(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033043
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/36 20060101AFI20161121BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20161121BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20161121BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20161121BHJP
H02H 7/122 20060101ALI20161121BHJP
H02H 7/125 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
H02J3/36
H02M7/48 M
H02J1/00 301D
H02H7/12 F
H02H7/122 Z
H02H7/125
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-242054(P2012-242054)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-93830(P2014-93830A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−275872(JP,A)
【文献】
特開平02−164231(JP,A)
【文献】
特開2001−178148(JP,A)
【文献】
特開昭55−037807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00、
7/10−7/20
H02J1/00−5/00
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流系統及び直流系統の間に設けられる電力変換装置であって、
前記交流系統に接続された交流遮断器と、
前記交流遮断器に接続され、交流電力及び直流電力を相互に変換する変換器と、
前記変換器及び前記直流系統に並列に設けられた直流コンデンサと、
前記交流遮断器及び前記変換器の間の交流電流を測定する交流電流センサと、
前記変換器及び前記直流コンデンサの接続点と前記直流系統との間の直流電流を測定する直流電流センサと、
前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記交流遮断器及び前記変換器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記交流電流の測定結果に基づいて、前記交流系統及び前記直流系統の何れかにおける系統事故が発生したか否かを判定し、前記系統事故が発生したと判定された場合、前記直流電流の測定結果に基づいて、又は、前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記系統事故の原因が前記直流系統及び前記交流系統の何れであるかを判定し、
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記交流遮断器に遮断を指示し、前記交流遮断器は、前記交流系統及び前記変換器の間を遮断し、
前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定された場合、前記制御部は、前記変換器の動作を停止させ、
前記系統事故の原因が前記交流系統であると判定された場合、前記制御部は、前記変換器の動作を継続させる、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電流の測定結果に基づいて、前記交流電流のレベルが所定の交流電流レベル閾値より高いか否かを判定し、前記交流電流のレベルが前記交流電流レベル閾値より高いと判定された場合に、前記系統事故が発生したと判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記直流電流の測定結果に基づいて前記直流電流のレベルが所定の直流電流レベル閾値より高いか否かを判定し、
前記直流電流のレベルが前記直流電流レベル閾値より高いと判定された場合、前記制御部は、前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記直流電流の測定結果に基づいて前記直流電流のレベルが前記交流電流のレベルより高いか否かを判定し、
前記直流電流のレベルが前記交流電流のレベルより高いと判定された場合、前記制御部は、前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変換器は、自己消弧素子を有する自励式変換器である、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記交流電力は、三相交流電力である、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記交流遮断器及び前記変換器の間に設けられ、前記交流電力を変圧する変圧器を更に備え、
前記交流電流センサは、前記変圧器及び前記変換器の間の前記交流電流を測定する、
