(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象に投与された際、in vivoで血清PINPレベルを増加させ、in vivoで骨塩密度を増加させ、in vivoで大腿骨骨幹中央部の皮質厚を増加させ、in vivoで大腿骨骨幹中央部の骨領域を増加させ、in vivoで上腕骨骨幹中央部の皮質厚を増加させ、in vivoで皮質内骨形成を増加させ、in vivoでLV5椎体における皮質骨体積の比率を増加させ、および/またはin vivoで大腿骨頸部総体積に対する大腿骨頚部骨体積の比率を増加させる、請求項1〜2のいずれか1項に記載の抗体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、1つには、NOTUMの阻害が皮質内骨形成に影響を及ぼす可能性があるという発見に基づく。本発明の特定の態様は、機能的NOTUM遺伝子のないマウス(「ノックアウトマウス」)の研究、NOTUMを阻害する抗体の開発、およびそのような抗体を用いてマウスおよびラットにおける皮質骨形成を刺激することができるという発見に基づく。
【0019】
本明細書中で用いられるセクションの見出しは、統合の目的のためだけであって、記載される対象物を制限するものと見なされるべきではない。特許、特許出願、論文、書籍、および条約をはじめとする、本出願中で言及される全ての文書、または文書の一部は、任意の目的のために全体として参照することによって本明細書中に明確に組み込まれる。1以上の組み込まれた文献および類似の資料がある用語を本出願中のその用語の定義と矛盾するように定義する場合、本出願が支配する。
【0020】
5.1.定義
「抗体」という用語は、本明細書中で用いられる場合、インタクト抗体または抗原結合についてインタクト抗体と競合する抗体の断片を指す。抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、Fd、二重特異性抗体、およびインタクト抗体の可変領域の少なくとも一部を保持する他の抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Hudson et al. (2003)
Nat. Med.9:129-134を参照のこと。いくつかの実施形態において、抗体断片は、インタクト抗体の酵素的または化学的切断によって産生される。いくつかの実施形態において、抗体断片は、組換えDNA技術によって産生される。
【0021】
「抗原結合部位」という用語は、抗原と特異的に結合することができる抗体の部分を指す。いくつかの実施形態において、抗原結合部位は、1以上の抗体可変領域によって提供される。
【0022】
「結合親和性」という用語は、抗体が抗原と結合する強度の定性的または定量的決定を指す。いくつかの実施形態において、結合親和性は、抗原に対する抗体の解離定数(K
D)である。いくつかの実施形態において、抗原に対する抗体の結合親和性は、抗原に対する異なる抗体の結合親和性に対して、または異なる抗原(例えば、そのアミノ酸配列において1以上の変更を有する抗原)に対する同じ抗体の結合親和性に対してなど、定性的に決定される。第1抗原に対する抗体の結合親和性は、例えば、第1抗原に対する抗体のK
Dが第2抗原に対する抗体のK
Dよりも低い場合に、第2抗原に対するその親和性よりも「強力」であると見なされる。いくつかの実施形態において、第1抗原に対する抗体の結合親和性は、第1抗原に対する抗体のK
Dが、第2抗原に対する抗体のK
Dよりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍低い場合に、「より強力である」と見なされる。反対に、第1抗原に対する抗体の結合親和性は、例えば、第1抗原に対する抗体のK
Dが第2抗原に対する抗体のK
Dよりも高い場合に、第2抗原に対するその親和性よりも「弱い」と見なされる。いくつかの実施形態において、第1抗原に対する抗体の結合親和性は、第1抗原に対する抗体のK
Dが、第2抗原に対する抗体のK
Dよりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍高い場合に、「より弱い」と見なされる。
【0023】
「キメラ」抗体は、少なくとも2つの異なる源由来の成分で構成される抗体を指す。いくつかの実施形態において、キメラ抗体は、別の分子、例えば第2の種由来の抗体の一部と融合した第1の種由来の抗体の一部を含む。いくつかのそのような実施形態において、キメラ抗体は、ヒト由来の抗体の一部と融合した非ヒト動物由来の抗体の一部を含む。いくつかのそのような実施形態において、キメラ抗体は、ヒト抗体由来の定常領域と融合した非ヒト動物由来の抗体の可変領域の全部または一部を含む。
【0024】
「エピトープ」という用語は、イムノグロブリンまたはT細胞受容体と特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定因子を指す。いくつかの実施形態において、エピトープは、抗体により特異的に結合される抗原の領域である。いくつかの実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、エピトープは特定の3次元構造特性(例えば、「立体構造」エピトープ)および/または特定の電荷特性を有し得る。
【0025】
特定の抗体が両方のエピトープと特異的に結合するならば、1つのエピトープはもう1つのエピトープと「同じ」と定義される。いくつかの実施形態において、異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチドは、同じであるエピトープを含み得る。異なる抗体は、そのエピトープに対する特異的結合について競合するならば、同じエピトープと結合するといわれる。
【0026】
参照ポリペプチドの「断片」は、参照ポリペプチドの任意の部分由来の一続きのアミノ酸を指す。断片は、参照ポリペプチドの長さよりも短い任意の長さのものであり得る。いくつかの実施形態において、断片は、特定の活性を有するかまたは特定のエピトープを含有する参照ポリペプチドの任意の部分由来の一続きのアミノ酸である。
【0027】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト抗体配列を含み、非ヒト動物由来の抗体配列を含まないモノクローナル抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、天然の抗体で見出されない合成配列を含む可能性がある。この用語は、抗体が作製される方法によって限定されない。例えば、様々な実施形態で、ヒト抗体は、トランスジェニックマウスにおいて、ファージディスプレイにより、ヒトBリンパ球により、または組換え法により作製することができる。
【0028】
「ヒト化」抗体は、(アミノ酸配列において)ヒト抗体とより密接にマッチするように修飾された非ヒト化抗体を指す。ヒト化抗体はしたがって、一種のキメラ抗体である。いくつかの実施形態において、非ヒト抗体の可変領域の抗原結合残基の外側のアミノ酸残基は修飾されている。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト抗体の1以上の相補性決定領域(CDR)の全部または一部を、例えば所望の抗原結合特異性を有する非ヒト抗体などの別の抗体由来の1以上のCDRの全部または一部で置換することによって構築される。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、CDRの全部または実質的に全部が非ヒト抗体のCDRに相当し、フレームワーク領域(FR)の全部または実質的に全部がヒト抗体のFRに相当する可変領域を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト抗体の1以上のCDR内の1以上のアミノ酸はヒト化抗体で、例えば親和性成熟のプロセスによって変更される。親和性成熟の例示的方法は当該技術分野で公知である。いくつかのそのような実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト抗体の定常領域(Fc)をさらに含む。
【0029】
他に指定のない限り、「含む(include、includes、including)」という用語は、「含むが、これらに限定されるものではない」と同じ意味を有する。同様に、「例えば」という用語は、「これらに限定されないが、例えば」という用語と同じ意味を有する。
【0030】
他に指定のない限り、「管理(manage、managingおよびmanagement)」という用語は、すでに特定の疾患または障害に苦しんでいる患者においてその疾患もしくは障害の再発を防止すること、および/またはその疾患もしくは障害に苦しんでいる患者が寛解期にある時間を延長することを包含する。この用語は、疾患もしくは障害の閾値、発症および/または期間を調節すること、あるいは患者が疾患もしくは障害に反応する方法を変更することを包含する。
【0031】
「モノクローナル抗体」という用語は、同じエピトープに特異的に結合する抗体の実質的に均一な集団由来の抗体を指す。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体はハイブリドーマによって分泌される。いくつかのそのような実施形態において、ハイブリドーマは当業者に公知のいくつかの方法にしたがって産生される。例えば、Kohler and Milstein (1975)
Nature256: 495-499を参照のこと。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は組換えDNA法を用いて産生される(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイライブラリーから単離された抗体断片を指す。例えば、Clackson et al. (1991)
Nature 352: 624-628、およびMarks et al. (1991)
J. Mol. Biol. 222: 581-597を参照のこと。種々の他のモノクローナル抗体産生技術については、例えばHarlow and Lane (1988)
Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0032】
「中和抗体」または「中和する抗体」という用語は、抗体が特異的に結合するエピトープを含むポリペプチドの少なくとも1つの活性を減弱する抗体を指す。いくつかの実施形態において、中和抗体はin vitroおよび/またはin vivoでポリペプチドの活性を減弱する。
【0033】
「NOTUM」という用語は、特に明記しない限り、ヒト、ウシ、ニワトリ、齧歯類、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、霊長類、サル、およびモルモットをはじめとする脊椎動物またはほ乳類源由来のアミノ酸配列を有するノータム・ペクチンアセチルエステラーゼ(notum pectinaceylesterase)を指す。この用語はさらに、天然のNOTUMの少なくとも1つのin vivoまたはin vitro活性を維持する天然のNOTUMの断片および変異体も指す。この用語は、NOTUMの完全長未処理前駆体形態ならびにシグナルペプチドの翻訳後切断およびタンパク質分解処理の他の形態から生じる成熟形態を包含する。いくつかの実施形態において、完全長未処理ヒトNOTUMは配列番号1で記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、完全長未処理マウスNOTUMは配列番号2で記載されるアミノ酸配列を有する。
【0034】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書中では交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、天然に存在するアミノ酸を含有するアミノ酸ポリマーならびに1以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学アナログであるアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、任意の長さのものであり得る。「天然のポリペプチド」という用語は、天然に存在するポリペプチドを指す。
【0035】
他に指定のない限り、「防止(preventing、prevent、およびprevention)」という用語は、患者が特定の疾患または障害に苦しみ始める前に起こる作用であって、その疾患または障害の重症度を阻害または減少させる作用を想定する。言い換えれば、この用語は予防を包含する。
【0036】
他に指定のない限り、化合物の「予防有効量」は、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態に関連する1以上の症状を防止するため、またはその再発を予防するために十分な量である。化合物の「予防有効量」は、単独または他の薬剤との組み合わせで、疾患の防止において予防的利点を提供する治療薬の量を意味する。「予防有効量」という用語は、全体的な予防を改善するか、または別の予防薬の予防効果を増強する量を包含する可能性がある。
【0037】
抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物中の抗原を優先的に認識する場合に、抗原と「特異的に結合する」。いくつかの実施形態において、抗体は、特定のエピトープと特異的に結合する抗原結合部位を含む。いくつかのそのような実施形態において、抗体は、異なる抗原が特定のエピトープを含む限り、異なる抗原と結合することができる。場合によっては、例えば、異なる種由来の相同タンパク質は同じエピトープを含む可能性がある。いくつかの実施形態において、抗体は、解離定数(K
D)が≦1μMである場合に、いくつかの実施形態では解離定数が≦100nMである場合、そしていくつかの実施形態では解離定数が≦10nMである場合に、抗原と特異的に結合すると言われる。
【0038】
「対象」および「患者」という用語は、ヒトおよび動物の両方を含む。いくつかの実施形態において、対象または患者はほ乳類である。いくつかのそのような実施形態において、対象または患者はヒトである。
【0039】
他に指定のない限り、化合物の「治療有効量」は、疾患もしくは状態の治療もしくは管理において治療効果を提供するために、または疾患もしくは状態に関連する1以上の症状を遅延させるかまたは最小限に抑えるために有効な量である。化合物の「治療有効量」は、疾患または状態の治療または管理において治療効果を提供する、単独または他の治療薬と組み合わせた治療薬の量を意味する。「治療有効量」という用語は、全体的な治療を改善する、または疾患もしくは状態の症状もしくは原因を軽減もしくは回避する、または別の治療薬の治療効果を増強する量を包含する可能性がある。
【0040】
他に指定のない限り、「治療(treat、treatingおよびtreatment)」という用語は、患者が特定の疾患または障害に苦しんでいる間に起こる作用であって、疾患もしくは障害の重症度を軽減するか、または疾患もしくは障害の進行を遅延もしくは減速させる作用を想定する。
【0041】
5.2.抗体
5.2.1.抗体構造例
天然の抗体は、典型的には四量体構造を有する。四量体は、典型的にはポリペプチド鎖の2つの同じ対を含み、各対は、1つの軽鎖(いくつかの実施形態では、約25kDa)および1つの重鎖(いくつかの実施形態では、約50〜70kDa)を有する。天然の抗体では、重鎖は、可変領域VH、および3つの定常領域CH1、CH2、およびCH3を含む。VHドメインは重鎖のアミノ末端にあり、CH3ドメインはカルボキシ末端にある。天然の抗体では、軽鎖は可変領域VL、および定常領域CLを含む。軽鎖の可変領域は、軽鎖のアミノ末端にある。天然の抗体では、軽鎖/重鎖対の可変領域は、典型的には抗原結合部位を形成する。定常領域は、典型的にはエフェクター機能の原因となる。
【0042】
天然のヒト軽鎖は、典型的にはカッパおよびラムダ軽鎖として分類される。天然のヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、抗体のイソ型をそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むサブクラスを有する。IgAは、IgA1およびIgA2を含むサブクラスを有する。天然のヒト軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、典型的には、約12以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。例えば、Fundamental Immunology (1989) Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.)を参照のこと。
【0043】
天然の抗体では、可変領域は典型的には、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域によって結合される、同じ一般的構造を示す。各対の2つの鎖由来のCDRは、典型的には、特異的エピトープとの結合を可能にする可能性があるフレームワーク領域と並んでいる。N末端からC末端へ、軽鎖および重鎖可変領域はどちらも、典型的にはドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。重鎖上のCDRはH1、H2、およびH3と称され、一方、軽鎖上のCDRはL1、L2、およびL3と称される。典型的には、CDR3は抗原結合部位内の分子多様性の最大の原因である。H3は、例えばある例では2個のアミノ酸残基程度の短さである可能性があるか、または26個より長い可能性がある。アミノ酸の各ドメインへの帰属は、典型的には、Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Publication No. 91-3242, vols. 1-3, Bethesda, MD);Chothia, C., and Lesk, A.M. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917;またはChothia, C. et al. Nature 342:878-883 (1989)の定義にしたがう。本出願では、「CDR」という用語は、特別の定めのない限り、軽鎖または重鎖のいずれかからのCDRを指す。
【0044】
「Fab」断片は、1つの軽鎖ならびに1つの重鎖のCH1および可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。A「Fab’」断片は、1つの軽鎖ならびにCH1およびCH2ドメイン間のさらなる定常領域を含む1つの重鎖を含む。鎖間ジスルフィド結合をFab’断片の2つの重鎖間で形成して、「F(ab’)2」分子を形成することができる。
【0045】
「Fv」断片は、重鎖および軽鎖由来の可変領域を含むが、定常領域が欠けている。単鎖Fv(scFv)断片は、可動性リンカーにより連結された重および軽鎖可変領域を含み、抗原結合領域を有するポリペプチド単鎖を形成する。例示的単鎖抗体は、国際公開第88/01649号ならびに米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号で詳細に検討されている。ある例では、単一の可変領域(すなわち、重鎖可変領域または軽鎖可変領域)は、抗原を認識および結合する能力を有する可能性がある。
【0046】
本明細書中で用いられる場合、「重鎖」という用語は、軽鎖との組み合わせのいずれかで抗原特異性を付与するために十分な重鎖可変領域配列を含むポリペプチドを指す。
【0047】
本明細書中で用いられる場合、「軽鎖」という用語は、単独または重鎖との組み合わせのいずれかで抗原特異性を付与するために十分な軽鎖可変領域配列を含むポリペプチドを指す。
【0048】
5.2.2.例示的抗体
いくつかの実施形態において、NOTUMと特異的に結合するモノクローナル抗体が提供される。いくつかのそのような実施形態において、モノクローナル抗体は、in vivoおよび/またはin vitroでNOTUMの少なくとも1つの活性を減弱させる中和抗体である。
【0049】
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、in vitroでの8−オクタノイルオキシピレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム(OPTS)アッセイにおいてNOTUM活性を減弱する。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、in vitroでのWntシグナル伝達アッセイにおけるNOTUM活性を減弱する。
【0050】
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、対象に対して十分な量で十分な期間投与される場合に、in vivoで血清PINPレベルを増大させる。十分な量を十分な期間投与するための例示的投薬量および投薬スケジュールは本明細書中で検討されている。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、骨塩密度を増大させる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体はin vivoで大腿骨骨幹中央部の皮質厚を増大させる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体はin vivoで大腿骨骨幹中央部の骨領域を増大させる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体はin vivoで上腕骨骨幹中央部の皮質厚を増大させる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体はin vivoで皮質内骨形成を増大させる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体はin vivoでLV5椎体中の皮質骨体積の割合を増大させる。「LV5椎体中の皮質骨体積の割合」により、LV5椎体の全体積に対する皮質骨体積の割合を意味する。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、in vivoで大腿骨頸部の全体積に対する大腿骨頸部骨体積の割合を増大させる。
【0051】
