(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6033309
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】調節可能な閉塞を有するプラスター
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20161121BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20161121BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20161121BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20161121BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/542 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20161121BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/34
A61P29/00
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/08
A61K47/14
A61K47/22
A61P23/02
A61K31/196
A61K31/192
A61K31/381
A61K31/405
A61K31/5415
A61K31/542
A61K31/167
A61K31/245
【請求項の数】21
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-531268(P2014-531268)
(86)(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公表番号】特表2014-526546(P2014-526546A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012068828
(87)【国際公開番号】WO2013045420
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】102011114411.4
(32)【優先日】2011年9月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ワルター・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・モア
【審査官】
石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平04−502719(JP,A)
【文献】
特表平06−510279(JP,A)
【文献】
特表2003−534365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 31/167
A61K 31/192
A61K 31/196
A61K 31/245
A61K 31/381
A61K 31/405
A61K 31/5415
A61K 31/542
A61P 23/02
A61P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料からなる非閉塞性支持層、1つまたはそれ以上のポリマー層から形成され、1つまたはそれ以上のポリマー層の中に少なくとも1つの活性医薬成分を含むマトリックス、を有する経皮または局所活性成分パッチであって、適用時に皮膚と接触する該マトリックス層の1つまたは複数の層の構造形成ベースポリマーが感圧ポリアクリレートまたはシリコーン粘着剤であり、そして該ポリマー層の少なくとも1つの中に、第2のポリマーが分散されており、これは低い水蒸気透過性を有し、これはポリイソブチレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマーまたはスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマーであり、該第2のポリマーの分散された粒子の割合が、構造形成ベースポリマーと第2のポリマーとの合計質量に基づき20質量%から40質量%までであることを特徴とする、経皮または局所活性成分パッチ。
【請求項2】
マトリックスが単層であることを特徴とする、請求項1に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項3】
ベースポリマー中に分散された第2のポリマーの相が、5〜50μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項4】
ベースポリマー中に分散された第2のポリマーの相が、7〜40μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項3に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項5】
