(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の杭の第1実施形態を示す斜視図である。また、
図2は、第1実施形態の杭の先端側を拡大して示す斜視図であり、
図3(a)、(b)は、第1実施形態の杭を
図1の2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図である。
【0025】
図1、
図2、及び
図3(a)、(b)に示すように第1実施形態の杭11は、杭本体12と、板状部材13とを備えている。杭本体12は、断面形状がL形のL形鋼であり、杭本体12の長手方向に延在する2枚の壁部12a、12bを有している。杭本体12の先端12dの側では、各壁部12a、12bにそれぞれの溝孔15a、15bが形成されている。各溝孔15a、15bは、杭本体12の埋設時上側となる頭部12cの側から埋設時下側となる先端12dの側へと近づくにつれ、杭本体12の長手方向から該長手方向と交差する方向へと滑らかに屈曲して延在し、概ねJ字形を描いている。
【0026】
各溝孔15a、15bは、杭本体12の長手方向の位置が一致する各壁部12a、12bの部位にそれらの屈曲の向き(J字形の屈曲の方向)を揃えて形成されている。あるいは、杭本体12のL形の角及び各壁部12a、12bの中央を通って杭本体12の長手方向に延びる仮想対称面を定義すると、各溝孔15a、15bが仮想対称面に対して面対称に形成されている。
【0027】
各溝孔15a、15bの幅Wは、一定に設定されている。また、各溝孔15a、15bの周縁は、円弧を描く。各溝孔15a、15bの周縁は、楕円、双曲線、放物線等の他の曲線を描いても、あるいは複数の直線又は曲線を連続させた折れ曲がり線を描いてもよく、概ね滑らかに曲がれば、如何なる種類の曲線あるいは折れ曲がり線を描いても構わない。更に、各溝孔15a、15bの下側終端近傍では、該各溝孔15a、15bの周縁が水平方向又は水平に近い傾斜方向に向いている。
【0028】
板状部材13は、矩形状の鋼板であり、各溝孔15a、15bの最も離間した部位の間隔よりも十分に長く、各溝孔15a、15bの幅Wよりも薄い厚みを有する。板状部材13は、各溝孔15a、15bに沿って移動自在な状態で該各溝孔15a、15bに差し込まれており、板状部材13の両側部分が各壁部12a、12bの外側に突出している。
【0029】
杭本体12の長さ及び厚みは、杭本体12が打ち込まれる地盤の種類や地層の構成あるいは打ち込み長さ等に応じて、つまり杭11の使用状況に応じて適宜設定すればよい。また、板状部材13の長さ及び厚みは、杭本体12のサイズと杭11の使用状況に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
図4は、本発明の杭の第2実施形態を示す斜視図である。また、
図5は、第2実施形態の杭の先端側を拡大して示す斜視図であり、
図6(a)、(b)は、第2実施形態の杭を
図4の2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図である。
【0031】
図4、
図5、及び
図6(a)、(b)に示すように第2実施形態の杭21は、杭本体22と、板状部材23とを備えている。杭本体22は、第1実施形態の杭本体12と概ね同様の形状であって、杭本体22の長手方向に延在する2枚の壁部22a、22bと、杭本体22の先端22dの側で各壁部22a、22bに形成されたそれぞれのJ字形の溝孔25a、25bとを有している。また、各溝孔25a、25bは、杭本体22の長手方向の位置が一致する各壁部22a、22bの部位にそれらの屈曲の向き(J字形の屈曲の方向)を揃えて形成されている。
【0032】
ただし、杭本体22の各溝孔25a、25bの形状が第1実施形態の杭本体12の各溝孔15a、15bの形状とは異なり、また板状部材23の形状が第1実施形態の板状部材13の形状とは異なる。
【0033】
各溝孔25a、25bの幅Wは、該各溝孔25a、25bの上側開始端から該各溝孔25a、25bが杭本体22の長手方向と交差する方向へと滑らかに屈曲し始めるまで一定に維持されているが、屈曲の途中から各溝孔25a、25bの下側終端までは徐々に狭くされており、この下側終端では各溝孔25a、25bの幅Wが板状部材23の厚みと略同一か又は板状部材23の厚みよりも僅かに広く設定されている。
【0034】
板状部材23は、矩形状の鋼板をその両端部近傍の2箇所で同一方向に折り曲げたものであり、平板状の中央部23aと、各折り曲げ部23bとを有している。中央部23aは、各溝孔25a、25bの最も離間した部位の間隔よりも十分に長い。板状部材23は、各溝孔25a、25bに沿って移動自在な状態で該各溝孔25a、25bに差し込まれており、中央部23aの両側部分及び各折り曲げ部23bが各壁部22a、22bの外側に突出している。
【0035】
杭本体22の長さ及び厚みは、杭21の使用状況に応じて適宜設定され、板状部材23の長さ及び厚みは、杭本体22のサイズと杭21の使用状況に応じて適宜設定される。
【0036】
図7Aは、本発明の杭の第3実施形態を示す斜視図である。また、
図7B(a)、(b)は、第3実施形態における板状部材を示す平面図及び断面図である。更に、
