特許第6033146号(P6033146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033146サーマルプリントヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033146
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20161121BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B41J2/335 101J
   B41J2/335 101C
   B41J2/345 J
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-63436(P2013-63436)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-188685(P2014-188685A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(74)【代理人】
【識別番号】100081732
【弁理士】
【氏名又は名称】大胡 典夫
(72)【発明者】
【氏名】角尾 卓史
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−126512(JP,A)
【文献】 特開2010−599(JP,A)
【文献】 特開平3−205163(JP,A)
【文献】 特開2009−61616(JP,A)
【文献】 特開2005−205821(JP,A)
【文献】 特開2002−46297(JP,A)
【文献】 特開2014−69442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315−2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に搬送される被印刷媒体に感熱リボンから熱転写するサーマルプリンタにおいて、
長方形の主面を持ちその主面から突出して長辺に沿って延びるリブが形成された基板と、前記リブを含む領域で前記主面に融着し前記主面から突出して前記リブに平行に延びる突条を有するグレーズ層と、前記突条の表面に間隔を置いて配列された発熱抵抗体と、前記リブの表面に形成された下流側ヒータと、前記発熱抵抗体および前記下流側ヒータを被覆する保護被膜層と、を備えるサーマルプリントヘッドと、
前記発熱抵抗体を発熱させる駆動素子と、
前記被印刷媒体を搬送する第1搬送手段と、
前記被印刷媒体および前記感熱リボンを前記サーマルプリントヘッドの前記発熱抵抗体が配列された領域に押し付ける円筒状のプラテンローラと、
前記プラテンローラに押し付けられた位置で前記被印刷媒体と前記サーマルプリントヘッドとの間を通過して前記リブの下流側で前記被印刷媒体から剥離するように前記リボンを搬送する第2搬送手段と、
を具備することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記リブの位置での前記保護被膜層の表面の高さは、前記突条の位置での前記保護被膜層の高さよりも高いことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記リブを跨ぐように金属層が前記長辺方向に間隔を置いて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
長方形の主面を持ちその主面から突出して長辺に沿って延びるリブが形成された基板と、
前記リブを含む領域で前記主面に融着し前記主面から突出して前記リブに平行に延びる突条を有するグレーズ層と、
前記突条の表面に間隔を置いて配列された発熱抵抗体と、
前記リブの表面に形成された下流側ヒータと、
前記発熱抵抗体と前記下流側ヒータとを被覆する保護被膜層と、
を具備することを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドおよびそれを用いたサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱部の発熱によって感熱記録紙、製版フィルム印画紙、各種カード類などの被印刷媒体に文字などからなる画像を形成する出力用デバイスであり、ビデオプリンター、イメージャー、シールプリンターなどの用途に用いられている。サーマルプリントヘッドは、基板上に配列された発熱抵抗体を有している。これらの発熱抵抗体を所定のパターンで発熱させることにより、サーマルプリントヘッドを用いて感熱紙、製版フィルム印画紙などのメディアへの記録が行われる。低騒音、低ランニングコストなどの利点を持つため、様々な開発が行われている。