ベースポリマー中に分散された第2のポリマーの相が、10〜30μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項4に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項6】
第2のポリマーの分散粒子の割合が、20質量%から30質量%までであることを特徴とする、請求項1または3〜5のいずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項7】
マトリックスの基本重量が、50g/m2から400g/m2までであることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項8】
マトリックスの基本重量が、60g/m2から300g/m2までであることを特徴とする、請求項7に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項9】
マトリックスの基本重量が、70g/m2から200g/m2までであることを特徴とする、請求項8に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項10】
37℃および相対湿度18%で試料寸法20cm2に対してDIN法EN13726−2によって測定したその水蒸気透過性が、50g/(m2×24時間)から600g/(m2×24時間)までであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項11】
37℃および相対湿度18%で試料寸法20cm2に対してDIN法EN13726−2によって測定したその水蒸気透過性が、100g/(m2×24時間)から500g/(m2×24時間)までであることを特徴とする、請求項10に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項12】
37℃および相対湿度18%で試料寸法20cm2に対してDIN法EN13726−2によって測定したその水蒸気透過性が、150g/(m2×24時間)から400g/(m2×24時間)までであることを特徴とする、請求項11に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項13】
薬学的活性成分が非ステロイド性抗炎症薬であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項14】
薬学的活性成分が、ジクロフェナクもしくはその薬学的に許容される塩、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、インドメタシン、ピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、フルフェナミン酸またはメフェナミン酸であることを特徴とする、請求項13に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項15】
薬学的活性成分が、ジクロフェナク塩であることを特徴とする、請求項14に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項16】
薬学的活性成分が、ジクロフェナクナトリウム塩、ジクロフェナクカリウム塩、ジクロフェナクジエチルアンモニウム塩、またはジクロフェナクのジヒドロキシエチルピロリジン塩であることを特徴とする、請求項15に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項17】
薬学的活性成分が局所活性鎮痛薬であることを特徴とする、上記請求項1〜12のいずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項18】
局所活性鎮痛薬がリドカインまたはテトラカインであることを特徴とする、請求項17に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項19】
マトリックスが、構造形成ベースポリマー中に少なくとも1つの透過促進剤を含むことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項20】
1つまたは複数の透過促進剤が、低分子量の一価もしくは多価アルコール、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチル化脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステルおよび/またはジメチルイソソルビトールであることを特徴とする、請求項19に記載の経皮または局所パッチ。
【請求項21】
1つまたは複数の透過促進剤が、オレイン酸であることを特徴とする、請求項20に記載の経皮または局所パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
活性成分の経皮または局所投与にとって、角質層は、活性成分の取込みを制限する脂肪親和性障壁となる。角質層の障壁機能を低下させるため、あらゆる全身作用性経皮システムに実質的に用いられる最も有効的かつ物理的な方法の1つは、閉塞(occlusion)である。閉塞は、経皮システムの支持層に実質的に水蒸気不透過性の材料を用いることにより、ならびに/または隣接層および/もしくは1つもしくは複数の活性成分層の水蒸気不透過性の調合物(formulations)を用いることにより達成される。この種のパッチ(patch)の概略図を、
