特許第6032959号(P6032959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032959
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ポンプの固定構造およびポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20161121BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F04D29/66 D
   F04D29/42 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-136593(P2012-136593)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1655(P2014-1655A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】藤島 真
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−008222(JP,A)
【文献】 実開平05−012698(JP,U)
【文献】 特開2009−284704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを固定台に固定するためのポンプの固定構造において、
前記ポンプは、流体の吐出口と吸入口とを有し内部に羽根車が配置されるポンプ部と、前記羽根車を回転させるためのモータ部とを備え、
前記モータ部は、駆動用コイルと前記駆動用コイルが巻回されるステータコアとを有するステータと、樹脂で形成されるとともに前記ステータと一体成形され前記モータ部の外周面を構成するモータケースとを備え、
前記モータ部の外周面は、前記ステータと前記モータケースとの一体成形時に使用される金型から前記モータケースを抜くための抜き勾配を有する略円錐台面状に形成され、
前記ポンプ部は、前記固定台に固定される被固定部を備え、
前記固定台は、金属製であるとともに、略矩形状に形成され前記モータ部の下側に配置されるモータ支持部と略矩形状に形成される前記モータ支持部の1組の対辺のそれぞれから下方向へ折れ曲がる側面部とを有する略角溝状に形成され、
前記被固定部は、2個の前記側面部のうちの一方の前記側面部に固定され、
前記モータ部と前記モータ支持部との間には隙間が形成されるとともに弾性を有する緩衝部材が配置され、前記モータ部および前記モータ支持部と前記緩衝部材とが接触していることを特徴とするポンプの固定構造。
【請求項2】
前記側面部と前記被固定部との間には、弾性を有する第2の緩衝部材が配置されていることを特徴とする請求項記載のポンプの固定構造。
【請求項3】
前記モータ支持部には、前記緩衝部材の一部が係合する係合孔が形成され、
前記緩衝部材には、前記係合孔に係合する係合突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のポンプの固定構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載のポンプの固定構造を構成する前記ポンプであって、
前記モータ部は、前記駆動用コイルに電流を供給するためのコネクタを備え、
前記コネクタは、前記モータケースの外周面から突出するように前記モータケースと一体化され、
前記モータ部の軸方向から見たときに、前記モータケースの、前記モータ部の軸中心を挟んだ前記コネクタの反対側に、前記金型のゲートの跡であるゲート跡が形成されていることを特徴とするポンプ。
【請求項5】
前記モータケースには、前記ゲート跡が表面に形成されるゲート跡形成部が前記モータ部の径方向の外側へ突出するように形成されていることを特徴とする請求項記載のポンプ。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載のポンプの固定構造を構成する前記ポンプであって、
前記モータケースは、BMC(Bulk Molding Compound)で形成されていることを特徴とするポンプ。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のポンプの固定構造を構成する前記ポンプであって、
前記モータ部は、前記ステータの内周側に配置されるロータを備え、
前記ステータコアは、前記駆動用コイルの外周側に配置される略円筒状の外周コア部を備え、
