(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変更後の前記第1関数は、変更前の前記第1関数に比べて、前記改装の前後において、前記ガスタービンに定格出力よりも小さい出力で部分負荷運転を行わせたときの前記開度設定値が小さくなるように設定される請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のガスタービンの運転制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ガスタービンの出力及び効率を向上させるため、タービンに供給される冷却用空気の供給量を減少させ、燃焼器に供給する圧縮空気の供給量を増加させる改装(アップグレード)を行うことが提案されている。また、この改装を行う場合、タービンに設けられる動翼や静翼等の部品を、供給量が減少した冷却用空気であっても冷却可能なものに交換することが行われる。
【0006】
しかしながら、改装後のガスタービンは、改装前に比べて出力及び効率が向上しているため、例えば同一のガスタービン出力(又は圧力比)におけるタービン入口温度が低下する。また、改装の前後でタービンの部品が異なっているため、ガスタービンの運転条件に影響を及ぼす可能性がある。このように、上記の改装を行うことにより、改装の前後において、ガスタービンの運転条件にずれが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制できるガスタービンの運転制御方法、改装方法、及びガスタービン制御装置の設定変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスタービンの運転制御方法は、空気供給ラインから供給される空気を圧縮する圧縮機と、燃料が供給され前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で生じた燃焼ガスにより回転するタービンと、前記圧縮空気の一部を前記タービンの冷却用空気として前記タービンに供給する冷却用空気供給部と、前記空気供給ラインに設けられ、前記圧縮機に供給される空気量を調整する吸気弁とを備えるガスタービンの運転制御方法であって、前記ガスタービンの出力を測定した結果である出力測定値と、前記出力測定値と前記吸気弁の開度設定値との関係を規定する第1関数と、に基づいて前記出力測定値に対する前記開度設定値を算出するステップと、算出された前記開度設定値に基づいて前記吸気弁の開度を調整するステップと、前記タービンに供給される前記冷却用空気の供給量を低減しかつ前記タービンに設けられる部品を前記冷却用空気の供給量に応じた部品に交換する改装が行われた場合に、前記改装後の前記冷却用空気の供給量及び交換された前記部品に応じて前記第1関数を変更するステップとを含む。
【0009】
従って、第1関数が改装後の冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じたものに変更されるため、改装の内容に応じて吸気弁の開度設定値が適切に算出される。これにより、タービン入口温度が改装の前後でずれることを抑制でき、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制できる。
【0010】
本発明のガスタービンの運転制御方法は、前記圧縮機の圧力比と、前記圧力比と前記タービンから排出される排ガスについて予め設定された設定温度との関係を規定した第2関数と、に基づいて、前記圧力比に対する前記設定温度を求めるステップと、前記改装が行われた場合に、前記圧力比の上昇に伴い生ずる熱膨張による排ガス温度の低下の増加量に相当する第1の補正値と前記冷却用空気の供給量の低減に伴い生ずる排ガス温度の上昇の増加量に相当する第2の補正値から算出される前記第2関数に変更するステップとをさらに含む。
【0011】
従って、第2関数が改装後の冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じたものに変更されるため、適切な排ガスの設定温度を求めることができる。これにより、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制できる。
【0012】
本発明のガスタービンの運転制御方法は、前記第2関数に基づいて算出された前記設定温度に基づいて、前記第1関数に基づいて算出された前記開度設定値を補正するステップをさらに含む。
【0013】
従って、改装が行われた後には適切な設定温度に基づいて開度設定値が補正されるため、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることをより確実に抑制できる。
【0014】
本発明のガスタービンの運転制御方法において、前記ガスタービンは、前記燃焼器に前記燃料を供給する複数の燃料供給ラインを有し、前記空気供給ラインから供給される前記空気の温度を測定した結果である吸気温度と、前記吸気温度と前記ガスタービンの出力との関係を規定する第3関数と、に基づいてタービン入口温度に対応する制御変数を算出し、算出した前記制御変数に基づいて、複数の前記燃料供給ラインに対する燃料供給量の配分比を設定するステップとをさらに含む。
【0015】
従って、改装が行われた後には、冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じて変更された関数に基づいて算出された算出値によって制御変数が算出されるため、複数の燃料供給ラインに対する燃料供給量の配分比をより適切に設定することができる。
【0016】
本発明のガスタービンの運転制御方法は、前記改装が行われた場合に、前記改装後の前記冷却用空気の供給量及び交換された前記部品に応じて前記第3関数を変更するステップをさらに含む。
【0017】
従って、改装が行われた後にはより適切な制御変数が算出されるため、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることをより確実に抑制できる。
【0018】
本発明のガスタービンの運転制御方法において、変更後の前記第1関数は、前記改装の前後において、前記ガスタービンに定格出力よりも小さい出力で部分負荷運転を行わせたときのタービン入口温度が同一となるように設定される。
【0019】
従って、部分負荷運転を行う場合においても、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを確実に抑制できる。
