特許第6033198号(P6033198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033198
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20161121BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M8/02 R
   H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-211395(P2013-211395)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-76250(P2015-76250A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】内藤 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】好永 成志
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−54404(JP,A)
【文献】 特開2012−190599(JP,A)
【文献】 特開2011−44300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に一対の電極が設けられた電解質・電極構造体と矩形状のセパレータとが立位姿勢で水平方向に積層される複数の発電セルを備え、前記セパレータの電極対向面には、前記電極に沿って燃料ガスを供給する燃料ガス流路が設けられるとともに、前記発電セルの少なくとも1の角部には、積層方向に貫通して前記燃料ガスを流通させ、前記燃料ガス流路に前記燃料ガスを流入させる燃料ガス供給連通孔が設けられる燃料電池であって、
前記燃料ガス供給連通孔と前記燃料ガス流路の流れ方向上流側とを連通させる複数の入口連結通路が設けられるとともに、
最上方に位置する前記入口連結通路は、前記燃料ガス流路に向かって他の前記入口連結通路の延在方向より下方に傾斜して延在し、且つ、最上方に位置する前記入口連結通路の途上には、前記燃料ガス流路に向かって上方に傾斜する入口連結分岐通路が設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記入口連結分岐通路の開口断面積は、最上方に位置する前記入口連結通路の開口断面積よりも小さく設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、複数の入口連結通路と前記燃料ガス流路の流れ方向上流側との間には、前記燃料ガス流路の幅方向全体に亘って入口バッファ部が設けられることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質・電極構造体とセパレータとが積層される複数の発電セルを備え、前記発電セルの1の角部には、燃料ガス流路に連通する燃料ガス供給連通孔が設けられる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面側にアノード電極が、他方の面側にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータによって挟持されて発電セルを構成している。燃料電池は、通常、所定の数の発電セルを積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気車両に組み込まれている。
【0003】
燃料電池では、セパレータの面内に、アノード電極に燃料ガスを流すための燃料ガス流路と、カソード電極に酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路とが設けられている。一方、互いに隣接するセパレータ間には、冷却媒体を流すための冷却媒体流路が前記セパレータの面方向に沿って設けられている。
【0004】
燃料電池では、積層方向に貫通して燃料ガスを流通させる燃料ガス連通孔と、酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス連通孔と、冷却媒体を流通させる冷却媒体連通孔とが設けられた、所謂、内部マニホールド型燃料電池が採用されている。燃料ガス連通孔は、燃料ガス供給連通孔及び燃料ガス排出連通孔を有し、酸化剤ガス連通孔は、酸化剤ガス供給連通孔及び酸化剤ガス排出連通孔を有し、冷却媒体連通孔は、冷却媒体供給連通孔及び冷却媒体排出連通孔を有している。
【0005】
内部マニホールド型燃料電池では、通常、燃料ガス連通孔及び酸化剤ガス連通孔は、セパレータの角部に設けられている。このため、燃料ガス供給連通孔から燃料ガス流路全体に燃料ガスを均一に供給することが困難であるという問題がある。同様に、酸化剤ガス供給連通孔から酸化剤ガス流路全体に酸化剤ガスを均一に供給することが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、簡単な構成で、反応ガス流路(燃料ガス流路及び酸化剤ガス流路)全域に反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)を均一且つ良好に供給することが可能な燃料電池が、特許文献1に開示されている。この燃料電池では、反応ガス流路の上流側に入口バッファ部が設けられるとともに、反応ガス供給連通孔と前記入口バッファ部の幅方向一部とは、複数の入口連結通路により接続されている。