いくつかの実施形態において、マウスNOTUMと特異的に結合する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMのQ47からM177までの領域に結合する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、結合についてヒトNOTUMのQ47からM177までの領域に依存する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、異なる種由来のNOTUMの同じ領域に特異的に結合する中和抗体(すなわち、交差反応性を示す抗体)が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMならびに、マウス、ラット、モルモット、カニクイザル、マーモセット、およびアカゲザルから選択される少なくとも1種由来のNOTUMと結合する中和抗体が提供される。いくつかのそのような実施形態において、抗体は、非ヒト霊長類NOTUMおよびヒトNOTUMの両方に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、抗体はマウスNOTUMおよびヒトNOTUMの両方に特異的に結合する。
【0052】
いくつかの実施形態において、Q47からM177までのヒトNOTUMの領域に結合する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、結合についてQ47からM177までのヒトNOTUMの領域に依存する中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒト−マウスキメラNOTUM(配列番号83)と、マウス−ヒトキメラNOTUM(配列番号84)に対する親和性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍強力な親和性で結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒト−マウス−ヒトキメラNOTUM(配列番号85)と、マウス−ヒト−マウスキメラNOTUM(配列番号86)に対する親和性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍強力な親和性で結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUM(配列番号1)と、NOTUMD141S(配列番号94)に対する親和性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍強力な親和性で結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、マウスNOTUMS148D(配列番号95)と、マウスNOTUM(配列番号2)に対する親和性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍よりも強力な親和性で結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUM(配列番号1)と、ヒトNOTUMR144A/R145A(配列番号99)に対する親和性よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍強力な親和性で結合するNOTUM中和抗体が提供される。
【0053】
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、ヒトNOTUM(配列番号1)と、実施例6.8で記載されるように測定して、100nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、または2nM未満の親和性(K
D)で結合する。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、実施例6.4.1で記載されるようにして測定して、100nM未満、75nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、または10nM未満のOPTSアッセイでのIC
50を有する。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体は、実施例6.4.2で記載されるようにして測定して、100nM未満、75nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、または10nM未満のWntシグナル伝達アッセイでのIC
50を有する。いくつかの実施形態において、IC
50はヒトNOTUMについてのものである。いくつかの実施形態において、IC
50はマウスNOTUMについてのものである。
【0054】
いくつかの実施形態において、中和抗体は非ヒトモノクローナル抗体である。いくつかのそのような実施形態において、中和抗体は齧歯類モノクローナル抗体である。いくつかのそのような実施形態において、中和抗体はマウスモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、中和抗体はキメラモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、中和抗体はヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、中和抗体はヒトモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、キメラ、ヒト化、および/またはヒトモノクローナル抗体はヒトにおける治療抗体として有用である。
【0055】
いくつかの実施形態において、中和抗体は抗体断片である。例示的抗体断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、scFv、Fd、二重特異性抗体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
非限定的例示的NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78を含む。MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78のそれぞれは、NOTUMの少なくとも1つの活性を中和する。さらに、少なくともMAb1.802、1.815、1.846、および2.78は、NOTUMに対する結合に関して、アミノ酸Q47〜M177により結合したヒトNOTUMの領域の少なくとも一部に依存する。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、NOTUMに対する結合に関して、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される少なくとも1つの抗体と競合する。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される少なくとも1つの抗体によって結合されるエピトープと少なくとも部分的に重複するNOTUMのエピトープと結合する。加えて、いくつかの実施形態において、NOTUMに対する結合についてMAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される少なくとも1つの抗体と競合する抗体は、NOTUM中和抗体であると予想される。MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78のCDRおよび可変領域の配列を以下のセクション7で示す。
【0057】
いくつかの実施形態において、MAb1.731が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb1.802が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb1.815が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb1.846が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb2.1029が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb2.55が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、MAb2.78が結合する同じエピトープと結合するNOTUM中和抗体が提供される。
【0058】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号7、15、23、31、39、および47から選択される重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号8、16、24、32、40、および48から選択される軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号31のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号32を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号40を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号47のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、および配列番号48のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号9、17、25、33、41、49、および90から選択される重鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号10、18、26、34、42、および50から選択される重鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号11、19、27、35、43、51、および91から選択される重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号17および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号19および91から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号25および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号33および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号35および91から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号49のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号51のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号57のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、配列番号90中のX
1は、YおよびFから選択される。いくつかの実施形態において、配列番号91中のX
2は、HおよびNから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号12、20、28、36、44、52、60、および92から選択される軽鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号13、21、29、37、45、53、61、および93から選択される軽鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号14、22、30、38、46、54、および62から選択される軽鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号20および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号21および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号28および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号36および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号37および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号46のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号52のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号54のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号60のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号62のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、配列番号92中のX
3はIおよびSから選択される;配列番号92中のX
4はTおよびEから選択される;そして配列番号92中のX
5はMおよびIから選択される。いくつかの実施形態において、配列番号93中のX
6はDおよびNから選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号11のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号17および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号19および91から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号20および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号21および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号19のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号25および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号28および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号26のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号29のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号33および90から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号35および91から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号36および92から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号37および93から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2、ならびに配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号33のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号36のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号38のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号42のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号44のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号45のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号46のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号49のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号50のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号51のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号52のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号53のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号54のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号57のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号58のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR3を含む重鎖;ならびに配列番号60のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号61のアミノ酸配列を有するCDR2、および配列番号62のアミノ酸配列を有するCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、配列番号90中のX
1はYおよびFから選択される。いくつかの実施形態において、配列番号91中のX
2はHおよびNから選択される。いくつかの実施形態において、配列番号92中のX
3はIおよびSから選択される;配列番号92中のX
4はTおよびEから選択される;そして配列番号92中のX
5はMおよびIから選択される。いくつかの実施形態において、配列番号93中のX
6はDおよびNから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、異なる種由来のNOTUM中の同じエピトープに特異的に結合するNOTUM中和抗体(すなわち、交差反応性を示す抗体)が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合し、マウス、ラット、モルモット、カニクイザル、マーモセット、およびアカゲザルから選択されるNOTUMの少なくとも1つの種とも特異的に結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMおよび少なくとも1種の非ヒト霊長類由来のNOTUMと特異的に結合するNOTUM中和抗体が提供される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMおよびマウスNOTUMと特異的に結合するNOTUM中和抗体が提供される。
【0063】
5.2.2.1.キメラ化およびヒト化モノクローナル抗体
いくつかの実施形態において、非ヒト抗体はキメラ化されている。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合するマウスモノクローナル抗体はキメラ化されている。キメラ抗体を作製するためのある例示的方法は、例えば、Morrison et al. (1984)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA81:6851-6855; Neuberger et al. (1984)
Nature312:604-608; Takeda et al. (1985)
Nature314:452-454;ならびに米国特許第6,075,181号および同第5,877,397号で提供されている。
【0064】
いくつかの実施形態において、非ヒト抗体は「ヒト化」される。いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合するマウスモノクローナル抗体はヒト化される。いくつかの実施形態において、マウスNOTUMに対するものであるが、ヒトNOTUMと特異的に結合する(すなわち、交差反応する)マウスモノクローナル抗体は、ヒト化されている。いくつかの実施形態において、ヒトに投与された場合、ヒト化抗体はそれらの結合特異性を保持し、減少した免疫原性(例えば、減少したヒト抗マウス抗体(HAMA)応答)を有する。いくつかの実施形態において、ヒト化は、以下で詳細に記載するように、CDRグラフティングおよび人間工学をはじめとする方法によって達成される。
【0065】
ヒト化抗体のいくつかの実施形態において、所望の結合特異性(「ドナー」抗体)を有する抗体の軽鎖および重鎖可変領域由来の1以上の相補性決定領域(CDR)は「「アクセプター」抗体中のヒトフレームワーク領域(FR)上にグラフトされる。例示的CDRグラフティングは、例えば、米国特許第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、および同第5,530,101号;Queen et al. (1989)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA86:10029-10033で記載される。いくつかの実施形態において、軽鎖および重鎖可変領域由来の1以上のCDRはアクセプター抗体中のコンセンサスヒトFR上にグラフトされる。コンセンサスヒトFRを作製するために、いくつかの実施形態において、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRを整列させて、コンセンサスアミノ酸配列を同定する。
【0066】
いくつかの実施形態において、アクセプター抗体中のあるFRアミノ酸は、ドナー抗体からのFRアミノ酸で置換される。あるそのような実施形態において、FRドナー抗体からのアミノ酸は、標的抗原に対するドナー抗体の親和性に寄与するアミノ酸である。例えば、米国特許第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、および同第5,530,101号;Queen et al. (1989)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA86:10029-10033を参照のこと。いくつかの実施形態において、コンピュータープログラムは、ドナーおよび/またはアクセプター抗体をモデル化するために使用され、抗原の結合に関与および/または抗原結合部位の構造に寄与する可能性がある残基を特定し、かくしてドナー抗体において置換されるFR残基などの残基の選択に役立つ。
