(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図1に、実施例1によるハイブリッド型ショベルの側面図を示す。下部走行体20に、旋回軸受け21を介して上部旋回体22が搭載されている。上部旋回体22は、旋回フレーム22A、カバー22B、及びキャビン22Cを含む。旋回フレーム22Aは、キャビン22C、及び種々の部品の支持構造体として機能する。カバー22Bは、旋回フレーム22Aに搭載された種々の部品を覆う。
【0011】
上部旋回体22に、ブーム23が取り付けられている。ブーム23は、油圧駆動されるブームシリンダ24により、上部旋回体22に対して上下方向に揺動する。ブーム23の先端に、アーム25が取り付けられている。アーム25は、油圧駆動されるアームシリンダ26により、ブーム23に対して前後方向に揺動する。アーム25の先端にバケット27が取り付けられている。バケット27は、油圧駆動されるバケットシリンダ28により、アーム25に対して揺動する。
【0012】
蓄電装置30が、蓄電装置用マウント31及びダンパ(防振装置)32を介して、旋回フレーム22Aに搭載されている。カバー22Bが蓄電装置30を覆う。キャビン22C内に、ヒータコア35が収納されている。
【0013】
図2に、実施例1によるハイブリッド型ショベルの概略平面図を示す。上部旋回体22が、旋回軸受け21を介して、下部走行体20に取り付けられている。上部旋回体22に、蓄電装置30、エンジン40、油圧ポンプ(メインポンプ)41、旋回モータ42、油タンク43、ラジエター44、電動発電機45、インバータ46、及びウォーターポンプ47が搭載されている。トルク伝達機構48が、エンジン40、メインポンプ41、及び電動発電機45を相互に連結する。キャビン22C内に、ヒータコア35及び座席36が装備されている。ヒータコア35は、キャビン22C内を暖気する。
【0014】
エンジン40には、燃料の燃焼により動力を発生する内燃機関、例えばディーゼルエンジンが用いられる。油圧ポンプ41は、ブーム23等を駆動するための油圧シリンダに圧油を供給する。旋回用電動モータ42が、上部旋回体22を、下部走行体20に対して時
計回りまたは反時計周りに旋回させる。油タンク43は、油圧回路の油を貯蔵する。
【0015】
電動発電機45は、エンジン40の動力によって駆動され、発電を行う(発電運転)。発電された電力は、蓄電装置30に供給され、蓄電装置30が充電される。また、電動発電機45は、蓄電装置30からの電力によって駆動され、エンジン40をアシストするための動力を発生する(アシスト運転)。電動発電機45には、例えば磁石がロータ内部に埋め込まれた内部磁石埋込型(IPM)モータが用いられる。インバータ46は、旋回モータ42及び電動発電機45を制御する。ウォーターポンプ47は、冷却媒体を循環させる。操作者が、キャビン22Cに乗り込み、座席36に着座する。
【0016】
図3に、実施例1によるハイブリッド型ショベルのブロック図を示す。
図3において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、電気系統を細い実線で表し、パイロットラインを破線で表す。
【0017】
エンジン40の駆動軸がトルク伝達機構48の入力軸に連結されている。電動発電機45の駆動軸が、トルク伝達機構48の他の入力軸に連結されている。トルク伝達機構48は、2つの入力軸と1つの出力軸とを有する。この出力軸に、メインポンプ41の駆動軸が連結されている。
【0018】
エンジン40に加わる負荷が大きい場合には、電動発電機45がアシスト運転を行い、電動発電機45の駆動力がトルク伝達機構48を介してメインポンプ41に伝達される。これにより、エンジン40に加わる負荷が軽減される。一方、エンジン40に加わる負荷が小さい場合には、エンジン40の駆動力がトルク伝達機構48を介して電動発電機45に伝達されることにより、電動発電機45が発電運転される。電動発電機45のアシスト運転と発電運転との切り替えは、電動発電機45に接続されたインバータ46Aにより行われる。インバータ46Aは、制御装置50により制御される。
【0019】
メインポンプ41は、高圧油圧ライン60を介して、コントロールバルブ61に油圧を供給する。コントロールバルブ61は、操作者からの指令により、油圧モータ62A、62B、ブームシリンダ24、アームシリンダ26、及びバケットシリンダ28に油圧を分配する。油圧モータ62A及び62Bは、それぞれ下部走行体20(
