(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転可能に支持されたブレードを有するタービン本体と、前記タービン本体に接続されて作動流体としての蒸気が流通する蒸気流路と、直線運動することで前記蒸気流路の開閉を調整する調整弁と、前記調整弁を駆動する開閉駆動機構と、少なくとも前記開閉駆動機構を制御する電子ガバナと、前記開閉駆動機構の動作を制御するコントローラユニットと、を有する蒸気タービンであって、
前記開閉駆動機構は、
電力が供給されて回転する電動モータと、
前記電動モータの回転運動を前記調整弁の直線運動に変換する変換機構と、
前記電動モータの回転運動を制動するブレーキと、を有し、
前記コントローラユニットと前記電子ガバナのうち少なくとも一方は、前記電動モータの故障時に、前記ブレーキを作動させて前記電動モータの回転運動を制動させ、前記調整弁の位置を保持する制御を行う蒸気タービン。
前記ブレーキは無停電電源により電力が供給され、該ブレーキへ供給される電力が断たれることにより作動して前記電動モータの回転運動を制動させるように構成されており、
前記コントローラユニットと前記電子ガバナのうち少なくとも一方は、前記電動モータと前記コントローラユニットのうち少なくとも一方の故障時に、前記ブレーキへ供給される電力を遮断する請求項1に記載の蒸気タービン。
前記コントローラユニットの故障時に、前記開閉駆動機構の動作を制御する予備コントローラユニットを更に備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
前記電動モータと前記コントローラユニットのうち少なくとも一方の故障は、電子ガバナによって検知される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電動アクチュエータや、この電動アクチュエータに付属するコントローラユニットの故障によって蒸気タービンの運転が停止すると、蒸気タービンを再起動する必要が生じる。蒸気タービンの停止・再起動には多大な費用と時間を要するため、電動アクチュエータや、コントローラユニットが故障した場合においても、蒸気タービンを停止させる必要のないシステムが望まれている。
【0007】
本発明は、電動アクチュエータや、コントローラユニットが故障した場合においても、蒸気タービンの運転が停止しないような蒸気タービンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る蒸気タービンは、回転可能に支持されたブレードを有するタービン本体と、前記タービン本体に接続されて作動流体としての蒸気が流通する蒸気流路と、直線運動することで前記蒸気流路の開閉を調整する調整弁と、前記調整弁を駆動する開閉駆動機構と、少なくとも前記開閉駆動機構を制御する電子ガバナと、前記開閉駆動機構の動作を制御するコントローラユニットと、を有する蒸気タービンであって、前記開閉駆動機構は、電力が供給されて回転する電動モータと、前記電動モータの回転運動を前記調整弁の直線運動に変換する変換機構と、前記電動モータの回転運動を制動するブレーキと、を有し、前記コントローラユニットと前記電子ガバナのうち少なくとも一方は、前記電動モー
タの故障時に、前記ブレーキを作動させて前記電動モータの回転運動を制動させ、前記調整弁の位置を保持する制御を行う。
【0009】
上記構成によれば、電動モー
タの故障時においても調整弁の弁開度が保持されるため、蒸気タービンの運転を停止させることなく蒸気タービンを運用させることができる。
【0010】
上記蒸気タービンにおいて、前記ブレーキは無停電電源により電力が供給され、該ブレーキへ供給される電力が断たれることにより作動して前記電動モータの回転運動を制動させるように構成されており、前記コントローラユニットと前記電子ガバナのうち少なくとも一方は、前記電動モータと前記コントローラユニットのうち少なくとも一方の故障時に、前記ブレーキへ供給される電力を遮断することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、ブレーキへの電力が無停電電源により供給されていることにより、停電などでブレーキが誤作動することを防止することができる。
【0012】
