(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランク軸1回転につき一定の歯数のパルスを検出する第1センサと、クランク軸1回転につき1パルスを検出する第2センサと、クランク軸2回転につき1回パルスを検出する第3センサとを備え、前記第3センサからの信号に基づいて燃料噴射の開始タイミングを制御するように構成された4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置であって、
前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に前記第3センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定する第3センサ検出信号異常判定手段と、
エンジン始動時に圧縮空気でエンジンを回転させるエアランを行い所定回転数に上昇させ、且つオペレータによる燃料による運転指令がONになった場合に開始される燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定手段と、
前記噴射開始後運転判定手段によって前記燃料噴射開始後の運転状態であると判定した場合において、前記第3センサ検出信号異常判定手段によって、該第3センサの検出信号に乱れがあると判定した場合に、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続する運転継続手段と、
を備えたことを特徴とする4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置。
クランク軸1回転につき一定の歯数のパルスを検出する第1センサと、クランク軸1回転につき1パルスを検出する第2センサと、クランク軸2回転につき1回パルスを検出する第3センサとを備え、前記第3センサからの信号に基づいて燃料噴射の開始タイミングを制御するように構成された4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置の制御方法であって、
前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に前記第3センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定する第3センサ検出信号異常判定ステップと、
エンジン始動時に圧縮空気でエンジンを回転させるエアランを行い所定回転数に上昇させ、且つオペレータによる燃料による運転指令がONになった場合に開始される燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定ステップと、
前記噴射開始後運転判定ステップによって前記燃料噴射開始後の運転状態であると判定した場合において、前記第3センサ検出信号異常判定ステップによって、該第3センサの検出信号に乱れがあると判定した場合に、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続する運転継続ステップと、
を備えたことを特徴とする4サイクルエンジンの燃料噴射制御方法。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射装置を備えた4サイクルエンジンにおいては、クランク軸1回転につき一定の歯車数だけパルスを発する速度(SPEED)検出と、同じくクランク軸1回転につき1パルスを発する上死点(TDC)検出と、クランク軸2回転につき1回パルスを発するフェイズ検出と組み合わせた燃料噴射制御装置を有する場合がある。
【0003】
例えば、フェイズ検出パルスから次のフェイズ検出パルスまでの間にクランク軸が2回転するため、この間に計測されるべき速度検出パルス数は歯車数の2倍であることを確認するなど、各種チェックにより正常を確認しつつ燃料噴射(エンジン運転)をしている。
このように、エンジンの各部分(センサ)の作動状況を機関内に設けられた他のセンサにより発生されるパルスにより正常であるか否かを確認する技術として、特許文献1(特開平8−189409号公報)のような技術が知られている。
【0004】
かかる4サイクルエンジンにおいては、フェイズ検出は燃料噴射の開始タイミングにおいてのみ必須であり、以降はフェイズ信号が喪失しても燃料噴射(エンジン運転)を継続すること自体は可能である。
しかしながら、フェイズ検出パルスが乱れてパルスが欠落したり余計に入ったりした場合には同パルス間の速度検出パルス数が歯車数の2倍でなくなるため、機関に異常が発生したと判断して燃料噴射(エンジン運転)を停止しているのが一般的である。
【0005】