図1に示す。支持層には、ほとんどの場合、ポリエステルフィルムが用いられる。しかし、原則として、ポリエチレンまたはポリプロピレンのフィルムのような低い水蒸気透過性の他のフィルムを用いないわけではない。低い水蒸気透過性を有するポリマーまたは感圧粘着剤(pressure-sensitive adhesives)としては、たとえば、ポリイソブチレンまたはスチレンとブタジエンとのもしくはスチレンとイソプレンとのブロックポリマーが用いられる。
【背景技術】
【0002】
局所システム、たとえば、非ステロイド性抗炎症薬は、特に、治療領域の面積に対応した寸法を有し、そのため、装着快適性(wear comfort)を高めるためにパッチシステムの部分にある種の伸縮性が必要となる寸法を含んでいる。この目的に適した厚さでは、支持層のための上記の閉塞材料が十分な伸縮性または弾性を備えていないため、このようなパッチには繊維材料がしばしば用いられる。しかし、この繊維支持層の欠点は、その開放気孔率が繊維支持層に非常に高い水蒸気透過性をもたらすことであり、これは繊維支持層が閉塞状態を生成しないことを意味している。この結果、繊維支持層を有するパッチの場合の閉塞は、他の水蒸気不透過性層または水蒸気に対してあまり透過性でない少なくとも他の層によって達成されなければならない。当然のことながら、この目的で、非伸縮性かつ非弾性の材料を用いることはできない。閉塞を達成する最も単純やり方は、低い水蒸気透過性の感圧粘着剤、たとえばポリイソブチレンまたはスチレンとブタジエンもしくはイソプレンとのブロックポリマーに基づく感圧粘着剤の使用によるものである。しかし、その場合の欠点は、これらの粘着剤が、ごくわずかしか皮膚に付着せず、閉塞下で湿ってきて、かつ特に関節領域において全体的または部分的に容易に剥離することである。
【0003】
特許文献1は、活性成分を含むポリアクリレート相が、ポリイソブチレンまたはスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマーに基づく外側の粘着性調合物中に分散された二相マトリックスを記述している。ここでの欠点は、閉塞効果が実際の層厚で常にその最大となり、かつ、すでに上記したように、外側の相が湿った皮膚に対してあまり十分に付着しないということである。このようなマトリックスの唯一の利点は、活性成分が比較的高い飽和溶解性を有するポリマー中にあるということである。ポリアクリレート粘着剤またはシリコーン粘着剤は、このような条件下で実質的により良好に機能するが、しかし、それらの高い水蒸気透過性は、それ自体で閉塞状態を生成することができないことを意味している。したがって、先行技術によれば、ポリアクリレートまたはシリコーン粘着剤の使用は、それらの組成物中に異なる層を有する多層マトリックスを必要とすると考えられており、それによって製造工程が複雑になり、かつ製造コストが上昇し、それはこの製品群にとっての重要な要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO01/91718A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、繊維の伸縮性支持層を有し、かつ湿った皮膚に対して十分に付着し、ポリアクリレートまたはシリコーン粘着剤に基づく感圧粘着剤を有する閉塞性パッチであって、極めて単純構造を有しており、かつ製造するのが容易である閉塞性パッチの必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この問題に対する解決策は、本発明によれば、低い水蒸気透過性のポリマー、たとえばポリイソブチレンまたはスチレンとブタジエンもしくはイソプレンとのブロックポリマーを、たとえば、水蒸気透過性感圧粘着剤から形成された1つまたは複数のマトリックス層中に分散することにあることが見出されている。それらの物理化学性質によって、活性成分は、このようなマトリックスのポリアクリレート相中にほとんど存在する。水蒸気不透過性ポリマーの量とマトリックスの厚さとによって、広い限度内で閉塞効果を変えることが可能である。したがって、その最も単純なもので、本発明のパッチは、繊維支持層、その中に分散された水蒸気不透過性ポリマーを有するポリアクリレートまたはシリコーン粘着剤に基づく活性成分マトリックス層および使用前に取り外す保護層からなる。この種のパッチの構造を
図2に示す。
【0007】
したがって、本発明は、非閉塞性支持層、1つまたはそれ以上の層中に少なくとも1つの薬学的活性成分を有する、1つまたはそれ以上のポリマー層でできたマトリックスを有する、経皮または局所活性成分パッチを提供し、これは、1つまたは複数の層の構造形成ベースポリマーが非閉塞性または最小限の閉塞性であり、かつ少なくとも1つのポリマー層中に、ベースポリマーと不混和性であるか、またはごく最小限の混和性であり、かつ低い水蒸気透過性を有する、分散された第2のポリマーがあることを特徴とする。
【0008】
支持層は、好ましくは繊維材料、より詳しくは織布または不織布繊維材料、またはこのような材料の複合材からなる。ここで考えられる材料の例としては、ワタ、ビスコース、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンまたはポリプロピレンが挙げられる。ポリウレタンも、水蒸気透過性フィルム材料として適している。
