【実施例】
【0029】
(測定方法)
総ポリフェノール含量の測定に際しては、Folin-Ciocalteu法を用いた。これは、フォーリン試薬(フェノール試薬)がフェノール性水酸基により還元されて抵触するのを利用する方法である。また、オレウロペイン含量の測定に際しては、HPLC分析を行った。これは、所謂高速液体クロマトグラフィー法であり、固定相と移動相とからなる系の中、特定の物質を分離する方法である。
【0030】
さらに、抗糖化力の測定に際しては、各サンプルをBSA-フルクトース溶液と反応させて非酵素的糖付加反応-後期反応生成物(AGEs:Advanced Glycation End Products)液とし、AGEs液中のAGEs量を競合法により測定した。
【0031】
さらに、抗酸化力の測定に際しては、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity, 活性酸素吸収能力)を調べた(参考文献=Wu, X. et al., J.Agric.Food Chem.,m 2004, 52, 4026-4037。1μmolのTroloxが示す活性を単位とした)。
【0032】
(オリーヴ葉及び抽出溶媒)
表1〜3には、オリーヴの生葉、蒸し葉及び乾燥葉を、水、1,3−ブチレングリコール溶液、エタノール溶液で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。乾燥葉は、乾燥させた後、粉砕したものを用いた。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出温度は50−60℃、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、水、30%BG(BGはブチレングリコール)、50%BG、80%BG、50%EtOH(EtOHはエタノール)、100%EtOHのそれぞれを用いて抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表1〜3に示すように、生葉及び蒸し葉と比較して、乾燥葉からオリーヴ葉エキスを得た場合に、総ポリフェノール含量、オレウロペイン含量及び抗糖化力がいずれも高いことが明らかとなった。また、乾燥後に粉砕されたオリーヴ葉より、水、1,3-ブチレングリコールを含有する水、エタノールを含有する水あるいは100%エタノールを抽出溶媒として抽出する場合を比較することで、抽出溶媒として水を使用した場合でも十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量、抗糖化力を得ることができることが明らかとなった。
【0037】
(オリーヴ葉の品種)
表4には、乾燥させた後、粉砕した各品種のオリーヴ葉を、水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の品種として、ミッション(Mission)、ルッカ(Lucca)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、マンザニロ(Manzanillo)を用いた。そして、基本抽出条件として、抽出温度は50−60℃、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とし、各品種より製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0038】
【表4】
【0039】
このように各品種についてのポリフェノール濃度等を測定した結果、ルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)のいずれについても良好な結果を得ることができた。特にルッカ(Lucca)については最も良好な値を得た。コストとの費用対効果の観点から、オリーヴ葉を選択してもよいであろう。
【0040】
(抽出温度)
表5には、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を各温度の水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は30℃から100℃の範囲で段階的に変え、抽出時間を5時間、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、各抽出温度で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0041】
【表5】
【0042】
このように各温度で抽出されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度を比較したところ、70℃を越えたところで、総オレウロペイン含量が大幅に増大することが明らかとなった。従って、抽出温度としては70℃以上が最適条件であるといえる。
【0043】
(抽出時間)
表6には、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を各抽出時間の間、水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は50℃から60℃とし、抽出時間を0.5時間から12時間の間で段階的に変更し、添加葉量を抽出溶媒に対して10重量%とした。そして、各抽出時間で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0044】
【表6】
【0045】
このように、0.5時間、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、及び12時間と抽出時間を段階的に変えて抽出したオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を比較した結果、1時間以上であれば、いずれの抽出時間でも、総ポリフェノール、オレウロペイン含量及び抗糖化力について良好な結果が得られることが明らかとなった。
【0046】
(オリーヴ葉の添加葉量)
表7には、乾燥させた後、粉砕した各添加葉量(%)のオリーヴ葉を水で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスのポリフェノール濃度等を示す。ここでは、オリーヴ葉の使用品種をミッション(Mission)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度は50℃から60℃とし、抽出時間を5時間とし、添加葉量を抽出溶媒に対して段階的に変更した。そして、各添加葉量で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。尚、生葉換算については、乾燥処理により重量が50から55%になることに鑑みて、乾燥葉重量=生葉×0.5〜0.55とした。
