特許第6033243号(P6033243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6033243回転子の磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法並びに回転子の磁石軸受及び真空ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033243
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】回転子の磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法並びに回転子の磁石軸受及び真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20161121BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20161121BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20161121BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01F41/02 G
   F16C32/04 Z
   F04D19/04 A
   H01F7/02 E
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-8273(P2014-8273)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-146795(P2014-146795A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】10 2013 100 853.4
(32)【優先日】2013年1月29日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・アントナッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シュタムラー
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−8248(JP,A)
【文献】 実開昭64−46494(JP,U)
【文献】 特表2006−509095(JP,A)
【文献】 特開平2−74633(JP,A)
【文献】 特開2002−247832(JP,A)
【文献】 特開2009−2506(JP,A)
【文献】 特開2009−2930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
F04D 19/04
F16C 32/04
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子に配置されているこの回転子の磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法において、
前記磁石軸受の前記磁石リング(4)が、これらの磁石リング(4)のために設けられている地点(3)で前記回転子(1)に配置され、引き続き、これらの磁石リング(4)の露出表面(10)がコーティング及び/又は塗布され
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、前記これらの磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置され且つ前記これらの磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記磁石リング(4)の前記内面に延在している露出表面(10)が、前記少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は前記少なくとも一種類の塗布剤を注入し、前記回転子(1)を回転させることによってコーティング及び/又は塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内面に延在している前記露出表面(10)は、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤を注入し、前記磁石リング(4)を有する前記回転子(1)を振動させることによってコーティング及び/又は塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該コーティング及び/又は当該塗布は、真空下で実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は前記少なくとも一種類の塗布剤は、噴射されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
噴射装置(11)が、使用されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記噴射装置(11)は、その噴射工程中に前記回転子の磁石リング(4)内で1回又は複数回にわたって遠ざかるように移動される若しくは近づくように移動される又は往復運動されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記回転子の磁石リング(4)は、合成樹脂及び/又は紫外線硬化性塗布剤でコーティング及び/又は塗布されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記回転子(1)は、回転装置(5,6)内に配置され、この回転子(1)は回転され、引き続き、少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、前記回転子の磁石リング(4)によって包囲された空間(13)内に注入されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記回転子の磁石リング(4)は、1つのブロックに予め組み立てられ、このブロックは、前記回転子(1)の凹部(3)内に配置され、引き続きこの回転子(1)は回転され、当該回転と同時に又は引き続き、少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤が、前記回転子の磁石リング(4)によって包囲された空間(13)内に挿入されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