【0067】
いくつかの実施形態において、ドナー抗体由来のCDRは、ヒト定常領域を含むアクセプター抗体上にグラフトされる。いくつかのそのような実施形態において、FRはアクセプター上にもグラフトされる。いくつかの実施形態において、ドナー抗体由来のCDRは単鎖Fv抗体から誘導される。いくつかの実施形態において、ドナー抗体由来のFRは、単鎖Fv抗体から誘導される。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のグラフトされたCDRを(例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入により)さらに修飾して、標的抗原に対するヒト化抗体の親和性を増大させる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のグラフトされたFRを(例えば、アミノ酸置換、欠失、または挿入により)さらに修飾して、標的抗原に対するヒト化抗体の親和性を増大させる。
【0068】
いくつかの実施形態において、非ヒト抗体は、「人間工学」法を用いてヒト化することができる。例えば、米国特許第5,766,886号および同第5,869,619号を参照のこと。人間工学のいくつかの実施形態において、抗体可変ドメインの構造に関する情報(例えば、結晶構造および/または分子モデリングから得られる情報)を用いて、可変領域中の所定のアミノ酸残基が(a)抗原結合に関与する可能性、(b)抗体表面上で曝露される(すなわち、溶媒に接近可能)可能性、または(c)抗体可変領域内に埋め込まれている(すなわち、可変領域の構造の維持に関与する)可能性を評価する。さらに、いくつかの実施形態において、ヒト可変領域コンセンサス配列を生成させて、ヒト可変領域間で保存される残基を同定する。いくつかの実施形態において、その情報は、非ヒト抗体の可変領域中のアミノ酸残基が置換されるべきかどうかについての指針を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態において、ヒト化NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3の少なくとも1つを含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3の少なくとも1つを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにMAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、および2.78から選択される抗体由来の軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号63、67、71、75、および79から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号64、68、72、76、および80から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号65、69、73、77、および81から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号66、70、74、78、および82から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号63のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号65を含むアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号69のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号71のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号73のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号77のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号64のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号74のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号76のアミノ酸を含む重鎖および配列番号78のアミノ酸を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体は、配列番号80のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0071】
5.2.2.2.抗体イソ型
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体は、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEから選択される任意のイソ型のものである。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体は、IgGイソ型のものである。あるそのような実施形態において、抗体はサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものである。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体はIgMイソ型のものである。あるそのような実施形態において、抗体はサブクラスIgM1またはIgM2のものである。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体はIgAイソ型のものである。あるそのような実施形態において、抗体はサブクラスIgA1またはIgA2のものである。NOTUMに対する抗体は、例えばヒトまたはマウス起源のラムダまたはカッパ軽鎖定常領域を含んでもよい。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体は、ヒトカッパ軽鎖定常領域およびヒトIgG1、IgG2、またはIgG4重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体はマウスカッパ軽鎖およびマウスIgG1またはIgG2重鎖を含む。
【0072】
5.2.2.3.修飾抗体
いくつかの実施形態において、抗体を修飾して、1以上のその特定を改変する。いくつかの実施形態において、修飾抗体は、例えば安定性の増加、循環における時間の増加、または免疫原性の減少のなどの非修飾抗体よりすぐれた利点を有する可能性がある(例えば、米国特許第4,179,337号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、抗体を非タンパク質様部分に対して連結することによって修飾する。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば、抗体上の炭水化物鎖の数、タイプ、結合、および/または位置を変更することによって、抗体のグリコシル化状態を改変することにより修飾される。抗体のグリコシル化状態を改変することにより修飾される。いくつかの実施形態において、抗体はグリコシル化されないように変更される。
【0073】
いくつかの実施形態において、1以上の化学部分を抗体のアミノ酸骨格および/または炭水化物残基に結合させる。化学部分を抗体に結合させるためのある例示的な方法は当業者に公知である。そのような方法としては、アシル化反応またはアルキル化反応が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、欧州特許出願公開第0401384号;Malik et al. (1992),
Exp. Hematol., 20:1028-1035; Francis (1992)
Focus on Growth Factors3(2):4-10, published by Mediscript, Mountain Court, Friern Barnet Lane, London N20 OLD, UK;欧州特許出願公開第0154316号;欧州特許出願公開第0401384号;国際公開第92/16221号;国際公開第95/34326号;国際公開第95/13312号;国際公開第96/11953号;国際公開第96/19459号および国際公開第96/19459号を参照のこと。いくつかの実施形態において、これらの反応のいずれかを用いて、そのアミノ末端で化学的に修飾された抗体を生成させる。
【0074】
いくつかの実施形態において、抗体を検出可能な標識、例えば、酵素標識、蛍光標識、アイソトープ標識または親和性標識と結合させる。あるそのような実施形態において、検出可能な標識は、抗体の検出または単離を可能にする。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、抗体によって結合された抗原の検出を可能にする。
【0075】
いくつかの実施形態において、抗体を1以上のポリマーに連結させることによって修飾する。いくつかの実施形態において、抗体を1以上の水溶性ポリマーに連結させる。あるそのような実施形態において、水溶性ポリマーへの結合によって、抗体が生理学的環境などの水性環境中で沈殿する可能性は減少する。いくつかの実施形態において、治療抗体を水溶性ポリマーと連結させる。いくつかの実施形態において、当業者は、ポリマー/抗体結合体が患者の治療で用いられるかどうか、もし用いられる場合は抗体の薬理学的プロフィール(例えば、半減期、投薬量、活性、抗原性,および/または他の因子)をはじめとする検討項目に基づいて、好適な水溶性ポリマーを選択することができる。
【0076】
ある例示的な臨床的に許容される水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG);ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド;エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー;モノメトキシ−ポリエチレングリコール;カルボキシメチルセルロース;デキストラン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン;ポリ−1,3,6−トリオキサン;エチレン/無水マレイン酸コポリマー;ポリ−β−アミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか);ポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)および他のポリアルキレンオキシド;ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー;ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)および他のポリオキシエチル化ポリオール;ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、コロン酸(colonic acid)または他の炭水化物ポリマー;ならびにフィコール、デキストラン、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある例示的なPEGとしては、抗体修飾で有用であることが当該技術分野で知られているある形態、例えば、モノ−(C
1−C
10)アルコキシ−またはアリールオキシ−PEGが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、PEGプロピオンアルデヒドは、その水中安定性のために製造において利点を有する可能性がある。
【0077】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは任意の分子量のものである。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは分枝または非分枝である。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは約2kDa〜約100kDa(この範囲の終点間の全ての点を含む)の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは約5kDa〜約40kDaの平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは約10kDa〜約35kDaの平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは約15kDa〜約30kDaの平均分子量を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗体はポリエチレングリコールに連結される(PEG;すなわち、抗体は「ペグ化」される)。様々な実施形態において、PEGはほ乳類において低い毒性を有する。Carpenter et al. (1971)
Toxicol. Appl. Pharmacol.、18:35-40を参照のこと。特に、アデノシンデアミナーゼのPEG付加物は、米国で重度の複合免疫不全症候群の治療のためのヒトにおける使用に関して認可されている。様々な実施形態において、PEGは、抗体の免疫原性を減少させる可能性がある。例えば、いくつかの実施形態において、非ヒト配列を有する抗体に対するPEGの連結は、ヒトに施された場合、その抗体の抗原性を減弱させる可能性がある。
【0079】
いくつかの実施形態において、ポリマーは抗体中の1以上の反応性アミノ酸残基に連結される。ある例示的な反応性アミノ酸残基としては、アミノ末端アミノ酸のアルファ−アミノ基、リジン側鎖のイプシロンアミノ基、システイン側鎖のスルフヒドリル基、アスパルチルおよびグルタミル側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端アミノ酸のアルファ−カルボキシル基、チロシン側鎖、およびあるアスパラギン、セリンまたはスレオニン残基に連結した活性化グリコシル鎖が挙げられるが、これらに限定されるものではない。タンパク質との反応をおこなうために好適な、PEGのある例示的な活性化形態(「PEG試薬」)は、当業者に公知である。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ基に対する連結に好適なPEG試薬としては、カルボン酸の活性エステルまたはPEGのカーボネート誘導体、例えば、脱離基がN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、イミダゾールまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−4−スルホネートであるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、マレイミドまたはハロアセチル基を含有するPEG試薬を使用して、スルフヒドリル基を修飾する。いくつかの実施形態において、アミノ、ヒドラジンおよび/またはヒドラジド基を含有するPEG試薬を、タンパク質中の炭水化物基の過ヨウ素酸塩酸化によって生成するアルデヒドとの反応で使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは少なくとも1つの反応性基を有する。いくつかの実施形態において、PEGなどの水溶性ポリマーの活性化誘導体は、水溶性ポリマーを活性化基と反応させることによって作製される。いくつかの実施形態において、活性化基は、一官能性、二官能性、または多官能性であってよい。水溶性ポリマーを2以上の抗体と連結させるために用いられるある例示的な活性化基としては、以下の基:スルホン(例えば、クロロスルホン、ビニルスルホンおよびジビニルスルホン)、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート(tresylate)、アジジリン(azidirine)、オキシランおよび5−ピリジルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、PEG誘導体は、典型的には、加水分解に対して長期間にわたり約11以下のpHの水性環境中で安定である。いくつかの実施形態において、抗体などの別の分子と連結したPEG誘導体は、分子に加水分解からの安定性を付与する。ある例示的なホモ二官能性PEG誘導体としては、PEG−
ビス−クロロスルホンおよびPEG−
ビス−ビニルスルホンが挙げられるが、これらに限定されるものではない(国際公開第95/13312号を参照のこと)。
【0081】
5.2.3.モノクローナル抗体を作製するある方法
5.2.3.1.あるハイブリドーマ法
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は標準的技術によって産生される。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって産生される。そのようなある方法は、当業者に公知である。例えば、Kohler et al. (1975)
Nature256:495-497; Harlow and Lane (1988)
Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 6 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。あるそのような実施形態において、好適な動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、サル、または他のほ乳類を免疫原で免疫化して、抗体分泌細胞を産生する。いくつかの実施形態において、抗体分泌細胞は、B細胞、例えばリンパ球または脾細胞である。いくつかの実施形態において、リンパ球(例えば、ヒトリンパ球)をin vitroで免疫化して、抗体分泌細胞を生成させる。例えば、Borreback et al. (1988)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 85:3995-3999を参照のこと。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗体分泌細胞を「不死化」細胞系、例えば骨髄型細胞系と融合させて、ハイブリドーマ細胞を産生する。いくつかの実施形態では、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えばELISAによって同定される。いくつかの実施形態において、標準的方法を用いてそのような細胞を次いでサブクローン化することができ、培養することができる。いくつかの実施形態において、そのような細胞を好適な動物宿主における腹水腫瘍などin vivoで増殖させることもできる。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体をハイブリドーマ培養培地、血清、または腹水から、親和性クロマトグラフィーなどの標準的分離手順を用いて単離する。ある実施形態によるハイブリドーマの産生およびモノクローナル抗体の精製のための手引きは、例えば、Harlow and Lane (1988)
Antibodies: A Laboratory Manual Ch. 8 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)で提供されている。
【0083】
いくつかの実施形態において、マウスモノクローナル抗体は、遺伝子改変マウスを免疫原で免疫化することによって産生される。あるそのような実施形態において、マウスはNOTUM欠損マウスであり、これはNOTUM機能が部分的または完全に欠けている。あるそのような実施形態において、マウスは、NOTUMをコードする遺伝子の全部または一部が欠けている「ノックアウト」マウスである。いくつかの実施形態において、そのようなノックアウトマウスをマウスNOTUMで免疫化する。いくつかの実施形態において、そのようなノックアウトマウスをヒトNOTUMで免疫化する。
【0084】
いくつかの実施形態において、ヒトモノクローナル抗体を、ヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生させる。例えば、米国特許第6,075,181A号および同第6,114,598A号;ならびに国際公開第98/24893A2号を参照のこと。例えば、いくつかの実施形態において、ヒトイムノグロブリン遺伝子を、内因性Ig遺伝子が不活性化されたマウスに導入する(例えば、酵母人工染色体、ヒト染色体断片、または生殖細胞系組み込みを使用)。例えば、Jakobovits et al. (1993)
Nature362:255-258; Tomizuka et al. (2000)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:722-727;およびMendez et al. (1997)
Nat. Genet. 15:146-156(トランスジェニックマウスのXenoMouse II(登録商標)系を記載)を参照のこと。
【0085】
いくつかの実施形態において、そのようなトランスジェニックマウスを免疫原で免疫化する。あるそのような実施形態において、抗体を発現するマウスからのリンパ細胞(例えばB細胞)を得る。あるそのような実施形態において、そのような回収された細胞を骨髄型細胞系などの「不死化」細胞系と融合させて、ハイブリドーマ細胞を産生する。あるそのような実施形態において、ハイブリドーマ細胞をスクリーンし、選択して、関心のある抗原に特異的な抗体を産生するものを同定する。ヒトモノクローナル抗体の産生に好適なある例示的な方法およびトランスジェニックマウスは、例えば、Jakobovits et al. (1993)
Nature362:255-258; Jakobovits (1995)
Curr. Opin. Biotechnol.6:561-566; Lonberg et al. (1995)
Int’l Rev. Immunol.13:65-93; Fishwild et al. (1996)
