特許第6032973号(P6032973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032973
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】発熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/04 20060101AFI20161121BHJP
   A61F 7/03 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A61F9/04
   A61F7/08 334N
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-147624(P2012-147624)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-8268(P2014-8268A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】593029949
【氏名又は名称】桐灰化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 廣通
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−005209(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060883(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/006665(WO,A1)
【文献】 特開2010−240116(JP,A)
【文献】 特開2010−284340(JP,A)
【文献】 特開2002−193314(JP,A)
【文献】 特開2008−295779(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0149925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/04
A61F 7/02−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の顔面に装着され、発熱組成物から発生する熱により目および目の周囲に温熱を与える発熱具であって、
前記発熱組成物を内部に収納した本体部と、前記本体部の人の顔面に装着される側の面に設けられた粘着層とを備え、
前記本体部は、前記粘着層が設けられていないあるいは前記粘着層の厚みの薄い領域を、人の顔面に装着される側の面に有し、
前記領域は、前記粘着層よりも狭く、前記本体部の上下方向に沿って延びるように線状に設けられて、前記本体部の折り曲げ部として機能する発熱具。
【請求項2】
前記領域は、前記本体部の人のこめかみに対応する位置に設けられる請求項1に記載の発熱具。
【請求項3】
前記領域は、前記本体部の人の鼻筋に対応する位置に設けられる請求項1または2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記領域の横幅が1mm〜10mmである請求項1〜3のいずれかに記載の発熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の顔面に装着され、目および目の周囲に温熱を与えるアイマスク型の発熱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、人の顔面に装着され、目および目の周囲に温熱を与えることのできるアイマスク型の発熱具が知られている。一般的なアイマスク型の発熱具は、例えば特許文献1に記載されているように、装着時に両目を覆う本体部の両側縁部に一対の耳掛け部が設けられており、両耳掛け部を両耳に掛けることで発熱具が顔面に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のアイマスク型発熱具では、耳掛け部を耳に掛けるため、耳裏の一部分に負担がかかって、装着時に使用者が耳に違和感や不快感を感じたり、さらには耳の後ろが痛くなったりするなどの問題が生じる。また、耳掛け部を耳に掛けることで本体部を人の顔面に対向させているので、本体部が顔面に対して容易に上下にずれたり顔面から浮き上がったりなどして、本体部の顔面とのフィット感が良くないという問題もあり、発熱具の装着時の使用感が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、装着時の使用感が良好なアイマスク型の発熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、人の顔面に装着され、発熱組成物から発生する熱により目および目の周囲に温熱を与える発熱具であって、前記発熱組成物を内部に収納した本体部と、前記本体部の人の顔面に装着される側の面に設けられた粘着層とを備え、前記本体部は、前記粘着層が設けられていないあるいは前記粘着層の厚みの薄い領域を、人の顔面に装着される側の面に有し、前記領域は、前記本体部の上下方向に沿って延びるように設けられ、前記本体部の折り曲げ部として機能する発熱具によって達成される。