余分な材料が、前記回転子の磁石軸受(4)によって包囲された空間から除去されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コーティング及び/又は塗布されている、回転子に対して又は回転子内に配置されている複数の磁石リングを有する当該回転子において、
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、複数の磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置されていて且つ前記複数の磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されていることを特徴とする回転子。
【請求項13】
前記回転子(1)は、真空ポンプの回転子(1)として構成されていることを特徴とする請求項12に記載の回転子。
【請求項14】
前記回転子(1)は、ターボ分子ポンプの回転子(1)として構成されていることを特徴とする請求項13に記載の回転子。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの回転子を有する真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子に対して又は回転子内に配置された複数の磁石リングを有する、この回転子の磁石軸受の、これらの磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法並びに回転子の磁石軸受及び真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
回転子の磁石軸受の磁石リングと固定子の磁石軸受の磁石リングとを、腐食性の被処理構成要素から良好に保護することが実際に公知である。例えば、十分な耐腐食性を達成するためには、当該保護は、用途に応じて必要になりうる。個々の部品をコーティング又は塗布することが、簡単に可能である。磁石軸受の固定子は、浸漬、塗布又はその他の方法(例えば、化学気相蒸着法(CVD)、物理蒸着法)によって簡単にコーティングされ得る。何故なら、当該磁石軸受の固定子は、限定された大きさ又は面積しか有さず、主に外面を有するからである。
【0003】
これに対して、回転子の磁石軸受は、主に内面を有する。しかし、当該内面は、接近するのが困難でありうる。しかしながら、非常に大きい付加的な不釣り合いを回転子にもたらさせないように、当該内面は、可能な限り均一にコーティングされる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0332979号明細書
【特許文献2】国際公開第01/86158号明細書
【特許文献3】特開平07−194073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、回転子の磁石軸受の、主に内面に延在している表面が、可能な限り均一にコーティング又は塗布され得る方法を提供することにある。さらに、閉じ込められた空気のない均一なコーティングを有する回転子の磁石軸受が提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題は、請求項1に記載の
回転子に配置されているこの回転子の磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための方法において、
前記磁石軸受の前記磁石リング(4)が、これらの磁石リング(4)のために設けられている地点(3)で前記回転子(1)に配置され、引き続き、これらの磁石リング(4)の露出表面(10)がコーティング及び/又は塗布され、
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、前記これらの磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置され且つ前記これらの磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されることによって解決される。
さらに、当該課題は、請求項12に記載の:
コーティング及び/又は塗布されている、回転子に対して又は回転子内に配置されている複数の磁石リングを有する当該回転子において、
少なくとも一種類の前記コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の前記塗布剤は、複数の磁石リング(4)の内面に延在している表面(10)上に配置されていて且つ前記複数の磁石リング(4)間の空隙(12)内及び面取り部内に配置されていることによって解決される。
【0007】
回転子に配置されている磁石軸受の磁石リングをコーティング及び/又は塗布するための本発明の方法は、前記回転子の前記磁石軸受の前記磁石リングが、これらの磁石リングのために設けられている地点に配置され、引き続き、これらの磁石リングの露出表面がコーティングされることを特徴とする。
【0008】
磁石軸受の磁石リングが、これらの磁石リングのために従来通りに設けられている、回転子の凹部内に挿入されて初めて、引き続きこれらの磁石リングがコーティング及び/又は塗布される点が、本発明について新規である。
【0009】
永久磁石の磁石軸受用に使用される磁石材料、例えば、サマリウムコバルト(SmCo)又はネオジム・鉄・ボロン(NdFeB)は、機械負荷に対してもろく、引張負荷に対して損傷しやすい。使用される永久磁石が、全ての稼働状態で圧力荷重に晒されているように、当該永久磁石が取り付けられるように、永久磁石を備える磁石軸受が、回転子内に有益に構成されることが、実際に公知である。当該プレストレスは、好ましくはこれらの磁石の凹部内のこれらの磁石の圧入及び/又は温嵌めによって達成される。
【0010】
