(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、シート本体を収納位置に収納可能なシートでは、シート本体を前後方向に移動させて、乗員が着座可能な着座可能状態と収納状態との間で切り替える構成からなり、脚部材に設けられたフック部材をストライカに対して前後方向に引っ掛けて係合させたり、離脱させたりする構成となっている。
しかしながら、上記構成では、シートを収納状態から着座可能状態に復帰させるために脚部材をストライカに再係合させるとき、脚部材が前後方向に振れてしまうことで、前後にばらつく恐れがあった。
そのため、ばらつきを吸収して脚部材をストライカに係合させる操作性を向上させた車両用シートが望まれていた。
【0006】
また、特許文献1のシートでは、シート本体を収納したときに、脚部材に別途設けられた係合フックが、収納フロア上のストライカに係合する構成となっており、シート収納時の安定性が向上するものの、シンプルな構造でシート収納時の安定性を一層向上させた車両用シートが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構造で、着座可能状態と収納状態の間で切り替え操作が容易な車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シンプルな構造でシート収納時の安定性を向上させた車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の車両用シートによれば、乗員が着座可能な着座可能状態と、シートクッションを車体フロアに形成された収納位置に移動させた収納状態との間で切り替え可能な車両用シートであって、一端が前記シートクッションに取り付けられ、他端に設けられた第1被係合部が前記車体フロアに設けられた第1フロア係合部に着脱可能に連結される着脱脚と、一端が前記シートクッションに取り付けられ、他端が前記車体フロアに回動可能に連結され、前記シートクッションを前記収納位置側へ移動させるように回転可能な回動リンクと、該回動リンクに取り付けられ、前記車体フロアに設けられた第2フロア係合部に着脱可能に連結される第2被係合部と、を備え、
前記回動リンクは、第1回動リンク、第2回動リンク及び第3回動リンクを備え、前記第1回動リンク、前記第2回動リンク及び前記第3回動リンクの各々の配置位置は、シート幅方向において異なっており、
前記第2被係合部は、閉断面構造を有する前記第1回動リンクに取り付けられており、
前記着脱脚は、前記回動リンクの回転を前記着脱脚に伝達する伝達部材によって前記第2回動リンクに直接連結されており、前記着脱脚の前記第1被係合部は、前記第1フロア係合部に対して前記シートクッションの移動方向と直交する方向に突出し、前記第1フロア係合部のうち、前記第1被係合部に係合可能な部分は、前記シートクッションの移動方向に沿って延びていること、により解決される。
なお、上記の構成において、前記シートクッションのシート前後方向の両端のうち、前記収納位置が形成された一端側に取り付けられ、前記収納状態のときに前記車体フロアに設けられた第3フロア係合部に着脱可能に連結される第3被係合部を備え、前記シートクッションは、前記シートクッションの骨格となるクッションフレームと、前記シートクッションの表皮と、を有し、前記クッションフレームは、左右側方に配置されたサイドフレームと、各々の前記サイドフレームの後方部分を連結する後方連結パイプと、を有し、該後方連結パイプには前記第3被係合部と、前記表皮を掛け止めするための表皮掛け止め部が設けられており、該表皮掛け止め部のうち、前記第3被係合部と対向する部分には、前記第3被係合部と干渉しないように湾曲した湾曲部が設けられていてもよい。
また、前述の課題は、本発明の他の車両用シートによれば、乗員が着座可能な着座可能状態と、シートクッションを車体フロアに形成された収納位置に移動させた収納状態との間で切り替え可能な車両用シートであって、一端が前記シートクッションに取り付けられ、他端に設けられた第1被係合部が前記車体フロアに設けられた第1フロア係合部に着脱可能に連結される着脱脚と、一端が前記シートクッションに取り付けられ、他端が前記車体フロアに回動可能に連結され、前記シートクッションを前記収納位置側へ移動させるように回転可能な回動リンクと、該回動リンクに取り付けられ、前記車体フロアに設けられた第2フロア係合部に着脱可能に連結される第2被係合部と、前記シートクッションのシート前後方向の両端のうち、前記収納位置が形成された一端側に取り付けられ、前記収納状態のときに前記車体フロアに設けられた第3フロア係合部に着脱可能に連結される第3被係合部と、を備え、前記シートクッションは、前記シートクッションの骨格となるクッションフレームと、前記シートクッションの表皮と、を有し、前記クッションフレームは、左右側方に配置されたサイドフレームと、各々の前記サイドフレームの後方部分を連結する後方連結パイプと、を有し、該後方連結パイプには前記第3被係合部と、前記表皮を掛け止めするための表皮掛け止め部が設けられており、該表皮掛け止め部のうち、前記第3被係合部と対向する部分には、前記第3被係合部と干渉しないように湾曲した湾曲部が設けられており、前記着脱脚の前記第1被係合部は、前記第1フロア係合部に対して前記シートクッションの移動方向と直交する方向に突出し、前記第1フロア係合部のうち、前記第1被係合部に係合可能な部分は、前記シートクッションの移動方向に沿って延びていること、により解決される。
なお、上記の構成において、前記回動リンクは、第1回動リンク、第2回動リンク及び第3回動リンクを備え、前記第1回動リンク、前記第2回動リンク及び前記第3回動リンクの各々の配置位置は、シート幅方向において異なっており、前記第2被係合部は、閉断面構造を有する前記第1回動リンクに取り付けられており、前記着脱脚は、前記回動リンクの回転を前記着脱脚に伝達する伝達部材によって前記第2回動リンクに直接連結されていてもよい。
