GPS測位点から初期線路ブロックT
iの両端点19,20までの線路ブロックT
iにそった長さになる経路長を計算し、それぞれD
i1,D
i2に格納する。このときもD
i1の符号は負にする。
【0029】
列車10が進行している場合、列車10は線路ブロックを順次移行する。
図5に示すように、列車10は線路ブロックT
cに在線している。基準位置Aから線路ブロックT
cの始端点27までの走行距離をD
c1、基準位置Aから線路ブロックT
cの終端点22までの走行距離をD
c2とし、ともに値が分かっている。走行距離Dが、走行距離D
c2を超えた時点で、列車10は次の線路ブロック23に移動したことになる。
【0030】
このとき、次の線路ブロックT
nextを検索する。次の線路ブロックT
nextでは、始端点22が線路ブロックTcの終端点22と同一点であり、基準位置Aから始端点22までの走行距離D
n1が走行距離D
c2と同一となる。基準位置Aから次の線路ブロックT
nextの終端点24までの走行距離D
n2は、基準位置Aから始端点22までの走行距離D
n1にブロック長d
nを加算する。即ち、
D
n2=D
n1+d
n
により算出される。線路ブロックを移行するごとに、このように基準位置Aから両端点までの走行距離の値を算出して格納する。
【0031】
走行距離を算出した後、線路ブロックT
cを列車10が移行した次の線路ブロックT
nextを指すように置き換える。列車10がさらにその先の線路ブロックT
nnに移行した場合には、基準位置Aから線路ブロックT
nextの終端点24までの走行距離を、基準位置Aから線路ブロックT
nnの始端点24までの走行距離として上記と同様の動作を続行する。
【0032】
このように、初期の線路ブロックT
iから、それを元に列車10が線路ブロックを移行するごとに、基準位置Aから次の線路ブロックまでの走行距離を設定していく。在線する線路ブロックT
cに至る走行した線路ブロックでは、基準位置Aからその両端点までの走行距離が算出されており、在線する線路ブロックT
cの終端点22に接続される次の線路ブロックT
nextでは、基準位置Aから始端点22までの走行距離が確定していることになる。
【0033】
図6を用いて、GPS測位値変換装置2によるGPS測位点の走行距離への変換について説明する。まず、アンテナの高さを差し引き、線路13上の高さに補正したGPS測位点P(B
gps,L
gps,H
gps)から線路ブロックで表された線路13上への最短距離を与える最近点Qを求め、列車10の位置をこのQと推定する。最近点Qは、各線路ブロックとGPS測位点Pとの距離を計算し、その中で距離が最も小さくなる点として求められる。列車10は連続的に移動するので、対象となる線路ブロックは、在線する線路ブロックとその始端および終端に接続する線路ブロックに限ってもよい。
【0034】
距離と最近点Qの計算は、
図6のように線路ブロックが直線の場合はその直線への垂線28の足を求め、垂線28の距離を計算する。垂線28の足が線路ブロック内に乗らない場合は、GPS測位点Pと始端点あるいは終端点までの距離の小さな方を採用する。線路ブロックが円曲線や緩和曲線の場合も同様で、線路13を表す図形への垂線の足とその垂線の距離を計算する。最短距離を与える線路ブロックをT
nearとし、
図6では始端点30、終端点31とする。始端点30をSで表すと最近点Qと始端点30との距離は、線路ブロックT
nearに沿った両者の距離であり、線路ブロックの線形が直線の場合はSQになる。これを、GPS測位点Pに対する線路ブロックT
nearの始端点30からの経路長Δdとする。
【0035】
基準位置AからGPS測位点Pまでの走行距離D
gpsを求めるには、この線路ブロックT
nearの始端点30から最近点Qまでの経路長Δdに、基準位置Aから始端点30までの走行距離D
near1を加算すればよい。即ち、
D
gps=D
near1+Δd
により算出される。
【0036】
最近点Qが乗ると見込まれる線路ブロックは、線路ブロックが十分な長さをもつ場合、在線する線路ブロックT
cもしくは列車10の移動や計測ノイズによってもその前後の線路ブロックとみなせる。上記の動作にて、これらの線路ブロックはいずれも基準位置Aから始端点までの走行距離を有している。したがって、上記の動作により、最近点Qが乗る線路ブロックT
nearの1個のデータのみを用いてGPSの測位結果を走行距離に変換することが可能になる。
【0037】
一方、走行距離Dからのキロ程Kへの変換は、キロ程変換装置9にて行う。
図5に示すように、基準位置Aから在線する線路ブロックT
cの両端点27,22までの走行距離を使っての按分により行う。即ち、
K=(K
c2−K
c1)×(D−D
c1)/(D
c2−D
c1)+K
c1
により変換される。右辺の変数はすべて値が得られているので、在線する線路ブロック1個のデータのみを用いて走行距離Dからキロ程Kを得ることができる。
【0038】
実施の形態1に係る列車位置算出装置の動作について、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。ステップST1では、列車10の走行開始にあたり、初期化を行う。列車位置決定装置5は基準位置Aを現在の位置Cに、走行距離Dを0に、速度計測装置4は前回の時刻を表すτ
oldを現在の時刻τに設定する。また、走行距離付与装置8は、上記のように在線する線路ブロックT
cを特定し、基準位置Aから線路ブロックT
cの始端点27および終端点22までの走行距離を算出して格納する。
【0039】
ステップST2では、速度計測装置4は、速度発電機3より列車10の速度に関連する車軸の単位時間あたりの回転数ωを読み取る。回転数ωの読み取りは一定のサンプリング周期で実行され、その周期はGPS受信機1の測位周期に比べて短く、例えば0.1秒とする。また、時刻τをこの回転数ωを読み取った時刻に合わせる。
【0040】
ステップST3では、車軸の回転数に車輪半径rを乗じて列車10の速度V=2πωrを算出する。また、次回の計測に備えて、τ