複数の磁石リングを別々にコーティングして初めて、引き続き回転子の凹部内に配置することが、実際に公知である。これらの磁石リングが、この回転子の冷却後に固着するように、これらの磁石リングは、非常に高い圧力下で且つ回転子を加熱してこの回転子内に挿入される。この場合、磁石リングの個々のコーティング部分の塗布剤が消失し、磁石リングの耐腐食性がもはや提供されない。
【0011】
磁石リングが、コーティングされる前に、本発明にしたがって、磁石リングが、これらの磁石リング用に設けられている凹部内に配置され、そしてコーティングが、引き続き回転子内で実施されるときに、塗布剤及びコーティング剤が、当該取り付けによって除去され得ない。
【0012】
さらに、本発明の方法には、塗布剤が、複数の磁石リング間に形成され得る空隙内に浸入され得る結果、耐腐食性が、本発明のコーティングによって向上されるという利点がある。
【0013】
これらの空隙が、コーティング剤又は塗布剤で充填されると、これらの磁石リング間が、気密に結合される。磁石軸受が、真空ポンプの回転子に配置されているときに、当該気密な結合は有益である。この場合には、バリアガスが、真空ポンプの稼働時に不要である。バリアガスが、回転子の磁石軸受の領域内で不要であるので、例えば、真空ポンプの場合は、バリアガスを必要とするときに必要とするバルブ及び流路並びにバリアガスを持続して供給することが省略される。
【0014】
さらに、本発明の方法には、その後の機械加工が必要でないという利点がある。実際に公知の磁石リングを変更する必要なしに、これらの磁石リングが使用され得る。
【0015】
本発明の別の実施の形態によれば、磁石リングの内面に延在している露出表面が、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤を、これらの磁石リングによって包囲された空間内に注入し、回転子を回転させることによってコーティングされる。このため、コーティング剤及び/又は塗布剤の、ほとんど膨れのない塗布が可能である。さらに、非常に均一な塗布が、回転子を回転させることによって得られる。その結果、回転子の不釣り合いが、大幅に又は完全に回避され得る。
【0016】
上記磁石リングは、まだ塗布/コーティングされる前に又は塗布/コーティングされないで挿入され得る。いずれにしても、本発明の方法にしたがって、その後に塗布/コーティングを実施することによって、回転子の磁石軸受の恒常的で且つさらに真空気密な密封が得られる。
【0017】
また、内面に延在している露出表面を、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも塗布剤を注入することによって並びに磁石リングを有する回転子の磁石軸受を振動させることによってコーティングすることが可能である。当該コーティングによっても、回転子の磁石軸受の磁石リングが、恒常的にコーティングされる。この場合にも、これらの磁石リング間の空隙が充填される。
【0018】
特に好ましくは、余分な塗布剤が、磁石リングを有する回転子を振動させた後に除去される、例えば流出される。当該余分な塗布剤の除去は、コーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤の種類に関係なく実施されなければならない。
【0019】
本発明の特に好適な実施の形態によれば、コーティング及び/又は塗布は、真空下で実施される。
【0020】
この方法には、複数の磁石リング間に存在する継目及び面取り部が、コーティング剤又は塗布剤によって浸透される結果、従来のコーティング漏れ及び/又は塗布漏れ、及び当該漏れに関連してその後に形成されるコーティング部分の薄い箇所が発生し得ないという特別な利点がある。コーティング及び/又は塗布が、真空下で実施されない場合、膨れが、当該実施中に又はその後に発生しうる。回転子が、その後に、例えば真空ポンプ内で、すなわち真空下で稼働されると、存在する気泡が膨張し、膨れが形成されて破断して、開口部が、コーティング部分に発生する。当該先に閉じ込められた気体が、高真空側の方向に移動し、この高真空側で当該コーティング及び/又は塗布工程を妨害する。さらに、コーティング部分に発生する薄い箇所が、当該薄い箇所の下にある材料を不利に腐食させる。
【0021】
本発明のさらに好適な実施の形態によれば、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、噴射装置によって噴射される。例えば、スプレーガン又は吹付機が使用され得る。その他の噴射装置が、同様に考えられる。
【0022】
コーティング剤及び/又は塗布剤の複数の層を形成するため、噴射装置を1回又は複数回にわたって磁石リング内で遠ざかるように移動させること若しくは近づくように移動させること又は往復運動させることが可能である。
【0023】
本発明のさらに別の好適な実施の形態によれば、熱硬化性樹脂若しくは紫外線硬化性樹脂及び/又は熱硬化性塗布剤若しくは紫外線硬化性塗布剤が、コーティングのために使用される。
【0024】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、化学気相蒸着法(CVD,chemical vapour deposition)又は物理蒸着法(PVD,physical vapour deposition)が、コーティングのために使用される。
【0025】
本発明の別の好適な実施の形態によれば、金属、例えばニッケルの化学めっき又は金属めっきが、コーティングのために使用される。
【0026】
その他のコーティング剤及び塗布剤が、同様に使用可能である。
【0027】
本発明の別の特に好ましい実施の形態によれば、回転子の磁石軸受を有する回転子が、回転装置内に配置される。回転子が、回転方向に回転される。引き続き、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、回転子の磁石リングによって包囲された空間内に注入される。塗布剤の非常に均一なコーティングが、当該回転子の回転運動によって達成される。さらに、薄い層厚を成す非常に薄いコーティング又は塗布を施すことが可能である。
【0028】
