(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
格子状又は千鳥状に配置してあり、植物それぞれを支持する支持体の係止及び非係止をそれぞれ行う係止孔及び非係止孔を有しており、前記移植元の培地盤が備えるパネルを持ち上げて前記係止孔に係止した前記支持体を移送すること
を特徴とする請求項9又は10に記載の移植方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2に記載された栽培装置にあっては、収穫は一列毎に行われるため生産効率が低く、また列間距離を適宜調整する必要があり、管理費用が嵩む。
【0010】
また特許文献3及び4に記載の栽培装置にあっては、一回の作業で移植される植物の数が少なく、また移植方法が複雑であり、移植完了までに長時間を要する。
【0011】
また最近では播種、移植及び保守管理の作業時間を割り当てたタイムスケジュールを策定し、このタイムスケジュールに沿って植物を生産することが行われており、移植作業を割り当てられた時間内に完了させる必要がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡易な方法にて多数の移植を一回の作業で行うことができる移植方法及び移植装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る移植装置は、並植された複数の植物を育てる複数の培地盤間で移植を行う移植装置において、前記植物を移植する移植機構を備え、該移植機構によって、移植元の培地盤にて格子状に配置された植物を移植先の培地盤にて千鳥状に配置する工程と、移植元の培地盤にて千鳥状に配置された植物を移植先の培地盤にて格子状に配置する工程とを交互に行うようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る移植装置は、移植元の培地盤にて格子状に配置された植物を移植先の培地盤にて千鳥状に配置する工程を最初に実行するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る移植装置は、前記培地盤は、格子状又は千鳥状に配置してあり、植物それぞれを支持する支持体の係止及び非係止をそれぞれ行う係止孔及び非係止孔を有するパネルを備え、前記移植機構は、前記パネルを持ち上げて前記係止孔に係止した前記支持体を移送するリフトを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る移植装置は、前記移植機構は、各植物を支持する支持体を保持する複数の保持手段と、各保持手段を移動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段によって、移植先の前記培地盤における植物の配置間隔に応じて、各保持手段を移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る移植装置は、前記駆動手段は各保持手段を個別に移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る移植装置は、前記駆動手段はリニアモータを有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る移植装置は、保持手段間の間隔を前記配置間隔にするように各保持手段を連結するリンク機構を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る移植装置は、前記移植機構は、移植元の前記培地盤の縁部分側から植物を取り出し、移植先の前記培地盤の中央部分から移植を開始して順次縁部分側へ移植するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る移植方法は、並設された複数の植物を育てる複数の培地盤間で行う移植方法において、移植元の培地盤にて格子状に配置された植物を移植先の培地盤にて千鳥状に配置する工程と、移植元の培地盤にて千鳥状に配置された植物を移植先の培地盤にて格子状に配置する工程とを備え、前記両工程を交互に行うことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る移植方法は、格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程を最初に実行することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る移植装置は、格子状又は千鳥状に配置してあり、植物それぞれを支持する支持体の係止及び非係止をそれぞれ行う係止孔及び非係止孔を有しており、前記移植元の培地盤が備えるパネルを持ち上げて前記係止孔に係止した前記支持体を移送することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、培地盤間で移植を行う場合に、格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程と、千鳥状に配置された植物を格子状に配置する工程とを繰り返す。一の工程を行う毎に、培地盤に配置された植物は半減する。