図8は、第3実施形態の杭の先端側を拡大して示す斜視図であり、
図9(a)、(b)は、第3実施形態の杭を
図7Aの2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図である。
【0037】
図7A、
図7B、
図8、及び
図9(a)、(b)に示すように第3実施形態の杭31は、杭本体32と、板状部材33とを備えている。杭本体32は、第1実施形態の杭本体12と概ね同様の形状であって、杭本体32の長手方向に延在する2枚の壁部32a、32bと、杭本体32の先端32dの側で各壁部32a、32bに形成されたそれぞれのJ字形の溝孔35a、35bとを有している。また、各溝孔35a、35bは、杭本体32のL形の角及び各壁部32a、32bの中央を通って杭本体32の長手方向に延びる仮想対称面に対して面対称に形成されている。
【0038】
ただし、杭本体22の各溝孔35a、35bの形状が第1実施形態の杭本体12の各溝孔15a、15bの形状とは異なり、また板状部材33の形状が第1実施形態の杭本体12の板状部材13の形状とは異なる。
【0039】
各溝孔35a、35bの幅Wは、該各溝孔35a、35bの上側開始端から該各溝孔35a、35bが杭本体32の長手方向と交差する方向へと滑らかに屈曲し始めるまで、板状部材33の厚みと略同一か又は板状部材33の厚みよりも僅かに広く設定されている。また、各溝孔35a、35bの幅Wは、杭本体32の長手方向と交差する方向へと屈曲する途中から徐々に広くなり、板状部材33の厚みよりも十分に広い一定幅になると、この一定幅を維持してJ字形の下側終端に至る。
【0040】
板状部材33は、鋼板を概ねV字形に打ち抜いたものであり、矩形状の中央部33a及び各アーム部33bを有している。板状部材33は、各溝孔35a、35bの最も離間した部位の間隔よりも十分に長い。板状部材33は、各溝孔35a、35bに沿って移動自在な状態で該各溝孔35a、35bに差し込まれており、板状部材33の両側部分が各壁部32a、32bの外側に突出している。
【0041】
杭本体32の長さ及び厚みは、杭31の使用状況に応じて適宜設定され、板状部材33の長さ及び厚みは、杭本体32のサイズと杭31の使用状況に応じて適宜設定される。
【0042】
次に、本発明の杭設置用治具の第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の杭設置用治具の第4実施形態を示す斜視図である。また、
図11(a)、(b)は、第4実施形態の杭設置用治具を
図10の2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図であり、
図12は、第4実施形態の杭設置用治具を上方からから視て示す平面図である。
【0043】
図10、
図11(a)、(b)、及び
図12に示すように第4実施形態の杭設置用治具41は、2つの壁部41a、41bをL形に接続してなるL形部41cと、各壁部41a、41bの下端から下方に延長されたそれぞれのアーム部41d、41eと、各壁部41a、41bの上端で外側に折り曲げられたそれぞれの天板41f、41gとを有している。各壁部41a、41bには、それぞれの穿孔41hが形成されている。各アーム部41d、41eは、互いに離間しており、各アーム部41d、41eの下端近傍の側辺にそれぞれの切欠部42が形成されている。
【0044】
各切欠部42は、上側の押当辺42aと、側辺42bと、下側の受け辺42cとを有している。押当辺42aは、側辺42bの側で上向きとなるように僅かに屈曲して傾斜しており、押当辺42aと側辺42bとの間の角度が鋭角にされて、これらの間に保持スペース42dが形成されている。
【0045】
このような第4実施形態の杭設置用治具41は、第1乃至第3実施形態の杭11、21、31のいずれに対しても適用することができる。また、杭設置用治具41の長さ及び厚みは、杭設置用治具41が適用される杭のサイズ及び使用状況に応じて適宜設定すればよい。
【0046】
図13は、本発明の杭設置用治具の第5実施形態を示す斜視図である。また、
図14(a)、(b)は、第5実施形態の杭設置用治具を
図13の2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図であり、
図15は、第4実施形態の杭設置用治具を上方からから視て示す平面図である。
【0047】
図13、
図14(a)、(b)、及び
図15に示すように第5実施形態の杭設置用治具51は、第4実施形態の杭設置用治具41と概ね同様の形状であって、2つの壁部51a、51bをL形に接続してなるL形部51cと、各壁部51a、51bの下端から下方に延長されたそれぞれのアーム部51d、51eと、各壁部51a、51bの上端で外側に折り曲げられたそれぞれの天板51f、51gとを有している。各壁部51a、51bには、それぞれの穿孔51hが形成されている。
【0048】
ただし、各アーム部51d、51eの下端近傍の側辺に形成されたそれぞれの切欠部52の形状が、第4実施形態の各アーム部41d、41eの下端近傍の側辺に形成されたそれぞれの切欠部42の形状とは異なる。
【0049】