前記モータ部の径方向において、前記金型のゲートの跡であるゲート跡の少なくとも一部と、前記外周コア部の少なくとも一部とが重なっていることを特徴とするポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプを固定台に固定するためのポンプの固定構造に関する。また、本発明は、かかるポンプの固定構造を構成するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプを台に固定するためのポンプの固定装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では、ポンプは、当て部を介して台に固定されている。また、ポンプは、流体の吐出口と流入口とを有するポンプ部と、ポンプ部の内部に配置される羽根車を回転させるためのモータ部とを備えている。モータ部の外周面は、円柱面状に形成されている。当て部および台は、金属板を所定形状に折り曲げることで形成されている。また、当て部は、円柱面状に形成されるモータ部の外周面が固定される円弧状の曲面部と、曲面部の両端から下方向へ折れ曲がる側面部と、側面部の下端から水平方向へ伸びる底面部とから構成されている。台は、当て部の底面部が固定される上面部と、上面部の両端から下方向へ折れ曲がる側面部とから構成されている。
【0003】
また、従来、流体の吐出口と流入口とを有するポンプ部と、ポンプ部の内部に配置される羽根車を回転させるためのモータ部とを備えるポンプとして、モータ部を構成するステータと、ステータを覆う樹脂製のモールド部とを備えるポンプが知られている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のポンプでは、モールド部は、ステータと一体成形されており、モータ部の外周面を構成している。特許文献2に記載のポンプのように、ステータと一体成形されるモールド部を有するポンプでは、モータ部の外周面は、一般に、ステータとモールド部との一体成形時に使用される金型からモールド部を抜くための抜き勾配を有する円錐台面状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平8−7199号公報
【特許文献2】特開2008−109848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のポンプでは、モータ部を構成するロータが回転するため、モータ部において振動が発生しやすい。一方で、このポンプでは、金属板で形成された当て部の曲面部にモータ部の外周面が固定され、当て部の底面部が台に固定されているため、モータ部で発生する振動が当て部を介して台に伝わりやすい。したがって、モータ部から台への振動の伝達を抑制するためには、台の上面部とモータ部との間に隙間をあけるとともに、たとえば、台の側面部にポンプ部を固定することが好ましい。しかしながら、この場合であっても、台の側面部に固定されるポンプ部の被固定部が経年変化によって変形すると、台の上面部とモータ部とが接触して、モータ部の振動が台へ伝達されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ポンプ部とモータ部とを有するポンプを固定台に固定するためのポンプの固定構造において、固定台に固定されるポンプ部の被固定部が経年変化で変形しても、モータ部から固定台への振動の伝達を抑制することが可能なポンプの固定構造を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるポンプの固定構造を構成するポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のポンプの固定構造は、ポンプを固定台に固定するためのポンプの固定構造において、ポンプは、流体の吐出口と吸入口とを有し内部に羽根車が配置されるポンプ部と、羽根車を回転させるためのモータ部とを備え、モータ部は、駆動用コイルと駆動用コイルが巻回されるステータコアとを有するステータと、樹脂で形成されるとともにステータと一体成形されモータ部の外周面を構成するモータケースとを備え、モータ部の外周面は、ステータとモータケースとの一体成形時に使用される金型からモータケースを抜くための抜き勾配を有する略円錐台面状に形成され、ポンプ部は、固定台に固定される被固定部を備え、固定台は、金属製であるとともに、略矩形状に形成されモータ部の下側に配置されるモータ支持部と略矩形状に形成されるモータ支持部の1組の対辺のそれぞれから下方向へ折れ曲がる側面部とを有する略角溝状に形成され、被固定部は、2個の側面部のうちの一方の側面部に固定され、モータ部とモータ支持部との間には隙間が形成されるとともに弾性を有する緩衝部材が配置され、モータ部およびモータ支持部と緩衝部材とが接触していることを特徴とする。
【0008】
本発明のポンプの固定構造では、モータ部の下側に配置されるモータ支持部とモータ部との間に、弾性を有する緩衝部材が配置されている。そのため、本発明では、固定台に固定されるポンプ部の被固定部が経年変化で変形しても、固定台のモータ支持部にモータ部が接触するのを防止することが可能になる。したがって、本発明では、固定台に固定されるポンプ部の被固定部が経年変化で変形しても、モータ部から固定台への振動の伝達を抑制することが可能になる。
【0009】
また、本発明のポンプの固定構造では、モータ部の下側に配置されるモータ支持部とモータ部との間に緩衝部材が配置されているため、モータ部の外周面が抜き勾配を有する略円錐台面状に形成されていても、緩衝部材によって、モータ部を安定した状態で支持することが可能になる。