【0020】
本発明のガスタービンの運転制御方法において、前記部品は、前記タービンに設けられる複数の動翼及び複数の静翼のうち少なくとも一つを含む。
【0021】
従って、動翼及び静翼のうち少なくとも1つを交換した場合において、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを確実に抑制できる。
【0022】
本発明に係るガスタービンの改装方法は、空気供給ラインから供給される空気を圧縮する圧縮機と、燃料が供給され前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で生じた燃焼ガスにより回転するタービンと、前記圧縮空気の一部を前記タービンの冷却用空気として前記タービンに供給する冷却用空気供給部と、前記空気供給ラインに設けられ、前記圧縮機に供給される空気量を調整する吸気弁と、ガスタービン出力を測定した結果である出力測定値と、前記出力測定値と前記吸気弁の開度設定値との関係を規定する第1関数と、に基づいて前記出力測定値に対する前記開度設定値を算出し、算出された前記開度設定値に基づいて前記吸気弁の開度を調整する制御装置とを備えるガスタービンの改装方法であって、前記タービンに供給される前記冷却用空気の供給量を低減しかつ前記タービンに設けられる少なくとも一部の部品を前記冷却用空気の供給量に応じた部品に交換する改装を行うことと、前記改装後の前記冷却用空気の供給量及び交換された前記部品に応じて前記第1関数を変更することと、を含む。
【0023】
従って、改装を行った後、冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じて第1関数を変更することにより、改装の内容に応じて吸気弁の開度設定値が適切に算出される。これにより、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制でき、かつ改装を効率的に行うことができる。
【0024】
本発明に係るガスタービン制御装置の設定変更方法は、空気供給ラインから供給される空気を圧縮する圧縮機と、燃料が供給され前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器で生じた燃焼ガスにより回転するタービンと、前記圧縮空気の一部を前記タービンの冷却用空気として前記タービンに供給する冷却用空気供給部と、前記空気供給ラインに設けられ、前記圧縮機に供給される空気量を調整する吸気弁とを備えるガスタービンを制御するものであり、前記ガスタービンの出力を測定した結果である出力測定値と、前記出力測定値と前記吸気弁の開度設定値との関係を規定する第1関数と、に基づいて前記出力測定値に対する前記開度設定値を算出し、算出された前記開度設定値に基づいて前記吸気弁の開度を調整するガスタービン制御装置の設定変更方法であって、前記タービンに供給される前記冷却用空気の供給量を低減しかつ前記タービンに設けられる少なくとも一部の部品を前記冷却用空気の供給量に応じた部品に交換する改装が行われた場合に、前記改装後の前記冷却用空気の供給量及び交換された前記部品に応じて前記第1関数を変更することを含む。
【0025】
従って、改装を行った後、冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じて第1関数を変更することにより、改装の内容に応じて吸気弁の開度設定値が適切に算出される。これにより、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制でき、かつ、ガスタービン制御装置の設定変更を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせることも可能である。
【0029】
図1は、本実施形態に係るガスタービンを表す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とを備えている。圧縮機11、燃焼器12およびタービン13の中心部には、ロータ18が貫通して配置され、圧縮機11とタービン13とは、ロータ18により一体回転可能に連結されている。このガスタービン1は、制御装置14によって制御されている。また、ガスタービン1には、発電機15が連結されており、発電可能となっている。また、ガスタービン1は、圧縮機11からタービン13に冷却用空気を供給する冷却用空気供給ライン19を有する。冷却用空気供給ライン19には、冷却用空気制御弁20が設けられている。
【0030】
圧縮機11は、空気取入口から取り込んだ空気Aを圧縮して圧縮空気A1とする。この圧縮機11には、空気取入口から取り込む空気Aの吸気量を調整する入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane:吸気弁)22が配置される。入口案内翼22は、その開度が調整されることで、空気Aの吸気量が調整される。具体的に、入口案内翼22は、複数の翼本体22aと、複数の翼本体22aの翼角度を変更するためのIGV作動部22bとを有し、IGV作動部22bにより翼本体22aの翼角度が調整されることで、入口案内翼22の開度が調整され、空気Aの吸気量を調整する。入口案内翼22は、その開度が大きくなると、空気Aの吸気量が多くなり、圧縮機11の圧力比が増加する。一方で、入口案内翼22は、その開度が小さくなることで、空気Aの吸気量が少なくなり、圧縮機11の圧力比が低下する。
【0031】
燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気A1に対して燃料Fを供給し、圧縮空気A1と燃料Fとを混合して燃焼することで、燃焼ガスを生成する。タービン13は、燃焼器12で生成された燃焼ガスによって回転する。
図2は、ガスタービン1のうちタービン13の一部の構成を模式的に示す図である。
図2に示すように、タービン13は、ロータ18と、複数段の静翼25と、複数段の動翼26とを有している。各段の静翼25は、ケーシング28に取り付けられている。各段の動翼26は、ロータ18の外周に固定されている。複数段の静翼25と複数段の動翼26とは、ロータ18の軸方向に交互に設けられている。また、ケーシング28には、分割環27が設けられている。分割環27は、動翼26に対して径方向の外側に離間して設けられている。静翼25及び分割環27は、ロータ18の軸方向に離間して配置されている。
