特許第6033046号(P6033046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KJケミカルズ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033046
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20161121BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20161121BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161121BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C09J4/02
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   G02F1/13363
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-244990(P2012-244990)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-177547(P2013-177547A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-22804(P2012-22804)
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 明理
(72)【発明者】
【氏名】工藤 繭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 学士
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−077199(JP,A)
【文献】 特開昭59−161473(JP,A)
【文献】 特開2008−287207(JP,A)
【文献】 特開2009−098623(JP,A)
【文献】 特開2007−177169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
G02B
G02F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、(B)および(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性接着剤。
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを45〜95重量%
(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドを4〜54重量%
(C)末端或いは側鎖に(メタ)アクリレート基を二つ以上有し、かつ(メタ)アクリルアミド基を有しない直鎖状化合物および/または分岐状化合物を0.5〜20重量%
【請求項2】
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが、一般式[1](Rは水素原またはメチル基を、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Rは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)に示される化合物である請求項1に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤。
【化1】
【請求項3】
(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドが、N,N−ジメチルアクリルアミド又はN,N−ジエチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤。
【請求項4】
活性エネルギー線硬化性接着剤成分として、さらに、重合性第3級アミン化合物を含有することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤であって、前記重合性第3級アミン化合物が一般式[2](式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)に示された化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤。
【化2】
【請求項5】
活性エネルギー線硬化性接着剤成分として、さらに、イオン性ビニルモノマー0.01〜20重量%を含有することを特徴とする前記請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤
【請求項6】
25℃における粘度が10〜100mPa・sである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤を用い、ポリビニルアルコール系偏光フィルムに透明保護フィルム、位相差フィルムおよび光学補償フィルムからなる群から選ばれる1以上のフィルムを貼り合わせ、活性エネルギー線照射によって、接着剤を硬化して接着層が形成されていることを特徴とする偏光板であり、かつ、ヘイズが1未満であることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板が少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板を作製する際に、ポリビニルアルコール系偏光フィルムと各種透明保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムとの接着に好適な活性エネルギー線硬化型接着剤に関する。具体的には、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミドと末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物からなる活性エネルギー線硬化性接着剤、該活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて作製される偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光フィルムは液晶表示装置に不可欠な素材であり、一般にポリビニルアルコール(PVA)を主体にヨウ素(I)化合物の分子を吸着、配合させることで製造されている。偏光フィルムの役割は偏光方向の光を通過させ、偏光方向以外の光を遮断することであるが、PVA系フィルムは水分や熱の影響を受け易いため、分解したり寸法変化したりして、偏光の性能が劣化してしまうことがある。それを防止するために、PVA系偏光フィルムの表面(片面または両面)に接着剤を用いて保護フィルム等が貼り合わせられている。こうして製造される(保護フィルム/接着剤/PVA偏光フィルム/接着剤/保護フィルム)の積層体が通常に使用されている偏光板である。
【0003】
PVA系偏光フィルムと保護フィルムの貼り合わせに用いられる接着剤には、従来からポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(PVA系接着剤)が広く使用されている。また、保護フィルムとして、透明でリタデーションが小さく、PVA系偏光フィルムおよびPVA系接着剤との接着性に優れているトリアセチルセルロース(TAC)系セルロース誘導体からなるものが一般的に用いられている。ところが、TACフィルムは透湿性が高いため、PVA系接着剤水溶液のウェットラミネーションにより貼り合わせた後の接着剤乾燥が操作し易い反面、温度や湿度による偏光板の寸法変化が大きく、輝度ムラ発生など光学特性の変化が大きいという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、TACに代わって、PVA系偏光フィルムの片面または両面に低透湿性の環状ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂やアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明フィルムが用いられ始めている。しかし、透湿性が低いため、保護フィルムと偏光フィルムを用い、接着剤としてPVA水溶液を介して貼り合わせた後に、水を除去するために加熱、乾燥を行う必要があり、多くの時間とエネルギーを消耗し、生産性が低いという問題点があった。また、加熱による偏光板の光学的特性の低下を防ぐため、数段階分けて加熱するなど複雑な乾燥工程が必要となる(特許文献1)。さらに、これらの保護フィルムは疎水性が強く、親水性であるPVA系偏光フィルム、PVA系接着剤と接着する際に十分な接着強度、耐湿性や耐水性が得られない問題もあった。そこで、接着性を改善するため、保護フィルムにおいてもPVA系接着剤においても、様々な改質方法が検討された。例えば、スチレンやアクリル酸エステル変性の環状ポリオレフィン(特許文献2)、シクロペンタノンで変性したTAC(特許文献3)、TAC保護フィルム外側にさらに接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせること(特許文献4)、アクリルフィルムやポリカーボネートフィルムのアルカリ処理、ノルボルネンフィルムのコロナ処理(特許文献5)、水溶性セルロースにより保護フィルムのコーティング処理(特許文献6)、改質PVA系接着剤と保護フィルムの間にウレタン系樹脂などの易接着剤層を設けること(特許文献7)、変性PVAと水系架橋剤からなる接着剤(特許文献8、9)、特殊PVA系接着剤(ケン化度30〜70モル%)と特殊な保護フィルム(接着面の水の接触角が20〜90度)の組み合わせ(特許文献10)などが提案されている。しかしながら、これらの改質方法では、設備コストが増加し、生産工程や品質管理が複雑になり、生産性が大幅に低下するだけでなく、接着強度を含め、耐湿性や耐水性においても十分ではなかった。
