(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態における加工機械を示す正面図である。
図1中には、加工機械の外観をなすカバー体を透視することにより、加工機械の内部が示されている。
図2は、
図1中の加工機械において、付加加工時の加工エリア内の様子を示す斜視図である。
【0022】
図1および
図2を参照して、加工機械100は、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。加工機械100は、SM加工の機能として、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する。
【0023】
まず、加工機械100の全体構造について説明すると、加工機械100は、ベッド136、第1主軸台111、第2主軸台116、工具主軸121および下刃物台131を有する。
【0024】
ベッド136は、第1主軸台111、第2主軸台116、工具主軸121および下刃物台131を支持するためのベース部材であり、工場などの据付け面に設置されている。第1主軸台111、第2主軸台116、工具主軸121および下刃物台131は、スプラッシュガード210により区画形成された加工エリア200に設けられている。
【0025】
第1主軸台111および第2主軸台116は、水平方向に延びるZ軸方向において、互いに対向して設けられている。第1主軸台111および第2主軸台116は、それぞれ、固定工具を用いた旋削加工時にワークを回転させるための第1主軸112および第2主軸117を有する。第1主軸112は、Z軸に平行な中心軸201を中心に回転可能に設けられ、第2主軸117は、Z軸に平行な中心軸202を中心に回転可能に設けられている。第1主軸112および第2主軸117には、ワークを着脱可能に保持するためのチャック機構が設けられている。
【0026】
第2主軸台116は、各種の送り機構や案内機構、サーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能に設けられている。
【0027】
工具主軸(上刃物台)121は、回転工具を用いたミーリング加工時に回転工具を回転させる。工具主軸121は、鉛直方向に延びるX軸に平行な中心軸203を中心に回転可能に設けられている。工具主軸121には、回転工具を着脱可能に保持するためのクランプ機構が設けられている。
【0028】
工具主軸121は、図示しないコラム等によりベッド136上に支持されている。工具主軸121は、コラム等に設けられた各種の送り機構や案内機構、サーボモータなどにより、X軸方向、水平方向に延び、Z軸方向に直交するY軸方向、およびZ軸方向に移動可能に設けられている。工具主軸121に装着された回転工具による加工位置は、3次元的に移動する。工具主軸121は、さらに、Y軸に平行な中心軸204を中心に旋回可能に設けられている。
【0029】
なお、
図1中には示されていないが、第1主軸台111の周辺には、工具主軸121に装着された工具を自動交換するための自動工具交換装置と、工具主軸121に装着する交換用の工具を収容する工具マガジンとが設けられている。
【0030】
下刃物台131は、旋削加工のための複数の固定工具を装着する。下刃物台131は、いわゆるタレット形であり、複数の固定工具が放射状に取り付けられ、旋回割り出しを行なう。
【0031】
より具体的には、下刃物台131は、旋回部132を有する。旋回部132は、Z軸に平行な中心軸206を中心に旋回可能に設けられている。中心軸206を中心にその周方向に間隔を隔てた位置には、固定工具を保持するための工具ホルダが取り付けられている。旋回部132が中心軸206を中心に旋回することによって、工具ホルダに保持された固定工具が周方向に移動し、旋削加工に用いられる固定工具が割り出される。
【0032】
下刃物台131は、図示しないサドル等によりベッド136上に支持されている。下刃物台131は、サドル等に設けられた各種の送り機構や案内機構、サーボモータなどにより、X軸方向およびZ軸方向に移動可能に設けられている。
【0033】
加工機械100は、付加加工用ヘッド21をさらに有する。付加加工用ヘッド21は、ワークに対して材料粉末を吐出するとともにエネルギー線を照射することにより付加加工を行なう(指向性エネルギ堆積法(Directed Energy Deposition))。エネルギー線としては、代表的に、レーザ光および電子ビームが挙げられる。本実施の形態では、付加加工にレーザ光が用いられる。
【0034】
付加加工用ヘッド21は、ヘッド本体(本体部)22と、レーザツール(出射部)26と、ケーブル継手23とを有する。