【0007】
そして、入口連結通路は、反応ガス供給連通孔を形成し且つ入口バッファ部に隣接する側の壁面に対して、セパレータ面内で前記壁面に直交する方向から前記反応ガス流路の中心方向に傾斜して設けられている。
【0008】
従って、壁面に直交する方向に沿って入口連結通路が設けられる構成に比べ、前記入口連結通路の通路長が長尺化するため、前記入口連結通路を流れる反応ガスの圧損が大きくなっている。これにより、反応ガス流路全域にわたって反応ガスを均一且つ良好に供給することが可能になり、所望の発電を確実に行うことができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4960415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この種の技術に関連してなされたものであり、特に軽量ガスである燃料ガスが燃料ガス流路の上側に多量に流れることを抑制し、前記燃料ガス流路全域に前記燃料ガスを均一且つ良好に供給することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料電池は、電解質の両側に一対の電極が設けられた電解質・電極構造体と矩形状のセパレータとが立位姿勢で水平方向に積層される複数の発電セルを備えている。セパレータの電極対向面には、電極に沿って燃料ガスを供給する燃料ガス流路が設けられている。そして、発電セルの少なくとも1の角部には、積層方向に貫通して燃料ガスを流通させ、燃料ガス流路に前記燃料ガスを流入させる燃料ガス供給連通孔が設けられている。
【0012】
この燃料電池では、燃料ガス供給連通孔と燃料ガス流路の流れ方向上流側とを連通させる複数の入口連結通路が設けられている。そして、最上方に位置する入口連結通路は、燃料ガス流路に向かって他の入口連結通路の延在方向より下方に傾斜して延在している。最上方に位置する入口連結通路の途上には、燃料ガス流路に向かって上方に傾斜する入口連結分岐通路が設けられている。
【0013】
また、この燃料電池では、分岐入口連結通路の開口断面積は、最上方に位置する入口連結通路の開口断面積よりも小さく設定されることが好ましい。
【0014】
さらに、この燃料電池では、複数の入口連結通路と燃料ガス流路の流れ方向上流側との間には、前記燃料ガス流路の幅方向全体に亘って入口バッファ部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、最上方に位置する入口連結通路は、他の入口連結通路に比べて下方に傾斜するとともに、最上方に位置する前記入口連結通路の途上には、上方に傾斜する分岐入口連結通路が設けられている。このため、特に軽量ガスである燃料ガス(例えば、水素ガス)が、燃料ガス流路の上側に多量に流れることを抑制することができる。これにより、燃料ガス流路全域に燃料ガスを均一且つ良好に供給することが可能になり、所望の発電を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池を構成する発電ユニットの要部分解斜視説明図である。
図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
図3】前記燃料電池を構成するカソード側セパレータの正面説明図である。
図4】前記燃料電池を構成するアノード側セパレータの正面説明図である。
図5】前記アノード側セパレータの要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池10は、複数の発電セル11が立位姿勢で水平方向(矢印A方向)に積層されて構成される。燃料電池10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車に搭載される車載用燃料電池スタックを構成する。
【0018】
発電セル11は、電解質膜・電極構造体12と、前記電解質膜・電極構造体12を挟持するカソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16とを備える。
【0019】
カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した薄板状金属セパレータにより構成される。金属セパレータは、平面が矩形状を有するとともに、波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。なお、カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16は、金属セパレータに代えて、例えば、カーボンセパレータにより構成してもよい。
【0020】
カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16は、横長形状を有するとともに、短辺が重力方向(矢印C方向)に向かい且つ長辺が水平方向(矢印B方向)に向かうように配置される。なお、短辺が水平方向に向かい且つ長辺が重力方向に向かう配置でもよい。
