特許第6033173号(P6033173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033173
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】多層部品構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/12 20060101AFI20161121BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20161121BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20161121BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   B29C39/12
   B32B5/18
   B29K105:04
   B29L31:58
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-139711(P2013-139711)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-193595(P2014-193595A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-36836(P2013-36836)
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】杉本 賢次郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 憲
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−197443(JP,A)
【文献】 実開平04−017934(JP,U)
【文献】 特開2004−154896(JP,A)
【文献】 特開平03−007326(JP,A)
【文献】 特開2001−138822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/12
B32B 5/18
B29K 105/04
B29L 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の芯材と軟質の表皮材との間にクッション性を有する発泡層を介在させて一体化して成る多層部品を設けた多層部品構造であって、
前記多層部品が、付属部品を取付可能な開口部または凹部を有し、
前記芯材が、前記開口部または前記凹部の内側に、前記表皮材および発泡層を有さない部分的な芯材露出部を設けられ、
該芯材露出部は、少なくとも、前記表皮材が切断除去されて成り、
前記芯材の、前記表皮材を切断する部分に、前記表皮材側または反表皮材側へ突出して、切断用工具による切断を補助するための切断用補助部を設け
該切断用補助部は、発泡成形時の前記発泡層の堰止部よりも前記開口部または前記凹部の内側の位置に、前記発泡層と厚み方向に重ならないように設けられていることを特徴とする多層部品構造。
【請求項2】
硬質の芯材と軟質の表皮材との間にクッション性を有する発泡層を介在させて一体化して成る多層部品を設けた多層部品構造であって、
前記表皮材が、縫製によって形成された縫製線部を有し、
前記芯材が、前記表皮材および発泡層を有さない部分的な芯材露出部を設けられ、
該芯材露出部は、少なくとも、前記表皮材が前記縫製線部ごと切断除去されて成り、
前記芯材の、前記表皮材に形成された縫製線部を切断する部分に、前記表皮材側または反表皮材側へ突出して、切断用工具による前記縫製線部の切断を補助するための切断用補助部を設けたことを特徴とする多層部品構造。
【請求項3】
前記切断用補助部が、前記切断用工具と対向する位置に設けられて、前記切断用工具を直接受ける工具受部であることを特徴とする請求項2に記載の多層部品構造。
【請求項4】
前記切断用補助部が、前記表皮材側の前記切断用工具を挟んだ両側の位置に設けられて、外部の縫製線押圧保持具との間で前記縫製線部の切断位置を挟んだ両側の2箇所の位置で前記表皮材の両面を挟着保持可能な一対の縫製線挟着用受台であると共に、
少なくとも一方の縫製線挟着用受台が、前記表皮材または前記縫製線部の滑りを防止可能な滑止加工部を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の多層部品構造。
【請求項5】