oldをτで置き換える。
【0041】
ステップST4では、GPS測位値変換装置2は、GPS受信機1からの測位結果の出力があるかどうかを判定する。多くのGPS受信機1は1秒ごとに測位結果を出力するが、この列車位置算出装置の周期は、速度計測装置4による速度発電機3のサンプリング周期に合わせているため、GPS受信機1の測位周期より短く、GPS測位結果が出力されていない場合もある。その場合は、GPS受信機1による測位結果を用いないで位置算出を実行する。出力があればステップST5に進み、そうでなければステップST9に進む。
【0042】
ステップST5では、GPS受信機1からの測位結果が正常なものかどうかを判定する。NMEA−0183形式の出力では、測位に失敗してもその旨の出力がなされる。成功していることに加え、十分な数のGPS衛星によって測位がなされたこと、あるいは、DOP値など誤差の指標が例えば3以下であること、また、例えばDGPS(Differential GPS)方式の測位が成功したかどうかといった点を確認して、予め定められた基準を満たす結果であればステップST6に進み、そうでなければステップST9に進む。
【0043】
ステップST6では、GPS測位値変換装置2は、GPS受信機1が出力する測位座標(B
gps,L
gps,H
gps)を走行距離D
gpsに変換する。これは上記のように、GPS測位点Pから最近の線路ブロックT
near上の最近点Qを求め、その始端点30からの経路長Δdを、基準位置Aから線路ブロックT
nearの始端点30までの走行距離D
near1に加算する。即ち、
D
gps=D
near1+Δd
により算出される。
【0044】
ステップST7では、GPS測位値の誤差が小さいかどうかを判定する。これは、例えば、GPS測位点Pから最近点Qまでの距離が、例えば、GPS受信機1の誤差の二乗平均誤差の2倍より大きい場合は、測位値が何らかの誤差を受けた例外値であると判断してステップST9に進む。
【0045】
あるいは、これに加え、D
gpsと列車10の速度Vから算出した走行距離D
tgとの差がGPS受信機1の誤差の二乗平均誤差の2倍より大きい場合は、測位値が例外値であると判断してステップST9に進む。そうでなければ、GPS測位値の誤差が小さいと判定してステップST8に進む。なお、D
tgは、前回算出した列車位置D
oldに前回からの時間経過τ−τ
oldでの走行距離V(τ−τ
old)を加算する。即ち、
D
tg=D
old+V(τ−τ
old)
により算出される。
【0046】
ステップST8では、列車位置決定装置5は、VとD
gpsを用いて正しいと推定される走行距離Dを算出、決定する。これは、例えばカルマンフィルタによって算出する。あるいは、GPSの精度が速度発電機3による走行距離D
tg=D
old+V(τ−τ
old)算出の精度よりも格段によいと見込まれる場合、あるいは、GPS受信機1の誤差が、求める列車位置の要求精度よりも十分に小さい場合は、D
gpsをそのままDとしてもよい。
【0047】
ステップST9では、このタイミングではD
gpsが得られていないので、列車位置決定装置5では、
D
tg=D
old+V(τ−τ
old)
により走行距離Dを決定する。これは、例えば、D
tgのみをカルマンフィルタに入力してDを求める。あるいは、D
tgをそのまま走行距離Dとしてもよい。
【0048】
ステップST10では、キロ程変換装置9は、走行距離からキロ程への変換を行うにあたり、まず、Dが在線する線路ブロックT
cの走行距離D
c1からD
c2の範囲に入るかどうかを判定する。入っていれば、ステップST13に進み、入っていなければステップST11にて在線する線路ブロックを更新する。
【0049】
ステップST11では、在線する線路ブロックT
cの次の線路ブロックT
nextを検索する。これは在線する線路ブロックT
cの終端点22に接続される線路ブロックである。在線する線路ブロックを、次の線路ブロックT
nextに更新する。
【0050】
在線する線路ブロックT
cの終端点22に分岐があり接続される線路ブロックが複数存在する場合は、例えば、そのうちの最近点Qが存在する線路ブロックを次の線路ブロックT
nextとする。あるいは、別途、線路13の分岐装置の状態を取得して走行する次の線路ブロックT
nextを特定するように構成してもよい。また、走行計画によって走行する線路ブロックが確定している場合には、それに従ってT
nextを設定する。これらによっても定まらない場合は、そのすべてに上記の方法で最近点Qから終端点22までの経路長を求めて格納し、在線する線路ブロックT
cの更新は、次回以降、最近点Qによって走行している線路ブロックが確定した時点で実行する。
【0051】
ステップST12では、走行距離付与装置8は、在線する線路ブロックとして更新した次の線路ブロックT
nextについて、基準位置Aから始端点22までの走行距離をD
n1、基準位置Aから終端点24までの走行距離D
n2を与える。始端点22は、
図5に示す在線していた線路ブロックT
cの終端点22と同一座標であるため、基準位置Aから線路ブロックT
nextの始端点22までの走行距離は、基準位置Aから線路ブロックT
cの終端点22までの走行距離と同一である。
【0052】
つまり、基準位置Aから始端点22までの走行距離D
n1は、
D
n1=D
c2(=D
c1+d
c)
により算出される。なお、d
cは在線する線路ブロックT
cのブロック長である。
【0053】
基準位置Aから次の線路ブロックT
nextの終端点24までの走行距離D
n2は、次の線路ブロックT
nextのブロック長d
nを用いて、
D
n2=D
n1+d
n
により算出され、この値が格納される。すでに走行距離の値を有している場合は、この新しく得た値に置き換える。走行距離は線路データベース6に格納してもよいし、線路データベース6の編集が難しい場合は、記憶装置7内に格納して適宜参照するようにしてもよい。
【0054】