請求項6に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力と直流電力を相互に変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自励式直流送電における変換素子にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることにより、高速に電流の送電方向を変化させることが可能である。また、自励式直流送電において、直流主回路に設けられた直流コンデンサにより電力を充電し、放電することにより、交流電力及び直流電力の相互変換が行われる。
【0003】
自励式直流送電において、直流系統側の過電流事故の検出時、運転を継続すると変換器が過電圧に耐えられず故障を起こしてしまうため、直ぐに変換器の運転を停止させ、交流遮断器を切る必要がある。自励式直流送電は電圧形変換回路の構成を有するため、直流回路の地絡及び短絡は過電流の様相となる。直流系統事故時、直流コンデンサからの短絡電流と、交流系統側からの事故電流とが流れる。交流系統側からの事故電流については、交流遮断器により高速に遮断する必要がある。
【0004】
これに関し、例えば、電圧型自励式変換器の保護装置が、直流線路の事故だけでなく、直流コンデンサや変換器近傍の直流回路の事故の場合にも、直流コンデンサから放電される事故電流、および交流系統から供給される事故電流を遮断する技術が知られている(特許文献1)。ここでは、自己消弧形半導体素子を用いた変換器を直流コンデンサとで構成される自励式変換器について、保護装置は、直流コンデンサと電気的に直列に設けられたスイッチと、直流コンデンサの電流経路に設けられた過電流リレーの検出出力に基づいてスイッチの開閉を制御する制御手段とを備え、直流回路事故時に直流コンデンサから放電される事故電流を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−178148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような保護装置は、交流系統の事故を判断することはできない。従って、過電流検出時には直流系統の事故か交流系統の事故かに関わらず変換器を停止させることになる。変換器を停止させてしまうと、変換器の再起動に時間がかかり、直流系統と交流系統の連系をする上で問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である電力変換装置は、交流系統及び直流系統の間に設けられる電力変換装置であって、前記交流系統に接続された交流遮断器と、前記交流遮断器に接続され、交流電力及び直流電力を相互に変換する変換器と、前記変換器及び前記直流系統に並列に設けられた直流コンデンサと、前記交流遮断器及び前記変換器の間の交流電流を測定する交流電流センサと、前記直流コンデンサ及び前記直流系統の間の直流電流を測定する直流電流センサと、前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記交流遮断器及び前記変換器を制御する制御部と、備える。前記制御部は、前記交流電流の測定結果に基づいて、前記交流系統及び前記直流系統の何れかにおける系統事故が発生したか否かを判定し、前記系統事故が発生したと判定された場合、前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記系統事故の原因が前記直流系統及び前記交流系統の何れであるかを判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様である電力変換装置は、系統事故時にその原因を高速に判定し、原因に応じた対処を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例である電力変換装置の構成を示す。
【
図2】
図2は、自励式直流送電システムの構成を示す。
【
図4】
図4は、直流系統事故時の状態の時間変化を示す。
【
図6】
図6は、交流系統事故時の状態の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例である電力変換装置と、それを用いる自励式直流送電システムとの構成について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例である電力変換装置の構成を示し、
図2は、自励式直流送電システムの構成を示す。この自励式直流送電システムは、交流系統111a、電力変換装置113a、直流系統114、電力変換装置113b、交流系統111b、監視制御装置115を有する。交流系統111a、111bの夫々は発電機や負荷等を含む。交流系統111aには電力変換装置113aが接続されており、交流電力と直流電力を相互に変換する。電力変換装置113aには直流系統114を介して電力変換装置113bが接続されており、直流電力と交流電力を相互に変換する。電力変換装置113bには交流系統111bが接続されている。監視制御装置115は、交流系統111a、電力変換装置113a、直流系統114、電力変換装置113b、交流系統111bの監視及び制御を行う。また、監視制御装置115は、事故(系統事故)が除去された場合、その除去を示す信号を電力変換装置113a、113bへ送信する。また、監視制御装置115が電力変換装置113a、113bの夫々の直流電圧を制御することにより、交流系統111aから交流系統111bへ、又は交流系統111bから交流系統111aへ送電を行うことできる。
【0013】