【0007】
上記構成の発熱具の好ましい実施態様においては、前記領域は、前記本体部の人のこめかみに対応する位置に設けられることを特徴としている。この実施態様において、発熱組成物は、本体部の人のこめかみに対応する位置よりも内側方に収納され、前記領域とは重複しないように収納されるのが好ましい。発熱組成物が領域に存在すると、その分、前記領域における本体部の剛性が高まるため、発熱組成物を前記領域とは重複しないように本体部に収納することで、本体部を前記領域において良好に折り曲げることができ、本体部を顔面のこめかみの形状に沿って変形させ易くすることができる。
【0008】
上記構成の発熱具のさらに好ましい実施態様においては、前記領域は、前記本体部の人の鼻筋に対応する位置に設けられることを特徴としている。この実施態様において、発熱組成物は、本体部の人の鼻筋に対応する位置よりも外側方に収納され、前記領域とは重複しないように収納されるのが好ましい。発熱組成物が前記領域に存在すると、その分、前記領域における本体部の剛性が高まるため、発熱組成物を前記領域とは重複しないように本体部に収納することで、本体部を前記領域において良好に折り曲げることができ、本体部を顔面の鼻筋の形状に沿って変形させ易くすることができる。
【0009】
上記構成の発熱具のさらに好ましい実施態様においては、前記領域の横幅が1mm〜10mmであることを特徴としている。
【0010】
上記構成の発熱具のさらに好ましい実施態様においては、前記領域は、前記粘着層の形成時に粘着剤を前記本体部に対して部分的に塗布しないことにより形成されることを特徴としている。
【0011】
上記構成の発熱具のさらに好ましい他の実施態様においては、前記領域は、前記本体部に塗布された粘着剤を部分的に上方から押圧することにより形成されることを特徴としている。
【0012】
上記構成の発熱具のさらに好ましい他の実施態様においては、前記領域は、前記本体部に塗布された粘着剤を部分的に熱溶融して粘着剤を取り除くことにより形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の上記目的は、人の顔面に装着され、発熱組成物から発生する熱により目および目の周囲に温熱を与える発熱具であって、前記発熱組成物を内部に収納した本体部と、前記本体部の人の顔面に装着される側の面に設けられた粘着層とを備え、前記本体部は、人の両目に対応する位置にそれぞれ設けられ、互いに区分けされた前記発熱組成物の収納部を複数備えている発熱具によっても達成される。
【0014】
上記構成の発熱具の好ましい実施態様においては、前記複数の収納部の平面視における総面積が20cm〜200cmであることを特徴としている。例えば、本体部に人の両目に対応するよう収納部を左右に1つずつ(合計2つ)設ける場合には、2つの収納部の平面視における面積の合計が20cm〜200cmの範囲にあればよい。この場合、左右の収納部の大きさは同じであることが望ましく、各収納部の平面視における面積がそれぞれ10cm〜100cmであることが望ましい。また、本体部の人の両目に対応する位置に、それぞれ、左右1つずつの収納部ではなく、1つの収納部を分割するような複数の区分けされた収納部を設ける場合には、左右それぞれの位置の全ての収納部の平面視における面積の合計が10cm〜100cmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発熱具によれば、本体部の人の顔面に装着される側の面に粘着層を形成し、この粘着層により本体部を人の顔面に貼り付けているので、本体部を顔面に対してフィットさせることができる。そのうえ、粘着層が設けられていないあるいは前記粘着層の厚みの薄い領域の部分で本体部を容易に折り曲げることができるので、装着時に本体部が人の顔面の形状に沿って変形する結果、本体部の顔面に対するフィット感をより向上できるうえ、本体部が顔面から簡単に剥れてしまうことを防止できるので、装着時の使用感を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る発熱具の構成を示す断面図である。
図2】粘着層が設けられた側の面から見た本体部の平面図である。
図3】本体部のヒートシール領域および非ヒートシール領域を示した説明図である。
図4】他の実施形態の本体部のヒートシール領域および非ヒートシール領域を示した説明図である。