ステップST13では、キロ程変換装置9は、上記の変換方法によって走行距離Dからキロ程Kを求める。また、このキロ程Kを列車位置として出力する。これは、例えば運転士にディスプレイ画面上にて知らせる形で出力する。あるいは、列車の運行を管理する部署に送信するようにしてもよい。
【0055】
ステップST14では、位置算出を終了するかどうかを判定し、続行する場合はステップST2に戻る。
【0056】
なお、GPS測位値変換装置2、速度計測装置4、列車位置決定装置5、走行距離付与装置8、キロ程変換装置9が実行する上記の動作またはその一部は、列車10に搭載した計算機のソフトウェアにて実行するように構成してもよい。
【0057】
また、速度発電機3に限らず、ドップラー速度計など他の速度計測機器によって列車10の速度を得るように構成してもよい。同様に、GPS受信機1に限らず、列車位置が計測できる方法であれば、他の方法によって測位を行うように構成してもよい。
【0058】
また、GPSによる測位を行うように記載したが、ここでは、衛星測位GNSS一般を表す。また、緯度経度などの地球上での絶対位置座標値を得るような測位方法であれば、他の方法によって測位を行ってもよい。
【0059】
また、座標値は緯度経度高さとして表しているが、計算を容易にするため、緯度経度高さを平面直角座標系やUTM(ユニバーサル横メルカトル)座標系などの直交座標系に変換して計算してもよい。また、直交座標系に変換した座標値を緯度経度に代えて線路ブロックデータを構成してもよい。
【0060】
また、最近点は3次元空間での図形で求めるように説明したが、線路の高低変化が小さい場合、緯度経度の2次元の図形で求めるようにしてもよい。
【0061】
また、上記ステップST6では、D
gpsを最近点の始端点からの経路長を、基準位置Aから線路ブロックの始端点までの走行距離に加算して得たが、基準位置Aから終端点までの走行距離が得られていれば、最近点から終端点までの経路長を、基準位置Aから終端点までの走行距離から減算して得てもよい。
【0062】
また、
図3に示す線路ブロックのデータでは、始端点および終端点それぞれに緯度経度高さ、および走行距離を格納するように構成したが、
図7に示すように、始端点および終端点となる端点データ33を独立させてデータベースを構成してもよい。端点データ33は、識別番号nと緯度B、経度L、高さH、走行距離Dを有する。これにより、接続される同一の点の座標値と走行距離について、複数の線路ブロックが重複して持たなくて済む。キロ程については、路線によって同一点でもキロ程が異なるため、線路ブロックデータにて保持しておく。
【0063】
また、基準位置Aから線路ブロックの端点までの走行距離の値を、線路データベース6を修正せずに別途記憶装置7に記憶する場合は、
図8のようなデータ34の形式にて記憶する。GPS測位値の走行距離への変換は、基準位置Aから在線する線路ブロックT
cまたはそれに接続される線路ブロックの始端点までの走行距離が必要になる。また、走行距離からキロ程への変換には、基準位置Aから在線する線路ブロックT
cの両端点までの走行距離が必要になる。したがって、線路データベース6は、基準位置Aから在線する線路ブロックT
cの両端点の走行距離のみを記憶していればよい。このように、少ないデータを新たに記憶するのみで処理を実行することができる。
【0064】
また、線路ブロックの形状として、直線、円弧、緩和曲線として記述したが、これらの形状を有する複数の線路ブロックが接続されたものをひとつの線路ブロックとして扱うように構成してもよい。
【0065】
また、実施の形態1では、ステップST2以降で基準位置Aに関する情報は用いない。したがって、走行距離は基準位置Aからの列車10の走行した距離、あるいは、基準位置Aから線路に沿った経路長として説明したが、基準位置Aを列車10が発した時刻を基準時刻として、その基準時刻から列車10が走行した距離として与えても同一の値となるのでこれを用いてもよい。
【0066】
また、走行距離は、基準位置Aあるいは基準時刻からの、列車10が定められた進行方向に向けて前進走行した距離から列車10が後進した距離を差し引いたものとして与えてもよい。列車10の進行方向が変化しない場合には、同じ値となる。特に、上記の初期の線路ブロックT
iにおいては基準位置Aから始端点19までの走行距離D
i1を負にしており、これは基準位置Aから後進した場合に始端点19に達する走行距離を正しく表す。また、基準時刻はその時点での列車位置が明らかになっているならば、どの時点としてもよい。また、基準位置Aは随時更新するように構成してもよい。
【0067】
また、上記ステップST11では、在線する線路ブロックT
cの終端点22に接続される線路ブロックについて、基準位置Aから始端点および終端点までの走行距離を格納したが、在線する線路ブロックT
cの終端点からたどり、一定の距離内に入る線路ブロックについて順次始端点と終端点の経路長を算出して格納していくように構成してもよい。この一定の距離は、例えば1000mとする。
【0068】
また、速度計測装置4は列車10の速度Vを算出し、列車位置決定装置5はこれを用いて走行距離Dを算出するように構成したが、速度計測装置4にて走行距離D
tgを計算して、列車位置決定装置5はこのD
tgを用いて走行距離Dを算出するように構成してもよい。
【0069】
また、GPS測位値変換装置2は走行距離D
gpsを算出し、列車位置決定装置5はこれを用いて走行距離Dを算出するように構成したが、GPS受信機1にて列車10の移動速度を計測し、列車位置決定装置5はこの計測で得られた列車10の移動速度を用いて走行距離Dを算出するように構成してもよい。
【0070】
このような構成によれば、走行距離付与装置8は、列車10が在線する線路ブロックT