【0005】
このような理由から、水系接着剤であるPVA水溶液の代替品として、イソシアネート化合物などの架橋型接着剤や、UV、EBなどの活性エネルギー線硬化型接着剤を使用することが多く提案されている。ところで、多くのイソシアネート架橋型接着剤は水分散系又は溶剤系であり、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせた後、加熱による乾燥工程が省略できず、また架橋反応を完結させるため、長時間のエージングを要する場合が多い(特許文献11、12)。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤は特殊なUV、EB照射設備が必要となるが、無水、無溶剤系のため作業時間が短く、偏光板の高速製造に特に有利で、その研究が盛んに行われている。例えば、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドを用いて、アクリロイルモルホリン(特許文献13)、又はジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどの非ウレタン系多官能モノマー(特許文献14)、(メタ)アクリレート基を少なくとも6つを有する分岐型ポリエステル系多官能モノマー(特許文献15)或いはメチレンビスアクリルアミドのような多官能アクリルアミド(特許文献16)と組み合わせて調製した接着剤が報告され、さらに、ウレタンアクリレートとアミド系アミドやエステル系のアクリル単量体の混合物からなら接着剤が開示されている(特許文献17、18)。
【0006】
しかしながら、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドは極性の強い水酸基とアミド基を併せ持つ構造を有するため、表面に水酸基を有するPVA系偏光フィルムや親水性の高いTAC系保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対して、ぬれ性や密着性に優れている反面、疎水性である環状ポリオレフィン樹脂やノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などからなる各種フィルムに対するぬれ性や密着性が非常に低く、接着強度が殆ど得られなかった。また、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドは粘度の高いモノマーであり(25℃における粘度が280mPa・s)、偏光フィルムと保護フィルムなどを連続的に接着する作業に用いる場合、塗布性の低下による作業性や生産性の低下と同時に、泡やスジ、ムラなどが生じ易くなる。上記の特許文献14〜18のように、多官能モノマーなどの第二成分や第三成分を配合することによって、疎水性保護フィルムなどに対する密着性の改善は多少見られてきたが、接着剤の粘度がさらに高くなってしまった。その結果、不均一な塗布や接着ムラなどが発生し、得られた偏光板は接着強度や耐湿性、耐水性の改善が未だ不十分であった。
一方、特許文献13では、アクリロイルモルホリンのみが添加される場合では、接着剤の低粘度化に有効であるが、疎水性保護フィルムなどに対する密着性は十分に改善できず、接着強度が低かった。特に、特許文献15の提案では、(メタ)アクリレート基を少なくとも6つ有する分岐型ポリエステル系多官能モノマーの疎水性が高いため、親水性が高いN−ヒドロキシエチルアクリルアミドとは相溶せず、得られる偏光板の透明性が著しく低下する問題がある。また、特許文献16の提案では、室温で固体のメチレンビスアクリルアミドをN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンに混合して使用するため、メチレンビスアクリルアミドの溶解性が非常に悪く、取得する偏光板の透明性が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−309394号公報
【特許文献2】特開2009−108286号公報
【特許文献3】特開2007−004123号公報
【特許文献4】特開2010−113147号公報
【特許文献5】特開2009−169333号公報
【特許文献6】特開2011−057985号公報
【特許文献7】特開2010−224345号公報 改
【特許文献8】特開2009−237388号公報
【特許文献9】特開2009−92857号公報
【特許文献10】特開2010−134448号公報
【特許文献11】特開2003−177247号公報
【特許文献12】特開2010−117516号公報
【特許文献13】特開2008−287207号公報
【特許文献14】特開2010−78700号公報
【特許文献15】特開2010−78699号公報
【特許文献16】特開2010−77199号公報
【特許文献17】特開平04−159317号公報
【特許文献18】特開2008−174667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、偏光板を作製する際に、PVA系偏光フィルムと各種保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対するぬれ性、密着性が良好で、低粘度で作業性が良く、接着ムラが発生せず、高接着強度と優れた透明性を併せ持つ、高硬化速度を有する活性エネルギー線硬化性接着剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、このような活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて、偏光性、耐久性、耐湿性や耐水性に優れた偏光板を作製、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド45〜95重量%、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドが4〜54重量%と(C)末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物0.5〜20重量%、を含有する活性エネルギー線硬化性接着剤を見出し、また該接着剤を介して偏光フィルムと偏光層保護フィルム、位相差フィルム、または光学補償フィルムを貼り合わせ、活性エネルギー線照射で硬化させることにより上記課題を解決し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)下記の成分(A)、(B)および(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性接着剤、
(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを45〜95重量%
(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドを4〜54重量%
(C)末端或いは側鎖にビニル基を二つ以上有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物を0.5〜20重量%
(2)(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが、一般式[1](Rは水素原子またはメチル基を、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Rは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)に示される化合物である上記(1)に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤、
