(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1支持孔は、前記嵌合部の内周側の一部に設けられ、前記第2支持孔は、前記嵌合部の残りの部分及び前記突出部の内周側に設けられる、請求項6に記載のスピニングリール。
前記スライダは、前記貫通孔内で前記第1軸受の前記係合部側に軸方向に並べて配置され、前記軸部を前記貫通孔内で回動自在に支持する第2軸受をさらに有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オシレーティング機構において、係合部材の回動をさらに滑らかにすることが考えられる。特に、トラバースカム軸の螺旋状溝の両端では係合部材が大きく回動するため、軸受を用いても、係合部材が傾くと、係合部材が滑らかに回動しにくい。そこで、係合部材の軸受に支持される軸部を長くすることが考えられる。軸部を長くすると、係合部材が傾きにくくなり、係合部材の回動がさらに滑らかになる。しかし、従来のオシレーティング機構では、軸部を長くすると、駆動ギアに近接して配置されるスライダ本体の幅(軸部の軸方向に沿った長さ)が大きくなり、リールの大型化を招く。
【0007】
本発明の課題は、スピニングリールにおいて、スライダ本体の幅を大きくすることなく、係合部材の軸部の寸法を可及的に長くできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
スピニングリールは、釣り糸を前方に繰り出すリールである。スピニングリールは、ハンドルと、リール本体と、ロータと、スプールと、スプール軸と、オシレーティング機構と、を備える。リール本体は、ハンドルが回転自在に支持されるものである。ロータは、リール本体に回転自在に支持されるものである。スプールは、ロータによって釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部を有する。スプール軸は、スプールが設けられるものである。オシレーティング機構は、ハンドルの回転によってスプールを前後方向に往復移動させる。オシレーティング機構は、トラバースカム軸と、スライダと、を有する。トラバースカム軸は、表面に交差する螺旋状溝を有する。トラバースカム軸は、スプール軸と平行に配置され、ハンドルの回転に連動して回転する。スライダは、スライダ本体と、係合部材と、第1軸受と、抜け止め部材と、固定部材と、有する。スライダ本体は、トラバー
スカム軸と直交する方向に貫通する貫通孔を有する。スライダ本体は、スプール軸に少なくとも軸方向に一体的に移動可能に連結される。係合部材は、軸部及び軸部の先端部に螺旋状溝に係合可能に設けられる係合部を有する。係合部材は、貫通孔から軸部の後端部が突出して配置される棒状の部材である。第1軸受は、貫通孔に嵌合する嵌合部、嵌合部よりも小径であり貫通孔から突出する突出部、及び嵌合部と突出部を貫通し軸部を回動自在に支持するための支持孔を有する。抜け止め部材は、嵌合部と突出部との境界部分に生じる段差面で第1軸受を抜け止めする。固定部材は、抜け止め部材をスライダ本体に対して固定する。
【0009】
このスピニングリールでは、オシレーティング機構の第1軸受が端部ではなく、第1軸受の嵌合部と突出部との境界部分に生じる段差面で抜け止め部材が第1軸受を抜け止めする。この構成により、係合部材の軸部を嵌合部と突出部の内部に設けられる支持孔で支持することによって、軸部の長さをスライダ本体の幅に関係なく設定することができる。このため、スライダ本体の幅を大きくすることなく、係合部材の軸部の寸法を可及的に長くできるようになる。
【0010】
スピニングリールにおいて、固定部材は、頭部を有するネジ部材であってもよい。この場合には、抜け止め部材が装着される部分を凹ませることによって、ネジ部材の頭部がスライダ本体から突出しにくくなる。
【0011】
スピニングリールにおいて、スライダ本体の抜け止め部材が配置される部分は、スプール軸が連結される部分よりも凹んで形成されてもよい。この場合には、凹みを頭部の厚みよりも深く形成することによって、ネジ部材の頭部がスライダ本体から突出しにくくなり、スライダを駆動ギアに可及的に近接して配置できる。これにより、リール本体を大型化することなく駆動ギアの大径化を図ることができる。
【0012】