上記蒸気タービンにおいて、前記調整弁が所定の範囲を超過して駆動したことを検知する制限センサを備え、前記コントローラユニットと前記電子ガバナのうち少なくとも一方は、前記制限センサが前記調整弁の所定の範囲を超過した駆動を検知した場合に、前記ブレーキを作動させて前記電動モータの回転運動を制動させ、前記調整弁の位置を保持する制御を行うことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、コントローラユニットの制御異常などによって、計画値以上に調整弁が駆動した場合において、タービン本体に過剰な蒸気が流入することを防止することができる。
【0014】
上記蒸気タービンにおいて、前記調整弁の駆動を機械的に制限する制限部材を備えることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、コントローラユニットの制御異常などによって、計画値以上に調整弁が駆動した場合において、タービン本体に過剰な蒸気が流入することを防止することができる。
【0016】
上記蒸気タービンにおいて、前記変換機構が、前記電動モータによって回転駆動されるボールネジと、前記ボールネジに螺合されるとともに前記調整弁に接続されたナットと、を備えることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、ボールネジの回転に伴ってそれに螺合されたナットがボールネジに沿った直線運動をし、このナットに接続された調整弁もまた直線運動をする。これにより、ボールネジとナットという簡略な構成によって、電動モータの回転運動を調整弁の直線運動に変換することができる。また、開閉駆動機構を簡略な構成とすることにより、その設置スペースを削減することができる。
【0018】
上記蒸気タービンにおいて、前記コントローラユニットの故障時に、前記開閉駆動機構の動作を制御する予備コントローラユニットを更に備えることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、コントローラユニットの故障時にも、これに代わって予備コントローラユニットが開閉駆動機構の動作を制御するので、蒸気タービンの連続運転が可能となる。これにより、信頼性の高い蒸気タービンの運転が可能となる。
【0020】
上記蒸気タービンにおいて、前記開閉駆動機構の故障時に前記調整弁を駆動する予備開閉駆動機構を更に備えることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、開閉駆動機構の故障時にもこれに代わって予備開閉駆動機構が調整弁を駆動するので、蒸気タービンの連続運転が可能となる。これにより、信頼性の高い蒸気タービンの運転が可能となる。
【0022】
上記蒸気タービンにおいて、前記電動モータと前記コントローラユニットのうち少なくとも一方の故障は、電子ガバナによって検知されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電動モータとコントローラユニットの故障時においても調整弁の弁開度が保持されるため、蒸気タービンの運転を停止させることなく蒸気タービンを運用させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態の蒸気タービンについて、図面を参照して説明する。
図1は、第一実施形態の蒸気タービン10の構成を示す模式図である。
【0026】
本実施形態の蒸気タービン10は、
図1に示すように、タービン本体11と、作動流体としての蒸気が流通する蒸気流路12と、調整弁13と、レバー部材14と、開閉駆動機構15と、ロック機構16(
図4及び
図6に示す)と、開閉駆動機構15を制御する電子ガバナ17と、を備える。
【0027】
(タービン本体)
タービン本体11は、筒状のケーシング111と、ケーシング111に設けられた軸受112と、軸受112に回転可能に支持されてケーシング111内部に配されたロータ113と、このロータ113の回転速度を検出する速度検出センサ114と、を有している。そして、ロータ113は、回転軸115と、この回転軸115に固定されたブレード116とを備えている。このように構成されるブレード116が蒸気により回転し、その回転力により、圧縮機18が駆動される。
【0028】
(蒸気流路)
蒸気流路12は、タービン本体11に対して蒸気を供給する流路である。蒸気流路12は、その蒸気導入口121から蒸気が導入されるとともに、その蒸気供給口122がタービン本体11に接続されている。また、蒸気導入口121と蒸気供給口122との間には、その流路幅が狭く絞られた絞り穴123が設けられている。