【化1】

(3)(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドが、N、N−ジメチルアクリルアミド又はN,N−ジエチルアクリルアミド、から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(2)のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤、
(4)活性エネルギー線硬化性接着剤成分として、さらに、重合性第3級アミン化合物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤、
(5)前記重合性第3級アミン化合物が一般式[2](式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)に示された化合物から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤、
【化2】

(6)25℃における粘度が10〜100mPa・sである、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤、
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤を用い、ポリビニルアルコール系偏光フィルムに透明保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムからなる群から選ばれる1以上のフィルムを貼り合わせ、活性エネルギー線照射によって、接着剤を硬化して接着層が形成されていることを特徴とする偏光板。
(8)上記(7)に記載の偏光板が少なくとも1枚積層されていることを特徴とする光学フィルム
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤は、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド45〜95重量%、N,N−ジアルキルアクリルアミド4〜54重量%、および末端或いは側鎖にビニル基を二つ以上有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物を0.5〜20重量%の成分を含有している。本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤は、PVA系偏光フィルム、各種保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対して優れた浸透性やぬれ性、密着性を有し、低粘度で塗工作業性が良く、接着ムラが発生せず、高接着強度と優れた透明性を併せ持つ。また、本発明の接着剤は活性エネルギー線硬化速度が非常に速い特徴がある。
さらに、必要に応じて、重合性第3級アミン化合物、イオン性ビニルモノマーや他の重合性モノマーなどを混合して使用することによって様々な付加機能、例えば、特殊な位相差フィルムや光学補償フィルムに対するぬれ性、密着性の一層向上、耐水性の更なる改善、導電性や帯電防止性などを提供することができる。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤を用いることにより、高価な特殊設備や複雑な乾燥作業、PVA系偏光フィルム、各種保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムの表面改質、アンカーコーティング工程を要せず、偏光性、耐久性および耐湿性や耐水性に優れる偏光板を簡易に作製、提供することができる。
【0013】
本発明に用いられるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、活性エネルギー線による硬化速度が速く、また、水酸基とアミド基を併せ持つため、PVA系偏光フィルム表面の水酸基との間に水素結合を形成し、ぬれ性と密着性を高く維持すると同時に、高い表面張力(凝集力)を有し、接着剤に高い接着強度を与えることができる。しかしながら、その一方で、疎水性保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対する密着性が低く、粘度が高いという難点があった。本発明において、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドにN,N−ジアルキルアクリルアミドと末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物を特定な比例で配合することにより、接着剤の粘度が低下すると同時に保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対するぬれ性が著しく向上し、その結果、透明で均一且つ安定的な接着剤層を形成することができる。さらに、
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが保護フィルムなどに対して浸透力が強いので、それらの存在により浸透性が付与され、接着剤層が保護フィルム中に入り込み、高い密着性と接着強度を維持し続けることができる。また、末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物が接着剤層の架橋密度や収縮率を調整し、剥離強度、透明性、耐熱性、耐久性、耐湿性と耐水性をともに満足する偏光板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤は、必須成分としてN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミドと末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物を含有している。
【0015】
本発明に用いられるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、望ましくは一般式[1](式中Rは水素原子またはメチル基を、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基をおよびRは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。)に示された化合物である。 具体的には、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。特に、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが、高屈折率(1.502)を有するので優れた透明性を提供でき、皮膚刺激性(PII=0)が低いので安全性が高くて取り扱い易く、また、高純度な工業品を安易に入手できるため、好ましい。これらのモノマーは単独で使用されてもよいし、また2種類以上併用されてもよい。
【0016】
【化3】
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物中の前記N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの配合量は45〜95重量%であり、中でも50〜85重量%が好ましい。N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの配合量が45重量%未満の場合、該接着剤の硬化性も、PVA系偏光フィルムに対するぬれ性も低下し、本発明の目的とする接着強度、透明性、耐久性や耐水性などが十分に得られない可能性がある。
【0018】