【0035】
ヘッド本体22には、レーザ光および材料粉末が導入される。レーザツール26は、ワークに向けてレーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める。レーザツール26は、ヘッド本体22に着脱可能に設けられている(後で詳細に説明する)。ケーブル継手23は、後述するケーブル24をヘッド本体22に接続するための継手として設けられている。
【0036】
加工機械100は、材料粉末供給装置70、レーザ発振装置76およびケーブル24をさらに有する。
【0037】
材料粉末供給装置70は、付加加工に用いられる材料粉末を付加加工用ヘッド21に向けて供給する。材料粉末供給装置70は、付加加工に用いられる材料粉末を貯留する材料粉末タンク72と、材料粉末とキャリアガスとを混合する混合部71とを有する。レーザ発振装置76は、付加加工に用いられるレーザ光を発振する。
【0038】
ケーブル24は、レーザ発振装置76から付加加工用ヘッド21に向けてレーザ光を導くための光ファイバと、材料粉末供給装置70から付加加工用ヘッド21に向けて材料粉末を導くための配管と、これらを収容する管部材とから構成されている。
【0039】
図3は、工具主軸に対する付加加工用ヘッドの装着状態を示す図である。
図1から
図3を参照して、付加加工用ヘッド21は、工具主軸121に着脱可能に設けられている。付加加工用ヘッド21のうちのヘッド本体22が、工具主軸121に着脱可能に設けられている。
【0040】
付加加工時、付加加工用ヘッド21は、工具主軸121に装着される。工具主軸121が、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動することによって、付加加工用ヘッド21による付加加工の加工位置が3次元的に変位する。除去加工時、付加加工用ヘッド21は、工具主軸121から分離され、後述するヘッドストッカ151に格納される。
【0041】
工具主軸121には、クランプ機構が設けられており、工具主軸121に対する付加加工用ヘッド21の装着時、そのクランプ機構が動作することによって、付加加工用ヘッド21が工具主軸121に連結される。クランプ機構の一例として、バネ力によりクランプ状態を得て、油圧によりアンクランプ状態を得る機構が挙げられる。
【0042】
工具主軸121は、装着部カバー156を有する(
図1から
図3では不図示。
図12を参照のこと)。装着部カバー156は、工具主軸121に着脱可能に設けられている。
【0043】
除去加工時、装着部カバー156は、付加加工用ヘッド21に替わって工具主軸121に装着される。装着部カバー156は、付加加工用ヘッド21が装着される工具主軸121の部分を覆うように設けられる。これにより、除去加工時に発生するクーラントやミスト、切粉が、付加加工用ヘッド21が装着される工具主軸121の部分に付着することを防止する。付加加工時、装着部カバー156は、工具主軸121から分離され、後述するヘッドストッカ151に格納される。
【0044】
続いて、
図1中の付加加工用ヘッド21の構造についてより詳細に説明する。
図4は、
図1中の付加加工用ヘッドの内部構造を示す斜視図である。
図5は、
図1中の付加加工用ヘッドの内部構造を示す別の斜視図である。図中には、レーザツール26がヘッド本体22から分離された状態が示されている。
【0045】
図4および
図5を参照して、まず、ヘッド本体22およびレーザツール26の連結機構について説明する。ヘッド本体22およびレーザツール26は、それぞれ、連結部51および連結部52を有する。連結部51および連結部52には、クランプ機構が内蔵されており、ヘッド本体22に対するレーザツール26の装着時、そのクランプ機構が動作することによって、連結部51および連結部52が互いに連結される。クランプ機構の一例として、バネ力によりクランプ状態を得て、油圧によりアンクランプ状態を得る機構が挙げられる。
【0046】
次に、付加加工用ヘッド21においてワークに対してレーザ光を照射するための機構について説明する。ケーブル継手23およびヘッド本体22は、光ファイバ41、レーザ光入射管42、レーザ光通路筐体43、レーザ光通路管44およびレーザ光通路筐体45を有する。
【0047】
光ファイバ41には、ケーブル24からのレーザ光が導かれる。光ファイバ41は、レーザ光入射管42に接続されている。レーザ光入射管42、レーザ光通路筐体43、レーザ光通路管44およびレーザ光通路筐体45は、挙げた順に連なって設けられている。レーザ光入射管42、レーザ光通路筐体43、レーザ光通路管44およびレーザ光通路筐体45は、ヘッド本体22におけるレーザ光の通路を形成している。