【0009】
上記のように、着脱脚の第1被係合部は、第1フロア係合部に対してシートクッションの移動方向と直交する方向に突出し、第1フロア係合部のうち、第1被係合部に係合可能な部分は、シートクッションの移動方向に沿って延びているため、例えば、収納状態から着座可能状態に復帰させるために着脱脚の第1被係合部を第1フロア係合部に係合させるとき、たとえ着脱脚が前後方向に振れてしまっても、第1フロア係合部の引っ掛ける部分がシートクッションの移動方向に延びていることで、着脱脚の前後方向の振れに伴うばらつきを吸収して係合させることができる。
つまり、シンプルな構造で、着脱脚を第1フロア係合部に係合させる操作性を向上でき、着座可能状態と収納状態の間で切り替え操作が容易な車両用シートを提供できる。
また、回動リンクに取り付けられ、車体フロアに設けられた第2フロア係合部に着脱可能に連結される第2被係合部を備えるため、シート使用時又はシート収納時の安定性を向上できる。
【0010】
このとき、前記回動リンクの前記第2被係合部は、前記第2フロア係合部に対して、前記第1被係合部の突出方向と直交する方向に突出し、前記第2フロア係合部のうち、前記第2被係合部に係合可能な部分は、前記第1フロア係合部のうち、前記第1被係合部に係合可能な部分の延びる方向と直交する方向に沿って延びていると良い。
上記構成により、例えば、収納状態から着座可能状態に復帰させるために、上述した着脱脚の第1被係合部を第1フロア係合部に係合させると共に、回動リンクの第2被係合部を第2フロア係合部に係合させるとき、着脱脚及び回動リンクを含むシート全体の前後方向及び左右方向の振れに伴うばらつきを吸収して係合させることができる。
【0011】
このとき、前記第2被係合部は、前記着座可能状態のときに前記第2フロア係合部に連結され、前記シートクッションにおいて前記回動リンクよりもシート前後方向の内側に配置されていると良い。
上記構成により、車両用シートのシート前後方向のコンパクト化を図ることできる。
【0012】
このとき、一端が前記シートクッションに取り付けられ、他端が前記車体フロアに連結され、前記シートクッションを上方に付勢する付勢部材を備え、該付勢部材は、該付勢部材の延出方向の外側に向かって付勢力を付与し、前記第2被係合部は、シート前後方向において前記付勢部材と重なる位置に配置されていると良い。
上記構成により、車両用シートのシート前後方向のコンパクト化を図ることできる。
【0013】
このとき、前記シートクッションのシート前後方向の両端のうち、前記収納位置が形成された一端側に取り付けられ、前記収納状態のときに前記車体フロアに設けられた第3フロア係合部に着脱可能に連結される第3被係合部を備え、前記第2被係合部は、シート前後方向において前記第1被係合部と前記第3被係合部との間に配置されていると良い。
上記のように、シートクッションに取り付けられ、収納状態のときに車体フロアに設けられた第3フロア係合部に着脱可能に連結される第3被係合部を備えるため、シート収納時の安定性を向上できる。
また、シートクッションの収納位置側の端部が第3フロア係合部に係合されることでシート収納時の安定性を一層向上できる。
また、第2被係合部は、シート前後方向において第1被係合部と第3被係合部との間に配置されているため、着座可能状態のときに第1、第2被係合部がそれぞれ第1、第2フロア係合部に係合し、収納状態のときに収納位置側にある第3被係合部が第3フロア係合部に係合する構成としてシンプルな構造となる。
【0014】
このとき、前記第1フロア係合部は、前記第1被係合部に係合されるストライカと、該ストライカを車体フロアに固定する固定部材と、からなり、前記ストライカは、前記固定部材上面から立設し、シート前後方向において異なる位置に配置された前脚部と後脚部と、前記前脚部及び前記後脚部を連結し、前記第1被係合部に係合可能な脚連結部と、を備え、前記固定部材のうち、前記前脚部及び前記後脚部がそれぞれ連結された部分は、前記固定部材よりも上方に張り出すように形成され、前記固定部材のシート前後方向の両端のうち、前記シートクッションの前後方向の外側に位置する一端は、前記前後方向の外側に向かって幅狭となるように延びていると良い。
上記のように、固定部材のうち、前脚部及び後脚部がそれぞれ連結された部分は、固定部材よりも上方に張り出すように形成されているため、ストライカが、固定部材のうち、支持剛性が高まった部分に固定されることになる。
また、固定部材のシート前後方向の両端のうち、シートクッションの前後方向の外側に位置する一端は、前後方向の外側に向かって幅狭となるように延びているため、乗員の足下のスペースや、荷物を載置するスペースを確保し易くなる。
【0015】
このとき、前記第1フロア係合部は、前記第1被係合部に係合されるストライカと、該ストライカを車体フロアに固定する固定部材と、からなり、前記ストライカは、前記固定部材上面から立設し、シート前後方向において異なる位置に配置された前脚部と後脚部と、前記前脚部及び前記後脚部を連結し、前記第1被係合部に係合可能な脚連結部と、を備え、前記固定部材は、シート幅方向において異なる位置に配置された第1固定部と第2固定部と、前記第1固定部及び前記第2固定部よりも後方に配置された第3固定部と、を備え、前記ストライカの前記後脚部は、前記第1固定部と、前記第2固定部と、前記第3固定部とで囲まれた領域に配置されていると良い。