本発明に用いられるN,N−ジアルキルアクリルアミドは、接着剤の低粘度化の観点から、25℃における粘度が10mPa・s以下であることが好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。また、これらのモノマーは単独で使用されてもよいし、また2種類以上併用されてもよい。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物中のN,N−ジアルキルアクリルアミドの配合量は4〜54重量%であり、中でも10〜40重量%が好ましい。4重量%未満の場合、保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対する浸透性が低下し、その結果、密着性と接着強度が十分に付与できず、得られる偏光板が接着剤層と保護フィルムなどの間で界面剥離を生じやすくなる。一方、54重量%以上であれば、逆にPVA系偏光フィルムに対する密着性が不足となり、接着剤層とPVA系偏光フィルムの間で界面剥離を発生やすくなり、接着強度、透明性、耐久性や耐水性の低下を招くことがある。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物中の末端或いは側鎖にビニル基を二つ以上有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物(以下「重合性多官能化合物」)の配合量は0.5〜20重量%であり、中でも1〜15重量%が好ましい。これら重合性多官能化合物はアクリル、エステル、エーテル、ウレタン、アミドなどの骨格を有する直鎖状または/および分岐状のモノマー、オリゴマー、ポリマーである。具体的には、重合性多官能モノマーと重合性多官能オリゴマーとしては、重量平均分子量が10,000未満の多官能(メタ)アクリレートまたは/および多官能(メタ)アクリルアミド、また、重合性多官能ポリマーとしては、重量平均分子量は10,000以上である硬化性樹脂が挙げられる。重合性多官能化合物は接着剤の架橋密度を適切に調整する作用があり、さらに分子量と分子内の二重結合の数、位置(末端か側鎖)、ポリマー主鎖の構造(リニア、グラフト、ブロック、分岐など)による特異な機能を提供することもできる。例えば、多官能モノマー、オリゴマーを使用する場合、接着剤の強度や耐熱性、耐久性、耐水性を向上させる効果があるので、0.5重量%以上配合することが好ましい。一方、配合量が20重量%を超えると、架橋密度が高くなるため、接着層の硬度は向上するが、弾力性が失われて割れやすくなる。また、多官能ポリマーはアンカーコーティング効果を付与することができ、保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対するぬれ性、密着性が向上し、硬化後の接着層の硬度と弾性力のバランスを調整する作用がある。その配合量は1重量%未満であれば、上記の添加効果が十分に得られない可能性があり、一方、20重量%を超えると、接着剤組成物の粘度が著しく増加し、均一且つ平滑的に塗布できなくなる恐れがある。
【0021】
上記の多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。
【0022】
また、上記の多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタアクリルアミド、ジアリルアクリルアミド等のモノマーとウレタンアクリルアミド(特開2002−37849)等のオリゴマーが挙げられる。
【0023】
上記の重合性多官能ポリマーとしては、例えば、二官能ポリウレタン(メタ)アクリレート、多官能ポリウレタン(メタ)アクリレート、二官能ポリウレタン(メタ)アクリルアミド、多官能ポリウレタン(メタ)アクリアミド、二官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、二官能ポリエステル(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、二官能ポリエステル(メタ)アクリルアミド、多官能ポリエステル(メタ)アクリルアミド、二官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、二官能ポリエーテル(メタ)アクリルアミド、多官能ポリエーテル(メタ)アクリルアミド、二官能ポリアミド(メタ)アクリレート、多官能ポリアミド(メタ)アクリレート、二官能ポリアミド(メタ)アクリルアミド、多官能ポリアミド(メタ)アクリアミド、二官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリレート、多官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリレート、二官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリルアミド、多官能ポリ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)アクリルアミド、二官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリレート、多官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリレート、二官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリルアミド、多官能ポリ(メタ)アクリルアミド(メタ)アクリルアミド、二官能ポリ(N−置換(メタ)アクリルアミド)(メタ)アクリルアミド、多官能ポリ(N−置換(メタ)アクリルアミド)(メタ)アクリルアミド、二官能ポリスチレン(メタ)アクリレート、多官能ポリスチレン(メタ)アクリレート、二官能ポリスチレン(メタ)アクリルアミド、多官能ポリスチレン(メタ)アクリルアミド、二官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリレート、多官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリレート、二官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリルアミド、多官能ポリアクリロニトリル(メタ)アクリルアミド、二官能エポキシアクリレート(ビスフェノールA型)、多官能エポキシアクリレート(ビスフェノールA型)などが挙げられる。また、これらのポリマーは単独で使用されてもよいし、また2種類以上併用されてもよい。
【0024】
これらの重合性多官能化合物(重合性多官能モノマー、重合性多官能オリゴマーと重合性多官能ポリマー)は、1種類でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
以上より、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤の必須成分である、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、45〜95重量%、好ましくは50〜90重量%配合し、N,N−ジアルキルアクリルアミドは、4〜54重量%、好ましくは10〜40重量%配合し、重合性多官能化合物は0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%配合する。
【0026】
本発明において、活性エネルギー線硬化性接着剤成分として、さらに、重合性第3級アミン化合物を含有することができる。重合性第3級アミン化合物は一般式[2]で表わされるジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド系モノマーとジアルキルアミノ(メタ)アクリレート系モノマーである。
【0027】
【化4】
【0028】
一般式[2]の式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Yは酸素原子または−NH−を表し、Zは炭素数1〜3のアルキレン基を表す。
【0029】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
上記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
第3級アミンを有するモノマーは、特に保護フィルム類、例えば、応答速度、輝度、コントラスト、視野角改善などの目的に使用される位相差フィルム、大型液晶ディスプレイや3Dディスプレイ対応の液晶性化合物コーティング光学補償フィルム、斜め延伸光学補償フィルム等に対するぬれ性に優れており、これらを配合することにより接着剤と保護フィルム類との密着性が更に改善され、接着力の向上効果が付与できる。
【0032】
これらの重合性第3級アミン化合物の配合量は、特に制限されることはない。一般に本発明の接着剤において、重合性第3級アミン化合物は0.01〜40重量%、中でも0.1〜20重量%添加されることが好ましい。重合性第3級アミン化合物の配合量が0.01重量%未満の場合、上記の添加による付加機能を提供できない可能性があり、また、30重量%を超えると、重合性第3級アミン化合物の品種にもよるが、接着剤が経時的に黄変してくる恐れがある。
【0033】
本発明において、活性エネルギー線硬化性接着剤中にさらに有機系イオン性化合物を配合することができる。有機系イオン性化合物としては、イオン性ビニルモノマーおよび/又はそれらを構成成分としたオリゴマー、ポリマーが挙げられる。イオン性ビニルモノマーとは、カチオンとアニオンを組み合わせたオニウム塩であり、具体的には、カチオンとして(メタ)アクリレート系或いは(メタ)アクリルアミド系のアンモニウムイオンやイミダゾリウムイオン、アニオンとしてはCl-、Br-、I-等のハロゲンイオンまたはOH-、CH3COO-、NO3-、ClO4-、PF6-、BF4-、HSO4-、CH3SO3-、CF3SO3-、CH3C6H6SO3-、C4F9SO3-、(CF3SO2)2N-、SCN-等の無機酸アニオンまたは有機酸アニオンが挙げられる。