【0027】
本発明においては、格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程から開始し、播種時点において千鳥状に配置する場合よりも多くの種子を培地盤に配置する。
【0028】
本発明においては、移植元に設けたパネルを移動させた場合、係止孔に係止された植物のみが移植先の培地盤に移植され、非係止孔に配置された植物は移植元に残留する。
【0029】
本発明においては、各植物を個別に保持して移植元の培地盤から取り出し、植物間の距離を移植先の配置間隔に調整して、移植を行う。
【0030】
本発明においては、保持手段間の間隔を任意に設定することができるため、移植元及び移植先の培地盤間で植物の間隔が異なっても、柔軟に対応することができる。また植物の生長に応じて移植作業は複数回行われるが、保持手段間の間隔を任意に設定することができるため、いずれの移植作業においても同じ機構を使用することができる。また植物の間隔を縁部分だけ狭くする等、植物の間隔が培地盤の箇所によって異なる場合であっても、各箇所における植物の間隔に応じて保持手段間の間隔を設定することができる。
【0031】
本発明においては、リニアモータによって各保持手段を個別に移動させて、保持手段間の間隔を任意に設定することを実現する。
【0032】
本発明においては、リンク機構によって保持手段間の距離が規定され、植物間の距離が容易且つ迅速に移植先の配置間隔となる。
【0033】
本発明においては、移植元の培地盤において縁部分から植物の取り出しを開始し、移植先の培地盤において中央部分から移植を開始する。中央部分から取り出しを開始した場合、縁部分側に配してある植物に移植機構が接触して損傷を与えるおそれがある。また縁部分側から移植を開始した場合、中央部分側に移植する時に、既に移植した植物に移植機構が接触して損傷を与えるおそれがある。上述したような手順で移植を行うことによって植物の損傷を回避する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る移植装置及び移植方法にあっては、培地盤間で移植を行う場合に、格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程と、千鳥状に配置された植物を格子状に配置する工程とを繰り返すことによって、一の工程を行う毎に、培地盤に配置された植物は半減する。すなわち一回の工程で多数の移植を簡易且つ迅速に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る移植装置を示す図面に基づいて詳述する。
図1は移植装置を示す模式図、
図2は移植工程を示す工程図である。なお
図1において移植装置の構成の理解を容易にするべく、第2移送パネル22の記載を省略している。
【0037】
移植装置は植物の移植を行う二つの移植機構1、1を備えており、該移植機構1は左右方向に延びた二つのYレール12、12を備える。Yレール12、12は前後方向に並設してある。Yレール12上に、左右方向に移動可能なX移動板11が設けてある。該X移動板11は下面に二つの嵌合溝11a、11aを備えており、該嵌合溝11a、11aにYレール12、12が摺動可能に嵌合している。
【0038】
X移動板11の上面には前後方向に延びた二つのYレール13、13が設けてある。該Yレール13上に、左右に長い直方体状の本体10が設けてある。該本体10は下面に二つの嵌合溝10c、10cを備えており、該嵌合溝10cにYレール13が摺動可能に嵌合している。本体10の正面には上下に長い矩形の貫通孔10bが左右方向に並設してあり、各貫通孔10bから後述する移動パネルを昇降させるリフト板10aが前後方向に突出している。リフト板10aは左右及び前後方向に平行である。
【0039】
移植機構1は図示しない制御部を備えており、該制御部からの指令によって移植機構1はYレール12及びYレール13上を移動し、またリフト板10aを昇降させる。
【0040】
二つの移植機構1、1の正面は対向しており、移植機構1の対向間に植物を育てる一の培地盤200が設けてあり、該培地盤200の隣に他の培地盤200が設けてある。二つの培地盤200、200は左右方向に並んでおり、二つの培地盤200、200は同じ寸法で設計されている。培地盤200は植物を収容する矩形の収容トレイ20を備える。該収容トレイ20の縁部分の上面内側全周に係止溝20aが形成してある。該係止溝20aには、植物を保持する矩形の保持パネル23の縁部分が係止してある。保持パネル23には後述するポット25を保持する複数の保持孔23a、23a、・・・、23aが並設してある。該保持孔23aは平面視格子状に配置されている。
【0041】
