【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題は、請求項1に記載の
:
回転子に配置されているこの回転子の磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法において、
前記磁石軸受の前記磁石リング(4)が、これらの磁石リング(4)のために設けられている地点(3)で前記回転子(1)に配置され、引き続き、これらの磁石リング(4)の露出表面(10)がコーティング及び/又は塗布され、
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、前記これらの磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置され且つ前記これらの磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されることによって解決される。
さらに、当該課題は、請求項12に記載の:
コーティング及び/又は塗布されている、回転子に対して又は回転子内に配置されている複数の磁石リングを有する当該回転子において、
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、複数の磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置されていて且つ前記複数の磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されていることによって解決される。
【0007】
回転子に配置されている磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための本発明の方法は、前記回転子の前記磁石軸受の前記磁石リングが、これらの磁石リングのために設けられている地点に配置され、引き続き、これらの磁石リングの露出表面がコーティングされることを特徴とする。
【0008】
磁石軸受の磁石リングが、これらの磁石リングのために従来通りに設けられている、回転子の凹部内に挿入されて初めて、引き続きこれらの磁石リングがコーティング及び/又は塗布される点が、本発明について新規である。
【0009】
永久磁石の磁石軸受用に使用される磁石材料、例えば、サマリウムコバルト(SmCo)又はネオジム・鉄・ボロン(NdFeB)は、機械負荷に対してもろく、引張負荷に対して損傷しやすい。使用される永久磁石が、全ての稼働状態で圧力荷重に晒されているように、当該永久磁石が取り付けられるように、永久磁石を備える磁石軸受が、回転子内に有益に構成されることが、実際に公知である。当該プレストレスは、好ましくはこれらの磁石の凹部内のこれらの磁石の圧入及び/又は温嵌めによって達成される。
【0010】
複数の磁石リングを別々にコーティングして初めて、引き続き回転子の凹部内に配置することが、実際に公知である。これらの磁石リングが、この回転子の冷却後に固着するように、これらの磁石リングは、非常に高い圧力下で且つ回転子を加熱してこの回転子内に挿入される。この場合、磁石リングの個々のコーティング部分の塗布剤が消失し、磁石リングの耐腐食性がもはや提供されない。
【0011】
磁石リングが、コーティングされる前に、本発明にしたがって、磁石リングが、これらの磁石リング用に設けられている凹部内に配置され、そしてコーティングが、引き続き回転子内で実施されるときに、塗布剤及びコーティング剤が、当該取り付けによって除去され得ない。
【0012】
さらに、本発明の方法には、塗布剤が、複数の磁石リング間に形成され得る空隙内に浸入され得る結果、耐腐食性が、本発明のコーティングによって向上されるという利点がある。
【0013】
これらの空隙が、コーティング剤又は塗布剤で充填されると、これらの磁石リング間が、気密に結合される。磁石軸受が、真空ポンプの回転子に配置されているときに、当該気密な結合は有益である。この場合には、バリアガスが、真空ポンプの稼働時に不要である。バリアガスが、回転子の磁石軸受の領域内で不要であるので、例えば、真空ポンプの場合は、バリアガスを必要とするときに必要とするバルブ及び流路並びにバリアガスを持続して供給することが省略される。
【0014】
さらに、本発明の方法には、その後の機械加工が必要でないという利点がある。実際に公知の磁石リングを変更する必要なしに、これらの磁石リングが使用され得る。
【0015】
本発明の別の実施の形態によれば、磁石リングの内面に延在している露出表面が、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤を、これらの磁石リングによって包囲された空間内に注入し、回転子を回転させることによってコーティングされる。このため、コーティング剤及び/又は塗布剤の、ほとんど膨れのない塗布が可能である。さらに、非常に均一な塗布が、回転子を回転させることによって得られる。その結果、回転子の不釣り合いが、大幅に又は完全に回避され得る。
【0016】
上記磁石リングは、まだ塗布/コーティングされる前に又は塗布/コーティングされないで挿入され得る。いずれにしても、本発明の方法にしたがって、その後に塗布/コーティングを実施することによって、回転子の磁石軸受の恒常的で且つさらに真空気密な密封が得られる。
【0017】
また、内面に延在している露出表面を、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも塗布剤を注入することによって並びに磁石リングを有する回転子の磁石軸受を振動させることによってコーティングすることが可能である。当該コーティングによっても、回転子の磁石軸受の磁石リングが、恒常的にコーティングされる。この場合にも、これらの磁石リング間の空隙が充填される。
【0018】
特に好ましくは、余分な塗布剤が、磁石リングを有する回転子を振動させた後に除去される、例えば流出される。当該余分な塗布剤の除去は、コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤の種類に関係なく実施されなければならない。
【0019】
本発明の特に好適な実施の形態によれば、コーティング及び/又は塗布は、真空下で実施される。
【0020】
