特許第6032991号(P6032991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6032991
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】水溶性香料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20161121BHJP
   C11B 9/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C11B9/00 Z
   C11B9/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-166025(P2012-166025)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-24953(P2014-24953A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 靖英
(72)【発明者】
【氏名】伏見 祐
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 浩
(72)【発明者】
【氏名】西脇 信綱
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000024(JP,A)
【文献】 特開平10−024027(JP,A)
【文献】 特開昭59−024795(JP,A)
【文献】 特表昭62−503004(JP,A)
【文献】 特開昭53−132863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
C11B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、ポリプロピレン系樹脂、又はポリエチレン系樹脂から形成されたフィルターを通過させる第4工程
を備える
水溶性香料の製造方法。
【請求項2】
前記天然香料が、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程で得られる混合物のエタノール含量が20〜95w/w%である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、前記第2工程で得られた混合物100重量部に対する、前記塩化ナトリウムの添加量が0.05〜5重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記疎水性フィルターがポリプロピレン樹脂から形成されたフィルターである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記疎水性フィルターが0.5〜10μmの濾過精度を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
更に、油層と水層とを分離し、及び水層を回収する第5工程を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性香料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然香料、合成香料、調合香料などの香料物質は、そのほとんどが油溶性であるので、ソフトドリンク、アルコール飲料、冷菓、ゼリー、プリンなどの水を大量に含有する食品に賦香するには、何らかの方法で香料物質を水溶性にする必要がある。その方法としては、水ともよく混和する含水エタノール等の水溶性溶媒に香料物質を溶解させる方法と、乳化剤などを用いて香料物質を水中に分散させる方法とが汎用されている。このうち、前者の方法によって水溶性にされた香料は、水溶性香料(又は、エッセンス香料)と称される。
【0003】
天然香料を採取する方法には、大別して、水蒸気蒸留法、圧搾法及び抽出法の3法があり、特に圧搾法と抽出法では、程度の差はあるものの、天然香料には香料物質以外に、水に不溶性である不揮発性成分(例、ワックス)等の成分が含有される。
通常、水溶性香料の製造では、天然香料を含水エタノール中に添加し、及び攪拌した後、低温下で放置して、香料物質を含有する下層(含水エタノール層)と水不溶性成分を含有する上層とに分離させ、濾紙を用いた濾過などの手段により下層の含水エタノール層を回収することが行われている。
しかしながら、この方法では水に不溶性であるワックス等の成分が上層と下層の分離を阻害し、その結果、清澄な水溶性香料を得るには長い時間を要するという問題があった。
【0004】
ところで、従来、含油水をコアレッサーエレメントを通過させることによって油滴を凝集させて分離する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−46805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題に鑑み、本発明者らは、芳香性植物の抽出物である天然香料と含水エタノールとの混合物を、コアレッサーエレメントと呼ばれるフィルターエレメントを通過させることによって、油滴を凝集させて油層を分離することにより、効率よく清澄な水溶性香料を製造することを考案した。
しかし、本発明者らが、この方法による水溶性香料の製造を試みたところ、油層を完全に除去することができず、清澄な水溶性香料を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、この問題を解決すべく、様々な検討を行った結果、芳香性植物の抽出物である天然香料と含水エタノールとの混合物に、塩化ナトリウムを添加及び攪拌した後で、当該混合物を、コアレッサーエレメントを通過させることによって、効率よく清澄な水溶性香料を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の態様を含む。
【0009】
項1.
圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、疎水性フィルターを通過させる第4工程
を備える
水溶性香料の製造方法。
項2.
前記天然香料が、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である項1に記載の製造方法。
項3.
前記第2工程で得られる混合物のエタノール含量が20〜95w/w%である項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記第3工程において、前記第2工程で得られた混合物100重量部に対する、前記塩化ナトリウムの添加量が0.05〜5重量部である項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.
前記疎水性フィルターがポリプロピレン樹脂から形成されたフィルターである項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
項6.