【0010】
本発明において、側面部と被固定部との間には、弾性を有する第2の緩衝部材が配置されていることが好ましい。このように構成すると、モータ部の振動がポンプ部を介して固定台に伝達されるのを第2の緩衝部材によって抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、モータ支持部には、緩衝部材の一部が係合する係合孔が形成され、緩衝部材には、係合孔に係合する係合突起が形成されていることが好ましい。このように構成すると、モータ支持部に対する緩衝部材の位置ずれを防止することが可能になる。
【0012】
本発明のポンプの固定構造を構成するポンプでは、モータ部は、駆動用コイルに電流を供給するためのコネクタを備え、コネクタは、モータケースの外周面から突出するようにモータケースと一体化され、モータ部の軸方向から見たときに、モータケースの、モータ部の軸中心を挟んだコネクタの反対側に、金型のゲートの跡であるゲート跡が形成されていることが好ましい。この場合には、モータ部の軸方向から見たときのモータケースの形状を、コネクタの中心とゲート跡とを結ぶ線に対して線対称とすることが可能になる。したがって、ステータとモータケースとの一体成形時にゲートからコネクタが配置される部分に向かって均等に樹脂が流れやすくなる。
【0013】
本発明において、モータケースには、ゲート跡が表面に形成されるゲート跡形成部がモータ部の径方向の外側へ突出するように形成されていることが好ましい。このように構成すると、ゲート跡形成部の肉厚を他の部分よりも厚くすることが可能になるため、ステータとモータケースとの一体成形時にゲートから金型の内部へ樹脂が入り込みやすくなる。
【0014】
本発明のポンプの固定構造を構成するポンプでは、モータケースは、BMC(Bulk Molding Compound)で形成されていることが好ましい。この場合には、モータケースの放熱性および吸振性を高めることが可能になる。
【0015】
本発明のポンプの固定構造を構成するポンプでは、モータ部は、ステータの内周側に配置されるロータを備え、ステータコアは、駆動用コイルの外周側に配置される略円筒状の外周コア部を備え、モータ部の径方向において、金型のゲートの跡であるゲート跡の少なくとも一部と、外周コア部の少なくとも一部とが重なっていることが好ましい。この場合には、ステータとモータケースとの一体成形時の樹脂の射出圧力が駆動用コイル等に直接かかりにくくなる。したがって、ステータとモータケースとの一体成形時の駆動用コイル等の損傷を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のポンプの固定構造では、固定台に固定されるポンプ部の被固定部が経年変化で変形しても、モータ部から固定台への振動の伝達を抑制することが可能になる。また、本発明のポンプでは、ステータとモータケースとの一体成形時にゲートからコネクタが配置される部分に向かって均等に樹脂が流れやすくなる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかるポンプの固定構造の斜視図である。
図2図1に示すポンプの固定構造を別の方向から示す側面図である。
図3図2のE−E方向からポンプの固定構造を示す背面図である。
図4図3のF−F断面の断面図である。
図5図4に示すステータをモータケースから取り出した状態の斜視図である。
図6図5に示すステータとモータケースとが一体化された状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(ポンプの固定構造の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるポンプの固定構造1の斜視図である。図2は、図1に示すポンプの固定構造1を別の方向から示す側面図である。図3は、図2のE−E方向からポンプの固定構造1を示す背面図である。図4は、図3のF−F断面の断面図である。図5は、図4に示すステータ12をモータケース14から取り出した状態の斜視図である。図6は、図5に示すステータ12とモータケース14とが一体化された状態の側面図である。
【0020】
本形態のポンプの固定構造1は、ポンプ2を固定台3に固定するための構造であり、ポンプ2と、ポンプ2が固定される固定台3とを備えている。以下の説明では、図2図3等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。また、図2図3等のX1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
ポンプ2は、キャンドポンプと呼ばれるタイプのポンプであり、羽根車5a(図4参照)が内部に配置されるポンプ部6と、羽根車5aを回転させるためのモータ部7とを備えている。ポンプ部6は、ポンプ2の前端側部分を構成し、モータ部7は、ポンプ2の後端側部分を構成している。羽根車5aは、羽根部材5の前端側部分を構成している。
【0022】