なお、特許文献1(特開平8−189409号公報)の他に、特許文献2(特開2009−2193号公報)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、センサの故障によりパルスに異常が起こった場合に、たとえセンサ系以外の部分(動力系など)が正常に稼働していてエンジンの運転自体には問題がない場合であっても、結果としてエンジンの運転が停止し、例えば、発電用のエンジンの場合にあっては発電機が停止してしまい、発電機の稼働率が低下するという事態を招く問題があった。
【0008】
また、前記特許文献1はセンサの異常の有無を他のセンサの信号を基に判定するものであり、特許文献2はエンジンの始動性の悪化を防止するものであり、エンジンの運転に支障がない場合には、エンジンの停止までは行わずに、運転を継続されるようにすることまでは開示されていない。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、例えばセンサの故障よってフェイズ検出パルスの乱れが生じた場合であってもエンジンの運転に支障がない場合にはエンジンの運転を継続する、4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明は、クランク軸1回転につき一定の歯数のパルスを検出する第1センサと、クランク軸1回転につき1パルスを検出する第2センサと、クランク軸2回転につき1回パルスを検出する第3センサとを備え、前記第3センサからの信号に基づいて燃料噴射の開始タイミングを制御するように構成された4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置であって、前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に前記第3センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定する第3センサ検出信号異常判定手段と、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定手段と、噴射開始後運転判定手段によって噴射開始後運転を判定した場合において、前記第3センサ検出信号異常判定手段によって、該第3センサの検出信号に乱れがあると判定した場合に、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続する運転継続手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定手段によって燃料噴射開始後の運転であると判定した場合には、前記第3センサ検出信号異常判定手段によって、例えば該第3センサの故障よってフェイズ検出パルスの乱れが生じた場合であっても、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続することができる。
【0012】
すなわち、最初の燃料噴射条件が成立して、噴射開始した後においては、第3センサからの信号を用いなくても、第1センサまたは第2センサからの信号を用いても燃料噴射タイミングを算出可能であるため、その信号によって燃料噴射を継続できるので、第3センサが故障等の異常時において、第3センサ検出信号が異常であると判定したことだけではエンジンを停止する必要はなく、継続運転をしてもエンジンの健全な運転には支障を生じない。
【0013】
従って、運転継続手段によってエンジンの継続運転が可能になるので、エンジン稼働率の低下を防止でき、発電機用のエンジンの場合であっては、発電を停止することなく発電を維持でき、電力の安定供給を行うことができる。
【0014】
従来技術においては、
図1の燃料噴射オン・オフのグラフにおける点線部分で示すように、燃料噴射を開始して運転継続中に、第3センサからの信号(フェイズ検出パルス信号)に乱れがあったことをP1の時点、またはP2の時点で判定した場合には、燃料噴射を停止(エンジン停止)している。このためエンジンの稼働率が悪化していた。
【0015】
本発明の燃料噴射制御装置では、
図1の燃料噴射オン・オフのグラフにおいて実線で示すように、所定の条件(例えば、始動用の圧縮空気がシリンダ内に入りピストンを押し下げてエンジンを回転せしめること、運転指令がオンになること、機関速度が80rpmを超えること)が成立して燃料の噴射が開始された後は、たとえ第3センサからの信号(フェイズ検出パルス信号)の乱れ(欠落または過剰)が生じた場合であっても、燃料噴射をオフにせず、エンジンの運転が継続される。このため、本発明においては、エンジンの稼働率が低下することなく維持することができる。
【0016】
なお、具体的には、前記第1センサはクランク角を検出する速度検出センサであり、前記第2センサは上死点を検出する上死点検出センサであり、前記第3センサはカムシャフトに取り付けられてカムシャフトの1回転毎に1パルスを検出するフェイズ検出センサである。