cの終端点22に対して、基準位置Aから始端点27までの走行距離と線路ブロック長を用いて基準位置Aから終端点22までの走行距離を算出し与えることになる。列車10が次の線路ブロックに移動した場合には、次の線路ブロックの始端点22には、移動前の線路ブロックの終端点22の基準位置Aからの走行距離と同一である基準位置Aからの走行距離が常に与えられている。これにより、次の線路ブロックの終端点の走行距離の算出が可能であり、走行にしたがって、順次線路ブロックの端点に連続的な走行距離値を付与していくことができる。
【0071】
このように走行距離付与装置8によって、基準位置Aから列車10が在線している線路ブロックT
cの終端点22までの走行距離を与えることにより、列車10がその線路ブロックT
cに在線する場合に加え次の線路ブロックに移動した場合においても、在線する線路ブロックT
cに対応するデータのみでGPS測位値を列車10の走行距離に変換することができる。また、在線する線路ブロックT
cに対応するデータのみで列車10の走行距離をキロ程に変換することができる。また、走行経路上にキロ程値の不連続があったとしても、走行距離をキロ程に精度良く変換することができる。
【0072】
また、線路ブロックに対応する走行距離の値は、走行距離付与装置8により列車10が線路ブロックに進入するごとに計算して与えるように構成したので、予め列車位置決定装置5に走行経路が与えられていない場合および走行経路が変更になった場合でも、基準位置Aから走行する線路ブロックの端点までの走行距離の値を与えることができ、在線する線路ブロック21が有するデータのみでGPS測位値を列車10の走行距離に変換することができる。また、在線する線路ブロックT
cに対応するデータのみで列車10の走行距離をキロ程に変換することができる。
【0073】
また、線路ブロックに対応する走行距離の値は、走行距離付与装置8により列車10が線路ブロックに進入するごとに計算して与えるように構成したので、例えば環状路線において同一の線路ブロックを複数回走行する場合においても、走行のたびに基準位置Aからの積算の走行距離に線路ブロックの走行距離が更新される。したがって、環状走行の場合でも、特別な処理を必要とせずに、在線する線路ブロックT
cに対応するデータのみでGPS測位値を列車10の走行距離に変換することができる。また、在線する線路ブロックT
cに対応するデータのみで列車10の走行距離をキロ程に変換することができる。
【0074】
また、連続な走行距離値を用いて列車位置を決定するように構成したので、列車位置決定装置5において走行距離の決定にカルマンフィルタを用いた場合などは、それが有する内部状態、内部変数を変換することなくそのまま連続的に使用することができる。例えば、キロ程を用いたのでは、その不連続やGPS測位値に合わせての補正のたびに、内部状態を新しい数値に対応させて変換、あるいはフィルタそのものをリセットしなければならなくなる。また、分岐等による線路ブロック間でのキロ程の不連続があっても、特別な処理を必要とせずに列車10の位置を算出することができる。
【0075】
以上のように、実施の形態1に係る列車位置算出装置では、列車10が在線する線路ブロックを特定し、基準位置Aからその線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離をそれぞれ算出し、線路データベース6に記憶させることで線路ブロックに走行距離を付与し、GPSの測位値から走行距離への変換には、線路データベース6に記憶された列車が在線する線路ブロックの端点に付与された走行距離を用いるため、線路13の長さを積算することなく、単一の線路ブロックの情報のみでGPS測位点を走行距離に変換することができる。また、走行距離からのキロ程の算出においても線路ブロックの端点に付与された走行距離を用いることで、走行経路上にキロ程の不連続、あるいは、走行距離との差異があっても列車10の走行距離をキロ程に精度良く変換することができる。
【0076】
また、GPS測位値変換装置2は、列車位置の座標から最近の線路ブロック上の最近点Qを算出し、基準位置Aからその線路ブロックの端点までの走行距離に、その端点から最近点Qまでの線路ブロックに沿った長さを加算または減算して列車位置の座標を基準位置Aから列車位置までの走行距離に変換するため、単一の線路ブロックが有するデータのみでGPS測位点を走行距離に変換することができる。
【0077】
また、キロ程変換装置9は、列車位置決定装置5により決定された走行距離と、基準位置Aから列車10が在線する線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離との差の比によって始端点および終端点のキロ程を按分することで、列車位置決定装置5により決定された走行距離をキロ程に変換するため、単一の線路ブロックが有するデータのみで列車の走行距離をキロ程に変換することができる。
【0078】
また、走行距離付与装置8は、基準位置Aから線路ブロックの始端点までの走行距離に線路ブロックの始端点から終端点までの長さを加算することで、基準位置Aから線路ブロックの終端点までの走行距離を算出し、GPS測位値変換装置2は、基準位置Aから最近の線路ブロックの始端点までの走行距離に、その始端点から最近点Qまでの線路ブロックに沿った長さを加算することで、列車位置の座標を基準位置Aから列車位置までの走行距離に変換するため、列車10が前進のみで方向転換を行わない場合に、単一の線路ブロックが有するデータのみで測位点を走行距離に変換することができ、変換された走行距離をキロ程に変換することができる。
【0079】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係る列車位置算出装置について説明する。
図10は、実施の形態2に係る列車位置算出装置のブロック図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同様構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0080】