【0034】
本発明に用いられるイオン性ビニルモノマーは、本発明者等が先に出願した特許文献19記載の方法で製造できる。
【0035】
特許文献19:特開2011−012240号公報、
特開2011−074216号公報、
特開2011−140448号公報、
特開2011−140455号公報、
特開2011−153109号公報
【0036】
有機系イオン性化合物のイオンがPVA系偏光フィルム表面の水酸基との間に水素結合やイオン結合を形成し易く、また、導電性や帯電防止性を付与することができるので、PVA系偏光フィルムおよび偏光層の保護フィルムに対するぬれ性が向上し、より均一に塗布でき、より安定に膜を形成できると、本発明者らは推察している。さらに、イオン性ビニルモノマー自身も活性エネルギー線硬化性化合物であるため、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤の主成分と共重合することにより、ブリードアウトせず、永久的に導電性や帯電防止性を付与する補助効果および偏光フィルム、保護フィルムの密着性向上効果が提供できる(特許文献20)。
【0037】
特許文献20:特開2012−117047号公報、
特開2012−111937号公報、
特開2012−046687号公報
【0038】
本発明に用いられる有機系イオン性化合物は、分子量数十〜数百の単分子化合物、分子量数百〜数千のオリゴマー、分子量数千〜数万のポリマーから選ばれる1種、または必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの有機系イオン性化合物の配合量は、イオン対の官能基数や分子量によって調整できるので、特に制限されることはない。一般に本発明の接着剤組成物中の有機系イオン性化合物の配合量は0.01〜20重量%、中でも0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%添加されることがさらに好ましい。有機系イオン性化合物の配合量が0.01重量%未満の場合、添加による上記の付加機能を提供できない可能性があり、また、20重量%を超えると、有機系イオン性化合物の品種にもよるが、接着剤の透明性の低下を招く可能性がある。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤において、さらに粘度調整のために他の重合性化合物を添加することができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中に反応性二重結合を持つラジカル重合化合物が挙げられる。
【0040】
上記のアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
上記の不飽和ニトリルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0043】
上記の不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコネートなどが挙げられる。
【0044】
上記のアミド基含有モノマーの例として、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムが挙げられる。また、これらのモノマーは単独で使用されてもよいし、また2種類以上併用されてもよい。
【0045】
上記の各種重合性化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。また、このような重合性化合物を使用する場合、本発明の接着剤中の合計配合量は、1〜40重量%含有させることが好ましく、また5〜20重量%含有させることが特に好ましい。含有量が1重量%未満ではその添加効果が認められず、40重量%を越えると、接着剤の強度が十分に得られない問題がある。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤の粘度は、25℃において、10mPa・s以上且つ100mPa・s以下であることが好ましい。さらに、10〜50mPa・sが特に好ましい。本発明の成分、配合量により得られる活性エネルギー線硬化性接着剤であれば、当該粘度を得ることができる。25℃における粘度が10mPa・s未満の場合、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの配合量を著しく低下させなければならず、即ち45重量%未満となる。その結果、上記のように接着剤の硬化性も、PVA系偏光フィルムに対するぬれ性も低下し、接着強度や透明性、耐熱性、耐久性なども十分に得られない可能性がある。一方、25℃における粘度が100mPa・s超えると、偏光板の製造時に良好な塗布性、作業性が得られ難くなるため好ましくない。また、塗布面が不均一になることにより、接着強度や透明性が低下する場合がある。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤を用い、偏光フィルムと偏光層保護フィルム、位相差フィルム、または光学補償フィルムを貼り合わせ、活性エネルギー線照射で硬化させることにより、偏光板などの光学積層フィルムを作製することができる。これにより形成される接着層のガラス転移温度は60℃以上且つ200℃以下であることが好ましく、さらに、80℃以上且つ180℃以下が特に好ましい。接着層のガラス転移温度が60℃未満の場合、作製された偏光板の耐熱性、耐久性が十分に満足できない可能性があり、また、200℃を超えると、接着層の弾力性が急激に低下し、偏光板が割れ易くなる欠点がある。
【0048】
本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線(UV)、電子線(EB)、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型である点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる際には、光重合開始剤を添加しておく。光重合開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光重合開始剤としては特に制限はなく、例えばアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。光重合開始剤のうち、市販の光重合開始剤としてはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1116、Darocure1173、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE500、IRGACURE651、IRGACURE754、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE1300、IRGACURE1800、IRGACURE1870、IRGACURE2959、IRGACURE4265、LUCIRIN TPO、UCB社製、商品名ユベクリルP36等を用いることができる。これらの光重合開始剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらの光重合開始剤の使用量は特に制限されないが、一般に活性エネルギー線硬化性接着剤に対して、0.1〜10重量%、中でも0.5〜5重量%が添加されることが好ましい。0.1重量%未満では十分な硬化性が得られず、10%越えると接着力の強度低下や接着層が黄変してしまう可能性がある。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤は、本来、水や有機溶剤を含有する必要のないものであるが、接着剤の粘度調整、形成される接着層のぬれ性や形成性をさらに向上させる目的で水や有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を用いる場合、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。水や有機溶剤を添加する場合、保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルム上に接着剤を塗布後、加熱により水や有機溶剤を除去し、PVA系偏光フィルムと貼り合わせて活性エネルギー線照射を行えばよい。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤およびそれから作製された偏光板などの光学フィルム、シートなどの成形品の接着性、透明性、耐久性、耐湿性、耐水性等の特性を阻害しない範囲で、界面活性剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤等の他の任意成分を併用してもよい。