【0003】
サーマルプリントヘッドは、アルミナなどのセラミック基板の表面に保温層としてグレーズ層を形成した支持基体を有している。この支持基体上に発熱抵抗体層とアルミニウムなどの電極となる導電層とをスパッタ法などの薄膜形成方法によって積層した後、フォトエングレービングプロセスで発熱抵抗体、個別電極などをパターニングする。その後、発熱抵抗体層および電極の所定の部分を覆う絶縁保護被膜層をスパッタ法などの薄膜形成方法によって形成する。
【0004】
このようにして製造された発熱体板と別途製造された回路基板とが放熱板の表面に固定される。さらに発熱体板の電極と回路基板に搭載された駆動ICとがボンディングワイヤなどで接続され、駆動ICなどが樹脂で封止されてサーマルプリントヘッドが製造される。
【0005】
このようなサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタにおいては、印画時に、たとえば被印刷媒体と感熱リボンなどの転写媒体とをサーマルプリントヘッドの発熱抵抗体が形成された領域にプラテンローラで押し付けられる。プラテンローラで被印刷媒体などを搬送しながら、直線状に延びる発熱抵抗体の列に所定のパターンで発熱させることによって、所望の画像が得られる。
【0006】
サーマルプリンタでは、印画に必要なエネルギーを発熱抵抗体から効率的に感熱リボンなどのメディアに伝達することが要求される。また、高画質を得るために、印画の後早い段階で感熱リボンと感熱リボンから転写される被印刷媒体とを熱時剥離することが求められる。
【0007】
早い段階で熱時剥離することにより、つまり、印刷直後にメディアと発熱領域、あるいは、加熱された感熱リボンなどのメディアと被印刷媒体とを分離することによって、色の滲みが少なく、高画質が得られる。このため、サーマルプリントヘッドに剥離用のリブを取り付けて、その剥離用リブによって感熱リボンの搬送方向を被印刷媒体とは異なる方向に変化させて剥離する場合がある。あるいは、放熱板の先端部に剥離用のリブを設ける場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
感熱リボンから被印刷媒体に熱転写するサーマルプリンタにおいては、高画質を求めるため、印画直後の感熱リボンの熱時剥離を行っている。しかし、剥離用のリブをサーマルプリントヘッドに組み付ける場合、あるいは、サーマルプリンタの固定部にサーマルプリントヘッドと剥離用リブを独立して取り付ける場合には、サーマルプリントヘッドの発熱領域とリブとの相対的な位置の精度を高めることが困難である。サーマルプリントヘッドの放熱板の先端部に、放熱板と一体として剥離用リブを設ける場合であっても、発熱領域が位置する発熱体板と放熱板とは両面テープなどを介して接着するため、相対的な位置精度を高めることが困難である。特に、リブの高さ方向の精度を向上させることが困難である。
【0010】
そこで、本発明は、感熱リボンから被印刷媒体に熱転写するサーマルプリンタにおいて、感熱リボンと被印刷媒体との剥離位置の精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明は、副走査方向に搬送される被印刷媒体に感熱リボンから熱転写するサーマルプリンタにおいて、長方形の主面を持ちその主面から突出して長辺に沿って延びるリブが形成された基板と、前記リブを含む領域で前記主面に融着し前記主面から突出して前記リブに平行に延びる突条を有するグレーズ層と、前記突条の表面に間隔を置いて配列された発熱抵抗体と、前記リブの表面に形成された下流側ヒータと、前記発熱抵抗体および前記下流側ヒータを被覆する保護被膜層と、を備えるサーマルプリントヘッドと、前記発熱抵抗体を発熱させる駆動素子と、前記被印刷媒体を搬送する第1搬送手段と、前記被印刷媒体および前記感熱リボンを前記サーマルプリントヘッドの前記発熱抵抗体が配列された領域に押し付ける円筒状のプラテンローラと、前記プラテンローラに押し付けられた位置で前記被印刷媒体と前記サーマルプリントヘッドとの間を通過して前記リブの下流側で前記被印刷媒体から剥離するように前記リボンを搬送する第2搬送手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、サーマルプリントヘッドにおいて、長方形の主面を持ちその主面から突出して長辺に沿って延びるリブが形成された基板と、前記リブを含む領域で前記主面に融着し前記主面から突出して前記リブに平行に延びる突条を有するグレーズ層と、前記突条の表面に間隔を置いて配列された発熱抵抗体と、前記リブの表面に形成された下流側ヒータと、前記発熱抵抗体と前記下流側ヒータとを被覆する保護被膜層と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感熱リボンから被印刷媒体に熱転写するサーマルプリンタにおいて、感熱リボンと被印刷媒体との剥離位置の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るサーマルプリントヘッドの第1の実施の形態における発熱体板の断面図である。
図2】本発明に係るサーマルプリントヘッドの第1の実施の形態の一部切欠き上面図である。
図3】本発明に係るサーマルプリントヘッドの第1の実施の形態を用いたサーマルプリンタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0016】
図1は、本発明に係るサーマルプリントヘッドの一実施の形態における発熱体板の断面図である。図2は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドの一部切欠き上面図である。図3は、本実施の形態のサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタの断面図である。
【0017】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド10は、放熱板30と発熱体板20と回路基板40とを有している。放熱板30は、たとえばアルミニウムなどの金属で形成された長方形の平板である。
【0018】
発熱体板20は、セラミック基板22およびグレーズ層25からなる絶縁基板を有している。セラミック基板22は、たとえばアルミナ(Al)で形成された長方形の平板である。セラミック基板22の一方の表面は放熱板30と向かい合っている。セラミック基板22の放熱板30とは反対側の表面には、リブ71が形成されている。リブ71は、セラミック基板22の表面から突出し、セラミック基板22の長手方向(主走査方向)に延びている。リブ71は、セラミック基板22の一方の長辺の近傍に設けられている。
【0019】
セラミック基板22のリブ71が設けられた方の表面には、グレーズ層25が融着している。グレーズ層25は、ガラスで形成されている。グレーズ層25には、突条21が設けられている。この突条21は、セラミック基板22の表面から突出し、リブ71と平行に、すなわち、主走査方向に延びている。突条21は、主走査方向に垂直な副走査方向の断面が滑らかな曲線を描くように形成されている。また、セラミック基板22に設けられたリブ71の近傍にも、断面が滑らかな曲面を描くようにグレーズ層25が形成されている。突条21の高さは、リブ71部のグレーズ層25の頂部(剥離部70)の高さよりも低い。
【0020】
グレーズ層25の表面には、抵抗体層26が形成されている。また、抵抗体層26の表面には、電極層28が形成されている。電極層28に切欠部が形成されていて、抵抗体層26の電極層28と重なり合わない部分が発熱抵抗体となる。それぞれの発熱抵抗体は、セラミック基板22の副走査方向に延びている。
【0021】
発熱抵抗体の副走査方向の下流側の端部には、電極層28に形成された折返し電極が接続している。折返し電極は、隣り合う2つの発熱抵抗体を接続している。折返し電極に対して反対側の端部にも、電極層28に形成された電極が発熱抵抗体に接続している。このようにして発熱抵抗体が全面グレーズ層25の表面に間隔を置いて複数配列されて、セラミック基板22の長手方向(主走査方向)に延びる帯状の発熱領域24が形成されている。発熱領域24の下流側(図1における右側)にも、抵抗体層26および電極層28が形成されていてもよい。
【0022】
リブ71部のグレーズ層25の表面には、下流側ヒータ81が設けられている。下流側ヒータ81は、主走査方向に延びている。下流側ヒータ81の主走査方向の両端部は、電極80に接続されている。
【0023】
抵抗体層26および電極層28の表面には、保護被膜層29が形成されている。保護被膜層29は、たとえばSiONで形成されている。
【0024】
サーマルプリントヘッド10は、発熱領域24を発熱させる駆動回路を有している。駆動回路には、下流側ヒータ81を発熱させる回路も含む。
【0025】