【0047】
【表7】
【0048】
このように、加えるオリーヴ葉の量が多いほうが、総ポリフェノール量が大きく増加していることが確認できた。そして、特に添加葉量が20重量%のとき、添加葉量が10重量%のときと比較してオレウロペイン含量の増加率が非常に高いことが分かった。また、添加葉量が20重量%〜30重量%のときに、オレウロペイン含量及び高糖化力について良好な結果となることが明らかとなった。したがって、添加葉量としては、15重量%以上35重量%以下が最適条件であるといえる。
【0049】
以上より、本発明のオリーヴ葉エキスの製造方法において、高濃度のポリフェノールを含有し抗糖化力についても十分な効果が得られるエキスを得るための最適条件は、次のようになる。
【0050】
・第1条件:抽出媒体
抽出媒体としては、水、アルコール及びこれらの組み合わせを用いることができ、たとえば水、1,3-ブチレングリコール、エタノール及びこれらの任意の組み合わせを用いることができる。水を用いた場合でも、十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量、抗糖化力を得ることができる。
【0051】
・第2条件:オリーヴ葉の品種
オリーヴ葉の品種としては、特に限定されないが、少なくともルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)を用いることができ、特にルッカ(Lucca)は高濃度のポリフェノール含有の観点から最適である。
【0052】
・第3条件:抽出温度
抽出温度は、70℃を越えたところで、総オレウロペイン含量が大幅に増大することが明らかとなり、70℃以上が最適である。
【0053】
・第4条件:抽出時間
抽出時間は、特に限定されないが、1時間以上であれば十分な総ポリフェノール量、オレウロペイン量及び抗糖化力を得ることができる。
【0054】
・第5条件:添加葉量
添加葉量は、特に限定されないが、15重量%〜35重量%のとき、オレウロペイン含量及び抗糖化力について良好な結果を得ることができる。
【0055】
上記第1条件から第5条件の少なくとも1つまたは2つ以上の任意の組み合わせ、あるいはこれらの全てを満たすことにより、ポリフェノール含量、オレウロペイン含量及び抗糖化力が十分に高いオリーヴ葉エキスを製造することができる。
【0056】
(第1実施例)
表8には、前述した第1乃至第5条件下で抽出したオリーヴ葉エキスにおける総ポリフェノール量、オレウロペイン含量及び抗糖化力を示している。即ち、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉を用いることを前提とし、オリーヴ葉の使用品種はルッカ(Lucca)、ミッション(Mission)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo Blanco)、あるいはマンザニロ(Manzanillo)とし、抽出溶媒を水とし、抽出温度を70℃から80℃とし、抽出時間を3時間とし、添加葉量を抽出溶媒に対して20重量%とした。かかる条件下で抽出して製造されたオリーヴ葉エキスの総ポリフェノール含量(mg/100g)、オレウロペイン含量(mg/100g)、抗糖化力(IC50)を測定した。
【0057】
【表8】
【0058】
このように、上記条件下では、4種類の品種のいずれについても、総ポリフェノール含量は高い値を示しており、オレウロペイン含量についても、特にルッカ(Lucca)は高い値を示している。抗糖化力については、4種共に良好な値を示している。基本抽出条件で測定した結果を示す表4と比較すると、総ポリフェノール含量、オレウロペイン含量、抗酸化力のいずれについても増加していることから、上記抽出条件による抽出の効果が極めて高いことが明らかとなった。
【0059】
(第2実施例)
第2実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、乾燥させた後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、水で抽出した。使用品種は、ミッション(Mission)、抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表9に示す。
【0060】
【表9】
【0061】
このように、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0062】
(第3実施例)
第3実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、使用品種をルッカ(Lucca)に変えて、乾燥後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、水で抽出した。抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表10に示す。
【0063】
【表10】
【0064】
この場合も、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0065】
(第4実施例)
第4実施例では、前述した第1乃至第5条件を抽出条件として、使用品種をルッカ(Lucca)に変えて、乾燥後、粉砕したオリーヴ葉に赤ブドウの皮を混ぜて、30%1,3-ブチレングリコールで抽出した。抽出温度は70から80℃、抽出時間は3時間、添加葉量は抽出媒体に対して20重量%、添加ぶどう皮量は抽出媒体に対して10重量%とした。その結果を表11に示す。
【0066】
【表11】
【0067】
この場合も、単純にオリーヴ葉から抽出されるポリフェノールの理論値と果実としてのブドウの皮から抽出されるポリフェノールの理論値の和を超えるポリフェノールを含有したオリーヴ葉エキスの抽出が確認された。
【0068】
(第5実施例)
第5実施例では、オリーヴ葉のみから得られたオリーヴ葉エキスと、オリーヴ葉及び赤ブドウの皮の混合物から得られたオリーヴ葉エキス(混合エキス)の抗酸化力を測定した。測定の結果、得られたORAC値(μmol TE/g)を表12に示す。
【0069】
【表12】
【0070】
このように、オリーヴ葉エキスに比して、赤ぶどう皮とオリーヴ葉の混合エキスの方が、抗酸化力が格段高いことが確認された。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。