Nat. Biotechnol.14:845-851; Mendez et al. (1997)
Nat. Genet. 15:146-156; Green (1999)
J. Immunol. Methods231:11-23;
Tomizuka et al. (2000)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 97:722-727で記載され;
Little et al. (2000)
Immunol. Today21:364-370;および国際公開第98/24893号で概説されている。いくつかの実施形態において、NOTUMに対するヒトモノクローナル抗体は、治療抗体としての使用に好適である。以下のパートV.G.を参照のこと。
【0086】
5.2.3.2.あるディスプレイベースの方法
いくつかの実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、以下で記載するもののいずれかなどのディスプレイベースの方法を用いて産生される。
【0087】
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイ技術を用いて産生される。種々の抗体ファージディスプレイ法が当業者には知られており、例えば、Hoogenboom,
Overview of Antibody Phage-Display Technology and Its Applications, from
Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols(2002) 178:1-37 (O’Brien and Aitken, eds., Human Press, Totowa, NJ)で記載されている。例えば、いくつかの実施形態において、抗体のライブラリーは、非溶解性繊維状ファージfdまたはM13などの繊維状ファージの表面上で提示される。いくつかの実施形態において、抗体は、V
H−V
L対を安定化させるために操作された分子間ジスルフィド結合を有するscFv、Fab、Fvなどの抗体断片、および二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、所望の結合特異性を有する抗体を次いで選択することができる。抗体ファージディスプレイ法の非限定的例示的実施形態を以下でさらに詳細に記載する。
【0088】
いくつかの実施形態において、抗体ファージ−ディスプレイライブラリーは、当業者に公知のある方法を用いて調製することができる。例えば、Hoogenboom,
Overview of Antibody Phage Display Technology and Its Applications, from
Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols (2002) 178:1-37 (O’Brien and Aitken, eds., Human Press, Totowa, NJ)を参照のこと。いくつかの実施形態において、可変遺伝子レパートリーは、抗体分泌細胞のmRNAから誘導されるゲノムDNAまたはcDNAのPCR増幅によって調製される。例えば、いくつかの実施形態において、cDNAはB細胞のmRNAから調製される。いくつかの実施形態において、重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAは、例えば、PCRによって増幅される。
【0089】
いくつかの実施形態において、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAを好適なベクター中にクローン化する。いくつかの実施形態において、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをクローニングプロセス中にランダムに組み合わせて、それによって多様なscFvまたはFabをコードするcDNAライブラリーのアセンブリを得る。いくつかの実施形態において、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをライゲートした後、好適なベクター中にクローン化する。いくつかの実施形態において、重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAを段階的クローニングによって好適なベクター中にライゲートする。
【0090】
いくつかの実施形態において、cDNAをファージディスプレイベクター、例えばファージミドベクター中にクローン化する。ある例示的なファージミドベクター、例えばpCES1は、当業者に公知である。いくつかの実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするcDNAが同じベクター上に存在する。例えば、いくつかの実施形態において、scFvをコードするcDNAを、マイナーファージコートタンパク質pIIIをコードする遺伝子IIIの全部または一部でフレーム中にクローン化する。あるそのような実施形態において、ファージミドはファージ表面上でscFv−pIII融合の発現をおこなう。別法として、いくつかの実施形態において、重鎖(または軽鎖)をコードするcDNAを遺伝子IIIの全部または一部でフレーム中にクローン化し、軽鎖(または重鎖)をコードするcDNAを同じベクター中のシグナル配列の下流でクローン化する。シグナル配列は、軽鎖(または重鎖)の宿主細胞のペリプラズムへの発現をおこない、この場合、重鎖および軽鎖を集めてFab断片を構築する。別法として、いくつかの実施形態において、重鎖をコードするcDNAおよび軽鎖をコードするcDNAが別のベクター上に存在する。あるそのような実施形態において、重鎖および軽鎖cDNAを別々に、1つはファージミド中へ、もう1つはファージベクター中へクローン化し、どちらも宿主細胞でのin vivo組換えに関するシグナルを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、組換えファージミドまたはファージベクターをイー・コリ(E. coli)などの好適な細菌宿主中に導入する。ファージミドを使用するいくつかの実施形態において、宿主はヘルパーファージに感染して、ファージ構造タンパク質を供給し、それによってファージ表面上に抗体−pIII融合タンパク質を有するファージ粒子の発現が可能になる。
【0092】
いくつかの実施形態において、「合成」抗体ライブラリーは、in vitroで再配列される可変遺伝子のレパートリーを用いて構築される。例えば、いくつかの実施形態において、重鎖または軽鎖をコードする個々の遺伝子断片(それぞれV−D−JまたはV−J)を、PCRを用いてランダムに組み合わせる。いくつかの実施形態において、さらなる配列多様性を、CDR、およびおそらくはFRに、例えばエラープローンPCRによって導入することができる。いくつかのそのような実施形態において、さらなる配列多様性がCDR3、例えば重鎖のH3に導入される。
【0093】
いくつかの実施形態において、「ナイーブ」または「ユニバーサル」ファージディスプレイライブラリーを、免疫化されていない動物由来の核酸を用いて前述のようにして構築する。いくつかの実施形態において、免疫化されていない動物はヒトである。いくつかの実施形態において、「免疫化された」ファージディスプレイライブラリーを、免疫化された動物由来の核酸を用いて前述のようにして構築する。いくつかの実施形態において、免疫化された動物は、ヒト、ラット、マウス、ハムスター、またはサルである。あるそのような実施形態において、動物を後述する免疫源のいずれかで免疫化する。
【0094】
ある例示的ユニバーサルヒト抗体ファージディスプレイライブラリーは、商業的供給源から入手可能である。ある例示的なライブラリーとしては、MorphoSys AG(Martinstreid/Munich, Germany)からのHuCAL(登録商標)シリーズのライブラリー;MAbstract(登録商標)技術を用いたCrucell(Leiden, the Netherlands)からのライブラリー;BioInvent (Lund, Sweden)からのn-CoDeR(商標)Fabライブラリー;およびCambridge Antibody Technology (Cambridge, UK)から入手可能なライブラリーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
いくつかの実施形態において、ファージディスプレイライブラリーからの所望の結合特異性を有する抗体の選択は、連続パニングステップによって達成される。パニングのいくつかの実施形態において、ライブラリーファージ調製物を抗原に曝露する。あるそのような実施形態において、ファージ−抗原複合体を洗浄し、そして非結合ファージを捨てる。あるそのような実施形態において、結合ファージを回収し、続いてイー・コリを感染させることによって増幅させる。そのようなある実施形態において、モノクローナル抗体産生ファージは、単一のプラークを選択することによってクローン化することができる。いくつかの実施形態において、上記プロセスを繰り返す。
【0096】
いくつかの実施形態において、パニングで使用される抗原は、後述される免疫原のいずれかである。いくつかの実施形態において、抗原を固体支持体上に固定して、親和性クロマトグラフィーにより抗原結合ファージを精製する。いくつかの実施形態において、抗原をビオチニル化し、それによってストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズを用いて非結合ファージから結合ファージを分離させる。いくつかの実施形態において、抗原を細胞(直接パニングのため)上、組織低温切開片中、または膜(例えば、ナイロンもしくはニトロセルロース膜)上に固定することができる。あるパニング手順の他のバリエーションは当業者が慣例的に決定することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、酵母ディスプレイシステムを用いてモノクローナル抗体を産生する。あるそのようなシステムにおいて、抗体を融合タンパク質として酵母AGA2タンパク質の全部または一部で発現させ、これは酵母細胞壁の表面上に提示されるようになる。あるそのような実施形態において、所望の結合特異性を有する抗体を発現する酵母細胞を、次いで細胞を蛍光標識された抗原に曝露することによって同定することができる。あるそのような実施形態において、抗原に結合する酵母細胞を次いでフローサイトメトリーによって単離することができる。例えば、Boder et al. (1997)
Nat. Biotechnol.15:553-557を参照のこと。
【0098】
5.2.3.3.ある親和性成熟法
いくつかの実施形態において、特定の抗原の抗体の親和性は、抗体をin vitroで親和性成熟(または「定向進化」)に付すことによって増大させる。in vivoで、天然の抗体は体細胞超変異による親和性成熟と、それに続いて選択を受ける。いくつかのin vitro法はそのin vivoプロセスを模倣し、それによって、天然の抗体の親和性に等しいか、または上回る親和性を有する抗体を産生させる。
【0099】
親和性成熟のいくつかの実施形態において、所望の結合特異性を有する抗体の可変領域をコードする核酸配列に突然変異を導入する。例えば、Hudson et al. (2003)
Nat. Med. 9:129-134; Brekke et al. (2002)
Nat. Reviews 2:52-62を参照のこと。いくつかの実施形態において、突然変異を重鎖、軽鎖、または両者の可変領域に導入する。いくつかの実施形態において、突然変異を1以上のCDRに導入する。あるそのような実施形態において、突然変異をH3、L3、または両者に導入する。いくつかの実施形態において、突然変異を1以上のFRに導入する。いくつかの実施形態において、突然変異のライブラリーを、例えば、ファージ、リボソーム、または酵母ディスプレイライブラリーにおいて作製して、親和性が増大した抗体を、標準的スクリーニング法によって同定することができる。例えば、Boder et al. (2000)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA97:10701-10705; Foote et al. (2000)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA97:10679-10681; Hoogenboom,
Overview of Antibody Phage Display Technology and Its Applications, from
Methods in Molecular Biology: Antibody Phage Display: Methods and Protocols(2002) 178:1-37 (O’Brien and Aitken, eds., Human Press, Totowa, NJ);およびHanes et al. (1998)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA95:14130-14135を参照のこと。
【0100】
いくつかの実施形態において、抗体の構造、例えば抗原結合部位に関する情報に基づいた部位特異的突然変異によって突然変異を導入する。いくつかの実施形態において、CDRの組み合わせ突然変異誘発を用いて突然変異を導入する。いくつかの実施形態において、可変領域コード配列の全部または一部を、例えば、イー・コリミューテーター細胞、ホモローガスな遺伝子再構成、またはエラープローンPCRを用いてランダムに突然変異させる。いくつかの実施形態において、突然変異を、「DNAシャッフリング」を用いて導入する。例えば、Crameri et al. (1996)
Nat. Med.2:100-102; Fermer et al. (2004)
Tumor Biol. 25:7-13を参照のこと。
【0101】
いくつかの実施形態において、「鎖シャッフリング」を使用して、親和性が増大した抗体を生成させる。鎖シャッフリングのいくつかの実施形態において、1つの鎖、例えば軽鎖は軽鎖のレパートリーで置換され、一方、他の鎖、例えば重鎖は変更されず、かくして特異性を提供する。あるそのような実施形態において、鎖シャッフルされた抗体のライブラリーを作製し、この場合、未変化の重鎖が軽鎖のレパートリーからの各軽鎖との組み合わせで発現される。いくつかの実施形態において、そのようなライブラリーを次いで親和性が増大した抗体についてスクリーンすることができる。いくつかの実施形態において、重鎖および軽鎖の両方が逐次置換される。いくつかの実施形態において、重および/または軽鎖の可変領域だけが置換される。いくつかの実施形態において、重および/または軽鎖の可変領域の一部分だけ、例えば、CDRが置換される。例えば、Hudson et al. (2003)
Nat. Med. 9:129-134; Brekke et al. (2002)
Nat. Reviews2:52-62; Kang et al. (1991)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA88:11120-11123; Marks et al. (1992)
Biotechnol.10:779-83を参照のこと。
【0102】
いくつかの実施形態において、ヒトNOTUMと特異的に結合するマウスモノクローナル抗体(マウスNOTUMに対するものであるが、ヒトNOTUMと特異的に結合する(即ち、交差反応する)マウスモノクローナル抗体を含む)を、逐次鎖シャッフリングに付す。いくつかの実施形態において、例えば、所定のマウスモノクローナル抗体の重鎖をヒト軽鎖の新しいレパートリーと組み合わせ、そして所望の親和性を有する抗体を選択する。あるそのような実施形態において、選択された抗体の軽鎖を次いでヒト重鎖の新しいレパートリーと組み合わせ、そして所望の親和性を有する抗体を選択する。このように、いくつかの実施形態において、所望の抗原結合特異性および親和性を有するヒト抗体が選択される。
【0103】
別法として、いくつかの実施形態において、所定のマウスモノクローナル抗体の重鎖をヒト軽鎖の新しいレパートリーと組み合わせ、所望の親和性を有する抗体をこの第1ラウンドのシャッフリングから選択する。いくつかの実施形態において、もとのマウスモノクローナル抗体の軽鎖をヒト重鎖の新しいレパートリーと組み合わせ、そして所望の親和性を有する抗体をこの第2ラウンドのシャッフリングから選択する。いくつかの実施形態において、第1ラウンドのシャッフリングから選択される抗体由来のヒト軽鎖を次いで第2ラウンドのシャッフリングで選択された抗体由来のヒト重鎖と組み合わせる。かくして、いくつかの実施形態において、所望の抗原結合特異性および親和性を有するヒト抗体が選択される。
【0104】
いくつかの実施形態において、抗体選択と親和性成熟とが交互になった「リボソームディスプレイ」法を使用する。リボソームディスプレイ法のいくつかの実施形態において、抗体コード化核酸を選択ステップ間のRT−PCRによって増幅させる。したがって、いくつかの実施形態において、エラープローンポリメラーゼを用いて突然変異を核酸に導入することができる。そのような方法の非限定的例は、Hanes et al. (1998)
Proc. Nat’l Acad. Sci. USA95:14130-14135で記載されている。
【0105】
5.2.3.4.ある組換え法
いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は組換え技術によって産生される。例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと。あるそのような実施形態において、核酸コード化モノクローナル抗体鎖をクローン化し、好適な宿主細胞中で発現させる。例えば、いくつかの実施形態において、RNAは所望の抗体を発現する細胞、例えば成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、標準的方法を用いて調製することができる。いくつかの実施形態において、標準的方法を用いてcDNAを作製するためにRNAを次いで使用することができる。いくつかの実施形態において、重鎖または軽鎖ポリペプチドをコードするcDNAは、例えばPCRにより、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅される。いくつかの実施形態において、cDNAを好適な発現ベクター中にクローン化する。いくつかの実施形態において、発現ベクターを次いで、好適な宿主細胞、例えば内因的に抗体を産生しない宿主細胞などの好適な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトする。ある例示的な宿主細胞としては、イー・コリ、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、および骨髄腫細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。重鎖および軽鎖が同じ宿主中で同時発現されるいくつかの実施形態において、再構成された抗体を単離することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、重鎖または軽鎖をコードするcDNAを修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態において、マウス重鎖または軽鎖の定常領域をヒト重鎖または軽鎖の定常領域で置換することができる。このようにして、いくつかの実施形態において、ヒト抗体定常領域を有するが、マウス抗体の結合特異性を保持するキメラ抗体を産生することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、NOTUM中和抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、単一の核酸分子は、NOTUM中和抗体の重鎖をコードする第1ポリヌクレオチド配列およびNOTUM中和抗体の軽鎖をコードする第2ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、例えば、抗体が単鎖Fv(scFv)である場合、重鎖のコード配列および軽鎖のコード配列は連続コード配列の一部であるので、単一ポリペプチドが発現され、これは抗体の重鎖および軽鎖の両方を含む。いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一の核酸分子は、2つの鎖を別々のポリペプチドとして発現することができる。いくつかのそのような実施形態では、各鎖は別のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、2つの鎖は同じプロモーターの制御下にある。当業者は、意図される適用にしたがってNOTUM中和抗体の重鎖および軽鎖の好適な立体配置および好適な制御要素を選択することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、核酸は、ベクター、例えば特定の宿主細胞中の重鎖および/または軽鎖を発現するために好適な発現ベクターである。当業者は、好適な発現ベクター(複数可)を発現のために用いられる宿主細胞に応じて選択することができる。そのようなベクターの多数の例は当該技術分野で公知である。
【0109】