前記疎水性フィルターが0.5〜10μmの濾過精度を有する項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率よく清澄な水溶性香料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水溶性香料の製造方法は、
圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する第1工程、
前記天然香料と含水エタノールとを混合する第2工程
前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する第3工程、
前記第3工程後の混合物を、コアレッサーエレメントを通過させる第4工程
を備える。
【0012】
[第1工程]
第1工程では、圧搾法又は抽出法により得られた天然香料を用意する。
【0013】
このような天然香料は、芳香性植物の、葉、枝、茎、木部、樹脂、種子、蕾、果皮、花、及びこれらの組み合わせ等から選択される部位を原料としてもちいて、圧搾法(コールドプレス法)、又は抽出法の方法によって得ることができる。
圧搾法は、前記のような原料(例、柑橘果皮)を冷時圧搾することを含む方法である。圧搾法で得られた天然香料(精油)はプレスオイルと呼ばれ、なかでも冷時圧搾で得られた精油はコールドプレスオイル(CPO)と呼ばれる。
このCPOを−20〜−30℃で1ヶ月以上静置し、析出したワックス分を取り除いた(脱ワックス)ものは、脱ワックスオイルと呼ばれる。
抽出法は、前記のような原料を、石油エーテル、ヘキサン、又はベンゼン等の溶媒を用いて室温や加熱下で攪拌抽出又は静置抽出して溶媒層を得ること、及び当該溶媒層を減圧濃縮することを含む方法、あるいは液化二酸化炭素や超臨界二酸化炭素で抽出する方法である。
また、このような天然香料は、商業的に入手可能である。
【0014】
天然香料としては、具体的には、例えば、シトロネラ、パルマローザ、ベチバー、レモングラス、セントジョーンズワート、バレリアン、エレミ、イニュラ、イモーテル、タジェット、タラゴン、ブルーヤロウ、ローマン・カモミール、クロモジ、シナモンリーフ、ベイ、ラベンサラ、リツェア・クベバ、ローズウッド、レモンバーベナ、ブラック、クラリセージ、シソ、スペアミント、セージ、タイム、ニホンハッカ、バジル、パチュリー、ヒソップ、ペパーミント、マジョラム、メリッサ、ラバンディン、ラベンダー、ローズマリー、リンデン、カモミール、カルダモン、ゲットウ、ジンジャー、ロータス、スギ、ナルド、バイオレット・リーフ、アニスシード、アンジェリカルート、ガルバナム、キャロットシード、クミン、コリアンダー、セロリシード、ディルシード、フェンネル、ロベージ、オリスルート、ゼラニウム、ナツメグ、ダマスクローズ、シストローズ、イランイラン、サイプレス、ジュニパーベリー、ヒノキ、ヒバ、ブルーサイプレス、サンダルウッド、オールスパイス、カヌカ、カユプテ、クローブ、ティートリー、ニアウリ、マートル、マヌカ、ユーカリ、レモンマートル、フランキンセンス、フランジュパニ、シダーウッド、パイン、モミ、コパイバ、トンカビーンズ、ミモザ、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、カボス、タンジェリン、ネロリ、ビター・オレンジ、プチグレイン、ベルガモット、マンダリン、ユズ、レモンバーム、キンモクセイ、ジャスミン、バニラ、チューベローズ、ベンゾイン、ローレル、アルバローズ、スターアニス、又はミルラ等の植物(又は植物原料)或いはこれらの組み合わせに由来する天然香料が挙げられる。
これらの天然香料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる天然香料は、好ましくは、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、シソ、ホップ、コショウ、及びジンジャーから選択される1種以上の植物に由来する天然香料である。
これらの天然香料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
[第2工程]
第2工程では、前記天然香料と含水エタノールとを混合する。
これにより、天然香料中の香料物質は含水エタノールによって抽出される。
【0016】
含水エタノールのエタノール含量は、好ましくは20〜99w/w%、より好ましくは、30〜80w/w%、さらに好ましくは、40〜70w/w%である。
含水エタノールは、本発明の効果が奏される限度において、水及びエタノール以外の成分を含有していてもよく、そのような成分としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
また、第2工程では、前記天然香料と含水エタノールとが混合されればよく、これらとともに、これら以外の他の成分が混合されてもよい。そのような成分としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンを挙げることができる。
【0017】
ここでは、前記天然香料と含水エタノールとの混合物のエタノール含量が、好ましくは16〜98w/w%、より好ましくは24〜80w/w%、更に好ましくは32〜70w/w%になる比率で、前記天然香料と含水エタノールとを混合する。
【0018】
当該工程は、通常、10〜30℃の温度で実施される。
【0019】
混合は、任意の方法によって行うことができ、慣用の混合方法を用いればよい。
【0020】
[第3工程]
第3工程では、前記第2工程で得られた混合物に塩化ナトリウムを添加及び攪拌する。
【0021】
塩化ナトリウムとしては、塩化ナトリウムの純品(精製塩)を用いてもよく、本発明の効果が奏される限度において、粗精製塩等を用いてもよい。
【0022】
前記第2工程で得られた混合物100重量部に対する、前記塩化ナトリウムの添加量は、好ましくは、0.05〜5重量部、より好ましくは、0.075〜1重量部、更に好ましくは、0.1〜0.5重量部である。
【0023】
当該工程は、通常、10〜30℃の温度で実施される。
【0024】
添加及び攪拌は、任意の方法によって行うことができ、慣用の添加方法及び攪拌方法によって行えばよい。
塩化ナトリウムは、完全に溶解されることが好ましい。
【0025】
当該第3工程で得られた混合物は、所望により、第4工程に供されるまでの間に、低温(好ましくは、−20〜0℃)で、2〜96時間放置される。
【0026】
[第4工程]
第4工程では、前記第3工程後の混合物を、コアレッサーエレメントに通過させる。
これにより、前記混合物中の油層(油滴)が凝集し、油層が分離し易くなる。
【0027】
所望により、コアレッサーエレメントを通過させる前に、前記第3工程後の混合物を別のフィルターを通過させて、微細異物を除去してもよい。別のフィルターは、特に限定されないが、コアレッサーエレメントと同じ素材から形成され、同じ濾過精度を有するものが好ましい。
【0028】