この方法には、複数の磁石リング間に存在する継目及び面取り部が、コーティング剤又は塗布剤によって浸透される結果、従来のコーティング漏れ及び/又は塗布漏れ、及び当該漏れに関連してその後に形成されるコーティング部分の薄い箇所が発生し得ないという特別な利点がある。コーティング及び/又は塗布が、真空下で実施されない場合、膨れが、当該実施中に又はその後に発生しうる。回転子が、その後に、例えば真空ポンプ内で、すなわち真空下で稼働されると、存在する気泡が膨張し、膨れが形成されて破断して、開口部が、コーティング部分に発生する。当該先に閉じ込められた気体が、高真空側の方向に移動し、この高真空側で当該コーティング及び/又は塗布工程を妨害する。さらに、コーティング部分に発生する薄い箇所が、当該薄い箇所の下にある材料を不利に腐食させる。
【0021】
本発明のさらに好適な実施の形態によれば、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、噴射装置によって噴射される。例えば、スプレーガン又は吹付機が使用され得る。その他の噴射装置が、同様に考えられる。
【0022】
コーティング剤及び/又は塗布剤の複数の層を形成するため、噴射装置を1回又は複数回にわたって磁石リング内で遠ざかるように移動させること若しくは近づくように移動させること又は往復運動させることが可能である。
【0023】
本発明のさらに別の好適な実施の形態によれば、熱硬化性樹脂若しくは紫外線硬化性樹脂及び/又は熱硬化性塗布剤若しくは紫外線硬化性塗布剤が、コーティングのために使用される。
【0024】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、化学気相蒸着法(CVD,chemical vapour deposition)又は物理蒸着法(PVD,physical vapour deposition)が、コーティングのために使用される。
【0025】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、金属、例えばニッケルの化学めっき又は金属めっきが、コーティングのために使用される。
【0026】
その他のコーティング剤及び塗布剤が、同様に使用可能である。
【0027】
本発明の別の特に好ましい実施の形態によれば、回転子の磁石軸受を有する回転子が、回転装置内に配置される。回転子が、回転方向に回転される。引き続き、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、回転子の磁石リングによって包囲された空間内に注入される。塗布剤の非常に均一なコーティングが、当該回転子の回転運動によって達成される。さらに、薄い層厚を成す非常に薄いコーティング又は塗布を施すことが可能である。
【0028】
本発明の別の好適な実施の形態は、回転子の複数の磁石リングが、1つのブロックに予め組み立てられ、このブロックは、前記回転子の収容部内に挿入され、引き続きこの回転子は、回転方向に回転され、当該回転と同時に又は引き続き少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、前記回転子の複数の磁石リングによって包囲された空間内に挿入されることを提唱する。この方法は、前記コーティング剤又は前記塗布剤による均一なコーティングを保証する。
【0029】
好ましくは、余分な材料が、上記コーティング方法の種類に関係なく、コーティング剤のコーティング後及び/又は塗布剤の塗布後に除去される。回転子の磁石軸受の内部空間が、例えばコーティング剤及び/又は塗布剤で完全に充填される、又は、当該空間の一部だけが、コーティング剤及び/又は塗布剤で充填され、複数の磁石リングを有する当該空間が振動される場合、引き続き余分な材料を取り除くことが必要である。
【0030】
本発明によれば、好ましくは、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、複数の磁石リングの内面に延在している表面上に配置される及び/又はこれらの磁石リング間の空隙内に配置される。このため、真空気密な塗布又はコーティングが達成される。
【0031】
1つの層又は複数の層を塗布することが可能である。異なる材料を有する複数の層が塗布され得る。
【0032】
好ましくは、複数の磁石リング上に既に存在する塗布剤を消失させることなしに、これらの磁石リングが、そのコーティング前にこれらの磁石リングを設けている回転子の凹部内に挿入されるように、回転子に対して又は回転子内に配置された、本発明の方法によってコーティング及び/又は塗布されているこれらの磁石リングを有するこの回転子が製造される。複数の磁石リングを別々に取り付けること、又は、複数の磁石リングを1つのブロックに予め組み立てること、及び、このブロック全体をこのブロックのために設けられている凹部内に挿入することが可能である。これらの磁石リング又はこのブロックは、専ら非常に高い圧力下で凹部内に挿入され得る。さらに、回転子が膨張し、これらの磁石リング又はこのブロックが挿入され得るように、この回転子は従来通りに加熱される。この回転子が冷却されると、当該リングが、この回転子内で又はこの回転子に対して固着されて配置されている。引き続き、これらの磁石リングは、本発明の方法によってコーティング及び/又は塗布される。このため、コーティング剤及び/又は塗布剤の均一で且つ完全な塗布が可能である。さらに、当該塗布剤が、これらの磁石リングの空隙内と面取り部内とに浸透し、当該塗布剤及び/又は当該コーティング剤が、取り付けによってもはや損傷され得ない。
【0033】
特に好適な実施の形態によれば、本発明の磁石軸受を有する回転子が、真空ポンプ内に配置されている。一方では、高速回転する回転子を有する真空ポンプには、可能な限り不釣り合いがないほうがよい。他方では、回転子の磁石軸受を気密に且つ気泡なしに構成することが重要である。当該気泡は、真空の発生時にコーティング剤又は塗布剤を損傷させうる。
【0034】
回転子の磁石軸受が、真空気密に構成されることによって、バリアガス、バリアガスに必要なバルブ及び流路並びにバリアガスを持続して供給することが省略され得る。
【0035】
本発明の特に好適な実施の形態は、回転子が、ターボ分子ポンプの回転子として構成されていることを提唱する。特に、高速回転する回転子を有するこのポンプの種類では、回転子の磁石軸受が、非常に有益に使用可能である。
【0036】
本発明のその他の特徴及び利点を添付図面に基づいて説明する。当該図面には、本発明の回転子の磁石軸受の実施の形態が、専ら例示的に示されている。