保持パネル23上に矩形の第1移送パネル21が載置してあり、該第1移送パネル21には保持孔23aに対応した位置に小径孔21a及び大径孔21bが交互に複数開設してある。
図2に示すように、小径孔群21a、21a、・・・、21a及び大径孔群21b、21b、・・・、21bはそれぞれ平面視千鳥状に配してある。
【0042】
第1移送パネル21上に第2移送パネル22が載置してあり、該第2移送パネル22には、第1パネルの小径孔21aに対応した位置に、小径孔22a及び大径孔22bが交互に複数開設してある。小径孔群22a、22a、・・・、22a及び大径孔群22b、22b、・・・22bは格子状に配してある。
【0043】
図2に示すように、第1移送パネル21及び第2移送パネル22の小径孔21a、22aは略同じ直径を有する。第2移送パネル22の大径孔22bは第1移送パネル21の小径孔21a及び大径孔21bの合計した直径よりも長い直径を有する。第2移送パネル22の大径孔22bの内側に、第1移送パネル21の小径孔21a及び大径孔21bが位置しており、前記大径孔21bに隣り合う第2移送パネル22の小径孔22aは、第1移送パネル21の小径孔21aと同軸的に配してある。
【0044】
小径孔21a、22a、大径孔21b、22b及び保持孔23aには植物を支持するポット25が挿入してある。ポット25は上下両面が開口した円錐台状をなし、その側面は上側が拡開するように湾曲している。ポット25の下端部には複数の通水孔25a、25a、・・・、25aが開設してある。ポット25内には発泡ポリウレタン等からなる吸水性に優れた培地が設けてある。収容トレイ20内には薬液を含む水が存在し、通水孔25aから入り込んだ水を培地が吸収する。培地には播種が行われており、植物は培地から上方に延びる。
【0045】
図2Aに示すように、第2移送パネル22の大径孔22bの内側に位置する第1移送パネル21の小径孔21a及び大径孔21bに、ポット25がそれぞれ挿入してある。該小径孔21aの直径はポット25の最大径よりも小さく、小径孔21aに挿入されたポット25は小径孔21aに係止している。第1移送パネル21の大径孔21bの直径は、ポット25の最大径よりも大きく、大径孔21bに挿入されたポット25は該大径孔21bに係止しない。また第2移送パネル22の大径孔22bは、ポット25の最大径の2倍以上の直径を有し、ポット25は該大径孔22bに係止しない。
【0046】
第2移送パネル22の小径孔22aにポット25が挿入してある。該小径孔22aの直径はポット25の最大径よりも小さく、小径孔22aに挿入されたポット25は小径孔22aに係止している。また前記ポット25は第1移送パネル21の小径孔21aにも挿入されており、該小径孔21aにも係止している。
【0047】
なお一の
培地盤200の保持パネル23上には第1及び第2移送パネル
21、22が配してあるが、他の
培地盤200に両移送パネル21、22を配していない。
【0048】
移植機構1は次のようにして移植を行う。
図2Aに示すように、移植機構1はYレール13上を摺動して一の
培地盤200に接近し、リフト板10aを第1移送パネル21及び保持パネル23の間に挿入する。
図2Bに示すように、移植機構1はリフト板10aを上昇させて、第1及び第2移送パネル
21、22を上方へ持ち上げる。このとき、第1移送パネル21の小径孔21aに係止している千鳥状に配置された複数のポット25は、両移送パネル21、22と共に上昇する。
【0049】
移植機構1、1はYレール12上を摺動して他の培地盤200の前後両側までそれぞれ移動し、該培地盤200の保持孔23aとポット25の位置とを整合させる。
図2Cに示すように、移植機構1はリフト板10aを下降させて、他の培地盤200の保持孔23aにポット25を挿入する。移植機構1はYレール13上を摺動して培地盤200から離れる。このとき二つの培地盤200、200にはポット25が千鳥状に配されており、単一の培地盤200に配置されたポット25の数は半減し、移植前に比べてポット25間隔は大きくなる。
【0050】
次の移植を行う場合、移植機構1
はYレール13上を摺動して
培地盤200に接近し、リフト板10aを第1及び第2移送パネル
21、22の間に挿入する。
図2Dに示すように、移植機構1はリフト板10aを上昇させて、第2移送パネル22を上方へ持ち上げる。このとき、第2移送パネル22の小径孔22aに係止している格子状に配置された複数のポット25は上昇する。そして第2移送パネル22を、隣接する次の培地盤200に移動させて、ポット25を格子状に配置する。このとき単一の培地盤200に配置されたポット25の数は半減し、移植前に比べてポット25間隔は大きくなる。
【0051】
なお移送パネルを三つ以上重畳させてもよい。この場合も上述したように、移植機構1は移送パネルを順次移送し、ポット25の数を半減させてポット25間隔を広げることができる。
【0052】
なお保持パネル23を移送して同様にポット25の数を半減させても良い。
図3は移送される保持パネル23を例示した模式図である。