【0021】
発電セル11の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部(一方の短辺側)には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス供給連通孔18a及び燃料ガス排出連通孔20bが設けられる。酸化剤ガス供給連通孔18aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。燃料ガス排出連通孔20bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス供給連通孔18a及び燃料ガス排出連通孔20bは、略長方形状(又は略三角形状でもよい)を有するとともに、重力方向に対して傾斜する。
【0022】
発電セル11の長辺方向の他端縁部(他方の短辺側)には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス供給連通孔20aと、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出連通孔18bとが設けられる。酸化剤ガス排出連通孔18b及び燃料ガス供給連通孔20aは、略長方形状(又は略三角形状でもよい)を有するとともに、重力方向に対して傾斜する。酸化剤ガス供給連通孔18a、酸化剤ガス排出連通孔18b、燃料ガス供給連通孔20a及び燃料ガス排出連通孔20bは、発電セル11の四隅の各角部に対応して配置される。
【0023】
発電セル11の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部一方(酸化剤ガス供給連通孔18aに近接する一方)には、矢印A方向に互いに連通して、冷却媒体を供給するための2つの冷却媒体供給連通孔22aが設けられる。発電セル11の短辺方向の両端縁部他方(燃料ガス供給連通孔20aに近接する他方)には、冷却媒体を排出するための2つの冷却媒体排出連通孔22bが設けられる。
【0024】
冷却媒体供給連通孔22aは、開口形状が後述する冷却媒体流路40の流れ方向(矢印B方向)に沿って長尺な略長方形状に設定される。冷却媒体排出連通孔22bは、開口形状が冷却媒体流路40の流れ方向(矢印B方向)に沿って長尺な略長方形状に設定される。
【0025】
電解質膜・電極構造体12は、例えば、フッ素系又は炭化水素系の固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)24と、前記固体高分子電解質膜24を挟持するカソード電極26及びアノード電極28とを備える。カソード電極26及びアノード電極28は、同一の平面寸法を有し、且つ、固体高分子電解質膜24よりも小さな平面寸法に設定される。なお、カソード電極26とアノード電極28とは、互いに異なる平面寸法を有する、所謂、段差型MEAを構成してもよい。その際、固体高分子電解質膜24は、平面寸法の大きな電極面と同等の平面寸法に設定してもよい。
【0026】
カソード電極26及びアノード電極28は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜24の両面に形成される。
【0027】
図3に示すように、カソード側セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス供給連通孔18aと酸化剤ガス排出連通孔18bとを連通する酸化剤ガス流路30が形成される。酸化剤ガス流路30は、水平方向(矢印B方向)に延在し、酸化剤ガスをセパレータ面に沿って長辺方向に流通させる複数本の直線状(又は波状)の流路溝30aを有する。
【0028】
酸化剤ガス流路30の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数の突起状エンボス32ae及び32beを有する入口バッファ部32a及び出口バッファ部32bが設けられる。入口バッファ部32a及び出口バッファ部32bは、酸化剤ガス流路30の幅方向全体に亘って設けられる。
【0029】
入口バッファ部32aは、酸化剤ガス流路30の幅を底辺として酸化剤ガス供給連通孔18a及び燃料ガス排出連通孔20bの形状に沿って略三角形状を有する。出口バッファ部32bは、酸化剤ガス流路30の幅を底辺として酸化剤ガス排出連通孔18b及び燃料ガス供給連通孔20aの形状に沿って略三角形状を有する。
【0030】
入口バッファ部32aと酸化剤ガス供給連通孔18aとは、複数本の入口連結流路33aにより連通する。出口バッファ部32bと酸化剤ガス排出連通孔18bとは、複数本の出口連結流路33bにより連通する。入口連結流路33a及び出口連結流路33bは、それぞれの流路のピッチが同一であり、且つ、複数本の流路のガス流通方向に交差する方向に切断した断面積が同一である。
【0031】
図4に示すように、アノード側セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス供給連通孔20aと燃料ガス排出連通孔20bとを連通する燃料ガス流路34が形成される。燃料ガス流路34は、水平方向(矢印B方向)に延在し、燃料ガスをセパレータ面に沿って長辺方向に流通させる複数本の直線状(又は波状)の流路溝34aを有する。