前記多層部品が、車両用内装部品であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の多層部品構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表皮材などの切断を適正に行わせるようにした多層部品構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルなどの車両用内装部品が設置されている。そして、このようなインストルメントパネルに対し、別部材として構成された付属部品、例えば、ベンチレータグリルや装飾パネルなどを、取付けることが行われている。これらの付属部品は、インストルメントパネルの所定位置に予め形成された開口部や凹部に対して後付けで取付けられる。
【0003】
そして、上記した車両用内装部品には、硬質の芯材と軟質の表皮材との間に、クッション性を有する発泡層を介在させて一体化してなる多層構造の多層部品などによって構成されたものが存在している。
このような多層構造の内装部品は、例えば、発泡成形型にセットされた芯材と表皮材との間に、発泡層の原料となる発泡液を注入して、発泡成形型内で発泡液を発泡させることによって発泡層を成形するようにした、いわゆる発泡成形などによって製造されている。
【0004】
そして、上記した車両用内装部品に対して、上記した付属部品を取付けるための開口部や凹部などを設ける場合には、発泡成形時に、開口部や凹部を形成する個所に対して発泡層を有さない開口・凹部形成予定部(芯材・表皮材の二層積層部分)を形成したり、または、発泡成形時に、開口部や凹部を形成する個所の発泡層の厚さを他の部分よりも薄くした開口・凹部形成予定部(芯材・発泡層・表皮材の三層積層部分)を形成したりしておく。
次に、発泡成形後に、上記した開口・凹部形成予定部の内側の部分を、熱刃などの切断用工具を用いて適宜加工することなどによって、芯材露出部を形成する。
そして、この芯材露出部を利用して上記した付属部品を取付けるようにする。
【0005】
より具体的には、まず、開口・凹部形成予定部の内側の、芯材・表皮材の二層積層部分または芯材・発泡層・表皮材の三層積層部分を、熱刃などの切断用工具を用いて打抜くことで、開口・凹部形成予定部の内側に開口部(芯材開口部)を形成する。
その後、この芯材開口部の周縁部と開口・凹部形成予定部の周縁部との間の位置で、熱刃などの切断用工具を用いて芯材のみを残すように表皮材や発泡層をトリミングすることによって、芯材露出部を形成するようにしている。この芯材露出部は、上記した付属部品に対する取付基準または取付部となるものである。
【0006】
更に、例えば、高級感を演出するなどのために必要な場合には、上記した表皮材に対し、縫製による縫製線部などを設けるなどして、皮革貼り調にすることなども行われている(例えば、特許文献1参照)。この場合には、上記したように芯材開口部の周縁部の外側部分をトリミングする際に、表皮材と共に、縫製線部も切断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2727348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した多層部品構造には、以下のような問題があった。
即ち、芯材開口部の周縁部の外側部分をトリミングする際に、熱刃などの切断用工具で表皮材のみを正確に切断することが難しいため、熱刃などの切断用工具が芯材に少なからず食い込んでしまう、即ち、表皮材と共に芯材の肉厚の一部を切断してしまうおそれが高い。このように、芯材の肉厚の一部が切断されると、上記した付属部品を取付けた際に、芯材の肉厚の一部切断された部分が変形することによって、車両用内装部品と付属部品との合せ面にズレが生じることになる。
【0009】
また、上記した縫製線を構成するミシン糸は、ポリエステル製で、熱に強く、しかも、多数の細かい糸を撚って形成されているため、非常に丈夫であり、単に熱刃などの切断用工具を押し付けただけでは、確実に切断することができなかった。
そのため、縫製線部が形成されている場合には、開口部や凹部などを形成するための作業が、一段と手間の掛かるものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明は、
硬質の芯材と軟質の表皮材との間にクッション性を有する発泡層を介在させて一体化して成る多層部品を設けた多層部品構造であって、
前記多層部品が、付属部品を取付可能な開口部または凹部を有し、
前記芯材が、前記開口部または前記凹部の内側に、前記表皮材および発泡層を有さない部分的な芯材露出部を設けられ、
該芯材露出部は、少なくとも、前記表皮材が切断除去されて成り、