そして、前記第3センサ検出信号異常判定手段は、前記フェイズ検出センサからの連続する2つの信号の間の前記速度センサからのパルス数が規定数であるかを判定して前記フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定する。
【0017】
このように、フェイズ検出センサからの連続する2つの信号の間の前記速度センサからのパルス数が規定数であるかを判定することによって、フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定することで、例えば、フェイズ検出センサが故障しているかを判定できる。
【0018】
また、前記第3センサ検出信号異常判定手段は、前記フェイズ検出センサからの連続する2つの信号の間の前記上死点センサからのパルス数が規定数であるかを判定して前記フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定してもよい。
【0019】
このように、前記フェイズ検出センサからの連続する2つの信号の間の前記上死点センサからのパルス数が規定数であるかを判定することによって、フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定してもよい。
【0020】
また、本発明において、好ましくは、前記前記フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあると判定した時には、前記運転継続手段によってエンジンの運転を継続させつつ、警報を発する警報手段を備えるとよい。
【0021】
このような構成によって、フェイズ検出センサの検出信号に乱れがあると判定した時に発せられる警報に基づき、次回のメンテナンス時に異常対策の対応が可能となる。例えば故障したフェイズ検出センサの交換等の処置が可能となる。
【0022】
また、本発明は、クランク軸1回転につき一定の歯数のパルスを検出する第1センサと、クランク軸1回転につき1パルスを検出する第2センサと、クランク軸2回転につき1回パルスを検出する第3センサとを備え、前記第3センサからの信号に基づいて燃料噴射の開始タイミングを制御するように構成された4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置の制御方法であって、前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に前記第3センサの検出信号に乱れがあるか否かを判定する第3センサ検出信号異常判定ステップと、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定ステップと、噴射開始後運転判定手段によって噴射開始後運転を判定した場合において、前記第3センサ検出信号異常判定ステップによって、該第3センサの検出信号に乱れがあると判定した場合に、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続する運転継続ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このように、本発明の4サイクルエンジンの燃料噴射制御方法にかかる発明によれば、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定ステップによって噴射開始後の運転であると判定した場合には、前記第3センサ検出信号異常判定ステップによって、該第3センサの検出信号に乱れがあると判定した場合であっても、エンジンを停止せずに前記第1センサまたは前記第2センサからの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続できる。
【0024】
すなわち、最初の燃料噴射条件が成立して、噴射開始した後においては、第3センサからの信号を用いなくても、第1センサまたは第2センサからの信号を用いても燃料噴射タイミングを算出可能であるため、その信号によって燃料噴射を継続できるので、第3センサが故障等の異常時において、第3センサ検出信号が異常であると判定したことだけではエンジンを停止する必要はなく、継続運転をしてもエンジンの健全な運転には支障を生じない。
【0025】
従って、運転継続手段によってエンジンの継続運転が可能になるので、エンジン稼働率の低下を防止でき、発電機用のエンジンの場合であっては、発電を停止することなく発電を維持でき、電力の安定供給を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、ひとたび燃料噴射が開始すれば、フェイズ検出パルスが乱れても燃料噴射を継続できる。さらに、フェイズ検出パルスが乱れた場合は、警報に基づき、次回に機関運転を停止する機会に異常対策する等の対応が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施形態について詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定の記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明にすぎない。