【0053】
本発明に用いられるPVA系偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色・吸着させ、これを一軸延伸して製造することにより得られる。上記ポリビニルアルコール系樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して得られるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリルなどを含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有させた変性ポリビニルアルコール系樹脂であっても良い。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは60,000〜300,000、より好ましくは120,000〜260,000であり、ケン化度は80モル%以上であることが好ましく、特には85〜100モル%、更には98〜100モル%が好ましい。これら偏光フィルムの厚さは、偏光板が用いられる用途に応じて適宜選択されるが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0054】
本発明に用いられる保護フィルムは、透明性、機械的強度、熱的安定性、水分遮断性、等方性などが良好であれば、その構成材料は特に制限するものではないが、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。これら熱可塑性樹脂として具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、ポリメチルメタクリレートやアクリロニトリルとスチレンの共重合体などのポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0055】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル―(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。市販品の例としては、三菱レイヨン株式会社製の商品名「アクリペットVH」、「アクリペットVRL20A」、カネカ社製の「サンデュレン」などが挙げられる。
【0056】
上記環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。市販品の例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の「APEL」などが挙げられる。
【0057】
上記セルロース系樹脂とは、セルロースと脂肪酸のエステルの総称であり、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロースとも呼ばれる)、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。セルローストリアセテートの市販品の例としては、富士写真フィルム社製;商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」などが挙げられる。
【0058】
本発明に用いられる位相差フィルムは位相差を有している透明フィルムであり、偏光層の保護機能を有するため、位相差を有する保護フィルムとしても使用することができる。厚み方向の位相差や面内位相差および透明性などの物性が満足できれば、その材質について、特に限定するものではない。位相差フィルムの市販品の例としては、ノルボルネン系環状オレフィンを用いた(株)日本ゼオン製のゼオノア、セルロースエステルを主成分とする高分子を用いた(株)コニカミノルタオプト製のn−TAC、(株)富士フィルム製のV−TAC、またポリカーボネート系の延伸フィルムとして(株)カネカ製のR−フィルム(通常タイプ)とR−40フィルム(薄膜タイプ)などが挙げられる。
【0059】
本発明の光学補償フィルムは、大型液晶ディスプレイや3Dディスプレイ対応の液晶性化合物コーティング光学補償フィルム、ポリイミド配向の光学補償フィルム、セルロース系とシクロオレフィン系の逐次二軸延伸や斜め延伸光学補償フィルムなどを用いることができる。偏光層の保護機能を有するため、光学補償機能を有する保護フィルムとしても使用することができる。目的の光学補償性能が満足できれば、その材質について、特に限定するものではない。光学補償フィルムの市販品の例としては、富士フィルム(株)製のWVフィルム−SA(トリアセチルセルロースフィルムの片面にポリビニルアルコール系樹脂からなる配向膜が形成され、その上にディスコティック液晶がコーティングされてなる光学補償フィルムである。)などが挙げられる。
【0060】
なお、PVA系偏光フィルムの両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料を用いてもよく、異なるポリマー材料などからなる保護フィルムを用いてもよい。また、一面または両面が、保護フィルムの代わりに位相差フィルムや光学補償フィルムでもよい。
【0061】
本発明に用いられる保護フィルム、位相差フィルムや光学補償フィルムにおいて、厚さが適宜に決定し得るが、一般的には強度や取扱い時の作業性、薄層性などの点により、1〜500μm程度である。特に、1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
【0062】
本発明の保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムを偏光フィルムへ接着させる面には、易接着層を塗布するなどのアンカー処理は特に必要ないが、処理を行っても良い。アンカー処理としては、コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理又はコート剤をコーティングする方法が挙げられる。コーティングするためのコート剤は保護フィルム、位相差フィルム及び光学補償フィルムに優れたぬれ性、密着性を付与するものであればよい。具体的には、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
【0063】
本発明の接着剤は、上記の各種保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。特に、本発明の接着剤の主成分としてN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミドと末端或いは側鎖にビニル基を二つ以上有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物を含有するため、(メタ)アクリル樹脂に対して優れたぬれ性、密着性を有し、従来、接着性を満足することが困難であった(メタ)アクリル樹脂に対しても良好な接着性を示す。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤を前記偏光フィルム、保護フィルム、位相差フィルム、または光学補償フィルムに塗布する際の接着層の厚みは、特に限定されないが、通常は0.01〜20μmが好ましく、0.02〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。接着層の厚みが0.01μm未満であると接着力不足が原因で剥がれが生じやすくなる場合がある。その一方、厚みが20μmを超えると、接着層の透明性が損なわれる場合がある。
【0065】
接着剤層の厚みが0.01〜20μmとなるように均一に塗布できれば、その塗布方法は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースロール法、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロール・ツー・ロール法などが挙げられる。また、塗布前の接着剤温度において、接着剤の粘度と浸透性成分の配合量によって適切に調整できるが、偏光フィルムや保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムの耐熱温度を考量し、20〜80℃であることが好ましい。
【0066】