【0032】
ロータ18は、軸方向の両端部が図示しない軸受部により回転自在に支持されており、軸心を中心として回転自在に設けられている。そして、ロータ18の圧縮機11側の端部には、発電機15の駆動軸が連結されている。発電機15は、タービン13と同軸上に設けられ、タービン13が回転することで発電することができる。
【0033】
従って、圧縮機11の空気取入口から取り込まれた空気Aは、入口案内翼22を経て圧縮機11の内部を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気A1となる。この圧縮空気A1に対して燃焼器12から燃料Fが供給され、圧縮空気A1と燃料Fとが混合され燃焼することで、高温・高圧の燃焼ガスが生成される。そして、燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13の内部を通過することにより、タービン13を作動(回転)させてロータ18を駆動回転し、このロータ18に連結された発電機15を駆動する。これにより、ロータ18に連結された発電機15は、回転駆動されることで発電を行う。一方、タービン13を駆動した燃焼ガスは、排ガスとして熱を回収し、大気に放出される。
【0034】
このガスタービン1においては、出力及び効率を向上させるため、タービン13に供給される冷却用空気の供給量を低減させ、燃焼器12に供給する圧縮空気の供給量を増加させる改装(アップグレード)が行われることがある。この改装を行う場合、タービン13に設けられる動翼や静翼等の部品を、供給量が減少した冷却用空気であっても冷却可能なものに交換することが行われる。
【0035】
上記のガスタービン1の改装では、例えば静翼25、動翼26及び分割環27等、タービン13を構成する部品を交換する場合がある。本実施形態では、ガスタービン1の改装を行う場合、タービン13を構成する部品のうち、第1段及び第2段の静翼25と、第1段及び第2段の動翼26とを新たな部品に交換する場合を例に挙げて説明する。なお、部品の交換対象については、これに限定するものではなく、他の組み合わせで部品を交換してもよい。
【0036】
また、
図1に示すように、上記ガスタービン1には、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、排ガス温度計54及び流量計55が設けられている。車室圧力計51は、圧縮機11から燃焼器12に向けて圧縮空気A1が流通するラインに設けられ、具体的に、燃焼器12の車室内部に設けられ、圧縮空気A1の圧力(車室圧力)を計測する。吸気状態検出器52は、圧縮機11に取り込まれる空気Aの吸気温度と吸気圧力とを検出する。ブレードパス温度計53は、タービン13から排出される排ガスが流通するラインに設けられ、タービン13の排ガスの流れ方向の下流側に設けられる最終段のブレードを通過した排ガスの温度を計測する。排ガス温度計54は、ブレードパス温度計53の下流側に設けられ、排ガスの温度を計測する。流量計55は、冷却用空気供給ライン19を流れる冷却用空気の流量を計測する。さらに、ガスタービン1には、ガスタービン1の出力(負荷)を検出するための出力計56が設けられている。そして、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、排ガス温度計54、流量計55及び出力計56により計測された信号が、制御装置14に入力される。
【0037】
制御装置14は、制御部61と、記憶部62と、変更部63とを有している。制御部61は、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、排ガス温度計54及び流量計55等の計測結果に基づいて、入口案内翼22及び燃料調整弁35等を制御して、ガスタービン1の運転を制御する。また、制御部61は、ガスタービン1の出力(発電機15の出力)に応じて、ガスタービン1の運転を制御する。また、制御部61は、ガスタービン1に対して部分負荷運転と、全負荷運転とを行わせる。全負荷運転は、ガスタービン1の出力が定格出力となる運転である。部分負荷運転は、ガスタービン1の出力が定格出力よりも小さい出力となる運転である。
【0038】
また、制御部61は、燃料Fの供給量を調整すべく、燃焼器12へ向けて燃料Fを供給する燃料供給ライン34に設けられる燃料調整弁35を制御する燃料制御を実行している。燃料供給ライン34は、例えばメイン燃料供給ライン、パイロット燃料供給ライン、トップハット燃料供給ライン等の複数の供給ラインを有している。燃料調整弁35は、複数の供給ラインのそれぞれに設けられており、個別に開度を制御可能である。制御部61は、燃料調整弁35を制御することで、圧縮空気A1に対して供給(噴射)する燃料Fの供給量及びその配分を調整する。
【0039】
図3は、制御部61の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部61は、排ガス温度制御部71と、燃焼制御部72と、IGV制御部73と、燃焼負荷制御部74とを有している。
【0040】
排ガス温度制御部71は、タービン入口温度が、所定温度を維持するように排ガス温度と圧力比の関係を設定する。排ガス温度制御部71は、ブレードパス温度制御部75と、温度リミット制御部76とを有している。ブレードパス温度制御部75には、ブレードパス温度計53によって計測されたブレードパス温度が入力される。ブレードパス温度制御部75は、ブレードパス温度に基づいてブレードパス温度設定値を生成し、後述の低値選択部80に出力する。
【0041】
温度リミット制御部76には、車室圧力計51によって計測された圧縮機11の車室内部の圧力(車室圧力)と、吸気状態検出器52によって計測された吸気圧力と、排ガス温度計54によって測定された排ガス温度の測定値と、が入力される。温度リミット制御部76は、入力値に基づいて、排ガス温度設定値を出力する。
【0042】
図4は、温度リミット制御部76の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、温度リミット制御部76は、制御器76aと、減算器76bと、PI制御器76cとを有している。制御器76aには、排ガス温度設定値を算出するための圧力比が入力される。圧力比は、車室圧力と吸気圧力との比(車室圧力/吸気圧力)である。制御器76aに入力される圧力比の値は、排ガス温度設定値を算出するために目標値として設定された値である。制御器76aは、入力された圧力比と、設定温度算出関数(第2関数)とに基づいて、入力された圧力比に対する排ガスの設定温度(以下、排ガス設定温度、と表記する)を算出し、減算器76bに出力する。なお、設定温度算出関数については、後述する。また、制御器76aは、算出した排ガス設定温度を、後述のIGV制御部73に設けられる減算器73gに出力する。