上記構成により、ストライカが車体フロア側に安定して固定されるため、第1被係合部とストライカとの係合が安定し、結果として車両用シートが着座可能状態のときに安定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着脱脚の第1被係合部は、第1フロア係合部に対してシートクッションの移動方向と直交する方向に突出し、第1フロア係合部のうち、第1被係合部に係合可能な部分は、シートクッションの移動方向に沿って延びているため、例えば、収納状態から着座可能状態に復帰させるために着脱脚の第1被係合部を第1フロア係合部に係合させるとき、たとえ着脱脚が前後方向に振れてしまっても、第1フロア係合部の引っ掛ける部分がシートクッションの移動方向に延びていることで、着脱脚の前後方向の振れに伴うばらつきを吸収して係合させることができる。
つまり、シンプルな構造で、着脱脚を第1フロア係合部に係合させる操作性を向上でき、着座可能状態と収納状態の間で切り替え操作が容易な車両用シートを提供できる。
また、回動リンクに取り付けられ、車体フロアに設けられた第2フロア係合部に着脱可能に連結される第2被係合部を備えるため、シート使用時又はシート収納時の安定性を向上できる。
【0017】
また、本発明によれば、例えば、収納状態から着座可能状態に復帰させるために、上述した着脱脚の第1被係合部を第1フロア係合部に係合させると共に、回動リンクの第2被係合部を第2フロア係合部に係合させるとき、着脱脚及び回動リンクを含むシート全体の前後方向及び左右方向の振れに伴うばらつきを吸収して係合させることができる。
また、本発明によれば、車両用シートのシート前後方向のコンパクト化を図ることできる。
また、本発明によれば、シートクッションに取り付けられ、収納状態のときに車体フロアに設けられた第3フロア係合部に着脱可能に連結される第3被係合部を備えるため、シート収納時の安定性を向上できる。
また、シートクッションの収納位置側の端部が第3フロア係合部に係合されることでシート収納時の安定性を一層向上できる。
また、第2被係合部は、シート前後方向において第1被係合部と第3被係合部との間に配置されているため、着座可能状態のときに第1、第2被係合部がそれぞれ第1、第2フロア係合部に係合し、収納状態のときに収納位置側にある第3被係合部が第3フロア係合部に係合する構成としてシンプルな構造となる。
【0018】
また、本発明によれば、固定部材のうち、前脚部及び後脚部がそれぞれ連結された部分は、固定部材よりも上方に張り出すように形成されているため、ストライカが、固定部材のうち、支持剛性が高まった部分に固定されることになる。
また、固定部材のシート前後方向の両端のうち、シートクッションの前後方向の外側に位置する一端は、前後方向の外側に向かって幅狭となるように延びているため、乗員の足下のスペースや、荷物を載置するスペースを確保し易くなる。
また、本発明によれば、ストライカが車体フロア側に安定して固定されるため、第1被係合部とストライカとの係合が安定し、結果として車両用シートが着座可能状態のときに安定する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態は、シートクッションを前後方向に移動させて車体フロア側に収納可能な車両用シートであって、シートクッションと車体フロアの間に着脱脚と、回動リンクとを備え、着脱脚下端に取り付けられた係合フックが、車体フロア上のストライカに対して左右方向に突出して係合すると共に、回動リンクに取り付けられた係合フックが、車体フロア上のストライカに対して上下方向に突出して係合しており、シート収納時には、シートクッション後端部に設けられた係合フックが、収納フロア上のストライカに係合することを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0021】
本実施形態の車両用シートSは、例えば、車両の後部座席に相当するリアシートである。なお、車両前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートとしても利用可能である。
車両用シートSは、
図1に示すように、シートバック1と、シートクッション2と、ヘッドレスト3とを備えるシート本体と、
図2に示すように、上端がシートクッション2の前端部に取り付けられ、下端が車体フロア側に着脱可能に連結される着脱脚30と、上端がシートクッション2の後端部に取り付けられ、下端が車体フロア側に回動可能に連結される回動リンク40とピストンダンパ47と、回動リンク40及び着脱脚30を連結する伝達部材46と、から主に構成されている。
なお、ピストンダンパ47が、特許請求の範囲の付勢部材に相当する。
車両用シートSの後方側には、
図2に示すように、車体フロアに形成された凹型の収納スペースとしての収納位置が設けられている。
【0022】
また、車両用シートSには、シートクッション2に対してシートバック1を回動可能に連結するリクライニング装置12と、着脱脚30に設けられた係合フック32を車体フロアに固定されたストライカ37にロックする脚ロック装置31と、シートクッション2の後端部に取り付けられた係合フック51を収納位置に固定されたストライカ54にロックするクッションロック装置50と、回動リンク40に設けられた係合フック61を車体フロアに固定されたストライカ62にロックするリンクロック装置60と、が取り付けられている。
脚ロック装置31とクッションロック装置50とリンクロック装置60とは、左右方向において重なる位置に配置され、前後方向で離間している。
なお、脚ロック装置31の係合フック32とストライカ37とが、それぞれ特許請求の範囲の第1被係合部と第1フロア係合部とに相当する。また、リンクロック装置60の係合フック61とストライカ62とが、それぞれ特許請求の範囲の第2被係合部と第2フロア係合部とに相当する。また、クッションロック装置50の係合フック51とストライカ54とが、それぞれ特許請求の範囲の第3被係合部と第3フロア係合部とに相当する。
【0023】
車両用シートSは、乗員が着座可能な着座可能状態と、シート本体を収納位置に収納させた収納状態との2種類の形態のシートアレンジが可能なシートである。