【0048】
レーザツール26は、レーザ光通路筐体48およびレーザ光出射筐体49を有する。レーザ光通路筐体48およびレーザ光出射筐体49は、連なって設けられている。レーザ光通路筐体48およびレーザ光出射筐体49は、レーザツール26におけるレーザ光の通路を形成している。
【0049】
ヘッド本体22およびレーザツール26は、それぞれ、接続部46および接続部47を有する。ヘッド本体22に対するレーザツール26の装着時、接続部46に接続部47が接続されることによって、ヘッド本体22およびレーザツール26間でレーザ光の通路が連通する。
【0050】
図6は、
図1中の付加加工用ヘッドの光学系を模式的に表した図である。
図4から
図6を参照して、ケーブル継手23およびヘッド本体22は、コリメーションレンズ61、反射鏡62、反射鏡63および保護ガラス64を有する。
【0051】
コリメーションレンズ61は、レーザ光入射管42に収容されている。コリメーションレンズ61は、光ファイバ41から入力されたレーザ光を平行光にして、反射鏡62および反射鏡63に向けて送る。反射鏡62および反射鏡63は、それぞれ、レーザ光通路筐体43およびレーザ光通路筐体45に収容されている。反射鏡62および反射鏡63は、コリメーションレンズ61からのレーザ光を反射させてレーザツール26に向けて送る。
【0052】
保護ガラス64は、接続部46に設けられている。保護ガラス64は、ヘッド本体22に内蔵された光学部品を外部雰囲気から保護するために設けられている。
【0053】
レーザツール26は、保護ガラス65、集光レンズ66および保護ガラス67を有する。集光レンズ66は、レーザ光通路筐体48に収容されている。集光レンズ66は、レーザ光をワーク上に集光するためのレンズであり、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める光学部品として設けられている。ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める光学部品は、集光レンズ66に限られず、たとえば、ミラーであってもよい。
【0054】
保護ガラス65および保護ガラス67は、それぞれ、接続部47およびレーザ光出射筐体49に設けられている。保護ガラス65および保護ガラス67は、レーザツール26に内蔵された光学部品を外部雰囲気から保護するために設けられている。
【0055】
ヘッド本体22には、実行する付加加工の条件に合わせて、複数のレーザツール26(
図6中では、レーザツール26A、レーザツール26Bおよびレーザツール26C)のうちいずれか1つのレーザツール26が選択的に装着される。複数のレーザツール26は、ワーク上に定められるレーザ光の照射領域の形状や大きさが互いに異なる。
【0056】
図6中に示す例でいえば、レーザツール26Aは、集光レンズ66Aを有し、この集光レンズ66Aによって、ワーク上に直径2mmの円形の照射領域を定める。レーザツール26Bは、ホモジナイザー68および集光レンズ66Bを有し、このホモジナイザー68および集光レンズ66Bによって、ワーク上に3mm×8mmの矩形の照射領域を定める。レーザツール26Cは、集光レンズ66Cを有し、この集光レンズ66Cによって、ワーク上に直径4mmの円形の照射領域を定める。
【0057】
図7は、
図1中の付加加工用ヘッドの先端部を示す斜視図である。
図4から
図7を参照して、付加加工用ヘッド21においてワークに対して材料粉末を吐出するための機構について説明する。レーザツール26は、固定部材81、回転部材86およびノズル部78を有する(
図4および
図5中では、ノズル部78が省略されている)。
【0058】
固定部材81は、レーザ光出射筐体49と隣り合って設けられている。固定部材81は、レーザ光出射筐体49に対して、レーザ光通路筐体48の反対側に設けられている。固定部材81は、レーザツール26を構成する他の部品に固定して設けられている。
【0059】
回転部材86は、中心軸221(
図7を参照のこと)を中心に回転可能に設けられている。中心軸221は、レーザツール26からワークに向けて照射されるレーザ光311の光軸に沿った方向に延びる。本実施の形態では、中心軸221が、レーザ光311の光軸と重なる。回転部材86は、中心軸221の軸方向において、固定部材81と連設されている。すなわち、回転部材86および固定部材81は、中心軸221の軸方向において並んで設けられている。
【0060】
ノズル部78は、ワークに向けて材料粉末を吐出する。ノズル部78は、配管継手87(