【0029】
尚、本実施形態では、本発明に係る「蒸気流路」として、タービン本体11に対して供給する蒸気が流通する流路を例に説明するが、蒸気流路12はこれに限られず、例えばタービン本体11から抽気した蒸気が流通する流路であってもよい。
【0030】
(調整弁)
調整弁13は、タービン本体11に供給する蒸気の量を調整する弁である。この調整弁13は、棒状のアーム部材131の一端部に略半円形状の封止部材132が設けられたものであって、アーム部材131の他端部が前記レバー部材14の長手方向中間部に固定されている。このように構成される調整弁13によれば、蒸気流路12に沿ってアーム部材131が直線運動することに伴って、その先端部の封止部材132が蒸気流路12の絞り穴123に嵌合しまたは離間する。これにより、絞り穴123の開口径が変化し、この絞り穴123を介してタービン本体11に供給される蒸気の流量が変化するようになっている。
以下、調整弁13の封止部材132が蒸気流路12の絞り穴123より離間することをリフトと呼び、開閉駆動機構の計画値における最大のリフト量をリフト量100%とし、調整弁の封止部材132が絞り穴123と嵌合した状態をリフト量0%とする。
【0031】
(レバー部材)
レバー部材14は、開閉駆動機構15の出力を調整弁13に伝達する部材である。このレバー部材14は、その長手方向基端部が回動可能に支持されるとともに、その長手方向先端部にはレバー側ロッド19の一端部が固定されている。また、前述のようにレバー部材14の長手方向中間部には、調整弁13を構成するアーム部材131の他端部が固定されている。更に、レバー部材14におけるアーム部材131の固定位置より先端側には、強制的に調整弁13を閉塞させる強制閉塞手段として引きバネ20の一端が取り付けられている。この引きバネ20は、その他端が移動不能に固定され、外力が作用しない状態では、レバー部材14を
図1における反時計回りに回動させる方向へ引っ張り力を付与している。
【0032】
(開閉駆動機構)
開閉駆動機構15は、調整弁13を駆動する機構である。この開閉駆動機構15は、固定して設置された一対のブラケット21と、これらブラケット21によって回動可能に支持された保持部材22と、この保持部材22によって保持された電動アクチュエータ23と、を有している。
【0033】
図2は、開閉駆動機構15の周辺を示す概略斜視図である。尚、
図2ではタービン本体11等については図示を省略している。開閉駆動機構15を構成する一対のブラケット21は、断面略L字形状を有し、軸受カバー24に近接して設けられた台座25の上に固定してそれぞれ設置されている。ここで、軸受カバー24とは、
図1に示すロータ113の回転軸115を回転可能に支持する軸受112を収容するものである。
【0034】
開閉駆動機構15を構成する保持部材22は、電動アクチュエータ23を保持する部材である。この保持部材22は、
図1及び
図2に示すように、側面視で略U字形状を有し、一対の保持部材22によって回動可能に支持されている。
【0035】
開閉駆動機構15を構成する電動アクチュエータ23は、調整弁13を駆動するための駆動力を発生させるものである。
図3は、電動アクチュエータ23の内部構成を示す概略断面図である。
図3(a)、及び
図3(b)に示すように、電動アクチュエータ23は、電動モータ26と、変換機構27と、ブレーキ28と、を備えるものである。
【0036】
電動モータ26は、電力の供給を受けて回転するものである。この電動モータ26は、電動アクチュエータ23の基端部に設けられて内部が密閉されたモータ収容部29に収容されている。これにより、電動モータ26が周囲に存在する油から隔絶されることにより、防爆構造とすることができる。
【0037】
変換機構27は、電動モータ26の回転運動を調整弁13の直線運動に変換する機構である。この変換機構27は、電動モータ26の駆動軸に接続されたボールネジ30と、ボールネジ30の回転によって進退移動するピストンユニット31とを有している。
【0038】
ボールネジ30は、長尺なネジ部材であって、その外周面には雄ネジが切られている。そして、このボールネジ30の一端部が電動モータ26の駆動軸に接続され、電動モータ26の回転に伴ってボールネジ30が回転駆動される。
【0039】