いくつかの実施形態において、核酸分子は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、2.78、およびそのようなMAbのヒト化バージョンから選択されるNOTUM中和抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかのそのような実施形態において、核酸分子は、配列番号101、103、105、107、109、111、112、115、116、119、120、123、124、127、および128から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、2.78、およびそのようなMAbのヒト化バージョンから選択されるNOTUM中和抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかのそのような実施形態において、核酸分子は、配列番号102、104、106、108、110、113、114、117、118、121、122、125、126、129、および130から選択されるポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、MAb1.731、1.802、1.815、1.846、2.1029、2.55、2.78、およびそのようなMAbのヒト化バージョンから選択されるNOTUM中和抗体の、重鎖をコードする第1ポリヌクレオチド配列および軽鎖をコードする第2ポリヌクレオチド配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、組換え抗体をある細胞系で発現させることができる。いくつかの実施形態において、特定の抗体をコードする配列を、好適なほ乳類宿主細胞の形質転換のために用いることができる。ある実施形態によれば、形質転換はポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入するための任意の公知方法によるものであり得る。ある例示的な方法としては、ポリヌクレオチドをウイルス中(またはウイルスベクター中)にパッケージングし、そして宿主細胞をウイルス(またはベクター)で、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、および同第4,959,455号によって例示される当該技術分野で公知のあるトランスフェクション手順を用いて形質導入することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、使用される形質転換手順は、形質転換される宿主に依存する可能性がある。ヘテロローガスなポリヌクレオチドをほ乳類細胞中に導入するためのある例示的な方法は当該技術分野で公知であり、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、原形質融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチド(複数可)のリポソーム中への封入、およびDNAの核中への直接微量注入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
発現のための宿主として利用可能なある例示的ほ乳類細胞系は当該技術分野で公知であり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞ガン細胞(例えば、Hep G2)、および多くの他の細胞系をはじめとするAmerican Type Culture Collection (ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、細胞系は、どの細胞系が、NOTUMと特異的に結合する高レベルの抗体を産生するかを決定することによって選択することができる。
【0112】
5.3.治療方法
本発明は、患者において皮質内骨形成を刺激する方法であって、それを必要とする患者に有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法を包含する。本発明は、皮質骨厚みを増大させる方法であって、それを必要とする患者に有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法も包含する。
【0113】
本発明は、骨量の減少に関連する疾患もしくは障害を治療、管理、または防止する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量または予防有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法を包含する。疾患および障害の例としては、骨粗鬆症(例えば、閉経後骨粗鬆症、ステロイドまたはグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、および特発性骨粗鬆症)、オステオペニア、およびパジェット病が挙げられる。
【0114】
骨折を治療、管理、または防止する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量または予防有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法も本発明に含まれる。特定の骨折は、転移性骨疾患、すなたち、骨に転移したガンに関連する。骨に転移する可能性のあるガンの例としては、前立腺ガン、乳ガン、肺ガン、甲状腺ガン、および腎臓ガンが挙げられる。
【0115】
本発明はさらに、疾患もしくは障害に関連するか、または起因する骨量の減少を治療、管理、または防止する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量または予防有効量の本発明の抗体を投与することを含む方法も包含する。疾患および障害の例としては、セリアック病、クローン病、クッシング症候群、副甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、および潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0116】
本発明の方法から恩恵を受ける可能性がある非限定的患者としては、55才以上の年齢の男性および女性、閉経後の女性、ならびに腎不全に苦しんでいる患者が挙げられる。
【0117】
本発明の抗体は、骨に影響を及ぼす疾患もしくは状態の治療、管理、または防止において有用であることが知られている他の薬物と組み合わせて(例えば、同時に、もしくは異なる時に)投与することができる。例としては:アンドロゲン受容体モジュレーター;ビスホスフェート;カルシトニン;カルシウム感知受容体アンタゴニスト;RANKL抗体、カテプシンK阻害剤;エストロゲンおよびエストロゲン受容体モジュレーター;インテグリンバインダー、抗体、および受容体アンタゴニスト;副甲状腺ホルモン(PTH)ならびにそれらのアナログおよび模倣物;ならびにビタミンDおよび合成ビタミンDアナログが挙げられる。
【0118】
アンドロゲン受容体モジュレーターの例としては、フィナステリドおよび他の5α−リダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0119】
ビスホスフェートの例としては、アレンドロネート、シマドロネート(cimadronate)、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート(piridronate)、リセドロネート(risedronate)、チルドロネート、およびゾレンドロネート(zolendronate)、ならびにそれらの薬剤的に許容される塩およびエステルが挙げられる。
【0120】
カテプシンK阻害剤の例としては、VEL−0230、AAE581(バリカチブ)、MV061194、SB−462795(レラカチブ)、MK−0822(オダナカチブ)、およびMK−1256が挙げられる。
【0121】
エストロゲンおよびエストロゲン受容体モジュレーターの例としては、天然に存在するエストロゲン(例えば、7−エストラジオール、エストロン、およびエストリオール)、共役エストロゲン(例えば、共役ウマエストロゲン)、経口避妊薬、硫酸化エストロゲン、プロゲストゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、およびSH646が挙げられる。
【0122】
インテグリンバインダー、抗体、および受容体アンタゴニストの例としては、ビタキシン(MEDI−522)、シレンジタイドおよびL−000845704が挙げられる。
【0123】
5.4.医薬処方
本発明は、1以上の本発明の抗体、および場合によって1以上の他の薬物、例えば前述のものを含む医薬組成物を包含する。
【0124】
いくつかの実施形態において、NOTUM中和抗体を治療抗体として用いることができる。治療抗体として用いることができる例示的NOTUM中和抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者は治療薬としての抗体の使用をよく知っている。
【0125】
いくつかの実施形態において、有効量のNOTUMに対する抗体および薬剤的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料および/またはアジュバントを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、有効量のNOTUMに対する抗体および有効量の少なくとも1つのさらなる治療薬を、薬剤的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存料および/またはアジュバントとともに含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療薬は、前述のものから選択される。
【0126】
いくつかの実施形態において、医薬組成物用の処方材料は用いられる投薬量および濃度で受容者に対して非毒性である。
【0127】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、組成物の、pH、オスモル濃度、粘度、透明性、色、等張性、臭い、滅菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着または浸透を修飾、維持または保存するための処方材料を含む。いくつかの実施形態において、好適な処方材料としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンおよびリジン);抗菌剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウム);緩衝液(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩おおび他の有機酸);増量剤(例えば、マンニトールおよびグリシン);キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン、およびヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン);充填剤;モノサッカライド、ジサッカライド、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースおよびデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンおよびイムノグロブリン);着色剤、香味料、および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成カウンターイオン(例えば、ナトリウム);保存料(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸および過酸化水素);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20およびポリソルベート80)、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、およびチロキサパル(tyloxapal));安定性促進剤(例えば、スクロースおよびソルビトール);張性増加剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、塩化ナトリウムまたはカリウム)、マンニトール、およびソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤;ならびに医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18
th Edition, A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company (1990)。
【0128】
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体または他の治療分子を半減期延長ビヒクルと結合させる。非限定的例示的半減期延長ビヒクルには、当該技術分野で公知のものが含まれる。そのようなビヒクルとしては、Fcドメイン、ポリエチレングリコール、およびデキストランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的なそのようなビヒクルは、例えば、公開されたPCT出願国際公開第99/25044号で記載されている。
【0129】
いくつかの実施形態において、最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式、および所望の投薬量に応じて当業者によって決定されるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上出)を参照のこと。いくつかの実施形態において、そのような組成物は、中和抗体の物理状態、安定性、in vivo放出速度、またはin vivoクリアランス速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0130】
いくつかの実施形態において、医薬組成物中の一次ビヒクルまたは担体は、本来は水性または非水性のいずれかであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、好適なビヒクルまたは担体は、注射用水、生理食塩水、または人工脳脊髄液であって、おそらくは非経口投与用組成物で一般的な他の材料を添加したものであってよい。例示的ビヒクルとしては、中性緩衝食塩水および血清アルブミンと混合された食塩水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、pH約7.0〜8.5のTris緩衝液、またはpH約4.0〜5.5の酢酸塩緩衝液を含み、これは、ソルビトールもしくはそれに対する好適な代替物をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わずNOTUMに対する抗体を含む組成物は、所望の程度の純度を有する選択された組成物を、任意の処方薬剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上出)と混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で貯蔵用に調製することができる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体を、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わず含む組成物を、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として処方することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は非経口送達にために選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は吸入または経口などの消化管を通した送達のために選択される。薬剤的に許容される組成物を調製するための種々の技術は当業者の技術範囲内である。
【0132】
いくつかの実施形態において、処方成分は投与の部位に対して許容される濃度で存在する。いくつかの実施形態において、組成物を生理学的pHまたは若干低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲内に維持するために緩衝液を使用する。
【0133】
いくつかの実施形態において、非経口投与が想定される場合、医薬組成物は、さらなる治療薬の有無を問わず、薬剤的に許容されるビヒクル中にNOTUMに対する所望の抗体を含むパイロジェンフリーな非経口的に許容される水溶液の形態であってよい。いくつかの実施形態において、非経口注射用ビヒクルは無菌蒸留水であり、この中で、NOTUMに対する抗体が、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わず、適切に保存される、無菌等張液として処方される。いくつかの実施形態において、製剤は、所望の分子の、製品の制御放出または持続放出のために提供することができる注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー化合物(例えばポリ乳酸もしくはポリグリコール酸)、ビーズまたはリポソームなどの薬剤との処方を含む可能性があり、これを次いでデポー注射によって送達することができる。いくつかの実施形態において、ヒアルロン酸も用いることができ、循環中長時間促進効果を有し得る。いくつかの実施形態において、移植可能な薬物送達デバイスを用いて所望の分子を導入することができる。
【0134】
いくつかの実施形態において、医薬組成物を吸入用に処方することができる。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する抗体は、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わず、吸入用に乾燥粉末として処方することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わずNOTUMに対する抗体を含む吸入溶液を、エアロゾル送達のためのプロペラントと配合してもよい。いくつかの実施形態において、溶液を噴霧することができる。
【0135】
いくつかの実施形態において、処方を経口投与することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わず、このように投与されるNOTUMに対する抗体は、錠剤およびカプセルなどの固体投与形態の配合で、通例用いられる担体の有無を問わず用いることができる。いくつかの実施形態において、カプセルは、バイオアベイラビリティーが最大化され、前全身性分解が最小に抑えられる場合に、胃腸管中の場所で処方の有効成分を放出するように設計することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる薬剤を含めて、さらなる治療薬の有無を問わず、NOTUMへの抗体の吸収を促進することができる。いくつかの実施形態において、希釈剤、香味料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、および/またはバインダーも用いることができる。
【0136】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わず、有効量のNOTUMに対する抗体を、錠剤の製造に好適な非毒性賦形剤との混合物中に含む。いくつかの実施形態において、錠剤を無菌水、または別の適切なビヒクル中に溶解させることによって、溶液を単位剤形で調製することができる。例示的賦形剤としては、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、およびリン酸カルシウム);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、およびアカシア);ならびに潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルク)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
少なくとも1つのさらなる治療薬の有無を問わずNOTUMに対する抗体を持続送達または制御送達処方中に含む処方をはじめとするさらなる医薬組成物は、当業者には明かであろう。例示的持続送達または制御送達処方としては、リポソーム担体、生体内分解性微小粒子、多孔性ビーズ、およびデポー注射が挙げられるが、これらに限定されるものではない。処方を調製するための種々の技術が当業者には知られている。いくつかの実施形態において、持続放出製剤は、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの成形品の形態の半透性ポリマーマトリックスを含んでもよい。例示的持続放出マトリックスとしては、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(例えば、米国特許第3,773,919号および欧州特許出願公開第058,481号を参照のこと)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(例えば、Sidman et al. (1983)
Biopolymers22:547-556を参照のこと)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(例えば、Langer et al. (1981)
J. Biomed. Mater. Res.15:167-277およびLanger (1982)
Chem. Tech.12:98-105を参照のこと)、エチレンビニルアセテート(Langer et al.、上出)、およびポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第133,988号)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、持続放出組成物はリポソームを含む可能性があり、これは、いくつかの実施形態において、当該技術分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれかによって調製することができる。例えば、Eppstein et al. (1985)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692;欧州特許出願公開第036,676号;欧州特許出願公開第088,046号;および欧州特許出願公開第143,949号を参照のこと。
【0138】
いくつかの実施形態において、in vivo投与で使用される医薬組成物は、典型的には無菌である。いくつかの実施形態において、これは、無菌ろ過膜を通したろ過によって得ることができる。組成物が凍結乾燥されるいくつかの実施形態において、この方法を使用する殺菌を凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかで実施することができる。いくつかの実施形態において、非経口投与用の組成物は、凍結乾燥形態または溶液中で貯蔵することができる。いくつかの実施形態において、非経口組成物は、一般的に、無菌点検口を有する容器、例えば、皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液袋またはバイアル中に入れられる。
【0139】