前記芯材の、前記表皮材を切断する部分に、前記表皮材側または反表皮材側へ突出して、切断用工具による切断を補助するための切断用補助部を設け
該切断用補助部は、発泡成形時の前記発泡層の堰止部よりも前記開口部または前記凹部の内側の位置に、前記発泡層と厚み方向に重ならないように設けられていることを特徴とする。
また、第2の発明は、
硬質の芯材と軟質の表皮材との間にクッション性を有する発泡層を介在させて一体化して成る多層部品を設けた多層部品構造であって、
前記表皮材が、縫製によって形成された縫製線部を有し、
前記芯材が、前記表皮材および発泡層を有さない部分的な芯材露出部を設けられ、
該芯材露出部は、少なくとも、前記表皮材が前記縫製線部ごと切断除去されて成り、
前記芯材の、前記表皮材に形成された縫製線部を切断する部分に、前記表皮材側または反表皮材側へ突出して、切断用工具による前記縫製線部の切断を補助するための切断用補助部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、芯材の、表皮材を切断する部分(即ち、多層部品における開口部または凹部の内側)に、表皮材側または反表皮材側へ突出する切断用補助部を設け、切断用補助部を、発泡成形時の発泡層の堰止部よりも開口部または凹部の内側の位置に、発泡層と(多層部品または発泡層の)厚み方向に重ならないように設けたことにより、切断用補助部にて切断用工具による表皮材の切断を補助させることができる。この際、切断用工具が芯材の部分に食い込んだとしても、切断用補助部によって、芯材の部分に必要な強度を確保することができるようになる。これにより、芯材露出部に付属部品を取付けても、付属部品との合せ面に芯材の変形によるズレが生じるのを防止することができる。
よって、多層部品に対して、開口部や凹部などを形成する作業を容易化することが可能となる。
また、第2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、芯材の、表皮材に形成された縫製線部を切断する部分に、表皮材側または反表皮材側へ突出する切断用補助部を設けたことにより、切断用補助部にて切断用工具による縫製線部の切断を補助させることができる。これにより、縫製線部が切れ難いものであっても、縫製線部の切断不良が生じたり、または、切断用工具によって芯材露出部が凹まされて薄くなり、芯材露出部の強度が低下したりすることを防止することができる。
よって、縫製線部が形成された多層部品に対して、開口部や凹部などを形成する作業を容易化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例にかかる多層部品構造の正面図である。
図2】実施例1にかかる、図1の芯材露出部となる部分の部分拡大断面図である。
図3図2に付属部品を取付けた状態を示す、図2と同様の部分拡大断面図である。
図4】実施例1の変形例にかかる、図3と同様の部分拡大断面図である。
図5】切断用補助部を備えていない場合の、図2と同様の部分拡大断面図である。
図6図5の表皮材を切断する状態を示す作動図である。
図7】芯材を一部切断した状態を示す、図6に続く作動図である。
図8】付属部品を取付けた状態を示す、図7に続く作動図である。
図9】実施例2にかかる、図1の芯材露出部となる部分の部分拡大断面図である。
図10図8の部分拡大図である。
図11】実施例2の変形例にかかる、図9と同様の部分拡大断面図である。
図12】切断用補助部を備えていない場合の、図9と同様の部分拡大断面図である。
図13図12の表皮材および縫製線部を切断する状態を示す作動図である。
図14】縫製線部が切断できなかった状態を示す、図13に続く作動図である。
図15】芯材露出部が凹んでしまった状態を示す、図13に続く作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態、および、それを具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図15は、この実施の形態の各実施例およびその変形例などを説明するためのものである。このうち、図1は、各実施例に共通の図、図2図8は実施例1に関する図、図9図15は実施例2に関する図である。
【0014】
まず、図1に示すように、自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネル1などの車両用内装部品2が設置されている。そして、このようなインストルメントパネル1に対し、別部材として構成された付属部品3(図3参照)、例えば、ベンチレータグリルや装飾パネルなどが取付けられる。これらの付属部品3は、インストルメントパネル1の所定位置に予め形成された開口部11や凹部12に対して、後付けで取付けられる。更に、車室内には、特に図示しないが、上記以外にも、コンソールボックスなどの種々の同様の車両用内装部品2が設置されている。