【0043】
ここで、設定温度算出関数について説明する。
図5は、圧力比と排ガス設定温度との関係を示すグラフである。
図5は、横軸が圧力比を示し、縦軸が排ガス温度を示している。
図5に示すように、設定温度算出関数は、圧力比と排ガス設定温度との関係を規定するものであり、例えば定格温調ラインT1、T2として示されている。定格温調ラインT1、T2は、所定の圧力比に対して、タービン入口温度が定格値に達した場合にガスタービン1が定格性能が得られるように設定された排ガスの温度を示すラインである。なお、定格性能とは、発電機15からガスタービン1に所定の負荷が与えられたときに、ガスタービン1の仕事効率が最適となる性能である。また、定格温調ラインT1、T2は、タービン入口温度が予め設定された上限温度を超えないように設定されている。定格温調ラインT1、T2に示されるように、排ガス設定温度は、圧力比が大きくなるにつれて低下している。
【0044】
また、
図5の点Aから点Eは、ガスタービン1の運転ライン上の点を示している。点Aは、ガスタービン1に負荷を投入するときの圧力比及び排ガス温度を示している。点Bは、入口案内翼22を開き始めるときの圧力比及び排ガス温度を示している。点Bから点Cまでの間は、入口案内翼の開度が増加する過程で、圧力比の増加に対して排ガス温度が一定となる制御区間である。点Cから点Dまでの間は、入口案内翼22の開度を増加させる区間であり、点Dで入口案内翼22が全開となる。点Eは、点Dからガスタービン1の負荷を100%に向けて上げることにより、運転ラインが定格温調ラインに達した場合の圧力比及び排ガス温度である。ガスタービン1は、全負荷運転を行う場合、タービン入口温度が上限温度付近に達するべく、排ガス温度が定格温調ライン付近となるようにガスタービンの運転が制御される。また、ガスタービン1は、部分負荷運転においては、負荷変動に対するガスタービン出力の応答性を確保すべく、例えば排ガス温度が定格温調ラインの上限温度によって制限されないように、定格温調ラインよりも低い排ガス温度となるように制御される。このため、部分負荷運転では、全負荷運転に比べてタービン入口温度が低くなる。
【0045】
なお、
図5において破線で示される定格温調ラインT1は、ガスタービン1の改装を行う前の構成に対して用いられる設定温度算出関数の例を示している。また、
図5において実線で示される定格温調ラインT2は、ガスタービン1の改装を行った後の構成に対して用いられる設定温度算出関数の例を示している。ガスタービン1の改装により、冷却用空気の供給量が減少し、車室29内の圧力比が増加する。このため、改装後の定格温調ラインT2は、改装前の定格温調ラインT1に比べて、点Eにおける圧力比及び排ガス設定温度が上昇している。この排ガス設定温度の上昇分は、定格温調ラインT1に対して圧力比を上昇させた場合において、冷却用空気の供給量減少による排ガス設定温度の上昇分と、圧力比の上昇による排ガス設定温度の低下分との和(温調バイアス変化量)として求めることができる。
【0046】
温調バイアス変化量の具体的な算出方法について、
図6を用いて以下に説明する。
図6は、定格温調ラインの排ガス設定温度と圧力比の関係を示す図であり、ガスタービン1の改装前の定格温調ラインT1と改装後の定格温調ラインT2を比較して示している。横軸は、圧力比を示し、縦軸は排ガス設定温度を示す。ここで、温調バイアス変化量とは、ガスタービン1の改装の結果、改装前の定格温調ラインT1が定格温調ラインT2に変化した場合、同一の圧力比に対する排ガス温度の変化量Xを意味する。
図6において、改装前の定格温調ラインT1上の運転点をP1とし、改装後の運転点がP2に移動したものと考える。運転点P1における圧力比をPR1、排ガス設定温度をt1とし、運転点P2における圧力比をPR2とする。また、圧力比PR2における定格温調ラインT1上の点をP4とし、排ガス設定温度をt3とする。圧力比PR2及び排ガス設定温度t1で定まる点をP3とする。
【0047】
定格温調ラインは、タービン入口温度が一定であることを条件として、排ガス設定温度と圧力比の関係を表示するものであり、排ガス温度を監視することにより、タービン入口温度を管理することを目的としている。一般的に、ガスタービン1は、タービン13において燃焼ガスが車室圧から大気圧まで熱膨張する過程で、熱膨張により燃焼ガス温度が低下する。すなわち、定格温調ラインは、タービン入口温度が一定の条件下で、圧力比の増加ともに排ガス設定温度が低下する右下がりのラインとなる。
【0048】
前述したように、ガスタービン1を改装した場合、冷却用空気の供給量が減少することにより、車室2内の圧力比が上昇する。従って、車室2内の圧力比が高ければ、熱膨張による排ガス温度が低下する割合は大きくなる。
図6において、ガスタービン1の改装により、ガスタービン1の運転点は、改装前の定格温調ラインT1上の運転点P1(圧力比PR1)から、改装後の定格温調ラインT2上の運転点P2(圧力比PR2)に移動するものと考えることができる。前述した点P2、P3、P4は、いずれも圧力比PR2上の点であり、線分P2P4上に点P3も存在する。
【0049】
図6に示すように、ガスタービン1の改装により、便宜上、改装前の運転点P1は、改装により圧力比が増加して、点P4に移動し、点P4から運転点P2に移動する過程で、温調バイアス変化量Xに相当する排ガス温度の増加があり、運転点P2に達すると考えることができる。
【0050】
温調バイアス変化量Xは、圧力比をPR2とした場合、線分P2P4で示される。ここで、線分P2P4を、線分P3P4と線分P2P3に区分けし、それぞれの線分を変数X1、X2と定めれば、温調バイアス変化量Xは、式〔X=X1+X2〕で算出できる。すなわち、ガスタービン1の改装により、運転点がP1からP2に変わる過程における温調バイアス変化量Xは、便宜上、燃焼ガスの圧力比が増加して、排ガス温度が低下する過程で生ずる温度低下の増加分に相当する変数X1と、冷却用空気の供給量の減少に伴い排ガス温度が低下する過程に生ずる温度低下の増加分に相当する変数X2、に区分けして説明できる。
【0051】