図5を参照のこと)を介して回転部材86に接続されている。
図1中のケーブル24から付加加工用ヘッド21に導入された材料粉末は、固定部材81および回転部材86を通じてノズル部78に供給される。
【0061】
ノズル部78は、回転部材86からレーザ光311の照射方向に沿って延出している。ノズル部78は、中心軸221(レーザ光311の光軸)からその半径方向に離れた位置に設けられている。ノズル部78は、回転部材86から延出する先端に、材料粉末を吐出する吐出口78jを有する。吐出口78jは、中心軸221(レーザ光311の光軸)からその半径方向に離れた位置で開口している。吐出口78jは、ワーク上に形成されるレーザ光311の照射領域(スポット)と対向して開口している。
【0062】
ノズル部78は、回転部材86が中心軸221を中心に回転するのに伴って、ワークに向けて照射されるレーザ光311の周りで周方向に移動する。特に本実施の形態では、回転部材86の回転中心である中心軸221が、レーザ光311の光軸と重なるため、ノズル部78はレーザ光311の光軸を中心に回転移動する。
【0063】
ヘッド本体22は、回転駆動源としてのサーボモータ31と、クラッチ板32とを有する。レーザツール26は、クラッチ板33と、回転シャフト34と、プーリベルト35とを有する。
【0064】
クラッチ板32は、サーボモータ31の出力軸に接続されている。回転シャフト34は、クラッチ板33に接続されている。ヘッド本体22に対するレーザツール26の装着時、クラッチ板33がクラッチ板32に摩擦係合することにより、サーボモータ31から出力された回転が回転シャフト34に伝達される。プーリベルト35は、回転シャフト34および回転部材86に設けられたプーリ(不図示)間に掛け渡されている。回転シャフト34の回転がプーリベルト35を介して回転部材86に伝達されることによって、回転部材86が中心軸221を中心に回転する。
【0065】
本実施の形態における付加加工用ヘッド21においては、サーボモータ31の制御によって、ワークに対する付加加工用ヘッド21の相対移動方向を基準にして、材料粉末がノズル部78からワークに向けて吐出される方向が一定となるように、ノズル部78が回転駆動される。
【0066】
図8は、付加加工時のワーク表面を拡大して示す断面図である。
図2および
図8を参照して、付加加工時、付加加工用ヘッド21が装着された工具主軸121の移動、および/または、ワーク400を保持する第1主軸台111の第1主軸112の回転によって、レーザツール26をワーク400に対向させつつ、付加加工用ヘッド21およびワーク400を相対的に移動させる。このとき、付加加工用ヘッド21(レーザツール26)からワーク400に向けて、レーザ光311と、材料粉末312と、シールドおよびキャリア用のガス313とが吐出される。これにより、ワーク400の表面に溶融点314が形成され、その結果、材料粉末312が溶着する。
【0067】
具体的には、ワーク400の表面に肉盛層316が形成される。肉盛層316上には、肉盛素材315が盛られる。肉盛素材315が冷却されると、ワーク400の表面に加工可能な層が形成された状態となる。材料粉末としては、アルミニウム合金およびマグネシウム合金等の金属粉末や、セラミック粉末を利用することができる。
【0068】
図9は、
図1中の工具主軸の旋回範囲を説明するための図である。
図9を参照して、工具主軸121は、中心軸204を中心に旋回可能に設けられている。工具主軸121の旋回範囲は、工具主軸121の主軸端面123が下方を向く姿勢(
図1中に示す姿勢)を基準にして±120°の範囲である。
図9中には、
図1中に示す姿勢から+120°の角度だけ旋回する工具主軸121が示されている。工具主軸121の旋回範囲は、
図1中に示す姿勢から±90°以上の範囲であることが好ましい。
【0069】
付加加工用ヘッド21が工具主軸121に装着される付加加工時、工具主軸121を旋回させると、付加加工用ヘッド21も工具主軸121と一体となって旋回する。これにより、付加加工用ヘッド21による付加加工の向き(ワークに対するレーザ光の照射方向)を自在に変化させることができる。
【0070】
図10は、
図1中の加工機械において、付加加工な可能なワークの最大径の一例を示す正面図である。
図11は、
図1中の加工機械において、付加加工が可能なワークの最大長さの一例を示す正面図である。
【0071】
図9から
図11を参照して、工具主軸121は、筒部122を有する。筒部122は、工具主軸121の外観をなすケース体であり、中心軸203に沿って筒状に延び、その先端で主軸端面123に連なる。