ピストンユニット31は、ボールネジ30に沿って往復動するものである。このピストンユニット31は、略円環形状を有する部材であって内周面に雌ネジが切られてボールネジ30に螺合されたナット311と、このナット311の一端面に固定されてボールネジ30の外側を覆う筒状のピストンロッド312と、このピストンロッド312の先端部に嵌合して装着されたロッドエンドコネクタ313と、このロッドエンドコネクタ313に対して長手方向一端部が固定されたアクチュエータ側ロッド314と、を有している。
【0040】
このように構成されるピストンユニット31によれば、ボールネジ30が軸線回りに回転すると、
図3(b)に示すようにボールネジ30に螺合したナット311が軸線に沿って移動し、これに伴ってナット311に固定されたピストンロッド312、ロッドエンドコネクタ313、及びアクチュエータ側ロッド314も、ナット311と共にボールネジ30の軸線に沿って移動する。ロッドエンドコネクタ313の頭部313aは、その外形がピストンロッド312よりも大きく形成されている。
【0041】
ブレーキ28は、電動モータ26を挟んでボールネジ30と逆側の位置に設けられた電磁ディスクブレーキである。ブレーキ28は、電力の供給が断たれることにより作動して、電動モータ26の回転に制動をかける。即ち、ブレーキ28に電力が供給されている状態においては、ブレーキ28は作動せず、電動モータ26の回転が妨げられることはない。
【0042】
また、ピストンユニット31はピストンケーシング36によって覆われており、ピストンケーシング36の上端には、ピストンケーシング36を封止するとともに、ピストンロッド312を案内するピストンキャップ37が設けられている。
【0043】
(制限部材)
ロッドエンドコネクタ313の頭部313aのピストンロッド312側の面には、円筒形状をなすストッパ38がピストンロッド312を囲うように取り付けられている。
ストッパ38は、電動アクチュエータ23の駆動を機械的に制限する制限部材として機能し、本実施形態のストッパ38は、調整弁13が閉状態(リフト量0%)であるときに、ストッパ38の下端がピストンキャップ37の上面37aに当接するような長さとされている。
また、ピストンキャップ37も制限部材として機能する。即ち、ピストンキャップ37は、調整弁13のリフト量が100%の開状態となったときに、ナット311の上面311aがピストンキャップ37の下面37bに当接するように形成されている。
【0044】
図4は、電動アクチュエータ23の周辺を示す概略斜視図である。以上のように構成される電動アクチュエータ23は、保持部材22に固定されるとともに、アクチュエータ側ロッド314が保持部材22に挿通される。具体的には、アクチュエータ側ロッド314は、保持部材22の上端部に設けられたガイド板39に設けられた挿通孔39aに挿通される。そして、このアクチュエータ側ロッド314は、カップリング32を介して前記レバー側ロッド19に接続される。このように設置された電動アクチュエータ23は、
図4に破線で示すように、ブラケット21が保持部材22を支持する位置を支点として、若干の回動が許容された状態となっている。
【0045】
図5は、カップリング32の構成を示す概略正面図である。カップリング32は、略円柱形状の部材であって、一方の端面にネジ穴321が形成されるとともに、他方の端面にロッド挿入穴322が形成されている。そして、カップリング32のネジ穴321に対し、アクチュエータ側ロッド314に取り付けられた固定用ボルト315が螺合されることにより、カップリング32とアクチュエータ側ロッド314とが互いに接続される。一方、カップリング32のロッド挿入穴322に対し、レバー側ロッド19が挿入され、互いに直交する2本のピン33が挿通されることにより、カップリング32とレバー側ロッド19とが互いに接続される。これにより、アクチュエータ側ロッド314とレバー側ロッド19とがカップリング32を介して互いに接続される。また、2本のピン33をそれぞれ取り外すことにより、ロッド挿入穴322からレバー側ロッド19を抜き取ることができ、これによりアクチュエータ側ロッド314とレバー側ロッド19との接続を解除することができる。
【0046】
(ロック機構)
ロック機構16は、調整弁13を移動不能にロックする機構である。ここで、
図6は、ロック機構16の構成を示す概略平面図である。ロック機構16は、
図4及び