【0009】
適用時に皮膚と接触するマトリックス層の構造形成ベースポリマーは、好ましくは感圧粘着剤(PSA)である。適したPSAは、たとえば、ポリアクリレート粘着剤またはシリコーン粘着剤である。マトリックスは、好ましくは単層構造である。
【0010】
低い水蒸気透過性を有するポリマーは、たとえば、ポリイソブチレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、またはスチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマーであってもよい。このポリマーの分散相は、好ましくは5〜50μm、より詳しくは7〜40μm、非常に好ましくは10〜30μmの平均粒径を有する。マトリックス中に分散された粒子の割合は、一般に5質量%から50質量%まで、好ましくは7質量%から40質量%まで、より詳しくは10質量%から30質量%までである。
【0011】
マトリックスの基本重量は、一般に50g/m
2から400g/m
2まで、好ましくは60g/m
2から300g/m
2まで、より詳しくは70g/m
2から200g/m
2までである。
【0012】
薬学的活性成分は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDは、非ステロイド性抗炎症薬に相当する)であってもよい。これらの薬剤は、関節の領域、特に四肢において外部から局所的に用いられることが多い。それは、本発明のTTSが特に有益であるとわかっているこれらの適用部位で、厳密に重度の機械的ストレスにかけられる。任意の請求項が網羅しているわけではないが、含有活性成分は、ジクロフェナクもしくはその薬学的に許容される塩、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、インドメタシン、ピロキシカム、テノキシカム、メロキシカム、フルフェナミン酸(flufenaminic acid)またはメフェナミン酸(mefenaminic acid)の群からのものである。好ましいジクロフェナク塩は、たとえば、ジクロフェナクナトリウム塩、ジクロフェナクカリウム塩、ジクロフェナクジエチルアンモニウム塩、またはジクロフェナクのジヒドロキシエチルピロリジン塩である。
【0013】
さらなる適した活性成分は、局所活性鎮痛薬、たとえば、リドカインまたはテトラカインである。
【0014】
また、すでに記載したポリマーおよび活性成分の他に、TTSに使用するために当分野で知られている種類の多くの他の賦形剤を使用することができる。
【0015】
したがって、たとえば、透過促進剤を、好ましくはマトリックスの内部相中に用いてもよい。適した透過促進剤は、低分子量の一価または多価アルコール、脂肪酸(好ましくはオレイン酸)、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチル化脂肪族アルコール、脂肪酸エステル(特にモノグリセリドおよびプロピレングリコールのモノエステル)、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル、ならびにジメチルイソソルビトールの群からの化合物である。
【0016】
さらに適しているのは、界面エネルギーを低下させることによって二相マトリックス層の安定性においてプラスの影響を及ぼす能力を有する界面活性な界面活性剤である。
【0017】
水蒸気不透過性ポリマーは、マトリックス中に包埋される。したがって、それと皮膚とが接触することは実質的になく、そのため、皮膚上でPSAの粘着性が損なわれることがない。
【0018】
ここでの水蒸気透過性における減少は、水分子の有効拡散経路を延長したことに基づいている。また、これは、効果の程度が、分散されたポリマーの量と、当然、マトリックス層の全体の厚さとに左右されることを意味している。
【0019】
この関係を、ポリアクリレート粘着剤および低分子量ポリイソブチレンにおいて実験的に調べた。この目的のために、異なる厚さおよび異なるポリイソブチレン含量を有する粘着剤のフィルムを製造し、DIN方法EN13726−2に従って20cm
2の試料寸法について37℃および相対湿度18%で水蒸気透過性を測定した。試料組成物および測定した水蒸気透過性を表1に示し、さらに水蒸気透過性を
図3に示す。その場合、水蒸気透過性は、一般に50(m
2×24時間)から600g/(m
2×24時間)まで、好ましくは100(m
2×24時間)から500g/(m
2×24時間)まで、より詳しくは150(m
2×24時間)から400g/(m
2×24時間)までである。
【0020】
【表1】
【0021】
参照すると、ポリイソブチレン10質量%では、実質的にまだ効果を有しておらず、20質量%ではすでに顕著な効果を有しており、40質量%では透過性はほとんど半減した。予想通り、透過性は層の厚さに依存しており、換言すれば、倍加によって透過性は半減する。
【0022】
さらにまた、パッチシステムからの透過速度(rate of permeation)におけるポリイソブチレン含量の影響を調べた。この目的のために選択した活性成分は、ジクロフェナクナトリウム塩であり、それを繊維支持層付きの単層マトリックスシステム中に組み込んだ。親水性活性成分塩がポリイソブチレン中でごくわずかな溶解性しかないと仮定して、外部ポリアクリレート相中のポリイソブチレン含量が異なっても、すべて試料において活性成分濃度が同一のままであるように活性成分の量を選択した。これは、閉塞の程度における違いからだけでなく、熱力学的活性における違いからも生じる透過速度における違いの可能性を除外した。