【0015】
そして、図2の断面図に示すように、上記した車両用内装部品2を、硬質の芯材5と軟質の表皮材6との間に、クッション性を有する発泡層7を介在させて一体化した多層部品8によって構成する。
【0016】
そして、上記した車両用内装部品2に対して、上記した付属部品3を取付けるための上記した開口部11や凹部12などを設けるようにする。
【0017】
このような開口部11や凹部12を形成する場合、発泡成形時に、開口部11や凹部12を形成する個所に対して、発泡層7を有さない開口・凹部形成予定部10(芯材5・表皮材6の二層積層部分)を形成したり、または、発泡成形時に、開口部11や凹部12を形成する個所の発泡層7の厚さを他の部分よりも薄くした開口・凹部形成予定部10(芯材5・発泡層・表皮材の三層積層部分)を形成したりしておく。
次に、発泡成形後に、上記した開口・凹部形成予定部10の内側の部分を、後述するように、熱刃などの切断用工具14を用いて加工することなどによって、部分的に芯材露出部13(例えば、図3参照)を形成する。
そして、この芯材露出部13を利用して上記した付属部品3を取付けるようにする。
【0018】
より具体的に、開口部11を形成する場合は、まず、開口・凹部形成予定部10の内側の、芯材5・表皮材6の二層積層部、または、芯材5・発泡層7・表皮材6の三層積層部を、図2の切断位置15で熱刃などの切断用工具14を用いて打抜くことで、開口・凹部形成予定部10の内側に開口部(芯材開口部11a)を形成する。
その後は、この芯材開口部11aの周縁部の外側と、開口・凹部形成予定部10の周縁部の内側との間の位置で、熱刃などの切断用工具14を用いて芯材5のみを残すように表皮材6や発泡層7をトリミングすることによって、図3に示すように、芯材開口部11aの周囲に芯材露出部13を形成する。
【0019】
また、凹部12を形成する場合には、発泡成形時に、凹部12を形成する個所に発泡層7を有さない開口・凹部形成予定部10(芯材5・表皮材6の二層積層部分)などを形成しておき、発泡成形後に、上記した開口・凹部形成予定部10の内側の位置で、熱刃などの切断用工具14を用いて芯材5のみを残すように表皮材6(縫製線部9を含む)などをトリミングすることによって、芯材露出部13を形成する。
【0020】
ここで、上記についての補足説明を行う。
上記した「芯材5」は、硬質の樹脂製のものとされる。この芯材5は、例外的な部分を除いて、一定の厚みに形成される。
上記した「表皮材6」は、軟質の樹脂製のものとされる。この表皮材6は、例外的な部分を除いて、一定の厚みに形成される。
上記した「発泡層7」は、クッション層とも言うことができる。この発泡層7は、例外的な部分を除いて、一定の厚みに形成される。
【0021】
上記した「多層部品8」は、図示しない発泡成形装置の金型(発泡成形型)にセットされた芯材5と表皮材6との間に、発泡層7の原料となる発泡液を注入して、発泡成形型内で発泡液を発泡させて発泡層7とすることによって製造される。発泡液は、発泡層7の原料となる原液に発泡液剤を加えると共に、所要の発泡倍率となるように濃度を調整したものである。この多層部品8は、例外的な部分を除いて、一定の厚みに形成される。
【0022】
ここで、上記した「開口・凹部形成予定部10」は、以下のようなものとされる。
まず、上記した芯材5に対し、その表面(表皮材6側の面)に、堰止部となる突条部22を、開口・凹部形成予定部10の形状に沿ってループ状に突設し、発泡成形時に、この突条部22に表皮材6を押し付けることで、ループ状の突条部22の内側に発泡液が入り込まないようにシールさせるようにする。
これに対し、上記した表皮材6には、ループ状の突条部22と対応する部分に、発泡成形前に予め、多層部品8の肉厚とほぼ等しい深さの凹形状部を予備賦形しておくようにする。
これにより、開口・凹部形成予定部10の外側の部分の肉厚が多層部品8の他の部分と等しくなると共に、開口・凹部形成予定部10の内側の部分で芯材5が表皮材6などによって覆われた状態となる。この際、ループ状の突条部22の内側では、例えば、芯材5と表皮材6とは、発泡層7によって接着されずに離れた状態などとなる。なお、芯材5におけるループ状の突条部22の外側の部分に対して、芯材5と発泡層7との接着性を向上するためのプライマー(下塗剤)などを塗布するようにしても良い。
【0023】