スピニングリールにおいて、抜け止め部材は、突出部が通過可能な通過孔を有する板状部材でもよい。スライダ本体は、抜け止め部材が配置される配置平面を有してもよい。この場合には、抜け止め部材が板状部材であるので、抜け止め部材を容易で作成できる。また、抜け止め部材が配置される部分が平面であるので、スライダ本体の形成も容易である。
【0013】
スピニングリールにおいて、第1軸受は、合成樹脂製の滑り軸受でもよい。この場合には、嵌合部及び嵌合部よりも小径の突出部を型成形によって容易に形成できる。
【0014】
スピニングリールにおいて、軸部は、係合部に連なる第1軸部と、第1軸部に連なり第1軸部よりも小径の第2軸部と、を有してもよい。支持孔は、第1軸部を支持する第1支持孔と、第2軸部を支持する第2支持孔と、を有してもよい。この場合には、軸部が係合部に近い大径の第1軸部と係合部から遠い小径の第2軸部とで構成されるため、軸部が傾いても、係合部材の回動に対する抵抗が小さくなる。
【0015】
スピニングリールにおいて、第1支持孔は、嵌合部の内周側の一部に設けられ、第2支持孔は、嵌合部の残りの部分及び突出部の内周側に設けられてもよい。この場合には、嵌合部と突出部の境界部分よりも第1支持孔と第2支持孔の境界部分が係合部に近くなるので、合成樹脂等で第1軸受を形成した場合、第1軸受を精度良く形成できる。
【0016】
スピニングリールにおいて、嵌合部は、突出部との境界部分に大径の鍔部を有してもよい。貫通孔は、鍔部が係合する大径部を有してもよい。この場合には、鍔部が大径部の壁面に接触することによって第1軸受の係合部に近づく方向の移動を規制できる。
【0017】
スピニングリールにおいて、係合部は、軸部よりも大径の円板部と、円板部からトラバースカム軸に向けて板状に突出し、螺旋状溝に係合する係合片と、を有してもよい。貫通孔は、円板部に接触して係合部材のトラバースカム軸に近づく方向の移動を規制するとともに、係合片の側面に接触して係合部材の回動範囲を規制する規制部を有してもよい。この場合には、規制部によって係合部材とトラバースカム軸との距離を一定範囲に規制できるとともに、係合部材の回動範囲を規制できる。
【0018】
スピニングリールにおいて、スライダは、貫通孔内で第1軸受の係合部側に軸方向に並べて配置され、軸部を貫通孔内で回動自在に支持する第2軸受をさらに
有してもよい。この場合には、軸方向に並べて配置された2つの軸受によって軸部を支持するので、軸部の回動がさらに滑らかになる。
【0019】
スピニングリールにおいて、第2軸受は、転がり軸受でもよい。この場合は、第2軸受が転がり軸受であるので、軸部の回動がさらに滑らかになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、オシレーティング機構の第1軸受が端部ではなく、第1軸受の嵌合部と突出部との境界部分の段差面で抜け止め部材が第1軸受を抜け止めする。この構成により、係合部材の軸部を嵌合部と突出部の内部に設けられる支持孔で支持することによって、軸部の長さをスライダ本体の幅に関係なく設定することができる。このため、スライダ本体の幅を大きくすることなく、係合部材の軸部の寸法を可及的に長くできるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<全体構成>
図1、
図2及び
図3において、本発明の一実施形態によるスピニングリール100は、釣り糸を前方に繰り出すものである。スピニングリール100は、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4と、スプール軸15と、ロータ駆動機構5と、オシレーティング機構6と、を備える。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持される。スプール4は、ロータ3によって釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部4aを有する。スプール4は、ロータ3の前部に前後移動自在に配置される。スプール軸15には、先端にスプール4が設けられる。オシレーティング機構6は、ハンドル1の回転によって、スプール軸15を介してスプール4を前後方向に往復移動させる。なお、ハンドル1は、
図1及び
図3に示すリール本体2の左側と、リール本体2の右側とのいずれにも装着可能である。
【0023】
ハンドル1は、
図1及び
図2に示すように、ハンドル軸8a(
図2)の先端に揺動可能に装着され、ハンドル軸8aと交差する方向に延びるハンドルアーム8bと、ハンドルアーム8bの先端に固定された把手軸(図示せず)と、把手軸に回転自在に装着されたハンドル把手8cとを備える。