【0023】
透過研究は、ヒト表皮およびFranz拡散セルを用いて実施し、それは当業者によく知られている。表中の値は、各場合、4つの独立した実験からの平均値である。
【0024】
試料の組成および関連する透過速度を表2および3にまとめ、さらに透過速度を
図4に図示する。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
透過研究結果は、透過速度がポリイソブチレンの量および結果的に高められた閉塞に左右されることを明白に示している。活性成分相の組成はすべての試料にわたって同一であり、ポリイソブチレンを添加すると、実際にマトリックス中の前記相の相対的比率が低下するため、他のどのような説明も考えることができない。しかし、40質量%が20質量%とほぼ同じ結果を示しているため、ポリイソブチレン含量の最適量は30質量%であると考えられる。量が増えるにつれて、活性成分相の比率が低下し、かつそのうえ活性成分の有効拡散経路が延長され、その場合、不利益な結果となる。
【0028】
図5に示すように、内部相は外部相と隔てられており、分子レベルでの混合がないため、低い水蒸気透過性を有する内部相の添加は、ポリアクリレートまたはシリコーンからなる外部相における活性成分の飽和溶解性に影響を与えない。これは、例として記載された米国特許第6,235,306号中のように、この種のシステムにおいて、活性成分の送達が、活性成分相における飽和溶解度の変化によって影響を受けないことを意味する。表2に特定され、かつ透過研究、表3に用いた調合物において、活性成分に対するアクリレート粘着剤の比率は同一に保持されており、そのため、測定した透過速度における違いは、ポリイソブチレンの量に合わせて上昇する閉塞としてしか説明することができない。
【0029】
以下の製造実施例は、本発明の説明に役立つが、本発明がそれらに限定されることはない。
【0030】
実施例1
調合物1、2、3、4および5によるジクロフェナクナトリウム塩を用いたパッチの製造
ポリイソブチレン(Oppanol
(R) B 10, BASF)90gを、撹拌によってn−ヘプタン110g中に溶解する。これにより固形物含量45%w/wを有するポリイソブチレン溶液200gを得る。
【0031】
ジクロフェナクナトリウム塩20gを、Duro-Tak
(R) 387-2353(固形物含量36%)774g、酢酸エチル150gおよびオレイン酸33g中で撹拌しながら溶解する。これにより固形物含量34%w/wを有する活性成分含有ポリアクリレート溶液929gを得る。
【0032】
コーティング組成物は、活性成分含有ポリアクリレート溶液100g部分に表4に示す量のポリイソブチレン溶液を加えることによって生成する。
【0033】
【表4】
【0034】
分散液は、400rpmで10分かけて機械的に高速で撹拌することによって生成した。マトリックスは、シリコーン処理した厚さ100μmのポリエステルフィルム上にこの分散液を被覆し、その後、50℃で25分かけて乾燥することによって溶媒を除去して生成した。溶媒をなお含んでいる被覆フィルムの厚さは、乾燥マトリックスフィルムが110g/m
2の基本重量を有するように選択する。調合物4のマトリックスは、すでに乾燥した調合物3のマトリックスフィルムをそれ自体に1回積層して得られる。
【0035】
乾燥したフィルムを、双弾性に織られた(bi-elastic woven)ポリエステル織物と積層して全体の積層物を得る。完成したパッチ、および透過研究用の試料を、全体の積層物から打抜く。
【0036】
実施例2
リドカインパッチの製造
リドカイン50gを
ポリアクリレート溶液1164g(Duro-Tak
(R) 387-2052, Henkel, 固形物含量47%w/w
エタノール74g
酢酸エチル110g
メントール6g
オレイン酸100g
中で撹拌しながら溶解した。
【0037】
この溶液中に分散したのは、ポリイソブチレン溶液(n−ヘプタン中48%w/w)631gである。溶媒を除去(室温で10分、50℃で25分)して135g/m2の基本重量となるような厚さで、シリコーン処理したポリエステルフィルム上に組成物を被覆する。乾燥したフィルムを、双弾性に織られたポリエステル織物と積層させて全体の積層物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】水蒸気不透過性の支持層を有する閉塞性パッチを示す。1 水蒸気不透過性の支持層、2 活性成分マトリックス、3 再脱着可能な(redetachable)保護フィルム
【
図2】調節可能な閉塞を有する本発明のパッチを示す。4 繊維材料の支持層、5 構造形成ベースポリマー、6 比較的低い水蒸気透過性を有するポリマーの粒子、7 再脱着可能な保護フィルム
【
図3】ポリイソブチレン含量およびマトリックス層厚の関数としての水蒸気透過性を示す。
【
図4】ポリイソブチレン割合およびジクロフェナクナトリウム塩の累積透過量を示す。
【
図5】ポリアクリレート粘着剤相中に分散されたポリイソブチレン粒子(スケール:500:1)を示す。