実施の形態1では、列車10の走行に伴って走行距離を加算させるように構成したが、実施の形態2では、列車10の進行方向によって走行距離に符号を付けて動作させる。実施の形態2に係る列車位置算出装置は、実施の形態1に係る列車位置算出装置に方向検知装置35(方向検知手段)を追加した構成である。
【0081】
方向検知装置35は、列車10が進行方向(前進、後進)を検知する。これは、例えば2台で構成した速度発電機の位相差によって検知してもよい。あるいは、レバーサの位置を電気的に読み取れるように構成し、その位置を読み取ることで検知するようにしてもよい。あるいは、列車10の前後どちらの運転台にて運転されているかによって検知するようにしてもよい。
【0082】
次に、実施の形態2に係る列車位置算出装置の動作について説明する。
図11〜
図13は、実施の形態2に係る列車位置算出装置の動作を示す説明図である。実施の形態2では、走行距離を、基準位置Aを出発してからの、あるいは基準時刻からの、列車10の(前進距離)−(後進距離)で定義する。前進方向を正方向とした走行距離である。列車10の前進の方向は予め定義されていて、前進して走行した場合の距離は正、後進して走行した場合の距離は負で積算する。後進を続けた場合は、走行距離が負になることもある。前進後進を繰り返して分岐線にも進入するような場合、異なる地点が同一の走行距離値をもつことがある。さらに、基準位置A以外の地点でも、走行距離が0になることがある。
【0083】
実施の形態2においても、上記のように列車位置算出装置は、走行距離を介して列車位置の算出を実行する。このとき、基準位置Aにかかわらず、在線する線路ブロックT
cの端点にて走行距離とキロ程が判明していればよい。走行距離が負になっても、基準位置A以外で走行距離が0を示しても、列車位置の算出に支障はない。
【0084】
走行路線はすべて前進のみとは限らず、往復の走行やスイッチバック、方向転換しての他の路線への進入など、後進する場合がある。この場合、速度発電機3から得られる速度Vを正の値のまま取り扱ったのでは、線路ブロックの端点がもつ走行距離とは整合しなくなる。例えば、在線する線路ブロックTc内で考えると、GPS測位点から計算する走行距離Dgpsは、基準位置Aから始端点までの走行距離Dc1に最近点から始端点までの経路長Δdを加算して計算される。その線路ブロックT
c内で往復しようと、同一点では同一の走行距離D
gpsを得る。
【0085】
一方、速度発電機3からの速度Vから得られる走行距離D
tgは、同一点に在線しても、往復のたびにD
tgは増加していき、D
gpsと乖離する。そこで、実施の形態2では、列車10の進行方向を検知し、方向転換があったとしても、常に基準位置Aから線路ブロックの端点までの走行距離に合致した走行距離を算出する。
【0086】
方向検知装置35は、列車10の進行方向が前進か後進かを検知する。これは例えば、基準時刻から最初に進んだ方向を前進とする。あるいは、ひとつの走行計画に対して前進方向を定めてもよい。列車10が前進している場合、速度Vは正の速度として測定され、後進している場合は負の速度として測定される。即ち、GPS測位値変換装置2と走行距離付与装置8は列車10が前進しているか後進しているかで走行距離の算出方法を切り替える。
【0087】
上記について
図11を用いて説明する。列車10は線路ブロックT
firstから前進して線路ブロックT
secondに移行し、その線路ブロックT
second上の位置50にて折り返して後進し、線路ブロックT
thirdに移行する。T
firstに在線していた時点では、始端点52および終端点53までの走行距離は確定しており、上記のように、列車10が線路ブロックT
secondに移った時点で、走行距離付与装置8は、線路ブロックT
secondの始端点53までの走行距離D
second1として、線路ブロックT
secondの始端点53と同一点である線路ブロックT
firstの終端点53までの走行距離D
first2を付与し、線路ブロックT
secondの終端点54までの走行距離として、D
second1に線路ブロックT
secondのブロック長d
secondを加えた値を付与する。即ち、
D
second2=D
second1+d
second
により算出される。
【0088】
列車10が折り返して線路ブロックT
secondから線路ブロックT
thirdに後進で移行した場合、走行距離付与装置8は、線路ブロックT
thirdの終端点53までの走行距離D
third2が、線路ブロックT
thirdの終端点53と同一点である線路ブロックT
secondの始端点53までの走行距離D
second1と同一であるので、これを付与し、線路ブロックT
thirdの始端点55までの走行距離D
third1として、D
third2から線路ブロックT
thridのブロック長d
thridを差し引いた値を付与する。即ち、
D
third1=D
third2−d
thrid
により算出される。
【0089】
前進の場合だけでなく後進の場合も、終端点までの走行距離は、始端点までの走行距離に線路ブロックの長さを加えた値になる。列車10が線路ブロックT
thirdを後進している場合は後進なのでVは負であり、これから算出されるD
tgは減少する。
【0090】
一方、GPS測位値変換装置2は、終端点53までの走行距離から、最近点56と終端点53間の経路長Δdを差し引いた値として走行距離D
gpsを算出する。即ち、
D
gps=D
third2−Δd
により算出される。両者とも、終端点53までの走行距離D
third2から後進して始端点55に向かうほど減少し、始端点55に到達すると走行距離D
third1となる。
【0091】
次に、実施の形態2に係る列車位置算出装置の動作について、
図14と
図15に示すフローチャートを用いて説明する。これらのステップの動作では、走行距離を列車10の(前進距離)−(後進距離)として与える。
【0092】
ステップST200では、実施の形態1のステップST1と同様、列車10の走行開始にあたり、初期化を行う。列車位置決定装置5は、走行開始時点である現時点を基準時刻とし、走行開始位置である実施の形態1での基準位置Aを現在の列車位置Cに、走行距離Dを0に設定する。速度計測装置4は、前回の時刻を表すτ
