(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
左右一対のサイドフレームを備えたシートバックフレームと、前記サイドフレームの間に取付けられ、乗員をシート後方から支持し、前記乗員の荷重を受けて前記シート後方に撓むことが可能な支持部材と、を備えた車両用シートであって、
前記支持部材は、前記乗員の胸部を支持し、前記シート幅方向の両端が前記サイドフレームに取付けられた胸部支持部を備え、
該胸部支持部は、前記シート幅方向の中心を挟んだ二か所に、前記乗員の一対の肩甲骨を前記シート後方から支持する一対の肩甲骨支持部を有し、
該肩甲骨支持部は、前記シート幅方向の中心における前記胸部支持部の上端よりも前記シート上方に突出しており、
前記胸部支持部は、前記シート幅方向の中央に、前記肩甲骨支持部よりも前記シート下方に突出し、前記乗員の第9胸椎を支持する第9胸椎支持部を備えており、
前記支持部材は、前記胸部支持部,前記肩甲骨支持部及び前記第9胸椎支持部を備えて、一体に形成されてなり、
前記第9胸椎支持部の下端の前記シート幅方向の長さが、前記肩甲骨支持部の上端の前記シート幅方向の長さよりも大きいことを特徴とする車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、上側バックバネ部が、帯状の波板部材を配置して形成されているだけで、乗員の肩甲骨に対応する箇所を支持するものではないため、乗員の上体を安定して支持できる構成の支持部材の開発が求められていた。
また、剛性が高く、胸部を支持する胸部支持部の大型化が抑制された支持部材の開発も求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シートバックフレームに囲まれた領域に、乗員の荷重を受ける支持部材を備えた車両用シートであって、支持部材が、乗員の肩甲骨付近を、必要な範囲のみ効率よく支持すると同時に軽量な胸部支持部を備えた車両用シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、剛性が高く、胸部を支持する胸部支持部の大型化が抑制された支持部材を備えた車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、請求項1の車両用シートによれば、左右一対のサイドフレームを備えたシートバックフレームと、前記サイドフレームの間に取付けられ、乗員をシート後方から支持し、前記乗員の荷重を受けて前記シート後方に撓むことが可能な支持部材と、を備えた車両用シートであって、前記支持部材は、前記乗員の胸部を支持し、前記シート幅方向の両端が前記サイドフレームに取付けられた胸部支持部を備え、該胸部支持部は、前記シート幅方向の中心を挟んだ二か所に、前記乗員の一対の肩甲骨を前記シート後方から支持する一対の肩甲骨支持部を有し、該肩甲骨支持部は、前記シート幅方向の中心における前記胸部支持部の上端よりも前記シート上方に突出して
おり、前記胸部支持部は、前記シート幅方向の中央に、前記肩甲骨支持部よりも前記シート下方に突出し、前記乗員の第9胸椎を支持する第9胸椎支持部を備えており、前記支持部材は、前記胸部支持部,前記肩甲骨支持部及び前記第9胸椎支持部を備えて、一体に形成されてなり、前記第9胸椎支持部の下端の前記シート幅方向の長さが、前記肩甲骨支持部の上端の前記シート幅方向の長さよりも大きいこと、により解決される。
【0007】
このように、肩甲骨筋を支持する肩甲骨支持部を、腰部支持部の上端よりもシート上方に突出しているため、支持することが必要な肩甲骨を支持すると共に、支持することが不要な一対の肩甲骨に挟まれた位置を切欠いたり孔部を形成したりすることにより部材を小型化できるため、胸部支持部を軽量化すると同時に、安定した支持が可能となる。
【0008】
また、前記胸部支持部は、前記シート幅方向の中央に、前記肩甲骨支持部よりも前記シート下方に突出し、前記乗員の第9胸椎を支持する第9胸椎支持部を備えてい