上記した「芯材露出部13」は、例えば、多層部品8に対して、付属部品3を取付けるための開口部11や凹部12を形成する場合などに、例えば、付属部品3の取付基準(面合せの基準)や取付部などとするために、開口・凹部形成予定部10の内側の表皮材6をトリミングすることによって設けられる。
そして、開口部11には、付属部品3として、例えば、上記したような、ベンチレータグリルなどの空気吹出口部材が取付けられる。
また、凹部12には、付属部品3として、例えば、上記したような、フィニッシャーなどの装飾パネルやエンブレムなどの加飾部品が嵌め込まれる。
図3に示すように、開口部11に取付けられる付属部品3の裏面側には、芯材露出部13の表面に対して突当て状態で支持される支持部3a(または、位置決め部)や、芯材開口部11aを通して芯材露出部13の裏面に係止可能な爪部3bなどが適宜設けられる。
【0024】
上記した「切断用工具14」は、例えば、上記した熱刃などとされる。この熱刃は、切断用刃物をヒーターで加熱して、樹脂部品を切断し易くしたものである。
【0025】
なお、この構成は、以下の各実施例において共通のものである。
【実施例1】
【0026】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
図1、および、図2図8は、この実施の形態の実施例およびその変形例などを説明するためのものである。
【0027】
(構成1)
上記芯材5の、上記表皮材6を切断する部分に、上記表皮材6側(図2参照)または反表皮材6側(図4参照)へ突出して、切断用工具14による切断を補助するための切断用補助部21を設ける。この切断用補助部21は、発泡成形時の発泡層7の堰止部(凸状部22)よりも開口部11または凹部12の内側の位置に、発泡層7と重ならないように設けられる。
【0028】
(補足説明1)
上記した「表皮材6を切断する部分」は、芯材露出部13を形成するために表皮材6をトリミングする部分のことである。
上記した「表皮材6側または反表皮材6側」は、少なくとも一方、または、両方とすることができる。この場合には、どちらか一方となっている。
上記した「切断用補助部21」は、この場合、表皮材6の切断を補助するための表皮切断用補助部として設けられる。この切断用補助部21は、切断用工具14を直接的に受ける工具受部25とされる。この工具受部25は、芯材5に対して一体に形成される。この際、この工具受部25は、切断用工具14が食い込むことによってできる凹み(肉厚の一部を切断した部分)の分を考慮した高さ寸法に形成することにより、表皮材6の切断後に、芯材5の切断用補助部21を設けた部分に、上記した芯材5の一定の肉厚と同じかそれよりも大きい肉厚の部分が残されるようにする。この場合、工具受部25は、切断用工具14を確実に受けることができるように、その頂部が、芯材5の表面と平行な平坦面とされている。
【0029】
より具体的には、図2の場合、上記したように、切断用補助部21は、表皮材6側に向って突出するように形成されている。そして、切断用補助部21は、突条部22と別個に形成するようにしても良いが、この場合には、切断用補助部21を、突条部22と一体に形成して構造の簡略化を図るようにしている。
【0030】
また、図4の場合、上記したように、切断用補助部21は、反表皮材6側に向って突出するように形成されている。そして、切断用補助部21は、突条部22とは別個に形成されている。
【0031】
(構成1−2)
既に上記しているが、上記多層部品8が、車両用内装部品2とされる。
【0032】
(補足説明1−2)
ここで、上記した「車両用内装部品2」は、車両の車室内前部に設けられる上記したインストルメントパネル1や、このインストルメントパネル1の助手席側の部分に設けられるグローブボックスなどの収納装置のボックスリッド部などとすることができる。
【0033】
但し、多層部品8は、上記したインストルメントパネル1や、グローブボックスのボックスリッド部以外にも使用することができるのは勿論である。
【0034】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(作用効果1−1)
芯材5の、表皮材6を切断する部分に、表皮材6側または反表皮材6側へ突出する切断用補助部21を設け、切断用補助部21を、発泡成形時の発泡層7の堰止部(凸状部22)よりも開口部11または凹部12の内側の位置に、発泡層7と(多層部品8または発泡層7の)厚み方向に重ならないように設けたことにより、切断用補助部21にて切断用工具14による表皮材6の切断を補助させることができる。この際、切断用工具14が芯材5の部分に食い込んだとしても、切断用補助部21によって、芯材5の部分に必要な強度を確保することができるようになる。これにより、芯材露出部13に付属部品3を取付けても、付属部品3との合せ面に芯材5の変形によるズレが生じるのを防止することができる。