【0072】
付加加工用ヘッド21は、工具主軸121のうちの筒部122(すなわち、工具主軸121の側面)に着脱可能に装着される。筒部122に装着された付加加工用ヘッド21は、中心軸203から見てその半径方向に距離を隔てた位置に配置される。
【0073】
このような構成によれば、工具主軸121の主軸端面123から突出する付加加工用ヘッド21の長さが小さくなるため、付加加工が可能なワークの寸法を大きく設定することができる。
【0074】
たとえば、
図10中では、ワーク400の外周面に付加加工を行なう場合が想定されている。このとき、付加加工用ヘッド21をワーク400の外周面と対向させて走査するため、工具主軸121を主軸端面123が下方を向く姿勢に保持する。本実施の形態では、工具主軸121の主軸端面123から突出する付加加工用ヘッド21の長さが小さいため、付加加工が可能なワーク400の最大径Dをより大きく設定することができる。
【0075】
また、
図11中では、第1主軸台111に装着されたワーク400の端面に付加加工を行なう場合が想定されている。このとき、付加加工用ヘッド21をワーク400の端面と対向させて走査するため、工具主軸121を主軸端面123が側方を向く姿勢に保持する。本実施の形態では、工具主軸121の主軸端面123から突出する付加加工用ヘッド21の長さが小さいため、付加加工が可能なワークの最大長さLをより大きく設定することができる。
【0076】
続いて、
図1中の付加加工用ヘッド21の格納構造について説明する。
図12は、
図1中の矢印XIIに示す方向から見た加工機械を示す斜視図である。
図1および
図12を参照して、加工機械100は、ヘッドストッカ151、レーザツールストッカ171およびレーザツール交換装置161をさらに有する。
【0077】
ヘッドストッカ151は、付加加工用ヘッド21を加工エリア外250に格納する。ヘッドストッカ151は、Z軸方向において加工エリア200と隣り合った位置に設けられている。ヘッドストッカ151は、第2主軸台116の上方に設けられている。付加加工用ヘッド21は、レーザツール26が分離された状態で(ヘッド本体22およびケーブル継手23の状態で)、ヘッドストッカ151に格納される。
【0078】
ヘッドストッカ151は、ヘッド支持部152、カバー支持部157、リッド154および移動機構部153を有する。
【0079】
ヘッド支持部152は、付加加工用ヘッド21を支持可能なように構成されている。本実施の形態では、ヘッド支持部152が台座形状を有し、付加加工用ヘッド21は、ヘッド支持部152に載置される。
【0080】
カバー支持部157は、装着部カバー156を支持可能なように構成されている。カバー支持部157は、Y軸方向においてヘッド支持部152と隣り合った位置に設けられている。カバー支持部157は、ヘッド支持部152と一体に設けられている。
【0081】
リッド154は、付加加工時にヘッド支持部152を覆うためのカバー部材として設けられている。リッド154は、平板形状を有する。リッド154は、Z軸に平行な中心軸207を中心に揺動可能に設けられている。リッド154は、中心軸207を中心とする揺動運動に伴って、ヘッド支持部152を上方から覆う第1状態と、ヘッド支持部152から退避する第2状態との間で変化する。
【0082】
移動機構部153は、ヘッド支持部152およびカバー支持部157を、加工エリア200と加工エリア外250との間で移動させる。移動機構部153は、ヘッド支持部152およびカバー支持部157を案内する案内機構(不図示)や、ヘッド支持部152およびカバー支持部157を動かすアクチュエータなどから構成されている。アクチュエータの種類は特に限定されないが、本実施の形態では、エアシリンダが用いられている。より具体的には、エアシリンダのピストンロッドが、ヘッド支持部152およびカバー支持部157に接続されている。Z軸方向におけるピストンロッドの伸縮運動に伴って、ヘッド支持部152およびカバー支持部157が加工エリア200および加工エリア外250の間を往復移動する。
【0083】
レーザツールストッカ171は、加工エリア外250に設けられ、ワーク上に定めるレーザ光の照射領域が互いに異なる複数のレーザツール26(
図6中に示す例でいえば、レーザツール26A、レーザツール26Bおよびレーザツール26C)を格納する。レーザツール交換装置161は、ヘッド本体22(工具主軸121に装着された付加加工用ヘッド21)と、レーザツールストッカ171との間でレーザツール26を交換する。
【0084】