いくつかの実施形態において、医薬組成物を処方したら、それは、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として、または脱水もしくは凍結乾燥粉末として無菌バイアル中で貯蔵することができる。いくつかの実施形態において、そのような処方は、すぐに使える形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥品)のいずれかで貯蔵することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、単回投与単位を製造するためのキットが提供される。いくつかの実施形態において、キットは、それぞれ乾燥タンパク質を有する第1容器および水性処方を有する第2容器の両方を含有してもよい。いくつかの実施形態において、単一または複数のチャンバーを有するあらかじめ充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe)を含むキットが含まれる。
【0141】
いくつかの実施形態において、治療的に用いられる、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無にかかわらずNOTUMに対する抗体を含む医薬組成物の有効量は、例えば、治療の背景および目的によって変わるであろう。当業者は、いくつかの実施形態による治療のための適切な投薬量レベルが、したがって、送達される分子、NOTUMに対する抗体が少なくとも1つのさらなる治療薬の有無にかかわらず使用される兆候、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表または器官のサイズ)および/または状態(年齢および全体的な健康)に応じて変わることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、臨床医は投薬量を滴定し、投与経路を修飾して、最適の治療効果を得ることができる。いくつかの実施形態において、典型的な投薬量は、前述の因子によって、約0.1μg/kg患者体重から約100mg/kg以上まで及ぶ可能性がある。いくつかの実施形態において、投薬量は、0.1μg/kgから約100mg/kgまで;1μg/kgから約100mg/kgまで;または5μg/kgから約100mg/kgまで(前記終点の任意のものの間の全ての点(小数を含む)を含む)に及ぶ可能性がある。いくつかの実施形態において、投薬量は約1mg/kg体重〜約60mg/kg体重である。いくつかの実施形態において、投薬量は約1mg/kg体重、約3mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、または約60mg/kg体重である。
【0142】
いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体のヒト用量は、例えばマウス、イヌ、サルなどの別の種における同じ抗体の有効用量に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、NOTUMに対する中和抗体のヒト用量は、“Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,”U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, and Center for Drug Evaluation and Research (CDER), July 2005 (Pharmacology and Toxicology)を用いて決定される。
【0143】
いくつかの実施形態において、好適な投薬量は、当業者が、例えば動物実験に基づいて決定することができる。
【0144】
様々な実施形態でNOTUMに対する中和抗体を患者に対して、週2回、週1回、2週ごとに1回、1ヶ月に1回、隔月に1回、またはさらに低頻度で投与する。
【0145】
いくつかの実施形態において、投薬の頻度は、NOTUMに対する抗体の薬物動態パラメータおよび、該当する場合、使用される処方中の任意のさらなる治療薬を考慮する。いくつかの実施形態において、臨床医は、投薬量が所望の効果を達成する値に到達するまで、組成物を投与するであろう。いくつかの実施形態において、組成物は、したがって、単回投与として、または2以上の投与量(同じ量の所望の分子を含有してもよいし、または含有しなくてもよい)として長時間にわたり、または埋込デバイスもしくはカテーテルによる連続注入として、投与することができる。いくつかの実施形態において、適切な投薬量のさらなる改良は当業者によって慣例的におこなわれ、当業者が慣例的に実施する職務の範囲内である。いくつかの実施形態において、適切な投薬量は、適切な用量応答データの使用により確認することができる。いくつかの実施形態において、患者は、NOTUMに対する抗体を含む医薬組成物を1回投与される。いくつかの実施形態において、患者は、NOTUMに対する抗体を含む医薬組成物を1日につき1、2、3、または4回投与される。いくつかの実施形態において、患者は、NOTUMに対する抗体を含む医薬組成物を1週間につき1、2、3、4、5、または6回投与される。いくつかの実施形態において、患者は、NOTUMに対する抗体を含む医薬組成物を1月あたり1、2、3、または4回投与される。
【0146】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の投与経路は、公知方法にしたがい、例えば、経口、皮下、静脈内、腹腔内、大脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内経路による注射による;持続放出システムによるかもしくは埋込デバイスによる。いくつかの実施形態において、組成物は、ボーラス注射によるかもしくは注入により連続的に、または埋込デバイスにより投与することができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、組成物は、その上に所望の分子を吸収もしくは封入させた、膜、スポンジまたは別の適切な材料の埋め込みによって局所的に投与することができる。埋込デバイスが使用されるいくつかの実施形態において、デバイスは任意の好適な組織または器官中に移植することができ、所望の分子の送達は、拡散、持続放出ボーラス、または連続投与による可能性がある。
【0148】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる治療薬の有無にかかわらず、NOTUMに対する抗体は、本明細書中に記載されるものなどの方法を用いて遺伝子操作されたある細胞を移植することによって送達され、ポリペプチドを発現し、分泌する。いくつかの実施形態において、そのような細胞は、動物またはヒト細胞であってよく、オートローガス、ヘテロローガス、またはキセノローガスであってよい。いくつかの実施形態において、細胞は不死化されていてもよい。いくつかの実施形態において、免疫応答の機会を減少させるために、細胞を封入して、周辺組織の侵入を回避することができる。いくつかの実施形態において、封入材料は、典型的には、タンパク質産物(複数可)の放出を許容するが、患者の免疫系または周辺組織からの他の有害因子による細胞の破壊を防止する生体適合性半透性ポリマーエンクロージャーまたは膜である。
【実施例】
【0149】
6.1. ノックアウトマウス
ヒトNOTUM遺伝子のマウスオルソログ中の遺伝的に操作された変異とホモ接合型であるマウスを、変異マウスES細胞クローンのOMNIBANKコレクション由来の、対応する変異胚性幹(ES)細胞のクローンを使用して作製した(一般的には、米国特許第6,080,576号を参照のこと)。簡単に説明すると、マウスNOTUM遺伝子座への変異原性ウイルス挿入物を含むES細胞クローンを、胚盤胞に微量注入し、それを今度は偽妊娠の雌性宿主に移植し、出産に至らせた。その後、得られたキメラの子孫を、C57黒色雌性マウス6匹により繁殖させ、その子孫における、ノックアウトNOTUM対立遺伝子の生殖系列の伝達に関して調査した。続いて、変異NOTUM対立遺伝子に対してヘテロ接合型である動物を繁殖させ、変異NOTUM対立遺伝子に対してホモ接合型である子孫、変異NOTUM対立遺伝子に対してヘテロ接合型である子孫、または野生型の子孫を、約1:2:1の比率で得た。
【0150】
NOTUM遺伝子の破壊に対してホモ接合型である(−/−)マウスを、NOTUM遺伝子の破壊に対してヘテロ接合型である(+/−)マウス、および野生型(+/+)同腹子とともに調査した。この分析の間、哺乳類対象における主要な器官系の機能を評価するために設計された、総合的な一連の医学的診断手順を使用して、マウスを医学的に精密検査した。ホモ接合型(−/−)の「ノックアウト」マウスを、記載される数で、ならびにヘテロ接合型(+/−)および野生型(+/+)同腹子とともに調査することにより、より信頼性が高く、再現性のあるデータが得られた。
【0151】
図1に示す通り、NOTUM遺伝子のホモ接合型の破壊を含む雄性マウス(「hom」)は、週齢16週において、それらの野生型同腹子と比較して、種々の骨部位でより大きな皮質厚を示した(マウスの数N=両群において10)。マイクロCT(スキャンコ社(Scanco) μCT40)により測定されたこれらの差異は:大腿骨骨幹中央部で28%(p<0.001);上腕骨骨幹中央部で19%(p<0.001);脛骨骨幹中央部で17%(p<0.001);および脛骨−腓骨接合部で11%(p<0.001)であった。
図2に示す通り、週齢16週において、NOTUM変異に対してヘテロ接合型であるマウス(「het」)の大腿骨骨幹中央部の皮質骨厚もまた、それらの野生型同腹子のものより大きく:雄性het(N=50)は、それらの野生型同腹子(N=23)と比較して、6%(p=0.007)の増加を示し;および雌性het(N=57)は、それらの野生型同腹子(N=22)と比較して、9%(p<0.001)の増加を示した。
【0152】
NOTUM動物において観察された骨形成再分布の実際的な徴候が、
図3および4に示されており、これは、標準的な4点屈曲試験を使用した、大腿骨破壊強度試験(スケルテック社(SkeleTech)、現在はリセルカバイオサイエンス社(Ricerca Biosciences)、により実施)の結果を示す。
図3は、週齢16週の雄性マウスに関して得られた結果を示しており、het(N=20)は、それらの野生型同腹子(N=23)と比較して、大腿骨破壊強度において5%(p=0.54)の増加を示し、一方hom(N=17)は、28%(p<0.001)の増加を示した。これに対して、NOTUM homおよびhet両方の脊椎圧迫試験では、最大脊椎圧迫負荷において、野生型対照と比較して有意な減少はみられなかった。週齢16週の雌性のマウスにおいても、類似した結果を得た。
図4に示す通り、het(N=20)は、それらの野生型同腹子(N=21)と比較して、大腿骨破壊強度において12%(p=0.04)の増加を示し、一方hom(N=18)は、28%(p<0.001)の増加を示した。これらおよび他のデータの分析により、皮質厚および大腿骨破壊強度間の、強力な相関関係が明らかになった。
【0153】
6.2. 組換え型NOTUMタンパク質の作製および精製
それぞれのC末端に6XHisエピトープタグを付けた、ヒト、触媒的に不活性なヒト(S232A)、マウス、触媒的に不活性なマウス(S239A)、ラット、モルモット、カニクイザルサル、およびアカゲザルのNOTUMの完全長コード配列を、発現ベクターpIRESpuro2(クローンテック社(Clontech))中にサブクローニングした。発現構築体を使用して、一過性導入により、分泌されたNOTUMタンパク質を含む馴化培地を作製することができ、または、例えば、その後のNOTUMタンパク質精製のために、より多量の馴化培地を作製するための、安定したトランスフェクタントを作製することもできる。
【0154】
Lipofectamine2000(インビトロジェン社(Invitrogen))を使用してHEK293F細胞をトランスフェクトし、振盪フラスコ中の、Freestyle293発現培地(インビトロジェン社(Invitrogen))中の懸濁培養液中で培養した。一過性導入用には、トランスフェクションの4日後に馴化培地を収集し、無菌濾過し、4℃で保管した。安定にNOTUMタンパク質を発現している細胞株を作製するために、ピューロマイシンの存在下で、発現プラスミドのゲノム挿入を選定した。
【0155】
抗His抗体を使用して、NOTUMタンパク質の発現および分泌を、細胞可溶化物および/または馴化培地のウエスタンブロットにより確認した。限界希釈による、NOTUMを産生する大量の安定したトランスフェクタントのサブクローニングは、NOTUMを発現している個々のクローンを、抗Hisウエスタンブロットにより、比較的高レベルで同定することを可能にした。
【0156】
精製したマウスおよびヒトNOTUMタンパク質を、10〜20mgの規模で作製するため、マウスまたはヒトNOTUMのどちらかを発現しているクローンのHEK293F細胞株を、懸濁培養液中で、体積3Lまで増加させた。この体積における細胞密度が、1×10^6生存細胞/mlに達した時点で、細胞を遠心分離によりペレット化し、新鮮なFreestyle293発現培地中に懸濁し、さらに96時間、追加で培地を取り換えることなく、培養液中に維持した。96時間後、培養液を収集し、細胞を遠心分離によりペレット化し、馴化培地を無菌濾過し、その後の処理のために、4℃で保管した。
【0157】
精製の直前に、NOTUM含有馴化培地を3Lから1Lに濃縮し、次いで公称分画分子量10kDaの膜を使用したタンジェント流ろ過により、緩衝剤を、ニッケル固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)緩衝剤(20mMトリス−HCl、10mMイミダゾール、0.5M NaCl、pH7.4)に交換した。その後、濃縮し緩衝剤を交換した馴化培地を、平衡化しニッケル荷電した、金属キレート化カラムに通した。結合したタンパク質を洗浄し、イミダゾールの濃度勾配を使用して溶出した。純粋なNOTUMタンパク質を含む溶出画分をプールし、リン酸緩衝食塩水に対して透析して、溶出緩衝剤を除去した。精製し、透析したタンパク質を分割し、−80℃で凍結した。
【0158】
タンパク質の各1回分として、1つの分割量を使用し、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(サーモサイエンティフィック社(Thermo Scientific)、イリノイ州、ロックフォード)によるタンパク質濃度の測定、SDS PAGEおよびその後のクーマシィーまたは銀染色による純度の測定、無細胞OPTS酵素アッセイ(以下の実施例6.4.1に記載)および細胞ベースのWntシグナル伝達アッセイ(以下の実施例6.4.2に記載)の両方における活性の測定、ならびにリムルス変形細胞溶解物(LAL)アッセイ(ロンザ社(Lonza)、スイス、バーゼル)による内毒素濃度の測定を行った。
【0159】
6.3. NOTUMに対するマウスモノクローナル抗体の作製
精製した組換え型ヒトおよびマウスNOTUMタンパク質に対する抗体を、2つの別々の免疫化キャンペーンにおいて作成した。
【0160】
キャンペーン1において、NOTUM遺伝子中の遺伝子トラップ挿入物に対してホモ接合型であり、そのため内在性のNOTUMタンパク質を欠いているマウスを、以下の通り、ヒトNOTUMタンパク質で免疫化した。フロイント完全アジュバント中20μgのヒトNOTUMタンパク質を、腹腔内に注射することにより、マウスをプライミングした。フロイント不完全アジュバント中20μgのヒトNOTUMタンパク質を、2〜3週に1回、腹腔内に注射することにより、マウスを追加免疫した。ELISAによる測定において、ヒトNOTUMに対して、強い血清力価を示しているマウスには、PBS中10μgのヒトNOTUMタンパク質を静脈内(i.v.)に注射することにより、最終の追加免疫を施した。
【0161】
キャンペーン2において、NOTUM遺伝子中の遺伝子トラップ挿入物に対してホモ接合型のマウスを、CpG DNAを含むTiterMaxアジュバント中10μgマウスNOTUMタンパク質による、後足蹠からのプライミング免疫化の後、CpG DNAを含むミョウバンアジュバント中10μgのマウスNOTUMタンパク質による、3日または4日おきの、10回の追加免疫により、免疫化した。PBS中10μgのマウスNOTUMタンパク質による足蹠からの最終追加免疫の後、高力価マウスから鼠径部および膝窩リンパ節を収集した。
【0162】
静脈注射で追加免疫したマウス由来の脾臓または足蹠から免疫化したマウス由来のリンパ節を、最終の追加免疫の4日後に収集し、細かく刻んで漉し、細胞懸濁液を得た。赤血球を溶解させ、非B細胞集団に特異的な抗体でコーティングされた磁気ビーズを使用した陰性選択により、細胞懸濁液のB細胞を濃縮した。濃縮したB細胞とマウスNS1骨髄腫細胞の電気細胞融合によりハイブリドーマを作製し、96ウェルプレート上の、ヒポキサンチンおよびアミノプテリンを含むハイブリドーマ培地中に播種して、生存B細胞/骨髄腫細胞ハイブリドーマを選択した。
【0163】
ハイブリドーマ馴化培地を、受動的に吸着されたNOTUMタンパク質で、免疫反応性についてELISA型でアッセイすることにより、ハイブリドーマを、NOTUM特異的抗体の作製のためにスクリーニングした。マウスおよび/またはヒトNOTUMに特異的な抗体を分泌する、何百個ものハイブリドーマが、両免疫化キャンペーンから発見された。
【0164】
6.4. NOTUM中和アッセイ
6.4.1. OPTSアッセイ
OPTSアッセイにおいては、エステラーゼおよびリパーゼの蛍光アッセイのための水溶性酵素基質である、8−オクタノイルオキシピレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム(OPTS)を使用して、NOTUM活性を測定する。OPTSにおけるエステル結合の酵素的開裂により、蛍光生成物が生成される。
【0165】
ハイブリドーマ馴化培地が、一般的に、OPTSアッセイに干渉したことが分かったが、これはおそらくは、同じくOPTSを切断することが出来る加水分解酵素が、瀕死の細胞から放出されることが原因である。この理由により、ELISAにおいて当初から最高レベルの結合活性を示していた細胞株のための、追加のハイブリドーマ馴化培地を作製し、プロテインAビーズを使用したアフィニティークロマトグラフィーにより、96ウェル型中で、抗体を精製した。次いでこれらの精製された抗体を、前もって定量化することなく、OPTSアッセイにおいて、4倍希釈で試験した。
【0166】
抗体を、384ウェルプレート中、4つ一組で試験した。4X反応緩衝液(20mM CaCl2、2mM MgCl2、50mM トリス−HCl、pH7.4)中125ngの精製NOTUMを含む12.5μlを、12.5μlの精製抗体に添加した。混合後、抗体およびNOTUMを、室温で20分間インキュベートし、その後50mM トリス−HCl、pH7.4中の1.25μM OPTS(シグマ社(Sigma)、カタログ番号:74875)25μlを添加した。混合後、室温で10分間酵素反応を進行させ、その後3%SDS、25μlの添加により、反応を停止した。Envisionプレートリーダー上で、485nmの励起波長および535nmの発光波長でプレートを読み取り、切断産物の量を定量化した。
【0167】
キャンペーン1で得たヒトNOTUM免疫反応性ハイブリドーマ1,135個のスクリーニングにより、70%超のヒトNOTUMの阻害を示す3つの抗体を得た。クローンのハイブリドーマ由来の50mlの馴化培地を使用した、限界希釈およびプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる小規模の精製抗体作製により、これら3つの抗体とともに、OPTSアッセイにおいてある程度の中和を示した追加の5つのハイブリドーマを、サブクローニングのために選択した。
【0168】
キャンペーン2で特定された1,056個のマウスNOTUM免疫反応性ハイブリドーマのOPTSアッセイスクリーニングにより、50%超のマウスNOTUM阻害を示した6つの抗体を得た。クローンのハイブリドーマ由来の50mlの馴化培地を使用した、限界希釈およびプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる小規模の精製抗体作製により、これら6つの抗体とともに、OPTSアッセイにおいてある程度の中和を示した追加の6つのハイブリドーマを、サブクローニングのために選択した。
【0169】
6.4.2. Wntシグナル伝達アッセイ
NOTUMは、Wntシグナル伝達の負の制御因子として作用し得る。CellSensor(登録商標)技術および以下のとおり作製される馴化培地を使用するWntシグナル伝達アッセイにおいて、Wntシグナル伝達における影響を介して測定された抗体中和活性を測定した。pcDNA3.1(+)ベクター中のプラスミド含有ヒトNOTUMを、HEK293細胞中にトランスフェクトし、400μg/mLのG418の存在下で培養することにより、クローンを選択した。これらの細胞由来の馴化培地を、アッセイに使用した。馴化培地中にWnt3aを過剰発現および分泌しているL細胞をATCCから購入した。
【0170】
アッセイプロトコルは以下のとおりである。CellSensor(登録商標)LEF/TCF−bla FreeStyle(商標)293F細胞(インビトロジェン社(Invitrogen))を、10% 透析FBS、5μg/ml ブラストサイジン(インビトロジェン社(Invitrogen)、R210−01)、0.1mM NEAA、25mM HEPESおよび1×GPSを含むDMEM中で、15cmプレート中、コンフルエント近くまで培養した。最初にPBSで洗浄し、その後5mLのトリプシンを添加し、プレートを室温で2分間インキュベートすることにより、細胞をトリプシン処理した。次いで、15cmプレートあたり、合計10mLのアッセイ培地(Opti−MEM、+0.5% 透析FBS、0.1mM NEAA、1mM ピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES、1×GPS)を添加した。細胞をカウントし、50,000細胞/mLで懸濁した。Biocoat384ウェルプレート(フィッシャー社(Fisher)、カタログ番号:356663)中に、10000細胞/20μL/ウェルの密度で、細胞を播種した。細胞を37℃で3時間インキュベートした後、アッセイ培地中30mMのLiCl、10μLをウェルあたりに添加し、その後、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ともにアッセイ培地中の、抗体15μLおよび精製NOTUM15μLを、総体積45μLのアッセイ培地中、室温で30分間、96ウェルプレート中で共インキュベートした。アッセイにおいて、50%阻害をもたらすことが予め測定された濃度、一般的に25nM、のNOTUMを使用した。30分間のインキュベーションの後、15μLの未希釈のL−Wnt3a馴化培地を、45μLの抗体/NOTUM混合物に添加し、10μlの得られた混合物を、CellSensor(登録商標)細胞を含む384ウェルプレートのウェル、4組に、添加した。対照には、いずれの細胞をも欠くウェル、NOTUMを欠くウェル、およびL−Wnt3a馴化培地を欠くウェルが含まれた。アッセイプレートを37℃で5時間インキュベートして、Wntを介したβラクタマーゼ上方制御を可能にし、次いで8μlのLiveBLAzer(商標)−FRET B/G基質(CCF4−AM、インビトロジェン社(Invitrogen))を各ウェルに添加し、プレートを室温で3時間、暗所にてインキュベートした。次いで、Envisionプレートリーダー上で、400nmの励起波長および460nmのおよび535nmの発光波長を使用して、プレートを読み取った。