図1、
図2)に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0020】
電動発電機45の電気系統の入出力端子が、インバータ46Aを介して蓄電回路39に接続されている。蓄電回路39は蓄電装置30を含む。インバータ46Aは、制御装置50からの指令に基づき、電動発電機45の運転制御を行う。蓄電回路39には、さらに、他のインバータ46Bを介して旋回モータ42が接続されている。蓄電回路39及びインバータ46Bは、制御装置50により制御される。
【0021】
電動発電機45がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路39から電動発電機45に供給される。電動発電機45が発電運転されている期間は、電動発電機45によって発電された電力が、蓄電回路39に供給される。
【0022】
旋回モータ42は、インバータ46Bによって交流駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を行うことができる。旋回モータ42には、例えばIPMモータが用いられる。IPMモータは、回生時に大きな誘導起電力を発生する。
【0023】
旋回モータ42の力行動作中は、旋回モータ42が減速機51を介して、上部旋回体22(
図1、
図2)を旋回させる。回生運転時には、上部旋回体22の回転運動が、減速機51を介して旋回モータ42に伝達されることにより、旋回モータ42が回生電力を発生
する。レゾルバ52が、旋回モータ42の回転軸の回転方向の位置を検出する。検出結果は、制御装置50に入力される。旋回モータ42の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。
【0024】
メカニカルブレーキ53が、旋回モータ42の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ53の制動状態と解除状態とは、制御装置50からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0025】
パイロットポンプ63が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン64を介して操作装置65に供給される。操作装置65は、レバーやペダルを含み、操作者によって操作される。操作装置65は、パイロットライン64から供給される1次側の油圧を、操作者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン66を介してコントロールバルブ61に伝達されると共に、他の油圧ライン67を介して圧力センサ68に伝達される。
【0026】
圧力センサ68で検出された圧力の検出結果が、制御装置50に入力される。これにより、制御装置50は、下部走行体20、旋回モータ42、ブーム23、アーム25、及びバケット27(
図1、
図2)の操作の状況を検知することができる。
【0027】
図4A及び
図4Bに、それぞれ実施例1による蓄電装置30(
図1〜
図3)の上部筐体及び下部筐体の斜視図を示す。
【0028】
図4Bに示すように、下部筐体70は、長方形の底面80と、その縁から上方に向かって伸びる4枚の側面81とを含む。下部筐体70の上部は開放されている。下部筐体70の開放部が、上部筐体71(
図4A)で塞がれる。側面81の上端に鍔82が設けられている。鍔82に、ボルトを通すための複数の貫通孔83が形成されている。下部筐体70及び上部筐体71の各々は、例えば鋳造法により形成される。
【0029】
底面80の上に、2つの蓄電モジュール72が取り付けられている。蓄電モジュール72の各々は、複数の蓄電セルを積層した構造を有する。2つの蓄電モジュール72は、蓄電セルの積層方向が相互に平行になるように並んで配置される。蓄電モジュール72の積層方向と交差する1つの側面81の中央に開口84が形成されている。
【0030】
開口84が形成された側面81の外側に、開口84を塞ぐように、コネクタボックス85が配置されている。コネクタボックス85の上面は開放されている。この開放部は、コネクタによって塞がれる。蓄電モジュール72が、コネクタを介して外部の電気回路に接続される。
【0031】