よって、多層部品8に対して、開口部11や凹部12などを形成する作業を容易化することが可能となる。
【0035】
これに対し、芯材5に切断用補助部21を設けなかった場合には、図5図7に示すように、開口部11の周縁部の外側部分をトリミングする際に、熱刃などの切断用工具14で表皮材6のみを正確に切断することが難しいため、熱刃などの切断用工具14が芯材5に食い込んでしまう、即ち、表皮材6と共に芯材5の必要な肉厚の一部を切断してしまうおそれが高い。このように、芯材5の肉厚の一部が切断されると、図8に示すように、上記した付属部品3を取付けた際に、芯材5の肉厚を一部切断された部分が変形することによって、付属部品3との合せ面にズレが生じることになる。
【0036】
(作用効果1−2)
多層部品8が車両用内装部品2であることにより、車両に設置される多層部品8を、容易に形成することができる。
【実施例2】
【0037】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
図1、および、図9図15は、この実施の形態の実施例およびその変形例などを説明するためのものである。
【0038】
図1のような基本構成において、この実施例のものでは、高級感を演出するなどのために、上記した表皮材6に対し、ミシンなどによって縫製されて成る縫製線部9などを設けるなどして、例えば、皮革貼り調などに見えるようにしている。
【0039】
ここで、上記した「縫製線部9(スティッチ部)」には、ポリエステル製のミシン糸などが使われる。このポリエステル製のミシン糸は、熱に強く、しかも、多数の細かい糸を撚って形成されているので、非常に丈夫であり、単に、熱刃などの切断用工具14を押し当てただけでは、切断を行うのが非常に困難なものである。この場合、縫製線部9は、芯材露出部13の位置を通るように、表皮材6に設けられている。そして、芯材露出部13を形成する際には、縫製線部9ごと表皮材6をトリミングする必要がある。
【0040】
(構成2−1)
図9に示すように、上記芯材5の、上記表皮材6に形成された縫製線部9を切断する部分に、上記表皮材6側(または反表皮材6側)へ突出して、切断用工具14による上記縫製線部9の切断を補助するための切断用補助部21を設ける。
【0041】
(補足説明2−1)
上記した「表皮材6側または反表皮材6側」は、少なくとも一方、または、両方とすることができる。この場合には、どちらか一方、特に、表皮材6側となっている。
上記した「切断用補助部21」は、この場合、(表皮材および)縫製線部9の切断を補助するための(表皮材および)縫製線切断用補助部として設けられる。この切断用補助部21については、後述する。
【0042】
なお、この実施例の切断用補助部21(縫製線切断用補助部)は、上記実施例1の切断用補助部21(表皮切断用補助部)の機能を兼ね備えるようにしても良い。または、この実施例の切断用補助部21(縫製線切断用補助部)と、上記実施例1の切断用補助部21(表皮切断用補助部)とを、それぞれ別個に備えるようにしても良い。
【0043】
(構成2−2)
そして、図10に示すように、上記切断用補助部21が、上記切断用工具14と対向する位置に設けられて、上記切断用工具14を直接受ける工具受部25とされる。
【0044】
(補足説明2−2)
ここで、上記した「工具受部25」は、切断用工具14で縫製線部9を切断する際に、切断用工具14が食い込むことによってできる凹み(肉厚の一部を切断した部分)の分を考慮した高さ寸法となるように芯材露出部13となる部分から表皮材6側へ向けて突出される。そして、表皮材6および縫製線部9の切断後に、芯材5の切断用補助部21を設けた部分に、上記した芯材5の一定の肉厚と同じかそれよりも大きい肉厚を有する部分が残されるようにする。この工具受部25は、芯材5と一体に形成される。この場合、工具受部25は、切断用工具14を確実に受けることができるように、その頂部が、芯材5の表面と平行な平坦面とされている。
【0045】
(構成2−3)
または、図11に示すように、上記切断用補助部21が、表皮材6側の上記切断用工具14を挟んだ両側の位置に設けられて、外部の縫製線押圧保持具27との間で上記縫製線部9の切断位置を挟んだ両側の2箇所の位置で表皮材6の両面を挟着保持可能な一対の縫製線挟着用受台28とされる。
そして、少なくとも、一方の縫製線挟着用受台28が、上記表皮材6または上記縫製線部9の滑りを防止可能な滑止加工部29を有するものとされる。
【0046】
(補足説明2−3)