具体的には、車両用シートSは、着座可能状態にあるときに、乗員が不図示の操作ストラップを引っ張ると、シートバック1がシートクッション2側に前倒れして折り畳まれる。その後、折り畳まれたシート本体はシート後方に跳ね上げ回転し、沈み込む方向へ移動する。そして、シート本体が収納位置に収納されるようになる。
【0024】
シートバック1は、
図1に示すように、乗員の背中を後方から支持する背もたれ部であって、骨格となる
図2に示すバックフレーム10に、クッションパッド1aを載置して、表皮1bで被覆されて構成されている。
シートクッション2は、乗員を下方から支持する着座部であって、骨格となる
図2に示すクッションフレーム20に、クッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮2bによって被覆されて構成されている。
ヘッドレスト3は、乗員の頭を後方から支持する頭部であって、芯材となる不図示のピラーにクッションパッド3aを載置して、表皮3bで被覆されて構成されている。
【0025】
バックフレーム10は、シートバック1の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図2に示すように、バックフレーム10の左右外側面の下端部には、クッションフレーム20と連結するための左右の連結ブラケット11が取り付けられている。
連結ブラケット11は、上下方向に延出する板金部材からなり、シート側面側から見て略弓形状に形成されており、連結ブラケット11の上端部がバックフレーム10と連結され、その下端部がクッションフレーム20と連結されている。
連結ブラケット11上端部の左右外側面には、クッションフレーム20に対してバックフレーム10を回動可能に連結するリクライニング装置12が取り付けられている。
【0026】
リクライニング装置12は、公知の装置からなり、
図2に示すように、リクライニング装置12の回動中心となる回動軸13と、バックフレーム10をクッションフレーム20側に付勢する不図示の渦巻きバネと、から主に構成されている。渦巻きバネは、その一端部がバックフレーム10側に係止され、他端部がクッションフレーム20側、詳しく言うと連結ブラケット11に係止されている。
リクライニング装置12は、バックフレーム10の回動動作をロック可能であって、バックフレーム10を起立状態にロックし、不図示の操作ストラップが引っ張られることでロック解除し、渦巻きバネの付勢力によってバックフレーム10を前方側に回転させてクッションフレーム20側に折り畳むことができる。
【0027】
クッションフレーム20は、シートクッション2の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図3に示すように、左右側方に配置された板金部材からなるサイドフレーム21と、各サイドフレーム21の前方部分を連結する前方連結パイプ22と、各サイドフレームの後方部分を連結する後方連結パイプ23と、前方連結パイプ22の上面に架設された板状フレームとしてのパンフレーム24と、パンフレーム24及び後方連結パイプ23とを連結する複数のバネ部材26と、を主な構成品として備えている。
なお、バネ部材26は、特許請求の範囲の乗員臀部支持部材に相当する。
【0028】
サイドフレーム21の前後方向の略中央部分には、不図示の回動ボルトをシート左右方向に締結することでピストンダンパ47の上端部が回動可能に連結されている。
前方連結パイプ22には、着脱脚30を回動可能に連結するための連結ブラケット22aが取り付けられている。連結ブラケット22aは、不図示の回動ボルトをシート左右方向に締結することで着脱脚30の上端部を回動可能に支持している。
後方連結パイプ23には、その下端部に回動リンク40を回動可能に連結するための左右2つの連結ブラケット23aと、後端部に左右方向に延びて配置された表皮掛け止め部25と、が取り付けられている。また、左右の連結ブラケット23aの間にクッションロック装置50が取り付けられている。
連結ブラケット23aは、不図示の回動ボルトをシート左右方向に締結することで回動リンク40の上端部を回動可能に支持しており、シート収納状態にあるときにクッションロック装置50よりも前方に位置する構成となっている。
【0029】
表皮掛け止め部25は、シートクッション2を構成する表皮2bを掛け止めするためのワイヤ部材であって、
図3に示すように、左右方向に長尺な掛け止め本体部25aと、掛け止め本体部25aの左右両端を折り曲げて後方連結パイプ23の外縁に沿わせて取り付けた取り付け部25bと、掛け止め本体部25aの略中央部分を湾曲させて形成した湾曲部25cと、から構成されている。
掛け止め本体部25aは、連結ブラケット23aよりも後方側に張り出すように配置されており、連結ブラケット23a及び回動リンク40と干渉しない位置関係にある。
湾曲部25cは、掛け止め本体部25aから連続して左右内側方向に上方傾斜した左右一対の傾斜部分と、左右の傾斜部分の上端同士を連結した水平部分とからなる。
湾曲部25cは、掛け止め本体部25aのうち、クッションロック装置50と対向する部分に形成されており、表皮掛け止め部25とクッションロック装置50が干渉しない位置関係にある。
【0030】
バネ部材26は、着座する乗員の臀部に相当する位置を支持する部材であり、Sバネまたはジグザグバネと呼ばれる波形状の線状部材からなる。
複数のバネ部材26が、
図3に示すように、左右方向に所定の間隔をおいて配設され、前後方向に略平行となるように蛇行しながら延出している。
3つのバネ部材26のうち、
図3に示すように、左側のバネ部材26と中央のバネ部材26との左右方向の間にクッションロック装置50が配置される構成となっている。そのため、シート収納移動時に、バネ部材26とクッションロック装置50とが干渉することなく、コンパクトに収納されることになる。
なお、バネ部材26の代わりに弾性ゴム等の弾性体を用いても良い。
【0031】
着脱脚30は、