【0024】
<リール本体の構成>
リール本体2は、筐体部2aと、蓋部材2bと、竿取付脚2cと、本体ガード7と、を有する。筐体部2aは、例えばアルミニウム合金製又はマグネシウム合金製であり、開口する機構装着空間2dを有する。機構装着空間2dには、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、オシレーティング機構6と、が設けられる。筐体部2aには、釣り竿を取り付けるための竿取付脚2cが一体形成される。また、筐体部2aの前部には、筒部2fが形成される。
【0025】
蓋部材2bは、例えばアルミニウム合金製又はマグネシウム合金製であり、機構装着空間2dの開口2eを覆って機構装着空間2dを塞ぐために設けられる。竿取付脚2cは、筐体部2aから斜め上前方に延びた後に前後方向に延びる概ねT字状の部分である。この実施形態では、竿取付脚2cは、筐体部2aと一体形成されているが、蓋部材2bと一体形成されてもよい。本体ガード7は、筐体部2a及び蓋部材2bの後面、後部側面及び後部底面を覆う。
【0026】
<ロータ駆動機構の構成>
ロータ駆動機構5は、
図2及び
図3に示すように、ハンドル1のハンドル軸8aが一体回転可能に連結された駆動軸10と、駆動軸10とともに回転するフェースギアの形態の駆動ギア11と、駆動ギア11に噛み合うピニオンギア12と、を有する。駆動軸10は、たとえば、ステンレス合金製の筒状の軸であり、筐体部2a及び蓋部材2bに装着された軸受(図示せず)により両端支持される。駆動軸10の両端部の内周面には、雌ねじ部(図示せず)が形成される。駆動ギア11は、例えばフェースギアの形態であり、駆動軸10に一体的に回転可能に設けられる。この実施形態では、駆動ギア11は、駆動軸10に着脱自在に設けられる。なお、駆動ギア11は、駆動軸10と一体的に設けられてもよい。
【0027】
ピニオンギア12は、たとえば、ステンレス合金製の筒状の部材である。ピニオンギア12の前部12aは、
図2に示すように、ロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と一体回転可能に固定される。ナット13は、リテーナ18によって回り止めされる。リテーナ18は、ロータ3に固定される。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、筐体部2aに間隔を隔てて装着された軸受14a,14bにより筐体部2aに回転自在に支持される。
【0028】
<オシレーティング機構の構成>
オシレーティング機構6は、
図2及び
図3に示すように、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に往復移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、
図4、
図5及び
図6に示すように、スプール軸15の下奥側(
図6下右側)にスプール軸15と平行に配置されたトラバースカム軸21と、トラバースカム軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、トラバースカム軸21の先端に一体回転可能に装着された中間ギア23と、を有する。
【0029】
トラバースカム軸21は前後方向に沿って配置されており、両端部が筐体部2aに転がり軸受を介して回転自在に支持する。トラバースカム軸21は表面に交差する螺旋状溝21aを有し、ハンドル1の回転に連動して回転する。
【0030】
スライダ22は、
図3に示すように、スプール軸15に装着されたピニオンギア12にかみ合う駆動ギア11に近接して配置される。スライダ22は、
図4、
図6及び
図7に示すように、スライダ本体24と、係合部材25と、第1軸受26と、抜け止め部材27と、ネジ部材28(固定部材の一例)と、第2軸受29と、を有する。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定される。スライダ本体24は、スプール軸15の後端部が回転不能に連結されるスプール軸連結部24aと、係合部材25を装着される係合部材装着部24bと、前後方向のガイド用の第1ガイド部24cと、第2ガイド部24dと、を有する。
【0031】