ガスタービン1の改装により、車室2内の圧力比がPR1からPR2に増加した場合、タービン13での熱膨張により、排ガスの温度低下が改装前より大きくなる。変数X1は、圧力比の増加に伴う排ガス温度の低下の増加分に相当する。すなわち、
図6において、車室2内の圧力比が改装前のPR1から改装後のPR2に増加した場合、タービン13での燃焼ガスの熱膨張により、排ガス温度は、改装前の排ガス設定温度t1からt3に低下する。変数X1は、排ガス温度が低下する温度低下の増加量であり、排ガス温度t3を改装前の排ガス温度t1に戻すための補正量に相当する。点P3と点P4の温度差X1は、式〔X1=t1−t3〕で算出される。
【0052】
次に、冷却用空気の供給量の減少に対応する変数X2について説明する。ガスタービン1の改装により、タービン13を構成する部品に供給される冷却空気の供給量が低下するため、各部品から燃焼ガス流路に排出される冷却空気量が減少し、燃焼ガス流路を流れる燃焼ガスの温度が改装前の燃焼ガス温度より上昇する。更に、その下流側の部品が改装された場合、この部品から排出される冷却空気量が低下して、その下流側の部品の下流側の燃焼ガス温度が改装前より更に上昇する。このような手順を繰り返して、最終的にタービン13から排出される排ガス温度が、改装前より上昇する。改装による冷却用空気の供給量の低減に伴い燃焼ガス温度が上昇する過程は、線分P2P3で表示され、変数X2に相当する補正量と捉えることができる。
【0053】
運転点が、点P1から点P4を経て点P3に移動する圧力比の増加に伴う熱膨張による排ガス温度が低下する過程と、点P3から点P2に至る冷却用空気の供給量の低減に伴う排ガス温度が増加する過程は、同時並行で進行するため、実際の運転点の変化は、点P1から点P2への変化として捉えられる。従って、ガスタービン1の改装により、運転点がP1からP2に移動した場合、定格温調ラインT1を定格温調ラインT2に修正する場合の補正量は、温調バイアス変化量X、すなわち、変数X1に相当する圧力比の増加に伴う排ガス温度の低下の増加量である補正量(第1補正値)と、変数X2に相当する冷却用空気の供給量の低下に伴う排ガス温度の上昇の増加量である補正量(第2補正値)を加算した補正量と考えることができる。
【0054】
したがって、定格温調ラインT2は、定格温調ラインT1において圧力比を上昇させ、温調バイアス変化量を加算した状態のラインとなっており、定格温調ラインT1を図中右上に平行移動させたラインとなっている。なお、設定温度算出関数については、
図5に示された定格温調ラインT1、T2の他、改装後の冷却用空気の供給量に応じて、また、改装において交換される静翼25、動翼26及び分割環27の部位及び種類に応じて、複数パターンの関数が設定されている。これら複数パターンの関数は、例えばデータテーブルとして記憶部62に記憶されてもよいし、外部の記憶部装置に記憶されてもよい。制御器76aは、これらのデータテーブルの中から1つの関数が用いられるように設定される。
【0055】
また、
図4に示すように、減算器76bには、排ガス温度の測定値と、排ガス設定温度とが入力される。減算器76bは、排ガス温度と排ガス設定温度との偏差△を生成し、PI制御器76cに出力する。PI制御器76cには、偏差△が入力される。PI制御器76cは、偏差△がゼロとなるような排ガス温度設定値を出力する。したがって、温度リミット制御部76は、部分負荷運転または全負荷運転の静定時において、排ガス温度計54により計測された排ガス温度(排ガス計測温度)が、定格温調ラインT1、T2で示される設定温度となるように、ガスタービン1の運転をフィードバック制御している。
【0056】
また、
図3に示すように、燃焼制御部72は、ロードリミット制御部77と、ガバナ制御部78と、燃料リミット制御部79と、低値選択部80とを有している。ロードリミット制御部77は、ガスタービン1の実出力値としてのガスタービン出力が入力される。ロードリミット制御部77は、ガスタービン出力が所定の値となるように、燃焼器12に供給される燃料Fの供給量(燃料流量)を指令する燃料指令値を生成する。また、ロードリミット制御部77は、生成した燃料指令値を低値選択部80へ向けて出力する。
【0057】
ガバナ制御部78は、ガスタービン出力と、ロータ18の回転速度とが入力される。ガバナ制御部78は、ロータ18の回転速度が予め設定された設定回転速度となるように、ガスタービン出力及びロータ18の回転速度に基づいて、燃料指令値を生成する。また、ガバナ制御部78は、生成した燃料指令値を、低値選択部80へ向けて出力する。
【0058】
燃料リミット制御部79は、ガスタービン出力と、ロータ18の回転速度と、車室圧力とが入力される。燃料リミット制御部79は、燃焼器12への燃料Fの供給量が、予め設定された制限供給量を超えないように、ガスタービン出力、ロータ18の回転速度及び車室圧力に基づいて、燃料指令値を生成する。また、燃料リミット制御部79は、生成した燃料指令値を、低値選択部80へ向けて出力する。
【0059】
低値選択部80は、上記のブレードパス温度制御部75、温度リミット制御部76、ロードリミット制御部77、ガバナ制御部78及び燃料リミット制御部79から入力された燃料指令値のうち、最も低い値となる燃料指令値を選択する。そして、低値選択部80は、選択された低値となる燃料指令値を、後述の燃料配分制御部82へ向けて出力する。
【0060】
IGV制御部73は、温度リミット制御部76で生成される排ガス設定温度が入力される。また、IGV制御部73は、車室圧力と、ブレードパス温度と、排ガス温度と、ガスタービン出力と、吸気温度とが入力される。IGV制御部73は、これらの入力値に基づいて、入口案内翼22の開度を制御するIGV開度指令値を生成する。そして、IGV制御部73は、生成されたIGV開度指令値を、IGV作動部22bへ向けて出力する。
【0061】
図7は、IGV制御部73の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、IGV制御部73は、制御器73aと、加算器73bと、制御器73cと、制御器73dと、加算器73eと、高値選択部73fと、減算器73gと、PI制御器73hと、加算器73iとを有している。
【0062】
制御器73aには、吸気温度が入力される。制御器73aは、吸気温度に基づいてガスタービン出力を補正するための補正値を生成し、加算器73bに出力する。加算器73bには、ガスタービン出力と、制御器73aから出力された補正値とが入力される。加算器73bは、ガスタービン出力と補正値とを加算して補正後のガスタービン出力を算出し、制御器73cに出力する。