【0032】
燃料ガス流路34の入口近傍及び出口近傍には、それぞれ複数の突起状エンボス36ae及び36beを有する入口バッファ部36a及び出口バッファ部36bが設けられる。入口バッファ部36a及び出口バッファ部36bは、燃料ガス流路34の幅方向全体に亘って設けられる。
【0033】
入口バッファ部36aは、燃料ガス流路34の幅を底辺として燃料ガス供給連通孔20a及び酸化剤ガス排出連通孔18bの形状に沿った略三角形状を有する。出口バッファ部36bは、燃料ガス流路34の幅を底辺として燃料ガス排出連通孔20b及び酸化剤ガス供給連通孔18aの形状に沿った略三角形状を有する。
【0034】
入口バッファ部36aと燃料ガス供給連通孔20aとは、複数本の入口連結通路38aにより連通する。最上方に位置する入口連結通路38a(以下、最上位入口連結通路38aeという)は、燃料ガス流路34に向かって他の入口連結通路38aの延在方向より下方に傾斜して延在する。図5に示すように、他の入口連結通路38aの延在方向hに対して、最上位入口連結通路38aeの延在方向heは、角度α゜だけ下方に傾斜する。
【0035】
最上位入口連結通路38aeの途上には、燃料ガス流路34に向かって上方に傾斜する1本以上の入口連結分岐通路39が設けられる。入口連結分岐通路39は、入口バッファ部36aに接続される。入口連結分岐通路39の開口断面積は、最上位入口連結通路38aeの開口断面積よりも小さく設定される。具体的には、最上位入口連結通路38aeの幅寸法t1に対して入口連結分岐通路39の幅寸法t2が小さく設定されるとともに(t1>t2)、それぞれ同一の深さに設定される。最上位入口連結通路38aeの幅寸法t1は、入口連結通路38aの幅寸法t3よりも小さな(又は同等な)寸法に設定される。
【0036】
図4に示すように、出口バッファ部36bと燃料ガス排出連通孔20bとは、複数本の出口連結流路38bにより連通する。入口連結通路38a(最上位入口連結通路38aeは除く)及び出口連結流路38bは、それぞれの流路のピッチが同一であり、且つ、複数本の流路のガス流通方向に交差する方向に切断した断面積が同一である。
【0037】
図1に示すように、互いに隣接するアノード側セパレータ16の面16bとカソード側セパレータ14の面14bとの間には、冷却媒体供給連通孔22a、22aと冷却媒体排出連通孔22b、22bとに連通する冷却媒体流路40が形成される。冷却媒体流路40は、電解質膜・電極構造体12の電極範囲に亘って冷却媒体を流通させる。
【0038】
アノード側セパレータ16では、冷却媒体流路40は、アノード側セパレータ16の燃料ガス流路34の裏面形状と、カソード側セパレータ14の酸化剤ガス流路30の裏面形状とが重なり合って形成される。冷却媒体供給連通孔22aの近傍には、複数本の入口連結流路41aが設けられるとともに、冷却媒体排出連通孔22bの近傍には、複数本の出口連結流路41bが設けられる。
【0039】
カソード側セパレータ14の面14a、14bには、このカソード側セパレータ14の外周端縁部を周回して第1シール部材42が一体成形される。アノード側セパレータ16の面16a、16bには、このアノード側セパレータ16の外周端縁部を周回して第2シール部材44が一体成形される。第1シール部材42及び第2シール部材44としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
【0040】
図3に示すように、第1シール部材42は、面14a、14bに沿って均一な厚さを有して延在する平坦部(ベースシール)42aを有する。平坦部42aから厚さ方向に突出して凸状シール部42bが膨出形成される。凸状シール部42bは、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体を気密及び液密にシールする機能を有する。凸状シール部42bを切り欠いて、入口連結流路33a及び出口連結流路33bが形成される。
【0041】
図4に示すように、第2シール部材44は、面16a、16bに沿って均一な厚さを有して延在する平坦部(ベースシール)44aを有する。平坦部44aから厚さ方向に突出して凸状シール部44bが膨出形成される。凸状シール部44bは、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体を気密及び液密にシールする機能を有する。凸状シール部44bを切り欠いて、入口連結通路38a及び出口連結流路38bが形成される。
【0042】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス供給連通孔18aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔20aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体供給連通孔22aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0044】