スプール軸連結部24aは、概ね直方体形状であり、断面がD字形状のスプール軸取付孔24eが前後方向に貫通して形成される。スプール軸15は、後端部がスプール軸取付孔24eに嵌合しており、例えば接着剤によって固定される。また、スプール軸15に螺合するネジ部材37によっても固定される。これにより、スプール軸15の後端部がスライダ本体24に固定される。
【0032】
係合部材装着部24bは、トラバースカム軸21と実質的に直交する左右方向に沿って形成された貫通孔24fを有する概ね筒状の部分である。貫通孔24fは、トラバースカム軸21から離れる側の端部に形成された大径部24gを有する。また、貫通孔24fは、トラバースカム軸21側の端部の内周面に形成された一対の規制突起24h(
図7参照)を有する。規制突起24hは、係合部材25の軸方向の移動及び回動範囲を規制する規制部の一例である。規制突起24hは、所定の厚みを有し、円弧状に貫通孔24fの軸芯に向けて突出する。なお、規制突起24hが形成された係合部材装着部24bのトラバースカム軸21側の端面には、トラバースカム軸21をスライダ本体24に接近して配置するための軸配置部24iが円弧状に凹んで形成される。
【0033】
第1ガイド部24cは、スプール軸連結部24aのトラバースカム軸21側の壁面から突出して形成される。第1ガイド部24cには、スライダ22を前後方向に案内するための第1ガイド軸38aが貫通する第1ガイド孔24jが形成される。第1ガイド軸38aは、両端が筐体部2aに支持される。第2ガイド部24dは、係合部材装着部24bの下面から下方に突出して形成される。第2ガイド部24dには、スライダ22を前後方向に案内するための第2ガイド軸38bが貫通する第2ガイド孔24kが形成される。第2ガイド軸38bは、両端が筐体部2aに支持される。したがって、上下方向において、第1ガイド軸38aと第2ガイド軸38bとの間にトラバースカム軸21が配置される。
【0034】
係合部材装着部24bは、抜け止め部材27が配置される配置平面24mを有する。配置平面24mは、係合部材装着部24bのトラバースカム軸21から離れる端面にスプール軸連結部24aよりも凹んで形成される。配置平面24mの下方には、ネジ部材28が螺合するネジ取付部24nが円形に形成される。配置平面24mの凹み深さは、ネジ部材28の頭部28aの厚みと抜け止め部材27の厚みを加算した厚みと同じかそれよりもよりも大きい。
【0035】
係合部材25は、
図4及び
図6に示すように、軸部25aと、軸部25aの先端部に螺旋状溝21aに係合可能に設けられる係合部25bと、を有する。係合部材25は、貫通孔24fから軸部25aの後端部が突出して配置される棒状の金属製の部材である。軸部25aは、係合部25bに連なる第1軸部25cと、第1軸部25cに連なり第1軸部25cよりも小径の第2軸部25dと、を有する。係合部25bは、貫通孔24fに嵌合する大径の円板部25eと、円板部25eからトラバースカム軸21に向けて板状に突出し、螺旋状溝21aに係合する係合片25fと、を有する。係合片25fの先端部は、螺旋状溝21aの底部に沿うように円弧状に形成される。係合片25fの先端部は、両側面から先細りに形成される。円板部25eのトラバースカム軸21側の第1面25gは、規制突起24hに接触することにより、係合部材25のトラバースカム軸21側への移動を規制する。これにより、係合部25bが軸方向に位置決めされ、係合部25bとトラバースカム軸21との間隔が一定に保持される。また、係合片25fの両側面が規制突起24hに接触することにより、係合部材25の回動範囲が規制される。
【0036】
第1軸受26は、係合部材25の軸部25aを回動自在に支持するために設けられる。第1軸受26は、例えば、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂などの比較的摺動性が高い合成樹脂製の筒状の滑り軸受である。第1軸受26は、嵌合部26aと、突出部26bと、支持孔26cと、を有する。嵌合部26aは、貫通孔24fに嵌合する。突出部26bは、嵌合部26aよりも小径であり、貫通孔24fから突出する。支持孔26cは、嵌合部26aと突出部26bを貫通し、軸部25aを回動自在に支持するための孔である。嵌合部26aは、突出部26bとの境界部分に大径の鍔部26dを有する。鍔部26dは、大径部24gに係合して第1軸受26を位置決めするために設けられる。具体的には、鍔部26dは、大径部24gの壁面に接触して第1軸受26のトラバースカム軸21に近づく方向の移動を規制する。これにより、第1軸受26が軸方向に位置決めされる。支持孔26cは、第1軸部25cを支持する第1支持孔26eと、第2軸部25dを支持する第2支持孔26fと、を有する。1支持孔26eは、嵌合部26aの内周側の一部に設けられる。第2支持孔26fは、嵌合部26aの残りの部分及び突出部26bの内周側に設けられる。