各切欠部52は、上側の押当辺52aと、側辺52bと、下側の受け辺52cと、押当辺52aに連続形成されて各アーム部51d、51eの側辺に至る傾斜辺52eとを有している。押当辺52aは、側辺52bの側で上向きとなるように僅かに屈曲して傾斜しており、押当辺52aと側辺52bとの間の角度が鋭角にされて、これらの間に保持スペース52dが形成されている。傾斜辺52eは、杭設置用治具51の頭部に近づくほど押当辺52aから杭設置用治具51の長手方向と交差する方向に離間するように傾斜している。
【0050】
このような第5実施形態の杭設置用治具51は、第1乃至第3実施形態の杭11、21、31のいずれに対しても適用することができる。また、杭設置用治具51の長さ及び厚みは、杭設置用治具51が適用される杭のサイズ及び使用状況に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
図16は、本発明の杭設置用治具の第6実施形態を示す斜視図である。また、
図17(a)、(b)は、第6実施形態の杭設置用治具を
図16の2つの矢印方向A、Bから視て示す側面図であり、
図18は、第6実施形態の杭設置用治具を上方からから視て示す平面図である。
【0052】
図16、
図17(a)、(b)、及び
図18に示すように第6実施形態の杭設置用治具61は、第4実施形態の杭設置用治具41と概ね同様の形状であって、2つの壁部61a、61bをL形に接続してなるL形部61cと、各壁部61a、61bの上端で外側に折り曲げられたそれぞれの天板61f、61gとを有している。各壁部61a、61bには、それぞれの穿孔61hが形成されている。また、各壁部61a、61bの下端には、それぞれの切欠部62が形成されている。
【0053】
ただし、杭設置用治具61は、第4実施形態の各アーム部41d、41eに相当するものを持たず、各壁部61a、61bを第4実施形態の各アーム部41d、41eの長さ分だけ延長している。また、各壁部61a、61b下端の切欠部62の形状が、第4実施形態の各アーム部41d、41eの下端近傍の側辺に形成されたそれぞれの切欠部42の形状とは異なる。
【0054】
各切欠部62は、上側の押当辺62aと、側辺62bと、押当辺62aに連続形成されて各壁部61a、61bの側辺に至る傾斜辺62eとを有している。押当辺62aは、側辺62bの側で上向きとなるように僅かに屈曲して傾斜しており、押当辺62aと側辺62bとの間の角度が鋭角にされて、これらの間に保持スペース62dが形成されている。傾斜辺62eは、杭設置用治具61の頭部に近づくほど押当辺62aから杭設置用治具61の長手方向と交差する方向に離間するように傾斜している。
【0055】
また、各切欠部62は、第4実施形態の切欠部42の受け辺42c及び第5実施形態の切欠部52の受け辺52cに相当するものを持っていない。
【0056】
このような第6実施形態の杭設置用治具61は、第1乃至第3実施形態の杭11、21、31のいずれに対しても適用することができる。また、杭設置用治具61の長さ及び厚みは、杭設置用治具61が適用される杭のサイズ及び使用状況に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
次に、本発明の杭の設置方法の第7実施形態について説明する。第7実施形態の設置方法は、
図10、
図11(a)、(b)、及び
図12に示す第4実施形態の杭設置用治具41を用いて、
図1、
図2、及び
図3(a)、(b)に示す第1実施形態の杭11を地中に埋設する方法であり、
図19(a)〜(d)、
図20(a)に示すような各工程で実施される。
【0058】
まず、
図19(a)に示すように杭本体12の各溝孔15a、15bに板状部材13を差し込んで、板状部材13の両側部分を各壁部12a、12bの外側に突出させた状態で、杭本体12の各壁部12a、12bの外側に杭設置用治具41のL形部41c及び各アーム部41d、41eを重ね合わせて、各壁部41a、41b及び各アーム部41d、41eからなる長尺部を杭本体12に長手方向に沿って配し、各壁部12a、12bの外側に突出している板状部材13の両側部分を杭設置用治具41の各アーム部41d、41の切欠部42に嵌め入れる。このとき、板状部材13の両側部分が各アーム部41d、41の切欠部42の受け辺42cに載って、各溝孔15a、15bに沿って上下方向に移動自在な板状部材13が定位置に保持される。
【0059】
図19(a)に示すように杭11及び杭設置用治具41を組み合わせた状態で、
図19(b)に示すように杭11及び杭設置用治具41を共に地中に打ち込む。例えば、重機の打撃ハンマー等により杭11及び杭設置用治具41を打ち込む。このとき、杭11と杭設置用治具41との間にアダプター等を介在させて、杭11と杭設置用治具41とが上下方向に互いにずれることを防止した上で、杭11及び杭設置用治具41を同時に地中に打ち込む。
【0060】
引き続いて、
図19(c)、(d)に示すように杭設置用治具41だけを杭本体12の各溝孔15a、15bの長さの分だけ更に深く打ち込む。例えば、先に述べたアダプター等を取外してから、打撃ハンマー等により杭設置用治具41の各天板41f、41gを繰り返し打撃して、杭設置用治具41だけを地中に打ち込み、杭設置用治具41の天板41f、41gが杭本体12の上端に達すると、杭設置用治具41の各天板41f、41gの打撃を停止する。これにより、杭設置用治具41だけが杭本体12の各溝孔15a、15bの長さの分だけ打ち込まれる。