レーザツールストッカ171およびレーザツール交換装置161は、加工エリア外250に設けられている。レーザツールストッカ171およびレーザツール交換装置161は、加工エリア200から見て、Z軸方向においてヘッドストッカ151よりもさらに奥まった位置に設けられている。
【0085】
レーザツールストッカ171は、レーザツール支持部172を有する。レーザツール支持部172は、複数のレーザツール26を支持可能なように構成されている。
【0086】
本実施の形態では、レーザツール支持部172が、Z軸に平行な中心軸208を中心とするリング形状を有し、中心軸208を中心に旋回可能に設けられている。中心軸208を中心にその周方向に間隔を隔てた位置には、レーザツール26を保持するためのレーザツールホルダが取り付けられている。レーザツールホルダの数は特に限定されないが、本実施の形態では、5つである。レーザツール支持部172が中心軸208を中心に旋回することによって、レーザツールホルダに保持されたレーザツール26が周方向に移動し、付加加工に用いられるレーザツール26が所定位置(以下、「レーザツール割り出し位置」という)に配置される。
【0087】
本実施の形態では、レーザツール割り出し位置が、リング形状を有するレーザツール支持部172の頂部に位置する。ヘッドストッカ151は、Z軸方向から見て、レーザツール割り出し位置と重ならない位置に設けられている。
【0088】
レーザツール交換装置161は、移動機構部163を有する。移動機構部163は、レーザツール26を加工エリア200および加工エリア外250の間で移動させる。移動機構部163は、レーザツール26を案内する案内機構(不図示)や、レーザツール26を動かすアクチュエータなどから構成されている。アクチュエータの種類は特に限定されないが、本実施の形態では、エアシリンダが用いられている。より具体的には、エアシリンダのピストンロッドが、レーザツール支持部172においてレーザツール割り出し位置に配置されたレーザツール26に連結される。Z軸方向におけるピストンロッドの伸縮運動に伴って、レーザツール26が加工エリア200および加工エリア外250の間を往復移動する。
【0089】
加工機械100は、ヘッドストッカカバー(第1カバー)141およびレーザツールストッカカバー(第2カバー)143をさらに有する。
【0090】
ヘッドストッカカバー141は、加工エリア200および加工エリア外250の間を隔てるように設けられている。ヘッドストッカカバー141は、加工エリア200を区画形成するスプラッシュガード210の一部をなしている。レーザツールストッカカバー143は、レーザツールストッカ171に格納された複数のレーザツール26を覆うように設けられている。レーザツールストッカカバー143は、加工エリア外250において、ヘッドストッカ151が配置される空間と、レーザツールストッカ171が配置される空間とを隔てるように設けられている。
【0091】
ヘッドストッカカバー141は、ヘッドストッカ扉(第1開閉部材)142を有する。ヘッドストッカ扉142が閉状態とされることにより、加工エリア200および加工エリア外250の間が隔てられ、ヘッドストッカ扉142が開状態とされることにより、加工エリア200および加工エリア外250の間が開通する。ヘッドストッカ扉142が開状態とされると、加工エリア200および加工エリア外250の間における付加加工用ヘッド21の移動が可能となる。ヘッドストッカ扉142の形態は特に限定されないが、本実施の形態では、ヘッドストッカ扉142が折り畳み式の扉の形態で設けられている。
【0092】
レーザツールストッカカバー143は、レーザツールストッカ扉(第2開閉部材)144を有する。レーザツールストッカ扉144が閉状態とされることにより、ヘッドストッカ151が配置される空間と、レーザツールストッカ171が配置される空間との間が隔てられ、レーザツールストッカ扉144が開状態とされることにより、ヘッドストッカ151が配置される空間と、レーザツールストッカ171が配置される空間との間が開通する。ヘッドストッカ扉142およびレーザツールストッカ扉144が開状態とされると、加工エリア200および加工エリア外250の間におけるレーザツール26の移動が可能となる。レーザツールストッカ扉144の形態は特に限定されないが、本実施の形態では、レーザツールストッカ扉144が一方向にスライドするシャッターの形態で設けられている。
【0093】
続いて、付加加工時におけるレーザツール26の交換の流れについて説明する。
図13から
図17は、付加加工時におけるレーザツール交換の工程を模式的に表す図である。
【0094】