【0037】
抜け止め部材27は、配置平面24mに装着され、第1軸受26を押圧して抜け止めするために設けられる。抜け止め部材27は、第1軸受26の突出部26bと嵌合部26aとの境界に生じる段差面26gで第1軸受26を抜け止めする。抜け止め部材27は、突出部26bが通過可能な通過孔27aを有する、例えばステンレス合金等の金属製の板状部材である。抜け止め部材27は、抜け止め部材27を貫通してスライダ本体24のネジ取付部24nに螺合するネジ部材28によってスライダ本体24に固定される。
【0038】
第2軸受29は、例えば、玉軸
受又はコロ軸受等の転がり軸受である。第2軸受29は、貫通孔24f内で第1軸受26の係合部25b側に軸方向に並べて配置される。すなわち、第2軸受29は、第1軸受26と係合部25bとの間に配置される。第1軸受26と第2軸受29の間には、第2軸受29の軸方向のがたつきを抑えるためのワッシャ部材39が配置される。ワッシャ部材39は、第2軸受29の外輪29aに接触する。第2軸受29の内輪29bは、係合部材25の円板部25eの第1面25gと反対側の第2面25hに接触する。
【0039】
中間ギア23は、減速機構52を介してピニオンギア12に噛み合う。中間ギア23は、トラバースカム軸21の前端に非円形係合によって一体回転可能に装着される。減速機構52は、ピニオンギア12の回転を減速して中間ギア23に伝達する。減速機構52は、ピニオンギア12に噛み合う第1ギア53と、第1ギア53と一体回転可能に回転し、中間ギア23に噛み合う第2ギア54と、を有する。第1ギア53は、ピニオンギア12よりも歯数が多い。第2ギア54は、中間ギア23よりも歯数の少ない。これにより、ピニオンギア12の回転は、二段階で減速されて中間ギアに伝達され、スプール4の前後移動の速度が遅くなり、釣り糸を糸巻胴部4aに密に巻き付け可能になる。この実施形態では、第1ギア53は、第2ギア54に非円形係合によって一体回転可能に連結される。第2ギア54は、筐体部2aの前部に両端支持された支持軸55に回転自在に支持される。ここでは、第1ギア53及びピニオンギア12は、はす歯ギアであり、中間ギア23及び第2ギア54は、すぐ歯ギアである。
【0040】
スプール軸15は、
図2に示すように、ピニオンギア12の中心部を貫通して配置される。スプール軸15は、ピニオンギア12の内部をオシレーティング機構6により前後に往復移動する。スプール軸15は、中間部がナット13内に装着された軸受16により、後部がピニオンギア12の後部内周面により、回転自在かつ軸方向移動自在に支持される。
【0041】
<ロータの構成>
ロータ3は、
図2に示すように、ピニオンギア12を介してリール本体2に回転自在に支持される。ロータ3は、ピニオンギア12に一体回転可能に連結されたロータ本体30と、第1カバー部材32と、第2カバー部材33と、ベールアーム36と、を有する。
【0042】
ロータ本体30は、ピニオンギア12を介してリール本体2に回転自在に連結される有底筒状の連結部30aと、第1ロータアーム30bと、第2ロータアーム30cと、を有する。第1ロータアーム30bは、連結部30aの後端部の第1側(
図2上側)から連結部30aと間隔を隔てて前方に延びる。第2ロータアーム30cは、連結部30aの後端部の第1側と対向する第2側(
図2下側)から連結部30aと間隔を隔てて前方に延びる。ロータ本体30は、たとえばアルミニウム合金製又はマグネシウム合金製であり一体成形される。
【0043】
連結部30aの前部には、壁部31aが形成されており、壁部31aの中央部にはボス部31bが形成される。ボス部31bの中心部には貫通孔31cが形成されており、この貫通孔31cをピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通する。壁部31aの前部にロータ3をピニオンギア12に固定するためのナット13が配置されておる。連結部30aの後部には、リール本体2の前部を収納可能な円形空間を有する凹陥部31dが形成される。
【0044】
第1カバー部材32は、第1ロータアーム30bの径方向外側を覆う。第1