るため、第9胸椎を支持することにより、胸部の安定した支持が可能となる。
更に、前記支持部材は、前記胸部支持部,前記肩甲骨支持部及び前記第9胸椎支持部を備えて、一体に形成されてなるため、支持部材全体の軽量化ができる。
また、前記第9胸椎支持部の下端の前記シート幅方向の長さが、前記肩甲骨支持部の上端の前記シート幅方向の長さよりも大きいため、胸部の安定した支持が可能となる。
【0009】
このとき、請求項2のように、前記肩甲骨支持部は、前記シート上方に突出する台形の板状部分からなり、前記肩甲骨支持部の前記上端の前記シート幅方向の左右端と前記胸部支持部の上端との間は、前記肩甲骨支持部の前記上端から前記シート下方に向かって前記肩甲骨支持部の前記シート幅方向外側に傾斜した傾斜辺で連結されていると好適である。
このように構成しているため、支持することが必要な肩甲骨を支持すると共に、支持することが不要な一対の肩甲骨に挟まれた位置を切欠くことにより部材を小型化できるため、胸部支持部を軽量化すると同時に、安定した支持が可能となる。
このとき、請求項3のように、前記第9胸椎支持部は、前記シート下方に突出する台形の板状部分からなり、前記第9胸椎支持部の前記下端の前記シート幅方向の左右端と前記胸部支持部の前記下端との間は、前記第9胸椎支持部の前記下端から前記シート上方に向かって外側に傾斜した傾斜辺で連結されていると好適である。
このように構成しているため、第9胸椎支持部で受ける乗員の荷重を安定して支持できると同時に、胸部支持部の大型化が抑制できる。
このとき、請求項
4のように、前記一対の肩甲骨支持部間の前記シート幅方向の距離は、前記第9胸椎支持部の前記シート幅方向の長さよりも大きいと好適である。
このように構成しているため、肩甲骨支持部の剛性を確保できる。
【0010】
このとき
、前記胸部支持部は、該胸部支持部の前記シート幅方向の前記両端に、前記サイドフレームに取付けるための取付部を備え、該取付部の前記シート上方の端部は、前記肩甲骨支持部の前記シート上方の端部よりも前記シート下方に位置し、前記取付部の前記シート下方の端部は、前記第9胸椎支持部の前記シート下方の端部よりも前記シート上方に位置
してもよい。
このように構成
すると、取付部によって、肩甲骨支持部及び第9胸椎支持部で受ける乗員の荷重を安定して支持できると同時に、胸部支持部の大型化が抑制できる。
【0011】
このとき
、前記取付部は、前記肩甲骨支持部の中心より前記シート下方で、前記第9胸椎支持部の中心より上方の範囲内に、収まるように設けられ
てもよい。
このように構成
すると、取付部によって、肩甲骨支持部及び第9胸椎支持部で受ける乗員の荷重を一層安定して支持できると同時に、胸部支持部の大型化が一層抑制できる。
【0012】
このとき
、前記取付部は、一対の前記肩甲骨支持部の前記中心と、前記第9胸椎支持部の前記中心とを、線で結んだ逆三角形の重心と同じ高さに設けられ
てもよい。
このように構成
すると、取付部によって、肩甲骨支持部及び第9胸椎支持部で受ける乗員の荷重を一層安定して支持できる。
【0013】
このとき
、前記肩甲骨支持部の前記中心よりも、前記胸部支持部の前記シート上方の端部が前記シート下方に設けられ
てもよい。
このように構成
すると、胸部支持部の小型化ができ、支持部材全体の軽量化ができる。
【0014】
このとき
、前記胸部支持部の前記シート下方の端部が、前記第9胸椎支持部の前記中心よりも前記シート上方に設けられ
てもよい。
このように構成
すると、胸部支持部の小型化ができ、支持部材全体の軽量化ができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、肩甲骨筋を支持する肩甲骨支持部を、腰部支持部の上端よりもシート上方に突出しているため、支持することが必要な肩甲骨を支持すると共に、支持することが不要な一対の肩甲骨に挟まれた位置を切欠いたり孔部を形成したりすることにより部材を小型化できるため、胸部支持部を軽量化すると同時に、安定した支持が可能となる。