図6に示すように、下端部が固定されて上方へ延びる支持棒161と、この支持棒161に支持されて水平方向に延びる保持板162と、一対の固定ボルト163を介して保持板162の先端部に着脱可能な押圧部材164と、を有している。ここで、
図4に示すように、保持板162の先端部には、平面視で略半円形状の嵌合溝162aが形成されている。一方、押圧部材164における保持板162に対向する側には、平面視で略三角形状の切欠き164aが形成されている。
【0047】
このように構成されるロック機構16によれば、保持板162の嵌合溝162aにレバー側ロッド19を嵌合させた後、固定ボルト163を用いて保持板162の先端部に押圧部材164を固定する。これにより、レバー側ロッド19は、保持板162と押圧部材164とによって挟持されることにより移動不能にロックされる。
【0048】
(リミットスイッチユニット)
図7に示すように、保持部材22のガイド板39には、調整弁13が所定の範囲を超過して駆動したことを検知する制限センサとして機能するリミットスイッチユニット50が取り付けられている。リミットスイッチユニット50は、ガイド板39と直交するとともに、電動アクチュエータ23の長手方向に延在するステー51と、ステー51の所定の位置に取り付けられたリミットスイッチ52とから構成されている。また、アクチュエータ側ロッド314上であってカップリング32との接続部近傍には、リミットスイッチ52に接触可能なコンタクト金具53が取り付けられている。
【0049】
リミットスイッチユニット50は、電動アクチュエータ23により調整弁13が駆動する際、調整弁13が100%のリフト量を越え、105%のリフト量となったときに、スイッチが入るように設定されている。即ち、リミットスイッチユニット50は、調整弁13が電動アクチュエータ23の計画値以上のリフト量に至った場合にONとなるように設定されている。リミットスイッチユニット50は、電子ガバナ17と接続されており、電子ガバナ17は、リミットスイッチユニット50と通信を行って、調整弁13のリフト量が105%以上となっていないか監視を行っている。
【0050】
(リフト量検知装置)
開閉駆動機構15には、制限センサとして機能するリフト量検知装置55が設けられている。リフト量検知装置55は、電動アクチュエータ23のモータ収容部29に取り付けられたサポート部材56と、サポート部材56とレバー部材14とを接続する伸縮バー57と、伸縮バー57のうちレバー部材14の回動に伴って上方に移動する部位の上下方向の変位を測定するリフトセンサ58とを有している。
【0051】
伸縮バー57は、その上方をなす第一ロッド59がレバー部材14の長手方向先端部近傍に回動可能に接続されているとともに、その下方をなす第二ロッド60がサポート部材に回動可能に接続され、電動アクチュエータ23の長手方向に沿うように配置されている。
第一ロッド59の下端には、円筒形状をなし、第二ロッド60をその内周側に収容する円筒部材61が固定されている。即ち、伸縮バー57は、第一ロッド59に固定された円筒部材61の内部を第二ロッド60が摺動することによって伸縮する。
【0052】
リフトセンサ58は、伸縮バー57の円筒部材61の上端に固定されたリフトセンサステー62を介して、伸縮バー57の円筒部材61の変位を測定する差動変圧器(LVDT,Linear Variable Differential Transformer)を用いたセンサである。具体的には、リフトセンサ58は、サポート部材56に固定された円筒形状のリフトセンサ本体部64と、リフトセンサ本体部64に収容されたコア部(図示せず)と、コア部と接続された棒形状のシャフト部65とを有している。シャフト部65は、伸縮バー57の延在方向と平行となるように配置されており、シャフト部65の上端がリフトセンサステー62に固定されている。
【0053】
リフト量検知装置55は、電子ガバナ17と接続されており、調整弁13のリフト量を検知するように出力調整されている。即ち、リフト量を検知できるように調整されている。また、リフト量は、操作盤34(
図1参照)にも表示されるようになっており、現場でリフト量を確認することができる。また、リフト量を例えば監視センターなどにおいてリモートにより監視することも可能である。
【0054】
(電子ガバナ)
電子ガバナ17は、開閉駆動機構15の動作を制御するものである。この電子ガバナ17に対しては、