当該工程で用いられる前記コアレッサーエレメントは、好ましくはポリプロピレン系樹脂(例、ポリプロピレン樹脂)、又はポリエチレン系樹脂等の疎水性樹脂、より好ましくはポリプロピレン樹脂から形成され、繊維密度勾配(流入側に小さい径の繊維の層を有し流出側に大きい径の繊維の層)を有するデプスタイプのフィルターエレメントである。
当該コアレッサーエレメントとしては、例えば、ネクシスNXA、ネクシスNXT、プロファイルII(日本ポール社)、CUNOベータファイン(住友スリーエム社)、CPフィルター(JNCフィルター社)が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0029】
前記コアレッサーエレメントを通過させた前記混合物は、循環されて、繰り返し前記コアレッサーエレメントを通過してもよい。あるいは、前記コアレッサーエレメントを通過させた前記混合物は循環しなくてもよいが、特に限定されるものではない。
【0030】
このような、前記コアレッサーエレメントへの通過は、加圧による一般的な濾過方法を用いて実施すればよい。なお、本明細書中ではこの濾過方法によるコアレッサーエレメントへの通過をコアレッシングと記載する。
【0031】
前記コアレッサーエレメントの濾過精度は、好ましくは、0.5〜20μm、より好ましくは1〜15μm、更に好ましくは3〜10μmである。
なお、本明細書中、濾過精度がX(μm)であることは、特に記載ない場合を除き粒子径X(μm)の粒子を99.9%除去できる精度を意味する。
【0032】
当該工程は、通常、−20〜0℃の温度で実施される。
【0033】
本発明の製造方法は、上記で説明した第1〜第4工程の前後及びその間に他の工程を備えていてもよい。
すなわち、第3工程における「前記第2工程で得られた混合物」は、第2工程で直接得られたものでなくてもよい。また、「前記第3工程後の混合物」は、第3工程で直接得られたものでなくてもよい。
【0034】
第4工程後の混合物では、油滴が凝集しているので、静置により容易に油層と水層とに分離する。
当該静置は、通常、−20〜0℃の温度で、0分〜24時間、実施される。
【0035】
この水層を回収し、所望により更に濾過することにより、清澄な水溶性香料が得られる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例等により、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1 水溶性オレンジ香料の製造
【0038】
オレンジコールドプレスオイル(2倍濃縮品:IFF社28.2kg、2倍濃縮品:ジボダン社65.8kg、)94kgを冷却機能を備えたタンクへ投入し、57%エタノール656kgによって30分間撹拌抽出した後、精製塩0.75kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0039】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 2500L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0040】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、630kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0041】
比較例1
【0042】
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例1と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、555kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例1に比較して、実施例1では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0043】
実施例2
ペルー産キーライム コールドプレスオイル(2倍濃縮品:AIB社)の55kgを冷却機能を備えたタンクへ投入し、55%エタノール1792kgによって40分間撹拌抽出した後、精製塩1.85kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0044】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (1500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 6150L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0045】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、1648kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0046】
比較例2
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例2と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、1464kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例2に比較して、実施例2では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0047】
実施例3
インド産ブラックペッパー溶剤抽出オイル(ジボダン社)4kg、インド産ブラックペッパーオレオレジン(KANCOR社)1.5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、60%エタノール94.5kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0048】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0049】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、90.7kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0050】
比較例3
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例3と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、70kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例3に比較して、実施例3では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0051】
実施例4
インド産ジンジャー炭酸ガス抽出オイル(富士フレーバー社)5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%プロピレングリコール95kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、180分程度静置することで油水層を分液させた。