【0061】
板状部材13の両側部分が杭設置用治具41の各アーム部41d、41eの切欠部42に嵌め入れられていることから、杭設置用治具41だけが杭本体12の各溝孔15a、15bの長さの分だけ更に深く打ち込まれると、各アーム部41d、41eの切欠部42の押当辺42aが杭本体12の頭部12cの側から板状部材13の両側部分の側端13aに当接して板状部材13を押し下げ、板状部材13が各溝孔15a、15bに沿って移動して行く。このとき、板状部材13の両側部分の側端13aが各アーム部41d、41eの切欠部42の保持スペース42dで保持されて、板状部材13が確実に押し下げられる。そして、板状部材13は、各溝孔15a、15bに沿って杭本体12の長手方向と交差する方向に移動し、更に各溝孔15a、15bの下側終端に突き当たって停止する。これにより、板状部材13は、各溝孔15a、15bの長手方向と交差する方向(水平方向もしくは水平に近い傾斜方向)に延びる部位、つまり各溝孔15a、15bの下側終端近傍の部位で挟まれて支持される。
【0062】
この後、
図20(a)に示すように杭設置用治具41だけを地中から引き抜く。例えば、杭設置用治具41の各穿孔41hにフックを引っ掛けて、建機によりフックを引張り上げることにより杭設置用治具41だけを引き抜く。この結果、杭11が地中に埋設される。
【0063】
ここで、
図20(a)、(b)から明らかなように板状部材13は、杭本体12の各溝孔15a、15bの長手方向と交差する方向に延びる部位に挟まれているので、杭本体12に対して板状部材13が上下方向で固定される。また、板状部材13の表面が概ね水平方向に拡がって、板状部材13が地中で上下に移動し難くなり、土砂により板状部材13が固定される。すなわち、杭本体12に対して板状部材13が上下方向で固定され、土砂により板状部材13が固定される。これにより、杭本体12の引き抜き強度及び支持力が高くなる。
【0064】
また、水平に対して板状部材13の表面がなす角度を適宜設定することにより、杭本体12の引き抜き強度の更なる向上を期待することができる。その角度が0度であれば、つまり板状部材13の表面が水平であれば、最も引き抜き強度が大きくなる。このため、いずれの実施形態でも、板状部材13の表面が概ね水平となるように記載している。しかしながら、板状部材13の表面が水平もしくは概ね水平である必要はない。杭本体12の設置深さ、設置場所の地質等に合わせ、水平に対して板状部材13の表面がなす角度を、板状部材13の長さ、幅、厚さ等とともに適宜変更してよい。
【0065】
尚、上記概ね水平とは、水平に対して板状部材13の表面がなす角度が20度以下となる状態を想定している。これは、杭本体12の引き抜き強度の向上と、上方から板状部材13に力を加えて、板状部材13を各溝孔15a、15bに沿って移動させるという設置方法に好適なためである。
【0066】
一方、上記第7実施形態の設置方法は、
図13、
図14(a)、(b)、及び
図15に示す第5実施形態の杭設置用治具51を用いて、
図4、
図5、及び
図6(a)、(b)に示す第2実施形態の杭21を地中に埋設するためにも適用することができる。その各工程を、
図21(a)〜(d)、
図22に示す。
【0067】
まず、
図21(a)に示すように杭本体22の各壁部22a、22bの外側に杭設置用治具51の各壁部51a、51b及び各アーム部51d、51eを重ね合わせて、各壁部51a、51及び各アーム部51d、51eからなる長尺部を杭本体22に長手方向に沿って配し、各壁部22a、22bの外側に突出している板状部材23の両側部分を杭設置用治具51の各アーム部51d、51eの切欠部52に嵌め入れて、板状部材23の両側部分を各アーム部51d、51eの切欠部52の受け辺52cに載せて保持する。
【0068】
図21(a)に示すように杭21及び杭設置用治具51を組み合わせた状態で、
図21(b)に示すように杭21及び杭設置用治具51を共に地中に打ち込む。
【0069】
引き続いて、
図21(c)、(d)に示すように杭設置用治具51だけを杭本体22の各溝孔25a、25bの長さの分だけ更に深く打ち込む。このとき、板状部材23の両側部分が杭設置用治具51の各アーム部51d、51eの切欠部52に嵌め入れられていることから、杭設置用治具51だけが更に深く打ち込まれると、杭設置用治具51の各アーム部51d、51eの切欠部52の押当辺52aが杭本体22の頭部22cの側から板状部材23の両側部分の側端23cに当接して板状部材23を押し下げ、板状部材23が各溝孔25a、25bに沿って杭本体22の長手方向かつ下方に移動する。また、板状部材23の両側部分の側端23cが各アーム部51d、51eの切欠部52の保持スペース52dで保持されて、板状部材23が確実に押し下げられる。そして、板状部材23が各溝孔25a、25bに沿って杭本体22の長手方向と交差する方向に(水平方向又は水平に近い傾斜方向)移動し始めると、各アーム部51d、51eの切欠部52に対する板状部材23の側端23cの当接箇所が該各切欠部52の押当辺52aから傾斜辺52eへと移行し、各切欠部52の傾斜辺52eが板状部材23の両側部分の側端23cを斜め下方に押し下げて移動させて行く。これにより、板状部材23が各溝孔25a、25bに沿って滑らかに移動され、更に板状部材23が各溝孔25a、25bの下側終端に突き当たって停止する。
【0070】
この後、
図22に示すように杭設置用治具51だけが地中から引き抜かれて、杭21だけが地中に埋設される。
【0071】
ここで、板状部材23は、その各折り曲げ部23bが上向きに折れ曲がった状態で杭本体22の各溝孔25a、25bに差し込まれているので、杭本体22の打ち込みの過程では、板状部材23の各折り曲げ部23bが地中で抵抗を受け、板状部材23が自ら回転してJ字型の各溝孔25a、25bに沿って滑らかに移動する。
【0072】
また、板状部材23の各折り曲げ部23bが杭本体22の各壁部22a、22bの外側に突出していることから、杭本体22の打ち込みの途中で板状部材23が横方向にずれても、板状部材23の各折り曲げ部23bの一方が杭本体22の各壁部22a、22bのいずれかに当接することになり、板状部材23が杭本体22の各溝孔25a、25bから外れることはない。
【0073】
また、杭本体22の各溝孔25a、25bの下側終端では該各溝孔25a、25bの幅Wが板状部材23の厚みと略同一か又は板状部材23の厚みよりも僅かに広く設定されていることから、板状部材23が各溝孔25a、25bの下側終端に突き当たって停止すると、板状部材23が各溝孔25a、25bの下側終端の近傍部位でガタツキなく挟み込まれる。更に、板状部材23は、その平板状の中央部23aと各折り曲げ部23bとの内側に土砂を抱え込んで、強固に固定される。すなわち、杭本体22に対して板状部材23の上下方向の移動が確実に禁止され、土砂により板状部材23が強固に固定される。このため、杭本体22の引き抜き強度及び支持力がより高くなる。
【0074】
次に、本発明の杭の設置方法の第8実施形態について説明する。第8実施形態の設置方法は、
図16、
図17(a)、(b)、及び
図18に示す第6実施形態の杭設置用治具61を用いて、
図7A、
図7B、
図8、及び
図9(a)、(b)に示す第3実施形態の杭31を地中に埋設する方法であり、
図23(a)〜(d)、
図24に示すような各工程で実施される。
【0075】
まず、
図23(a)に示すように杭本体32の各溝孔35a、35bに板状部材33を差し込んで、板状部材33の両側部分を各壁部32a、32bの外側に突出させた状態で、
図23(b)に示すように杭31だけを地中に打ち込む。
【0076】
そして、
図23(c)に示すように杭本体32の各壁部32a、32bの外側に杭設置用治具61の各壁部61a、61bを重ね合わせて、各壁部62a、61からなる長尺部を杭本体32に長手方向に沿って配し、杭設置用治具61の各天板61f、61gを繰り返し打撃して、杭設置用治具61だけを地中に打ち込む。これにより、地中において杭本体32の各壁部32a、32bの外側に杭設置用治具61の各壁部61a、61bが重ね合わされ、杭設置用治具61の各壁部61a、61bの押当辺62aが板状部材33の両側部分の側端33cに当接する。
【0077】
引き続いて、
図23、(d)に示すように杭設置用治具61だけを杭本体32の各溝孔35a、35bの長さの分だけ更に深く打ち込む。杭設置用治具61の各壁部61a、61bの押当辺62aが板状部材33の両側部分の側端33cに当接していることから、杭設置用治具61だけが更に深く打ち込まれると、杭設置用治具61の各壁部61a、61bの押当辺62aが板状部材33を押し下げ、板状部材33が各溝孔35a、35bに沿って杭本体32の長手方向かつ下方に移動する。このとき、板状部材33の両側部分の側端33cが各壁部61a、61bの切欠部62の保持スペース62dで保持されて、板状部材33が確実に押し下げられる。そして、板状部材33が各溝孔35a、35bに沿って杭本体32の長手方向と交差する方向に(水平方向又は水平に近い傾斜方向)移動し始めると、各壁部61a、61bの切欠部62に対する板状部材33の側端33cの当接箇所が該各切欠部62の押当辺62aから傾斜辺62eへと移行し、各切欠部62の傾斜辺62eが板状部材33の側端33cを斜め下方に押し下げて移動させて行く。これにより、板状部材33が各溝孔35a、35bに沿って滑らかに移動され、更に板状部材33が各溝孔35a、35bの下側終端に突き当たって停止する。
【0078】
この後、
図24に示すように杭設置用治具61だけが地中から引き抜かれて、杭31だけが地中に埋設される。
【0079】
ここで、各溝孔35a、35bの幅Wは、該各溝孔35a、35bの上側開始端から該各溝孔35a、35bが杭本体22の長手方向と交差する方向へと滑らかに屈曲し始めるまで、板状部材33の厚みと略同一か又は板状部材33の厚みよりも僅かに広く設定されている。このため、杭設置用治具61の各壁部61a、61bの押当辺62aによる板状部材33の押し下げの開始時には、各溝孔35a、35bにより板状部材33がぶれることなく下方へとガイドされて、板状部材33の地中で受ける抵抗が低減され、板状部材33が各溝孔35a、35bに沿って速やかに移動する。また、板状部材33は、V字形であるから、杭本体32の各壁部32a、32bに対して略直交して該杭本体32の外側に長く突出し、その外側に突出した板状部材33の両端部に多くの土砂を抱え込んで、強固に固定される。この結果、板状部材33により杭本体32の引き抜き強度及び支持力が確実に高められる。