また、前記胸部支持部は、前記シート幅方向の中央に、前記肩甲骨支持部よりも前記シート下方に突出し、前記乗員の第9胸椎を支持する第9胸椎支持部を備えているため、第9胸椎を支持することにより、胸部の安定した支持が可能となる。
更に、前記支持部材は、前記胸部支持部,前記肩甲骨支持部及び前記第9胸椎支持部を備えて、一体に形成されてなるため、支持部材全体の軽量化ができる。
また、前記第9胸椎支持部の下端の前記シート幅方向の長さが、前記肩甲骨支持部の上端の前記シート幅方向の長さよりも大きいため、胸部の安定した支持が可能となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、
支持することが必要な肩甲骨を支持すると共に、支持することが不要な一対の肩甲骨に挟まれた位置を切欠くことにより部材を小型化できるため、胸部支持部を軽量化すると同時に、安定した支持が可能となる。
請求項3の発明によれば、
第9胸椎支持部で受ける乗員の荷重を安定して支持できると同時に、胸部支持部の大型化が抑制できる。
請求項
4の発明によれば、肩甲骨支持部の剛性を確保できる
。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用シートSについて、
図1〜
図14を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る車両用シートのシートバックフレームに胸部樹脂バネ及び腰部樹脂バネを取付けた状態を示す斜視図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る胸部樹脂バネをサイドフレームに取付けた状態を示す説明図である。
図4は、
図3のA−A断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る胸部樹脂バネを、変形例に係るサイドフレームに取付けた状態を示す断面図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る腰部樹脂バネをサイドフレームに取付けた状態を示す説明図である。
図7は、
図6のB−B断面図である。
図8は、乗員の着座時に、胸部樹脂バネ及び腰部樹脂バネのバネ部が乗員の胸部及び腰部を背部から支持する位置を示す説明図である。
図9は、胸部樹脂バネ及び腰部樹脂バネのバネ部の説明図である。
図10は、胸部樹脂バネの変形例を示す説明図である。
図11は、胸部樹脂バネの他の変形例を示す説明図である。
図12は、胸部樹脂バネの更に他の変形例を示す説明図である。
図13は、乗員の腰方形筋及び仙骨の位置を示す説明図である。
図14は、本発明の一実施形態に係る胸部樹脂バネの撓み量を、従来例に係る支持部材と対比した例を示す説明図である。
【0020】
本実施の形態に係る車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1及び着座部S2は不図示のシートフレームにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、ヘッドレストS3は、不図示の芯材にパッド材3aを配して、表皮材3bで被覆して形成され、ヘッドレストピラー14により支持される。
【0021】
シートバックS1は、シートバックフレーム1に、クッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。シートバックフレーム1は、
図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在する一対のサイドフレーム20と、一対のサイドフレーム20の上端部を連結する上部フレーム11と、下端部を連結する下部フレーム12とにより枠状に構成されている。
上部フレーム11には、ヘッドレストピラー14を支持するためのピラー支持部13が設けられている。
【0022】
サイドフレーム20は、板金をプレス加工して成形され、前端の辺が湾曲して前端の下側部分が前方に張り出した略D字状の略板体からなる。
図2乃至