電力変換装置113aは、交流遮断器(ACCB:AC Circuit Breaker)3、変圧器4、交流電流センサ(CT:Current Transformer)5、変換器33、直流電流センサ(DCCT:DC Current Transformer)8、直流コンデンサ31、制御部32を有する。交流系統111aには交流遮断器3が接続されている。交流遮断器3には変圧器4が接続されており、交流電力を変圧する。変圧器4の二次側には交流電流センサ5が接続されており、三相交流の各相の電流を測定する。交流電流センサ5には変換器33が接続されており、交流電力と直流電力を相互に変換する自励式変換器である。変換器33の直流側には並列に直流コンデンサ31が接続されており、充放電を行う。直流コンデンサ31の正極には直流電流センサ8が接続されており、直流電流を測定する。直流電流センサ8には直流系統114が接続されている。変換器33は、交流電流センサ5の各相に接続されたIGBT6、7を有する。IGBT6は直流コンデンサ31の正極(非接地側)に接続される。IGBT7は直流コンデンサ31の負極(接地側)に接続される。IGBT6、7の夫々は、他の自己消弧素子であっても良い。制御部32は、電力変換装置113aの各部を制御する。制御部32がIGBT6、7を制御することにより、電流の方向を変化させる。電力変換装置113bは、電力変換装置113aと同様の構成を有する。
【0014】
以下の説明においては、事故時、直流系統114に対して交流系統111aの反対側に位置する相手端の交流系統111bは正常であるとする。
【0015】
以下、直流系統事故時の電力変換装置113aの動作について説明する。
【0016】
図3は、直流系統事故時の潮流方向を示す。直流系統114内の直流系統事故箇所Aにおける直流系統事故時、交流電流センサ5は交流系統111aからの電流11だけを検出する。一方、直流電流センサ8は電流11に加えて直流コンデンサ31により放出される電流12も検出する。その為、直流系統事故時、直流電流センサ8に基づく直流電流のレベルは、交流電流センサ5に基づく交流電流のレベルより高くなる。
【0017】
図4は、直流系統事故時の状態の時間変化を示す。この図は、交流電流センサ5における交流電圧VA、直流電流センサ8における直流電圧VD、交流電流センサ5における交流電流IA、直流電流センサ8における直流電流ID、直流電流IDから交流電流IAを減じた値(ID−IA)を示す。時刻TDAは、直流系統事故箇所Aにおける直流回路の地絡の時刻である。時刻TDBは、交流遮断器3により交流系統111a及び変圧器4の間が切断された時刻である。時刻TDCは、監視制御装置115から事故の除去が通知され、交流遮断器3を閉じ、直流コンデンサ31の充電を開始する時刻である。時刻TDDは、直流コンデンサ31の充電が完了し、変換器33が動作開始し、交流電流IA及び直流電流IDが立ち上げられる時刻である。交流電圧は、直流系統事故の影響を受けずに通常の電圧を維持する。直流電圧は、TDAにおける事故後、電圧低下する。ここで制御部32が変換器33のIGBTブロックを行うことにより、変換器33は停止する。このIGBTブロックによりIGBT6、7はオフになる。また、直流電圧は、TDCの事故除去後、直流コンデンサ31の充電を行うことにより、TDDで正常値まで復帰する。交流電流は、TDAにおける事故時に過電流となり、TDBにおける交流遮断器3の遮断により低下する。直流電流は、TDAにおける事故後、過電流となり、TDBにおけるIGBTブロック後、低下する。直流系統事故時、直流電流IDと交流電流IAの両方が過電流となるが、このとき直流電流IDが交流電流IAより大きくなる。
【0018】
以下、交流系統事故時の電力変換装置113aの動作について説明する。
【0019】
図5は、交流系統事故時の潮流方向を示す。交流系統111a内の交流系統事故箇所Bにおける交流系統事故時、交流電流センサ5は直流コンデンサが放出する電流13を検出する。この時、直流電流センサ8は正常である相手端の交流系統111bから電力を受け取り、電圧及び電流を維持する。その為、交流系統事故時、交流電流センサ5に基づく交流電流のレベルは、直流電流センサ8に基づく直流電流のレベルより高くなる。
【0020】
図6は、交流系統事故時の状態の時間変化を示す。この図は、交流電圧VA、直流電圧VD、交流電流IA、直流電流ID、ID−IAを示す。時刻TAAは、交流系統111aにおける交流回路の地絡の時刻を示す。時刻TABは、交流遮断器3により交流系統111a及び変圧器4の間が切断された時刻を示す。時刻TACは、監視制御装置115から事故の除去が通知され、交流遮断器3を閉じる時刻である。交流電圧は、TAAにおける事故と同時に低下するが、TACにおける事故除去後、元の定格まで復帰する。直流電圧は、事故時に一瞬動揺するが、相手端の交流系統111bが正常である場合、交流系統111bから電力供給が行なわれることにより、維持される。また、直流電圧は、事故時と事故除去後に交流系統111aと再接続する時において、過電流抑制制御により維持される。交流電流は、TAAにおける事故直後、一時的に過電流となり、電流値は低下する。また、交流電流は、事故除去後、定格の電流値まで復帰する。直流電流は、事故後のTABにおいて交流系統111aに流れないため過電流にならずに低下する。また、相手端の交流系統111bが正常である場合、交流系統111bからの充電により直流電圧が維持されるため、直流電流は、低下したまま維持される。また、直流電流は、TACにおける事故除去後、交流遮断器3を閉じ、電力変換装置113aが交流系統111aと連系を行なうことにより、定格まで復帰する。交流系統事故時の直流電流と交流電流を比較すると、交流電流だけが過電流となる。