ポンプ部6は、流体の吐出口9aと吸入口9bとが形成されるポンプケース9を備えている。吐出口9aは、左斜め上方向に向かって突出する円筒状に形成され、吸入口9bは、前方向に向かって突出する円筒状に形成されている。ポンプケース9の後端側には、ポンプ部6にモータ部7を固定するとともに、ポンプ2を固定台3に固定するためのフランジ部9cが形成されている。フランジ部9cの下端側は、固定台3に固定される被固定部9dとなっている。ポンプケース9の内部は、図4に示すように、ポンプ室10の一部となっている。
【0023】
モータ部7は、ロータ11と、ステータ12と、ポンプケース9とともにポンプ室10を画定する隔壁部材13と、モータ部7の外周面を構成するモータケース14とを備えている。ロータ11は、ステータ12の内周側に配置されている。すなわち、モータ部7を構成するモータは、インナーロータ型のモータである。
【0024】
隔壁部材13は、樹脂材料で形成されている。また、隔壁部材13は、鍔付きの有底円筒状に形成されており、ロータ11とステータ12との間に配置されている。隔壁部材13の鍔部13aは、ポンプケース9のフランジ部9cに当接しており、ポンプケース9の内部と隔壁部材13の内部とによってポンプ室10が形成されている。フランジ部9cと鍔部13aとの間には、ポンプ室10の密閉性を確保するためのシール部材(Oリング)15が配置されている。
【0025】
ロータ11は、駆動用磁石16と、円筒状のスリーブ17とを備えている。羽根部材5の後端側部分は、略円筒状の保持部5bとなっている。保持部5bは、ロータ11の一部を構成しており、保持部5bの外周面に駆動用磁石16が固定され、保持部5bの内周面にスリーブ17が固定されている。ロータ11は、前後方向を軸方向としてポンプケース9および隔壁部材13に固定される固定軸18に回転可能に支持されている。固定軸18には、前後方向でスリーブ17を挟むように2個のスラスト軸受19が取り付けられている。ロータ11は、ポンプ室10の内部に配置されている。
【0026】
ステータ12は、駆動用コイル22と、ステータコア23と、ボビン24とを備えており、全体として略円筒状に形成されている。ステータコア23は、たとえば、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアであり、ステータコア23の外周面を構成する略円筒状の外周コア部23aと、外周コア部23aから径方向の内側へ突出する複数の突極部23bとを備えている(図5参照)。前後方向における外周コア部23aの幅と、前後方向における突極部23bの幅とは等しくなっている。
【0027】
ボビン24は、両端に鍔部を有する鍔付きの円筒状に形成されている。駆動用コイル22は、ボビン24の外周面に巻回されている。駆動用コイル22が巻回されたボビン24は、径方向の内側から突極部23bに挿通されており、駆動用コイル22はボビン24を介して突極部23bに巻回されている。また、駆動用コイル22が巻回されたボビン24は、外周コア部23aの内周側に配置されている。駆動用コイル22の両端部は、ボビン24に固定される端子ピン25に絡げられている。
【0028】
ステータ12の後端側には、隔壁部材13の底部13bの後面側に固定される基板26、27が配置されている。基板26と基板27とは、電気的に接続されている。基板26には、端子ピン25が半田付け等されて電気的に接続されている。基板27には、各種の電子部品が実装されている。また、基板27には、駆動用コイル22に電流を供給するためのコネクタ28が実装されている。なお、図6では、基板26、27およびコネクタ28の図示を省略している。また、コネクタ28を介して駆動用コイル22への電流の供給が行われる他に、コネクタ28を介して各種の信号のやりとり等が行われる。
【0029】
モータケース14は、樹脂で形成されている。具体的には、モータケース14は、BMC(Bulk Molding Compound)で形成されている。また、モータケース14は、ステータ12の外周側および後面側を覆うように、ステータ12および隔壁部材13と一体成形されており、略有底円筒状に形成されている。ステータ12等とモータケース14との一体成形時に使用される金型(図示省略)は、前後方向に分割されるように構成されており、モータケース14の外周面は、金型からモータケース14を抜くための抜き勾配を有する略円錐台面状に形成されている。すなわち、モータ部7の外周面は、略円錐台面状に形成されている。具体的には、モータ部7の外周面は、モータケース14の後端側に向かうにしたがってその外径がしだいに小さくなる略円錐台面状に形成されている。
【0030】
なお、ステータ12等とモータケース14との一体成形時には、コネクタ28は基板27に実装され、基板26、27は隔壁部材13に固定されている。基板26、27は、ステータ12等とモータケース14との一体成形時に、モータケース14に覆われるようにモータケース14と一体化される。また、コネクタ28は、ステータ12等とモータケース14との一体成形時に、その一部がモータケース14の外周面から突出するようにモータケース14と一体化される。
【0031】