上部筐体71は、上面90と、その縁から下方に延びる側面91とを含む。上面90の外周は、下部筐体70の底面80の外周に整合する。上部筐体71の側面91の高さは、下部筐体70の側面81の高さより低い。例えば、側面91の高さは、側面81の高さの約25%である。側面91の下端に鍔92が設けられている。鍔92に、複数の貫通孔93が形成されている。貫通孔93は、下部筐体70の貫通孔83に対応する位置に配置されている。
【0032】
上面90の外側の表面に、冷却媒体用の冷却流路を構成するための溝95が形成されている。溝95内に、冷却媒体の流れの方向に沿う複数の隔壁96が形成されている。隔壁96によって、溝95内の空間が複数の冷却流路97に区分される。溝95の上部開口面は、上面90の外側の表面に接触するように取り付けられる平板(図示せず)で塞がれる。
【0033】
複数の冷却流路97は、蓄電モジュール72に対応する領域(重なる領域)において密に配置されるような平面形状を有する。また、複数の冷却流路97は、その端部において1本の冷却流路に合流し、側面91に設けられた流出入口98に連続している。
【0034】
図4Bには現れていないが、下部筐体70の底面80の外側の表面にも、溝95及び隔壁96と同様の構造の溝及び隔壁が設けられており、冷却流路97と同様の冷却流路が形成されている。下部筐体70にも、冷却流路に接続された流出入口99が設けられている。
【0035】
下部筐体70の底面80の四隅から側方に、締結部73が突出している。締結部73に貫通孔74が形成されている。貫通孔74にボルトを通すことにより、下部筐体70がダンパ32(
図1)に取り付けられる。
【0036】
図5に、下部筐体70、及び下部筐体70内に収容された部品の平面図を示す。底面80の上に蓄電モジュール72が配置されている。以下、蓄電モジュール72の構造について説明する。
【0037】
複数の蓄電セル101と複数の伝熱板102とが積み重ねられている。蓄電セル101の各々には、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等が用いられる。伝熱板102には、例えばアルミニウム板が用いられる。
図5では、蓄電セル101と伝熱板102とが1枚ずつ交互に積み重ねられた例を示しているが、必ずしも1枚ずつ交互に重ねる必要はない。例えば、2枚の蓄電セル101と1枚の伝熱板102とを一組として積み重ねてもよい。
【0038】
蓄電セル101と伝熱板102との積層体の両端に加圧板103が配置されている。複数、例えば4本のタイロッド104が、一方の加圧板103から他方の加圧板103まで達し、蓄電セル101と伝熱板102との積層体に、積層方向の圧縮力を印加している。
【0039】
複数の蓄電セル101が、電極タブ105同士を接続することによって直列接続されている。電極タブ105は、伝熱板102の縁よりも外側において、相互に接続されており、伝熱板102から絶縁されている。直列接続された蓄電セル101の両端の電極タブ105が、蓄電モジュール30を充放電するための端子106となる。
【0040】
一方の蓄電モジュール72の一方の端子106と、他方の蓄電モジュール72の一方の端子106とが、バスバー107、リレー回路108等を介して、コネクタ109に接続されている。コネクタ109に接続されていない方の端子106同士が、ヒューズ110を介して相互に接続されている。下部筐体70内の空きスペースに、蓄電モジュール30の動作に必要な電装部品111が収容されている。
【0041】
図6に、
図5の一点鎖線6−6における断面図を示す。蓄電モジュール72の加圧板103が、下部筐体70の底面80に、ビスで固定されている。下部筐体70の上方の開口部が、上部筐体71で塞がれている。下部筐体70の鍔82と、上部筐体71の鍔92とを、締結具75が貫通する。締結具75は、下部筐体70と上部筐体71とに、両者を近づける向きの力を印加する。下部筐体70と上部筐体71との接触面に、必要に応じてガスケットが挿入される。これにより、下部筐体70と上部筐体71との間の空間が、外部から気密に隔離される。蓄電モジュール72が、上部筐体71と下部筐体70とで構成される筐体内に、強固に、かつ摺動不能に固定されている。なお、コネクタボックス85(
図4B)に、外部からアクセス可能な開口部が設けられている。この開口部も、気密コネクタ等により気密に閉じられる。
【0042】
