(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ギヤモータは、クレーンなどの大型可動装置の足回りやベルトコンベヤのローラ駆動などに用いられており、その適用範囲は広い。ギヤモータは一般に原動機と減速機とを備えており、減速機の出力シャフトに相手機械の被駆動シャフトを取り付けて使用される。
【0003】
例えば特許文献1には、海岸における自走クレーンの連結式のホイールキャリッジが開示されている。特許文献1の主に
図14、
図15を参照すると、このホイールキャリッジでは、並んで配置された2つの車輪でひとつのユニットが構成され、各車輪は対応するギヤモータにより駆動されていると認められる。この場合、通常、車輪は比較的重いので、駆動時にギヤモータ自体が回転しないようにギヤモータに回転反力を与える手段を設ける必要がある。
【0004】
そのような回転反力を与える手段として、従来では、ギヤモータの筐体にトルクアームを取り付け、そのトルクアームの回転を制限することで必要な回転反力を与えることが知られている。特許文献1に記載のホイールキャリッジでは2台のギヤモータが並んで配置される。このような状況において、従来では、隣り合うギヤモータのトルクアーム同士をボルトで共締めし、回転反力を打ち消し合うことでトルクアームの回転を制限することが多い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る走行機構2の斜視図である。
図2は、走行機構2の側面図である。本例では、走行機構2は、有軌道のトランスファークレーンの車輪およびその周辺部分である。走行機構2は、トランスファークレーンのボディの一部であるフレーム118と、水平方向に並んで配置された2台のギヤモータ100、108と、水平方向に並んで配置された2つの車輪124、126と、回転防止部材120と、を備える。
【0014】
2つの車輪124、126はそれぞれ、地上に敷かれたレール(不図示)に対応し、そのレールの上を転がる。各ギヤモータは、2つの車輪124、126のうちの対応する車輪を回転駆動する。特に第1ギヤモータ100は第1車輪124を回転させるべく第1車輪124のシャフト(不図示)に取り付けられる。第2ギヤモータ108は第2車輪126を回転させるべく第2車輪126のシャフト(不図示)に取り付けられる。
【0015】
第1ギヤモータ100は、第1モータ102と、第1減速機104と、を含む。第1モータ102は電動モータである。第1減速機104は直交減速機であり、入力シャフトは出力シャフトと略直交する。
【0016】
第1減速機104は、原動機としての第1モータ102と被動機としての第1車輪124との間に位置する。第1減速機104は、第1モータ102の回転を第1車輪124に伝達する。この際、第1減速機104は、第1モータ102によって第1減速機104の入力シャフト(不図示)に提供される回転速度およびトルクを、第1車輪124に必要な回転速度およびトルクに変換し、第1減速機104の出力シャフト(不図示)を介して第1車輪124のシャフトに与える。
【0017】
第1減速機104の出力シャフトは第1車輪124のシャフトと機械的に連結される。出力シャフトはホロー型、第1車輪124のシャフトはソリッド(中実)型であってもよいし、その逆であってもよい。特に出力シャフトは、第1車輪124のシャフトに対する相対的な回転が制限されるように第1車輪124のシャフトに連結される。このような連結は例えばキー/キー溝を使用した係合により実現されてもよい。
【0018】
第2ギヤモータ108は、第2モータ110と、第2減速機112と、を含む。第2モータ110、第2減速機112、第2車輪126はそれぞれ、第1モータ102、第1減速機104、第1車輪124と同様に構成される。
【0019】
回転防止部材120は、第1ギヤモータ100が第1車輪124のシャフトの周りで回転することを防止すると共に、第2ギヤモータ108が第2車輪126のシャフトの周りで回転することを防止する。回転防止部材120は、第1ギヤモータ100に固定される第1トルクアーム106と、第2ギヤモータ108に固定される第2トルクアーム114と、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114の両方の回転を阻止可能な位置でフレーム118に固定されるブラケット122と、を含む。
【0020】
第1トルクアーム106は、第1減速機104の筐体にボルトにより固定される筐体固定部106aと、筐体固定部106aから延在する延在部106bと、を有する。延在部106bは、第1車輪124のシャフトが延在する方向を軸方向とするときの半径方向に沿って延在する。特に延在部106bは第1減速機104から第2減速機112に向かう向きに延びる。延在部106bの先端すなわち筐体固定部106aから遠い方の端部は、ブラケット122に遊嵌されている。特に、延在部106bの先端はブラケット122に挿入されるが、その先端はブラケット122またはフレーム118に直接ボルト結合されるわけではない。延在部106bの先端にはボルト用の孔は設けられていない。