【0080】
次に、本発明の杭の他の各実施形態を簡単に説明する。
図25に示す第9実施形態の杭71は、断面形状がZ字型の杭本体72と、板状部材73とを備えている。杭本体72は、杭本体72の長手方向に延在する3枚の壁部72a、72b、72cを有しており、各壁部72a、72b、72cの先端近傍(杭本体72の先端近傍)には、それぞれの溝孔72d、72e、72fが形成されている。各溝孔72d、72e、72fは、杭本体72の長手方向において互いの位置が一致し、概ねJ字形を描いて、それらの屈曲の向き(J字形の屈曲の方向)を揃えて形成されている。矩形状の板状部材73は、各溝孔72d、72e、72fに移動自在に差し込まれており、板状部材73の両側部分が各壁部72a、72cの外側に突出している。
【0081】
図26Aに示す第10実施形態の杭81は、断面形状がH字型の杭本体82と、板状部材83とを備えている。杭本体82は、杭本体82の長手方向に延在して互いに対向する2枚の壁部82a、82bを有しており、各壁部82a、82bの先端近傍(杭本体82の先端近傍)には、それぞれの溝孔82c、82dが形成されている。各溝孔82c、82dは、杭本体82の長手方向において互いの位置が一致し、概ねJ字形を描いて、それらの屈曲の向き(J字形の屈曲の方向)を揃えて形成されている。矩形状の板状部材83は、各溝孔82c、82dに移動自在に差し込まれており、板状部材83の両側部分が各壁部82a、82bの外側に突出している。
【0082】
図26Bに示すように1組の溝孔82c、82dだけではなく、他の1組の溝孔82e、82fを各壁部82a、82bの先端近傍に形成し、他の板状部材85を他の1組の溝孔82e、82fを移動自在に差し込んでもよい。更に、各壁部82a、82bを接続する中央の壁部に別の1つの溝孔82gを形成して、別の板状部材86を別の1つの溝孔82gに差し込んでも構わない。
【0083】
図27に示す第11実施形態の杭91は、円筒状の杭本体92と、板状部材93とを備えている。杭本体92の先端近傍では、該杭本体92の周壁の互いに対向する部位に一対の溝孔92a、92bが形成されている。各溝孔92a、92bは、杭本体92の長手方向において互いの位置が一致し、概ねJ字形を描いて、それらの屈曲の向き(J字形の屈曲の方向)を揃えて形成されている。矩形状の板状部材93は、各溝孔92a、92bに移動自在に差し込まれており、板状部材93の両側部分が杭本体92の周壁の外側に突出している。
【0084】
このような杭71、81、91を設置するための杭設置用治具としては、杭本体72、82、92の頭部側から板状部材73、83、93の両端部に当接して、板状部材73、83、93を押し下げる2つの押当部を有するものが好ましい。
【0085】
図28(a)、(b)は、板状部材の変形例を示す平面図及び断面図である。この変形例の板状部材101は、平面視すると矩形状であり、また側面視するとクサビ型の断面形状であって、ブレード状のものである。このようなクサビ型の断面形状は、板状部材101が地中で移動されるときに受ける抵抗を低減させるので、板状部材101を杭本体の溝孔に沿って容易に移動させることができる。
【0086】
図29(a)、(b)は、板状部材の他の変形例を示す平面図及び断面図である。この他の変形例の板状部材102は、平面視すると矩形状であり、また側面視すると波型の断面形状を有している。このような波型の断面形状は、板状部材102の折り曲げ剛性を高めるので、杭本体の引き抜き強度及び支持力を高めることができる。また、波型の代りに、鋸刃状の断面形状を適用しても、同様の効果を得ることができる。
【0087】
図30(a)、(b)は、板状部材の別の変形例を示す平面図及び断面図である。この別の変形例の板状部材104は、杭設置用治具41(又は杭設置用治具51、61)の押当辺42a(又は押当辺52a、62a)に当接する該板状部材104の側端に2つの凸部104aを設けている。各凸部104aの内側には、杭設置用治具41(又は杭設置用治具51、61)の各アーム部41d、41e(又は各アーム部51d、51e、各壁部61a、61b)が挟み込まれ、各凸部104aにより地中における各アーム部41d、41e(又は各アーム部51d、51e、各壁部61a、61b)の捻れや変形が防止される。
【0088】
図31(a)、(b)は、板状部材の更に他の変形例を示す平面図及び断面図である。この更に他の変形例の板状部材105は、杭設置用治具41(又は杭設置用治具51、61)の押当辺42a(又は押当辺52a、62a)に当接する該板状部材105の側端に2つの凹部105aを設けている。各凹部105aの内側には、杭設置用治具41(又は杭設置用治具51、61)の各アーム部41d、41e(又は各アーム部51d、51e、各壁部61a、61b)が嵌合し、各凹部105aにより地中における各アーム部41d、41e(又は各アーム部51d、51e、各壁部61a、61b)の捻れや変形が防止される。