【0052】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (100L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 300L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0053】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、91.2kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0054】
比較例4
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例4と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、81.7kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例4に比較して、実施例4では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0055】
試験例1 天然香料の種類による影響
表1の各天然香料(精油)を原料として、実施例2又は比較例2と同様の方法で水溶性香料を製造した。蒸留精油は対照例である。
分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
また、使用した各コールドプレス精油中のワックス含量、及び不揮発性成分含量を測定した。
結果を表1及び表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
以上より、天然香料の原料植物及び製造方法に関わらず、本願発明の製造方法が有用であることが判った。
また、脱ワックスした天然香料を原料として、比較例2の方法で製造した水溶性香料は透明性がほとんどないことから、水溶性香料の製造時の分液性、及び水溶性香料の濁り原因は、ワックスだけではなく、色素成分等、他の不揮発性成分も影響していることが判った。
【0059】
試験例2 本願発明の塩化ナトリウムの添加量の影響
実施例2の方法で塩化ナトリウムの量のみを変えて、塩化ナトリウムの添加量の分液性への影響を検討した。
分液性への影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
5w/w%の添加量で塩化ナトリウムが析出し始め、一方、これ以上の量を添加しても、水溶性香料の製造時の分液性向上、及び水溶性香料の濁り抑制の効果は変わらなかった。
【0062】
試験例3 コアレッサーエレメントの濾過精度の影響
オレンジオイル5%を50%エタノールで抽出後、塩化ナトリウムを0.1%添加し、−15±5℃に冷却後、コアレッシングに用いるコアレッサーエレメント(ネクシスNXA、日本ポール社)の濾過精度を0.5〜30μmの各条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水溶性香料を製造した。
当該水溶性香料の分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
○:極めて良好(水層澄明)
△:良好(水層澄明性あり)
×:不良(水層澄明性ほとんどなし)
結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
コアレッサーエレメント径は20μ以下で効果的であることがわかった。
また、同一コアレッサーエレメント径において公称濾過精度(ネクシスNXT、日本ポール社)と比較しても同様の効果が得られた。
【0065】
実施例5
チェコ産ホップ炭酸ガス抽出オイル(BOTANIX社)0.4kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、50%エタノール38kg、グリセリン1.6kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.04kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0066】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (170L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 130L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0067】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、38.4kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0068】
比較例5
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例5と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、37kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0069】
油水分離時間の大幅短縮と収量の大幅アップにより精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0070】
実施例6
高知県産ユズオイル(西川製油社)3kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%エタノール97kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0071】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0072】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、94.1kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0073】
比較例6
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例6と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を72時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、87.4kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0074】
油水分離時間の大幅短縮と収量の大幅アップにより精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、水溶性香料製造の分野で利用される。