伝熱板102が、その下側の端面において下部筐体70の底面80に接触し、上側の端面において上部筐体71の上面90に接触する。締結具75によって上部筐体71が下部筐体70に押し付けられているため、伝熱板102の位置が筐体内で強固に固定される。
【0043】
上部筐体71の上面90の外側の表面に、平板120が密着している。平板120は、例えばビスによって上部筐体71に固定される。上面90に形成された溝95(
図4A)と、平板120とにより、冷却流路97が形成される。下部筐体70の底面80の外側の表面に、中間板125が密着している。底面80に形成された溝と中間板125とにより、冷却流路115が形成される。なお、冷却流路97、115からの冷却媒体の漏れを防止するために、中間板125と底面80との間、及び平板120と上面90との間に、ガスケットを挿入してもよい。
【0044】
蓄電セル101は、伝熱板102を介して、冷却流路97、115を流れる冷却媒体と熱的に結合する。上部筐体71を下部筐体70に押し付ける力によって、伝熱板102の端面が底面80及び上面90に密着する。これにより、伝熱板102から底面80及び上面90への熱伝達効率を高めることができる。
【0045】
中間板125の外側の表面に、溝126が形成されている。溝126の開口面が、平板127で塞がれている。溝126と平板127とにより、加温流路128が形成される。加温流路128を流れる加温媒体が、中間板125、底面80、伝熱板102を介して、蓄電セル101に熱的に結合する。加温流路128に加温媒体を流すことにより、蓄電セル101を暖めることができる。
【0046】
図7に、冷却流路115と加温流路128との平面的な位置関係の一例を示す。一対の流出入口99の間に、6本の冷却流路115が並列に配置されている。冷却流路115の各々は、ミアンダ形状を有する。具体的には、冷却流路115の各々は、相互に平行に配置された3本の第1の直線部分115A、第2の直線部分115B、及び第3の直線部分115Cを含む。第1の直線部分115Aは、一方の流出入口99から流入した冷却媒体を第1の方向に流す。第1の直線部分115Aを流れた冷却媒体が、第2の直線部分115Bに流入する。第2の直線部分115Bは、冷却媒体を第1の方向とは反対向きの第2の方向に流す。第2の直線部分115Bを流れた冷却媒体が、第3の直線部分115Cに流入する。第3の直線部分115Cは、冷却媒体を第1の方向に流す。
【0047】
6本の冷却流路115の第1の直線部分115Aは、すべて一方の蓄電モジュール72と重なる位置に配置される。6本の冷却流路115の第3の直線部分115Cは、すべて他方の蓄電モジュール72と重なる位置に配置される。6本の第2の直線部分115Bのうち3本が一方の蓄電モジュール72と重なり、他の3本が他方の蓄電モジュール72と重なるように、第2の直線部分115Bが配置されている。
【0048】
加温流路128は、例えば、相互に平行に配置された4本の直線部分を含む。この4本の直線部分が順番に接続されて、1本のミアンダ状の流路を構成する。4本の直線部分のうち2本が、一方の蓄電モジュール72と重なり、他の2本が、他方の蓄電モジュール72と重なる。なお、
図7に示した冷却流路115及び加温流路128の平面形状は一例であり、他の形状を採用することも可能である。
【0049】
図8に、
図5の一点鎖線8−8における断面図を示す。蓄電セル101の積層方向に平行な視線で見たとき、蓄電モジュール72の上下に、それぞれ第1の壁板130が配置され、蓄電モジュール72の左右に、それぞれ第2の壁板131が配置される。第1の壁板130の一方(下側の壁板)は、下部筐体70の底面80、中間板125、及び平板12
7で構成され、他方(上側の壁板)は、上部筐体71の上面90及び平板120で構成される。第2の壁板131は、下部筐体70の側面81、及び上部筐体71の側面91で構成される。
【0050】
伝熱板102の下端が、下側の第1の壁板130に接し、上端が、上側の第1の壁板130に接している。蓄電セル101の各々の左側の縁及び右側の縁から、それぞれ電極タブ105が引き出されている。電極タブ105は、伝熱板102の縁より外側を通って、隣の蓄電セル101の電極タブ105に接続される。タイロッド104が、伝熱板102及び電極タブ105と接触しない位置に配置されている。
【0051】
下部筐体70の底面80と中間板125とにより、冷却流路115が形成され、上部筐体71の上面90と平板120とにより、冷却流路97が形成されている。すなわち、第1の壁板130に、冷却流路97、115が形成されている。