【0053】
図3Aに示すように、保持パネル23には小径孔23b及び大径孔23cが交互に形成してある。ポット25は上端部にフランジ25cを有する筒形をなす。小径孔23bの直径はフランジ25cよりも小さく、大径孔23cの直径はフランジ25cよりも大きい。そのためポット25は小径孔23bには係止するが、大径孔23cには係止しない。保持パネル23を上昇させて移動させることによって、小径孔23bに係止したポット25のみが移動し、移植後のポット25の数を半減させることができる。
【0054】
また次のように保持パネル23及びポット25を構成してもよい。
図3Bに示すように、保持パネル23に複数の同径の保持孔23aが設けてある。上述したフランジ25cを有するポット25と、フランジ25cを有さない筒形のポット25とを準備する。フランジ25cを有さないポット25の直径は、保持孔23aよりも小さい。フランジ25cを有するポット25においても、フランジ25c以外の部分の直径は保持孔23aよりも小さい。
【0055】
各ポット25を交互に保持孔23aに挿入する。このときフランジ25cを有するポット25は係止孔に係止し、フランジ25cを有さないポット25は保持孔23aに係止しない。保持パネル23を上昇させて移動させることによって、小径孔23bに係止したポット25のみが移動し、移植後のポット25の数を半減させることができる。
【0056】
次に移植によるポット25間の間隔の変化について説明する。
図4及び
図5は移植によるポット25間の間隔の変化を説明する説明図である。
【0057】
培地盤200において33列32行にポット25が並設している状態を初期状態として説明する(
図4A参照)。初期状態においてポット25は格子状に配してある。この状態から千鳥状に半分のポット25を移植する。例えば
図4Aにおいて、白抜きにて示すポット25を移植し、塗りつぶしたポット25を残留させる。
【0058】
図4B1に示すように、残留したポット25は33列16行の千鳥状の配置となり、
図4B2に示すように、移植したポット25も33列16行の千鳥状に配置される。この移植によってポット25の密度は半分になり、同寸法の培地盤200間で、ポット25間距離を容易に長くすることができる。
【0059】
次に33列16行のポット25から、左端の列から数えて偶数番目の列に配置された16列のポット25を移植し、奇数番目の列に配置された17列のポット25を残留させる。
図5C1に示すように、残留したポット25は17列16行の格子状の配置となり、また
図5C2に示すように、移植したポット25も16列16行の格子状の配置となる。この移植によってポット25の密度は約半分になり、同寸法の培地盤200間で、ポット25間距離を容易に長くすることができる。
【0060】
次に17列16行のポット25から、千鳥状に半分のポット25を移植する。例えば
図5C1において、白抜きにて示すポット25を移植し、塗りつぶしたポット25を残留させる。
図5D1に示すように、残留したポット25は17列8行の
千鳥状の配置となり、また
図5D2に示すように、移植したポット25も17列8行の
千鳥状の配置となる。この移植によってポット25の密度は半分になる。以下同様にしてポット25の密度を略半減させていく。なお
図5C2に示した16列16行の格子状のポット25も8行8列、4行4列のように、順次その密度を半減させていく。
【0061】
実施の形態1に係る移植装置にあっては、培地盤200間で移植を行う場合に、格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程と、千鳥状に配置された植物を格子状に配置する工程とを繰り返すことによって、一の工程を行う毎に、培地盤に配置された植物が半減する。
【0062】
また格子状に配置された植物を千鳥状に配置する工程から開始し、播種時点において千鳥状に配置する場合よりも多くの種子を培地盤に配置することができる。
【0063】
また移植元に設けた第1移送パネル21及び第2移送パネル22を移動させた場合、係止孔に係止された植物のみが移植先の培地盤に移植され、非係止孔に配置された植物は移植元に残留する。そのため一回の工程で多数の移植を簡易且つ迅速に実現することができる。なお上述した実施の形態においては、第1移送パネル21、第2移送パネル22又は保持パネル23を移植機構1によって移送しているが、手作業によって移送してもよい。また二股に分かれたハンド166は互いに接近又は離反するように構成してもよい。この場合ハンド166は、接近又は離反によってポット25を確実に挟持するか又は離すことができる。
【0064】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る移植装置を示す図面に基づいて詳述する。
図6は移植装置を示す模式図である。