図5】他の実施形態の本体部のヒートシール領域および非ヒートシール領域を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る発熱具の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の発熱具1は、人の顔面に装着され、目および目の周囲に温熱を与えるアイマスク型のものであり、図1図3に示すように、本体部2と、本体部2内に収納された発熱組成物3と、本体部2の一方の面に設けられた粘着層4とを備え、粘着層4は剥離シート5により覆われている。
【0018】
本体部2は、扁平形状でありかつ平面視横長の形状であって、目および目の周囲を覆うに足る大きさを有している。本体部2は、平面視において、横方向に延びる上縁部20aおよび下縁部20bと、縦方向に延びる両側縁部20c,20cとを有しており、その縦中心線において左右対称形になっている。上縁部20aは直線状または例えばわずかに凹凸のある略直線状に延びているのに対して、下縁部20bは、装着時に目の下に位置するので、鼻の形状に沿うようにその中央部分が凹状に湾曲した形状になっている。また、両側縁部20cは、本実施形態では、外側に向けて凸状に湾曲した形状となっている。
【0019】
本体部2は、第1シート21および第2シート22からなり、両者をヒートシールで互いに接合することによって、発熱組成物3を密封収納可能な2つの収納部23を内部に有する袋状に形成されている。この2つの収納部23は、周囲が第1シート21および第2シート22をヒートシールにより接合したヒートシール領域24により囲まれていて、互いに区画された閉じた空間になっており、発熱具1を装着したときに使用者の両目部分にそれぞれ対向する位置に設けられている。
【0020】
第1シート21は、通気性を有しており、発熱具1の装着時に外側を向く。この第1シート21は、例えば、JIS K7129に規定されるA法(感湿センサー法)により測定した水蒸気透過度が100g/m・day〜3000g/m・day程度のシートが好ましく、200g/m・day〜1500g/m・day程度のシートとすることがより好ましい。このような第1シート21は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。多層構成とする場合、例えば、第1シート21を、多孔質フィルムと不織布とを積層した積層シートとすることができ、この場合は多孔質フィルムを発熱組成物3と接するように配置する。このような多孔質フィルムの材質としては、例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができ、また、不織布の材質としては、ポリエステルやポリプレピレン、ナイロン、レーヨン、ポリオレフィンなどを挙げることができ、不織布以外にも例えば紙などを挙げることができる。
【0021】
第2シート22は、好ましくは非通気性であり、発熱具1の装着時に使用者の顔面側を向く。この第2シート22は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。第2シート22を多層構成とする場合は、例えば、第1シート21を固着させるシーラント層にメタロセン触媒によって共重合させたポリエチレンを配置し、このシーラント層上面を乳白加工をして中間層を形成することで発熱組成物3の隠蔽性を上げ、また、この中間層上面に粘着加工性を上げた積層状のポリエチレンを表面層として配置した構成とすることができる。また、表面層にポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨンなどの不織布や紙などを配置することができる。なお、第2シート22は、第1シート21と同様に、通気性を有するもので構成されていても構わない。
【0022】
本体部2の収納部23内に収納される発熱組成物3としては、空気との接触により発熱するものであればよく、例えば、鉄粉、保水剤、酸化促進剤、金属塩、および水を適宜の含有量含んでいる組成物を使用することができる。この場合、鉄粉が空気中の酸素と反応して発熱することにより、発熱具1は温熱効果を発揮する。なお、鉄粉、保水剤、酸化促進剤、金属塩および水としては、公知の発熱組成物に使用されている種々の物質・大きさ(粒径)のものを使用することができる。また、発熱組成物3は、上記成分以外にも、必要に応じて、その他の配合可能な添加剤を含有してもよく、各成分を混合することにより、発熱組成物3が調製される。混合は、必要に応じて、真空下または不活性ガス雰囲気下で行い、例えば、米国特許第4,649,895号に記載された方法に従って混合すればよい。
【0023】