図8の横方向(幅方向)に関して、冷却流路97、115は、伝熱板102が配置された領域内に優先的に配置されている。このため、伝熱板102を効率的に冷却することができる。
【0052】
中間板125と平板127とにより、加温流路128が形成されている。すなわち、下側の第1の壁板130に、加温流路128が形成されている。加温流路128も、伝熱板102が配置された領域内に優先的に配置される。このため、伝熱板102を効率的に暖めることができる。
【0053】
実施例1においては、冷却流路115は、加温流路128が形成されている壁板と同一の壁板、すなわち下側の第1の壁板130に形成されている。壁板の厚さ方向に関して、加温流路128は、冷却流路115より外側に配置されている。このため、加温流路128が、蓄電セル101の冷却の妨げになることはない。蓄電セル101の暖機を行う(暖める)際には、加温流路128から蓄電セル101まで、冷却流路115を厚さ方向に横切る熱流路が形成される。
【0054】
図9Aに、冷却媒体及び加温媒体の循環系統図を示す。ウォーターポンプ47B、エンジン40、及びヒータコア35を循環する第1の循環系135と、ウォーターポンプ47A、冷却流路97、115、インバータ46A、46B、旋回モータ42、電動発電機45、及びラジエター44を循環する第2の循環系136が構成されている。第1の循環系135は、エンジン40を冷却することによって暖められた加温媒体を、ヒータコア35に供給する。これにより、キャビン22C(
図1)内を暖めることができる。
【0055】
第1の循環系135に、分岐路137が設けられている。分岐路137は、第1の循環系135から分岐した後、開閉バルブ138及び加温流路128を経由して、第1の循環系135に合流する。分岐路137はヒータコア35に対して並列に接続されている。開閉バルブ138を開くと、一部の加温媒体が、第1の循環系135から分岐されて加温流路128を流れる。
【0056】
第2の循環系136に、冷却流路97、115を迂回する迂回流路139が形成されている。迂回流路139に開閉バルブ140が挿入されており、冷却流路97、115を含む経路に開閉バルブ141が挿入されている。開閉バルブ140、141は、冷却媒体を冷却流路97、115に流す状態と、迂回流路139に流す状態とを切り替える切換装置としての役割を持つ。開閉バルブ138、140、141は、制御装置50により制御される。
【0057】
図9Bに、暖機運転時に加温媒体及び冷却媒体が流れる経路を示す。暖機運転時には、開閉バルブ138、140が開かれ、開閉バルブ141が閉じられる。第1の循環系13
5を流れる加温媒体の一部が加温流路128を流れるため、蓄電装置30内の蓄電セル101(
図5)を暖めることができる。このとき、冷却媒体は、冷却流路97、115を迂回して、迂回流路139を流れる。このため、冷却媒体が、蓄電装置30の暖機の妨げになることはない。また、迂回流路139が形成されているため、蓄電装置30の暖機中にも、インバータ46A、46B、旋回モータ42、及び電動発電機45を冷却することができる。
【0058】
図10に、実施例1の変形例による蓄電装置の断面図を示す。実施例1では、
図8に示したように、第1の壁板130のうち下側の壁板にのみ加温流路128が形成されていた。
図10に示した変形例では、上部筐体71の上面90と平板120との間に、中間板145が挿入されている。中間板145の外側の表面に溝が形成されている。この溝と、平板120とにより、加温流路129が形成される。このように、変形例では、第1の壁板130のうち、上側の壁板にも加温流路129が形成されている。
【0059】
図11A、
図11B、
図12を参照して、加温流路に加温媒体を流すことによる温度上昇のシミュレーション結果について説明する。
図11Aは、
図8に示した実施例1に対応するシミュレーションモデルを示し、
図11Bは、
図10に示した実施例1の変形例に対応するシミュレーションモデルを示す。なお、
図11A、
図11Bは、蓄電セルの積層方向に関して、シミュレーション対象の蓄電装置の半分の領域を示す。
【0060】
図11A、
図11Bのいずれのモデルにおいても、蓄電セル101と伝熱板102との積層体の上下に、第1の壁板130が配置されている。第1の壁板130内に冷却流路97、115が形成されている。
図11Aに示したモデルにおいては、下側の第1の壁板130に加温流路128が形成されている。