【0029】
図3は、本発明に係る実施形態による4サイクルエンジンの燃料噴射制御装置1の構成を示す構成図である。
4サイクルエンジンは、定置発電用のエンジンであり、燃料噴射制御装置1は、該エンジンの燃料噴射装置2への噴射タイミング、噴射量等の燃料噴射に関する指令値を制御する。
【0030】
この燃料噴射制御装置1は、速度検出センサ(第1センサ)3からの速度検出パルス信号、上死点検出センサ(第2センサ)5からの上死点検出パルス信号、フェイズ検出センサ(第3センサ)7からのフェイズパルス信号がそれぞれ入力されている。さらに、エンジンを燃料で運転させるための運転指令がオペレータの運転指令スイッチ9のON、OFF操作によって発せられて、その信号が入力される。
【0031】
また、速度検出センサ3または上死点検出センサ5からの信号を基にフェイズ検出センサ7の検出信号に乱れがあるか否かを判定するフェイズ検出パルス乱れ判定手段11が設けられている。
【0032】
さらに、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定する噴射開始後運転判定手段13と、該噴射開始後運転判定手段13によって噴射開始後運転を判定した場合において、前記フェイズ検出パルス乱れ判定手段11によって、フェイズ検出センサ7の故障等によって、検出信号に乱れがあると判定した場合には、エンジンを停止させずに速度検出センサ3または上死点検出センサ5からの信号を基に燃料噴射タイミングを算出してエンジンの運転を継続する運転継続手段15と、を備えている。
さらに、フェイズ検出センサ7の検出信号に乱れがあると判定した時には、前記運転継続手段15によってエンジンの運転を継続させつつ、警報を発してオペレータに注意を喚起する警報手段17を備えている。
【0033】
速度検出センサ3は、
図4(A)に示すように、クランク軸1回転につき一定の歯数のパルスを検出してクランク角度を検出するセンサである。また、速度検出センサ3は、クランク軸に取り付けられたフライホイール19の外周面、またはクランク軸に取り付けられ速度検出用の円板の外周面に形成された歯21に対向する位置に設置され、歯21の数に対応するパルスを発生して、歯の数に応じてクランク角度を検出する。
【0034】
上死点検出センサ23は、
図4(A)に示すように、燃焼室内のピストンが上死点に位置する時を検出するセンサである。前記クランク角度を検出する歯21に並設されて歯25が設けられ(
図4(B)参照)、クランク軸が1回転する間にピストンの上死点に対応する一つのパルスを検出するようになっている。
【0035】
フェイズ検出センサ7は、
図5に示すように、カムシャフト27の1回転毎に1パルス発する歯29を検出するものであり、4サイクルエンジンにおいては、カム軸はクランク軸が2回転する間に1回転するので、噴射タイミングを検出するための信号を検出するようになっている。
【0036】
次に、噴射開始後運転判定手段13、フェイズ検出パルス乱れ判定手段11、運転継続手段15について説明する。
【0037】
まず、噴射開始後運転判定手段13は、燃料噴射開始後の運転状態であるか否かを判定するものであり、エンジンが始動して最初の燃料噴射条件が成立して、噴射開始した後であるか否かを判定する。
すなわち、本エンジンにあっては、エンジン始動時には、着火タイミングの順序に従って各シリンダ内にピストンを押し下げるように圧縮空気を供給して、圧縮空気でエンジンを回転させるエアランを行い、所定回転数、例えば80rpmまで上昇させ、且つオペレータによる燃料による着火運転の運転指令がONになった場合に、燃料噴射が開始されるようになっている。
従って、その噴射条件が成立したときに燃料による自立運転が開始されるので、この噴射成立条件が成立しているかを判定することで噴射開始後運転であるか否かを判定することができる。
【0038】
この始動時の運転状況の時間経過を
図1のタイムチャートに示す。
まずt0で始動開始の信号が入ると、前述のように圧縮空気でエンジンを回転させるために各シリンダへ着火順序に従って始動空気の供給が開始されてエアランを開始する。その後、t1で運転指令スイッチ9からON信号が入り、さらに、t2で始動空気をOFFにしてエンジン回転数がその後、例えば80rpmに上昇した時点t3で、燃料噴射を開始する。
t3で燃料噴射を開始後は、運転指令スイッチ7からのOFF信号が入力されるt4まで燃料噴射によってエンジン回転が略750rpmに維持されて運転される。
【0039】
フェイズ検出パルス乱れ判定手段(第3センサ検出信号異常判定手段)11は、4サイクルエンジンのカム軸の回転に連動して、シリンダ内のピストンが圧縮上死点に位置したタイミングであり、かつ噴射タイミングにおいて発せられるフェイズ検出パルスの乱れの有無を判断する。