粘着層4は、装着時に人の顔面側を向く第2シート22の表面に設けられており、粘着層4を介して、本体部2が人の顔面に貼り付けられることで発熱具1が装着される。この粘着層4は、例えば、アクリル系粘着剤やウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、松脂などの粘着剤を第2シート22の表面に塗布することによって形成することができる。ゴム系粘着剤の具体例としては、例えば、天然ゴムや、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系、SBR(スチレン・ブタジエンラバー)系などの合成ゴムなどを挙げることができる。この粘着剤の塗布量は、粘着層4の厚みが10μm〜3000μm程度となるように塗布することが好ましい。
【0024】
本実施形態では、図1および図2に示すように、本体部2の人の顔面に装着される側の面に、粘着層4が設けられていないもしくは粘着層4の厚みが他の部分よりも薄い領域(以下、「無粘着層領域」という。)6が形成されている。本実施形態では、本体部2の3箇所の位置に、無粘着層領域6が本体部2の上下方向に沿って延びるように設けられている。この無粘着層領域6は、例えば、粘着層4の形成時に、粘着剤を本体部2の無粘着層領域6を形成する部分にだけ塗布しないことによって形成したり、もしくは、粘着剤を本体部2の全面に塗布して粘着層4を形成した後、粘着層4の無粘着層領域6を形成する部分を上方から押圧して粘着層4を部分的に押しつぶすことで形成したり、もしくは、粘着層4の無粘着層領域6を形成する部分を熱溶融して粘着層4を取り除くことなどにより形成することができる。
【0025】
このような無粘着層領域6が本体部2に形成されることによって、この無粘着層領域6では、粘着層4が設けられていない分、もしくは、粘着層の厚みが薄い分だけ、本体部2の剛性が低くなっている。その結果、この無粘着層領域6で、本体部2は折り曲げ易くなり、発熱具1の装着時に、無粘着層領域6が本体部2の折り曲げ線として機能して本体部2を人の顔面の形状に沿って変形させ易くなっている。
【0026】
人の顔面には、例えば鼻筋の部分に凹凸があり、また、目尻からこめかみにかけての部分は湾曲しているので、発熱具1の装着時の使用感を良好なものとするためには、本体部2は、人の顔面にフィット(密着)するよう顔面の形状に沿って容易に折り曲げ可能である必要がある。しかし、例えば、粘着層4を本体部2の全面に形成すると、本体部2の剛性が高くなって本体部2が折り曲げ・変形し難くなる。そのうえ、本体部2の両側部分は、約90度後方に折り曲げられて顔面のこめかみ部分に貼り付けられるので、本体部2の剛性が高いと、折り曲げられた本体部2の両側部分が元の状態に戻ろうとする力、つまりは、顔面から剥れようとする力が強くなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、本体部2に無粘着層領域6を設けることで、無粘着層領域6の位置で本体部2を使用者の顔面の形状に沿って容易に折り曲げ・変形させることが可能になっている。
【0027】
本実施形態では、本体部2の収納部23の内側方(左右方向内側)、つまりは、2つの収納部23の間に無粘着層領域6が設けられており、この無粘着層領域6は、発熱具1を人の顔面に装着したときに顔面の鼻筋部分に位置する。これにより、本体部2は、顔面の鼻筋に沿って容易に二つに折れ曲がり、顔面にフィットして顔面との密着性が向上する。さらに、本体部2の2つの収納部23の外側方(左右方向外側)にそれぞれ無粘着層領域6が設けられており、この2つの無粘着層領域6は、発熱具1を人の顔面に装着したときに顔面のこめかみ部分に位置する。これにより、本体部2は、顔面のこめかみに沿って容易に折れ曲がって本体部2の両側部が顔の側面に良好に接着する。これにより、本体部2の両側部が顔面から剥れ難くなり、本体部2の顔面への良好な密着状態(フィット性)を保持することができる。
【0028】
上記した無粘着層領域6の横幅は、1mm〜10mmの範囲にあることが好ましく、本実施形態では5mmに設定されている。無粘着層領域6の横幅が1mmよりも小さいと、顔面の凹凸に沿って折れ曲がる効果が小さくなるため好ましくなく、10mmよりも大きいと、無粘着層領域6が大きくなるために、その部分が肌に貼り付かず、装着時に顔面から浮いてしまうため好ましくないためである。
【0029】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、本体部2は、発熱組成物3を収納する2つの収納部23以外の全域において、第1シート21と第2シート22とがヒートシールで接合されておらず、部分的にヒートシールされていない非ヒートシール領域25が設けられている。本実施形態では、各収納部23の周囲がヒートシールされてヒートシール領域24となっている一方で、各収納部23の外側方(本体部2の両側部分)はヒートシールされていない非ヒートシール領域25となっている。また、本体部2の両側部分において、側縁部20cは部分的にヒートシールされて複数のヒートシール領域24が間隔をあけて設けられている。