図3に示すように、上下方向に延出する略コ字形状の板金部材からなり、シートクッション2を支持する部材である。
着脱脚30は、その上端部に配置され、着脱脚30の回動中心となる脚回動軸30aと、下端部に配置され、車体フロアのストライカ37に着脱可能に係合する係合フック32と、係合フック32をストライカ37にロックする脚ロック装置31と、を備えている。
脚回動軸30aには、不図示の付勢バネが取り付けられており、着脱脚30は、付勢バネの付勢力によって車体フロア側のストライカ37に係合可能な位置に配置される。
着脱脚30は、伝達部材46を介して回動リンク40と連結されており、脚ロック装置31のロック解除後、回動リンク40の回転に連動して脚回動軸30aを中心としてシート後方側に回転し、シートクッション2側に折り畳まれる構成となっている。
【0032】
脚ロック装置31は、
図5乃至
図9に示すように、係合フック32を左右方向に移動させてストライカ37に係合させる装置である。
また、脚ロック装置31は、ケーブル部材39を介して不図示の切り替え装置と連結されており、切り替え装置によって係合フック32をストライカ37にロック可能なロック可能状態と、ロック不能なロック不能状態とに切り替え可能な構成となっている。
【0033】
脚ロック装置31は、
図4に示すように、係合フック32と、第1回動プレート33と、第2回動プレート34と、作動プレート35と、第2回動プレート34を
図4に示す位置に付勢する付勢バネ36と、から主に構成されている。
係合フック32は、上下方向の略中央部分に設けられ、着脱脚30に前後方向で軸支されるフック回動シャフト32aと、下端部に設けられ、ストライカ37に掛け止めされる突出部32bと、を備えている。係合フック32がフック回動シャフト32aを中心として回転することで、突出部32bが左右方向に移動し、ストライカ37に係合したり、係脱したりする構成となる。
【0034】
第1回動プレート33は、着脱脚30に前後方向で軸支された第1回動シャフト33aを備えており、後述のケーブル部材39と連結されている。
第2回動プレート34は、着脱脚30に前後方向で軸支された第2回動シャフト34aと、前後方向に延びて付勢バネ36の一端が掛け止めされる掛け止めピン34bと、着脱脚30に連結される連結ピン34cとを備えており、連結ピン34cは、作動プレート35に形成された不図示の貫通穴を通過する。
作動プレート35は、係合フック32に前後方向で軸支される作動回動シャフト35aと、前後方向に延びて付勢バネ36の他端が掛け止めされる掛け止めピン35bと、を備えている。
【0035】
ストライカ37は、
図3又は
図8に示すように、前後方向に延出する略コ字形状のパイプ部材からなり、車体フロア上に固定部材38を介して固定され、着脱脚30に係合される部材である。
ストライカ37は、固定部材38上面から立設し、前後方向において異なる位置に配置された前脚部37aと後脚部37bと、前脚部37a及び後脚部37bのそれぞれ上端を連結し、係合フック32に係合可能な脚連結部37cと、から構成されている。
脚連結部37cが、係合フック32に係合される部分であって、前後方向に略水平に延びている。
【0036】
固定部材38は、前後方向に延出する略菱形形状の板金部材からなり、不図示の締結ボルトを車体フロアに向けて上下方向に締結した部分として第1固定部38a、第2固定部38b、及び第3固定部38cを備えている。
第1固定部38aと第2固定部38bは、前後方向で対向位置にあって左右方向で離間した配置となっており、第1固定部38aと第2固定部38bの左右方向の間に第3固定部38cが設けられている。
第3固定部38cは、第1固定部38a及び第2固定部38bの後方に配置されている。
【0037】
ストライカ37は、左右方向において第1固定部38aと第2固定部38bの間に設けられ、第3固定部38cの前方に配置されている。
また、ストライカ37のうち、後脚部37bは、第1固定部38aと、第2固定部38bと、第3固定部38cとで囲まれた領域に配置されている。
なお、固定部材38のうち、ストライカ37が連結された部分は、第1固定部38a、第2固定部38b、及び第3固定部38cよりも上方に張り出した張り出し部分にあって、ストライカ37の支持剛性を高めている。
【0038】
ケーブル部材39は、公知なケーブル部材からなり、
図4に示すように、脚ロック装置31と、不図示の切り替え装置とを連結し、切り替え装置に牽引されて脚ロック装置31をロック可能状態からロック不能状態へ切り替えるものである。
【0039】
上記構成により、脚ロック装置31は、
図4に示す位置にあるとき、係合フック32がストライカ37に係合したロック状態となる。
図4に示す位置から、ケーブル部材39が
図5に示す矢印の方向に引っ張られると、係合フック32がストライカ37からロック解除された状態となる。また、ケーブル部材39が常に
図5に示す矢印の方向に引っ張られることで、脚ロック装置31はロック不能状態に維持される。
図5に示す位置から、ケーブル部材39が
図6に示すように牽引された状態から解放されると、脚ロック装置31はロック可能状態へ切り替わる。
図6に示す位置から、着脱脚30の係合フック32をストライカ37に向けて押し当てると、
図7に示すように、係合フック32がストライカ37に係合したロック状態に戻る。詳細は後述する。
【0040】
回動リンク40は、
図3に示すように、シートクッション2を収納位置まで移動させる長尺部材であり、3つの回動リンク40として、シートクッション2の左側部分に配置された第1回動リンク41と、シートクッション2の右側部分に配置された第2回動リンク42と、第2回動リンク42よりも右側に配置され、ガイドリンクとして機能する第3回動リンク43と、を備えている。
また、第3回動リンク43よりも右側には、