oldを現在の時刻τに設定する。また、走行距離付与装置8は、上記のように在線する初期の線路ブロックを特定し、その線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離を算出して格納する。
【0093】
ステップST201では、方向検知装置35は列車10の方向を検知し、それを示す変数sを前進ならば1、後進ならば−1にする。
【0094】
ステップST202では、速度計測装置4は速度発電機3の出力である車軸の回転数に、車輪半径r、さらに方向を示す変数sを乗じて、
V=2πsωr
により算出される。ここで、Vは速度であり前進のときは正、後進のときは負になる。
【0095】
ステップST203では、sが1かどうかを判定する。1であれば列車10は前進しているのでステップST6に進み、そうでなければ列車10は後進しているので、ステップST204に進む。
【0096】
ステップST204では、列車10が後進している場合、GPS測位値変換装置2はGPS受信機1が出力する測位座標を走行距離D
gpsに変換する。これはステップST5と同様に、GPS測位点から最近の線路ブロックT
near上の最近点Qを求める。
【0097】
図12に示すように、このステップでは、最近の線路ブロックT
nearの終端点31からの経路長Δd(≧0)を、線路ブロックT
nearの終端点31までの走行距離D
near2から減算することで走行距離D
gpsを算出する。即ち、
D
gps=D
near2−Δd
により算出される。
【0098】
列車10が後進しているので、以下のステップST207の動作によって、在線する線路ブロックの両端点およびその始端点で接続される線路ブロックの終端点までの走行距離が計算されている状態となっている。
【0099】
最近の線路ブロックT
nearは在線する線路ブロックT
c、または、列車10が後進しているので在線する線路ブロックT
cの始端点に接続される線路ブロックである。したがって、最近の線路ブロックT
nearの終端点までについて正しい走行距離を有することになり、これを用いて最近点Qまでの走行距離を計算することができる。
【0100】
ステップST205では、Dが前回に位置検出において在線していた線路ブロックT
cの走行距離の範囲より大きいかどうかを判定する。大きければ列車10は前進しているのでステップST11に進み、そうでなければ列車10は後進しているのでステップST206に進む。
【0101】
ステップST206では、
図13に示すように、キロ程変換装置9は、走行経路上、在線していた線路ブロックT
cの始端点27に接続される線路ブロックT
prevを検索する。在線する線路ブロックを、線路ブロックT
prevに更新する。
【0102】
ここでもステップST11と同様に、在線する線路ブロックT
cの始端点27に分岐があり接続される線路ブロックが複数みつかる場合は、例えば、最近点Qが存在する線路ブロックを前の線路ブロックT
prevとする。あるいは、線路の分岐装置の状態を取得して走行する次の線路ブロックT
prevを特定してもよい。また、走行計画によって走行する線路ブロックが確定している場合には、移行する線路ブロックをT
prevにする。これらによっても定まらない場合は、そのすべてに上記の方法で基準位置Aから始端点までの走行距離を求めて格納し、在線する線路ブロックT
cの更新は、次回以降、最近点Qによって走行している線路ブロックが確定した時点で実行する。
【0103】
ステップST207では、走行距離付与装置8は、在線する線路ブロックとして更新した前の線路ブロックT
prevについて、始端点37までの走行距離D
p1、終端点27までの走行距離D
p2を付与する。終端点27は、
図13に示すように、在線していた線路ブロックT
cの始端点27と同一点であるため、同一の走行距離を有している。前の線路ブロックT
prevの終端点27までの走行距離D
p2は、在線していた線路ブロックT
cの始端点27までの走行距離D
c1である。
【0104】
線路ブロックT
prevの始端点37までの走行距離D
p1は、
D
p1=D
p2−d
p
により算出される。ここで、d
pは線路ブロックD
prevのブロック長である。すでに走行距離の値を有している場合は、この新しく得た値に置き換える。線路ブロックT
prevの始端点37までの走行距離は、線路データベース6に格納してもよいし、記憶装置7内に格納してもよい。
【0105】
このように、走行距離を前進で走行した距離から後進で走行した距離を差し引いたものとして与え、列車10の進行方向を検知して時間間隔あたりの走行距離の符号を変更し、前進あるいは後進によって走行距離付与装置8とキロ程変換装置9の動作を切り替えることで、一部に後進がある路線を走行する場合でも、後進時に速度発電機3から得た速度がGPS測位点から求めた走行距離と乖離することを防いで、列車位置を算出することができる。
【0106】
以上のように、実施の形態2に係る列車位置算出装置では、列車10の在線する線路ブロックを特定し、その線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離を列車10の前進後進に合わせてそれぞれ算出し、線路データベース6に記憶させることで線路ブロックに走行距離を付与し、GPSの測位値から走行距離への変換には、線路データベース6に記憶された列車が在線する線路ブロックの端点に付与された走行距離を列車10の前進後進に合わせて用いるため、列車10の前進後進にかかわらず、線路13の長さを積算することなく、単一の線路ブロックの情報のみでGPS測位点を走行距離に変換することができる。また、走行距離からのキロ程の算出においても線路ブロックの端点に付与された走行距離を用いることで、走行経路上にキロ程の不連続、あるいは、走行距離との差異があっても列車10の走行距離をキロ程に精度良く変換することができる。