図4に示すように、ほぼ平板状の側部21と、この側部21の前端部を内側にU字状に折り返してなる前側フランジ部22と、後端部をL字型にシート内側に屈曲させた後側フランジ部23と、後側フランジ部23のシート内側の端部を更にシート内側前方に向かって屈曲させた内端フランジ部24と、を有し、一対のサイドフレーム20に、支持部材としての胸部樹脂バネ30と腰部樹脂バネ40の両端が取付けられている。
シートバックS1内部には、後側フランジ部23の後側であって、後側フランジ部23に対向する位置に、空間が形成されており、胸部樹脂バネ30と腰部樹脂バネ40が、この空間内で、シート後方へ移動可能になっている。
【0023】
図2乃至
図4に示すように、一対のサイドフレーム20には、上端に近い位置に、胸部支持部としての胸部樹脂バネ30を挿通させるための孔部25と、胸部樹脂バネ30の端部を係止するための係止部26が設けられ、
図2,
図6,
図7に示すように、中央よりも下方の位置に、腰部樹脂バネ40を係止するための係止部27が設けられている。
孔部25は、
図3,
図4に示すように、後側フランジ部23のシート幅方向中央よりもシート外側の位置に、後側フランジ部23のシート幅方向の両端辺に沿って上下方向にスリット状に延びている。
【0024】
孔部25は、後側フランジ部23のシート外側の外端部に形成してもよい。このように構成すると、胸部樹脂バネ30のバネ部31の全長が長くなるため、撓み量が確保されると同時に、剛性の高い端部に孔部25を形成するため、孔部25近傍の剛性が低下することを防止できる。
また、孔部25は、側部21に設けてもよい。側部21に孔部25を設けた場合には、胸部樹脂バネ30のバネ部31の全長が長くなるため、撓み量が確保される。また、
図5に示すように、後側フランジ部23のシート幅方向の中央付近に設けられていてもよい。
【0025】
図3,
図4に示すように、係止部26は、サイドフレーム20の側部21に設けられ、絞り加工により車両用シートS内側に向かって突設するように形成された湾曲部26aと、湾曲部26aの上下に開口し、上下方向に伸びるように設けられた孔26bから構成されている。係止部27は、
図6,
図7に示すように、係止部26と同様に構成されている。
【0026】
胸部樹脂バネ30は、樹脂製で、平断面がシート前後方向に変位する波状に形成された波板体からなり、
図2,
図8に示すように、乗員の一対の肩甲骨53に相当する位置の上端が高く、一対の肩甲骨53に挟まれた位置より若干下方にある第9胸椎52に相当する位置の下端が低くなるように形成されたバネ部31と、バネ部31の両側に、バネ部31の最も高い位置と最も低い位置の中央付近の高さの位置で、両側へ向かって延出する取付部34と、を備えている。
【0027】
乗員の着座時に、胸部樹脂バネ30のバネ部31及び腰部樹脂バネ40のバネ部41が乗員の胸部及び腰部を背部から支持する位置を、
図8に示す。
バネ部31は、
図8に示すように、バネ部31のシート幅方向中心に設けられ、乗員の第9胸椎52を支持する第9胸椎支持部32と、第9胸椎支持部32の左右に設けられ、乗員の左右の肩甲骨53を支持する一対の肩甲骨支持部33と、を備えている。
【0028】
図9に示すように、第9胸椎支持部32は、胸部樹脂バネ30のシート幅方向の中心に設けられ、シート下方に突出する台形の板状部分からなる。
第9胸椎支持部32は、上端32uが、取付部34の上端34uよりも下方にあり、下端32lが、取付部34の下端34lよりもシート下方にあって、第9胸椎支持部32の下端32lの左右端と取付部34の下端34lとの間は、下端32lからシート上方に向かって外側に傾斜した傾斜辺で連結されている。なお、下端34lは、胸部樹脂バネ30の下端を形成している。
【0029】
第9胸椎支持部32の左右シート外側には、シート上方に突出する台形の板状部分からなる一対の肩甲骨支持部33が設けられている。