図3に示すように、長尺部材からなるピストンダンパ47が配置されており、第1回動リンク41と第2回動リンク42との左右方向の間には、クッションロック装置50が配置されている。
【0041】
第1回動リンク41及び第2回動リンク42は、それぞれ上端がシートクッション2の後端部に取り付けられた連結ブラケット23aに回動可能に連結され、それぞれ下端が車体フロア側に取り付けられたリンク回動軸44に連結されて構成される。
第3回動リンク43は、同様に上端がシートクッション2後端部に取り付けられた連結ブラケット23aに回動可能に連結され、下端がリンク回動軸45として車体フロア側に連結されて構成されており、シート本体の収納操作時に、シートクッション1が所定の軌道に沿って収納位置に移動するようにガイドする。
【0042】
リンク回動軸44、45には、それぞれ不図示のリンク付勢バネが取り付けられており、回動リンク40は、リンク付勢バネによって常にリンク回動軸44、45を中心として収納位置側に付勢されている。
回動リンク40は、シートクッション2を介して着脱脚30と連結されている。そのため、回動リンク40は、着座可能状態のときに着脱脚30と車体フロア側のストライカ37とがロックされることから、リンク付勢バネに抗してシートクッション2を下方から支持する位置に保持される構成となる。
また、回動リンク40は、着脱脚30とストライカ37とのロック解除後、リンク付勢バネの付勢力によってシートクッション2を収納位置まで移動させるようにリンク回動軸44、45を中心として回転する構成となる。
【0043】
第2回動リンク42のうち、上端に設けられた回動軸42aよりも下方部分には、
図2に示すように、着脱脚30と直接連結する伝達部材46が取り付けられている。
伝達部材46は、
図2に示すように、長尺な伝達本体部46aと、第2回動リンク42に左右方向で軸支される伝達回動軸46bと、一端が伝達本体部46aの前端に回動可能に連結され、他端が着脱脚30のうち、脚回動軸30aよりも下方部分に固定された伝達リンク46cと、から構成されている。
【0044】
伝達本体部46aは、第2回動リンク42に対して伝達回動軸46bを中心として回動可能であって、水平面に対して所定角度だけ後傾して配置されている。伝達本体部46aは、着座可能状態にあるとき、
図2に示すように第2回動リンク42の長尺方向に対して交差して延びて配置され、シート収納状態に切り替わったとき、第2回動リンク42の長尺方向に沿って略平行に延びて配置される。
【0045】
伝達リンク46cは、シート側面側から見て略弓形状に形成されており、伝達本体部46aの前端に左右方向で軸支された伝達リンク回動軸46dを備えている。
伝達リンク46cは、伝達リンク回動軸46dを中心として着脱脚30をシートクッション2側に折り畳み回転させるように回転する構成となっている。具体的には、伝達リンク46cのうち、伝達リンク回動軸46dが、シートクッション2に対して前方側に相対移動することで、言い換えれば、脚回動軸30aに近づく方向に移動することで、伝達リンク46cが着脱脚30と共にシート後方側に回転する構成となる。
なお、伝達リンク46cは左右方向に折り曲げられた略クランク形状からなり、伝達リンク回動軸46dは脚回動軸30aよりも左右外側に配置されており、互いに干渉しない構成となっている。
【0046】
ピストンダンパ47は、その延出方向の外側に向かって付勢力を付与する付勢部材であり、着座可能状態にあるときにシートクッション2を上方に付勢する。
ピストンダンパ47は、
図2に示すように、上端がシートクッション2の右側面に回動可能に連結され、下端がダンパ回動軸47aとして車体フロア側に連結されて構成される。
ダンパ回動軸47aには、不図示の付勢バネが取り付けられており、ピストンダンパ47は、回動リンク40と同様に、付勢バネによって常にダンパ回動軸47aを中心として収納位置側に付勢されている。
ピストンダンパ47は、着座可能状態にあるとき、付勢バネに抗してシートクッション2を支持する位置に保持される。
【0047】
着脱脚30、回動リンク40、伝達部材46、及びピストンダンパ47の構成により、シート収納移動時に、回動リンク40の回転が伝達部材46によって着脱脚30に伝達されることになる。
具体的には、回動リンク40が、リンク回動軸44を中心としてシート後方に回転する。回動リンク40の後方回転に連動してピストンダンパ47も同様に後方回転し、シートクッション2を上方に付勢するピストンダンパ47の上方付勢力が徐々に低下していく。
ピストンダンパ47の上方付勢力の低下に伴い、回動リンク40上端の回動軸42aに連結されたシートクッション2、及びシートクッション2に連結された着脱脚30が、自重の重みによって回動軸42aを中心としてシート下方に回転する。
シートクッション2及び着脱脚30の下方回転に伴い、着脱脚30に固定された伝達リンク46cは、同様に回動軸42aを中心としてシート下方に回転する。
その結果、伝達本体部46aが伝達回動軸46bを中心としてシート下方に回転すると共に、伝達本体部46aと伝達リンク46cとを連結する伝達リンク回動軸46dが、シートクッション2に対して前方側に相対移動することになる。そして伝達リンク46cと共に着脱脚30がシート後方側に回転する構成となる。
【0048】
クッションロック装置50は、
図2又は
図9に示すように、係合フック51を左右方向に移動させてストライカ54に係合させる装置である。
また、クッションロック装置50は、ケーブル部材55を介して不図示の操作レバーと連結されており、操作レバーを引っ張ることで係合フック51をストライカ54から離脱することが可能である。詳しく言うと、係合フック51がストライカ54に係合可能な係合可能位置から、操作レバーを引っ張ることで係合不能位置へ切り替えることができる。
【0049】
クッションロック装置50は、
図9(a)に示すように、係合フック51と、係合フック51を係合可能位置に付勢する付勢バネ52と、作動プレート53と、から主に構成される。