図13を参照して、加工エリア200において、工具主軸121に装着された付加加工用ヘッド21には、レーザツール26Aが装着されている。付加加工時、レーザツールストッカ扉144が閉状態とされている。その一方、材料粉末およびレーザ光を導入するためのケーブル24が加工エリア200および加工エリア外250の間で延びるため、ヘッドストッカ扉142は開状態とされている。レーザツール26の交換に先立って、レーザツール支持部172において、レーザツール割り出し位置を空きスペースとする。
【0095】
まず、加工エリア200において、工具主軸121をヘッドストッカ扉142に隣り合う位置(以下、「レーザツール交換位置」という)に移動させる。このとき、工具主軸121を中心軸204を中心に旋回させることにより、主軸端面123が側方を向く姿勢とする。
【0096】
図14を参照して、レーザツールストッカ扉144を開状態とする。移動機構部163を動作させることによって、移動機構部163のピストンロッドを、加工エリア外250から加工エリア200に進入させる。移動機構部163のピストンロッドを、付加加工用ヘッド21に装着されたレーザツール26Aに連結するとともに、付加加工用ヘッド21におけるレーザツール26Aのクランプを解除する。
【0097】
図15を参照して、移動機構部163を動作させることによって、移動機構部163のピストンロッドを、加工エリア200から加工エリア外250に戻す。レーザツール支持部172において、レーザツール26Aをレーザツール割り出し位置に保持する。
【0098】
図16を参照して、レーザツール支持部172を中心軸208を中心に旋回することにより、レーザツール26Bをレーザツール割り出し位置に配置する。このとき、移動機構部163のピストンロッドがレーザツール26Bに連結される。
【0099】
図17を参照して、移動機構部163を動作させることによって、移動機構部163のピストンロッドを、加工エリア外250から加工エリア200に進入させる。これにより、レーザツール26Bをレーザツール支持部172から付加加工用ヘッド21まで移動させる。付加加工用ヘッド21においてレーザツール26Bをクランプする。
【0100】
その後、移動機構部163を動作させることによって、移動機構部163のピストンロッドを、加工エリア200から加工エリア外250に戻す。レーザツールストッカ扉144を閉状態とする。以上の工程により、レーザツール26の交換が完了する。
【0101】
本実施の形態では、レーザツール交換装置161によって、付加加工用ヘッド21に装着されるレーザツール26を実行する付加加工に適したレーザツール26に迅速に交換することができる。これにより、付加加工時の生産性を向上させることができる。
【0102】
また、付加加工時、ヘッドストッカ扉142は開状態とされているため、付加加工に伴って加工エリア200を舞う材料粉末が加工エリア外250に侵入する。本実施の形態では、レーザツールストッカ扉144が閉状態とされたレーザツールストッカカバー143により、材料粉末がレーザツールストッカ171に格納されたレーザツール26に付着することを防止できる。また、除去加工時においても、ヘッドストッカカバー141およびレーザツールストッカカバー143による2重カバー構造により、除去加工時に発生するクーラントやミスト、切粉がレーザツールストッカ171内に侵入することをより確実に防止できる。
【0103】
なお、レーザツールストッカカバー143内への異物の侵入をさらに確実に防ぐため、エアパージによってレーザツールストッカカバー143内の圧力を高める構成としてもよい。
【0104】
続いて、除去加工から付加加工への移行時における付加加工用ヘッド21の装着の流れについて説明する。
【0105】
図18から
図24は、除去加工から付加加工への移行時における付加加工用ヘッド装着の工程を模式的に表す図である。
【0106】
図18を参照して、除去加工時、ヘッドストッカ扉142およびレーザツールストッカ扉144は、閉状態とされている。加工エリア200において、第1主軸台111には、除去加工がなされたワーク400が装着されている。加工エリア外250において、ヘッドストッカ151には、付加加工用ヘッド21が格納されている。レーザツールストッカ171では、次の付加加工時に用いられるレーザツール26がレーザツール割り出し位置に配置されている。
【0107】
まず、加工エリア200において、ヘッドストッカ扉142に隣り合う位置に工具主軸121を移動させる。このとき、工具主軸121は、主軸端面123が下方を向く姿勢とされている。
【0108】