カバー部材32と第1ロータアーム30bとの間にベールアーム36を糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するベール反転機構(図示せず)が設けられる。
【0045】
ベールアーム36は、
図2に示すように、第1及び第2ロータアーム30b,30cの先端に糸解放姿勢と糸巻き取り姿勢との間で揺動自在に装着される。ベールアーム36は、糸巻取姿勢にあるとき、ロータ3の糸巻取方向の回転により、釣り糸をスプール4に巻き付ける。
【0046】
ベールアーム36は、第1ロータアーム30bの先端の外周側に揺動自在に装着された第1ベール支持部材40と、第2ロータアーム30cの先端の外周側に揺動自在に装着された第2ベール支持部材42と、第1ベール支持部材40の先端に回転自在に装着されたラインローラ41と、を有する。また、ベールアーム36は、第1ベール支持部材40の先端に固定され第1ベール支持部材40に片持ち支持された、ラインローラ41を支持する固定軸(図示せず)と、固定軸の先端側に配置された固定軸カバー44と、固定軸カバー44と第2ベール支持部材42とを連結するベール45と、を有する。
【0047】
<その他の構成>
図2に示すように、リール本体2の筒部2fの内部には、ロータ3の逆転を禁止するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51を有する。この逆転防止機構50は、ロータ3の糸繰り出し方向の逆転を常時禁止しており、逆転を許可する状態をとることはない。なお、逆転防止機構を逆転許可状態と逆転禁止状態とを切り換えできるように構成してもよい。逆転防止機構50は、筒部2fに固定されたキャップ部材20によって抜け止めされる。キャップ部材20は、例えば筒部2fの外周面にねじ込み固定される。
【0048】
スプール4は、
図2に示すように、ロータ3の第1ロータアーム30bと第2ロータアーム30cとの間に配置されており、スプール軸15の先端に回転自在に支持される。スプール4は、スプール軸15とともに前後移動しながら、ロータ3によって糸巻胴部4aの外周に釣り糸が巻き付けられる。スプール4は、たとえばアルミニウム合金製のものである。スプール4の内部には、設定されたドラグ力がスプール4に作用するようにスプール4を制動するドラグ機構60が収納される。
【0049】
ドラグ機構60は、
図2に示すように、スプール4の糸繰り出し方向への回転を制動してスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、ドラグ力を手で調整するためのドラグつまみ組立体65と、ドラグつまみ組立体65によりにスプール4側に押圧されてドラグ力が調整される摩擦部66と、を備える。ドラグつまみ組立体
65は、スプール4の前部に配置される。摩擦部66は、スプール4の内部に配置される。
【0050】
<オシレーティング機構の動作>
このような構成のスピニングリール100では、ハンドル1を回転させると、駆動軸10が回転し、駆動ギア11に噛み合うピニオンギア12が回転する。ピニオンギア12が回転すると、ロータ3が回転するとともに、減速機構52を介して中間ギア23が回転し、トラバースカム軸21が回転する。トラバースカム軸21が回転すると、スライダ本体24に装着された係合部材25の係合部25bが螺旋状溝21aに係合し、回動しながら螺旋状溝21aの作用によって前後に移動する。これにより、スライダ22が前後方向に往復移動し、スプール4が前後移動する。ここで、第1軸受26が端部ではなく、嵌合部26aと突出部26bとの間の段差において、抜け止め部材27によって抜け止めされるためスライダ本体24の幅(左右方向の長さ)を大きくすることなく、係合部材25の軸部25aの軸方向の長さを可及的に長くすることができる。これにより、係合部材25が螺旋状溝21aの両端部で大きく回動しても、係合部材25ががたつきにくくなる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。なお、以降の実施形態の説明では、前記実施形態と異なる部分について異なる符号(第1実施形態の符号を3桁に変更した符号)を付けて説明し、同様な構成についての説明を省略する。
【0052】
(a)前記実施形態では、係合部材25の軸部25aを第1軸部25cと第2軸部25dとを構成したが、本発明はこれに限定されない。