モータケース14の外周側には、コネクタ28がコネクタ配置部14aと、ステータ12等とモータケース14との一体成形時に使用される金型のゲートの跡であるゲート跡14bが形成されるゲート跡形成部14cとが径方向の外側へ突出するように形成されている。また、モータケース14の外周面には、ポンプ部6にモータ部7を固定するための4個のネジ用突出部14dが径方向の外側へ突出するように形成されている。
【0032】
コネクタ配置部14aは、左方向へ突出している。一方、ゲート跡形成部14cは、右方向へ突出している。すなわち、モータ部7の軸方向となる前後方向から見たときに、図3に示すように、モータ部7の軸中心を挟んだコネクタ配置部14aの反対側に、ゲート跡14bが形成されるゲート跡形成部14cが形成されている。本形態では、モータ部7の軸方向から見たときのモータケース14の形状は、コネクタ28の中心とゲート跡14bの中心とを結ぶ左右方向に平行な線に対して線対称となっている。コネクタ配置部14aおよびゲート跡形成部14cは、前後方向におけるモータケース14のほぼ全域に形成されている。また、コネクタ配置部14aの左側面、および、ゲート跡形成部14cの右側面は、Z方向とX方向とから構成されるZX平面と略平行になっている。
【0033】
ゲート跡14bは、ゲート跡形成部14cの右側面(表面)から右方向へわずかに突出するように形成されている。また、ゲート跡14bは、ゲート跡形成部14cの右側面の、上下方向における中心位置に形成されるとともに、ゲート跡形成部14cの右側面の、前後方向における所定の範囲に形成されている。図6に示すように、ゲート跡14bの一部は、左右方向から見たときに、外周コア部23aと重なっている。すなわち、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bの一部は、外周コア部23aと重なっている。具体的には、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bの前端側の一部が外周コア部23aと重なっている。
【0034】
4個のネジ用突出部14dは、右斜め上方向、右斜め下方向、左斜め上方向および左斜め下方向のそれぞれに向かって突出するように形成されている。ネジ用突出部14dには、ネジ30が係合するネジ孔14eが形成されている。モータ部7は、4本のネジ30によって、ポンプ部6に固定されている。
【0035】
固定台3は、鋼板等の金属板を折り曲げることで形成されている。また、固定台3は、略矩形状に形成されるモータ支持部としての上面部3aと、前後方向の両側に配置される上面部3aの1組の対辺から下方向へ折れ曲がるように形成される側面部3bと、側面部3bの下端から前後方向の外方向へ折れ曲がるように形成される底面部3cとから構成されており、略四角溝状に形成されている。底面部3cは、ポンプ2が使用される所定の装置のフレーム等に固定される。
【0036】
2個の側面部3bのうちの前側に配置される側面部3bには、ネジ31によって、ポンプケース9の被固定部9dが固定されている。上面部3aは、モータ部7の下側に配置されている。モータ部7の下端と上面部3aの上面との間には、緩衝部材34が配置されている。また、前側に配置される側面部3bの前面と被固定部9dの後面との間には、第2の緩衝部材としての緩衝部材35が配置されている。
【0037】
緩衝部材34は、弾性を有する弾性材料で形成されている。本形態の緩衝部材34は、たとえば、ゴムで形成されたゴムブッシュである。この緩衝部材34は、円柱状に形成される大径部34aと、大径部34aよりも外径の小さな円柱状に形成される係合突起としての小径部34bとから構成されており、段付きの円柱状に形成されている。小径部34bは、固定台3の上面部3aに形成される円形の係合孔に係合しており、大径部34aは、上面部3aの上面側に配置されている。図2に示すように、モータ部7と上面部3aとの間には隙間が形成されている。また、モータ部7の下端と大径部34aの上面とが接触し、上面部3aの上面と大径部34aの下面とが接触している。なお、上面部3aに形成される係合孔は、上面部3aを貫通しており、小径部34bの下端側は、上面部3aの下面よりも下側へ突出している。
【0038】
緩衝部材35は、弾性を有する弾性材料で形成されている。本形態の緩衝部材35は、たとえば、ゴムで形成されたゴム板であり、平板状に形成されている。この緩衝部材35は、被固定部9dと側面部3bとの間に挟まれた状態で、ネジ31によって、被固定部9dと側面部3bとの間に固定されている。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、固定台3の上面部3aとモータ部7との間に緩衝部材34が配置されている。そのため、本形態では、モータ部7から上面部3aへ振動が伝達されるのを緩衝部材34によって抑制することが可能になる。また、本形態では、固定台3の側面部3bとポンプケース9の被固定部9dとの間に緩衝部材35が配置されているため、モータ部7の振動がポンプ部6を介して側面部3bに伝達されるのを緩衝部材35によって抑制することが可能になる。
【0040】