その駆動回路は、たとえば発熱体板20と同じ側の表面で放熱板30に載置された回路基板40の上に形成されている。回路基板40には、発熱領域24に所定の発熱パターンを形成するための制御信号や駆動電力が入力される。この駆動回路は、たとえば回路基板40に設けられた駆動素子42などの電気部品を有している。発熱体板20と駆動回路とは、たとえば発熱体板20と回路基板40との間に架け渡されたボンディングワイヤ44によって電気的に接続される。さらに、回路基板40の表面に形成された配線パターンと駆動素子42との間もボンディングワイヤ44で電気的に接続される。駆動素子42およびボンディングワイヤ44は、たとえば樹脂48によって封止される。
【0026】
次に、本実施の形態の製造方法を説明する。
【0027】
まず、リブ71を有するセラミック基板22を形成する。このセラミック基板22は、たとえばリブ71に相当する部分に凸部を形成して、それを焼き固めることによって形成する。あるいは、セラミック板をサンドブラストなどの機械研磨法、あるいは、他の研磨方法でリブ71以外の部分を除去して形成する。
【0028】
次に、セラミック基板22の主面にガラスペーストを印刷する。ガラスペーストの厚さは、たとえば30〜120μmとする。その後、セラミック基板22に付着したガラスペーストを焼成する。この際、ガラスペーストの温度をガラスの軟化点温度以上にして、所定の時間保持し、その後、常温まで冷却する。これによりグレーズ層25が形成される。
【0029】
その後、グレーズ層25の全面に抵抗体層26の材料で成膜する。抵抗体26の表面に、Alなどの電極層28の材料でスパッタリングなどにより成膜する。抵抗膜層および金属層を所定の形状にエッチングすることにより、所定のパターンの抵抗体層26および電極層28が形成される。
【0030】
さらに、抵抗体層26および電極層28を被覆する保護被膜層29を形成する。保護被膜層29は、たとえばスパッタリングによって形成される。これにより、発熱体板20が得られる。一枚のセラミック板に複数の発熱体板20となる部分を形成し、製造過程の途中あるいは最後に分割して、複数の発熱体板20を得てもよい。
【0031】
このようにして製造された発熱体板20および駆動素子42を搭載した回路基板40を放熱板30に載置し、駆動素子42と発熱体板20との間にボンディングワイヤ44を架け渡し、駆動素子42およびボンディングワイヤ44を封止することにより、サーマルプリントヘッド10が完成する。
【0032】
回路基板40には、コネクタ49が取り付けられている。回路基板40および駆動素子42などで構成された駆動回路は、コネクタ49を介して外部から制御信号や電力を供給されて、発熱体板20を駆動し、発熱領域24を所定のパターンで発熱させる。
【0033】
サーマルプリンタは、サーマルプリントヘッド10とプラテンローラ60と送出側リボンローラ64と巻取側リボンローラ63とリボンガイド65とを有している。プラテンローラ60は、サーマルプリントヘッド10の発熱領域24の法線方向に軸を持つ円柱状に形成される。プラテンローラ60の側面は、ある程度の弾性を有している。プラテンローラ60の側面は、発熱領域24の表面および剥離部70に接している。
【0034】
送出側リボンローラ64、巻取側リボンローラ63およびリボンガイド65は、サーマルプリントヘッド10の発熱領域24よりも放熱板30側に配置されている。送出側リボンローラ64およびリボンガイド65は、サーマルプリントヘッド10の発熱領域24に対して上流側、すなわち、回路基板40側に配置されている。巻取側リボンローラ63は、サーマルプリントヘッド10の発熱領域24に対して下流側、すなわち、剥離部70側に配置されている。
【0035】
送出側リボンローラ64は、未使用のインクリボン62を回巻したものである。巻取側リボンローラ63は、図示しない回転機構によって回転し、使用済みのインクリボン62を回巻するものである。リボンガイド65は、未使用のインクリボン62の搬送方向を変化させる。
【0036】
送出側リボンローラ64から送出されるインクリボン62は、リボンガイド65で向きを変えられて、サーマルプリントヘッド10の発熱領域24に向かう。サーマルプリントヘッド10の発熱領域24近傍の弧状の表面で向きを変えられたインクリボン62は、さらにサーマルプリントヘッド10の剥離部70で方向を変えられて、巻取側リボンローラ63に向かう。
【0037】