【0021】
このように、交流系統111aの事故時、一方の交流系統111aの電力がなくても他方の交流系統111bが健全なら直流コンデンサ31は充電される。即ち、交流系統事故時、一時的な交流過電流を検出し、且つ相手端の交流系統111bが正常である場合、電力変換装置113aは、正常な交流系統111bから電流を取り込み、直流電圧を確保できる。これにより、電力変換装置113aの機器耐量を超える電流や電圧が生じなければ、電力変換装置113aは停止することなく運転継続が可能である。そのために、制御部32は、事故の原因が直流系統114及び交流系統111aの何れであるかを高速に判断する。交流系統111aの事故の除去後、電力変換装置113aを交流系統111aに再連系する。
【0022】
図7は、実施例1の制御部32の構成を示す。制御部32は、交流電流判定部41と、事故箇所判定部42と、遮断器制御部44と、変換器制御部45と、通信部46とを有する。
【0023】
交流電流判定部41は、交流電流センサ5の出力に基づいて交流電流が過電流であるか否かを判定する。交流電流判定部41は、絶対値計算部(ABS)14、15、16と、高値選択部(HVG)17と、レベル判定部18とを有する。絶対値計算部14、15、16は、交流電流センサ5から3線の測定結果を夫々取得し、絶対値計算を行う。高値選択部17は、絶対値計算部14、15、16の計算結果の中で最も高い値を選択して交流電流レベルLIAとする。これにより、三相交流電流の大きさを測定することができる。なお、交流電流レベルLIAは、交流電流センサ5を流れる交流電流の振幅であっても良い。レベル判定部18は、例えば比較器であり、交流電流レベルLIAが予め定められた交流電流レベル閾値THAを超えるか否かを判定する。これにより、交流電流判定部41は、交流電流レベルLIAが交流電流レベル閾値THAを超えた場合、直流系統114及び交流系統111aの何れかで系統事故が発生したと判定する。
【0024】
事故箇所判定部42は、レベル判定部19と、AND処理部20と、AND処理部21とを有する。レベル判定部19は、例えば比較器であり、直流電流センサ8の測定結果である直流電流レベルLIDを取得し、直流電流レベルLIDが予め定められた直流電流レベル閾値THDを超えるか否かを判定する。AND処理部20は、レベル判定部19の判定結果と、レベル判定部18の判定結果とのAND演算を行い、この演算結果が真であれば、事故が直流系統事故であると判定する。これにより、交流電流が過電流であり、かつ直流電流が過電流である場合、制御部32は、事故が直流系統事故であると判定する。AND処理部20は、レベル判定部19の判定結果の否定と、レベル判定部18の判定結果とのAND演算を行い、この演算結果が真であれば、事故が交流系統事故であると判定する。これにより、交流電流が過電流であり、かつ直流電流が過電流でない場合、制御部32は、事故が交流系統事故であると判定する。
【0025】
事故が直流系統事故であると判定された場合、遮断器制御部44は、交流遮断器3を開き、変換器制御部45へ変換器33の動作停止を指示する。この指示を受けた変換器制御部45は、変換器33の動作を停止させる。通信部46が、監視制御装置115等から事故が除去されたことを示す信号を受信した場合、遮断器制御部44は、交流遮断器3を閉じることにより、変換器33を交流系統111aに連系させ、直流コンデンサ31の充電を開始する。直流コンデンサ31の充電が完了すると、遮断器制御部44は、変換器制御部45へ変換器33の動作開始を指示する。この指示を受けた変換器制御部45は、変換器33の動作を開始させる。変換器制御部45は、IGBT6、7を制御することにより、変換器33を動作させる。
【0026】
事故が交流系統事故であると判定された場合、遮断器制御部44は、交流遮断器3を開き、変換器33の動作を継続させる。通信部46が、監視制御装置115等から事故が除去されたことを示す信号を受信した場合、遮断器制御部44は、交流遮断器3を閉じることにより、変換器33を交流系統111aに連系させる。
【0027】
本実施例の制御部32は、交流電流レベルLIAと交流電流レベル閾値THAを比較することにより、系統事故が発生したか否かを高速に判定することができる。これにより、系統事故の発生時、交流遮断器3は、交流系統111a及び変圧器4の間を切断することができる。本実施例の制御部32は、系統事故が発生したと判定された場合に、直流電流レベルLIDと直流電流レベル閾値THDを比較することにより、系統事故の原因が直流系統114であるか交流系統111aであるかを高速に判定することができる。
【0028】
これにより、事故が交流系統事故であると判定された場合、変換器33の動作を継続させることができる。変換器33が動作を継続することにより、事故除去後に電流が定格に到達するまでの時間を短縮することができる。また、事故が直流系統事故であると判定された場合、電力変換装置113aを停止させ、故障を防ぐことができる。
【0029】
なお、絶対値計算部14、15、16と、高値選択部17とが、交流電流判定部41ではなく、交流電流センサ5に設けられても良い。
【実施例2】
【0030】
以下、別の制御部32を用いる実施例について説明する。
【0031】