また、本形態では、上面部3aとモータ部7との間に緩衝部材34が配置されているため、固定台3の側面部3bに固定されるポンプケース9の被固定部9dが経年変化で変形しても、上面部3aにモータ部7が接触するのを防止することができる。したがって、本形態では、被固定部9dが経年変化で変形しても、モータ部7から固定台3への振動の伝達を抑制することが可能になる。さらに、本形態では、上面部3aとモータ部7との間に緩衝部材34が配置されているため、モータ部7の外周面が抜き勾配を有する略円錐台面状に形成されていても、緩衝部材34によって、モータ部7を安定した状態で支持することが可能になる。
【0041】
本形態では、緩衝部材34の小径部34bは、上面部3aに形成される係合孔に係合している。そのため、本形態では、上面部3aに対する緩衝部材34の位置ずれを防止することが可能になる。
【0042】
本形態では、モータ部7の軸方向となる前後方向から見たときに、モータ部7の軸中心を挟んだコネクタ配置部14aの反対側に、ゲート跡14bが形成されるゲート跡形成部14cが形成されており、モータ部7の軸方向から見たときのモータケース14の形状は、コネクタ28の中心とゲート跡14bの中心とを結ぶ左右方向に平行な線に対して線対称となっている。そのため、本形態では、ステータ12等とモータケース14との一体成形時に、金型のゲートからコネクタ28が配置される部分に向かって均等に樹脂が流れやすくなる。また、本形態では、ゲート跡形成部14cがモータ部7の径方向の外側へ突出するように形成されており、ゲート跡形成部14cの肉厚は、コネクタ配置部14aおよびネジ用突出部14dを除くモータケース14の他の部分よりも厚くなっている。そのため、本形態では、ステータ12等とモータケース14との一体成形時にゲートから金型の内部へ樹脂が入り込みやすくなる。
【0043】
本形態では、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bの一部は、外周コア部23aと重なっている。そのため、ステータ12等とモータケース14との一体成形時に樹脂の射出圧力が駆動用コイル22等に直接かかりにくくなる。したがって、本形態では、ステータ12等とモータケース14との一体成形時の駆動用コイル22等の損傷を防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、モータケース14は、BMCで形成されている。そのため、本形態では、モータケース14の放熱性および吸振性を高めることが可能になる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0046】
上述した形態では、緩衝部材34は、大径部34aと小径部34bとからなる段付きの円柱状に形成されている。この他にもたとえば、緩衝部材34は、大径部34aのみからなる円柱状に形成されても良いし、平板状あるいはブロック状に形成されても良い。この場合には、たとえば、固定台3の上面部3aの上面に接着等によって緩衝部材34が固定される。
【0047】
上述した形態では、固定台3の側面部3bとポンプケース9の被固定部9dとの間に緩衝部材35が配置されている。この他にもたとえば、モータ部7の振動がポンプ部6を介して側面部3bに伝達されにくいのであれば、側面部3bと被固定部9dとの間に緩衝部材35が配置されなくても良い。
【0048】
上述した形態では、モータケース14は、BMCで形成されているが、モータケース14は、BMC以外の樹脂で形成されても良い。また、上述した形態では、モータ部7の軸方向となる前後方向から見たときに、モータ部7の軸中心を挟んだコネクタ配置部14aの反対側にゲート跡14bが形成されているが、ゲート跡14bはその他の任意の位置に形成されても良い。
【0049】
上述した形態では、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bの一部は、外周コア部23aと重なっている。この他にもたとえば、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bの全部が外周コア部23aと重なっていても良い。この場合には、ステータ12等とモータケース14との一体成形時の駆動用コイル22等の損傷を効果的に防止することが可能になる。なお、モータ部7の径方向において、ゲート跡14bと外周コア部23aとが重なっていなくても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 ポンプの固定構造
2 ポンプ
3 固定台
3a 上面部(モータ支持部)
3b 側面部
5a 羽根車
6 ポンプ部
7 モータ部
9a 吐出口
9b 吸入口
9d 被固定部
11 ロータ
12 ステータ
14 モータケース
14b ゲート跡
14c ゲート跡形成部
22 駆動用コイル
23 ステータコア
23a 外周コア部
28 コネクタ
34 緩衝部材
34b 小径部(係合突起)
35 緩衝部材(第2の緩衝部材)
X モータ部の軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6