【0021】
第1トルクアーム106が第1ギヤモータ100から取り外された場合、第1車輪124のシャフトに対する第1ギヤモータ100の角度位置は不定となる。第1トルクアーム106は、第1ギヤモータ100の角度位置が略一定となるよう、第1ギヤモータ100を支持する。特に第1トルクアーム106は第1ギヤモータ100に回転反力を与える。一例では、第1ギヤモータ100の姿勢は第1トルクアーム106のみによって定まる。第1ギヤモータ100は、第1トルクアーム106、第1車輪124のシャフトおよび第1モータ102への電気配線を除いて、直接外部部材に機械的に固定されていない。
第2トルクアーム114は第1トルクアーム106と同様に構成されており、特に第2トルクアーム114の延在部の先端はブラケット122に遊嵌されている。
【0022】
ブラケット122は第1減速機104と第2減速機112との間に設けられる単一の共通ブラケットであり、第1トルクアーム106と第2トルクアーム114とによって共用される。ブラケット122内で、第1トルクアーム106の(延在部106bの)先端は第2トルクアーム114の先端と半径方向で対向する。特にそれらの先端は隙間をもって直接対向する。
【0023】
図3は、
図2のA−A線断面斜視図である。
図4は、
図3のBで示される部分の拡大図である。
図5は、
図2のA−A線断面図である。
図6は、
図5のCで示される部分の拡大図である。ブラケット122は、阻止部130と、蓋部材132と、2つのゴムシート128a、128bと、複数のボルト134と、を含む。
【0024】
阻止部130は、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114の両方の回転を阻止する。阻止部130は、第1トルクアーム106の先端106cの上向きの移動を制限するようにフレーム118から立設された上側制限部130aと、先端106cの下向きの移動を制限するようにフレーム118から立設された下側制限部130bと、を有する。第1トルクアーム106の先端106cがブラケット122に挿入された場合、先端106cは上側制限部130aと下側制限部130bとによって上下に挟まれる。
【0025】
上側制限部130aの下面および下側制限部130bの上面はいずれも、ブラケット122に挿入された状態の第1トルクアーム106の先端106cと上下方向で対向する。第1ゴムシート128aは、上側制限部130aの下面に接着固定される。第2ゴムシート128bは、下側制限部130bの上面に接着固定される。
第2トルクアーム114の先端と、上側制限部130aおよび下側制限部130bと、2つのゴムシート128a、128bと、の間の関係も上記と同様である。
【0026】
本実施形態においては、第1トルクアーム106の先端106cと第1ゴムシート128aとはそれらの間に隙間を有して対向し、同様に、第1トルクアーム106の先端106cと第2ゴムシート128bとはそれらの間に隙間を有して対向する。第2トルクアーム114についても同様である。このように、ブラケット122に設けられた弾性部材とアーム部材との間に隙間を形成するようにして、アーム部材がブラケット122に挿入されている。ある他の実施形態においては、弾性部材とアーム部材との間に隙間を有することなく、すなわち弾性部材がアーム部材に接触するように、アーム部材がブラケット122に挿入されていてもよい。この場合においても、弾性部材の変形をアーム部材の遊びとして利用することができる。したがって、本明細書において、「遊嵌」とは、アーム部材の回転が制限された状態でアーム部材を回転方向に移動可能にブラケット122に組み込むことをいう。
【0027】
蓋部材132は阻止部130の開口を塞ぐ。蓋部材132は板状の部材であり、複数のボルト134によって上側制限部130aおよび下側制限部130bの両方に固定されている。蓋部材132は、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114の軸方向の移動を制限する。
【0028】
以上のように構成された走行機構2の動作について説明する。
トランスファークレーンのオペレータは、第1モータ102および第2モータ110の電源スイッチをオンにすることにより走行機構2を起動する。第1ギヤモータ100は第1車輪124を回転させ、第2ギヤモータ108は第2車輪126を回転させ、トランスファークレーンはレールに沿って走行する。この際、第1ギヤモータ100自体は第1車輪124のシャフトの周りで回転しようとするが、第1トルクアーム106の先端106cが第1ゴムシート128aまたは第2ゴムシート128bに接触して止まるので、第1ギヤモータ100自体の回転は防止される。第2ギヤモータ108についても同様である。
【0029】
本実施の形態に係る走行機構2によると、第1トルクアーム106の回転を制限するためのブラケットと第2トルクアーム114の回転を制限するためのブラケットとを単一のブラケット122として共通化できる。したがって、各トルクアームに別個のブラケットを設ける場合と比較して、部材点数を削減でき、また組み付け時の作業性も向上する。
