特許第6033382号(P6033382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6033382
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】オリーヴ葉エキス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/63 20060101AFI20161121BHJP
   A61K 36/87 20060101ALI20161121BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20161121BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20161121BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20161121BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20161121BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20161121BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   A61K36/63
   A61K36/87
   A61K31/7048
   A61P39/06
   A61P29/00
   A61P31/04
   A61K8/97
   A61Q19/08
   A23L33/105
   A61K127:00
   A61K131:00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-195514(P2015-195514)
(22)【出願日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502106462
【氏名又は名称】小豆島ヘルシーランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】特許業務法人JAZY国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳生 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】岸本 憲人
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−125301(JP,A)
【文献】 特開2002−128678(JP,A)
【文献】 特開2003−335693(JP,A)
【文献】 特開2008−201715(JP,A)
【文献】 特開2003−210137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/105
A61K 8/97
A61K 31/7048
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 39/06
A61Q 19/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーヴ葉エキスのオレウロペイン含量を増大させる方法であって、
乾燥したオリーヴ葉を粉砕する第1工程と、
前記粉砕したオリーヴ葉にブドウを混合してから抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する第2工程とを含み、
前記第2工程において、前記抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであり、かつ70℃以上で抽出する、方法。
【請求項2】
乾燥したオリーヴ葉を粉砕する第1工程と、
前記粉砕したオリーヴ葉にブドウを混合してから抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する第2工程とを含み、
前記第2工程において、前記抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであり、かつ70℃以上で抽出する、オリーヴ葉エキスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のオリーヴ葉エキスの製造方法により製造されたことを特徴とするオリーヴ葉エキス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーヴ葉を主原料としたもので高濃度のオレウロペインを含有し機能性に優れたオリーヴ葉エキス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オリーヴ葉は、オリーヴ果実に比して遥かに高い含有率でビタミンAを有し、また、酸化防止剤であるビタミンE並びに抗炎症作用、消臭及び抗菌作用を有するクロロフィル等を豊富に含んでいることが知られている。
【0003】
オリーヴ葉に含まれるビタミンA、ビタミンE及びクロロフィル等の優れた成分は、オリーヴ果実とオリーヴ葉を一緒に粉砕・抽出することにより、得られる抽出油中に効率的に取り込まれるため、オリーヴ果実のみから得られるオリーヴ抽出油に比して、ビタミンA、ビタミンE及びクロロフィル等の優れた成分を天然の形で多量に含む抽出油とすることができることも知られている。
【0004】
さらに、今日では、オリーヴの実や葉はポリフェノールを含有しており、その健康増進作用等についても注目されている。特に、オリーヴ葉に含まれるポリフェノールの一種であるオレウロペインは、非常に高い抗酸化力を有し、各種疾病の予防および改善の効果が確認されている。
【0005】