図11Bに示したモデルにおいては、さらに、上側の第1の壁板130にも加温流路129が形成されている。
図11Aに示したモデルにおいては、積層方向に関する対称性を利用することにより、蓄電装置の1/2の領域についてシミュレーションを行った。
図11Bに示したモデルにおいては、積層方向、及び上下方向の対称性を利用することにより、蓄電装置の1/4の領域についてシミュレーションを行った。冷却流路97、115内には、水が充填されていると仮定した。
【0061】
図11Aのモデルにおいては、蓄電セル101の積層方向の端から約1/4の位置にある蓄電セル101の上端を、測定点P1とした。
図11Bのモデルにおいては、蓄電セル101の積層方向の端から約1/4の位置にある蓄電セル101の中央を、測定点P2とした。いずれのモデルにおいても、上下方向に関して加温流路128、129から最も遠い点を測定点P1、P2として採用した。
【0062】
図12に、加温媒体の温度変化、及び測定点P1(
図11A)、測定点P2(
図11B)の温度変化を示す。
図12の横軸は、経過時間を単位「分」で表す。縦軸は、温度を単位「℃」で表す。加温媒体の温度変化を白丸記号及び破線で示す。この加温媒体の温度変化は、ショベルの始動前の外気温を−20℃と仮定したとき、エンジン始動後に第1の循環系135(
図9A)を循環する加温媒体の温度変化の一例に相当する。細い実線及び太い実線は、それぞれ測定点P1、P2の温度変化のシミュレーション結果を示す。
【0063】
測定点P1、P2の温度は、加温媒体の温度変化に遅れて徐々に上昇している。測定点P2の温度上昇が測定点P1の温度上昇より速い。これは、
図11Aに示したモデルでは、蓄電セル101を下側のみから暖めているのに対し、
図11Bに示したモデルでは、蓄電セル101を上下両方から暖めているためである。
【0064】
一般的に、電気二重層キャパシタの温度が0℃以上になると、電気二重層キャパシタに定格値の充放電電流を流すことが可能になる。
図11Aに示したモデルでは、エンジン始
動から約26分後に、測定点P1の温度が0℃まで上昇している。
図11Bに示したモデルでは、エンジン始動から約14分後に、測定点P2の温度が0℃まで上昇している。
【0065】
実施例1及びその変形例では、ヒータコア35(
図9A)に流れる加温媒体を利用して、蓄電セルを温めている。蓄電セルの暖機のために、蓄電セルを充放電させる必要がない。すなわち、暖機のために、蓄電セルに蓄積された電気エネルギを使用しない。このため、エネルギの無駄な使用を回避することができる。
【0066】
[実施例2]
図13に、実施例2による蓄電装置の断面図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
図13に示した蓄電装置と、実施例1によるショベルに搭載される蓄電装置との、相互に対応する構成部分には、同一の参照符号が付されている。
【0067】
実施例1においては、
図8に示したように、第1の壁板130のうち下側の壁板に加温流路128が形成されていた。実施例2では、蓄電モジュール72の左右に配置された第2の壁板131に加温流路147が形成されている。
【0068】
下部筐体70の側面81の外側の表面、及び上部筐体71の側面91の外側の表面に、溝148が形成されている。溝148の開口面が、平板149で塞がれている。溝148と平板149とにより、加温流路147が形成される。伝熱板102は、側面81、91には接触していない。このため、加温流路147を流れる加温媒体の熱は、底面80及び上面90を経由して伝熱板102に伝わる。
【0069】
実施例1の場合には、加温流路128から伝熱板102に至る熱流路が、下部筐体70と中間板125との境界面と交差している。この境界面が熱抵抗として作用する。実施例2においては、加温流路147から伝熱板102までの熱流路に、このような境界面が存在しない。第1の壁板130及び第2の壁板131のうち、一方に加温流路を形成し、他方に冷却流路を形成することにより、加温流路と伝熱板102との間の熱流路に、上述のような境界面が存在しない構成とすることができる。熱流路の長さの観点では、実施例1の構成が好ましいが、熱流路が境界面と交差しないという点で、実施例2の方が好ましい。
【0070】
[実施例3]
図14に、実施例3による蓄電装置の断面図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
