特許第6033223号(P6033223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033223デュアルクラッチ用のレリーズユニット、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033223
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】デュアルクラッチ用のレリーズユニット、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/08 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   F16D25/08 E
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-520968(P2013-520968)
(86)(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公表番号】特表2013-535628(P2013-535628A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】DE2011001455
(87)【国際公開番号】WO2012013179
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】102010032662.3
(32)【優先日】2010年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【復代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ボスニャック
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−141237(JP,A)
【文献】 特開昭61−153023(JP,A)
【文献】 特開昭59−001820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円環状のハウジング壁(2a,2b)を有するハウジング(2)を備えたデュアルクラッチ用のレリーズユニット(1)であって、該レリーズユニット(1)の対称軸線に対して同心的に第1及び第2の環状のチャンバが設けられていて、該チャンバ内に夫々、圧力室をシールする円環状のスレーブシリンダピストン(3,4)が軸線方向に移動可能に配置されていて、前記スレーブシリンダピストン(3,4)の回動運動は、該スレーブシリンダピストンと、前記ハウジング(2)のハウジング壁(2a,2b)との間に設けられている回動防止部により防がれる、レリーズユニットにおいて、
前記第1のチャンバを形成するハウジング(2)の半径方向内側部分に設けられた第1のハウジング壁(2a)に不動に接続され、半径方向外側に延在する少なくとも1つの拡幅部(11a)を有する第1の引きずりモーメント支持部(11)と、
前記第1のチャンバの半径方向内側に位置する前記第2のチャンバを形成するハウジング(2)の半径方向内側部分に設けられた第2のハウジング壁(2b)に不動に接続され、半径方向外側に延在する少なくとも1つの拡幅部(12a)を有する第2の引きずりモーメント支持部(12)と、
前記第1の引きずりモーメント支持部(11)に設けられた拡幅部(11a)と係合する少なくとも1つの溝(3a)を有し、前記第1の引きずりモーメント支持部(11)の半径方向外側で第1のレリーズベアリング(9)に接続される第1のスレーブシリンダピストン(3)と、
前記第2の引きずりモーメント支持部(12)に設けられた拡幅部(12a)と係合する少なくとも1つの溝(4a)を有し、前記第2の引きずりモーメント支持部(12)の半径方向外側で第2のレリーズベアリング(10)に接続される第2のスレーブシリンダピストン(4)と、を有することを特徴とする、レリーズユニット。
【請求項2】
前記第1及び第2の引きずりモーメント支持部(11,12)は、金属材料又は非金属材料から成っていることを特徴とする、請求項1記載のレリーズユニット。
【請求項3】
前記ハウジング(2)は、プラスチックから成っていることを特徴とする、請求項1又は2記載のレリーズユニット。
【請求項4】
前記第1及び第2の引きずりモーメント支持部(11,12)は、リング状に形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレリーズユニット。
【請求項5】
複数の半径方向の前記拡幅部(11a,12a)が、前記第1及び第2の引きずりモーメント支持部(11,12)の周面に設けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のレリーズユニット。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載のレリーズユニットを製造する方法であって、
前記第1及び第2の引きずりモーメント支持部(11,12)は、前記第1及び第2のハウジング壁(2a,2b)に、焼きばめ、圧入又は貼付により提供されていることを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部の特徴を備えたデュアルクラッチ用のレリーズユニットに関する。