そして、このようなオリーヴ葉を用いるものとして、例えば、特許文献1では、オリーヴ葉を乾燥し、粉砕した後、水、クエン酸を含有する水、あるいはペプチドを含有する水を抽出媒体として抽出することによりオレウロペインを含むオリーヴ葉抽出エキスを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−125301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、渋みや苦みの低減に注視したものであって、いかにして高濃度のオレウロペインを抽出するかとの観点から抽出条件等について最適なものを開示するものではなかった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高濃度のオレウロペインを含有したオリーヴ葉エキスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、乾燥したオリーヴ葉を粉砕する第1工程と、粉砕したオリーヴ葉から抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する第2工程とを含み、第2工程において、抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであり、かつ70℃以上で抽出するものである。
【0010】
また、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、抽出溶媒に対するオリーヴ葉の添加葉量が15重量%以上35重量%以下であってもよい。
【0011】
また、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、オリーヴ葉の品種が、ルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)及びマンザニロ(Manzanillo)からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0012】
また、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、第2工程では、粉砕したオリーヴ葉に果実を混合してから抽出を行ってもよい。
【0013】
また、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、果実が、ブドウであってもよい。
【0014】
また、本発明は、上記オリーヴ葉エキスの製造方法により製造されたオリーヴ葉エキスをも提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高濃度のオレウロペインを含有したオリーヴ葉エキス及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、オリーヴ葉エキスの製造方法を提供する。オリーヴ葉エキスは、オリーヴの葉から抽出されたエキスであり、オレウロペイン及びヒドロキシチロソールなどのポリフェノールを含有する。オレウロペイン及びヒドロキシチロソールは、抗酸化力を有するフェノール化合物として知られ、抗酸化力による各種疾病の予防や改善の効果が確認されている。
【0017】
本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、乾燥したオリーヴ葉を粉砕する第1工程と、粉砕したオリーヴ葉から抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する第2工程とを含む。
【0018】
第1工程は、乾燥したオリーヴ葉を粉砕する工程である。本明細書において「粉砕する」とは、物理的に破砕することによって対象物のサイズを小さくすること、たとえば微小な粒、小片または粉末などに物理的に破砕することをいう。オリーヴ葉を乾燥させる方法及び粉砕する方法には、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。
【0019】
本発明に使用し得るオリーヴ葉の品種には、たとえば、ルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、マンザニロ(Manzanillo)、アメレンケ(Amellenque)、アルベキナ(Arbequina)、アスコラーナ・テレナ(Ascolana Terena)、アスコラノ(Ascolano)、アザパ(Azapa)、バーネア(Barnea)、バロウニ(Barouni)、ビアンコリッラ(Biancolilla)、ビーデル・ハマン(Bidh El Hamman)、ブランケッタ(Blanqueta)、カイエ・ブラン(Caillet Blane)、カロレア(Carolea)、カヨンヌ(Cayonne)、ケムラリ(Chemilali)、チトーニ(Chitoni)、チプレッシーノ(Cipressino)、コラティーナ(Coratina)、コルニカブラ(Cornicabra)、コレッジョラ(Correggiola)、クッコ(Cucco)、ギガンテ・ディ・チェリニョーラ(Gigante di Cerignola)、フラントイオ(Frantoio)、グラッポロ(Glappolo)、ゴルダル(Gordal)、ハーディーズ・マンモス(Hardy's Mammoth)、オヒブランカ(Hojiblanca)、イトラーナ(Itrana)、ジャンボ・カラマタ(Jumbo Kalamata)、カラマタ(Kalamata)、コロネイキ(Koroneiki)、レッチーノ(Leccino)、レッチオ・デル・コルノ(Leccio del Corno)、リャニ(Liani)、ルッケス(Lucques)、マンザニリャ(Manzanilla)、マウリーノ(Maurino)、ミシェレンケ(Michellenque)、モロイオロ(Moraiolo)、ナバリ・モハサン(Nabali Mohassan)、ナブ・タムリ(Nab Tamri)、ネグラル(Negral)、ノッチェラーラ・デル・ベリチェ(Nocellara del Belice)、オブリザ(Obliza)、オブロンガ(Oblonga)、パラゴン(Paragon)、ペンドリーノ(Pendolino)、ピクアル(Picual)、レッディング・ピショリン(Redding picholine)、レドゥナ(Redounan)、ソウリン(Saurin 大葉)、ソウリン(Saurin 中葉)、ソウリン(Saurin 小葉)、セビラノ(Sevillano)、ソラニ(Sorani)、サウス・オーストラリアン・ベルダル(South Australian Verdale)、セント・キャサリン(St. Catherin)、タジャスカ(Taggiasca)、タンシェ(Tanche)、ティニイ・オイル・カラマタ(Tiny Oil Kalamata)、ツナーティ(Tsunati)、ベルダル(Verdale)、ワッガ・ベルダル(Wagga Verdale)、サルサ(Zarza)、オリーヴェール及びFS17などが含まれる。本発明において、オリーヴ葉は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