移植装置は移植機構1を備え、該移植機構1は、培地盤200を載置する二つのテーブル40、40上に設けてある。移植機構1は、後述するハンド166の左右方向への移動を行うX移動機構50と、ハンド166の前後方向への移動を行うY移動機構60と、ハンド166の上下方向への移動を行うZ移動機構70とを備える。
【0065】
X移動機構50は、二つのテーブル40、40の後端部に跨って立設している。X移動機構50は、左右方向に長い直方体状をなす筐体51と、該筐体51の正面に開設してあり、左右方向に延びた開口部52とを有する。筐体51内には図示しないボールねじ機構が収容してあり、該ボールねじ機構のナット部53が開口部52から突出している。突出したナット部53に、ハンド166を上下方向に移動させるZ移動機構70が設けてある。
【0066】
Z移動機構70は、上下に長い直方体状をなす筐体71と、該筐体71の正面に開設してあり、上下方向に延びた開口部72とを有する。筐体71内には図示しないボールねじ機構が収容してあり、該ボールねじ機構のナット部が開口部72から突出している。突出したナット部に、ハンド166を前後方向に移動させるY移動機構60が設けてある。
【0067】
Y移動機構60は、前後に長い直方体状をなす筐体61と、該筐体61の側面に開設してあり、前後方向に延びた開口部62とを有する。該開口部62からは一端部側が二股に分かれたハンド166が複数突出している。
【0068】
図7はY移動機構60の筐体61に収容してあるハンド機構160を略示する平面図、
図8はハンド機構160のリニアモータ部分を示す模式図である。Y移動機構60の筐体61にはハンド機構160が収容してある。ハンド機構160は、前後方向に延びたリニアレール161aを備える。該リニアレール161aの両端部は二つの支持板162、163によって支持されている。支持板162、163はそれぞれ筐体61の前部および後部にそれぞれ固定してある。リニアレール161aには複数のリニア可動子165a、165a、・・・、165aが摺動可能に並設してある。
【0069】
図8に示すように、リニアレール161aは前後方向に延びた溝161sを備える。溝161sの両側面それぞれには、複数の電磁コイル161tが前後方向に並設してある。リニア可動子165aは溝161sに挿入された保持板165sを備える。保持板165sの両面は溝161sの両側面に対向している。保持板165sの両面それぞれに複数の永久磁石165t、165t、・・・、165tが前後方向に沿って並設してある。
【0070】
電磁コイル161tに電流を流すことによって、リニア可動子165aに前後方向の推力が発生する。換言すればリニアレール161a及びリニア可動子165aはリニアモータとして機能する。各電磁コイル161tに流す電流を制御することによって、各リニア可動子165aを個別に移動させることができる。そのためリニア可動子165aに設けたハンド166間の間隔を任意に設定することができる。
【0071】
なおリニア可動子165aが電磁コイルを備え、リニアレール161aが永久磁石を備える構成であってもよい。この場合リニア可動子165aの電磁コイルに流す電流を制御することによって、各リニア可動子165aを個別に移動させることができる。
【0072】
上述したリニアレール161a及びリニア可動子165aによるリニアモータは一例に過ぎず、他のリニアモータを使用してハンド166を移動させてもよい。
【0073】
次に移植機構1の動作について説明する。
図9は移植機構1の動作を説明する説明図である。移植機構1は図示しない制御部を備え、該制御部からの指令に基づいてハンド166を移動させる。移植機構1は、X移動機構50の駆動によって、培地盤200に並んだポット25の列の内、最も端に位置する列の外側までハンド166を移動させる。このときハンド166間隔はポット25間隔に整合しており、平面視においてハンド166はポット25に隣接する位置にある。
【0074】
次に移植機構1はZ移動機構70の駆動によってハンド166を下降させる。このときハンド166は前後方向においてポット25の中央部分に対向する。なおハンド166間隔は、ポット25の中央部直径よりも長く、ポット25の上端部直径よりも短い。そして
図9Aに示すように、移植機構1は、Z移動機構70によってハンド166をポット25に接近させて、ハンド166の内側にポット25を保持する。
【0075】
次に
図9Bに示すように、移植機構1はZ移動機構70の駆動によってハンド166を上昇させて、ポット25を保持孔23aから抜き出す。そして
図9Cに示すように、Y移動機構60(ハンド機構160)の駆動によって、移植機構1はハンド166を移動させて、移植先の保持孔23aに対応するようにハンド166間隔を長くする。次に移植機構1はX移動機構50の駆動によって、ハンド166を移植先の保持孔23aの列の上方に移動させる。なお前記保持孔23aの列は、移植先の培地盤200における中央部分に位置する列である。
【0076】
そして