【0063】
制御器73cには、加算器73bから出力されたガスタービン出力が入力される。制御器73cは、ガスタービン出力と、IGV開度算出関数(第1関数)とに基づいて、入力されたガスタービン出力に対するIGV開度設定値を算出し、加算器73iに出力する。
【0064】
ここで、IGV開度算出関数について説明する。
図8は、ガスタービン出力とIGV開度設定値との関係を示すグラフである。
図8は、横軸がガスタービン出力を示し、縦軸がIGV開度設定値を示している。
図8に示すように、IGV開度算出関数は、ガスタービン出力とIGV開度設定値との関係を規定するものであり、曲線L1、L2によって表される。曲線L1、L2が示すように、IGV開度は、ガスタービン出力が出力P1、P2よりも大きくなるにつれて増加し、出力P3、P4に到達した後、一定となる。なお、曲線L1、L2は、
図8に示した態様に限定されるものではなく、例えばガスタービン出力が大きくなる過程でIGV開度設定値が減少する期間を含んでもよい。
【0065】
なお、
図8において破線で示される曲線L1は、ガスタービン1の改装を行う前の構成に対して用いられるIGV開度算出関数の例を示している。また、
図8において実線で示される曲線L2は、ガスタービン1に対して所定の改装を行った後の構成に対して用いられるIGV開度算出関数の例を示している。改装後の曲線L2は、ガスタービン出力が出力P1から出力P4の間では、改装前の曲線L1に比べて、同一のガスタービン出力に対するIGV開度が小さくなっている。なお、IGV開度算出関数については、
図8に示された曲線L1、L2の他、改装後の冷却用空気の供給量に応じて、また、改装において交換される静翼25、動翼26及び分割環27の部位及び種類に応じて、複数パターンの関数が設定されている。これら複数パターンの関数は、例えばデータテーブルとして記憶部62に記憶されてもよいし、外部の記憶部装置に記憶されてもよい。制御器73cは、これらのデータテーブルの中から1つの関数が用いられるように設定される。
【0066】
また、
図7に示すように、制御器73dには、車室圧力が入力される。制御器73dは、入力された車室圧力に基づいてブレードパス温度のバイアス値を算出し、加算器73eに出力する。このバイアス値は、ブレードパス温度計53によって測定されたブレードパス温度の測定値を補正する値である。
【0067】
加算器73eには、ブレードパス温度計53によって測定されたブレードパス温度の測定値と、制御器73dから出力されたバイアス値とが入力される。加算器73eは、ブレードパス温度の測定値とバイアス値とを加算してブレードパス温度を算出し、高値選択部73fに出力する。
【0068】
高値選択部73fには、排ガス温度計54によって測定された排ガス温度と、加算器73eから出力されたブレードパス温度とが入力される。高値選択部73fは、入力された排ガス温度及びブレードパス温度のうち高い方の値(温度)を選択し、減算器73gに出力する。
【0069】
減算器73gには、温度リミット制御部76の制御器76aから出力された排ガス設定温度と、高値選択部73fから出力された温度とが入力される。減算器73gは、高値選択部73fから出力された温度と排ガス設定温度との偏差△を生成し、PI制御器73hに出力する。PI制御器73hには、偏差△が入力される。PI制御器73hは、偏差△がゼロとなるようなIGV開度設定値の補正値を算出し、加算器73iに出力する。
【0070】
加算器73iには、制御器73cから出力されたIGV開度設定値と、PI制御器73hから出力されたIGV開度設定値の補正値とが入力される。加算器73iは、入力されたIGV開度設定値と補正値とを加算して補正後のIGV開度設定値を算出し、IGV作動部22bと、後述の制御変数生成部81とに出力する。
【0071】
続いて、
図3に示すように、燃焼負荷制御部74は、例えば複数の燃料供給ライン34に供給する燃料の比率を制御する。燃焼負荷制御部74は、制御変数生成部81と、燃料配分制御部82とを有している。
【0072】
制御変数生成部81には、ガスタービン出力と、吸気温度と、IGV開度設定値と、吸気圧力とが入力される。制御変数生成部81は、入力値に基づいてタービン入口温度に相当する制御変数を生成し、燃料配分制御部82に出力する。当該制御変数は、複数の燃料供給ライン34のそれぞれに設けられた燃焼制御弁35の開度指令値を算出するための値である。制御変数は、燃焼器12からタービン13に流入する燃焼ガスの温度(タービン入口温度:T1T)を無次元化した値であり、タービン入口温度に対応した値である。
【0073】
ここで、制御変数を算出する手順を説明する。以下の説明では、タービン入口温度が、無負荷運転の場合の第1基準温度Taである場合に対応する制御変数を0%とし、タービン入口温度が第1基準温度Taよりも高温の第2基準温度Tbである場合の制御変数を100%とする。なお、第1基準温度Taとしては、例えば700℃程度に設定することができる。また、第2基準温度Tbとしては、例えば1500℃程度に設定することができる。なお、第1基準温度Ta及び第2基準温度Tbの設定値については、上記に限定するものではなく、例えばガスタービン1毎に異なる値に設定することができる。
【0074】
制御変数(CLCSOと表記)は、以下の式1で表すことができる。
【0075】
CLCSO=100×(ガスタービン出力−Pa)/(Pb−Pa) …(式1)
但し、Paは第1基準温度Taにおけるガスタービン出力であり、Pbは第2基準温度Tbにおけるガスタービン出力である。
【0076】
図9は、制御変数生成部81の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、制御変数生成部81は、制御器81aと、制御器81bと、除算器81cと、乗算器81dと、乗算器81eと、減算器81fと、減算器81gと、除算器81hとを有している。
【0077】
制御器81a及び81bには、吸気温度とIGV開度設定値とが入力される。制御器81aは、吸気温度及びIGV開度設定値と、出力算出関数とに基づいてPaの値を算出し、乗算器81dに出力する。また、制御器81bは、吸気温度及びIGV開度設定値と、出力算出関数とに基づいてPbの値を算出し、乗算器81eに出力する。
【0078】