【0171】
6.5. NOTUM中和抗体の特徴付け
クローンのハイブリドーマから精製された抗体を、それらの種交差反応性に関してはELISAにより、減少し変性したNOTUMタンパク質を認識する能力に関してはウエスタンブロットにより、ならびにそれらの中和作用強度に関しては、ともに実施例6.4において上述された無細胞OPTSアッセイおよび細胞ベースのWntシグナル伝達アッセイにおいて、特徴付けした。
【0172】
キャンペーン1由来のモノクローナル抗体の機能的試験により、OPTSおよびWntシグナル伝達アッセイの両方において、1〜10nMの範囲のIC
50で、ヒトNOTUMを中和する3つの抗体、1.802、1.815、1.846が明らかになった。これらの抗体は、マウスNOTUMの活性にはいかなる影響も及ぼさず、ELISAにより、ヒトNOTUMには結合するが、マウスNOTUMには結合しないことが示された。さらに、これらの抗体は、NOTUMタンパク質をアッセイプレートに受動的に吸着させた場合には、ごく弱くしかヒトNOTUMを認識せず、および抗His提示ヒトNOTUMタンパク質に対して、より一層感受性が高かった。
【0173】
表1は、キャンペーン1由来のある特定の抗体に対する、種々の特徴付け実験の結果を示す。「Bin」列中のデータは、以下の実施例6.6に記載される方法を用いて、作成された。
【0174】
【表1】
【0175】
キャンペーン2由来のモノクローナル抗体の機能的試験により、興味深い活性プロファイルが明らかになった。より詳細には、モノクローナル抗体2.78は、OPTSおよびWntシグナル伝達アッセイの両方において、マウスおよびヒトNOTUM両方を、3〜50nMの範囲のIC
50で中和した。一方モノクローナル抗体2.1029は、OPTSアッセイにおいて、マウスおよびヒトNOTUMの両方を5〜30nMの範囲のIC
50で中和したが、Wntシグナル伝達アッセイにおいては、ヒトNOTUMのみを14nMのIC
50で中和した。後者の観察結果は、組換え型のマウスおよびヒトNOTUMタンパク質の質に、いくらかの差異が存在することに起因した。該タンパク質間の、1つの周知の差異は、組換え型マウスNOTUMは、組換え型ヒトNOTUMよりも、より一層大きな割合で、多量体/集合体として存在するということである。2.78または2.1029のどちらも、ウエスタンブロットにおいて、減少し変性したNOTUMタンパク質を認識せず、およびどちらも、受動的に吸着されたNOTUMに比べて、抗His提示NOTUMに対し、実質的により免疫反応性が高かった。
【0176】
表2は、キャンペーン2由来のある特定の抗体についての、種々の特徴付け実験の結果を示す。「Bin」列中のデータは以下の実施例6.6に記載される方法を使用して、作成された。
【0177】
【表2】
【0178】
6.6. NOTUM中和抗体を使用した結合競合実験
両免疫化キャンペーン由来の抗体の、NOTUMタンパク質に対する互いの結合を妨げる能力について、エピトープ結合アッセイにおいて評価した。このアッセイは、抗Hisで捕獲したNOTUMタンパク質を使用して、ELISA型で実施した。捕獲したNOTUMタンパク質を、過剰な量の、未標識のNOTUM特異的抗体(「遮断」抗体)とともにインキュベートし、その後ビオチン標識したNOTUM特異的抗体(「プローブ」抗体)を添加した。プローブ抗体の結合を、ストレプトアビジンに結合したHRPを使用して測定した。2つの抗体が同一のエピトープ空間での結合において競合する場合、または遮断抗体が、例えばアロステリックな干渉などにより、プローブ抗体の結合能力に何らかの影響を与える場合、信号は生成されない。2つの抗体が互いに干渉しない場合は、遮断抗体の不存在下で試験されたビオチン標識抗体に類似する信号が生成される。抗体を、逆行列型で試験する。典型的に、一組の抗体は、2つのうちのどちらが遮断抗体でどちらがプローブ抗体であるかに関わらず、同レベルの干渉を示す。類似したプロファイルを示す抗体を、同一のエピトープ「bin」に割り当てる。
【0179】
この方法論を使用することにより、モノクローナル抗体、1.802、1.815、1.846、2.78、および2.1029すべてが、ヒトNOTUMに対する互いの結合に干渉するが、いくつかの他のより強力ではない中和剤または非中和剤の結合は干渉しないことが示された。
【0180】
6.7.NOTUM中和抗体のエピトープマッピング
ヒトNOTUM特異的モノクローナル抗体、1.802、1.815、および1.846の結合に関与するアミノ酸のマッピングをするために、NOTUMのオープンリーディングフレームをコードする発現構築体のHEK293F中に、ヒトおよびマウス配列の混合物を一過性導入することにより、ヒト/マウスのキメラNOTUMタンパク質を作製した。抗His抗体を用いたウエスタンブロットおよびOPTSアッセイにより、これらのトランスフェクション由来の馴化培地が、機能的なNOTUMキメラを含有することが示された。
【0181】
図5は、この実験において使用されたヒト/マウスのキメラNOTUMタンパク質の模式図である。これらのタンパク質の配列を、第7節(配列表)に示す。馴化培地をELISA型において使用し、抗体の特異性を測定した。ヒト特異的モノクローナル抗体の、特定のキメラに対する結合の損失に基づき、モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846(これらすべては「Bin1」抗体である)が、結合において、Q47〜M177間のヒトNOTUMアミノ酸に依存するということが判明した。
図5を参照のこと。この領域内で、マウスおよびヒトNOTUMは、5つの位置(ヒト配列の番号付けに基づいて、R115K、D141S、R150K、R154H、およびY171H)において異なっている。ヒトNOTUMを発現している構築体に、これらの5つの位置それぞれにおいてマウスアミノ酸を一過性導入することにより、ヒトNOTUM点変異体を作製し、OPTSアッセイにおいて、点変異体がすべて、機能的であることが示された。ELISAにより、モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846は、ヒトNOTUM D141Sを除くすべての点変異体と結合し、このアミノ酸が、それらのヒトNOTUMに対する結合において重要であることを示した。一過性導入により、相互点変異を有するマウスNOTUMである、マウスNOTUM S148Dを作製した。マウスNOTUM S148Dは、OPTSアッセイにおいて活性であり、かつヒトNOTUM特異的モノクローナル抗体の結合を補助することが示された。従って、モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846の種特異性は、ヒトNOTUMの位置141のアミノ酸に依存するようであり、そのアミノ酸は、未変性のヒトNOTUMタンパク質においてはアスパラギン酸である。
【0182】
キメラ手法は、モノクローナル抗体2.78または2.1029の結合に関与するアミノ酸をマッピングするためには使用することが出来ない。これらは、ヒトおよびマウスNOTUM両方と交差反応するからである。モノクローナル抗体1.802、1.815、1.846、2.78、および2.1029が互いの結合に干渉するという発見に基づき、ヒトD141近傍の荷電アミノ酸残基のアラニン走査変異誘発を実施した。5つのヒトNOTUM変異体を、それぞれ、以下の、アラニンに変異した荷電残基のペアを用いて構築した:ヒトNOTUM N132A/R133A(配列番号96);ヒトNOTUM E134A/N135A(配列番号97);ヒトNOTUM D137A/R139A(配列番号98);ヒトNOTUM R144A/R145A(配列番号99);およびヒトNOTUM R150A/D151A(配列番号100)。一過性導入の後、全ての5つのヒト変異体が、効果的に発現され、分泌された。5つの変異体のうち4つが、OPTSアッセイにおいて有意な活性を示したが、5番目(ヒトNOTUM D137A/R139A)はわずかな活性を示すかまたは活性を示さなかった。キャンペーン1およびキャンペーン2のモノクローナル抗体のうちの少なくともいくつかにより、全ての5つの変異体が、ELISA型において検出された。モノクローナル抗体2.78は、ヒトNOTUM D137A/R139AおよびヒトNOTUM R144A/R145Aと結合することができず、一方モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846は、NOTUM R144A/R145Aのみと結合できなかった。モノクローナル抗体2.1029は、アラニン変異体の全て5つと免疫反応性であった。
【0183】
6.8. NOTUM中和抗体の結合親和性
ある特定の抗NOTUMモノクローナル抗体の結合親和性を、Biacore3000を使用して測定した。多量体のマウスNOTUMタンパク質との結合に関する、意味のある親和性値を得るために、完全IgGをプロテアーゼのフィシンで消化し、その後未消化のIgGおよびFc断片をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで除去することにより、抗体FAb断片を作製した。FAbおよび完全IgGのヒトNOTUMとの結合に関する親和性値は一致し、およびそれらの親和性値は、表3に示す通り、一桁から低い二桁のnMの範囲にあった。
【0184】
【表3】
【0185】
6.9. マウスへのNOTUM中和抗体の投与
6.9.1. NOTUM中和抗体の週1回、8週間の投与
週齢8週の雄性F1ハイブリッド(129×C57)マウスに、NOTUM中和抗体2.1029もしくは2.78b、または対照抗体を、30mg/kgの腹腔内注射により、週1回、8週間投与した。群あたり、マウスは12匹であった。実験終了時、マウスを屠殺した。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。
【0186】
図6に示す通り、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、対照抗体と比較して、NOTUM中和抗体2.1029の投与により12%(P<0.001)増加し、NOTUM中和抗体2.78bの投与により16%(P<0.001)増加した。
【0187】
6.9.2. NOTUM中和抗体2.1029の週1回、4週間の投与
週齢8週の雄性F1ハイブリッド(129×C57)マウスに、NOTUM中和抗体2.1029を、3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの腹腔内注射により、週1回、4週間投与した。群あたり、マウスは10匹であった。実験終了時、マウスを屠殺した。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。
【0188】
図7に示す通り、30mg/kgのNOTUM中和抗体2.1029の投与により、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、対照抗体の投与と比較して、5%(P=0.12)増加した。
【0189】
6.9.3. NOTUM中和抗体2.78bの週1回、4週間の投与
週齢8週の雄性F1ハイブリッド(129×C57)マウスに、NOTUM中和抗体2.78bを、3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgの腹腔内注射により、週1回、4週間投与した。第1実験において、群あたり、マウスは10匹であった。第2実験においては、NOTUM中和抗体2.78bを、0.3mg/kg、1mg/kg、または3mg/kgの腹腔内注射により、週1回、4週間投与した。第2実験において、群あたり、マウスは12匹であった。各実験終了時に、マウスを屠殺した。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。
【0190】
図8Aに示す通り、第1実験において、3mg/kg、10mg/kg、および30mg/kgのNOTUM中和抗体2.78bの投与により、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、対照抗体の投与と比較して、それぞれ13%(P<0.001)、17%(P<0.001)、および16%(P<0.001)増加した。
図8Bに示す通り、第2実験において、0.3mg/kg、1mg/kg、および3mg/kgのNOTUM中和抗体2.78bの投与により、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、対照抗体の投与と比較して、それぞれ3%(P=0.46)、7%(P=0.01)、および10%(P<0.001)増加した。
【0191】
6.9.4. ゾレドロン酸による前処置を伴う、NOTUM中和抗体2.78bの週1回、4週間の投与
週齢28週の雄性F1ハイブリッドマウス(129×C57)に、50μg/kgのゾレドロン酸一用量を、腹腔内注射により投与した。ゾレドロン酸の投与4週後、マウスに、10mg/kgのNOTUM中和抗体2.78bを、腹腔内注射により、週1回、4週間投与した。各実験終了時に、マウスを屠殺した。群あたり、マウスは11または12匹であった。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。さらに、骨形成のマーカーであるPINPの血清レベルを、モノクローナル抗体2.78bの最初の投与から7日目に、市販のELISAアッセイ(イミュノダイアグノスティックシステム社(Immunodiagnostic Systems)、アリゾナ州、スコッツデール)を使用して測定した。
【0192】
図9Aに示す通り、ゾレドロン酸および対照抗体を投与したマウスにおける、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、生理食塩水および対照抗体を投与したマウスと比較して、10μm、すなわち4%(P=0.31)増加した。ゾレドロン酸による前処置なしでNOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスにおける、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、生理食塩水および対照抗体を投与したマウスと比較して、23μm、すなわち9%(P<0.001)増加し、およびゾレドロン酸の前処置とともにNOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスにおいては、ゾレドロン酸および対照抗体を投与したマウスと比較して、14μm、すなわち5%(P=0.06)増加した。
図9Bは、ゾレドロン酸処置および対照抗体の投与をしたマウスにおける血清PINPレベルが、生理食塩水および対照抗体を投与したマウスと比較して、15ng/mL、すなわち50%(P<0.001)減少したことを示す。ゾレドロン酸前処置なしでNOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスにおけるPINPレベルは、生理食塩水および対照抗体を投与したマウスと比較して、14ng/mL、すなわち47%(P<0.001)増加し、およびゾレドロン酸前処置とともにNOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスにおいては、ゾレドロン酸および対照抗体を投与したマウスと比較して、12ng/mL、すなわち79%(P<0.001)増加した。
【0193】
6.9.5. NOTUM中和抗体2.78aの4週間の投与
この実験においては、IgG2b抗体である、モノクローナル抗体2.78(「2.78b」とも呼ばれる)を、IgG2a抗体として再構成した(IgG2a抗体はしばしば、IgG2b抗体よりも長い半減期を有する)。再構成したモノクローナル抗体2.78を、「2.78a」と呼ぶ。
【0194】
週齢13週の雄性F1ハイブリッドマウス(129×C57)に、NOTUM中和抗体2.78aを、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgの腹腔内注射により、週1回、4週間投与した。群あたり、マウスは10または12匹であった。各実験の終了時に、マウスを屠殺した。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。
【0195】
図10に示す通り、その実験において、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、および10mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aの投与により、それぞれ3%(P=0.57)、7%(P=0.02)、9%(P=0.002)、および10%(P<0.001)増加した。
【0196】
6.9.6. NOTUM中和抗体2.78aの週1回または2週に1回、12週間の投与
週齢10週の雄性F1ハイブリッドマウス(129×C57)に、対照抗体、0.3mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを、腹腔内注射により、週1回で12週間、または1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを、腹腔内注射により、1週おき(2週に1回)に12週間もしくは24週間投与した。投与群あたり、マウスは12匹であった。各実験の終了時に、マウスを屠殺した。剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。
【0197】
図11Aに示す通り、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、週1回、0.3mg/kgおよび2週に1回、1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを12週間投与したマウスにおいて、それぞれ、6%(P<0.001)および9%(P<0.001)増加した。同様に、
図11Bに示す通り、上腕骨骨幹中央部の皮質厚は、週1回、0.3mg/kgおよび2週に1回、1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを12週間投与したマウスにおいて、それぞれ、5%(P=0.007)および7%(P<0.001)増加した。
【0198】
図12Aに示す通り、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、週1回、0.3mg/kgおよび2週に1回、1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを24週間投与したマウスにおいて、それぞれ、7%(P=0.002)および9%(P<0.001)増加した。
図12Bに示す通り、上腕骨骨幹中央部の皮質厚は、週1回、0.3mg/kgおよび2週に1回、1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを24週間投与したマウスにおいて、それぞれ、3%(P=0.09)および8%(P<0.001)増加した。最後に、
図12Cに示す通り、第9肋骨の皮質厚は、週1回、0.3mg/kgおよび2週に1回、1mg/kgのNOTUM中和抗体2.78aを24週間投与したマウスにおいて、それぞれ、7%(P=0.02)および9%(P=0.003)増加した。
【0199】
6.10. 卵巣切除マウスへのNOTUM中和抗体の投与
6.10.1. 卵巣切除
週齢16週のアルビノC57BL/6J雌性マウスに、卵巣切除または所与の偽手術を行った。骨形成のマーカーであるPINPの血清レベル、および骨吸収のマーカーであるCTXを、卵巣切除後およびNOTUM中和抗体投与前の期間に、市販のELISAアッセイ(イミュノダイアグノスティックシステム社(Immunodiagnostic Systems)、アリゾナ州、スコッツデール)を使用して測定し、骨リモデリングの増加が、卵巣切除後に起きていることを確認した。
【0200】
表4に示す通り、手術後および治療開始前に、卵巣切除マウスは、偽手術マウスと比較して、骨リモデリングの増加を示した。海綿骨は、皮質骨よりもより多くの骨細胞を含有するため、これらのデータは、主に海綿骨リモデリングの増加を反映している可能性がある。
【0201】
【表4】
【0202】
6.10.2. 卵巣切除マウスへのNOTUM中和抗体2.78bの投与
NOTUM中和抗体2.78bまたは対照抗体を、手術後8週から、10mg/kgで週1回、4週間、腹腔内注射により投与した。実験には、表5に示す治療群も含まれた。
【0203】
【表5】
【0204】
新たな骨形成の場所および程度を評価するため、蛍光色素骨標識を、治療第7日目、14日目、および21日目(すなわち、第2、第3、および第4治療とともに)に投与した。緑色に蛍光を発するカルセインを第7日目に投与し;赤色に蛍光を発するアリザリンを第14日目に投与し;および黄色に蛍光を発するテトラサイクリンを第21日目に投与した。4週間の治療終了時に、マウスを屠殺した。剖検時の子宮の重量により、卵巣切除手術が成功であったことを確認した。(データ無し)
【0205】
6.10.3. NOTUM中和抗体で治療した卵巣切除マウスの骨質量および骨構造
剖検後、マイクロCTにより、骨質量および骨構造を測定した。測定には、Scanco μCT40を、閾値240、積分時間200ミリ秒、およびX線管電圧55keVで使用した。大腿骨骨幹中央部、LV5椎体、および大腿骨頸部を走査した。
【0206】
図13Aに示す通り、NOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術マウスにおける、大腿骨骨幹中央部の皮質厚は、対照抗体を投与した偽手術マウスと比較して、22μm、すなわち9%増加し、およびNOTUM中和抗体2.78bを投与した卵巣切除マウスにおいては、対照抗体を投与した卵巣切除マウスと比較して、26μm、すなわち12%増加した。