図9Dに示すように、移植機構1はZ移動機構70の駆動によって、ハンド166を下降させて保持孔23aにポット25を挿入する。移植先の培地盤200において、ポット25間隔は移植元での間隔よりも長くなる。なお移植機構1を培地盤200の前後両側にそれぞれ配置する構成とし、両側から移植作業を実行してもよい。
【0077】
なおハンド機構160は以下のように構成してもよい。
図10はハンド機構160の他の実施例1を略示する平面図である。ハンド機構160は、リニアレール161aに代えて雄ねじ161bを備えており、リニア可動子165aに代えて、複数の中空モータ165b、165b、・・・、165bを備えている。
【0078】
中空モータ165bは内部に雌ねじ部分を有しており、雄ねじ161bに雌ねじ部分が螺合している。中空モータ165bの雌ねじ部分は雄ねじ161bの軸回りに回転し、中空モータ165bは軸長方向に移動する。複数の中空モータ165b、165b、・・・、165bは個別に移動することができる。そのため中空モータ165bに設けたハンド166間の間隔を任意に設定することができる。
【0079】
図11はハンド機構160の他の実施例2を略示する平面図である。ハンド機構160は、リニアレール161aに代えてラック161cを備えており、リニア可動子165aに代えて、ハンド166を搬送する複数の搬送部165c、165c、・・・、165cを備えている。搬送部165cは、ラック161cに噛合するピニオン(不図示)と、該ピニオンを駆動するモータ(不図示)とを備える。
【0080】
モータの駆動によってピニオンは回転し、搬送部165cはラック161c上を移動する。複数の搬送部165c、165c、・・・、165cは個別に移動することができる。そのため搬送部165cに設けたハンド166間の間隔を任意に設定することができる。
【0081】
移植元の培地盤200と移植先の培地盤200との間で格子状及び千鳥状の配置を交互に繰り返す場合、移植元と移植先とでは培地盤200に形成した保持孔23a間の間隔が異なることが多いため、移植する度にハンド166間の間隔を変更する必要がある。
【0082】
上述したように、リニア可動子165a、中空モータ165b又は搬送部165cを使用した場合、ハンド166間の間隔を任意に設定することができるため、移植元及び移植先の培地盤200間で保持孔23aの間隔が異なっても、柔軟に対応することができる。
【0083】
また植物の生長に応じて移植作業は複数回行われるが、ハンド166間の間隔を任意に設定することができるため、いずれの移植作業においても同じハンド機構160を使用することができる。
【0084】
また限られた培地盤200の領域にポット25を配置するため、保持孔23aの間隔を培地盤200の縁部分だけ狭くする等、保持孔23aの間隔が培地盤200の部分によって異なる場合がある。このような場合であっても、培地盤200の各部分における保持孔23aの間隔に応じてハンド166間の間隔を設定することができるため、培地盤200における保持孔23aの配置の自由度を向上させることができる。
【0085】
またハンド機構160は以下のように構成してもよい。
図12はハンド機構160の他の実施例3を略示する平面図、
図13はハンド機構160の他の実施例3を略示する側面図である。
【0086】
ハンド機構160は前後方向に延びたボールねじ機構170を備える。ボールねじ機構170は、モータ171と、該モータ171の出力軸に連結した雄ねじ172と、該雄ねじ172に転動体を介して螺合したナット部173とを備える。モータ171の回転によってナット部173は前後方向に移動する。
【0087】
前後方向に延びた案内レール161が筐体61内に収容してある。該案内レール161の両端部は二つの支持板162、163によって支持されている。支持板162、163はそれぞれ筐体61の前部および後部にそれぞれ固定してある。案内レール161及びボールねじ機構170は左右方向に並設されている。案内レール161には前記ナット部173に連結した連結摺動部材164と、該連結摺動部材164及び支持板163の間に位置する複数の摺動部材165とが摺動可能に並設してある。
【0088】
連結摺動部材164及び摺動部材165には二股に分かれたハンド166がそれぞれ設けてある。二股の間の距離は、後述するポット25の上端部の直径(最大直径)よりも小さく、下端部の直径(最小直径)よりも大きい。
【0089】
後側(Z移動機構70側)に位置する支持板163と、連結摺動部材16
4と、摺動部材165
、165とはリンク機構167、167、167によって連結されている。支持板163及び連結摺動部材164を連結するリンク機構167は、支持板163及び連結摺動部材164に設けた二つの支持ピン167cと、各支持ピン167cに回動可能にその一端部をそれぞれ連結した二つのリンク167a、167bと、二つのリンク167a、167bの両他端部を回動可能に連結した連結ピン167dとを備える。二つのリンク167a、167bはばね167eによって連結されている。ばね167eの弾性復元力によって、リンク167a、167bには互いに接近する方向の力が作用している。