【0089】
尚、
図30(a)、(b)に示すように板状部材104の側端に2つの凸部104aを設ける代わりに、板状部材104の表面又は裏面に複数の凸部を形成して、各凸部の内側に杭設置用治具41(又は杭設置用治具51、61)の各アーム部41d、41e(又は各アーム部51d、51e、各壁部61a、61b)を挟み込んでも構わない。
【0090】
また、上記各実施形態の杭や上記各変形例の板状部材を適宜組み合わせたり変形させたりしても構わない。例えば、杭本体の溝孔の上側開始端側と下側終端側のいずれにおいても、溝孔の幅を板状部材の厚みと略同一か又は板状部材の厚みよりも僅かに広く設定し、溝孔の屈曲部位においては、溝孔の幅を板状部材の厚みよりも十分に広くしてもよい。また、杭本体として、中空ではない四角柱状や円柱状のものを適用し、この杭本体に1つの溝孔を設けて、この溝孔に板状部材を差し込んでもよい。更に、杭設置用治具を用いて、板状部材を杭本体の溝孔に沿って移動させた後、杭設置用治具を抜き取っているが、杭設置用治具を抜き取らずに地中に残し、杭設置用治具を杭本体の補強部材として用いても構わない。
【0091】
次に、本発明の杭を適用した太陽光発電システムの第12実施形態を説明する。
図32は、第12実施形態の太陽光発電システムを示す斜視図である。また、
図33は第12実施形態の太陽光発電システムを示す背面図であり、
図34は第12実施形態の太陽光発電システムを示す側面図である。
【0092】
この太陽光発電システム111では、産業用の発電所の実現を前提としており、
図26に示す第10実施形態の杭81を用いて、多数の太陽電池モジュール112を支持する架台113を固定している。
【0093】
尚、
図32、
図33、及び
図34においては、各太陽電池モジュール112を東西方向及び南北方向に配列し、各太陽電池モジュール112を太陽光の入射方向に向けて傾斜させている。また、杭81の代わりに、他の各実施形態や各種変形例の杭を適用しても構わない。
【0094】
図32、
図33、及び
図34に示すように太陽光発電システムにおいては、複数の杭81を東西方向に第1規定間隔でかつ南北方向に第2規定間隔で並べて地中に打ち込み、各杭81の上端に架台113を固定して支持している。
【0095】
架台113は、各杭81の延長上に設けられて立設されたそれぞれの支柱121と、各支柱121を各杭81の上端に接続固定するためのそれぞれの接続ユニット122と、南北方向に隣り合う各支柱121別に、それらの支柱121の間に張架されたブレース123と、東西方向に隣り合う各支柱121別に、それらの支柱121の間に張架されたブレース124と、南北方向に隣り合う各支柱121別に、それらの支柱121の上端に架け渡された縦桟125と、東西方向に並ぶ複数の縦桟125上に並べて支持されて、東西方向に延びる4本の横桟126とを有している。
【0096】
このような構成の架台においては、隣り合う2本の横桟126の間に複数の太陽電池モジュール112を横一列に並べて搭載し、4本の横桟126上に、複数の太陽電池モジュール112を3列に並べて搭載している。
【0097】
図35は、支柱121を杭81の上端に接続固定するための接続ユニット122を示す斜視図である。また、
図36は、接続ユニット122を示す断面図である。
【0098】
図35及び
図36に示すように接続ユニット122は、L字型アタッチメント131とジョイント部材134とを有している。L字型アタッチメント131を杭81の上端に載せて、L字型アタッチメント131の側壁部131aを杭81の互いに対向する2枚の壁部82a、82bの一方に重ね合わせ、2組のボルト132及びナット133を用いて、L字型アタッチメント131の側壁部131aを杭81の各壁部82a、82bの一方に固定する。
【0099】
また、L字型アタッチメント131の上壁部131bにジョイント部材134を載せて、1組のボルト135、ナット136、スペーサ137を用いて、ジョイント部材134をL字型アタッチメント131の上壁部131bに固定する。
【0100】
更に、支柱121の内側にジョイント部材134を差し入れて、支柱121及びジョイント部材134の孔にボルト138を貫通させ、ボルト138の先端にナットをねじ込んで締め付ける。これにより、支柱121が杭81の上端に接続固定される。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
【0102】
上記実施形態の説明から明らかなように、本発明の杭(杭11)は、地中に埋設される杭であって、柱状の杭本体(杭本体12)と、前記杭本体に形成され、前記杭本体の埋設時の上側から下側へ向かって、前記杭本体の長手方向から前記長手方向と交差する方向へと屈曲して延在する溝孔(溝孔15a)と、前記溝孔に差し込まれた板状部材(板状部材13)とを備えている。
【0103】
このような本発明の杭では、杭本体の溝孔に板状部材が差し込まれて、杭本体が地中に打ち込まれる。この状態で、治具等を用いて、板状部材を押し下げると、板状部材が溝孔に沿って地中で移動する。溝孔は、杭本体の埋設時の上側から下側へ向かって、杭本体の長手方向から長手方向と交差する方向へと屈曲して延在することから、板状部材が溝孔に沿って移動すると該溝孔の長手方向と交差する方向に延びる部位に挟まれて支持される。このとき、溝孔のその交差する方向に延びる部位により杭本体の引き抜き方向(長手方向で上方向)への板状部材の移動が禁止され、また土砂により板状部材が固定されるので、杭本体の引き抜き強度及び支持力が高くなる。