係合フック51は、上方部分に設けられ、不図示の連結ブラケットを介してクッションフレーム20の後方連結パイプ23に前後方向で軸支されたフック回動シャフト51aと、下方部分に設けられ、前後方向に延びて作動プレート53に連結される連結ピン51bと、ストライカ54に掛け止めされる突出部51cと、を備えている。
係合フック51がフック回動シャフト51aを中心として回転することで、突出部51cが左右方向に移動し、ストライカ54に係合したり、係脱したりする構成となる。また、連結ピン51bは、作動プレート53に形成された不図示の貫通穴を通過している。
【0050】
付勢バネ52は、フック回動シャフト51aに巻きつけられ、一端が係合フック51に掛け止めされた自由端であって、他端がクッションフレーム20側に掛け止めされた固定端として構成されている。
作動プレート53は、一端が連結ピン51bを介して係合フック51と連結されており、他端がケーブル部材55と連結されている。
【0051】
クッションロック装置50では、
図9(a)に示す位置にあるとき、係合フック51が係合可能位置に配置されている。
このとき、係合フック51を収納フロア上のストライカ54に上方から押し当てると、
係合フック51がフック回動シャフト51aを中心としてシート背面側から見て時計回りに回転し、突出部51cがストライカ54を挟み込むようにして再び付勢バネ52の付勢力によって係合可能位置に戻る。
詳しく言うと、係合フック51のうち、連結ピン51bが作動プレート53の貫通穴の間を左右方向に自在に移動可能であるため、突出部51cは、ストライカ54に当接し、ストライカ54に押動されることで左右方向に移動可能な構成となる。
上記の結果、係合フック51がストライカ54に係合してロックされる。
【0052】
図9(a)に示す位置から、ケーブル部材55が
図9(b)に示す矢印の方向に引っ張られると、作動プレート53が、連結ピン51bを介して係合フック51をフック回動シャフト51aを中心として時計回りに押し回す。その結果、係合フック51が係合不能位置に移動し、ストライカ54を離脱させてロック解除する。
なお、ケーブル部材55が引っ張られている限り、係合フック51は常に係合不能位置に付勢される。ケーブル部材55の引っ張りを解放すると、係合フック51は係合可能位置に戻る。
【0053】
リンクロック装置60は、
図2に示すように、回動リンク40に取り付けられた係合フック61が上下方向に移動してストライカ62に係合したり、係脱したりする装置である。
係合フック61は、回動リンク40のうち、閉断面構造を有する第1回動リンク41の前側壁部に配置され、上下方向の略中央部分に取り付けられている。
ストライカ62は、車体フロア、特に車体フロアと収納フロアとの間の段差面に取り付けられている。ストライカ62のうち、係合フック61と係合する不図示の脚連結部は、左右方向に延びている。
リンクロック装置60は、脚ロック装置31と同じタイミングでロック解除される。
このように構成することで、着座可能状態のときにシート本体が安定して車体フロアに支持される。
【0054】
<シート収納動作について>
次に、
図10及び
図11に基づいて車両用シートSを着座可能状態から収納状態へ移動させる動作を説明する。
車両用シートSが
図10(a)に示す着座可能状態にあるとき、シートバック1は、リクライニング装置12によって起立状態にロックされており、シートクッション2は、着脱脚30及び回動リンク40によって下方から支持される構成となる。
このとき、脚ロック装置31では、係合フック32がストライカ37に係合した
図4に示すロック状態となっている。
【0055】
次に、車両用シートSを着座可能状態から収納状態へ移動させるときには、例えば、シートバック1上面に設けられた不図示の操作ストラップを操作する。
乗員が操作ストラップを引っ張ることで、
図10(b)に示すように、リクライニング装置12のロックが解除され、シートバック1は、不図示の渦巻きバネの付勢力によって、回動軸13を中心としてシートクッション2側に折り畳み回転を開始する。
シートバック1が所定の回転位置まで折り畳まれたとき、脚ロック装置31が着脱脚30の係合フック32とストライカ37とのロックを解除し、回動リンク40が、リンク付勢バネの付勢力によってシートクッション2を収納位置まで移動させるように回転開始する。このとき、ピストンダンパ47がシートクッション2を上方に付勢するため、ロック解除に伴い、シートクッション2が跳ね上がるように移動する。
なお、不図示の切り替え装置と、脚ロック装置31とがケーブル部材39で連結されており、シートバック1が所定の回転位置まで折り畳まれたとき、切り替え装置によってケーブル部材39の一端が引っ張られ、ケーブル部材39の他端に連結される脚ロック装置31のロックを解除する構成となっている。
【0056】
脚ロック装置31について、具体的には、ケーブル部材39が
図5に示す矢印の方向に引っ張られると、まず第1回動プレート33が、第1回動シャフト33aを中心としてシート背面側から見て反時計回りに回転する。そして、第1回動プレート33は、第2回動プレート34に当接し、付勢バネ36の付勢力に抗して第2回動プレート34を第2回動シャフト34aを中心として時計回りに押し回す。
第2回動プレート34は、連結ピン34cを介して作動プレート35を第2回動プレート34側に引き寄せるように回転する。詳しく言うと、作動プレート35は、作動回動シャフト35aを中心として反時計回りに回転し、第2回動シャフト34aに当接した位置から離れた位置へ移動する。
作動プレート35の回転に連動して、作動プレート35と連結シャフト35bを介して連結された係合フック32は、フック回動シャフト32aを中心として時計回りに押し回される。係合フック32の回転に伴い、徐々に係合フック32がストライカ37から離脱する。
結果として、脚ロック装置31が