【0030】
また、組み付け時には、まず蓋部材132を外した状態のブラケット122に第1トルクアーム106および第2トルクアーム114の各先端を軸方向から挿入し、その後蓋部材132をボルト134で阻止部130に固定する。ここで、トルクアームの先端自体をボルトでフレーム118に対して固定する必要はない。したがって、ボルト締結のための芯出し作業等が不要となり、組み付け時の作業性が向上する。
【0031】
特に、トランスファークレーンなどの大型機械の場合、一般に寸法誤差も比較的大きくなる。このような状況ではトルクアーム同士を最適な位置でボルト締結することは困難である。これに対して本実施の形態に係る走行機構2では、ブラケットにトルクアームを挿入する構成としたので、寸法誤差が比較的大きい場合でもより容易に組み付け作業を行うことができる。
【0032】
また、本実施の形態に係る走行機構2は、ギヤモータの回転反力をゴムシートなどの弾性体を有したブラケットで受ける構成を有する。したがって、弾性体を介してギヤモータの角度位置が決まるので、各部材に余計な力や無理な力が加わりにくくなる。
【0033】
以上、実施の形態に係る走行機構の構成および動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0034】
図7は、第1変形例に係るブラケット222の断面斜視図である。
図7は
図4に対応する。ブラケット222は、実施の形態に係る蓋部材132と阻止部130とを一体化してフレーム218とは別部材とした構成に相当する。
【0035】
図8は、第2変形例に係るブラケット322の断面斜視図である。
図8は
図4に対応する。ブラケット322は、阻止部330と、蓋部材332と、2つのゴムシート128a、128bと、複数のボルト334と、を含む。阻止部330は、実施の形態の下側制限部130bに対応する。蓋部材332は門型の部材であり、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114のそれぞれの先端の上向きの移動および軸方向の移動を制限する。蓋部材332は複数のボルト334によって阻止部330に固定されている。
【0036】
図9は、第3変形例に係るブラケット422の断面斜視図である。
図9は
図4に対応する。ブラケット422は、阻止部430と、蓋部材432と、2つのゴムシート128a、128bと、複数のボルト434と、を含む。阻止部430は断面が略L字状の部材であり、フレーム418から立設される。阻止部430は、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114のそれぞれの先端の下向きの移動および軸方向の移動を制限する。蓋部材432は阻止部430の形状に対応する略L字状の部材であり、第1トルクアーム106および第2トルクアーム114のそれぞれの先端の上向きの移動および軸方向の移動を制限する。蓋部材432は複数のボルト434によって阻止部430に固定されている。
【0037】
図10は、第4変形例に係る回転防止部材のブラケット522の断面図である。
図10は
図6に対応する。本変形例に係る回転防止部材では、第1トルクアーム506の先端506cおよび第2トルクアーム514の先端514cは、ブラケット522内で、軸方向Rで互いに重なるよう配置される。
【0038】
ブラケット522は、阻止部530と、蓋部材532と、2つのゴムシート528a、528bと、複数のボルト534と、を含む。阻止部530は、第1トルクアーム506および第2トルクアーム514の両方の回転を阻止する。第1トルクアーム506の先端506cおよび第2トルクアーム514の先端514cの両方がブラケット522に挿入された場合、両方の先端506c、514cは阻止部530によって上下に挟まれると共に軸方向Rで重なり合う。これは、例えば第1トルクアーム506の軸方向位置と第2トルクアーム514の軸方向位置とをずらすことによって実現される。
【0039】
ブラケット522に挿入された状態の2つのトルクアーム506、514の先端と上下方向で対向する阻止部530の2つの面にはそれぞれ第1ゴムシート528a、第2ゴムシート528bが取り付けられている。
蓋部材532は、複数のボルト534によって阻止部530に固定されている。蓋部材532は、第1トルクアーム506および第2トルクアーム514の軸方向の移動を制限する。
【0040】
本変形例によると、第1トルクアーム506と第2トルクアーム514との重複部分の長さ分、ブラケット522の半径方向の幅を低減することができる。また、その長さ分、第1ギヤモータと第2ギヤモータとの距離を縮めることができる。これらは、走行機構2のコンパクト化に寄与する。
【0041】
なお、使用するブラケットの形状はアプリケーションに応じて、組み付け時の作業性が向上するよう適宜選択されればよい。
【0042】
実施の形態では、減速機は直交減速機である場合について説明したが、これに限られず、例えば減速機は平行軸減速機であってもよい。