ガスタービン出力とCLCSOとの関係は、IGV開度及び圧縮機11の吸気温度等によって異なる。つまり、ガスタービン出力が同一の場合、CLCSOの値はIGV開度が大きくなるに従って小さくなる。また、ガスタービン出力が同一の場合、CLCSOの値は圧縮機11の吸気温度が高くなるに従って大きくなる。このため、制御器81a、81bは、吸気温度毎、及びIGV開度設定値毎にPa及びPbの値を算出する。
【0079】
ここで、出力算出関数について説明する。
図10は、吸気温度とガスタービン出力との関係を示すグラフである。
図10は、横軸が吸気温度を示し、縦軸がガスタービン出力を示している。出力算出関数は、IGV開度と、吸気温度と、ガスタービン出力との関係を規定するものである。したがって、制御変数生成部81で用いられる出力算出関数の態様としては、例えば吸気温度とガスタービン出力との関係を規定した関数がIGV開度毎に設けられた関数の集合であってもよいし、IGV開度とガスタービン出力との関係を規定した関数が吸気温度毎に設けられた関数の集合であってもよい。
図10では、出力算出関数の一部の例を示すものであり、所定のIGV開度について、第1基準温度Taにおける吸気温度とガスタービン出力との関係を直線S1、S2で示している。直線S1、S2が示すように、この場合のガスタービン出力は、吸気温度が高くなるにしたがって低下している。
【0080】
なお、
図10において破線で示される直線S1は、ガスタービン1の改装を行う前の構成に対して用いられる出力算出関数の例を示している。また、
図10において実線で示される直線S2は、ガスタービン1に対して所定の改装を行った後の構成に対して用いられる出力算出関数の例を示している。改装後の直線S2は、改装前の直線S1に比べて、同一の吸気温度に対するガスタービン出力が大きくなっている。なお、出力算出関数については、
図10に示された直線S1、S2の他、改装後の冷却用空気の供給量に応じて、また、改装において交換される静翼25、動翼26及び分割環27の部位及び種類に応じて、複数パターンの関数が設定されている。これら複数パターンの関数は、例えばデータテーブルとして記憶部62に記憶されてもよいし、外部の記憶部装置に記憶されてもよい。制御器81a及び81bは、これらのデータテーブルの中からそれぞれIGV開度と及び吸気温度に応じた関数が用いられるように設定される。
【0081】
除算器81cには、吸気圧力が入力される。除算器81cは、吸気圧力を標準大気圧で除算し、除算結果である大気圧比(吸気圧力/標準大気圧)を乗算器81d及び81eに出力する。
【0082】
乗算器81dには、制御器81aから出力されたPaの値と、除算器81cから出力された大気圧比とが入力される。乗算器81dは、入力された各値同士を乗算し、乗算結果である、大気圧比を考慮したPaの値を減算器81f及び81gへ出力する。乗算器81eには、制御器81bから出力されたPbの値と、除算器81cから出力された大気圧比とが入力される。乗算器81eは、入力された値同士を乗算し、乗算結果である、大気圧比をも考慮したPbの値を減算器81gへ出力する。
【0083】
減算器81gには、乗算器81dから出力されたPaの値と、乗算器81eから出力されたPbの値とが入力される。減算器81gは、Pbの値からPaの値を減算する(Pb−Pa:式1参照)。減算器81fには、ガスタービン出力と、乗算器81dで求めたPaの値とが入力される。減算器81fは、ガスタービン出力からPaの値を減算する(ガスタービン出力−Pa:式1参照)。
【0084】
除算器81hには、減算器81fからの出力値と減算器81gからの出力値とが入力される。除算器81hは、減算器81fからの出力値を減算器81gからの出力値で除算して制御変数を算出し(式1参照)、当該制御変数を燃料配分制御部82に出力する。
【0085】
また、
図3に示すように、燃料配分制御部82には、低値選択部80から出力された燃料指令値と、制御変数生成部81の除算器81hから出力された制御変数とが入力される。燃料配分制御部82は、入力された燃料指令値及び制御変数に基づいて複数の燃料供給ライン34に供給する燃料の分量及び比率を算出する。燃料配分制御部82は、算出結果に基づいて各燃料供給ライン34の燃料調整弁35の開度設定値を設定し、開度設定値に基づいて各燃料調整弁35の開度を制御する。
【0086】
記憶部62は、ガスタービン1の運転に関する各種プログラムやデータ等を記憶する。記憶部62は、例えば、上記の設定温度算出関数やIGV開度算出関数、出力算出関数等、制御部61において用いられる複数パターンの関数を記憶する。変更部63は、改装後の冷却用空気の供給量及び交換された部品の種類及び部位に応じて、ガスタービン1の制御に用いられる設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数を変更する。変更部63は、各関数を変更する場合、記憶部62に記憶されたパターンの中から選択して変更する。
【0087】
次に、上記のように構成されたガスタービン1を改装し、その後制御装置14の設定を変更する方法を説明する。
図11は、ガスタービン1の改装方法の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、作業者は、ガスタービン1の改装を行う(ステップS10)。ステップS10において、作業者は、タービン13に供給される冷却用空気の供給量が低減されるように設定する。また、作業者は、タービン13に設けられる少なくとも一部の部品を供給量が減少した冷却用空気であっても冷却可能なものに交換する。本実施形態では、タービン13を構成する部品のうち、第1段及び第2段の静翼25と、第1段及び第2段の動翼26とを新たな部品に交換する。
【0088】
次に、作業者は、改装後の冷却用空気の供給量を確認する(ステップS20)。ステップS20において、作業者は、設計値を確認してもよいし、流量計55の計測結果を用いてもよい。次に、作業者は、改装において交換された部品を確認する(ステップS30)。ステップS30において、作業者は、交換した静翼25及び動翼26の段数及び交換後の静翼25及び動翼26の製品番号等により、交換された部品の種類及び部位を確認する。なお、交換する部品として分割環27等の他の部品が含まれる場合、同様に種類及び部位を確認する。
【0089】