【0107】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3に係る列車位置算出装置について説明する。
図16は、実施の形態3に係る列車位置算出装置のブロック図である。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2で説明したものと同様構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0108】
実施の形態1では、列車10の走行に合わせて線路ブロックの走行距離を計算して設定したが、実施の形態3では、走行計画を受け取ってその経路の線路ブロックについて走行距離を設定する。実施の形態3に係る列車位置算出装置は、実施の形態1に係る列車位置算出装置に走行計画受信装置38(走行計画受信手段)と経路決定装置39(経路決定手段)を追加した構成である。
【0109】
走行計画受信装置38は、地上の無線設備である地上子から走行許可情報である走行計画を受信する。経路決定装置39は、始点の線路ブロックと終点の線路ブロックの情報から線路データベースを参照して、始点の線路ブロックから終点の線路ブロックに至る部分走行経路を決定する。
【0110】
次に、実施の形態3に係る列車位置算出装置の動作について説明する。
図17は、列車位置算出装置の動作を示す説明図である。走行計画は、例えば、走行できる区間の始点の線路ブロックと終点の線路ブロックとの識別記号で構成される。部分走行経路42はM個の線路ブロックで構成されており、これをT
m:m=1,2,..,Mで示す。
【0111】
始点の線路ブロックT
1から終点の線路ブロックT
Mに至る経路は、分岐部47にかかわらず一意に定まり、かつ、列車10の走行経路の一部をなすものであり、以下、部分走行経路42と称す。走行計画によって部分走行経路42が確定している場合には、部分走行経路42内の線路ブロックの走行距離が確定する。部分走行経路42を得た段階で線路ブロックの端点にその確定した部分走行経路42を走行したときの走行距離を設定するように動作させる。
【0112】
次に、実施の形態3に係る列車位置算出装置の動作について、
図18と
図19に示すフローチャートを用いて説明する。ステップST301では、走行計画受信装置38は、例えば地上子46からの信号によって、新たに走行計画を受信したかどうかを判定する。受信していればステップST302に進み、そうでなければステップST2に進む。
【0113】
ステップST302では、経路決定装置39は走行計画受信装置38が受け取った走行計画から部分走行経路42を求める。これは、例えば、走行計画が部分走行経路42の始点の線路ブロックT
1と終点の線路ブロックT
Mを示す識別記号であり、経路決定装置39は、線路データベース6に格納された線路ブロックのデータ14における端点の情報を用いて、始点の線路ブロックT
1から終点の線路ブロックT
Mまで順次接続されている線路ブロックをたどり、始点から終点に至る経路を求める。
【0114】
これを効率よく行うため、線路データベース6に、各線路ブロックがどの線路ブロックと接続されているかを示す情報を持たせておいてもよい。部分走行経路42は、線路ブロックを経路順に並べた形で保持する。ここで、走行計画は、その始点の線路ブロックT
1に在線しているタイミングで受け取るように構成されている。つまり、始点の線路ブロックT
1は在線する線路ブロックT
cであり、両端点の走行距離は求まっている。
【0115】
ステップST303では、走行距離付与装置8は、基準位置Aから部分走行経路42を構成する各線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離を計算して設定する。1番目の始点である線路ブロックT
1は在線する線路ブロックT
cであり、基準位置Aから始端点および終端点までの走行距離D
11,D
12はすでに設定されている。以降、基準位置Aから順にm(m=2,3,..,M)番目の線路ブロックT
mの始端点44までの走行距離D
m1は、基準位置Aからその前の線路ブロックの終端点44までの走行距離D
m−12と同一である。
【0116】
また、基準位置Aから線路ブロックT
mの終端点45までの走行距離D
m2は、基準位置Aから線路ブロックT
mの始端点44までの走行距離D
m1に線路ブロックT
mのブロック長d
mを加算した値であり、即ち、
D
m2=D
m1+d
m
により算出される。
【0117】
ステップST304では、キロ程変換装置9は、在線する線路ブロックT
cが部分走行経路42内で、かつ、その終点の線路ブロック41でないかどうかを判定する。つまり、Tc∈{Tm|m=1,2,..,M−1}であるかどうかを判定する。そうであればステップST305に、そうでなければステップST11に進む。
【0118】
ステップST305では、部分走行経路42内において在線する線路ブロックの次の線路ブロックを在線する線路ブロックとして更新してステップST13に進む。つまり、T
cがT
m:m=1,2,..,M−1であれば、
T
c←T
m+1
に更新する。
【0119】
以上のように、実施の形態3に係る列車位置算出装置では、走行距離付与装置8は、経路決定装置39により部分走行経路42が決定された場合に、部分走行経路42を構成する各線路ブロックの始端点および終端点について、基準位置Aから各線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離をそれぞれ算出し線路データベース6に記憶させるため、走行計画によって確定している部分走行経路42については分岐の影響を受けずに走行距離を算出し線路データベース6に記憶させることができる。
【0120】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4に係る列車位置算出装置について説明する。