図8に示すように、軸部125aを同径に形成してもよい。この場合、第2軸受を設けずに、合成樹脂製の第1軸受を貫通孔24fの全長にわたって設けてもよい。
【0053】
(b)
図9に示すように、第2軸受を設けずに、第1軸受226だけ
が軸部22
6aを支持するようにしてもよい。ここでは、第1軸受226は、貫通孔の全長にわたって設けられる。また、軸部226aが突出部側が小径となるようなテーパ状に先細りに形成されている。特に、係合部材を切削加工後にバリ取り及び切削痕の除去等のためにバレル研磨を行う場合は、
図6に示すように軸部25aを第1軸部25c及び小径の第2軸部25dで構成する、又は
図9に示すように軸部225aを先細りに構成するのが好ましい。これにより、バレル研磨によって軸部225aの係合部側よりも先端側が小径になってもその影響受けにくくなる。
【0054】
図9の実施形態では、第1軸受226の支持孔226c
の第1支持孔226eは、第1支持孔226e
と、第1支持孔226eよりも僅かに小径の第2支持孔226fで構成される。軸部225aは、第1軸受226の係合部25b側の端部と第1支持孔226eと第2支持孔226fとの境界部分で支持される。
【0055】
(c)前記実施形態では、第1軸受26に大径の鍔部26dを設けたが、鍔部を設けなくてもよい。この場合、抜け止め部材27によって第1軸受26を介してワッシャ部材39及び第2軸受29を押圧するようにしてもよい。
【0056】
(d)前記実施形態では、スプール軸15がスライダ本体24に回転不能に連結されるフロントドラグ形のスピニングリール100を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプール軸がスライダ本体に回転自在かつ軸方向移動不能に連結されるリアドラグ形のスピニングリール及びフロントドラグ機構とリアドラグ機構とを切換部材によって切換可能なスピニングリールにも本発明を適用できる。また、スプールではなく、ロータを制動するレバーブレーキ型のスピニングリールにも本発明を適用できる。
【0057】
(e)前記実施形態では、固定部材としてネジ部材28を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、固定部材としてスライダ本体24と弾性係合する弾性係合ピンを用いてもよい。
【0058】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0059】
(A)スピニングリール100は、釣り糸を前方に繰り出すリールである。スピニングリール100は、ハンドル1と、リール本体2と、ロータ3と、スプール4と、スプール軸15と、オシレーティング機構6と、を備える。リール本体2は、ハンドルが回転自在に支持されるものである。ロータ3は、リール本体2に回転自在に支持されるものである。スプール4は、ロータ3によって釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部4aを有する。スプール軸15は、スプール4が設けられるものである。オシレーティング機構6は、ハンドル1の回転によってスプール4を前後方向に往復移動させる。オシレーティング機構6は、トラバースカム軸21と、スライダ22と、を有する。トラバースカム軸21は、表面に交差する螺旋状溝21aを有する。トラバースカム軸21は、スプール軸15と平行に配置され、ハンドル1の回転に連動して回転する。スライダ22は、スライダ本体24と、係合部材25と、第1軸受26と、抜け止め部材27と、ネジ部材28と、有する。スライダ本体24は、トラバースカム軸21と直交する方向に貫通する貫通孔24fを有する。スライダ本体24は、スプール軸15に少なくとも軸方向に一体的に移動可能に連結される。係合部材25は、軸部25a及び軸部25aの先端部に螺旋状溝21aに係合可能に設けられる係合部25bを有する。係合部材25は、貫通孔24fから軸部25aの後端部が突出して配置される棒状の部材である。第1軸受26は、貫通孔24fに嵌合する嵌合部26a、嵌合部26aよりも小径であり貫通孔24fから突出する突出部26b、及び嵌合部26aと突出部26bを貫通し軸部25aを回動自在に支持するための支持孔26cを有する。抜け止め部材27は、嵌合部26aと突出部26bとの境界に生じる段差面26gで第1軸受26を抜け止めする。ネジ部材28は、抜け止め部材27をスライダ本体24に対して固定する。
【0060】
このスピニングリール100では、オシレーティング機構6の第1軸受26が