被印刷媒体61は、プラテンローラ60によってサーマルプリントヘッド10の発熱領域24に押し付けられつつ、副走査方向に移動する。この際、被印刷媒体61と発熱領域24との間にはインクリボン62が介在する。被印刷媒体61への印画の際には、外部から供給される信号などによって駆動素子42などの駆動回路から発熱抵抗体に電流が供給されて、発熱する。サーマルプリントヘッド10の発熱領域24の発熱パターンを変化させながら、被印刷媒体61を副走査方向に移動させることにより、被印刷媒体61上に所望の画像が印画される。
【0038】
インクリボン62の印画に用いられた使用済み部分は、順次、巻取側リボンローラ63に送られていく。送出側リボンローラ64、巻取側リボンローラ63およびリボンガイド65などから構成されるインクリボン送出機構によって、インクリボン62は、サーマルプリントヘッド10の表面に接触しながら搬送される。
【0039】
インクリボン62上のインクは、発熱領域24の発熱によって溶融し、被印刷媒体61に転写される。インクリボン62と被印刷媒体61とは、発熱領域24では接触しているが、発熱領域24から離れるとともに離れていく。発熱領域24の近傍で溶融したインクの粘着力によって、インクリボン62は被印刷媒体61に粘着したまま、ある程度下流側に移動する。その後、インクが溶融した状態のまま、被印刷媒体61と異なる方向に移動するインクリボン62は、剥離部70で被印刷媒体61から剥離される。
【0040】
剥離部70にヒータを設けない場合には、被印刷媒体61およびインクリボン62の熱は剥離部70に逃げて、被印刷媒体61およびインクリボン62の温度が低下し過ぎる場合がある。被印刷媒体61およびインクリボン62の温度が低下し過ぎて、インクリボン62のインクが固化してしまうと、被印刷媒体61に付着しておくべきインクがインクリボン側62に固着して剥がれてしまい、印刷品質が低下してしまう可能性がある。
【0041】
しかし本実施の形態では、印刷時には、下流側ヒータ81は通電されていて、発熱していて、剥離部70は、インクリボン62のインクが溶融した状態を維持する程度の温度に維持されている。その結果、インクが溶融した状態のままインクリボン62が被印刷媒体61から剥離される熱時剥離が実現できる。
【0042】
焼成の際にガラスは流動性を持つため、グレーズ層25の表面は滑らかな曲面を描く。このため、セラミック基板22のリブ71の近傍に形成されたグレーズ層25の凸部は、剥離用リブとして用いることができる。この剥離用リブは、発熱領域24が形成された発熱体板20に一体として形成されているため、発熱領域24との相対的な位置関係を高い精度で制御することができる。
【0043】
また、グレーズ層25は焼成によって形成するため、剥離用リブを大きくしようとすると焼成時の流動性に起因して最終的な形状の寸法精度を確保することが難しい。しかし、本実施の形態では、剥離部70の下方にはセラミック基板22のリブ71があるため、剥離部70近傍のガラスの量が少なくて済む。その結果、剥離部70の寸法精度を高めることができる。特に、剥離部70の高さの精度を高めることができる。
【0044】
したがって、本実施の形態によれば、感熱リボンと被印刷媒体との剥離位置の精度を高めることができる。その結果、感熱リボンと被印刷媒体を熱時剥離し、その剥離位置の精度が高いため、印画品質を向上させることができる。また、発熱体板と放熱板との接着時、あるいは、サーマルプリントヘッドのサーマルプリンタへの組み付け時に、剥離用リブと発熱領域との相対的な位置調整を行う必要がないため、作業効率が向上する。
【0045】
また、本実施の形態では、主走査方向に直線状に延びる一本の下流側ヒータ81を用いている。しかし、下流側ヒータ81の形状は、これに限定されるものではない。たとえば、直線状の下流側ヒータを分割して、主走査方向が発熱領域24の発熱抵抗体と同じ位置のみが発熱するようにしてもよい。さらに、発熱領域24の発熱抵抗体と同様に、副走査方向に延びる抵抗体を主走査方向に延びる電極で接続して下流側ヒータを形成してもよい。また、主走査方向が発熱領域24の発熱抵抗体と同じ位置のみが発熱するように形成した下流側ヒータを発熱領域24の発熱抵抗体が発熱した時のみ発熱するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…サーマルプリントヘッド、20…発熱体板、21…突条、22…セラミック基板、24…発熱領域、25…グレーズ層、26…抵抗体層、28…電極層、29…保護被膜層、30…放熱板、40…回路基板、42…駆動素子、44…ボンディングワイヤ、48…樹脂、49…コネクタ、60…プラテンローラ、61…被印刷媒体、62…インクリボン、63…巻取側リボンローラ、64…送出側リボンローラ、65…リボンガイド、70…剥離部、71…リブ、80…電極、81…下流側ヒータ

図1
図2
図3