このため、酸化剤ガスは、図1及び図3に示すように、酸化剤ガス供給連通孔18aから入口連結流路33a及び入口バッファ部32aを通ってカソード側セパレータ14の酸化剤ガス流路30に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路30に沿って矢印B方向(水平方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のカソード電極26に供給される。
【0045】
一方、燃料ガスは、図4に示すように、燃料ガス供給連通孔20aから入口連結通路38a及び入口バッファ部36aを通ってアノード側セパレータ16の燃料ガス流路34に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路34に沿って水平方向(矢印B方向)に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード電極28に供給される(図1参照)。
【0046】
従って、電解質膜・電極構造体12では、カソード電極26に供給される酸化剤ガスと、アノード電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0047】
次いで、電解質膜・電極構造体12のカソード電極26に供給されて消費された酸化剤ガスは、図1及び図3に示すように、出口バッファ部32b及び出口連結流路33bから酸化剤ガス排出連通孔18bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体12のアノード電極28に供給されて消費された燃料ガスは、図4に示すように、出口バッファ部36b及び出口連結流路38bから燃料ガス排出連通孔20bに沿って矢印A方向に排出される。
【0048】
また、一対の冷却媒体供給連通孔22aに供給された冷却媒体は、カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16間の冷却媒体流路40に導入される。冷却媒体は、図1に示すように、一旦矢印C方向(重力方向)内方に沿って流動した後、矢印B方向(水平方向)に移動して電解質膜・電極構造体12を冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体排出連通孔22bに排出される。
【0049】
この場合、本実施形態では、図5に示すように、最上位入口連結通路38aeは、燃料ガス流路34に向かって他の入口連結通路38aより下方に傾斜して延在している。しかも、最上位入口連結通路38aeの途上には、燃料ガス流路34に向かって上方に傾斜する入口連結分岐通路39が設けられている。
【0050】
このため、特に軽量ガスである燃料ガス(例えば、水素ガス)が、燃料ガス流路34の上側に多量に流れることを抑制することができる。これにより、燃料ガス流路34全域に燃料ガスを均一且つ良好に供給することが可能になり、所望の発電を確実に行うことができるという効果が得られる。
【0051】
さらに、入口連結分岐通路39の幅寸法t2は、最上位入口連結通路38aeの幅寸法t1よりも小さく設定されている。従って、入口連結分岐通路39の開口断面積は、最上位入口連結通路38aeの開口断面積よりも小さく設定されている。このため、入口連結分岐通路39から入口バッファ部36aの上方に必要以上に多量の燃料ガスが供給されることがなく、前記燃料ガスを燃料ガス流路34全体に均一に供給することが可能になる。
【0052】
さらにまた、最上位入口連結通路38aeの幅寸法t1は、入口連結通路38aの幅寸法t3よりも小さな寸法に設定されている。従って、入口バッファ部36aの上方には、過剰な量の燃料ガスが供給されることがなく、経済的であるという利点がある。
【0053】
なお、本実施形態では、単一の電解質膜・電極構造体12、すなわち、単一のMEAと、カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16、すなわち、2枚のセパレータとにより構成される発電セル11を用いている。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、2つのMEAと3枚のセパレータとで構成される(セパレータ間にMEAを介装する)ユニットセルを備え、前記ユニットセル間に冷却媒体流路が形成される、所謂、間引き冷却型燃料電池に適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…燃料電池 11…発電セル
12…電解質膜・電極構造体 14…カソード側セパレータ
16…アノード側セパレータ 18a…酸化剤ガス供給連通孔
18b…酸化剤ガス排出連通孔 20a…燃料ガス供給連通孔
20b…燃料ガス排出連通孔 22a…冷却媒体供給連通孔
22b…冷却媒体排出連通孔 24…固体高分子電解質膜
26…カソード電極 28…アノード電極
30…酸化剤ガス流路 32a、36a…入口バッファ部
32b、36b…出口バッファ部 33a、38a、41a…入口連結流路
33b、38b、41b…出口連結流路
34…燃料ガス流路 38ae…最上位入口連結流路
39…入口連結分岐流路 40…冷却媒体流路
42、44…シール部材
図1
図2
図3
図4
図5