【0002】
デュアルクラッチは、実質的に2つの別体のクラッチユニットを有する。これらのクラッチユニットは、互いに独立して夫々1つの対応配置されたレリーズ装置を介して、伝動装置入力軸に対する接続を切断しかつ形成することができる。上記デュアルクラッチの有利な使用領域は、デュアルクラッチ伝動装置との使用である。この構成において、第1のクラッチユニットは一般的に奇数のギア段のために働き、第2のクラッチユニットは偶数のギア段のために働く。こうして、クラッチユニットを介して実際にトルクをエンジンから伝動装置に伝達する間に、既に別のギア段を予め選択することができる。その結果、続いて牽引力の中断なしに、実際のギア段から予め選択されたギア段に切り換えることができる。伝動装置入力軸は、そのために好ましくは2つの同軸的な軸から構成されていて、つまり、内側に中実軸を備えた中空軸から構成されている。
【0003】
上記デュアルクラッチは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10116705号明細書において既に公知になっている。クラッチユニットを操作するために、このクラッチユニットに互いに同心的に配置された2つのスレーブシリンダピストン若しくは作動ピストン、つまり内側のスレーブシリンダピストン及び外側のスレーブシリンダピストンが設けられている。内側及び外側のスレーブシリンダピストンは、それぞれ環状シリンダ状のシリンダハウジングにおいて案内される。このようにして構成されたスレーブシリンダは、CSC(Concentric Slave Cylinder:コンセントリックスレーブシリンダ)とも称呼される。したがって2つのシリンダハウジングは同様に互いに同心的に配置されていて、かつ内側のスレーブシリンダと外側のスレーブシリンダとを形成する。この外側のスレーブシリンダ内には、スレーブシリンダピストンが互いに相対的に軸線方向に運動可能に配置されている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005008662号明細書において、夫々レリーズベアリングと作用接続している同心的な環状のスレーブシリンダピストンを、共通のハウジングにおいてコンパクトな構成ユニットに組み立てることが公知になっている。レリーズユニットの操作時に、スレーブシリンダピストンの前方の端面に対して配置された、例えば第1のギア段の入力を担う第2のスレーブシリンダピストンの対応するレリーズベアリングを介して、開放力がデュアルクラッチの相応のクラッチユニットに伝達される。特にデュアルクラッチの他のクラッチユニットから第2のスレーブシリンダピストンへの回動運動の伝達を回避するために、例えばレリーズベアリングのベアリングリングが回動するように固定されているか、又は少なくとも第2のスレーブシリンダピストンが回動するように、レリーズユニットのスレーブシリンダハウジングの外周面に支持されるレバーアームを介して固定される。
【0005】
いずれにしても、レリーズユニットの外周面の外側に取り付けられているレバーアームを介してのスレーブシリンダピストンの固定は、レリーズユニットの半径方向の構成スペースの拡大に繋がる。
【0006】
レリーズユニットの構成スペースを拡大することなく、スレーブシリンダピストン若しくは引きずりモーメント支持部を回動可能に固定するため解決手段は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102009056899号明細書に開示されている。この明細書において、引きずりモーメント支持部は、ピストンとハウジングとの間で夫々効果的である。
【0007】
しかし上記解決手段にとっての欠点は、各スレーブシリンダピストン用のレリーズユニット若しくはデュアルクラッチのCSCのハウジングに、溝が加工されているという点である。デュアルクラッチのCSCの運転中には、スレーブピストンの片側に配置されている上記溝を介して滑動するシール部に損傷が生じることがある。これによりデュアルクラッチCSCは不密になり、ひいてはデュアルクラッチCSCの寿命は短くなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、引きずりモーメント支持部を備えたデュアルクラッチ用のレリーズユニットを、スレーブシリンダピストンとCSCハウジングとの間に提供することであり、そのために、CSCハウジングに開口は加工されない。
【0009】
上記目的は、請求項1の特徴を備えたデュアルクラッチ用のレリーズユニットによって達成される。有利な構成は、従属請求項から明らかになる。
【0010】
本発明によれば、デュアルクラッチ用のレリーズユニットは、複数の円環状のハウジング壁を有するハウジングから成るので、レリーズユニットの対称軸線に対して同心的に、2つの環状のチャンバが設けられている。これらのチャンバにおいては夫々、圧力室をシールする円環状のスレーブシリンダピストンが軸線方向に移動可能に配置されている。スレーブシリンダピストンの回動運動は、このスレーブシリンダピストンと、ハウジング/ハウジング壁との間に設けられている回動防止部により防がれる。本発明によれば、引きずりモーメント支持部は、各スレーブシリンダピストンに対応配置されているハウジング壁に配置されていて、かつ上記ハウジング壁部に不動に接続されている。上記引きずりモーメント支持部は、対応するスレーブシリンダピストンと作用接続している。