オリーヴ葉の採取時期は、特に限定されないが、たとえば、日本のような北半球にある地域においては、オリーヴ果実が多量の油分を含有するようになる12月頃が好ましく、また、オリーヴ果実が完熟して収穫を終えた後が好ましい。
【0021】
第2工程は、粉砕したオリーヴ葉から抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する工程である。
【0022】
抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせである。すなわち、抽出溶媒は、水、アルコールまたはアルコールを含む水である。本発明において、アルコールには、たとえばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びポリエチレングリコールなどが含まれる。また、アルコールは、たとえば日本酒および焼酎などのアルコール飲料であってもよい。アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。抽出溶媒は、たとえば水、エタノールもしくは1,3−ブチレングリコールまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
第2工程において、抽出温度は70℃以上である。70℃以上で抽出することにより、後述する実施例で示されるように、オレウロペイン含量が高いオリーヴ葉エキスを得ることができる。また、抽出温度の上限は特に限定されないが、たとえば100℃以下であることができる。
【0024】
抽出溶媒に対するオリーヴ葉の添加葉量は、特に限定されないが、15重量%以上35重量%以下であれば、後述する実施例で示されるように、オレウロペイン含量及び抗糖化力が高いオリーヴ葉エキスを得ることができる。
【0025】
第2工程では、粉砕したオリーヴ葉に果実を混合してから、抽出溶媒を用いて抽出を行ってもよい。果実として、果実そのものを用いてもよいし、果実の果皮、果肉、果汁、破砕物、搾汁もしくは残渣またはこれらの組み合わせを用いてもよい。
【0026】
本発明において、果実には、たとえば、ブドウ、オレンジ、ミカン、マンダリン、グレープフルーツ、レモン、ライム、リンゴ、モモ、イチゴ、ブルーベリー、クランベリー、エルダベリー、ビルベリー、ブラックベリー、ラズベリー、バナナ、マンゴー、キウイ、ザクロ、カキ、トマト、ナシ、サクランボ、プラム、パイナップル、ビワ及びカリンなどが含まれる。果実は、好ましくはブドウである。ブドウには、たとえば、赤ブドウ、白ブドウ及び黒ブドウなどが含まれる。本発明において、果実は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
オリーヴ葉に果実を混合することにより、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスを抽出することができる。果実をオリーヴ葉に混ぜることで、抽出過程で抽出媒体である水等が酸性となることが起因して、抽出されるエキスにおけるポリフェノール濃度を高めているものと考える。
【0028】
本発明は、上述したオリーヴ葉エキスの製造方法により製造されたオリーヴ葉エキスをも提供する。本発明のオリーヴ葉エキスは、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法によって製造されることにより、従来よりも高濃度のオレウロペインを含有する。したがって、本発明のオリーヴ葉エキスは、高い抗酸化力を有するため、この抗酸化力を利用した各種の医薬、食品および化粧品などに利用することができる。また、本発明のオリーヴ葉エキスは、高い抗糖化力を有するため、抗糖化剤として利用することもできる。
【実施例】
【0029】
(測定方法)
総ポリフェノール含量の測定に際しては、Folin-Ciocalteu法を用いた。これは、フォーリン試薬(フェノール試薬)がフェノール性水酸基により還元されて抵触するのを利用する方法である。また、オレウロペイン含量の測定に際しては、HPLC分析を行った。これは、所謂高速液体クロマトグラフィー法であり、固定相と移動相とからなる系の中、特定の物質を分離する方法である。
【0030】
さらに、抗糖化力の測定に際しては、各サンプルをBSA-フルクトース溶液と反応させて非酵素的糖付加反応-後期反応生成物(AGEs:Advanced Glycation End Products)液とし、AGEs液中のAGEs量を競合法により測定した。
【0031】
さらに、抗酸化力の測定に際しては、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity, 活性酸素吸収能力)を調べた(参考文献=Wu, X. et al., J.Agric.Food Chem.,m 2004, 52, 4026-4037。1μmolのTroloxが示す活性を単位とした)。
【0032】
(オリーヴ葉及び抽出溶媒)