図8は、実施例2の制御部32の構成を示す。実施例2の制御部32において、実施例1の制御部32の要素の同一物又は相当物である要素には同一符号を付し、その説明を省略する。本実施例の制御部32は、事故箇所判定部42に代えて事故箇所判定部42bを有する。事故箇所判定部42bは、レベル判定部19に代えて減算部23と、正負判定部22を有する。
【0032】
減算部23は、直流電流センサ8からの直流電流レベルLIDと、高値選択部17からの交流電流レベルLIAとを取得し、直流電流レベルLIDから交流電流レベルLIAを減じる。正負判定部22は、例えば比較器であり、減算部23の演算結果が正であるか否かを判定する。AND処理部20は、正負判定部22の判定結果と、レベル判定部18の判定結果とのAND演算を行い、この演算結果が真であれば、事故が直流系統事故であると判定する。これにより、交流電流が過電流であり、かつ直流電流レベルLIDが交流電流レベルLIAを超える場合、制御部32は、事故が直流系統事故であると判定する。AND処理部20は、正負判定部22の判定結果の否定と、レベル判定部18の判定結果とのAND演算を行い、この演算結果が真であれば、事故が交流系統事故であると判定する。これにより、交流電流が過電流であり、かつ直流電流レベルが交流電流レベルより低い場合、制御部32は、事故が交流系統事故であると判定する。
【0033】
本実施例の制御部32は、系統事故が発生したと判定された場合に、直流電流レベルと交流電流レベルを比較することにより、系統事故の原因が直流系統114であるか交流系統111aであるかを高速に判定することができる。
【0034】
以上の実施例で説明された技術は、次のように表現することができる。
(表現1)
交流系統及び直流系統の間に設けられる電力変換装置であって、
前記交流系統に接続された交流遮断器と、
前記交流遮断器に接続され、交流電力及び直流電力を相互に変換する変換器と、
前記変換器及び前記直流系統に並列に設けられたコンデンサと、
前記交流遮断器及び前記変換器の間の交流電流を測定する交流電流センサと、
前記コンデンサ及び前記直流系統の間の直流電流を測定する直流電流センサと、
前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記交流遮断器及び前記変換器を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記交流電流の測定結果に基づいて、前記交流系統及び前記直流系統の何れかにおける系統事故が発生したか否かを判定し、前記系統事故が発生したと判定された場合、前記交流電流の測定結果及び前記直流電流の測定結果に基づいて、前記系統事故の原因が前記直流系統及び前記交流系統の何れであるかを判定する、
電力変換装置。
(表現2)
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記交流遮断器に遮断を指示し、前記交流遮断器は、前記交流系統及び前記変換器の間を遮断する、
表現1に記載の電力変換装置。
(表現3)
前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定された場合、前記制御部は、前記変換器の動作を停止させ、
前記系統事故の原因が前記交流系統であると判定された場合、前記制御部は、前記変換器の動作を継続させる、
表現2に記載の電力変換装置。
(表現4)
前記制御部は、前記交流電流の測定結果に基づいて、前記交流電流のレベルが所定の交流電流レベル閾値より高いか否かを判定し、前記交流電流のレベルが前記交流電流レベル閾値より高いと判定された場合に、前記系統事故が発生したと判定する、
表現3に記載の電力変換装置。
(表現5)
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記直流電流の測定結果に基づいて前記直流電流のレベルが所定の直流電流レベル閾値より高いか否かを判定し、
前記直流電流のレベルが前記直流電流レベル閾値より高いと判定された場合、前記制御部は、前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定する、
表現4に記載の電力変換装置。
(表現6)
前記系統事故が発生したと判定された場合、前記制御部は、前記直流電流の測定結果に基づいて前記直流電流のレベルが前記交流電流のレベルより高いか否かを判定し、
前記直流電流のレベルが前記交流電流のレベルより高いと判定された場合、前記制御部は、前記系統事故の原因が前記直流系統であると判定する、
表現4に記載の電力変換装置。
(表現7)
前記変換器は、自己消弧素子を有する自励式変換器である、
表現1乃至6の何れか一項に記載の電力変換装置。
(表現8)
前記交流電力は、三相交流電力である、
表現7に記載の電力変換装置。
(表現9)
前記交流遮断器及び前記変換器の間に設けられ、前記交流電力を変圧する変圧器を更に備え、
前記交流電流センサは、前記変圧器及び前記変換器の間の前記交流電流を測定する、
表現8に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0035】
3:交流遮断器、 4:変圧器、 5:交流電流センサ、 8:直流電流センサ、 31:直流コンデンサ、 32:制御部、 33:変換器、 41:交流電流判定部、 42、42b:事故箇所判定部、 44:遮断器制御部、 45:変換器制御部、 46:通信部、 111a:交流系統、 111b:交流系統、 113a:電力変換装置、 113b:電力変換装置、 114:直流系統、 115:監視制御装置