図3に示すように、フェイズ検出パルス乱れ判定手段11は、フェイズ間速度パルス判定手段31およびフェイズ間上死点パルス判定手段33によって構成される。
【0040】
4サイクルエンジンにおいては、カム軸はクランク軸が2回転する間に1回転するので、クランク軸の回転に連動して発生する速度検出パルスがクランク軸に固定されたフライホイールの歯の歯数の2倍の回数を発生する間に、カム軸の回転に連動して発生するフェイズ検出パルスは1回発生するのが正常であり、そうでない場合は異常と判断する。
フェイズ間速度パルス判定手段31は、かかる異常を判定する目的を有している。
【0041】
また、カム軸はクランク軸が2回転する間に1回転するので、クランク軸が2回転して2回上死点パルスをカウントする間に、カム軸の回転に連動して発生するフェイズ検出パルスは1回発生するのが正常であり、そうでない場合は異常と判断する。
フェイズ間速度上死点パルス判定手段33は、かかる異常を判定する目的を有している。
【0042】
なお、フェイズ検出パルス乱れ判定手段11は、フェイズ間速度パルス判定手段31とフェイズ間上死点パルス判定手段33との両方を備えなくても、いずれか一方を備え、フェイズ間速度パルス判定手段31またはフェイズ間上死点パルス判定手段33がフェイズ検出パルスの欠落または過剰があったと認識した場合にフェイズ検出パルスの乱れがあったと判断してもよい。
【0043】
図2にフェイズ検出パルス(Phaseパルス)の欠落または過剰があった場合の例を示す。
図2(A)は、フェイズ検出パルスに欠落があった場合を示し、
図2(B)は、フェイズ検出パルスに過剰があった場合を示す。なお、
図2(A)は低回転時の速度パルス(SPEEDパルス)状態を示し、
図2(B)は高回転時の速度パルス状態を示しており、速度パルス間隔の大小で表している。
【0044】
フェイズ間速度パルス判定手段31は、一の速度検出パルスが発生した時点から、その後にフライホイールの歯の歯数の2倍の回数の速度検出パルスが発生した時点までの間に発生したフェイズ検出パルスの数が0であった場合にフェイズ検出パルスの欠落があったと認識し、かつ、該発生したフェイズ検出パルスの数が2以上であった場合にフェイズ検出パルスの過剰があったと判定する。
【0045】
フライホイールの歯の数がN=184(SPEEDパルス規定数)である場合を例に示すと、フェイズ間速度パルス判定手段31は、
図2(A)(B)のフェイズ検出パルスの正常のように、一の速度検出パルスが発生してからその後速度検出パルスが184の2倍である2N=368回発生するまでの間にフェイズ検出パルスが1回発生していれば正常であると認識し、フェィズ検出パルスの異常のように、その間にフェイズ検出パルスが1回も発生していない場合はフェイズ検出パルスの欠落があったと認識する。
その間にフェイズ検出パルスが2回以上発生している場合はフェイズ検出パルスの過剰があったと判定する。
【0046】
フェイズ間上死点パルス判定手段33についても同様であり、4サイクルエンジンのシリンダ内のピストンが上死点に位置したタイミングで発生する上死点検出パルスの発生のタイミングとフェイズ検出パルスの発生のタイミングとに基づいてフェイズ検出パルスの欠落または過剰があったと判定する。
【0047】
例えば、フェイズ間上死点パルス判定手段33は、一の上死点検出パルスが発生した時点から、その後さらに2回上死点検出パルスが発生した時点までの間に発生したフェイズ検出パルスの数が0であった場合にフェイズ検出パルスの欠落があったと認識し、かつ、該発生した前記フェイズ検出パルスの数が2以上であった場合に前記フェイズ検出パルスの過剰があったと判定する。
【0048】
次に、運転継続手段15について説明する。この運転継続手段15は、前記フェイズ検出パルス乱れ判定手段11によって、例えば、フェイズ検出センサ7の故障や、フェイズ検出センサ7の劣化や、または、パルス信号を発生せしめる歯が何らかの原因で欠損した場合等において、フェイズ検出センサ7の検出信号に乱れが生じたと判定した場合に、エンジンを停止させずに速度検出センサ3または上死点検出センサ5からの信号を基に燃料噴射タイミングを算出して、エンジンを停止せずに継続運転するものである。
【0049】
すなわち、最初の燃料噴射タイミングが完了した後においては、フェイズ検出センサ7からの信号を用いなくても、速度検出センサ3または上死点検出センサ5からの信号を用いて燃料噴射タイミングを算出可能である。そのため、エンジンが一度燃料噴射運転を開始すればフェイズ検出センサ7が、例えば故障しただけによっては、エンジンを停止する必要はなく、継続運転をしてもエンジンの健全な運転には支障を生じない。
【0050】
従って、エンジンの継続運転によって稼働率を低下することなく維持でき、発電機用のエンジンの場合であっては、発電を停止することなく発電を維持でき、電力の安定供給を行うことができる。