【0030】
第1シート21および第2シート22がヒートシールで接合されると、第2シート22に設けられた粘着層4(粘着剤)がヒートシール時の熱により溶融・変質して粘着力が低下する。そのため、収納部23以外の全域において第1シート21および第2シート22をヒートシールすると、本体部2は粘着層4の粘着力が低下したヒートシール領域24が大部分を占めるため、装着時に本体部2が剥がれ易くなって十分に人の顔面に貼り付かないという問題がある。これに対して、本実施形態のように、本体部2に非ヒートシール領域25を設けることで、粘着層4の粘着力が低下したヒートシール領域24を部分的なものとし、非ヒートシール領域25では粘着層4が十分な粘着力を維持しているので、装着時に本体部2を人の顔面から剥がれ難くすることができる。特に、約90度後方に折り曲げられるため、人の顔面から剥れようとする方向の力が生じて顔面から剥がれ易くなっている本体部2の両側部分に、非ヒートシール領域25を設けることで、より効果的に本体部2を人の顔面から剥がれ難いものとすることができる。
【0031】
また、本体部2の側縁部20cにヒートシール領域24が設けられることで、このヒートシール領域24では第1シート21および第2シート22が互いに接合されているので、第1シート21および第2シート22が端部から捲れて第1シート21と第2シート22とが剥がれることを防止することができる。また、本実施形態では、本体部2の側縁部20cに複数のヒートシール領域24を間隔をあけて部分的に設けているので、側縁部20cの粘着層4の粘着力の低下を抑えつつ、第1シート21と第2シート22とが簡単に剥がれるのを防止している。
【0032】
なお、本体部2の側縁部20cに設けるヒートシール領域24の大きさ・間隔・数などは、第1シート21と第2シート22とが簡単に剥がれるのを防止できるのであれば、適宜設定することができ、また、図4に示すように、側縁部20cに沿ってヒートシール領域24を設けることもできる。なお、この場合に、ヒートシール領域24は、図4に示されているように、側縁部20cの全辺にわたって設けられている必要はない。また、ヒートシール領域24は必ずしも側縁部20cに沿って延びている必要はなく、図5に示すように、本体部2の上縁部20aおよび下縁部20cに対して垂直に真っ直ぐ直線状に延びるなど、種々の形状にすることができる。さらに、非ヒートシール領域25は必ずしも本体部2に設けられる必要はなく、本体部2の全域(収納部23を除く)について第1シート21および第2シート22をヒートシールで接合するように構成してもよい。
【0033】
非ヒートシール領域25は、各収納部23から3mm以上の間隔dをあけて設けられているのが好ましい。上記間隔dが3mmより小さいと、各収納部23および非ヒートシール領域25の境界となるヒートシール領域24の幅、つまり、第1シート21および第2シート22の接合領域の幅が小さくなり過ぎる結果、第1シート21および第2シート22の接合が外れやすくなって収納部23が簡単に開放され、収納部23内の発熱組成物3が漏れ落ちるおそれがあるからである。
【0034】
剥離シート5は、本体部2と同じ形状をしており、発熱具1の装着時まで粘着層4を覆って保護するためのものであり、装着時に粘着層4から剥離される。この剥離シート5は、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどを単独または複数組み合わせて積層し、これらの粘着層4を覆う側の面にシリコン加工を施して形成することができる。なお、剥離シート5は、1枚のシートで構成されていてもよいが、図1に示すように、1枚のシートにカッターなどを用いてスリット52を形成することで当該シートを2枚のシート片50,51に分割し、2枚のシート片50,51によって、本体部2の粘着層4を覆うように構成してもよい。これにより、スリット52から2枚のシート片50,51をスムーズに本体部2から剥離することができる。
【0035】
次に、上述した発熱具1の使用方法について説明する。発熱具1は、発熱組成物3が空気の存在下で発熱するため、使用前においては空気との接触を防ぐ必要があり、常時は空気を通過させることのない気密性を有する包装袋内に収容されており、使用に際し包装袋を開封して発熱具1を取り出す。そして、発熱具1の剥離シート5を本体部2から剥がし、各収納部23内の発熱組成物3が使用者の両目およびその周囲に当たるように、粘着層4を介して本体部2を使用者の顔面に貼り付ける。これにより、発熱組成物3から発生する熱により目および目の周囲に温熱が与えられる。
【0036】
