特許第6033031号(P6033031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6033031-ハイブリッドエンジンの振動抑制方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033031
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ハイブリッドエンジンの振動抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20161121BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20161121BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161121BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20161121BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20161121BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20161121BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/54
   B60K6/48ZHV
   B60W10/26 900
   B60W20/17
   F02D29/06 G
   B60L11/14
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-222637(P2012-222637)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-73773(P2014-73773A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸介
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−119330(JP,A)
【文献】 特開2006−187168(JP,A)
【文献】 特開昭61−061929(JP,A)
【文献】 特開2008−180105(JP,A)
【文献】 特開2007−069860(JP,A)
【文献】 特開平09−133041(JP,A)
【文献】 特開平05−302526(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0116474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20─ 6/547
B60W 10/00─50/16
F02D 29/00─29/06
B60L 1/00─ 3/12
B60L 7/00─13/00
B60L 15/00─15/42
F02D 43/00―45/00
F16F 15/00─15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンのアイドリング時における振動を抑制するため、エンジンの爆発行程に起因する回転変動のピークをモータジェネレータの充電制御により発電負荷を加えて抑制し、前記回転変動のピーク間でモータジェネレータの放電制御により電動アシストを加えて回転変動のピークを作り、前記エンジンの気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すようにしたハイブリッドエンジンの振動抑制方法であって、クランクシャフト2回転分のクランク角0゜〜720゜の範囲を前記エンジンの気筒数を倍にした気筒数で分割し、その分割された角度範囲のうち、回転変動のピークが存在する角度範囲の全域でモータジェネレータの充電制御を行い、回転変動のピークが存在しない角度範囲では回転変動のピークを作る初期段階でのみモータジェネレータの放電制御を行うことを特徴とするハイブリッドエンジンの振動抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドエンジンの振動抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンの振動は、該エンジンを支持しているエンジンマウントを介して車体に伝達されるが、エンジンの回転数が低くなる(エンジンの振動の周波数が下がる)に従いエンジンマウントの振動伝達率が大きくなるため、エンジンの振動の周波数が低いアイドリング時における爆発一次成分の振動が問題となることがある。
【0003】
例えば、気筒数の少ないエンジンほど爆発一次成分の周波数が低い(エンジン1回転当たりの爆発回数が少ない)ため、特に4気筒以下のエンジンでアイドリング時の振動が問題視されることが多いが、6気筒以上のエンジンでは、爆発一次成分の周波数が高い(エンジン1回転当たりの爆発回数が多い)ため、アイドリング時における振動が大きな問題となることは少なかった。
【0004】
ところが、近年における自動車業界においては、ターボチャージャ等により過給圧を上げることで従来エンジンと同等の動力性能を確保したまま排気量を減らし、巡行時の燃費を向上させるダウンサイジングコンセプトがエンジン設計の主流となってきており、より少ない気筒数・より小さいサイズのエンジンへの設計変更が進んでいる。
【0005】
この流れは、最近の自動車業界内での台頭が著しいハイブリッドエンジンでも同様であり、気筒数の少ないエンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンが将来的に増えていくことが予想されるため、この種のハイブリッドエンジンにおけるアイドリング時の振動が問題になることが懸念されている。
【0006】
尚、この種のハイブリッドエンジンの振動対策に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−65409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来においては、気筒数の少ないエンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンでアイドリング時の振動の問題を軽減するにあたり、アイドル回転数を高めて振動の周波数を上げておくことでエンジンマウントによる振動の伝達を抑えるようにしていたため、巡行時の燃費を向上させる目的でダウンサイジングコンセプトを採用していながら、アイドリング時の振動対策のために燃費が悪化するという不具合が生じていた。
【0009】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、アイドル回転数を高めることなくアイドリング時における振動の問題を軽減し得るハイブリッドエンジンの振動抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンのアイドリング時における振動を抑制するため、エンジンの爆発行程に起因する回転変動のピークをモータジェネレータの充電制御により発電負荷を加えて抑制し、前記回転変動のピーク間でモータジェネレータの放電制御により電動アシストを加えて回転変動のピークを作り、前記エンジンの気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すようにしたハイブリッドエンジンの振動抑制方法であって、クランクシャフト2回転分のクランク角0゜〜720゜の範囲を前記エンジンの気筒数を倍にした気筒数で分割し、その分割された角度範囲のうち、回転変動のピークが存在する角度範囲の全域でモータジェネレータの充電制御を行い、回転変動のピークが存在しない角度範囲では回転変動のピークを作る初期段階でのみモータジェネレータの放電制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