図14に示した蓄電装置と、実施例1によるショベルに搭載される蓄電装置との、相互に対応する構成部分には、同一の参照符号が付されている。
【0071】
実施例3においては、1対の第1の壁板130に形成された加温流路128、129に加えて、第2の壁板131にも加温流路147が形成されている。加温流路147は、実施例2による蓄電装置の加温流路147(
図13)と同一の構成を有する。実施例3のように、第1の壁板130と第2の壁板131との両方に加温流路を形成してもよい。
【0072】
[実施例4]
図15に、実施例4による蓄電装置の断面図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
図15に示した蓄電装置と、実施例1によるショベルに搭載される蓄電装置との、相互に対応する構成部分には、同一の参照符号が付されている。
【0073】
実施例1では、
図8に示したように、中間板125に形成された溝と平板127とにより加温流路128が形成されていた。実施例4においては、加温流路128を形成するための溝が、下部筐体70の底面80の外側の表面に形成されている。実施例4では、中間板125(
図8)は配置されない。加温流路128は、平面視において冷却流路115と重ならない位置に配置される。加温流路128と冷却流路115とは、筐体70の壁板内の同一の仮想平面上に配置される。
【0074】
図16に、実施例4の変形例による蓄電装置の断面図を示す。この変形例では、上部筐体71の上面90の外側の表面にも、加温流路129を形成するための溝が形成されている。このため、1対の第1の壁板130の両方に、加温流路128、129が形成される。
【0075】
実施例4、及びその変形例では、
図13に示した実施例2の場合と同様に、加温流路128、129と伝熱板102との間の熱流路が、異なる2つの部材の境界面と交差しない。このため、熱流路の熱抵抗増大を抑制することができる。
【0076】
[実施例5]
図17に、実施例5による蓄電装置の部分斜視図を示す。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
図17に示した蓄電装置と、実施例1によるショベルに搭載される蓄電装置との、相互に対応する構成部分には、同一の参照符号が付されている。
【0077】
実施例5では、上部筐体71に形成された冷却流路97が、加温流路を兼ねている。流出入口98の各々に、分岐路137と第2の循環系136の経路との両方が接続されている。入側の分岐路137及び第2の循環系136に、それぞれ開閉バルブ138、141が挿入されている。出側の分岐路137及び第2の循環系136に、それぞれ開閉バルブ143、142が挿入されている。下部筐体70に形成された冷却流路115(
図6、
図8)も、加温流路を兼ねる。従って、実施例5では、中間板125(
図6、
図8)は配置されない。
【0078】
図18Aに、冷却媒体及び加温媒体の循環系統図を示す。冷却流路97、115が、第1の循環系135から分岐した分岐路137と、第2の循環系136との両方に挿入されている。蓄電装置30を冷却するときには、開閉バルブ138、140、143を閉じ、開閉バルブ141、142を開く。これにより、第2の循環系136を流れる冷却媒体が、冷却流路97、115に流入する。
【0079】
図18Bに示すように、蓄電装置30を暖めるときには、開閉バルブ138、143を開き、開閉バルブ141、142を閉じる。これにより、分岐路137を流れる加温媒体が、冷却流路97、115に流入する。加温流路を兼ねる冷却流路97、115を加温媒体が流れることにより、蓄電装置30を暖めることができる。開閉バルブ140を開くことにより、インバータ46A、46B等を冷却することができる。
【0080】
実施例5の構成では、蓄電装置30を暖める状態(
図18B)から冷却する状態(
図18B)に切り替えるときに、第1の循環系135内の加温媒体の一部が第2の循環系136内に混入する。逆に、蓄電装置30を冷却する状態(
図18A)から暖める状態(
図18B)に切り替えるときに、第2の循環系136内の冷却媒体の一部が第1の循環系135内に混入する。加温媒体及び冷却媒体に同一の媒体を用いる場合には、両者が混ざっても問題は生じない。
【0081】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。