本発明の偏光板は、前記偏光フィルムと保護フィルム、位相差フィルム、または光学補償フィルムが、活性エネルギー線硬化性接着剤より形成された接着剤層を介して貼り合わされた積層フィルムであり、その製造方法について、特に限定されるものではない。例えば、保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムの片面に接着剤を塗布してから偏光フィルムと貼り合わせる方法、偏光フィルムの片面又は両面に接着剤を塗布してから保護フィルム或いは位相差フィルム、光学補償フィルムと貼り合わせる方法、ロールラミネーターにより偏光フィルムと保護フィルムおよび/または位相差フィルム、光学補償フィルムと貼り合わせる方法が挙げられる。接着剤中の浸透性成分の浸透力が温度に正比例するので、40〜80℃にロールを加熱するか、貼り合わせ後に40〜80℃で0.02〜30分ほど加熱処理することが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、偏光板の作製は、以下の方法により行った。
【0068】
1.UV照射による偏光板の作製
卓上型ロール式ラミネーター機(Royal Sovereign製 RSL−382S)を用いて、2枚の透明フィルム(保護フィルム、位相差フィルム又は光学補償フィルム)の間に偏光フィルムを挟み、透明フィルムと偏光フィルムの間に、実施例または比較例の接着剤を、厚さ2μmになるように貼り合わせた。貼り合わせた透明フィルムの上面から紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製 インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製
M04−L41、紫外線照度:700mW/cm、積算光量:1000mJ/cm)し、偏光フィルムの両側に透明フィルムを有する偏光板を作製した。
2.EB照射による偏光板の作製
上記1.と同様に、卓上型ロール式ラミネーター機、保護フィルム、位相差フィルム又は光学補償フィルムなどの透明フィルム、偏光フィルム及び実施例または比較例の接着剤を用い、貼り合わせを行った。貼り合わせた透明フィルムの上面から電子線を照射(装置:日新ハイボルテージ株式会社製、商品名:キュアトロンEBC−200−AA3、加速電圧:200kV、照射線量20kGy)し、偏光フィルムの両側に透明フィルムを有する偏光板を作製した。
【0069】
また、実施例及び比較例において、接着剤と偏光板の適性評価は、以下の方法により行った。
1.粘度測定
コーンプレート型粘度計(装置名:RE550型粘度計 東機産業株式会社製)を使用し、JIS
K5600−2−3に準じて、25℃で接着剤の粘度を測定した。
2.ぬれ性評価
ぬれ張力はJIS K6768に準拠し、測定した。綿棒に接着剤を含ませて偏光フィルム、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムそれぞれに塗布し、2秒経過した時点で液膜が破れを生じないで、元の状態を維持しているときを「ぬれている」と判定した。
◎:液膜が破れず2秒以上塗布された状態を保っている;
○:液膜が破れず2秒は塗布された状態を保っているが、2秒以上で僅かに動き始める;
△:液膜は破れないが、端が2秒以内に動き始める;
×:液膜が2秒以内に破れ、または全体に収縮を生じる;
3.浸透性評価
浸透性評価は自社法で実施した。綿棒に接着剤を含ませて保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムそれぞれに塗布し、5秒経過した時点で柔らかい布で拭き取り、続いてメタノールを含ませた脱脂綿でさらに拭き取り、塗布面を観察した。
◎:接着剤を塗布していた部分の保護フィルムの白濁(侵食)が確認された;
○:接着剤を塗布していた部分の保護フィルムに僅かに白濁が確認された;
△:接着剤を塗布していた部分の保護フィルムに接着剤塗布の薄い跡が確認された;
×:接着剤を塗布していた部分が塗布前後で全く変わらない;
4.剥離強度
温度23℃、相対湿度50%の条件下、20mm×150mmに裁断した偏光板(試験片)を、引っ張り試験機(島津製作所製 オートグラフAGXS−X 500N)に取り付けた粘着テープ引きはがし試験装置の試験板に両面接着テープを用いて貼り付けた。両面接着テープを貼付していない方の透明保護フィルムと偏光フィルムの一片を、20〜30mm程度あらかじめ剥がしておき、上部つかみ具にチャックし、剥離速度300mm/minにて90°剥離強度(N/20mm)を測定した。
◎:3.0(N/20mm)以上
○:1.5(N/20mm)以上、3.0(N/20mm)未満
△:1.0(N/20mm)以上、1.5(N/20mm)未満
×:1.0(N/20mm)未満
5.表面抵抗率測定
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムに、実施例および比較例で得られた接着液をバーコーター(No.3)を用いて塗布し、フィルムの上面から紫外線を照射(装置:アイグラフィックス製
インバーター式コンベア装置ECS−4011GX、メタルハライドランプ:アイグラフィックス製 M04−L41、紫外線照度:700mW/cm、積算光量:1000mJ/cm)し、表面抵抗率測定用フィルムを得た。続いて、温度23℃、相対湿度50%の条件下、110mm×110mmに裁断し、表面抵抗率測定用試験片を得、JIS
K 6911 に基づき、デジタルエレクトロメーター(R8252型:エーディーシー社製)を用いて表面低効率を測定した。
6.外観
得られた偏光板の透明性を目視によって観察し、下記基準で評価した。
◎:偏光板の表面に微小なスジも凹凸ムラも確認できない;
○:偏光板の表面に部分的に微小なスジが確認できる;
△:偏光板の表面に微小なスジや凹凸ムラが確認できる;
×:偏光板の表面に明らかなスジや凹凸ムラが確認できる;
7.透明性(ヘイズ値)
得られた偏光板をヘイズメーター(日本電色工業製 ヘイズ計NDK2000)を用いてヘイズ値を測定し、下記基準で評価した。
◎:実用上全く問題がない。ヘイズ:0.5未満;
○:曇り等は認められないが、ヘイズ:0.5以上1未満;
△:若干曇りが認められる。ヘイズ1以上3未満;
×:曇りが認められ、実用上問題がある。あるいは、ヘイズ:3以上;
8.耐熱性(ガラス転移温度(Tg)測定)
耐熱性の指標として、ガラス転移温度(Tg)を測定した。Tgは80℃以上、好ましくは100℃以上である。測定方法は以下の通り。
各例で用いた接着液をPETフィルムに塗工し、その上に別のPETフィルムを貼り合わせた後、上記の偏光板作製と同じ条件で紫外線を照射して接着液を硬化させ、接着層を形成した。得られた接着層から10mgを取り出し、アルミニウムパンに入れて密封し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、EXSTAR
6000)を用いて、10℃/minの昇温速度で測定した。
9.耐水性
得られた偏光板を20×80mmに切断し、60℃の温水に48時間浸漬した後、偏光子と保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムとの界面における剥離の有無を確認した。判定は下記の基準で行った。
◎:偏光子と保護フィルムとの界面で剥離なし(1mm未満)
○:偏光子と保護フィルムとの界面の一部に剥離あり(1mm以上、3mm未満)
△:偏光子と保護フィルムとの界面の一部に剥離あり(3mm以上、5mm未満)
×:偏光子と保護フィルムとの界面で剥離あり(5mm以上)
10.耐久性
得られた偏光板を150mm×150mmに裁断し、冷熱衝撃装置(エスペック社製TSA−101L−A)に入れ、−40℃〜80℃のヒートショックを各30分間、100回行い、下記基準で評価した。
◎:クラックの発生なし;
○:端部にのみ5mm以下の短いクラックの発生あり;
△:端部以外の場所にクラックが短い線状に発生している。しかし、その線により偏光板が2つ以上の部分に分離してはいない;
×:端部以外の場所にクラックの発生あり。その線により、偏光板が2つ以上の部分に分離している;
【0070】
実施例及び比較例に用いた材料は以下の通りである。また、以下において、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
「HEAA」:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人製)
N−MHEAA:N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(株式会社興人製)
HEMAA:N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド(株式会社興人製)
「DMAA」:N,N−ジメチルアクリルアミド(株式会社興人製)
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド(株式会社興人製)
「ACMO」:アクリロイルモルホリン(株式会社興人製)
NVP:1−ビニル−2−ピロリドン
「DMAPAA」:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)