図13Bに示す通り、NOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術マウスにおける、大腿骨骨幹中央部の石灰化骨領域は、対照抗体を投与した偽手術マウスと比較して、0.1mm
2、すなわち11%増加し、およびNOTUM中和抗体2.78bを投与した卵巣切除マウスにおいては、対照抗体を投与した卵巣切除マウスと比較して、0.08mm
2、すなわち10%増加した。
【0207】
図14Aに示す通り、NOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術マウスにおける、LV5椎体の、総体積に対する総骨体積(皮質骨+海綿骨)の比率は、対照抗体を投与した偽手術マウスと比較して、9%増加し、およびNOTUM中和抗体2.78bを投与した卵巣切除マウスにおいては、対照抗体を投与した卵巣切除マウスと比較して、3%増加した。
図14Bに示す通り、NOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術マウスにおける、LV5椎体の、総体積に対する皮質骨体積の比率は、対照抗体を投与した偽手術マウスと比較して、13%増加し、およびNOTUM中和抗体2.78bを投与した卵巣切除マウスにおいては、対照抗体を投与した卵巣切除マウスと比較して、9%増加した。
図14Cに示す通り、LV5椎体の、総体積に対する海綿骨体積の比率は、偽手術マウスまたは卵巣切除マウスのどちらにおいても、NOTUM中和抗体2.78bの投与により、有意に影響は受けなかった。
【0208】
最後に、
図15に示す通り、NOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術マウスにおける、総体積に対する大腿骨頚部の骨体積の比率は、対照抗体を投与した偽手術マウスと比較して、4%増加し、およびNOTUM中和抗体2.78bを投与した卵巣切除マウスにおいては、対照抗体を投与した卵巣切除マウスと比較して、6%増加した。
【0209】
6.10.4. NOTUM中和抗体で治療した卵巣切除マウスにおける骨組織形態計測
大腿骨骨幹を、急速包埋プロトコル(rapid embedding protocol)を使用してメチルメタクリレート中に埋め込んだ。Brommage and Vafai, Calcified Tissue Int’l 67: 479 (2000)を参照のこと。Leica SP1600骨鋸を使用して、約80μmの厚さを有する骨幹中央部の横断面を準備した。次いで、Olympus BX60蛍光顕微鏡で、各部分を調査した。OsteoMeasure(商標)ソフトウェア(オステオメトリックス社(OsteoMetrics)、ジョージア州、ディケーター)を使用して、種々の骨組織形態計測のパラメータを測定した。静的パラメータ(例えば骨領域および骨厚さ)ならびに動的パラメータ(例えば単一標識表面(SLS)、骨石灰化速度(MAR)、および骨形成速度(BFR))の両方を、拡大率100倍で測定した。
【0210】
図16は、第7日目に投与したカルセイン、第14日目に投与したアリザリン、および第21日目に投与したテトラサイクリンで標識した、大腿骨骨幹中央部横断面の皮質内表面の割合(%)を示す。表6は、
図16のデータの統計的分析を示す。NOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスは、対照抗体を投与したマウスと比較して、第7日目および第14日目に、有意により高い割合(%)の皮質内部標識を示した。
【0211】
【表6】
【0212】
図17は、対照抗体またはNOTUM中和抗体2.78bを投与した偽手術および卵巣切除マウスの、骨石灰化速度(A)および体積を参照対象とする骨形成速度(B)を示す。カルセイン標識(第7日目)およびアリザリン標識(第14日目)間の距離を測定し、7で除算して「第7日目〜第14日目の速度」を得ることにより、ならびにアリザリン標識(第14日目)およびテトラサイクリン標識(第21日目)間の距離を測定し、7で除算して「第14日目〜第21日目の速度」を得ることにより、骨石灰化速度(
図17A)を測定した。表7は、17Aのデータの統計的分析を示す。NOTUM中和抗体2.78bを投与したマウスは、第7日目〜第14日目の期間において、対照抗体を投与したマウスよりも、より高い骨石灰化速度を示した。
【0213】
【表7】
【0214】
皮質内部石灰化表面率(
図16から得た、二重標識表面+単一標識表面の1/2の割合(%))に、骨石灰化速度(
図17Aを参照)を乗算することを含む、標準的な計算により、体積を参照対象とする骨形成速度(
図17B)を測定した。その結果は、骨形成速度を骨体積で除算したものであり、7日間あたりの割合(%)として表される。表8は、
図17Bのデータの統計的分析を示す。
図17Bにおいて明白なように、中和抗体2.78b抗体を投与したマウスにおける骨体積あたりの骨形成速度は、対照抗体を投与したマウスよりも、有意により高かった。
【0215】
【表8】
【0216】
6.11. NOTUM中和抗体の試験に好適な種の特定
公有財産から入手した多様な種のタンパク質の配列アライメントに基づき、モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846がモルモットNOTUMに結合するだろうこと、従ってこの種が前臨床的実験に好適であり得ることが予測された。この仮説を試験するために、モルモットNOTUMをクローニングし、一過性導入により発現させ、およびOPTSアッセイにおいて活性であることが示された。モノクローナル抗体1.802、1.815、および1.846は、ELISAにより、モルモットNOTUMに結合することが判明し、ならびにモノクローナル抗体1.802は、OPTSアッセイにおいて、モルモットNOTUM活性を中和することが示された。モノクローナル抗体2.78は、モノクローナル抗体1.802よりもより低い親和性でモルモットNOTUMと結合し、およびOPTSアッセイにおいて、対応するより低い阻害活性を有した。モノクローナル抗体2.1029は、モルモットNOTUMとごく弱くしか結合せず、OPTSアッセイにおいて、モルモットNOTUMを有意には阻害しなかった。
【0217】
カニクイザルおよびアカゲザルNOTUMを、これらの種由来のcDNA製剤からクローニングした。配列の分析により、ヒトNOTUM D141と同等の位置のアミノ酸が、アスパラギンであることが明らかになったが、これはマウスおよびヒトNOTUM両方におけるその位置のアミノ酸とは異なっている。活性の(OPTSアッセイでの測定による)カニクイザルおよびアカゲザルNOTUMタンパク質を、一過性導入により作製し、モノクローナル抗体1.802がどちらのタンパク質とも結合せず、どちらをも阻害しないことが判明した。活性のヒトNOTUM点変異体である、ヒトNOTUM D141Nを一過性導入により作製し、モノクローナル抗体1.802が、ヒトNOTUM点変異体とは結合しないことが判明した。
【0218】
モノクローナル抗体2.78は、ELISAにより、カニクイザルおよびアカゲザルNOTUMと弱く結合したが、OPTSアッセイにおいて、どちらのタンパク質をも有意に阻害しなかった。対照的に、モノクローナル抗体2.1029は、ELISAにより、ヒトNOTUMと結合するのと同様に、カニクイザルおよびアカゲザルNOTUMの両方と結合し、およびOPTSアッセイにおいて、ヒトNOTUMを阻害するのと同様に、両タンパク質をも阻害した。
【0219】
6.12. 抗体の配列決定およびヒト化
重鎖および軽鎖可変領域の配列を、適切なハイブリドーマ細胞株由来の全RNAを使用する特異的RT−PCR法により決定し、その後PCR生成物の配列を決定した。4つのキャンペーン1の抗体:1.731、1.802、1.815、および1.846、ならびに3つのキャンペーン2の抗体:2.1029、2.55、および2.78由来の、重鎖および軽鎖可変領域の配列を決定した。これらの抗体それぞれの、シグナル配列を除く可変領域配列を、以下の第7節(配列表)に示す。第7節はまた、これらの抗体それぞれの重鎖および軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3の配列をも示す。以下の表は、これらの抗体それぞれの、重鎖および軽鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2、およびCDR3に対応する配列番号を示す。
【0220】
【表9】
【0221】
ある特定の重鎖および軽鎖CDRは、2つ以上の配列決定した抗体間で、高い相同性を有することが判明した。モノクローナル抗体1.802および1.846は、同一の重鎖CDR1(GFTFSDYGMH;配列番号17および33)を有し、一方モノクローナル抗体1.815の重鎖CDR1(GFTFSDFGMH;配列番号25)は、モノクローナル抗体1.802および1.846と、ただ一つの保存アミノ酸置換(チロシン(Y)の場所にフェニルアラニン(F))のみにより異なっている。従って、これらの抗体の重鎖CDR1のコンセンサス配列はGFTFSDX
1GMH(配列番号90)であり、ここでX
1はFまたはYである。モノクローナル抗体1.802および1.846の重鎖CDR3は、ただ一つの保存アミノ酸置換(ヒスチジン(H)対アスパラギン(N))により異なっている。従って、これらの抗体の重鎖CDR3のコンセンサス配列はKX
2YNGGYFDV(配列番号91)であり、ここでX
2はHまたはNである。モノクローナル抗体1.802および1.846は、同一の軽鎖CDR2(LASNLES;配列番号21および37)を有し、一方モノクローナル抗体1.815の軽鎖CDR2(LASDLES;配列番号29)は、モノクローナル抗体1.802および1.846と、ただ一つの保存アミノ酸置換(アスパラギン(N)の場所にアスパラギン酸(D))により異なっている。従って、これらの抗体の軽鎖CDR2のコンセンサス配列はLASX
6LES(配列番号93)であり、ここでX
6はDまたはNである。最後に、キャンペーン1由来の3つの抗体、1.802、1.846、および1.815の軽鎖CDR1のコンセンサス配列はRASKX
3VSX
4SGYSYX
5H(配列番号92)であり、ここでX
3はIまたはSであり、X
4はTまたはEであり、およびX
5はMまたはIである。
【0222】
公のデータベースに対してBLAST探査を実施し、マウス重鎖および軽鎖可変領域のそれぞれと最も高い類似性を有する、ヒト生殖系列可変領域の配列を特定した。次いで、AbM定義を使用して、ヒト生殖系列CDRのかわりに、マウス可変領域由来のCDRを、コンピュータシミュレーション上で、これらのヒト生殖系列可変配列中に移植した。マウス抗体のうちの5つ(2.78、2.1029、1.802、1.815、および1.846)の、得られたヒト化可変領域を、インフレームのシグナルペプチドをコードする5’リーダー配列とともに合成し、重鎖可変配列の場合はヒトIgG2定常領域、軽鎖可変配列の場合は、ヒトκ定常領域をコードする配列の上流にクローニングした。ヒト化可変領域それぞれの配列を、完全長のヒト化重鎖および軽鎖(シグナルペプチドを除く)の配列とともに、以下の第7節(配列表)に示す。
【0223】
完全長のヒト化重鎖および軽鎖のコード配列を、哺乳類の発現ベクター中にサブクローニングし、対応する重鎖および軽鎖構築体を、CHO−S細胞中に同時導入した。得られた馴化培地を、抗ヒトニ次抗体で、ウエスタンブロットにより試験し、インタクトなヒト化抗体の発現および分泌を確認した。次いで馴化培地をELISA型において試験し、ヒト化抗体が、ヒトNOTUMタンパク質と結合する能力を維持しているかどうかを測定した。ヒト化モノクローナル抗体1.802、1.815、1.846、および2.1029は、ヒトNOTUMと結合し、一方ヒト化モノクローナル抗体2.78は、ヒトまたはマウスNOTUMのどちらともわずかに結合するかまたは全く結合しなかった。
【0224】
上述で引用されたすべての参考文献は、全ての目的のために、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
7. 配列表
【0225】
【表10】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
【配列表フリーテキスト】
【0250】
配列番号1:ヒトNOTUM
配列番号2:マウスNOTUM
配列番号3:ヒトNOTUM S232A
配列番号4:マウスNOTUM S239A 変異体
配列番号5:モルモットNOTUM
配列番号6:アカゲザルNOTUM
配列番号7:合成:MAb1.731重鎖可変領域
配列番号8:合成:MAb1.731軽鎖可変領域
配列番号9:合成:MAb1.731重鎖CDR1
配列番号10:合成:MAb1.731重鎖CDR2
配列番号11:合成:MAb1.731重鎖CDR3
配列番号12:合成:MAb1.731軽鎖CDR1
配列番号13:合成:MAb1.731軽鎖CDR2
配列番号14:合成:MAb1.731軽鎖CDR3
配列番号15:合成:MAb1.802重鎖可変領域
配列番号16:合成:MAb1.802軽鎖可変領域
配列番号17:合成:MAb1.802重鎖CDR1
配列番号18:合成:MAb1.802重鎖CDR2
配列番号19:合成:MAb1.802重鎖CDR3
配列番号20:合成:MAb1.802軽鎖CDR1
配列番号21:合成:MAb1.802軽鎖CDR2
配列番号22:合成:MAb1.802軽鎖CDR3
配列番号23:合成:MAb1.815重鎖可変領域
配列番号24:合成:MAb1.815軽鎖可変領域
配列番号25:合成:MAb1.815重鎖CDR1
配列番号26:合成:MAb1.815重鎖CDR2
配列番号27:合成:MAb1.815重鎖CDR3
配列番号28:合成:MAb1.815軽鎖CDR1
配列番号29:合成:MAb1.815軽鎖CDR2
配列番号30:合成:MAb1.815軽鎖CDR3
配列番号31:合成:MAb1.846重鎖可変領域
配列番号32:合成:MAb1.846軽鎖可変領域
配列番号33:合成:MAb1.846重鎖CDR1
配列番号34:合成:MAb1.846重鎖CDR2
配列番号35:合成:MAb1.846重鎖CDR3
配列番号36:合成:MAb1.846軽鎖CDR1
配列番号37:合成:MAb1.846軽鎖CDR2
配列番号38:合成:MAb1.846軽鎖CDR3
配列番号39:合成:MAb2.1029重鎖可変領域
配列番号40:合成:MAb2.1029軽鎖可変領域
配列番号41:合成:MAb2.1029重鎖CDR1
配列番号42:合成:MAb2.1029重鎖CDR2
配列番号43:合成:MAb2.1029重鎖CDR3
配列番号44:合成:MAb2.1029軽鎖CDR1
配列番号45:合成:MAb2.1029軽鎖CDR2
配列番号46:合成:MAb2.1029軽鎖CDR3
配列番号47:合成:MAb2.55重鎖可変領域
配列番号48:合成:MAb2.55軽鎖可変領域
配列番号49:合成:MAb2.55重鎖CDR1
配列番号50:合成:MAb2.55重鎖CDR2
配列番号51:合成:MAb2.55重鎖CDR3
配列番号52:合成:MAb2.55軽鎖CDR1
配列番号53:合成:MAb2.55軽鎖CDR2
配列番号54:合成:MAb2.55軽鎖CDR3
配列番号55:合成:MAb2.78重鎖可変領域
配列番号56:合成:MAb2.78軽鎖可変領域
配列番号57:合成:MAb2.78重鎖CDR1
配列番号58:合成:MAb2.78重鎖CDR2
配列番号59:合成:MAb2.78重鎖CDR3
配列番号60:合成:MAb2.78軽鎖CDR1
配列番号61:合成:MAb2.78軽鎖CDR2
配列番号62:合成:MAb2.78軽鎖CDR3
配列番号63:合成:ヒト化Ab(HumAb)2.78重鎖可変領域
配列番号64:合成:ヒト抗体2.78重鎖
配列番号65:合成:ヒト抗体2.78軽鎖可変領域
配列番号66:合成:ヒト抗体2.78軽鎖
配列番号67:合成:ヒト抗体2.1029重鎖可変領域
配列番号68:合成:ヒト抗体2.1029重鎖
配列番号69:合成:ヒト抗体2.1029軽鎖可変領域
配列番号70:合成:ヒト抗体2.1029軽鎖
配列番号71:合成:ヒト抗体1.802重鎖可変領域
配列番号72:合成:ヒト抗体1.802重鎖
配列番号73:合成:ヒト抗体1.802軽鎖可変領域
配列番号74:合成:ヒト抗体1.802軽鎖
配列番号75:合成:ヒト抗体1.815重鎖可変領域
配列番号76:合成:ヒト抗体1.815重鎖
配列番号77:合成:ヒト抗体1.815軽鎖可変領域
配列番号78:合成:ヒト抗体1.815軽鎖
配列番号79:合成:ヒト抗体1.846重鎖可変領域
配列番号80:合成:ヒト抗体1.846重鎖
配列番号81:合成:ヒト抗体1.846軽鎖可変領域
配列番号82:合成:ヒト抗体1.846軽鎖
配列番号83:合成:ヒト―マウスキメラNOTUM
配列番号84:合成:マウス―ヒトキメラNOTUM
配列番号85:合成:ヒト―マウス―ヒトキメラNOTUM
配列番号86:合成:マウス―ヒト―マウスキメラNOTUM
配列番号87:ヒトNOTUM(Delta1−46)
配列番号88:ヒトNOTUM N96D
配列番号89:ヒトNOTUM Q47−M177
配列番号90:合成:キャンペーン1重鎖CDR1コンセンサス
XはYまたはF
配列番号91:合成:キャンペーン1重鎖CDR3コンセンサス
XはHまたはN
配列番号92:合成:キャンペーン1軽鎖CDR1コンセンサス
XはIまたはS
XはTまたはE
XはMまたはI
配列番号93:合成:キャンペーン1の軽鎖CDR2コンセンサス
XはDまたはN
配列番号94:ヒトNOTUM D141S
配列番号95:マウスNOTUM S148D
配列番号96:ヒトNOTUM N132A/R133A
配列番号97:ヒトNOTUM E134A/N135A
配列番号98:ヒトNOTUM D137A/R139A
配列番号99:ヒトNOTUM R144A/R145A
配列番号100:ヒトNOTUM R150A/D151A
配列番号101:合成:1.802重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号102:合成:1.802軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号103:合成:1.815重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号104:合成:1.815軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号105:合成:1.846重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号106:合成:1.846軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号107:合成:2.78重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号108:合成:2.78軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号109:合成:2.1029重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号110:合成:2.1029軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号111:合成:ヒト化Ab(HumAb)2.78重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号112:合成:ヒト抗体2.78重鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号113:合成:ヒト抗体2.78軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号114:合成:ヒト抗体2.78軽鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号115:合成:ヒト抗体2.1029重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号116:合成:ヒト抗体2.1029重鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号117:合成:ヒト抗体2.1029軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号118:合成:ヒト抗体2.1029軽鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号119:合成:ヒト抗体1.802重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号120:合成:ヒト抗体1.802重鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号121:合成:ヒト抗体1.802軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号122:合成:ヒト抗体1.802軽鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号123:合成:ヒト抗体1.815重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号124:合成:ヒト抗体1.815重鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号125:合成:ヒト抗体1.815軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号126:合成:ヒト抗体1.815軽鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号127:合成:ヒト抗体1.846重鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号128:合成:ヒト抗体1.846重鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号129:合成:ヒト抗体1.846軽鎖可変領域ポリヌクレオチド配列
配列番号130:合成:ヒト抗体1.846軽鎖ポリヌクレオチド配列
配列番号131:カニクイザルNOTUM