次に、作業者は、ガスタービン1の制御に用いられる設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数の複数パターンのデータテーブルの中から、ステップS20で確認した冷却用空気の供給量と、ステップS30で確認した交換部品とに対応した関数を選択する(ステップS40)。ステップS40では、制御装置14の記憶部62に対して外部の端末等でアクセスし、作業者自身がデータテーブルの中から検索して選択してもよい。また、冷却用空気の供給量と交換部品との情報を制御装置14に入力し、制御装置14の変更部63において選択を行わせてもよい。また、外部のコンピュータ等に予めデータテーブルを記憶させておき、当該外部のコンピュータ等を用いて関数の選択を行ってもよい。
【0090】
次に、作業者は、設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数を、ステップS40で選択した関数に変更する(ステップS50)。ステップS50では、外部のコンピュータ等を介して作業者が各関数の設定を変更してもよいし、制御装置14の変更部63に変更処理を行わせてもよい。
【0091】
その後、ガスタービン1を運転する場合、IGV制御部73は、出力計56の測定結果であるガスタービン1の出力測定値と、IGV開度算出関数とに基づいて、出力測定値に対するIGV開度設定値を算出する。そして、IGV制御部73は、算出結果に基づいて入口案内翼22の開度を制御する。IGV開度算出関数は、改装の内容に応じた関数に変更されており、例えば
図8に示すように曲線L1から曲線L2に変更されている。この場合、
図8に示すように、改装後のガスタービン1は、改装前に比べて、同一のガスタービン出力におけるIGV開度が低くなるように制御される。この制御により、ガスタービン1は、圧縮機11で吸引される空気の量が減少するため、燃料供給量が同一の場合、改装前に比べてタービン入口温度が上昇する。したがって、改装後におけるタービン入口温度の低下が抑制される。
【0092】
例えば、
図8に示す曲線L2は、部分負荷運転を行う場合において、ガスタービン出力がP1よりも大きくP4よりも小さい値である場合、改装前の曲線L1に比べて、同一のガスタービン出力に対するIGV開度設定値が小さくなっている。したがって、ガスタービン1が部分負荷運転を行う場合、改装前に比べてタービン入口温度が上昇するため、一酸化炭素の発生が抑制される。
【0093】
また、温度リミット制御部76は、圧縮機11の圧力比と設定温度算出関数とに基づいて、圧力比に対する排ガス設定温度を算出し、算出結果に基づいて排ガス温度設定値を算出する。設定温度算出関数は、改装の内容に応じた関数に変更されており、例えば
図5に示すように定格温調ラインT1から定格温調ラインT2に変更されている。この場合、
図5に示すように、改装後のガスタービン1は、改装前に比べて、同一の圧力比における排ガス設定温度が高くなるように制御される。この制御により、ガスタービン1は、同一の圧力比におけるタービン入口温度が改装前に比べて上昇する。したがって、改装後におけるタービン入口温度の低下が抑制される。
【0094】
また、温度リミット制御部76は、算出した排ガス設定温度をIGV制御部73に出力する。IGV制御部73は、温度リミット制御部76から出力された排ガス設定温度に基づいて、IGV開度設定値を補正する。したがって、IGV制御部73では、改装の内容に応じたIGV開度設定値が算出される。
【0095】
また、制御変数生成部81は、吸気温度及びIGV開度設定値と、出力算出関数とに基づいて第1基準温度Ta及び第2基準温度Tbにおけるガスタービン出力Pa及びPbを算出し、算出結果に基づいて制御変数を算出する。出力算出関数は、改装の内容に応じた関数に変更されており、例えば
図10に示すように直線S1から直線S2に変更されている。この場合、
図10に示すように、改装後のガスタービン1は、改装前に比べて、第1基準温度Ta及び第2基準温度Tbのそれぞれにおいて、同一の吸気温度におけるガスタービン出力が高くなるように制御される。この制御により、ガスタービン1は、同一の吸気温度においてタービン入口温度が改装前に比べて上昇する。したがって、改装後におけるタービン入口温度の低下が抑制される。
【0096】
以上のように、本実施形態によれば、設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数が改装後の冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じたものに変更される。このため、改装の内容に応じてIGV開度設定値が適切に算出される。これにより、同一のガスタービン出力(又は圧力比)におけるタービン入口温度が改装の前後でずれることを抑制でき、改装の前後でガスタービン1の運転条件にずれが生じることを抑制できる。
【0097】
また、本実施形態では、設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数のそれぞれを変更するため、改装の前後でガスタービン1の運転条件にずれが生じることをより確実に抑制できる。
【0098】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、改装後に設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数のそれぞれを変更する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、少なくともIGV開度算出関数を変更するものであればよい。この場合、設定温度算出関数及び出力算出関数の少なくとも一方については変更しなくてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、改装を1回行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、改装を複数回行う場合であってもよい。この場合、それぞれの改装において、冷却用空気の供給量及び交換する部品に応じて設定温度算出関数、IGV開度算出関数及び出力算出関数を変更する。このように、改装において部品の交換を段階的に行う場合、関数の変更についても段階的に行うようにしてもよい。
【解決手段】タービンに供給される冷却用空気の供給量を低減し、かつタービンに設けられる少なくとも一部の部品を冷却用空気の供給量に応じた部品に交換する改装S10を行うことと、改装後の冷却用空気の供給量及び交換された部品に応じて制御装置の設定値算出関数を変更S50することにより、改装の前後でガスタービンの運転条件にずれが生じることを抑制する。