図20は、実施の形態4に係る列車位置算出装置のブロック図である。なお、実施の形態4において、実施の形態1〜3で説明したものと同様構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0121】
実施の形態4では、列車位置の算出に際し、線路13の近傍に設置された自動列車停止装置(ATS)および自動列車制御装置(ATC)からの信号を用いる。実施の形態4に係る列車位置算出装置は、実施の形態1に係る列車位置算出装置に車上子57(通信手段)と設置位置算出装置58(設置位置算出手段)とを追加し、記憶装置7に地上子データベース59をさらに記憶させた構成である。
【0122】
車上子57は、地上に設置されたATSあるいはATCの地上子60(
図21参照)と通信し、列車10が地上子位置を通過するごとに信号を受信する。設置位置算出装置58は、地上子データベース59を用いて、車上子57が受信した地上子60の信号から、通過した地上子60とその設置位置を特定する。
【0123】
次に、実施の形態4に係る列車位置算出装置の動作について説明する。
図21は、列車位置算出装置の動作を示す説明図である。実施の形態4においては、地上子60の信号によって列車位置の補正を行う。これらの信号は、絶対的な列車位置を与えることができ、衛星配置など観測状況の影響を受けるGPSに比べて精度が高い。つまり、車上子57が信号を受信したときは、列車10がその地上子60の位置を通過したと考えることができる。
【0124】
地上子データベース59は、各地上子60ごとにその設置位置のキロ程を記憶している。地上子60からの信号を受信した時点で、設置位置算出装置58は地上子データベース59から信号を受信した地上子60を特定し、そこに格納された地上子60のキロ程K
tを得る。さらに、キロ程変換装置9は、このK
tを列車位置として変換することなくK
tを出力する。
【0125】
ただし、このままでは基準位置Aから列車位置までの走行距離Dを用いて変換されたキロ程KはK
tと一致せず、以降の動作で整合がとれなくなる。そこで、実施の形態4では、基準位置Aから列車位置までの走行距離がDのままでも、それがK
tに変換されるようにする。つまり、走行距離Dとキロ程K
tが同一位置を示すように補正を行う。
【0126】
これには、基準位置Aから線路ブロックT
cの両端点までの走行距離の値を補正する。走行距離付与装置8は、在線する線路ブロックT
cについて、走行距離DがK
tに変換されるような基準位置Aから両端点までの走行距離D
c1’,D
c2’を求め、D
c1,D
c2の値をこの値に補正する。即ち、D
c1’,D
c2’は次の式で示される。
【0127】
D
c1’=D−(K
t−K
c1)×d
c/(K
c2−K
c1)
D
c2’=D
c1’+d
c
ここで、d
cは在線する線路ブロックT
cのブロック長である。
【0128】
このように補正すれば、列車位置決定装置5が行う列車10の走行距離の演算は何ら影響を受けない。以降の動作においても、そのまま速度発電機3とGPS受信機1による位置決定演算を続行できる。特に、列車位置の決定にカルマンフィルタを用いている場合においても、それが有する内部状態、内部変数を変換することなくそのまま使用することができる。
【0129】
次に、実施の形態4に係る列車位置算出装置の動作について、
図22と
図23に示すフローチャートを用いて説明する。ステップST401では、車上子57が、地上子60から信号を受信したかどうかを判定する。受信していればステップST402に進み、そうでなければステップST13に進む。
【0130】
ステップST402では、設置位置算出装置58は、車上子57が受信した地上子60の信号から、記憶装置7に記憶されている地上子データベース59を検索し、地上子60を特定し、そのキロ程K
tを列車10の通過位置(列車位置)とする。
【0131】
ステップST403では、キロ程変換装置9は、在線する線路ブロックT
cのキロ程K
c1からK
c2の範囲にKtが入るかどうかを判定する。入っていれば、ステップST405に進み、入っていなければステップST404において在線する線路ブロックを更新する。
【0132】
ステップST404では、在線する線路ブロックT
cの前後の線路ブロックを検索し、K
tがそのキロ程の範囲に入るものを新たに在線する線路ブロックとして更新する。
【0133】
ステップST405では、走行距離付与装置8は、基準位置Aから在線する線路ブロックの両端点までの走行距離を更新する。
【0134】
ステップST406では、キロ程変換装置9は、キロ程K
tを列車位置として出力する。これは、例えば運転士にディスプレイ画面上にて知らせる形で出力する。あるいは、列車の運行を管理する部署に送信するようにしてもよい。
【0135】
なお、実施の形態4では、地上子60のキロ程K
tに基づいて基準位置Aから線路ブロックの両端点までの走行距離の値を補正するように構成したが、
D
t=(K
t−K
c1)×(D
c2−D
c1)/(K
c2−K
c1)+D
c1
によって、走行距離Dをキロ程K
tに整合する走行距離D
tに変更するように構成してもよい。
【0136】
また、実施の形態4では、ATSあるいはATCの地上子60との通信によってキロ程を得るように構成したが、列車10との通信が可能な他の通信設備との通信によってキロ程を得るように構成してもよい。
【0137】
以上のように、実施の形態4に係る列車位置算出装置では、車上子57が地上子60との通信を行った時点にて、設置位置算出装置58により求められた列車位置のキロ程が、キロ程変換装置9により走行距離から変換された列車位置のキロ程に一致するように、走行距離付与装置8は、基準位置Aから線路ブロックの始端点および終端点までの走行距離を線路データベース6に更新して記憶させるため、速度発電機3とGPS受信機1による一連の列車位置決定演算に影響を与えずに、正確な列車位置を得ることができる。
【0138】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。