図1に示すように、圧縮機18における圧力や温度の検出結果に基づいてプロセス制御が行われた結果が入力される。また、電子ガバナ17に対しては、タービン本体11を構成する速度検出センサ114によって検出されたブレード116の回転速度が入力される。更に、電子ガバナ17に対しては、操作盤34から入力されたユーザからの指示が入力される。そして、電子ガバナ17は、これらの入力に基づいて、開閉駆動機構15の動作、より詳細には電動アクチュエータ23を構成する電動モータ26の動作を制御する。
【0055】
図8は、第一実施形態に係る蒸気タービン10について、電動アクチュエータ23の制御を示す模式図である。本実施形態に係る蒸気タービン10では、電子ガバナ17による制御に基づいて、コントローラユニット35が電動アクチュエータ23の動作を制御する。そして、コントローラユニット35は、コントローラ351と、サーボドライブ352とを有している。
また、コントローラユニット35には、電源ケーブル67を介して主電源(例えばAC230V)が供給されている。電源ケーブル67には、電源ケーブル67を流れる電力を測定する電圧計68が設けられている。電圧計68は、電子ガバナ17と接続されており、電源ケーブル67を流れる電流の電圧を電子ガバナ17に通知する。
【0056】
このような構成によれば、電子ガバナ17の制御の下、コントローラ351がサーボドライブ352に対して回転速度についての指令を発し、この指令に基づいてサーボドライブ352がモータケーブル69を介して電動モータ26に動力を付与する。一方、電動モータ26において検出された回転速度や電流値や各所の温度等が、サーボドライブ352を介してコントローラ351に入力される。そしてコントローラ351は、検出値について異常が検知されると、電動モータ26において重度または軽度の故障が発生したことを電子ガバナ17に通知する。
【0057】
また、コントローラユニット35は、サーボドライブ352を介してブレーキ28を制御可能とされている。上述したように、ブレーキ28は、電力が供給されている状態においては、制動力を発揮しない構成となっている。ブレーキ28には、図示しない無停電電源装置による補助電力が補助電力ケーブル71を介して供給されている。
【0058】
また、モータケーブル69には、モータケーブル69を流れる電力を遮断可能なスイッチ装置70が設けられている。スイッチ装置70には、無停電電源装置による補助電力が補助電力ケーブル71を介して供給されている。スイッチ装置70は、補助電力が供給されている状態において閉(CLOSE)となり、電動モータ26に電力が供給されるように設定されている。
また、補助電力ケーブル71には、補助電力ケーブル71を流れる補助電力を遮断可能な補助スイッチ装置72が設けられている。なお、補助電力は、コントローラ351にも供給されている。
【0059】
また、蒸気タービン10は、調整弁13を駆動する手段として開閉駆動機構15と同等の機能を有する予備開閉駆動機構41を備えている。予備開閉駆動機構41の電動アクチュエータ23は、モータケーブル69を介してコントローラユニット35のサーボドライブ352と接続されている。
【0060】
更に、蒸気タービン10は、開閉駆動機構15または予備開閉駆動機構41の動作を制御する手段として、コントローラユニット35だけでなく予備コントローラユニット42をも備えている。予備コントローラユニット42はモータケーブル69を介して開閉駆動機構15及び予備開閉駆動機構41の電動アクチュエータ23と接続されている。
即ち、本実施形態の蒸気タービン10は、開閉駆動機構15及びコントローラユニット35がそれぞれ冗長化されている。
【0061】
次に、本発明の第一実施形態に係る蒸気タービン10の作用について説明する。通常運転状態において、蒸気タービン10は、調整弁13を開閉駆動機構15を用いて駆動する。そして、開閉駆動機構15は、コントローラユニット35によって制御されている。
【0062】
開閉駆動機構15の電動アクチュエータ23が故障した場合、サーボドライブ352よりコントローラ351に対して電動アクチュエータ23が異常である旨が通知される。そして、コントローラ351は、スイッチ装置70及び補助スイッチ装置72を開状態(OPEN)にするように指令を出す。即ち、補助電力ケーブル71を介してブレーキ28に供給されている補助電力が断たれ、電動モータ26及びブレーキ28に供給されている電力が断たれる。これにより、電動モータ26が停止するとともに、ブレーキ28が作動する。ブレーキ28の作動により、電動モータ26の回転が制動され、調整弁13の位置が保持される。即ち、蒸気流路12を介してタービン本体11に供給される蒸気は遮断されることなく、蒸気タービン10は運転を続ける。