【0011】
本発明の有利な構成は、引きずりモーメント支持部が、少なくとも1つの半径方向の拡幅部を有しているようになっている。この半径方向の拡幅部は、同様にスレーブシリンダピストンに加工された少なくとも1つの溝に係合する。より良好な力分布のために、とりわけ有利なことは、引きずりモーメント支持部の周面に、スレーブシリンダピストンに設けられている同数の溝に係合可能である複数の半径方向の拡幅部を提供することである。
【0012】
ハウジング壁とスレーブシリンダピストンとの不動な接続を形成するために、引きずりモーメント支持部をハウジング壁に、焼きばめ、圧入又は貼付を介してハウジング壁に提供することが有利である。
【0013】
本発明の別の有利な構成は、引きずりモーメント支持部が、金属材料又は非金属材料から成っている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】常圧の終端位置にある2つのスレーブシリンダピストンを備えた、本発明に係るレリーズユニットの断面図である。
図2図1に示したレリーズユニットの分解図である。
【0015】
以下に、本発明を実施の形態及び添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に、伝動装置入力軸(図示せず)に対して同心的に配置されている、組み付けられた状態のレリーズユニット1を断面図において示す。このレリーズユニットは、プラスチック、金属材料又は非金属材料から成っていてよいハウジング2から成っている。このハウジング内には、スレーブシリンダピストン3,4を夫々軸線方向で運動可能に案内する、互いに同心的に延びるチャンバ/凹部が設けられているので、上記環状のスレーブシリンダピストン3,4は、同様に互いに同心的に配置されている。各スレーブシリンダピストン3,4には端部側で、圧力室をシールするためにシール部5,6が備えられている。これらのシール部5,6は夫々、スレーブシリンダピストンにシールリング支持体7,8を介して接続されている。他端部で、各スレーブシリンダピストン3,4は、デュアルクラッチの部分クラッチの操作ユニット(図示せず)に作用するレリーズベアリング9,10に接続されている。駆動装置に起因する引きずりモーメントが、レリーズベアリング9,10を介して2つのピストン3,4に伝達されることを防ぐために、引きずりモーメント支持部11,12としてリングが設けられている。引きずりモーメント支持部11,12は、ハウジング壁部2a,2bに、例えば引きずりモーメント支持部11,12の内壁部11b,12bの焼きばめ、接着、圧入により不動に結合されている。上記引きずりモーメント支持部11,12には夫々、少なくとも1つの半径方向の拡幅部11a,12aが設けられている。この半径方向の拡幅部11a,12aを介して、引きずりモーメント支持部11,12は、ピストン3,4に夫々設けられている溝3a,4aに係合するので、これにより引きずりモーメントが発生した時には、ピストン3,4の回動は防がれる。
【0017】
図2は、レリーズユニット1の分解図を示す。この分解図において、全ての構成部分が、個別の部分としてその幾何学的な構造において明らかになり、どの位置において構成部分が互いに接続されるかが明らかになる。したがってまず2つの環状の凹部を備えたハウジング2が看取可能である。これらの凹部には、2つのピストン3,4が挿入される。さらに図2においては、対応するハウジング壁部2a,2bに不動にまだ接続されていない2つの引きずりモーメント支持部11,12が明らかになっている。接続は、図1に既に記載されているように、例えば各ハウジング壁部2a,2bへの、引きずりモーメント支持部11,12の内壁部11b,12bの焼きばめにより行われる。図2からは極めてはっきりと、引きずりモーメント支持部11,12に設けられている半径方向の拡幅部11a,12aが看取可能である。これらの拡幅部11a,12aは夫々、この実施の形態において、引きずりモーメント支持部11,12の周面に相対して設けられている。同様に、半径方向の拡幅部11a,12aに対応するようにピストン3,4に加工されている溝3a,4aが看取可能である。
【0018】
上述のように構成された引きずりモーメント支持部11,12、及びピストン3,4に設けられている溝3a,4aにより、ハウジング2に開口を設けなくても十分に回動防止部を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 レリーズユニット
2 ハウジング
2a ハウジング壁
2b ハウジング壁
3 スレーブシリンダピストン/ピストン
3a 溝
4 スレーブシリンダピストン/ピストン
4a 溝
5 シール部
6 シール部
7 シールリング支持体
8 シールリング支持体
9 レリーズ軸受
10 レリーズ軸受
11 引きずりモーメント支持部
11a 半径方向の拡幅部
11b 引きずりモーメント支持部の内壁部
12 引きずりモーメント支持部
12a 半径方向の拡幅部
12b 引きずりモーメント支持部の内壁部
図1
図2