ここで、上記した「外部の縫製線押圧保持具27」は、表皮材6を切断する際に、表皮材6の少なくとも縫製線部9の周辺を押さえるクランプ装置などとされる。
【0047】
上記した「縫製線挟着用受台28」は、上記したクランプ装置で押さえるのに適した形状および大きさを有するものとされる。一対の縫製線挟着用受台28の間隔は、切断用工具14を挿入可能な間隔と同じか、それよりも若干広いものなどとする。縫製線挟着用受台28は、芯材露出部13となる部分から表皮材6側へ向けて突出される。縫製線挟着用受台28は、芯材5と一体に形成される。
【0048】
上記した「滑止加工部29」は、縫製線挟着用受台28の表面に形成された細かい凹凸形状部や、縫製線挟着用受台28の表面に貼り付けられた滑り止め部材などとすることができる。この場合には、縫製線挟着用受台28の先端部を尖らせることによって滑止加工部29となるようにしている。
【0049】
(構成2−4)
既に上記しているが、上記多層部品8が、車両用内装部品2とされる。
【0050】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(作用効果2−1)
芯材5の、表皮材6に形成された縫製線部9を切断する部分に、表皮材6側(または反表皮材6側)へ突出する切断用補助部21を設けたことにより、切断用補助部21にて切断用工具14による縫製線部9の切断を補助させることができる。これにより、縫製線部9が切れ難いものであっても、縫製線部9の切断不良が生じたり、または、切断用工具14によって芯材露出部13が凹まされて薄くなり、芯材露出部13の強度が低下したりすることを防止することができる。
よって、縫製線部9が形成された多層部品8に対して、開口部11や凹部12などを形成する作業を容易化することが可能となる。
【0051】
これに対し、芯材露出部13に切断用補助部21を設けなかった場合には、図12図13に示すように、切断用工具14で縫製線部9ごと表皮材6を切断しようとすると、図14に示すように、縫製線部9が切断されずに残ったり、図15に示すように、芯材露出部13に切断用工具14による凹みができて、芯材露出部13の肉厚が部分的に薄くなり、芯材露出部13の強度が低下してしまったりする、というような不具合が発生することになる。
【0052】
(作用効果2−2)
図10に示すように、切断用補助部21を、切断用工具14と対向する位置に設けられた工具受部25とすることにより、工具受部25で切断用工具14を直接受けることができるので、切断用工具14と工具受部25との間で、表皮材6および縫製線部9を直接挟んで確実に切断することが可能となる。この際、工具受部25は、切断用工具14が食い込むことによって、凹むように変形されるが、工具受部25は、凹み分の寸法を考慮して芯材露出部13から突出させる(即ち、厚くする)ことができるため、芯材露出部13の基本部分が凹んで薄くならないようにすることができ、芯材露出部13の強度低下を防止することができる。
【0053】
(作用効果2−3)
図11に示すように、切断用補助部21を、表皮材6側の切断用工具14を挟んだ両側の位置に設けられた一対の縫製線挟着用受台28とすることにより、一対の縫製線挟着用受台28と外部の縫製線押圧保持具27との間で縫製線部9の切断位置を挟んだ両側の2箇所の位置で表皮材6の両面を挟着保持して、縫製線部9に対し切断に必要な張力を付与することができる。これにより、切断用工具14によって、表皮材6および縫製線部9を確実に切断することが可能となる。この際、縫製線部9を芯材露出部13から浮かせた状態で切断することができるので、芯材露出部13の基本部分が凹んで薄くならないようにすることができ、芯材露出部13の強度低下を防止することができる。
また、少なくとも一方の縫製線挟着用受台28が滑止加工部29を有することにより、切断の際に表皮材6や縫製線部9が縫製線挟着用受台28と縫製線押圧保持具27との間から滑って、上記した張力が低下するのを防止することができる。
【0054】
(作用効果2−4)
多層部品8が車両用内装部品2であることにより、車両に設置される縫製線部9を有する多層部品8を、容易に形成することができる。
【0055】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0056】
2 車両用内装部品
5 芯材
6 表皮材
7 発泡層
8 多層部品
9 縫製線部
13 芯材露出部
14 切断用工具
21 切断用補助部
25 工具受部
27 縫製線押圧保持具
28 縫製線挟着用受台
29 滑止加工部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15