図19を参照して、ヘッドストッカ扉142を開状態とすることにより、加工エリア200および加工エリア外250の間を開通させる。移動機構部153を動作させることによって、ヘッド支持部152およびカバー支持部157を、加工エリア外250から加工エリア200に移動させる。カバー支持部157を工具主軸121に近接移動させることにより、工具主軸121に装着された装着部カバー156をカバー支持部157に受け渡す(不図示)。
【0109】
図20を参照して、工具主軸121をヘッド支持部152により支持された付加加工用ヘッド21に近接移動させるとともに、工具主軸121により付加加工用ヘッド21をクランプする。これにより、付加加工用ヘッド21を工具主軸121に装着する。
【0110】
図21を参照して、移動機構部153を動作させることによって、ヘッド支持部152およびカバー支持部157を、加工エリア200から加工エリア外250に移動させる。リッド154を中心軸207を中心に揺動させることにより、リッド154をヘッド支持部152から退避する第2状態からヘッド支持部152を覆う第1状態に変化させる。このような構成により、付加加工時の材料粉末がヘッド支持部152に付着することを防止できる。
【0111】
図22を参照して、工具主軸121を中心軸204を中心に90°旋回させるとともに、レーザツール交換位置に移動させる。このとき、工具主軸121は、主軸端面123が側方を向く姿勢とされる。
【0112】
図23を参照して、レーザツールストッカ扉144を開状態とする。移動機構部163を動作させることによって、レーザツール交換位置に配置されたレーザツール26を、加工エリア外250から加工エリア200に移動させる。レーザツール26を、工具主軸121に装着された付加加工用ヘッド21に装着する。
【0113】
図24を参照して、移動機構部163を動作させることによって、移動機構部163のピストンロッドを、加工エリア200から加工エリア外250に戻す。レーザツールストッカ扉144を閉状態とする。付加加工用ヘッド21をワーク400に近接移動させることにより、付加加工を開始する。
【0114】
以上に説明した、この発明の実施の形態における加工機械100の基本的な構造について説明すると、本実施の形態における加工機械100は、ワークの除去加工および付加加工が可能な加工機械である。加工機械100は、加工エリア200で移動可能に設けられ、ワークの除去加工のための工具を保持する工具保持部としての工具主軸121と、工具主軸121に着脱可能に装着され、ワークの付加加工時に材料粉末を吐出するとともにエネルギー線としてのレーザ光を照射する付加加工用ヘッド21と、付加加工用ヘッド21を加工エリア外250に格納するヘッドストッカ151とを備える。付加加工用ヘッド21は、レーザ光が導入される本体部としてのヘッド本体22と、ヘッド本体22に着脱可能に設けられ、レーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める出射部としてのレーザツール26とを有する。加工機械100は、加工エリア外250に設けられ、ワーク上に定めるレーザ光の照射領域が互いに異なる複数のレーザツール26を格納する出射部ストッカとしてのレーザツールストッカ171と、ヘッド本体22およびレーザツールストッカ171の間でレーザツール26を交換する出射部交換装置としてのレーザツール交換装置161とをさらに備える。
【0115】
なお、本実施の形態では、旋削機能とミーリング機能とを有する複合加工機をベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成した場合について説明したが、このような構成に限られず、たとえば、ミーリング機能を有するマシニングセンタをベースにAM/SMハイブリッド加工機を構成してもよい。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】加工機械100は、ワークの除去加工のための工具を保持する工具主軸121と、工具主軸121に着脱可能に装着され、ワークの付加加工時に材料粉末を吐出するとともにレーザ光を照射する付加加工用ヘッド21と、付加加工用ヘッド21を加工エリア外250に格納するヘッドストッカ151とを備える。付加加工用ヘッド21は、レーザ光が導入されるヘッド本体22と、ヘッド本体22に着脱可能に設けられ、レーザ光を出射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定めるレーザツール26とを有する。加工機械100は、複数のレーザツール26を格納するレーザツールストッカ171と、ヘッド本体22およびレーザツールストッカ171の間でレーザツール26を交換するレーザツール交換装置161とをさらに備える。