表1〜3には、オリーヴの生葉、蒸し葉及び乾燥葉を、水、1,3−ブチレングリコール溶液、エタノール溶液で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。乾燥葉は、乾燥させた後、粉砕したものを用いた。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出温度は50−60℃、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、水、30%BG(BGはブチレングリコール)、50%BG、80%BG、50%EtOH(EtOHはエタノール)、100%EtOHのそれぞれを用いて抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表1〜3に示すように、生葉及び蒸し葉と比較して、乾燥葉からオリーヴ葉エキスを得た場合に、総ポリフェノール含量、オレウロペイン含量及び抗糖化力がいずれも高いことが明らかとなった。また、乾燥後に粉砕されたオリーヴ葉より、水、1,3-ブチレングリコールを含有する水、エタノールを含有する水あるいは100%エタノールを抽出溶媒として抽出する場合を比較することで、抽出溶媒として水を使用した場合でも十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量、抗糖化力を得ることができることが明らかとなった。
【0037】
(オリーヴ葉の品種)
表4には、乾燥させた後、粉砕した各品種のオリーヴ葉を、水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の品種として、ミッション(Mission)、ルッカ(Lucca)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、マンザニロ(Manzanillo)を用いた。そして、基本抽出条件として、抽出温度は50−60℃、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とし、各品種より製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0038】
【表4】
【0039】
このように各品種についてのポリフェノール濃度等を測定した結果、ルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)のいずれについても良好な結果を得ることができた。特にルッカ(Lucca)については最も良好な値を得た。コストとの費用対効果の観点から、オリーヴ葉を選択してもよいであろう。
【0040】
(抽出温度)
表5には、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を各温度の水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は30℃から100℃の範囲で段階的に変え、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、各抽出温度で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0041】
【表5】
【0042】
このように各温度で抽出されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度を比較したところ、70℃を越えたところで、総オレウロペイン含量が大幅に増大することが明らかとなった。従って、抽出温度としては70℃以上が最適条件であるといえる。
【0043】
(抽出時間)
表6には、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を各抽出時間の間、水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は50℃から60℃とし、抽出時間を0.5時間から12時間の間で段階的に変更し、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、各抽出時間で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0044】
【表6】
【0045】
このように、0.5時間、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、及び12時間と抽出時間を段階的に変えて抽出したオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を比較した結果、1時間以上であれば、いずれの抽出時間でも、総ポリフェノール、オレウロペイン含量及び抗糖化力について良好な結果が得られることが明らかとなった。
【0046】
(オリーヴ葉の添加葉量)
表7には、乾燥させた後、粉砕した各添加葉量(%)のオリーヴ葉を水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は50℃から60℃とし、抽出時間を5時間とし、添加葉量を抽出溶媒に対して段階的に変更した。そして、各添加葉量で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。尚、生葉換算については、乾燥処理により重量が50から55%になることに鑑みて、乾燥葉重量=生葉×0.5〜0.55とした。
【0047】
【表7】
【0048】
このように、加えるオリーヴ葉の量が多いほうが、総ポリフェノール量が大きく増加していることが確認できた。そして、特に添加葉量が20重量%のとき、添加葉量が10重量%のときと比較してオレウロペイン含量の増加率が非常に高いことが分かった。また、添加葉量が20重量%〜30重量%のときに、オレウロペイン含量及び高糖化力について良好な結果となることが明らかとなった。したがって、添加葉量としては、15重量%以上35重量%以下が最適条件であるといえる。
【0049】
以上より、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法において、高濃度のポリフェノールを含有し抗糖化力についても十分な効果が得られるエキスを得るための最適条件は、次のようになる。
【0050】
・第1条件:抽出媒体