【0090】
また摺動部材165、165間並びに連結摺動部材164及び摺動部材165間を連結するリンク機構167は、連結摺動部材164又は摺動部材165における互いに隣合う箇所に設けた二つの支持ピン167cと、各支持ピン167cに回動可能にその一端部をそれぞれ連結した二つのリンク167a、167bと、二つのリンク167a、167bの両他端部を回動可能に連結した連結ピン167dとを備える。二つのリンク167a、167bはばね167eによって連結されている。ばね167eの弾性復元力によって、リンク167a、167bには互いに接近する方向の力が作用している。
【0091】
連結摺動部材164とナット部173とは連結部材180、180を介して連結してある。リンク機構167は、ナット部173に連結した摺動部材164の移動によって伸縮する。なおいずれのリンク機構167も同じ寸法で設計してあり、ばね167eのばね係数はいずれも同じである。
【0092】
モータ171の回転によって、ナット部173は雄ねじ172軸上を軸長方向に移動し、ナット部173に連結した把持部材は案内レール161上を、ナット部173と同方向に移動する。また他の把持部材もリンク機構167によって連結されているのでナット部173に追従して移動する。
【0093】
図12A及び
図13Aに示すように、ナット部173がモータ171から離れた場合、ハンド166間距離及びハンド166と前記支持板163との間の距離は短くなる。一方、
図12B及び
図13Bに示すように、ナット部173がモータ171に接近した場合、ハンド166間距離及びハンド166と前記支持板163との間の距離は長くなる。なお各リンク機構167のばね167e係数は同じなので、ハンド166間距離及びハンド166と前記支持板163との間の距離は、ナット部173の位置に拘わらず、同じになる。
【0094】
リンク機構167によってハンド166間の間隔が規定され、各ハンド166に保持された各植物間の距離が容易且つ迅速に移植先の配置間隔となる。
【0095】
なおボールねじ機構170を用いてハンド166を移動させているが、シリンダ内を移動するピストンに
連結摺動部材16
4を連結してハンド166を移動させてもよい。
【0096】
移植機構1による移植は、移植元のポット25の列の内、最も端に位置する列を順に抜き出し、ポット25を保持していない移植先の保持孔23aの列の内、最も中央部側に位置する列に順次挿入して行われる。例えば6行6列のポット25列を有する培地盤200から、ポット25を保持していない3行4列の保持孔23aを有する培地盤200に移植を行う場合について説明する。なお培地盤200の両側に、それぞれ移植機構1が設けてあるとする。
【0097】
図14は移植手順を説明する説明図である。
図14Aに示すように、一側(
図14における左側)に位置する移植機構1は、移植元のポット25列の内、1列目の1〜3行目のポット25を抜き出して、移植先の保持孔23aの列の内、2列目の保持孔23aに移植する。次に
図14Bに示すように、一側に位置する移植機構1は、移植元のポット25列の内、1列目の4〜6行目のポット25を抜き出して、移植先の保持孔23aの列の内、1列目の保持孔23aに移植する。
【0098】
次に
図14Cに示すように、他側(
図14における右側)に位置する移植機構1は、移植元のポット25列の内、6列目の1〜3行目のポット25を抜き出して、移植先の保持孔23aの列の内、3列目の保持孔23aに移植する。そして
図14Dに示すように、他側に位置する移植機構1は、移植元のポット25列の内、6列目の4〜6行目のポット25を抜き出して、移植先の保持孔23aの列の内、4列目の保持孔23aに移植する。
【0099】
そして移植先の培地盤200を、ポット25の挿入されていない培地盤200に交換し、移植元の2列目及び5列目のポット25を同様にして移植し、これを繰り返す。
【0100】
このようにして、ポット25を移植元の培地盤200における縁部分側から順次抜き出し、抜き出したポット25について、移植先の培地盤200における中央部分から移植を開始する。そして順次縁部分側へポット25を移植する。そのため移植作業中にハンド166が移植元及び移植先の植物に不要に接触することを回避し、植物に損傷が発生することを防止することができる。
【0101】
実施の形態2に係る移植装置にあっては、各植物を個別に保持して移植元の培地盤200から取り出し、植物間の距離を移植先の配置間隔に調整して、移植を行うことができる。
【0102】
また移植元の培地盤200において縁部分から植物の取り出しを開始し、移植先の培地盤200において中央部分から移植を開始する。これにより植物の損傷を回避することができる。
【0103】
実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0104】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。