肩甲骨支持部33は、下端33lが、取付部34の下端34lよりもシート上方にあり、上端33uが、取付部34の上端34uよりもシート上方にあって、肩甲骨支持部33の上端33uの左右端と取付部34の上端34u及び第9胸椎支持部32の上端32uとの間は、上端33uからシート下方に向かって肩甲骨支持部33の外側に傾斜した傾斜辺で連結されている。
【0030】
一対の肩甲骨支持部33間のシート幅方向の距離L1は、第9胸椎支持部32のシート幅方向の長さL2よりも大きくなっている。このように構成しているため、肩甲骨支持部33間に存在する部分を小さくすることができるため、軽量化が可能となる。肩甲骨支持部33から第9胸椎支持部32に至る部分の、シート上下方向の幅も小さくなるため、撓みやすくなる。
なお、例えば、肩甲骨支持部33の上端33uのシート内側の端部と胸部樹脂バネ30の上端30uとの間を、上端33uからシート下方に向かって肩甲骨支持部33の内側に傾斜した傾斜辺で連結するなどにより、逆に、第9胸椎支持部32のシート幅方向の長さL2を、一対の肩甲骨支持部33間のシート幅方向の距離L1よりも大きく形成してもよい。このように構成すると、肩甲骨支持部33の剛性を確保することができる。
【0031】
取付部34の上端34uは、肩甲骨支持部33の上端33uよりもシート下方に位置し、取付部34の下端34lは、第9胸椎支持部32の下端32lよりもシート上方に位置する。
取付部34は、肩甲骨支持部33の中心33cよりもシート下方で、第9胸椎支持部32の中心32cよりもシート上方の範囲に収まるように設けられている。ここで、肩甲骨支持部33の中心33cは、肩甲骨支持部33のシート上下方向及び幅方向における中心であり、第9胸椎支持部32の中心32cは、第9胸椎支持部32のシート上下方向及び幅方向における中心である。
【0032】
取付部34は、一対の肩甲骨支持部33の中心33cと、第9胸椎支持部32の中心32cとを結んだ際にできる逆三角形の重心Gをシート幅方向に延長した直線GLが、取付部34の上端34uと下端34lの間を通るように設けられている。
第9胸椎支持部32の上端32uは、肩甲骨支持部33の中心33cよりもシート下方に位置している。
肩甲骨支持部33の下端33lは、第9胸椎支持部32の中心32cよりもシート上方に位置している。
【0033】
バネ部31は、取付部34よりも薄く形成されており、バネ部31は撓み易く、取付部34では、取付剛性が確保されている。
胸部樹脂バネ30は、後面衝突時以外の平常時に、シートバックフレーム1により構成される面に沿うように配置され、乗員の肩甲骨53と第9胸椎52を支持可能である。
【0034】
取付部34は、
図3に示すように、取付時に孔部25を通る部分よりも端部側の部分である。取付部34は、孔部25に挿通される挿通部34aと、サイドフレーム20の後側フランジ部23と側部21の間の屈曲部23cの内面に沿って屈曲する屈曲部34bとを備え、先端に、係止部26に係止される一対の係止片34cが形成されている。
取付部34に屈曲部34bが設けられていることにより、取付剛性が向上する。また、屈曲部34bがサイドフレームの屈曲部23cの内面と当接して支持され、支持剛性が向上される。
【0035】
係止片34cは、一対の細い棒状体が、取付部34の上端及び下端から水平にシート前方に延設し、相互の端部が対向するように垂直に屈曲して形成されており、取付部34の端部と係止片34cとが、略C字形状をなしている。係止片34cは、一対の細い棒状体の先端部分が、係止部26に挿入されることにより、取付部34の先端をサイドフレーム20内面に固定する。
胸部樹脂バネ30をサイドフレーム20に取り付ける場合には、まず、取付部34を、孔部25に挿入する。一対の係止片34cは、樹脂の弾性により、口を開くように、相互に離れる方向に変形するため、係止片34cを、サイドフレーム20に沿ってシート後方側から係止部26に押し当て、係止部26に押し込むことにより、係止させる。
【0036】