【0051】
次に、
図6のフローチャートを参照して、制御フローについて説明する。
まず初めに、エンジンの始動が開始されると、図示されないが、
図1(B)に示すように始動空気が供給されてエアランが開始される。そして、ステップS1〜S3で、速度検出センサ3による速度検出パルス、上死点検出センサ5による上死点検出検出パルス、フェイズ検出センサ7によるフェイズ検出パルスが、それぞれ入力される。
【0052】
次に、ステップS10で運転指令スイッチ9からの信号がONになっているか否かが判定され、ONであれば燃料噴射による運転指令がありと判断する。
そして、ステップS20でエンジンの回転数が80rpm以上であるか否かが判定される。ステップS10、S20でNOの場合には、ステップS1に戻って繰り返される。
ステップS20で、エンジン回転数が80rpm以上になった場合には、ステップS30で、燃料噴射が開始される。
【0053】
その後、ステップS40で、ステップS1〜S3と同様の速度検出パルス、上死点検出検出パルス、フェイズ検出パルスが再度入力される。
そして、ステップS50で運転指令がオンであり、かつ、ステップS60でエンジン回転数が80rpm以上であれば燃料噴射を継続する。ステップS50、S60でNOの場合には、ステップS120に進み燃料噴射を停止してエンジンを停止する。
【0054】
次に、ステップS60で、エンジン回転数が80rpm以上で燃料噴射を継続している場合にはステップS70に進み、上死点検出パルスと速度パルスのタイミングに基づいて速度パルスの異常を判定して、速度検出センサ3が異常と判定する。
【0055】
この速度検出センサ3の異常は、上死点検出センサ5からの連続する2つの信号の間に、前記速度検出センサ3からのパルス数が規定数でないとき、速度検出センサ3は異常と判定して、燃料噴射を停止してエンジンを停止する。速度検出センサ3の異常を確実に判定でき、そしてエンジンを停止できる。
また、速度検出センサ3の異常を確実に判定できることによって、後述するフェイズ検出センサ7の検出信号に乱れがあるか否かの判定の信頼性を高めることができる。
【0056】
具体的には、フライホイールの歯の数がN=184である場合には、上死点検出センサ5からの連続する2つの信号の間のパルス数が184個でない場合には、速度検出センサ3の異常と判定して、エンジンを停止する。これによってエンジン運転に悪影響を与える運転を確実に防止できる。
【0057】
次に、ステップS70で、速度検出センサ3に異常がない場合には、ステップS80に進み、ここで、フェイズ検出センサ7の検出信号に乱れがあるか否かを、速度検出センサ3からの速度検出パルス数を基にフェイズ間速度パルス判定手段31によって判定する。
【0058】
さらに、ステップS80で異常と判定しない場合には、ステップS90に進んで、ここで、フェイズ検出センサ7の検出信号に乱れがあるか否かを、上死点検出センサ5からの上死点検出パルス数を基にフェイズ間上死点パルス判定手段33によって判定する。
【0059】
ステップS80、ステップS90で、それぞれNOと判定した場合には、フェイズ間速度パルス判定手段31によって、またはフェィズ間上死点パルス判定手段33によって検出パルスの欠落または過剰があったと判定して、ステップS110で警報手段17が作動して警報を行い、警報後はステップS100によって運転継続手段15が作動して、フェイズ検出パルス信号を使用せずに運転継続を行うように制御される。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、速度検出センサ3に異常がある場合には、即時に燃料噴射を停止して、エンジンの作動を停止することで、エンジンの安定かつ安全な運転が確保される。
【0061】
さらに、フェィズ検出センサ7による検出信号に乱れが生じて、運転開始後に異常が生じた場合には、速度検出センサ3、または上死点検出センサ5からの信号で噴射タイミングを算出できるため、すなわち、最初に燃料噴射を開始して、作動しているため、最初の噴射タイミングからクランク軸の回転で2回転目、すなわち、速度検出センサ3の信号で720度目として設定でき、または上死点検出センサ5を用いる場合には、上死点検出センサ5の検出時点から速度検出センサ3によって何度目というように噴射タイミングを設定可能であるので、フェイズ検出センサ7が故障等によって、検出信号に乱れが生じもエンジンを停止する必要はなく、運転継続手段15によって、フェイズ検出センサ7の検出信号を用いない運転に切り替えて運転でき、運転継続手段15によって、フェイズ検出センサ7を用いないでの運転に切り替えて運転されてもエンジンの健全な運転には支障を生じない。
【0062】
従って、運転継続手段によってエンジンの継続運転が可能になるので、エンジン稼働率の低下を防止でき、発電機用のエンジンの場合であっては、発電を停止することなく発電を維持でき、電力の安定供給を行うことができる。