而して、このようにすれば、モータジェネレータを用いて前記エンジンの気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すことにより、見掛け上の爆発一次成分の周波数が倍となって大幅に底上げされるので、エンジンマウントによる振動の伝達が大幅に抑えられてアイドリング時における振動の問題が著しく軽減されることになる。
【0012】
この際、モータジェネレータは、充電制御と放電制御を交互に繰り返すようにしているので、充電制御で発電された電力を利用して放電制御を行うことが可能であり、車載のバッテリから電力を持ち出さなくて済むので、該バッテリの充電状態に関わらずモータジェネレータの制御を実施することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のハイブリッドエンジンの振動抑制方法によれば、モータジェネレータを用いて前記エンジンの気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すことで見掛け上の爆発一次成分の周波数を倍にして大幅な底上げを図ることができるので、エンジンマウントによる振動の伝達を大幅に抑えてアイドリング時における振動の問題を著しく軽減することができ、気筒数の少ないエンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンであっても、アイドル回転数を従来より下げて燃費を大幅に向上することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
図2図1のエンジンの回転変動を示すグラフである。
図3図2のエンジンの回転変動に制御を加えた状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、エンジンとモータジェネレータを併用したハイブリッドエンジンを対象とし、アイドリング時における振動を後述の方法を用いて抑制するようにしている。
【0017】
図1は本形態例で対象としているハイブリッドエンジン1を搭載した自動車の一例であり、エンジン2にモータジェネレータ3が直結され且つ該モータジェネレータ3が図示しないクラッチを介しトランスミッション4と接続されるようになっており、車両の減速時に発生するエネルギーをモータジェネレータ3の充電制御により回収して蓄電すると共に、エンジン2の動力をモータジェネレータ3の放電制御により電動アシストすることでエンジン2の負担を軽減し、該エンジン2による大気汚染物質の排出量及び燃料消費量を低減するようにしてある。
【0018】
図1に図示している例においては、4気筒のエンジン2がモータジェネレータ3と併用されているが、4サイクルエンジンではクランクシャフトが2回転する間に各気筒が「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」という4つの行程を行い、クランクシャフト2回転分のクランク角0゜〜720゜の範囲で180゜毎の等間隔で4回の爆発が起こるため、図2にグラフで示すクランクシャフト1回転分のクランク角0゜〜360゜の範囲では、エンジン2の爆発行程に起因する回転変動のピークPが2回生じることになる。
【0019】
即ち、クランク角が0゜〜90゜の範囲で一番目の気筒が爆発行程となることで回転変動がプラス側に振れてピークPを作り、クランク角が90゜〜180゜の範囲で三番目の気筒が圧縮行程となることで回転変動がマイナス側に振れ、クランク角が180゜〜270゜の範囲で三番目の気筒が爆発行程となることで回転変動が再びプラス側に振れてピークPを作り、クランク角が270゜〜360゜の範囲で四番目の気筒が圧縮行程となることで回転変動が再びマイナス側に振れるようになっている。
【0020】
ここで、図2のグラフでは、クランクシャフトの2回転目のクランク角360゜〜720゜の範囲の図示を割愛しているが、回転変動のパターンとしては、クランク角0゜〜360゜の範囲における回転変動のパターンが同じように繰り返されるだけである。
【0021】
そして、このようにクランクシャフト1回転当たりの爆発回数が少ないエンジン2を採用したハイブリッドエンジン1にあっては、エンジン2の振動の周波数が低いアイドリング時における爆発一次成分の振動が問題となり易いが、本形態例では、図3にグラフで示す如く、エンジン2の爆発行程に起因する回転変動のピークPをモータジェネレータ3の充電制御により発電負荷を加えて抑制し、前記回転変動のピークP間でモータジェネレータ3の放電制御により電動アシストを加えて回転変動のピークP’を作り、前記エンジン2の気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すようにしている。
【0022】
より具体的には、図3のグラフの下段側に示している通り、クランクシャフト2回転分のクランク角0゜〜720゜の範囲を前記エンジン2の気筒数を倍にした気筒数で分割(本形態例の場合は4気筒なので8分割)し、その分割された90゜毎の角度範囲のうち、回転変動のピークPが存在する角度範囲(0゜〜90゜の範囲及び180゜〜270゜の範囲)の全域でモータジェネレータ3の充電制御を行い、回転変動のピークPが存在しない角度範囲(90゜〜180゜の範囲及び270゜〜360゜の範囲)では回転変動のピークP’を作る初期段階でのみモータジェネレータ3の放電制御を行うようにしている。
【0023】
ただし、図3のグラフにおいては、クランク角0゜〜360゜の範囲のみを図示してクランク角360゜〜720゜の範囲の図示を割愛しているが、この範囲における回転変動及びモータジェネレータ3の制御は、クランク角0゜〜360゜の範囲における図示と同じである。
【0024】
而して、このようにすれば、モータジェネレータ3を用いて8気筒数のエンジン2の回転変動を擬似的に作り出すことにより、見掛け上の爆発一次成分の周波数が倍となって大幅に底上げされるので、エンジンマウントによる振動の伝達が大幅に抑えられてアイドリング時における振動の問題が著しく軽減されることになる。
【0025】
この際、モータジェネレータ3は、充電制御と放電制御を交互に繰り返すようにしているので、充電制御で発電された電力を利用して放電制御を行うことが可能であり、車載のバッテリから電力を持ち出さなくて済むので、該バッテリの充電状態に関わらずモータジェネレータ3の制御を実施することが可能である。
【0026】
従って、上記形態例によれば、モータジェネレータ3を用いて前記エンジン2の気筒数を倍にした場合の回転変動を擬似的に作り出すことで見掛け上の爆発一次成分の周波数を倍にして大幅な底上げを図ることができるので、エンジンマウントによる振動の伝達を大幅に抑えてアイドリング時における振動の問題を著しく軽減することができ、気筒数の少ないエンジン2とモータジェネレータ3を併用したハイブリッドエンジン1であっても、アイドル回転数を従来より下げて燃費を大幅に向上することができる。
【0027】
尚、本発明のハイブリッドエンジンの振動抑制方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、図示例では4気筒のエンジンを併用した場合を示しているが、3気筒以下のエンジンを併用した例に適用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハイブリッドエンジン
2 エンジン
3 モータジェネレータ
P ピーク
P’ ピーク
図1
図2
図3