【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例等により、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1 水溶性オレンジ香料の製造
【0038】
オレンジコールドプレスオイル(2倍濃縮品:IFF社28.2kg、2倍濃縮品:ジボダン社65.8kg、)94kgを冷却機能を備えたタンクへ投入し、57%エタノール656kgによって30分間撹拌抽出した後、精製塩0.75kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0039】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 2500L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0040】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、630kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0041】
比較例1
【0042】
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例1と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、555kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例1に比較して、実施例1では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0043】
実施例2
ペルー産キーライム コールドプレスオイル(2倍濃縮品:AIB社)の55kgを冷却機能を備えたタンクへ投入し、55%エタノール1792kgによって40分間撹拌抽出した後、精製塩1.85kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0044】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (1500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 6150L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0045】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、1648kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0046】
比較例2
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例2と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速1000L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、1464kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例2に比較して、実施例2では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0047】
実施例3
インド産ブラックペッパー溶剤抽出オイル(ジボダン社)4kg、インド産ブラックペッパーオレオレジン(KANCOR社)1.5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、60%エタノール94.5kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0048】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0049】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、90.7kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0050】
比較例3
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例3と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、70kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例3に比較して、実施例3では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0051】
実施例4
インド産ジンジャー炭酸ガス抽出オイル(富士フレーバー社)5kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%プロピレングリコール95kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、180分程度静置することで油水層を分液させた。
【0052】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (100L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 300L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0053】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、91.2kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0054】
比較例4
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例4と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、81.7kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
当該比較例4に比較して、実施例4では、油水分離時間の大幅な短縮と収量の大幅な増加がみられたことにより、精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0055】
試験例1 天然香料の種類による影響
表1の各天然香料(精油)を原料として、実施例2又は比較例2と同様の方法で水溶性香料を製造した。蒸留精油は対照例である。
分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
また、使用した各コールドプレス精油中のワックス含量、及び不揮発性成分含量を測定した。
結果を表1及び表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
以上より、天然香料の原料植物及び製造方法に関わらず、本願発明の製造方法が有用であることが判った。
また、脱ワックスした天然香料を原料として、比較例2の方法で製造した水溶性香料は透明性がほとんどないことから、水溶性香料の製造時の分液性、及び水溶性香料の濁り原因は、ワックスだけではなく、色素成分等、他の不揮発性成分も影響していることが判った。
【0059】
試験例2 本願発明の塩化ナトリウムの添加量の影響
実施例2の方法で塩化ナトリウムの量のみを変えて、塩化ナトリウムの添加量の分液性への影響を検討した。
分液性への影響の判定を、次の基準に従って行った。
◎:極めて良好(水層澄明)
○:良好(水層澄明性あり)
△:不良(水層澄明性ほとんどなし)
×:極めて不良(水層澄明性全くなし)
結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
5w/w%の添加量で塩化ナトリウムが析出し始め、一方、これ以上の量を添加しても、水溶性香料の製造時の分液性向上、及び水溶性香料の濁り抑制の効果は変わらなかった。
【0062】
試験例3 コアレッサーエレメントの濾過精度の影響
オレンジオイル5%を50%エタノールで抽出後、塩化ナトリウムを0.1%添加し、−15±5℃に冷却後、コアレッシングに用いるコアレッサーエレメント(ネクシスNXA、日本ポール社)の濾過精度を0.5〜30μmの各条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水溶性香料を製造した。
当該水溶性香料の分液性、及び水溶性香料の濁りへの影響の判定を、次の基準に従って行った。
○:極めて良好(水層澄明)
△:良好(水層澄明性あり)
×:不良(水層澄明性ほとんどなし)
結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
コアレッサーエレメント径は20μ以下で効果的であることがわかった。
また、同一コアレッサーエレメント径において公称濾過精度(ネクシスNXT、日本ポール社)と比較しても同様の効果が得られた。
【0065】
実施例5
チェコ産ホップ炭酸ガス抽出オイル(BOTANIX社)0.4kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、50%エタノール38kg、グリセリン1.6kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.04kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0066】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (170L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 130L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0067】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、38.4kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0068】
比較例5
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例5と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を120時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、37kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0069】
油水分離時間の大幅短縮と収量の大幅アップにより精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。
【0070】
実施例6
高知県産ユズオイル(西川製油社)3kgを、冷却機能を備えたタンクへ投入し、70%エタノール97kgによって5分間撹拌抽出した後、精製塩0.1kgを投入し、更に5分間撹拌した。その後、−15±5℃に達するまで冷却静置した。
次いで、エマルション状態となっている混合液を、カートリッジフィルター(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)に通して微細異物を除去した後、下記の条件で、コアレッシングを実施、その後、30分程度静置することで油水層を分液させた。
【0071】
[コアレッシングによる処理の条件]
流速 (500L/hr)
被処理液循環 (積算処理流量 350L以上)
コアレッサーエレメント(ネクシスフィルターNXA3、定格濾過精度3μm、日本ポール社)
【0072】
次いで、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、94.1kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0073】
比較例6
撹拌抽出後に精製塩を投入しないこと以外は、実施例6と同様にして水溶性香料を製造した。その結果、コアレッシングによる処理後の静置において油水層が十分に分離せず、水層中に油層が分散して、清澄な水層を得ることができなかった。
そこで、静置時間を72時間まで延長し、水層を、ロータリーポンプによって流速100L/hrでフィルタープレス(濾紙:No.24、安積濾紙社)に通して濾過し、87.4kgの清澄な濾液(エッセンス)を回収した。
【0074】
油水分離時間の大幅短縮と収量の大幅アップにより精製塩(塩化ナトリウム)の使用の優位性が確認できた。