本実施形態では、胸部樹脂バネ30を、樹脂製の波板体から構成しているが、胸部樹脂バネ30の代わりに、Sバネと呼ばれる公知の金属製のジグザグバネを用いてもよい。ジグザグバネを用いた場合であっても、ジグザグバネの両端部側を、サイドフレーム20の後側から孔部25を挿通させて、サイドフレーム20の側部21のシート内側の面に設けられた係止部26に取付ける。
また、本実施形態では、サイドフレーム20に、胸部樹脂バネ30を取付けるための孔部25と係止部26を設けているが、孔部25と係止部26を設ける代わりに、サイドフレーム20の後側フランジ部23の背面に、胸部樹脂バネ30の端部を取付けるためのリテーナを設けてもよい。
【0037】
なお、胸部樹脂バネ30の代わりに、
図10に示すバネ部71を備えた胸部樹脂バネ70を用いてもよい。
バネ部71は、乗員の一対の肩甲骨53に相当する位置と第9胸椎52に相当する位置を含む略帯状の波板体からなり、シート幅方向の中央でバネ部71のシート上方端部よりも若干下がった位置に、孔部75が形成されている。孔部75は、第9胸椎52に相当する位置よりもシート上方で、バネ部71で支持する必要のない位置に設けられており、孔部75を設けることにより、バネ部71の軽量化が図られている。
バネ部71のシート幅方向中央は、シート下方に向かって突出しており、孔部75のシート下方の部分が、第9胸椎支持部72を形成している。第9胸椎支持部72のシート幅方向両側の部分は、一対の肩甲骨支持部73を形成している。
孔部75のシート上端と、バネ部71のシート上端との間は、一対の肩甲骨支持部73を相互に連結する連結部を構成している。
【0038】
また、胸部樹脂バネ30の代わりに、
図11に示すバネ部81を備えた胸部樹脂バネ80を用いてもよい。
バネ部81は、乗員の一対の肩甲骨53に相当する位置と第9胸椎52に相当する位置を含む略帯状の波板体からなり、シート幅方向の中央の上端が、コの字型に切欠かれた形状となっている。このように、第9胸椎52に相当する位置よりもシート上方で、バネ部81で支持する必要のない位置が切欠かれた形状になっているため、バネ部81の軽量化が図られている。
バネ部81のシート幅方向中央で、シート上方が切欠かれた形状になっている部分のシート下側の部分は、第9胸椎支持部82を形成しており、第9胸椎支持部82のシート幅方向両側の部分は、一対の肩甲骨支持部83を形成している。
【0039】
胸部樹脂バネ30の代わりに、
図12に示すバネ部91を備えた胸部樹脂バネ90を用いてもよい。
バネ部91は、乗員の一対の肩甲骨53に相当する位置と第9胸椎52に相当する位置を含む略楕円状の波板体からなる。
シート幅方向の中央でバネ部91のシート上方端部よりも若干下がった位置に、孔部95が形成されている。バネ部91のシート幅方向中央は、シート下方に向かって突出しており、孔部95のシート下方の部分が、第9胸椎支持部92を形成している。
【0040】
また、第9胸椎支持部92のシート幅方向両側のシート下方端部よりも若干上がった位置には、一対の孔部96が形成されている。第9胸椎支持部92のシート幅方向両側で、孔部96よりも上方の部分は、一対の肩甲骨支持部93を形成している。
孔部95,96は、バネ部91で支持する必要のない位置に設けられており、孔部95,96を設けることにより、バネ部91の軽量化が図られている。
孔部95のシート上端と、バネ部91のシート上端との間は、一対の肩甲骨支持部93を相互に連結する連結部を構成している。また、孔部96のシート下端とバネ部91のシート下端との間は、バネ部91の胸部を支持する胸部支持部のシート下端の左右端と、第9胸椎支持部92とを連結する連結部を構成している。
【0041】
腰部樹脂バネ40は、樹脂製板体からなり、
図13に示す乗員の一対の腰方形筋63に相当する位置の上端が高く、一対の腰方形筋63に挟まれた位置より若干下方にある仙骨62に相当する位置の下端が低くなるように形成されたバネ部41と、バネ部41の両側に、バネ部41の最も高い位置と最も低い位置の中央付近の高さの位置で、両側へ向かって延出する取付部44と、を備えている。
バネ部41は、