図5に示す位置にあるとき、係合フック32がストライカ37からロック解除された状態となる。また、ケーブル部材39が常に矢印の方向に引っ張られることで、脚ロック装置31はロック不能状態に維持される。
【0057】
次に、回動リンク40がシートクッション2を収納位置まで移動させるように回転し始めると、着脱脚30は、回動リンク40の回転に連動してシートクッション2側に折り畳まれるように回転し始める。
詳しく言うと、着脱脚30の上端と回動リンク40の上端とが、伝達部材46によって連結されており、回動リンク40の回転が伝達部材46によって着脱脚30に伝達される。その結果、着脱脚30は、回動リンク40がシート後方に回転し始めると、シートクッション2側に折り畳み回転し始めるようになる。
【0058】
次に、シートクッション2が、
図11(a)に示すように、収納位置に向かって所定位置まで到達したとき、言い換えれば、回動リンク40及び着脱脚30が所定の回転位置まで到達したとき、不図示の切り替え装置によってケーブル部材39の一端が引っ張られた状態から解放され、ケーブル部材39の他端に連結される脚ロック装置31は、ロック不能状態から、
図6に示すロック可能状態へ切り替わることになる。
【0059】
脚ロック装置31について、具体的には、ケーブル部材39が
図6に示すように牽引された状態から解放されると、第1回動プレート33が、第1回動シャフト33aを中心として時計回りに回転する。第2回動プレート34は、第1回動プレート33から解放され、付勢バネ36に付勢されて第2回動シャフト34aを中心として反時計回りに回転し、係合フック32に当接する。
そして、第2回動プレート34は、係合フック32をフック回動シャフト32aを中心として時計回りに押し回す。係合フック32は、連結シャフト35bを介して連結された作動プレート35に規制されて、
図6に示す位置まで回転して静止する。
結果として、脚ロック装置31はロック可能状態へ切り替わる。
【0060】
上記一連の動作によって、
図11(b)に示すように、シート本体を構成するシートクッション2及びシートバック1が収納位置に収納され、車両用シートSが収納状態に移動する。シート収納状態に移動したときに、クッションロック装置50の係合フック51が収納フロア上のストライカ54に係合される。
【0061】
<シート復帰動作について>
次に、
図12及び
図13に基づいて車両用シートSを収納状態から着座可能状態へ復帰させる動作を説明する。
車両用シートSを収納状態から着座可能状態へ復帰させるときには、
図12(b)に示すように、例えば、乗員が手動でシート本体を上方に引き起こす。このとき、例えば、シートバック1背面に設けられた不図示の操作レバーを引っ張ることで、クッションロック装置50のロックが解除される。
回動リンク40は、シート本体を引き起こすことで、シートクッション2を着座位置に移動させるようにリンク回動軸44を中心としてシート前方側に回転する。
このとき、着脱脚30は、回動リンク40の回転に連動して、シートクッション2側に折り畳まれた状態から脚回動軸30aを中心としてシート前方側に回転する。
【0062】
シート本体が、
図13(a)に示すように、完全に上方に引き起こされた時点で、着脱脚30の係合フック32とストライカ37とが脚ロック装置31によってロックされる。
脚ロック装置31について、具体的には、着脱脚30の係合フック32がストライカ37に押し当たることで、
図7に示すように、係合フック32がフック回動シャフト32aを中心としてストライカ37を挟持するように反時計回りに回転する。
結果として、脚ロック装置31は、係合フック32がストライカ37に係合したロック状態に戻る。
【0063】
次に、シート本体を引き起こし後、シートバック1をシートクッション2側に折り畳まれた状態から起立状態に引き起こす。
シートバック1が、
図13(b)に示すように、所定の回転位置まで引き起こされたとき、着座可能状態の位置に戻る。
上記一連の動作によって、車両用シートSが着座可能状態に復帰完了する。
【0064】
<その他の実施形態について>
上記実施形態において、車両用シートSは、シートクッション2をシート後方に形成した収納位置に収納可能な構成となっているが、これに限定されることなく、例えば、シートクッション2をシート前方に形成した収納位置に収納可能な構成としても良い。
【0065】
上記実施形態において、車両用シートSの着脱脚30は、シートクッション2の前端部に1つ取り付けられているが、これに限定されることなく、シートクッション2への取り付け位置や数量を適宜変更可能である。例えば、シートクッション2の後端部にも別途着脱脚を取り付けた構成としても良い。このように構成することで、シートクッション2を下方から支持する着脱脚30の支持剛性が向上する。
【0066】
上記実施形態において、着脱脚30は、ストライカ37に着脱可能に係合する被係合部としての係合フック32を備えているが、係合フック32の形状に限定されることなく、ストライカ37に着脱可能に係合されるものであれば適宜変更可能である。
同様に係合フック32に係合可能なフロア係合部であれば、ストライカ37の形状に限定されることなく、適宜変更可能である。
【0067】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる収納可能な車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗物用シートとしても利用することができる。
【0068】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、着脱脚30、脚ロック装置31、回動リンク40、及びクッションロック装置50の配置や構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。