【0063】
同様の制御は、コントローラユニット35が故障した場合においても有効である。即ち、コントローラユニット35が故障した場合、コントローラユニット35自身が補助スイッチ装置72に指令を通知し、補助スイッチ装置72を開状態にすることができる。
さらに、電子ガバナ17にも同様の機能を持たせることも可能である。即ち、コントローラユニット35が制御不能な状態に陥り、補助スイッチ装置72に指令を発することができず、電子ガバナ17がその状態を把握した場合は、電子ガバナ17が直接補助スイッチ装置72に補助電力の供給遮断を指令することも可能である。
【0064】
故障が電動アクチュエータ23のみである場合には、コントローラユニット35による制御が予備開閉駆動機構41に切り替えられる。即ち、予備モータケーブル69aを介してコントローラユニット35のサーボドライブ352と予備開閉駆動機構41とが接続されて、コントローラユニット35による予備開閉駆動機構41の制御が可能となる。
【0065】
コントローラユニット35が故障した場合は、開閉駆動機構15のブレーキ28により調整弁13が保持されている状態において、電動アクチュエータ23が予備コントローラユニット42によって制御されるように切り替えられる。即ち、予備モータケーブル69aを介して開閉駆動機構15の電動アクチュエータ23と予備コントローラユニット42とが接続されて、予備コントローラユニット42による電動アクチュエータ23の制御が可能となる。
【0066】
一方、停電などにより、電力供給が停止した場合、引きバネ20の引っ張り力を受けたレバー部材14が
図1において反時計回りに回動し、これに伴って調整弁13が蒸気流路12を閉止する。即ち、ブレーキ28の作動は行われず、調整弁13を全閉状態として速やかに蒸気タービン10を停止させるFail Safe(二重安全装置)機能が適用される。
【0067】
また、調整弁13のリフト量は、リフト量検知装置55によって監視可能とされている。電子ガバナ17は、例えばリフト量検知装置55によって、リフト量が105%となった場合にブレーキ28を作動させて調整弁13の開度を保持させることができる。
同様に、電子ガバナ17は、リミットスイッチユニット50も監視しており、リミットスイッチユニット50のスイッチが入った場合、即ち、調整弁13が100%のリフト量を超えた場合にブレーキ28を作動させて調整弁13の開度を保持させることができる。
【0068】
上記実施形態によれば、電動モータ26とコントローラユニット35の故障時においても調整弁13の弁開度が保持されるため、蒸気タービン10の運転を停止させることなく蒸気タービン10を運用させることができる。
【0069】
また、ブレーキ28への電力が無停電電源により供給されていることにより、停電などでブレーキ28が誤作動することを防止することができる。
【0070】
また、コントローラユニット35の制御異常などによって、計画値以上に調整弁13が駆動した場合において、タービン本体11に過剰な蒸気が流入することを防止することができる。
【0071】
また、ボールネジ30とナット311という簡略な構成によって、電動モータ26の回転運動を調整弁13の直線運動に変換することができる。また、開閉駆動機構15を簡略な構成とすることにより、その設置スペースを削減することができる。
【0072】
また、開閉駆動機構15の故障時等には、これに代えて予備開閉駆動機構41が調整弁13を駆動するようになっている。これにより、開閉駆動機構15の故障時にも蒸気タービン10を連続して運転することができるので、蒸気タービン10の信頼性を高めることができる。
【0073】
また、コントローラユニット35の故障時等には、これに代えて予備コントローラユニット42が開閉駆動機構15または予備開閉駆動機構41の動作を制御するようになっている。これにより、コントローラユニット35の故障時にも蒸気タービン10を連続して運転することができるので、蒸気タービン10の信頼性を更に高めることができる。
【0074】