本発明の別の好適な実施の形態は、回転子の複数の磁石リングが、1つのブロックに予め組み立てられ、このブロックは、前記回転子の収容部内に挿入され、引き続きこの回転子は、回転方向に回転され、当該回転と同時に又は引き続き少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、前記回転子の複数の磁石リングによって包囲された空間内に挿入されることを提唱する。この方法は、前記コーティング剤又は前記塗布剤による均一なコーティングを保証する。
【0029】
好ましくは、余分な材料が、上記コーティング方法の種類に関係なく、コーティング剤のコーティング後及び/又は塗布剤の塗布後に除去される。回転子の磁石軸受の内部空間が、例えばコーティング剤及び/又は塗布剤で完全に充填される、又は、当該空間の一部だけが、コーティング剤及び/又は塗布剤で充填され、複数の磁石リングを有する当該空間が振動される場合、引き続き余分な材料を取り除くことが必要である。
【0030】
本発明によれば、好ましくは、少なくとも一種類のコーティング剤及び/又は少なくとも一種類の塗布剤が、複数の磁石リングの内面に延在している表面上に配置される及び/又はこれらの磁石リング間の空隙内に配置される。このため、真空気密な塗布又はコーティングが達成される。
【0031】
1つの層又は複数の層を塗布することが可能である。異なる材料を有する複数の層が塗布され得る。
【0032】
好ましくは、複数の磁石リング上に既に存在する塗布剤を消失させることなしに、これらの磁石リングが、そのコーティング前にこれらの磁石リングを設けている回転子の凹部内に挿入されるように、回転子に対して又は回転子内に配置された、本発明の方法によってコーティング及び/又は塗布されているこれらの磁石リングを有するこの回転子が製造される。複数の磁石リングを別々に取り付けること、又は、複数の磁石リングを1つのブロックに予め組み立てること、及び、このブロック全体をこのブロックのために設けられている凹部内に挿入することが可能である。これらの磁石リング又はこのブロックは、専ら非常に高い圧力下で凹部内に挿入され得る。さらに、回転子が膨張し、これらの磁石リング又はこのブロックが挿入され得るように、この回転子は従来通りに加熱される。この回転子が冷却されると、当該リングが、この回転子内で又はこの回転子に対して固着されて配置されている。引き続き、これらの磁石リングは、本発明の方法によってコーティング及び/又は塗布される。このため、コーティング剤及び/又は塗布剤の均一で且つ完全な塗布が可能である。さらに、当該塗布剤が、これらの磁石リングの空隙内と面取り部内とに浸透し、当該塗布剤及び/又は当該コーティング剤が、取り付けによってもはや損傷され得ない。
【0033】
特に好適な実施の形態によれば、本発明の磁石軸受を有する回転子が、真空ポンプ内に配置されている。一方では、高速回転する回転子を有する真空ポンプには、可能な限り不釣り合いがないほうがよい。他方では、回転子の磁石軸受を気密に且つ気泡なしに構成することが重要である。当該気泡は、真空の発生時にコーティング剤又は塗布剤を損傷させうる。
【0034】
回転子の磁石軸受が、真空気密に構成されることによって、バリアガス、バリアガスに必要なバルブ及び流路並びにバリアガスを持続して供給することが省略され得る。
【0035】
本発明の特に好適な実施の形態は、回転子が、ターボ分子ポンプの回転子として構成されていることを提唱する。特に、高速回転する回転子を有するこのポンプの種類では、回転子の磁石軸受が、非常に有益に使用可能である。
【0036】
本発明のその他の特徴及び利点を添付図面に基づいて説明する。当該図面には、本発明の回転子の磁石軸受の実施の形態が、専ら例示的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】真空室内に配置された、コーティング工程中の、磁石軸受を有する回転子の長手断面を示す。
図2図1の細部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は、回転翼円板2を支持する回転子1を示す。回転子の磁石軸受の磁石リング4が、凹部3内に配置されている。当該図面によれば、複数の磁石リング4が配置されている。回転子1が、その長手軸7を中心に回転できるように、この回転子1は、尖端部材5,6間に配置されている。この回転子1は、真空室8内に配置されている。この真空室8の空間9が、真空下にある。
【0039】
磁石リング4の内面に延在している露出表面10をコーティングするため、噴射ノズル11が、当該表面10の近くに配置される。回転子1及び磁石リング4が、長手軸7を中心に回転している間に、当該噴射ノズル11が、左右両向き矢印Aの方向に1回又は複数回にわたって往復運動される。表面10が、塗布剤又はコーティング剤をこの噴射ノズル11から噴射することによってコーティングされ、当該複数の磁石リング4間の空隙12が、塗布剤及び/又はコーティング剤で充填される。
【0040】
こうして、薄くて非常に均一なコーティング膜が、表面10上に形成される。真空下にある真空室8内で当該コーティング膜を形成することによって、複数の磁石リング4間の、従来のコーティング漏れ及び/又は塗布漏れ、及びその後の膨れが排除される。
【0041】
尖端部材5,6は、専ら大まかに示されている。当然に、これらの尖端部材5,6用の保持装置及び回転装置が設けられている。さらに、真空室8が、専ら大まかに示されている。この真空室8は、(図示しなかった)少なくとも1つの真空ポンプに接続している。
【0042】
磁石リング4のコーティング又は塗布後に、回転子1が、真空室8から取り出される。尖端部材5,6が取り外され、この回転子1が、(図示しなかった)真空ポンプ内に取り付けられる。磁石軸受の固定子が、磁石リング4を有する回転子の磁石軸受に付設される。
【0043】
噴射ノズル11を挿入する代わりに、コーティング剤が、磁石リング4によって包囲された内部空間13内に注入されてもよい。この空間13は、当該コーティング剤と一緒に振動され、当該コーティング剤は、その後に除去される。この場合には、尖端部材5,6を有する軸受が必要でない。真空下で振動させるためには、(図示しなかった)保持装置及び振動装置を真空室8内に設けることが必要である。
【符号の説明】
【0044】
1 回転子
2 回転翼円板
3 凹部
4 磁石リング
5 尖端部材
6 尖端部材
7 長手軸
8 真空室
9 空間
10 表面
11 噴射ノズル
12 空隙
13 磁石リング4によって包囲された空間
図1
図2