、端部ではなく、第1軸受26に設けられる嵌合部26aと突出部26bとの境界部分に生じる段差面26gで第1軸受26を抜け止めする。この構成により、係合部材25の軸部25aを嵌合部26aと突出部26bの内部に設けられる支持孔26cで支持することによって、軸部25aの長さをスライダ本体24の幅に関係なく設定することができる。このため、スライダ本体24の幅を大きくすることなく、係合部材25の軸部25aの寸法を可及的に長くできるようになる。
【0061】
(B)スピニングリール100において、固定部材は、頭部28aを有するネジ部材28である。この場合には、抜け止め部材27が装着される部分を凹ませることによって、ネジ部材28の頭部28aがスライダ本体24から突出しにくくなる。
【0062】
(C)スピニングリール100において、スライダ本体24の抜け止め部材27が配置される部分は、スプール軸15が連結される部分よりも凹んで形成される。この場合には、凹み深さを頭部28aの厚みよりも大きくすることによって、ネジ部材28の頭部28aがスライダ本体24から突出しにくくなり、スライダ22を駆動ギア11に可及的に近接して配置できる。これにより、リール本体2を大型化することなく駆動ギア11の大径化を図ることができる。
【0063】
(D)スピニングリール100において、抜け止め部材27は、突出部26bが通過可能な通過孔27aを有する板状部材である。スライダ本体24は、抜け止め部材27が配置される配置平面24mを有する。この場合には、抜け止め部材27が板状部材であるので、抜け止め部材27を容易で作成できる。また、抜け止め部材27が配置される部分が平面であるので、スライダ本体24の形成も容易である。
【0064】
(E)スピニングリール100において、第1軸受26は、合成樹脂製の滑り軸受である。この場合には、嵌合部26a及び嵌合部26aよりも小径の突出部26bが型成形によって容易に形成できる。
【0065】
(F)スピニングリール100において、軸部25aは、係合部に連なる第1軸部25cと、第1軸部25cに連なり第1軸部25cよりも小径の第2軸部25dと、を有する。支持孔26cは、第1軸部25cを支持する第1支持孔26eと、第2軸部25dを支持する第2支持孔と26f、を有する。この場合には、軸部25
aが係合部に近い大径の第1軸部と係合部から遠い小径の第2軸部とで構成されるため、軸部が傾いても、係合部材の回動に対する抵抗が小さくなる。
【0066】
(G)スピニングリール100において、第1支持孔26eは、嵌合部26aの内周側の一部に設けられ、第2支持孔26fは、嵌合部26aの残りの部分及び突出部26bの内周側に設けられる。この場合には、嵌合部と突出部の境界部分よりも第1支持孔と第2支持孔の境界部分が係合部に近くなるので、合成樹脂等で第1軸受を形成した場合、第1軸受を精度良く形成できる。
【0067】
(H)スピニングリール100において、嵌合部26aは、突出部26bとの境界部分に大径の鍔部26dを有する。貫通孔24fは、鍔部26dが係合する大径部24gを有する。この場合には、鍔部26dが大径部24gの壁面に接触することによって第1軸受26の係合部25bに近づく方向の移動を規制できる。
【0068】
(I)スピニングリール100において、係合部25bは、軸部25aよりも大径の円板部25eと、円板部25eからトラバースカム軸21に向けて板状に突出し、螺旋状溝21aに係合する係合片25fと、を有する。貫通孔24fは、円板部25eに接触して係合部材25のトラバースカム軸21に近づく方向の移動を規制するとともに、係合片25fの側面に接触して係合部材25の回動範囲を規制する規制突起24hを有する。この場合には、規制突起24hによって係合部材25とトラバースカム軸21との距離を一定範囲に規制できるとともに、係合部材25の回動範囲を規制できる。
【0069】
(J)スピニングリール100において、スライダ22は、貫通孔24f内で第1軸受26の係合部25b側に軸方向に並べて配置され、軸部25aを貫通孔24f内で回動自在に支持する第2軸受29をさらに有する。この場合には、軸方向に並べて配置された第1軸受26及び第2軸受29によって軸部25aを支持するので、軸部25aの回動がさらに滑らかになる。
【0070】
(K)スピニングリール100において、第2軸受29は、転がり軸受である。この場合は、第2軸受29が転がり軸受であるので、軸部25aの回動がさらに滑らかになる
。