また、第一実施形態に係る蒸気タービン10では、調整弁13を駆動する開閉駆動機構15として、電動モータ26を駆動源とする電動アクチュエータ23を用いている。従って、調整弁13の駆動用に従来用いていた油圧サーボ機構が不要となり、作動油の漏れを防止する手段が不要となる。また、作動油を供給するアクチュエータや、封止する弁機構等が不要となるため、軸受カバー24の上方のスペースを開閉駆動機構15の設置スペースとして利用する必要がなくなる。これにより、軸受112の保守作業を行う度に軸受カバー24の上から開閉駆動機構15を取り外す必要がなく、軸受112の保守作業に要する手間を削減することができる。
【0075】
また、作動油は、
図1に示す軸受112のみの利用とすることが可能となるため比較的低圧とすることができる。これにより、大出力のポンプやモータが不要であり、油コンソールの小型化を図ることができる。
【0076】
また、第一実施形態に係る蒸気タービン10では、
図4に破線で示すように電動アクチュエータ23は若干の回動が許容された状態となっている。これは、電動アクチュエータ23に作用する横方向への力、すなわちボールネジ30の軸方向に対して略直交する方向への力を逃がすためである。より詳細に説明すると、
図1に示すレバー部材14は、その基端部を支点として回動するため、その先端部は円弧軌道を描いている。従って、このレバー部材14に固定されたレバー側ロッド19及びそれに接続されたアクチュエータ側ロッド314もまた、軸方向に沿った単なる直線運動ではなく円弧軌道を描いている。そこで、電動アクチュエータ23に回動を許容して横方向に作用する力を逃がすことにより、故障等の発生を防止している。
【0077】
また、第一実施形態に係る蒸気タービン10では、レバー側ロッド19とアクチュエータ側ロッド314とがカップリング32を介して切り離し可能に接続されるとともに、ロック機構16を用いてレバー側ロッド19を移動不能にロックできるようになっている。
このような構成によれば、電動アクチュエータ23に故障等が生じて交換が必要になった場合、調整弁13が蒸気流路12を開放した状態においてロック機構16によってレバー側ロッド19をロックした後、カップリング32を切り離してレバー側ロッド19とアクチュエータ側ロッド314との接続を解除する。これにより、タービン本体11の運転を継続したまま、電動アクチュエータ23を取り外して交換または修理する作業を行うことができる。
【0078】
(変形例)
次に、第一変形例の蒸気タービン10Bについて説明する。
図9は、第一変形例の蒸気タービン10Bについて、電動アクチュエータ23の制御を示す模式図である。第一変形例の蒸気タービン10Bは、
図8に示す蒸気タービン10と比較すると、予備開閉駆動機構41が設けられていないという点で異なっている。それ以外の構成は、実施形態と同じであるため、
図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0079】
第一変形例の蒸気タービン10Bによれば、開閉駆動機構15が故障した場合においては、ブレーキ28により、調整弁13の状態が保持される。これにより、蒸気タービン10の運転を停止させることなく運用が可能となる。そして、調整弁13を開状態としたまま、開閉駆動機構15の修理、交換などを行うことができる。
一方、コントローラユニット35が故障した場合は、ブレーキ28により調整弁13を保持しつつ、開閉駆動機構15の制御を予備コントローラユニット42へ切り替えることが可能である。
【0080】
次に、第二変形例の蒸気タービン10Cについて説明する。
図10は、第二変形例の蒸気タービン10Cについて、電動アクチュエータ23の制御を示す模式図である。第二変形例の蒸気タービン10Cは、
図8に示す蒸気タービン10と比較すると、予備開閉駆動機構41及び予備コントローラユニットが設けられていないという点で異なっている。
【0081】
第二変形例の蒸気タービン10Cによれば、開閉駆動機構15が故障した場合においては、ブレーキ28により、調整弁13の状態が保持される。これにより、蒸気タービン10の運転を停止させることなく運用が可能となる。そして、調整弁13を開状態としたまま、開閉駆動機構15の修理、交換などを行うことができる。
コントローラユニット35が故障した場合においても、調整弁13の状態が保持しつつ、コントローラユニット35の修理、交換を行うことができる。
【0082】
なお、上述した実施形態、及び変形例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。