DMAPMA:ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
「DMAEA」:ジメチルアミノエチルアクリレート(株式会社興人製)
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAEA−TFSIQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
DMAEA−TFSI(B)Q:アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
M−102:テトラエチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM−102)
VOZO:ビニルオキサゾリン
PE:フェノキシエチルアクリレート
GA:グリシジルアクリレート
AAAm:N−アリルアクリルアミド
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
CN2302:ハイパーブランチ体ポリエステルアクリレート(サートマー社製)
CN2304:ハイパーブランチ体ポリエステルアクリレート(サートマー社製)
HDDA:1,6−キサンジオールジアクリレート
PTMGA250:ポリテトラメチレングルコールジアクリレート(共栄社化学社製)
BP−4EAL:ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製)
STAR−501:ハイパーブランチポリマー(大阪有機化学工業株式会社製)
KSPU−3:ポリウレタンアクリレート(根上工業株式会社製)
UV6640B:ポリウレタンアクリレート(日本合成化学製)
UV7600B:ポリウレタンアクリレート(日本合成化学製)
アロニックスM−8560:ポリエステルアクリレート(東亞合成株式会社)
UV−3640PE80:ポリウレタンアクリレート(日本合成化学製)
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
A−9300:トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業株式会社製)
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
サンデュレンSD−014:カネカ社製のアクリル系保護フィルム
アートンR5000:JSR(株)製の環状オレフィン系保護フィルム
n−TAC:(株)コニカミノルタオプト製のセルロースエステルを主成分とする高分子を用いた位相差フィルム
WV−SA:富士フィルム(株)製のTACフィルム上にディスコティック液晶がコーティングされてなる光学補償フィルム
【0071】
実施例1
(A)「HEAA」55重量部、(B)DMAA 33重量部および(C)CN2302 10重量部及びUV−3640PE80 2重量部を混合して活性エネルギー線硬化性接着剤を調製した。これに、紫外線硬化できるように光重合開始剤としてBASF社(旧チバ・スペシャルティーケミカルズ)製、商品名Darocure1173、3重量部とIrgacure907 1重量部を加え、均一に混合し、このようにして得られた接着剤を用い、上記の方法にて粘度測定、偏光板作製及び偏光板評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
実施例2〜16
実施例1において、活性エネルギー線硬化性接着剤の調製にあたり、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物(重合性多官能化合物)および重合性第3級アミン化合物、イオン性ビニルモノマーなどの組成物の種類またはそれらの配合量を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。また、同様に粘度測定、偏光板作製と偏光板評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例17〜20
活性エネルギー線硬化性接着剤の調製にあたり、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)末端或いは側鎖にビニル基二つ以上を有する直鎖状化合物および/または分岐状化合物(重合性多官能化合物)、重合性第3級アミン化合物、イオン性モノマー、その他モノマーの種類、またはそれらの配合量を表1に示すように計量、均一に混合し、光重合開始剤を添加せず、電子線硬化性接着剤を調製した。その後、得られた接着剤を用い、上記の方法にて粘度測定、電子線硬化による偏光板作製及び偏光板評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
比較例1〜10
実施例1において、紫外線硬化性接着剤の調製にあたり、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)重合性多官能化合物、重合性第3級アミン化合物、イオン性モノマー、その他モノマーの種類、またはそれらの配合量を表2に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。また、同様に粘度測定、偏光板作製と偏光板評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
比較例11〜13
実施例17において、電子線硬化性接着剤の調製にあたり、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)重合性多官能化合物、重合性第3級アミン化合物、イオン性モノマー、その他モノマーの種類、またはそれらの配合量を表2に示すように変えたこと以外は実施例17と同様にして偏光板を作製した。また、同様に粘度測定、偏光板作製と偏光板評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例と比較例の結果から、本発明の接着剤は(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを十分に含有しない場合、PVA系偏光フィルムに対するぬれ性が著しく悪くなり、一方、(B)N,N−ジアルキルアクリルアミドと(C)重合性多官能化合物のいずれか一方だけしか含有しない場合、保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムに対する浸透性、ぬれ性が低く、耐久性や耐水性も不十分となった。
そのため、本発明の接着剤は、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)重合性多官能化合物を特定の範囲内に配合しなければ、PVA系偏光フィルムおよび保護フィルムなどに対してぬれ性、密着性、塗工作業性等が同時に満足できず、その結果、接着ムラが発生しやすくなり、接着層の接着強度や偏光板の透明性、耐水と耐久性などの物性が十分に満足できるレベルにならない。即ち、(A)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(B)N,N−ジアルキルアクリルアミド、(C)重合性多官能化合物を主成分として一定の範囲の割合で含有する本発明の接着剤は、PVA系偏光フィルムおよび保護フィルムなどに対してぬれ性に優れ、高硬化速度を有し、作業性がよく、得られた偏光板の剥離強度(接着力)および透明性が高く、耐水性と耐久性も同時に満足できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明してきたように、本発明の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤組成物および接着剤は、主成分としてN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとN,N−ジアルキルアクリルアミド、重合性多官能化合物とから構成されており、PVA系偏光フィルム、各種保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムに対して優れた浸透性やぬれ性、密着性を有し、低粘度で塗工作業性が良く、接着ムラが発生せず、高接着強度と優れた透明性を併せ持ち、高硬化速度を有する。また、必要に応じて重合性第3級アミン化合物、イオン性ビニルモノマー、その他モノマー、活性エネルギー線重合開始剤、各種熱可塑性樹脂組成物および各種汎用の添加剤を混合して使用することにより、保護フィルムや位相差フィルム、光学補償フィルムの材質を任意の材料から選択することも可能である。本発明の偏光板用活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて製造した偏光板は、透明性、耐水性、耐久性、耐熱性などの性質を兼ね備えているため、各種の光学用途に好適に用いることができる。