その際、本体部2の中央位置に設けられた無粘着層領域6が使用者の顔面の鼻筋部分に当たるので、本体部2は、この中央の無粘着層領域6で容易に二つに折れて、顔面の形状に沿って変形する。よって、本体部2が使用者の顔面にフィット性よく密着し、発熱具1の装着に起因する違和感を低減させることができるとともに、発熱組成物3からの温熱の伝達効率も向上する。また、本体部2の両側位置に設けられた2つの無粘着層領域6が使用者の顔面のこめかみ部分に当たるので、本体部2は、この両側の無粘着層領域6で顔面のこめかみの形状に沿って容易に90度後方に折れ曲がって、本体部2の両側部分が顔の側面に良好に密着する。このとき、本体部2の両側部分には非ヒートシール領域25が設けられているので、本体部2の両側部分は粘着層4が十分な粘着力を維持しているため、顔の側面に強固に密着する。よって、本体部2の両側部分が顔面から剥れ難くなり、本体部2の顔面への良好な密着状態(フィット性)を保持することができるため、使用感を優れたものにできるとともに発熱組成物3の温熱効果を持続的に発揮できる。
【0037】
以上のように、本実施形態の発熱具1によれば、本体部2の人の顔面に装着される側の面に粘着層4を形成し、この粘着層4により本体部2を人の顔面に貼り付けているので、装着時に使用者の耳に違和感や不快感、痛みを感じさせることがなく、かつ、本体部2を顔面に対してフィットさせることができる。よって、装着時の使用感を良好なものにできるとともに、発熱組成物3が両目およびその周囲に適切に配置されるので、発熱組成物3による温熱効果を効果的に引き出すことができる。
【0038】
また、発熱組成物3を収納する収納部23が人の両目それぞれに対応するように本体部2に2つ設けられているので、例えば、人の両目をともに覆うような横長形状の収納部23が1つ本体部2に設けられている場合と比較して、発熱組成物3の目およびその周囲へのフィット感が高まる。その結果、使用感および温熱効果ともにより良好なものとすることができる。なお、収納部23の大きさとしては、2つの収納部23の平面視における総面積が20cm〜200cm(1つの収納部23の面積としては10cm〜100cm)であることが、目およびその周囲へのフィット感という観点から好ましい。なお、本実施形態では、収納部23の縦の長さl1×横の長さl2(図2に示す)が46mm×62mmであり、収納部23の下縁部の長さl3が40mmとなっている。また、発熱組成物3を収納した際の収納部23位置の発熱体1の厚みt(図1に示す)としては、0.5mm〜10mmであることが同様に好ましい。
【0039】
また、本体部2に無粘着層領域6を設けることで、本体部2を使用者の顔面の形状に沿って容易に折り曲げ・変形することができるので、装着時に、使用者の顔面に本体部2がより好適にフィットし、また、使用者の顔面から本体部2が剥れ難くなるため、使用感をより優れたものにでき、かつ、発熱組成物3による温熱効果を一層効果的に引き出すことができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、発熱組成物3は、本体部2の人のこめかみに対応する位置よりも内側方に収納されるとともに、人の鼻筋に対応する位置よりも外側方に収納され、3つの無粘着層領域6と重複しないように本体部2に収納されることで、本体部2を無粘着層領域6において良好に折り曲げることができるように構成されているが、必ずしも、発熱組成物3を無粘着層領域6と重複しないように本体部2に収納する必要はなく、発熱組成物3が無粘着層領域6と重複するように本体部2に収納されていても構わない。
【0041】
また、上記実施形態では、無粘着層領域6が、装着時に人の顔面の鼻筋およびこめかみに対応する本体部2の中央位置および両側位置の3箇所に設けられているが、これは、人の顔面の鼻筋部分およびこめかみ部分では特に本体部2を折り曲げ・変形可能とする必要があるためであり、他に顔面の形状に沿って変形させる必要がある顔面の部分があれば、無粘着層領域6を本体部2の上記部分に対応する位置に設けるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、無粘着層領域6が上下方向に沿って延びているが、上下方向に沿って延びるとは、何も図示例のように、本体部2の上縁部および下縁部に対して垂直に真っ直ぐ直線状に延びる場合のみを指すのではなく、多少斜めを向いて延びていてもよく、また、多少湾曲していたり波形状に延びていても構わない。
【0043】
また、上記実施形態では、発熱組成物3を収納する収納部23が、人の両目それぞれに対応するように本体部2に左右1つずつ(合計2つ)設けられているが、左右の各収納部23が、例えば2つ〜4つなどの複数の区分けされた収納部に分割されていても構わない。また、人の両目以外の位置に収納部23が設けられていても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1 発熱具
2 本体部
3 発熱組成物
4 粘着層
6 無粘着層領域
図1
図2
図3
図4
図5