抽出媒体としては、水、アルコール及びこれらの組み合わせを用いることができ、たとえば水、1,3-ブチレングリコール、エタノール及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。水を用いた場合でも、十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量、抗糖化力を得ることができる。
【0051】
・第2条件:オリーヴ葉の品種
オリーヴ葉の品種としては、特に限定されないが、少なくともルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)を用いることができ、特にルッカ(Lucca)は高濃度のポリフェノール含有の観点から最適である。
【0052】
・第3条件:抽出温度
抽出温度は、70℃を越えたところで、総オレウロペイン含量が大幅に増大することが明らかとなり、70℃以上が最適である。
【0053】
・第4条件:抽出時間
抽出時間は、特に限定されないが、1時間以上であれば十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量及び抗糖化力を得ることができる。
【0054】
・第5条件:添加葉量
添加葉量は、特に限定されないが、15重量%〜35重量%のとき、オレウロペイン含量及び抗糖化力について良好な結果を得ることができる。
【0055】
上記第1条件から第5条件の少なくとも1つまたは2つ以上の任意の組み合わせ、あるいはこれらの全てを満たすことにより、ポリフェノール含量、オレウロペイン含量及び抗糖化力が十分に高いオリーヴ葉エキスを製造することができる。
【0056】
(第1実施例)
表8には、前述した第1乃至第5条件下で抽出したオリーヴ葉エキスにおける総ポリフェノール量、オレウロペイン含量及び抗糖化力を示している。即ち、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を用いることを前提とし、オリーヴ葉の使用品種はルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度を70℃から80℃とし、抽出時間を3時間とし、添加葉量を抽出溶媒に対して20重量%とした。かかる条件下で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0057】
【表8】
【0058】
このように、上記条件下では、4種類の品種のいずれについても、総ポリフェノール含量は高い値を示しており、オレウロペイン含量についても、特にルッカ(Lucca)は高い値を示している。抗糖化力については、4種共に良好な値を示している。基本抽出条件で測定した結果を示す表4と比較すると、総ポリフェノール含量、オレウロペイン含量、抗酸化力のいずれについても増加していることから、上記抽出条件による抽出の効果が極めて高いことが明らかとなった。
【0059】
(第2実施例)
第2実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、水で抽出した。使用品種は、ミッション(Mission)、抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表9に示す。
【0060】
【表9】
【0061】
このように、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0062】
(第3実施例)
第3実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、使用品種をルッカ(Lucca)に変えて、乾燥後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、水で抽出した。抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表10に示す。
【0063】
【表10】
【0064】
この場合も、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0065】
(第4実施例)
第4実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、使用品種をルッカ(Lucca)に変えて、乾燥後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、30%1,3-ブチレングリコールで抽出した。抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表11に示す。
【0066】
【表11】
【0067】
この場合も、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0068】
(第5実施例)
第5実施例では、オリーヴ葉のみから得られたオリーヴ葉エキスと、オリーヴ葉及び赤ブドウの皮の混合物から得られたオリーヴ葉エキス(混合エキス)の抗酸化力を測定した。測定の結果、得られたORAC値(μmol TE/g)を表12に示す。
【0069】
【表12】
【0070】
このように、オリーヴ葉エキスに比して、赤ぶどう皮とオリーヴ葉の混合エキスの方が、抗酸化力が格段高いことが確認された。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、高濃度のオレウロペインを含有するオリーヴ葉エキス及びこれを含む医薬、食品および化粧品の製造に利用することができる。
【要約】
【課題】高濃度のオレウロペインを含有したオリーヴ葉エキスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法は、乾燥したオリーヴ葉を粉砕する第1工程と、粉砕したオリーヴ葉から抽出溶媒を用いてオリーヴ葉エキスを抽出する第2工程とを含み、第2工程において、抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであり、かつ70℃以上で抽出するものである。
【選択図】なし