【0104】
また、本発明の杭においては、前記溝孔を複数設け、前記各溝孔(各溝孔15a、15b)は、前記杭本体の長手方向の位置が一致するそれぞれの部位に前記屈曲の向きを揃えて形成されている。
【0105】
更に、本発明の杭においては、前記溝孔を複数設け、前記各溝孔は、該各溝孔の間を通って前記杭本体の長手方向に延びる仮想対称面に対して面対称に形成されている。
【0106】
この場合は、杭本体の複数の溝孔に板状部材が差し込まれて、杭本体が地中に打ち込まれ、板状部材が押し下げられて、板状部材が各溝孔に沿って移動して該各溝孔の長手方向と交差する方向に延びる部位に挟まれて支持される。従って、板状部材の複数箇所が各溝孔に挟まれて支持され、板状部材がより強固に支持されて、杭本体の引き抜き強度及び支持力がより高くなる。
【0107】
また、本発明の杭においては、前記杭本体は、前記杭本体の長手方向に延在する複数の壁部(各壁部12a、12b)を有し、前記各溝孔は、前記各壁部にそれぞれ形成されている。
【0108】
例えば、杭本体としてL形鋼を用いる場合は、杭本体が2つの壁部を有し、杭本体としてH形鋼を用いる場合は、杭本体が3つの壁部を有する。これらの壁部に、それぞれの溝孔を形成する。
【0109】
更に、本発明の杭においては、前記溝孔の幅を、該溝孔が延在する方向の位置に応じて異ならせている。
【0110】
例えば、溝孔の幅を該溝孔の長手方向と交差する方向に延びる部位で狭くすると、板状部材が溝孔に沿ってその部位まで移動されたときに、板状部材が溝孔のその部位でガタツキなく挟み込まれて、杭本体の支持力がより向上する。
【0111】
更に、本発明の杭においては、前記板状部材の断面形状は、クサビ型である。
【0112】
このような板状部材の断面形状は、板状部材が地中で移動されるときに受ける抵抗を低減させるので、板状部材を溝孔に沿って容易に移動させることができる。
【0113】
次に、本発明の杭設置用治具(杭設置用治具41)は、杭を設置する際に用いられる杭設置用治具であって、設置される前記杭の杭本体の長手方向に沿って配される長尺部(各壁部41a、41b、各アーム部41d、41e)と、前記杭設置用治具の上部に長手方向下向きの力を加えた場合に、前記杭本体から突出した部材に当接して、前記部材を前記杭本体の長手方向から傾いた方向に押すことが出来る押当部(押当辺42a)とを有している。
【0114】
このような本発明の杭設置用治具では、その押当部が杭本体の埋設時の上側より該杭本体から突出した部材に当接する。更に、杭設置用治具が打ち込まれると、押当部により部材が押し下げられる。
【0115】
また、本発明の杭設置用治具においては、前記押当部に連続形成され、前記杭本体の埋設時の上側に近づくほど前記押当部から前記長手方向と交差する方向に離間する傾斜部(傾斜辺52e)を備えている。この場合は、押当部により部材が下方に押し下げられ、引き続いて傾斜部により部材が斜め下方に押し下げられる。
【0116】
更に、本発明の杭設置用治具においては、前記部材を挟んで前記押当部に対向し、前記部材を受ける受け部(受け辺42c)を備えている。この場合は、押当部と受け部との間に部材が保持される。
【0117】
次に、本発明の杭の設置方法は、杭本体を地中に打ち込む工程と、杭設置用治具を地中に打ち込んで、前記杭本体の埋設時の上側から下側へ向かって、前記杭本体の長手方向から前記長手方向と交差する方向へと屈曲して延在する溝孔に挿入された板状部材を移動させる工程とを有している。
【0118】
このような本発明の杭の設置方法では、杭本体を地中に打ち込んでから、杭設置用治具を地中に打ち込んで、杭設置用治具により板状部材を押し下げて溝孔に沿って移動させる。
【0119】
あるいは、本発明の杭の設置方法は、杭本体と杭設置用治具を併せて地中に打ち込む工程と、前記杭本体の設置位置から更に前記杭設置用治具のみを地中に打ち込んで、前記杭本体の埋設時の上側から下側へ向かって、前記杭本体の長手方向から前記長手方向と交差する方向へと屈曲して延在する溝孔に挿入された板状部材を移動させる工程とを有している。
【0120】
このような本発明の杭の設置方法では、杭本体及び杭設置用治具を同時に地中に打ち込み、杭設置用治具を更に打ち込んで、杭設置用治具により板状部材を押し下げて溝孔に沿って移動させる。
【0121】
また、本発明の杭の設置方法においては、前記設置用治具を地中から引き抜く工程を有している。
【0122】
次に、本発明の太陽光発電システムは、杭と、前記杭の上に構築された架台と、前記架台上に支持された複数の太陽電池モジュールとを備え、前記杭は、柱状の杭本体と、前記杭本体に形成され、前記杭本体の埋設時の上側から下側へ向かって、前記杭本体の長手方向から前記長手方向と交差する方向へと屈曲して延在する溝孔と、前記溝孔に差し込まれた板状部材とを有している。
【0123】
このような本発明の太陽光発電システムにおいても、上記本発明の杭と同様の作用効果を奏する。