図8に示すように、バネ部41のシート幅方向中心に設けられ、乗員の仙骨62を支持する仙骨支持部42と、仙骨支持部42の左右に設けられ、乗員の左右の腰方形筋63を支持する一対の腰方形筋支持部43と、を備えている。
【0042】
腰方形筋支持部43シート下方のシート幅方向内側近くには、腰方形筋支持部43の上端43uと腰部樹脂バネ40の上端40uとを結ぶ傾斜辺に沿って、一対のスリット45が設けられている。また、腰方形筋支持部43シート下方のシート幅方向外側近くには、腰方形筋支持部43の上端43uと取付部44の上端44uとを結ぶ傾斜辺に沿って、一対のスリット46が設けられている。スリット45,46が設けられているため、バネ部41の軽量化ができる。
これらのスリット45,46は、シート上下方向の長さが、取付部44のシート上下方向の幅よりも大きく形成されており、一層の軽量化ができる。
バネ部41の構成は、波板状でなく板状からなる点と、スリット45,46を備える点を除いては、
図8に示すように、バネ部31の構成と同様であるため、説明を省略する。なお、バネ部41は、波板状の板体から構成してもよい。
【0043】
取付部44は、
図6,
図7に示すように、板状の帯状の部分からなり、サイドフレーム20の内端フランジ部24の内面に沿うように折れ曲がった内端フランジ部当接部44aと、後側フランジ部23の内面に当接する後側フランジ部当接部44bと、後側フランジ部23と側部21の間の屈曲部23cの内面に沿って屈曲する屈曲部44cと、側部21の内面に当接する側部当接部44dとを備え、先端に、係止部27に挿入される係止片44eが形成されている。
【0044】
係止片44eは、細い棒状体が、取付部44の上端から垂直下方に屈曲するように形成されている。係止片44eは、細い棒状体の先端部分が、係止部27に挿入されることにより、取付部44の先端をサイドフレーム20内面に固定する。
取付部44の内端フランジ部当接部44aから側部当接部44dに至る領域は、サイドフレーム20の内端フランジ部24から側部21に至る領域の内面に当接しているので、取付剛性が向上する。
【0045】
バネ部41は、取付部44よりも薄く形成されて十分な撓み量を有するように構成されており、取付部44は、バネ部41よりも厚く形成されることにより、取付剛性が確保されている。
腰部樹脂バネ40は、後面衝突時以外の平常時に、シートバックフレーム1により構成される面に沿うように配置され、乗員の腰方形筋63から腸骨を経て仙骨62に至るまでの部分を支持可能である。
腰部樹脂バネ40は、板状体から形成されることにより、胸部樹脂バネ30よりも撓み量が小さくなっている。
【0046】
本実施形態では、後面衝突時、
図4,
図7のF方向に、乗員をシートバックS1に押しつける力が掛かった場合に、胸部樹脂バネ30のバネ部31及び腰部樹脂バネ40のバネ部41は、
図4,
図7の31´及び41´まで撓むことができ、乗員が31´及び41´の位置まで進入することができる。
従来の車両用シートでは、
図14のように、受圧部材130の両端部が、サイドフレーム20の後側フランジ部23の前面側に取付けられている。
後面衝突時には、乗員を、車両用シートSに押し付ける方向の力が掛かり、受圧部材130が撓んで乗員は、車両用シートSの後方に向かって進入する。受圧部材130は、後方に向かって撓むときに、
図14に示すように、サイドフレーム20の内端フランジ部24に当接するため、後側フランジ部23及び内端フランジ部24が障害となって、十分な撓み量が確保されない。
【0047】
それに対し、本実施形態の胸部樹脂バネ30は、サイドフレーム20の孔部25を通って、バネ部31側の全長がサイドフレーム20の後側フランジ部23が設けられる面よりも後方に位置する。そのため、胸部樹脂バネ30が、内端フランジ部24に当接することがなく、後側フランジ部23及び内端フランジ部24が障害とならないため、後面衝突時に、乗員が車両用シートSの後方に向かって進入したときでも、
図14のように、十分な撓み量が確保される。結果として、本実施形態の胸部樹脂バネ30では、
図14の増加幅Δ分だけ、乗員の進入量が増加する。